えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

宝塚ジャーナルは2019年2月20日に引っ越しました。
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インタビュー

ドラマとダンス、2つの「カンタービレ」を連続上演! 森新吾インタビュー

森
 
DIAMOND☆DOGS(D☆D)のメンバーとして活躍するかたわら、優れたクリエーターとして構成・演出・振付のジャンルでも才能を発揮している森新吾が2つの「カンタービレ」に挑む!

昨年5月に自身の主演作品として発信したショーアクト『ダンスカンタービレ』。森と風花舞をはじめとした女性陣だけで紡がれた作品で、1800年代のロンドンを舞台にしたちょっとダークでミステリアスなステージは多くの喝采を集めた。その「カンタービレ=歌うように」と名付けられた舞台が、D☆D充電期間中の2018年新たな展開を見せることになった。

11月22日〜25日、サイエンスホールで上演される『アクトカンタービレscene1 〜 Smoky Dog 〜』は、脚本・演出に米山和仁(劇団ホチキス)を迎えて男性陣だけで創られる、芝居仕立ての作品。
12月12日〜16日、博品館劇場で上演する『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girlsは、風花舞や舞羽美海、田野優花など華やかな女性陣のダンスを中心にしたステージだ。
 
連続上演されることになった2つの「カンタービレ」を企画し、演出家としても取り組む森新吾に、公演への意気込みを話してもらった「えんぶ12月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。


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笑って最後にしみじみするカラフルな『アクトカンタービレ』

──2つの「カンタービレ」ということですが、今回『アクトカンタービレscene1』が新たにスタートしますね。
昨年、僕と女性陣だけで構成した『ダンスカンタービレ』をさせて頂いて、とても大きな達成感を得ることができたんです。そこから、これを更に膨らませて「カンタービレ・シリーズ」として展開したいと考えたのが『アクトカンタービレ』です。男性だけで、芝居を中心としたカラフルな舞台になります。僕から発信していくものとして、ダンスだけに特化するのではなく、色々な絵をお見せしたいという想いでスタートしました。
 
──森さんが総合演出という形で、脚本・演出を劇団ホチキスの米山和仁さんが担当するのですね。
今回参加を快諾してくれた町田慎吾君が出ていた劇団ホチキスの舞台を拝見して、素直にとても面白いな!  と思い、紹介してもらって、芝居のディティールの部分を創って頂けることになりました。勿論僕も総合演出としてタクトは振りますが、一役者として客観的にも見てもらえるのが有難いです。お客様には大いに笑って頂きつつ、最後にしみじみとしたものも残る作品になると思います。
 
──D☆Dを卒業された小寺利光さんとTAKAさんが、役者とクリエーターとして参加するのも嬉しいことです。
利ちゃん(小寺)には一役者として出てもらいたい! と純粋に思ってお願いしました。またTAKAちゃんは僕の中ではマストな音楽家なので、安心して音楽面を委ねられます。D☆Dを卒業した2人が関わってくれる形になったのは、よく考えたらそうだよね! というぐらい自然な形とも言えるんですが(笑)、新たなつながりが続くことはD☆Dのファンの皆さんにも喜んで頂けるかなと。他にも水谷あつしさん、入山学さんと、この人たちがいてくれたら安心だという方達が揃ってくれたので、僕自身も楽しみで仕方がないです。

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一生の財産だと思える『ダンスカンタービレ』

──更に12月には『ダンスカンタービレ2018』の上演となります。こちらは2017年の初演を基にした舞台とのことですが、初演で特に感じたことは?
やはりD☆Dではクリエーターの立場で全体を引っ張ることも経験していましたが、いざ舞台となった時には常に絶対的センターとして東さん(東山義久)がいてくれたことが、どんなに大きかったかを痛感しました。普段はあんなにチャラけたキャラなのに(笑)、舞台の芯に立つ為に、これだけのプレッシャーを克服していたのか! ということを、僕自身がセンターに立ったからこそ理解できて、そういう意味でもとても大きな経験になりました。終わった時には燃え尽きたというくらいの突き抜けたエネルギーが、僕自身からも女性陣からも噴出して、僕には一生の財産だと思える公演になりました。その舞台を再びということで、町田君がゲストではなく全公演出てくれますし、舞羽美海さん、田野優花さん等フレッシュなメンバーもいます。2018年版としてブラッシュアップしつつ、風花舞さんや藤田奈那さんはじめ続投メンバーと共に創った初演の素敵なところは活かして、更に掘り下げた舞台にしていきたいです。
D☆Dが充電期間に入って、本当に久しぶりにまとまった休みが取れて、自分を労わったり、突っ走ってきた日々に得たものを見つめ直すこともできました。この二つの「カンタービレ」に今まで培ってきたものと、これから進みたいものを融合させていきますので、是非楽しみに観にいらしてください!

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もりしんご○03年「DIAMOND☆DOGS」に設立メンバーとして参加。舞台構成、振付、演出にも才能を発揮、数多くの舞台を創り続けている。NHK『みんなのうた』の振付を2年連続で手掛けた。近年の主な作品に『Dramatic Musical Collection 2018』『FLAMENCO マクベス〜眠りを殺した男〜』DANCE OPERA『SWAN』2017 LOVE LOVE de SHOW『White Labyrinth』など。また新国立劇場 開場20周年記念オペラ『ホフマン物語』に出演するなど活躍の幅を広げている。


〈公演情報〉
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森新吾presents
『アクトカンタービレ scene1 〜 Smoky Dog 〜』
総合演出◇森新吾
脚本・演出◇米山和仁(劇団ホチキス) 
出演◇森新吾 町田慎吾/小寺利光 神永圭佑 宇佐見輝(劇団スタジオライフ) 若松渓太/水谷あつし 入山学
●11/22〜25◎九段 サイエンスホール 
〈お問い合わせ〉インフォメーションダイヤル 03-5793-8878(平日13時〜18時)
〈D☆D HP〉http://diamonddog-s.com

ダンスカンタービレ

『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girls
構成・演出・振付◇森新吾  
出演◇森新吾/風花舞 舞羽美海 藤田奈那/長岡美紅 PSYCHE 伊藤佳耶芽 橋本由希子 木野村温子/田野優花  町田慎吾 
日替りゲスト◇東山義久(12日) 中塚皓平(13日) 植木豪(13日夜・15日夜・16日) 長澤風海(13日夜・14日・15日昼) 
●12/12〜16◎博品館劇場 
〈お問い合わせ〉博品館劇場 03-3571-1003
〈劇場HP〉 http://theater.hakuhinkan.co.jp/pr_2018_12_12.html




【構成・文◇橘涼香 撮影◇山崎伸康】



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傑作コメディで初共演『カクタス・フラワー』 水夏希・吉田栄作 インタビュー

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イングリッド・バーグマンとウォルター・マッソー、ゴールディ・ホーンという、往年の名優たちが共演した映画版でも知られる傑作コメディ『カクタス・フラワー』が、水夏希と吉田栄作の初共演で、11月10日にDDD青山クロスシアターで開幕した。(12月8日まで。のち大阪、静岡でも公演)
 
舞台は NY。中年の歯科医ジュリアンは、家庭を大切にする誠実な男である事を証明するため、既婚者を装い、若い娘トニと交際している。ある日彼女から、「奥さんに会いたい」と迫られたジュリアン。堅物の独身看護師ステファニーを、急遽妻に仕立てるが……。
 
フランスの舞台劇『Fleur de cactus』を原作に、『ガイズ&ドールズ』や『ハウ・トゥー・サクシード〜努力しないで出世する方法〜』の脚本で高く評価されたエイブ・バロウズがブロードウェイで舞台化、大ヒットとなった作品だ。
今回の翻訳上演は、ミュージカルからプレイまで幅広く手がける板垣恭一が演出を務め、キャストには水夏希、吉田栄作、増田有華、松本幸大(宇宙 Six/ジャニーズ Jr.)、松尾伴内、青木さやかと、豪華キャスト6名が顔を揃えている。
どこか懐かしい正統派コメディでありながら、人間の愚かさ、愛おしさを見事に描き、古さを感じさせないこの作品について、堅物の独身看護師ステファニーを演じる水夏希と、歯科医ジュリアンを演じる吉田栄作にインタビュー。到着したばかりの舞台写真とともにご紹介する。

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クールな二枚目の中から
出てくるコメディセンス

──映画でも有名な作品ですが、お二人はどんな形で知りましたか?
吉田 僕は今回のお話をいただいてから初めてDVDを拝見しました。映画の公開が1969年で、ちょうど僕が生まれた年で。
水 えーっ!そうなんですね!
吉田 50年前ですから、やはり多少の古さは感じますが、イングリッド・バーグマンがそれまでと違う面をみせた作品で、ゴールディ・ホーンはそこからスターになっていったわけで、色々な意味でエポックな作品だったのだなと思いました。
 私も今回のお話があってからDVDを拝見して、王道のコメディというか、話の筋がよく出来ているなと。色々なことが一度ごちゃごちゃになるのですが、最後にうまく、それも思いがけない方向でまとまるのが見事で、物語をうまく着地させているなと思いました。
──正統派コメディを演じる吉田栄作さんは珍しい気がしますが。
吉田 そうですね。ただ作品の一部がコメディタッチになるというのは、例えば『ローマの休日』などで経験しているので。
 栄作さん素晴らしいです! コメディタッチの動きとか引き出しがすごく多くて、このクールな二枚目の中から出てくる!出てくる!(笑)。ご覧になる方はギャップ萌えすると思います。
吉田 いやいや(笑)。
──ジュリアンは歯科医で、なぜか既婚者と偽っているのですね。
吉田 これまではちょっと結婚はしたくないということで嘘をついていたわけですが、トニという若い女性を本気で好きになってプロポーズするんです。でも妻帯者だと言っていたばかりに、奥さんと会いたいと言われて、これまで頼りにしてきた看護師のステファニーに助けてもらいます。ステファニーは優秀で献身的でなんでもまかせられる女性で、それまでもきっと色々助けてもらってきたと思うんですが、ジュリアンはそれを当たり前のように思っていた。でもこの騒ぎをきっかけに、いつも近くで寄り添ってくれていた彼女の存在に気づくことになるんです。
──そのステファニー役ですが、水さんもあまり演じていない役どころでは?
 そうですね。でもステファニーのちょっとコメディな部分は、非常に近いです。私は人生がコメディで(笑)、日常的にかなりボケが入るので、それを知っているファンの人たちから見れば、「あるある!」みたいな感じだと思います(笑)。
──ではアプローチしやすいですね。
 でも自分に近いって一番難しいですからね(笑)。いつも通りってなんだろう?と、ごくナチュラルにやっていることを分析して演じるわけで、自覚しないでやっていることを客観的に捉え直すという作業が必要なので。
吉田 そう。芝居化するということが大事なんですよね。普通にやればいいと言いますけど、それが一番難しいんです。

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スポーツに例えて
わかりやすい板垣演出

──吉田さんは、ジュリアンという役へのアプローチはいかがですか?
吉田 この作品は、全部のキャラクターがそれぞれ背負ってる背景がけっこうリアルで、そこをきちんと持って演じないと嘘くさくなるんです。演出の板垣(恭一)さんもそれをとても大事にされていて、例えば松本(幸大)くんのイゴールなら売れない作家で、松尾(伴内)さんのハーヴェイはジュリアンと友人関係だとか、そういう要素を体の中にちゃんと持って芝居をしないといけない。ですからジュリアンも、まずはそういう背景を体に入れていくことが大事だと思っています。コメディという部分はその後のことなので。
──そのコメディ部分ですが、演じるときの一番大事なことは?
吉田 まずは台詞の掛け合いが大事ですね。それも絶妙なタイミングでやらないといけない。
 この作品の登場人物たちは、相手には嘘をついているのがわからないと思って喋っているのですが、お客様にはそれがわかっている。そこを笑っていただくわけです。その見せ方がやはり難しいですね。
吉田 ジュリアンはそれが一番多いのでたいへんです(笑)。
──キャストは6人と少人数で、若手では松本さんと増田有華さんが参加していますね。
吉田 2人ともすごく頑張っています。大人のコメディなので難しいと思うのですが、そこを必死で付いてきてますね。
 本当に真面目で一生懸命で、稽古が終わったあとも板垣さんがワークショップ的なことをされていたり、芝居の基礎を教えてもらっているなと。
吉田 板垣さんの愛をものすごく感じますね。
──青木さやかさんと松尾伴内さんは、コメディには強い方たちです。
 お二人とも楽しくて、出ていらっしゃるシーンをいつも笑いながら拝見しています。私も絡む場面があるのですが、毎回変えてこられるのでリアルに笑ってしまって(笑)。ステファニーとしてはイラッとしなくてはいけない場面なのに、困ったなと(笑)。
──笑いのシーンは、受ける難しさもありそうですね。
 でも受け身すぎると会話が成立しないので。飛んでくることをにしっかり反応しないといけないかなぁと。
吉田 この台詞をどう受けてどう返すかという、言葉のキャッチボールをちゃんとするのがストレートプレイの基本ですからね。 
 私は今回が初のストレートプレイなのですが、会話の1つ1つへ細かく丁寧に反応することが大事だなと、そこをちゃんとやらないとストーリーが流れていってしまうというのがよくわかりました。
──ストレートプレイへの初挑戦で、またフィールドを広げていくことになりますね。
 というより、これまでもミュージカルや朗読で演じてきたお芝居の世界を、さらに掘り下げていってる感じがします。今まではあまり意識せずに演じていたものを、丁寧に細かく自覚しながらやっている感じです。
──宝塚を退団して9年ですね。退団直後だったらこのステファニー役は難しかったですか?
 全然できなかったと思います。今も全然出来てないんですけど(笑)。台詞を覚えて、立ち位置を覚えることは簡単なんです。ここで振り向いてとか。でもそれではまったく面白くないんです。そんな記号的なことをやってもただ説明しているだけでしかなくて。板垣さんがいつもおっしゃっているのは、台詞じゃないところで何を感じさせるかということで、そこが一番難しいところなんですが。でもこれを乗り超えたら何か1つ掴めるのだろうなと思っています。
──板垣さんはロジカルに演出をつける方だそうですね。 
吉田 よくスポーツに例えてくださるんですが、僕はバスケットボールをやっていましたから、とてもわかりやすいですね。フォーメーションを大事にするとか、出来ないやつがいたら出来るまで付き合うとか、そういう意味では映像より舞台のほうがスポーツに近いですから。 
 そう思います。とにかくすごく丁寧に演出してくださるんです。それだけコメディというのは難しいのだろうなと思います。

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正直に生きたら良いことあるよ!
というハッピーな物語

──お二人は初共演ですが、稽古の中で感じたお互いについては?
吉田 仕事の話で言えば、この公演でストレートプレイに初めて取り組んでいらっしゃる。そしてこの方向もやっていきたいという思いがあることで、すごく真摯に、それは皆さんそうなんですが、一生懸命に取り組んでいらっしゃる。その姿がとても愛おしいですね。この作品は相手役に対してそういうふうに思う気持ちが大事なのですが、そう思わせてくれます。一緒に良い作品にしていきたいし、この作品がまた次に繋がっていくことがお互いに一番いいことなので。
 栄作さんはとにかくかっこいいです! 本当にそれ以外の言葉が見つからないんですけど。でも先日親睦会があって、お酒を召し上がられて、意外な面も見られて(笑)、それも含めて素敵だなと。なんといっても誰もが憧れる方で、その方の相手役でいつも側にいられる、それはやっぱり楽しいし、嬉しいです(笑)。とにかくこの作品を引っ張っていってくださる存在で、この作品の中で自由に存在していらっしゃる。一緒に出ている場面はもちろん、他のかたとの場面でも、「なるほどなあ」と思いながら拝見していて、コメディの勉強もお芝居そのものも学ぶことばかりです。
──吉田さんは、明るい役も陰のある役も、二枚目もコメディも出来て、作品の幅も広いですね。
 だからすごく安心なんです。栄作さんに寄り添っていれば間違いないという安心感があって、1人でなんとかしなきゃという感覚がまったくないんです。
吉田 そういうふうに思っていただけるのが一番嬉しいですね。共演の方に安心してやっていただけるということが、僕のやるべき仕事だと思いますから。
──舞台も数多く出ていらっしゃいますが、映像の仕事にフィードバックするものは?
吉田 舞台はやり直しがきかないということで、すごく芝居の筋肉が鍛えられるんです。僕は映像から出てきて、今も基本では映像の人間だと思っていますが、そこに帰ったときに、舞台で学んだことが大きく反映されているのを実感しますから。
 舞台での経験が具体的に役に立つということですか?
吉田 そう。例えば打てなかった球が打てるようになるとか、ピッチャーだったら球種が増えていくとか、登山で言えば見たことのない景色を見られたとか。新しい役柄や台本に出会ったとき、解釈や表現の仕方が広がるのを自分でも感じるので、やはり舞台を続けることは、僕にとって大事だなと思っています。
──そんなお二人が演じる『カクタス・フラワー』について、改めてメッセージをいただければ。
 お客様に絶対にクスクス笑っていただける作品です。でも笑いだけでなく、観ている方の人生で共感できるところも多いと思いますし、最後は、正直に生きたら良いことあるよ!みたいな、背中を押してもらえるようなハッピーなお話です。
吉田 観にきてくださるお客様も、それぞれ色々な人生を抱えていらっしゃって、その大事な時間を劇場に来ていただくわけですから、とにかく楽しんで笑っていただいて、最後はほっこりした気持ちで帰っていただけたら。東京公演だけでも37回ありますから、毎日どんどん深まっていくと思います。その成長とか進化もぜひ観ていただければ嬉しいですね。

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■プロフィール
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みずなつき○千葉県出身。1993年宝塚歌劇団入団、2007年雪組男役トップスターに就任。2010年退団後は、舞台を中心に活動中。主な出演舞台は、『屋根の上のヴァイオリン弾き』、『新版 義経千本桜』、ブロードウェイミュージカル『シカゴ』宝塚 OG バージョン、
ミュージカル『アルジャーノンに花束を』、リーディング『パンク・シャンソン〜エディット・ピアフの生涯〜』、ミュージカル『キス・ミー・ケイト』、『ラストダンスーブエノスアイレスで。聖女と呼ばれた悪女 エビータの物語』、DRAMATIC SUPER DANCE THEATER FLAMENCO 『マクベス〜眠りを殺した男〜』、夢幻朗読劇『一月物語』など。

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よしだえいさく○神奈川県出身。1988年、東映映画『ガラスの中の少女』でスクリーンデビュー。以降、TV ドラマ『もう誰も愛さない』では、ジェットコースタードラマとして話題に。また音楽活動でも、シングル 17 枚、アルバム 8 枚をリリース。毎年夏に音楽ライブも展開、2009  年にはメジャー音楽活動も再開した。最近の出演作は、舞台『私はだれでしょう』、『これはあなたのもの1943−ウクライナ』、『ローマの休日』、映画『グッバイエレジー』、『花戦さ』『響 -HIBIKI-』、ドラマはNHK 土曜ドラマ『忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜』、TBS『LEADERS供戮覆鼻 

【舞台フォトレビュー】 
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〈公演情報〉
WEB用
 
シーエイティプロデュース
『カクタス・フラワー』
作◇エイブ・バロウズ
上演台本・演出◇板垣恭一 
音楽◇和田俊輔
出演◇水夏希・吉田栄作/増田有華・松本幸大(宇宙Six/ジャニーズJr.)
/松尾伴内・青木さやか
●11/10〜12/8◎DDD青山クロスシアター
●12/11◎サンケイホールブリーゼ
●12/13◎静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール
〈料金〉8,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉atlas 03-6279-0545(平日12:00〜18:00)  


 

【構成・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃 舞台写真提供/シーエイティープロデュース】



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舞台『刀使ノ巫女』で学長役を演じる2人! 美羽あさひ&大湖せしる インタビュー

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今年6月までTV放送され話題を呼んだオリジナルアニメーション『刀使ノ巫女』(監督:柿本広大、シリーズ構成:盒粁玉蕁▲ャラクター原案:しずまよしのり)。その初の舞台化となるAiiA presents' 舞台『刀使ノ巫女』が、11月10日〜14日天王洲 銀河劇場で上演される。
「女子中高生×日本刀」をコンセプトに刀使(とじ)と呼ばれる女子生徒たちと、異形の存在「荒魂」との戦いを描いた作品で、刀使を演じるSKE48メンバーらが、歌あり、ダンスあり、バトルアクションありの舞台に挑む。
 
その舞台で、彼女たちが通う中高一貫校、美濃関学院と鎌府女学院の学長をそれぞれ演じるのが、元宝塚歌劇団宙組で娘役として活躍した美羽あさひと、元宝塚歌劇団雪組で男役から娘役に転向し、2倍の宝塚人生を送った大湖せしる。宝塚退団後、結婚、出産を経てこの舞台が3年ぶりの舞台復帰になる美羽と、宝塚退団後、「2.5次元」の舞台などで大きな存在感を示して活躍中の大湖が、共に取り組む舞台『刀使ノ巫女』への想いや、SKE48メンバーのこと、更に宝塚時代からのお互いの縁などを語り合ってくれた。
 
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 美羽あさひ 大湖せしる 

観始めたら止まらなくなった
原作アニメの魅力 

──作品に感じている印象から教えてください。
美羽 私はアニメを資料としていただいたのが最初だったのですが、観始めたら止まらなくて!子供たちが寝静まった後も、寝る間も惜しんで観続けてしまったほどでした。次の展開が気になって、気になって(笑)。そういう作品に出られるのがとても嬉しいです。私は宝塚時代に『逆転裁判』に出演しているのですが、その時の役柄は舞台のオリジナルキャラクターだったので。
大湖 あー!そうだったんですね!
美羽 そうなのよ!だからアニメのキャラクターを演じることが初めてなので、とても嬉しくて。また作品自体に楽しいだけではない、とても深いところもあるので、面白い舞台になれば良いなと思っています。
大湖 私もお話をいただいて初めて作品に接したのですが、最初「刀使=とじ」という言葉が聞き慣れないものだったので「えっ?『刀使ノ巫女=とじのみこ?』、すみません、もう1回お願いします」と言ったくらいだったんです(笑)。でもまさみさん(美羽の愛称)と同じで、アニメを観始めたらのめり込んでしまって、今回の舞台で描かれる12話までを一気に観ました。ファンの人が惹きつけられていく理由がよくわかる、とても面白い作品だと感じました。
──その中で演じる役柄については?
美羽 私は美濃関学院の学長、羽島江麻(はしまえま)を演じます。かつて「刀使」として戦っていたのですが、キャラクター的には皆に慕われている生徒のお母さん的な存在です。ふわっとした魅力のある人ですね。でも芯の強い女性ですし、主人公の衛藤可奈美の母・衛藤(旧姓:藤原)美奈都とは学生時代に同級生で、共に戦った様々な所縁があり、その想いの中で可奈美を助けたりするんです。今回の舞台の中ではそこまで深い関わりは描かれていないのですが、自分の中では原作にある役柄のバックボーンをきちんとつなげて、表現していけたら良いなと思っています。
大湖 私は鎌府女学院の学長、高津雪那(たかつゆきな)をさせていただきます。常に怒っていて、怒鳴っている、イメージ的にはキツい人なんですけれども、何故そういう態度になっているかと言えば、彼女の中で夢、希望、欲望、野望が様々にあるからこそ、そういう表現になっているので、ただ怖いだけではなく愛情の深いところを出していたけら良いなと思っています。
──では、お二人は先生同士ではありつつ、全く違うキャラクターなんですね。
美羽 全然違いますね。
大湖 真反対と言いますか、むしろ似ているところってあるのかな?というくらいです。
美羽 ですから、それぞれの個性を出してアクセントになっていけたら良いなと思っています。

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キャラクターを大切にしつつ、
生身の人間が演じるからこその魅力を 

──先ほど美羽さんからはキャラクターを演じるのが初めてというお話がありましたが、逆に大湖さんはキャラクターものを演じる機会が大変豊富ですね。
大湖 そうなんです。宝塚時代にも『ルパン三世』『るろうに剣心』がありましたし、宝塚を出てからの舞台でもたくさん演じさせていただいています。やはりキャラクターものはまずアニメをしっかりと観て、声優さんの口調の特徴なども把握して取り入れていきますが、一方で真似るだけでは人形のようになってしまいますので、それだけではいけないと私は思っていて。やはり舞台で生身の人間が演じ、生身の人間のお客様に観て頂く訳ですから、心に響かないと意味がないので、キャラクターに寄せつつ、私が演じるならではの見せ方もプラスしていけたら、面白さも出せるかなと思っています。
美羽 私はその作業がはじめてになりますが、やはり生身の人間だからこその繊細な動きというものができると思うので、アニメよりもよりリアルにその人物を演じられるのではないかな?と思っていて。もちろんキャラクターの動きの個性などは踏襲していきますが、アニメ以上に深い表現をしていけたらと思っています。
──舞台版としての見どころはどこだと思いますか?
美羽 やはり歌あり踊りありという、その点ですね! アニメのキャラクターは歌い踊ってはいないので、そこが舞台ならではの醍醐味かなと。
──お二人にも歌うシーンもあると伺っていますが。
美羽 はい、歌わせていただきます!
大湖 そちらも楽しみにしていていただきたいです。
美羽 あとはやはり殺陣にも迫力がありますし、観ていてワクワクするような感じに仕上がっていると思います。
大湖 おっしゃる通りです!ただストーリーを追うだけではなくて、皆がそこに色付けしていく作業をしているので、アニメファンの方の中にはひょっとしたらキャラクターが歌ったり、踊ったりすることに戸惑われる方もいらっしゃるかも知れませんが、是非そこが舞台の良さだということが伝わるように表現していきたいと思います。

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女子ばかりの稽古場で
蘇る宝塚時代

──SKE48の方達との共演で楽しみにしていることは?
美羽 まだあまり話せていないんです!
大湖 私もやっと、役柄としてではなくフランクに「おはよう!」と言えたかな?くらいなんですが(笑)、まさみさん直接絡みがあるのは?
美羽 柳瀬舞衣役の北川愛乃ちゃんが一番お芝居で絡んでいるのですが、まだ出身地を聞いたくらいです(笑)。
大湖 お互いまだまだですね!(笑)
美羽 でも私達も女子の中で育っているので、SKE48の方達が女子の中で切磋琢磨している空気感がとても懐かしいです。宝塚を思い出しますね。彼女たちも本当に頑張っているなと微笑ましいです。
大湖 私が一番絡むのは、糸見沙耶香役の竹内彩姫ちゃんなんですが、彼女も含めてアイドルの皆が、まるでお人形さんみたいに可愛いので、その子に向かってガンガン言っているのが申し訳ないような気持ちになります(笑)。私は女の子ばっかりの稽古場が逆にとても久しぶりで。
──大湖さんが紅一点という時もありましたね。
大湖 そうなんですよ!男性がほとんどという舞台に出させていただくことが多かったので、「あ、女子ばかりの稽古場!そうだ、こんな感じだった!」と思い出してきているところです(笑)。宝塚とどこか共通したような、もちろん細かくは違うのでしょうが、良い意味の上下関係も感じるので。
美羽 そう、それはすごく感じるから、これから交流がどんどん深まっていくと思うので、その点も楽しみにしています。
──お互いの魅力についてはどう感じていますか?宝塚時代は組も違っていたので、あまり交流は多くなかった?
美羽 ほとんどなかったと言っていいくらいなんです!もちろん舞台は観ていましたけれど、組が違うと本当になかなか会うことがないので。
大湖 もちろん舞台はめちゃくちゃ拝見していましたけれど、プライベートで話すという機会はなかったんです。私が88期でまさみさんが85期ですが、先に退団されたこともあって、男役時代の私しかご存知なかったんですよね?
美羽 「いつの間にか娘役になっていた!」と(笑)驚いたくらいでした。でも実は宝塚の受験スクールが一緒だったんだよね?
大湖 そうなんです!10代の頃に会っているんです!その頃から私にとっては雲の上の存在の方でしたし、まさみさんについては、「良い人」という話以外に聞いたことがない!というくらいでしたから、今回キャストが発表になった時に、「美羽あさひ」というお名前があったのを見た瞬間、勝手に「良かった!」と思いました。
美羽 まさかあの受験スクールからこれだけ年月が経って共演するとは!という嬉しい驚きがあったし、私もせしるのことは同期から「とっても良い子だよ」と聞いていたので、その人が今回一緒にいてくれるのは本当に心強いなと。特に私は久しぶりの舞台だから、本読みの時から「これどうしたら良いの?」ってすべて教えてもらって(笑)。いてくれてよかった!という安心感があります。 
大湖 ありがとうございます!私こそです。カンパニーの年齢層が離れているのもあるので、やはり1人だったらちょっと心細かったと思います。
美羽 私も!  だから本当に助かるし、宝塚の人って現役時代に全く接点がなかったとしても、「宝塚出身」という共通項があるだけで、会ってすぐに仲良くなれるのよね。
大湖 そうなんです!それは不思議なくらい!
美羽 やっぱり同じ場所で同じ経験をしているからね。私は舞台は3年ぶりで、何もかもがドキドキだったので、本当にホッとしてます。

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──舞台復帰について、ご家族が背中を押してくださったそうですね。
美羽 そうなんです!家族の協力なしにはできないので、今も大きな負担をかけていますが、でもやると決めたからには、きちんと集中して舞台を務めないと、共演者の方々やスタッフの皆さんお客様はもちろん、協力してくれている家族にも申し訳ないので、きちんと切り替えて頑張りたいと思います。
大湖 舞台に帰ってきてくださって嬉しいですよ!
美羽 ありがとう!よろしくね!
──色々な意味で期待が膨らみますが、では舞台を楽しみにしている皆様に意気込みとメッセージをお願いします。
美羽 楽しい、明るいだけではなく、仲間の大切さだったり、人間の愚かさなど深いところも含んでいる作品です。観終わって「あぁ楽しかった!また観たい!」と思っていただけるのと同時に、心に残るものが届いたら良いなと思っています。
大湖 「2.5次元」となると、「この漫画知らないし」と躊躇してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは原作をご存知なくても全く大丈夫ですので、是非気楽に観に来ていただけたらいいなと思います。キャラクターを観ていただけるのと同時に、生身の人間が演じるからこその魅力を伝えていけるように頑張りますので、まさみさんがおっしゃったように観終わってお客様の心に何かが残せるように、役作りを頑張っていきますので、是非劇場にいらしてください!

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■プロフィール
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みわあさひ〇広島県出身。99年宝塚歌劇団に入団。同年宙組に配属後、入団2年目の00年でベルリン公演に選抜され、同年『望郷は海を越えて』で新人公演初ヒロイン。以後次々と重要な役柄を務めて活躍。 08年『黎明の風/Passion愛の旅』のショーでは休演したトップ娘役の場面をつとめた。09年『薔薇に降る雨/Amour それは…』で退団。10年『CLUB SEVEN 6th stage!』で女優デビュー、玉野和紀演出・振付作品、音楽座ミュージカル等で活躍。結婚、出産を経て、3年振りに舞台復帰。

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だいごせしる○兵庫県出身。02年宝塚歌劇団に入団。同年雪組に配属、期待の男役として活躍。08年『マリポーサの花』新人公演で初主演。11年『ロミオとジュリエット』の「愛」役のあと娘役に転向。13年『春雷』で初ヒロイン。15年『ルパン三世』の峰不二子役は当たり役となる。16年『るろうに剣心』で退団。『グレート・ギャツビー』のジョーダン役を皮切りに、女優として多彩に活躍中。近年の主な舞台にA NEW MUSICAL『クロスハート』、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」〜暁の調べ〜、斬劇『戦国BASARA』第六天魔王、舞台『ジョーカー・ゲームII』などがある。

〈公演情報〉
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AiiA presents' 舞台『刀使ノ巫女』
原作◇「刀使ノ巫女」
脚本・演出◇赤澤ムック  
音楽◇ 楠瀬拓哉&月蝕會議    
振付◇U★G
出演◇斉藤真木子(SKE48) 谷真理佳(SKE48) 北川愛乃(SKE48) 竹内彩姫(SKE48) 桑江咲菜 長谷川里桃/
北川綾巴(SKE48) 谷口莉緒 門田奈菜 愛わなび 百音/
春川芽生 美羽あさひ 大湖せしる/
陰山泰
●11/10〜14◎天王洲 銀河劇場
〈料金〉8,800円(前売・当日共/全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉 サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
〈公式Twitter〉@toji_stage
 
(C)伍箇伝計画/刀使ノ巫女製作委員会 
(C)舞台『刀使ノ巫女』



【取材・文/橘涼香 撮影/山崎伸康】



チケット半額セール実施中


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舞台『刀使ノ巫女』で刀使の少女役に熱く取り組む! SKE48 北川愛乃&竹内彩姫インタビュー

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今年6月までTV放送され話題を呼んだオリジナルアニメーション『刀使ノ巫女』(監督:柿本広大、シリーズ構成:盒粁玉蕁▲ャラクター原案:しずまよしのり)。その初の舞台化となるAiiA presents' 舞台『刀使ノ巫女』が、11月10日〜14日天王洲 銀河劇場で上演される。
 
「女子中高生×日本刀」をコンセプトに刀使(とじ)と呼ばれる女子生徒たちと、異形の存在「荒魂」との戦いを描いた歌あり、バトルアクションありの作品で、刀使の少女たちを「SKE48 Passion For You〜愛と情熱は世界を救う〜」の連動企画として、リクエストランキングの上位になったSKE48メンバー5人が演じ、宝塚歌劇団OGの美羽あさひ、大湖せしるが共演することでも話題となっている。
 
そんな舞台で、主人公・衛藤可奈美の親友・柳瀬舞衣(やなせまい)を演じる北川愛乃。そして任務に忠実でありつつ、他者とのコミュニケーションを苦手とする糸見沙耶香(いとみさやか)役を演じる竹内彩姫。2人が公演への意気込み、また互いの魅力を語り合ってくれた。


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北川愛乃 竹内彩姫

魅力的なアニメから生まれた
カッコ良い舞台

──作品に感じている魅力から教えてください。
竹内 私は歴史がとても好きで、小さい頃から歴史に関する本はたくさん読んできたんです。ですから自分が実際に日本刀を持って演技をできるなんて!と感動しましたし、このタイミングで日本刀に関わることができてとても嬉しいです。またこの舞台には、ファンの方に投票で選んでいただいて出演できるようになったので、ファンの方への感謝の気持ちを持って頑張っていきたいです。
北川 私は元々アニメが好きで可愛い女の子が出てくるお話も大好きなんです。このアニメを観て、そんな可愛い女の子がカッコ良く戦う姿に魅了されて、夢を与えてもらえたし、ときめきも感じたので、舞台に出させていただけるのが嬉しいです。私が感じたようなときめきを舞台からお届けできたら良いなと思っています。彩姫さんもおっしゃったように、皆さんに選んでいただいてこの舞台に立てることになったので、私自身にとっては3回目の舞台なのですが、これまで以上に気合いが入っています。
──演じるキャラクターについてはどうですか?
北川 私は柳瀬舞衣役を演じさせていただくのですが、物語の中で癒し系の存在だと思うので、台詞を言う時もちょっとゆっくり話すなどして、可愛さを大切に演じていきたいなと思っています。物語が進むにつれて、舞衣ちゃんも成長していくのが台本からも感じられるので、その部分も大切にしていきたいです。
竹内 糸見沙耶香役を演じさせていただきますが、沙耶香ちゃんは身長も私と同じくらいで、血液型も一緒なので、結構同じ部分もあるのではないかと思っていたのですが、より深く性格を知っていくと、自分を出さない子なんですね。高津学長からの任務をとても忠実にこなす子で。大人数でワイワイするのが好きな私と、学長としか行動しない沙耶香ちゃんとは、かなりの部分で真逆だなと。そういう沙耶香ちゃんを演じることで、私の新しい面を見ていただけるのではないかと思います。それから私はこのお仕事の中でショートヘアにしたことがないし、髪を染めたこともなかったのですが、今回の役は白髪にショートヘアなので、普段の私とは違った見た目のギャップも楽しんでいただけたらいいなと思います。
 
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両親に「最初はわからなかった」
と言われて(笑)

──お二人の役柄は交流がありますね。
竹内 はい、あります。沙耶香ちゃんは学長以外にはあまり心を開いていなかったのですが、舞衣ちゃんと出会ったことによって変わっていく。舞衣ちゃんによって自分を出せるようになっていくので。実生活では私が先輩なのですが、この舞台では後輩を演じるので、役に成りきらないと!と思っています。「先輩!」って呼びかけるのがね (笑)。
北川 そうなんです! SKE48では彩姫さんが先輩の6期生で、私は8期生なのですが、入った年数で言うと5年以上離れているんです。しかも私は人見知りでガツガツ行けないタイプなので、いつも彩姫さんに引っ張っていただいているんです。普段と役の関係性が全く真逆なので難しい部分もあるのですが、ご飯に連れていってくださったり、私がやりやすいように彩姫さんが気遣ってくださるので、演技もしやすくなっています。
──ではお互いに新鮮な感覚も?
竹内 そうですね。この舞台に一緒に選ばれたからこそ、これまでよりもずっと話すようになりました。SKE48は大所帯なので、今までは仲間の中の1人でしたが、この舞台に出ることでとても親しい間柄になれたのは、投票してくれたファンの方のおかげでもあるなぁと感謝しています。
──キャラクタービジュアルの写真もとても素敵ですね。
竹内 自分では「これが私」とわかっているので、「ヘアメイクでこんなに変わるんだな」と思いながら見ていたのですが、家族はどれが私かわからなかったみたいで!(笑)「娘だよ!?」ってツッコんだんですけど(笑)。両親は「最初はわからなかった」と言っていて、祖父に至っては「本当にいるのか?」と(爆笑)。そうしたら握手会でファンの方からも、「ゴメン!ずっと推してきたけど、どれだかわからなかった」と言われて、「そんなことある?」と思って(笑)。でもそのくらい違う一面を引き出してもらえたのは、ヘアメイクや美術の方の技術の賜物で、その凄さに驚きました。
北川 私はアニメを観ていて、舞衣ちゃんのことを本当に可愛いなと思っていたので、本当に私にできるのかな?と不安が大きかったのですが、メイクさんが髪の毛1本にまで拘って表現してくださったので、とても嬉しかったです。出来上がったものを見て、少しは舞衣ちゃんに近づけたかなと思いました。

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演技面やプロ意識の高さに
刺激を受ける稽古場

──殺陣のお稽古はいかがですか?
竹内 私達は普段でも歌ったり踊ったりはしているのですが、殺陣となると使う筋肉が違うようで、いつもとは別のところが筋肉痛になっています。でもこの経験は今後にもつながると思いますし、歴史好きとしては出てくる名前だけでも楽しいので(笑)、もしこの作品をご存知なくても歴史が好きな人だったら観ていて楽しいと思います。
北川 殺陣のお稽古はまだ数少ないのですが、さっきもキャストの方に見せ方を教えていただいて、やはりカッコよさが全然違うなと。この舞台は殺陣がとても重要ですから、ひとつひとつの所作がカッコ良く見えるように研究していきたいです。
──アイドルとしてのライブ活動と、役を演じる舞台作品の魅力の違いはいかがですか?
竹内 違う仲間ができた感じです。普段SKE48のライブでは引っ張っていく立場なのですが、この舞台では演技の先輩の方がたくさんいらっしゃるので、その中に入れていただけたのも光栄ですし、これだけで終わるのがもったいないと思うくらい素敵な方達ばかりなので、お互いの仲を深めていきたいです。
北川 私も普段はSKE48としての活動をしているので、こういう舞台に出演させていただくことで、演技面でもすごく勉強になりますし、休憩時間もずっと自主練されている方達がたくさんいらして、プロ意識の高さからも学ぶものがたくさんあります。彩姫さんもおっしゃったように、折角この舞台に出演させていただくので、この機会に人見知りを克服して、色々な方と関わっていきたいです。
──学長役との絡みも多いということですが、元宝塚の美羽あさひさん、大湖せしるさんとの共演はいかがですか?
竹内 私は演技経験がまだとても浅いので、プロフェッショナルな「元宝塚の方」と伺っただけで背筋が伸びる思いでしたから、そんな方と一番関わりの多い役ということで、「どうしよう!」と最初はとても緊張しました。でもお会いしたらとっても優しくて、沙耶香は厳しくされて育つという役なのですが、演技が終わった途端にせしるさんが「ごめんね、怖かった?」と声をかけてくださって、「なんて良い方なんだろう」と。優しさに溢れた方々なので、今ではこちらからもお話にいけるようになって、とっても嬉しいですし光栄です。
北川 お稽古がまだ浅い状態で、私は台詞も入っていないし、役もつかめていない段階なのに、既にお二人は完璧で!本当にすごいなと思います。


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殺陣とお芝居はもちろん
歌ありダンスありの親しみやすい舞台

──お互いの普段の関係性はどんなものですか?
竹内 はじめに彼女がSKE48に入ってきた頃は、髪が長いなという印象でした。「先輩、先輩」とくるタイプではなかったので、関わることはそれほど多くなかったのですが「真面目な子」というのは、メンバーからもファンの方からもずっと聞いていました。そのイメージをずっと持っていたんですが、こうして同じ作品でお稽古したり、ご飯にいったりしていたら、実際はすごくポンコツで(爆笑)。有り得ないようなことをするんです!バッと見ただけで熱いってわかりきっているものを、無防備に触って「熱い!」って騒いだりとか(笑)。真面目、真面目と聞いていたので、全てにおいてしっかりしているイメージだったんですが、こんなに天然な子だったのか!という驚きがあって可愛いです。きっとこの天然な部分がファンの方にも愛されているんだと思いますし、この舞台を通してまた違う一面が見えてくるんじゃないかと楽しみです。
北川 私がSKE48に入って間もない時に、初めてのラジオの収録があって。名古屋から岐阜県まで行かないといけなくて、道中も長かったしとても緊張していたのですが、彩姫さんが緊張をほぐしてくださって。
竹内 ラジオでは伝えられないので、ちゃんと仲良くならないと楽しさを伝えられないなと思ったので、コミュニケーションを取らなきゃ!と必死だったんですが、それにちゃんと応えてくれる子だったし、仕事の面でもやりやすいなとすごく思いました。
北川 私は、ラジオでは伝わらないということが当時はわからなかったので、教えていただけたのがありがたかったです。それは今も変わらなくて、本当に色々なことを教えてくださる親しみやすい先輩です。
竹内 私は同期生の中では最年少で、後輩たちと年齢が近いんです。憧れの先輩がいることもとても良いことだと思いますが、後輩が友達感覚で接することができる先輩も必要かなと思っていて、自分がそういうポジションになれたらと思っているので、親しみやすいと言ってもらえるのはとても嬉しいです。

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──お二人が良い関係でこの舞台を創っていくのを楽しみにしています。では改めて舞台『刀使ノ巫女』を楽しみにしているお客様にメッセージをお願いします。
竹内 SKE48のファンの方には普段とは全く違う私達を観て頂けると思います。同時に、殺陣とお芝居はもちろんですが、歌ありダンスありの舞台なので、普段私達のライブを観てくださっている方には、親しみやすい舞台になっていると思います。原作ファンの方達がどう観てくださるかという不安もありますが、その方達にも楽しんでいただけるよう私達も必死で頑張りますので、是非劇場にいらしてください!
北川 アニメを元々知ってくださっている方はもちろん、舞台を観て初めて『刀使ノ巫女』を知ってくださる方にも、この作品を好きになって欲しいです。私達の舞台がこの作品の入り口になってくれたら嬉しいですし、そうして輪が広がっていって、今回の舞台だけではなくて、続編の舞台もできるようになったら良いなと思っています。
竹内 今は共演者の方々に圧倒される日々ですが、その状況も楽しめるように努力していきます!劇場でお待ちしています!

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北川愛乃 竹内彩姫

きたがわよしの〇大阪府出身。2016年、SKE48の8期生としてお披露目。17年、正規メンバーへの昇格とチームS所属が発表され、活躍を続けている。2018年5月に堤幸彦演出の舞台、劇団れなっち公演『ロミオとジュリエット』で「ばあや役」を演じた。

たけうちさき〇愛知県出身。2013年、SKE48の6期生として活動開始。15年チームKIIに昇格。16年「金の愛、銀の愛」でSKE48のシングル曲で、初の選抜メンバーとなるなど、躍進を続けている。

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原作◇「刀使ノ巫女」
脚本・演出◇赤澤ムック  
音楽◇ 楠瀬拓哉&月蝕會議    
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出演◇斉藤真木子(SKE48) 谷真理佳(SKE48) 北川愛乃(SKE48) 竹内彩姫(SKE48) 桑江咲菜 長谷川里桃/
北川綾巴(SKE48) 谷口莉緒 門田奈菜 愛わなび 百音/
春川芽生 美羽あさひ 大湖せしる/
陰山泰
●11/10〜14◎天王洲 銀河劇場
〈料金〉8,800円(前売・当日共/全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉 サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
〈公式Twitter〉@toji_stage
 
(C)伍箇伝計画/刀使ノ巫女製作委員会 
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ミュージカル『深夜食堂』に集う個性的な人々を演じる!  壮一帆、愛加あゆ、藤重政孝、田村良太 座談会

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国境を超えて世界中で愛され、第39回日本漫画家協会賞大賞を受賞した安倍夜郎の『深夜食堂』。ドラマ、映画も大ヒットを記録したこの人気作品がミュージカルとなって、新宿シアターサンモールで10月26日にいよいよ開幕する(11月11日まで)。

脚本は第2回「韓国ミュージカル・アワーズ」で脚本賞を受賞したジョン・ヨンが担当。作曲は、日本でも話題となった『キム・ジョンウク探し( 『Finding Mr.DESTINY)』『オー!あなたが眠っている間に』など韓国ヒット作の常連となっているキム・ヘソンが担当。演出は煌びやかさと人間模様の細やかさを描き分ける荻田浩一が手がけている。 
 
深夜0時、看板もないその食堂は静かに店を開ける。メニューは豚汁定食だけだが、勝手に注文すれば出来るものは出してくれる。タネも仕掛けもないそんなマスターの素朴な料理を求めて、「めしや(深夜食堂)」に訪れる常連客たちを演じる壮一帆、愛加あゆ、藤重政孝、田村良太が、それぞれの役柄のこと、作品に感じる魅力などを、和気藹々と語り合ってくれた。

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藤重政孝 田村良太 愛加あゆ 壮一帆 

個性豊かな『深夜食堂』の
常連客たち

──絶賛お稽古中!という皆様ですが、まずそれぞれの役どころをお話しいただけますか?
 じゃあ、はい(藤重にどうぞと促す)。
藤重 いえいえ、((田村に)まず、先輩お願いします。
田村 何で先輩なんすか!(笑)僕は『深夜食堂』の常連客で、小寿々というゲイバーのママなんですけど。原作では初老の方で一番年上です。マスターとも色々話しますし、(藤重演じる)忠という、やはり常連客とも仲が良いというか何というか(笑)。
 一見仲が悪そうなんだけど。
田村 憎まれ口を叩き合うような、同じ常連としてきっと嫌いではないんだろうなという感じなんですけど。原作の設定が40代後半で、漫画や、映画、ドラマではもっと上の年代に描かれていて。ゲイ役はやった事があるんですけど、初老の役は初めてで、そこが今一番苦戦をしているところです。オギーさん(荻田浩一)の指導の下、どうやって年上の落ち着きを出すかを色々考えていて。例えば、声帯を閉じて喋ると、やっぱりそれは「若さの象徴」になる。訓練を積んだ喉みたいになってしまうので、声帯をあまり締めないように、息を多めにして話したりしています。
 ええっ?凄い!
田村 いえいえ(笑)。そういうところからアプローチしたらどうかということで、話すテンポを緩めて間(ま)を多くとったり、ひと言で文章を言い切らないで途中で切って喋る等で、年齢を演出しようかと。
藤重 考えてるねえ。
田村 いや、考えたの俺じゃないんですよ、オギーさんの指導です(笑)。ただ抜け道もあって、ゲイバーを28年間やってるんですけど、途中から受け持ったという事にもできますし、色々模索しながらやっている最中です。小寿々という役は、初老という設定ですが、メンタル的には高校生みたいにピュアなところがあったりして、特に恋愛面はそうで、そこには過去のトラウマみたいなものも入ってきているので、結構深みのある役ですから、自分では楽しんでやっています。
 (小寿々は)この作品のヒロインだよね。
愛加 そう思います。
田村 あー、そう言われればヒロインかも知れないですね。初老のゲイバーのママがヒロイン。
藤重 一番女性っぽい気がする。
田村 そうですね、それは確かに。
 唯一純粋な恋愛をしてますもん。(藤重に)しげさん、最後がいいですか?
田村 凄くもったいぶりますね(笑)。
藤重 もったいぶってない!ただ、みんな凄く色々考えてるんだなってひしひしと伝わったから。俺は今考えてます!(笑)
 (愛加を示して)じゃあ私たちは二人セットで(笑)。
藤重 えっ?セットってあり!?(笑)
愛加 セットです(笑)。
 「お茶漬けシスターズ」の梅と。
愛加 明太子と申します。
 もう一人、谷口ゆうなちゃんの鮭がいて、三人でいつも一緒に『深夜食堂』に来てお茶漬けを注文するんですが、お茶漬けを頼むことは一緒でも、それぞれに好みの具が違うのと同じように、理想の男性を待っているという共通点はありながらも、三人それぞれ性格も恋愛観も全く違います。私は一番ファンタジックな、理想の男性を求めている、夢見る夢子ちゃんで。
愛加 私が一番現実主義と言いつつ、でも実は凄く理想が高い、ちょっと厄介なところのある女性ですね(笑)。でもいつもワイワイしながら、マスターになんやかや言いながら、友情を確かめ合っているような仲です。
──そうすると「お茶漬けシスターズ」が登場すると賑やかに。
愛加 そうですね、かなり賑やかナンバーが多いと思います。
──宝塚ではトップコンビだったお二人が、こうして並んでいるだけで嬉しいというところもあるのですが。
藤重 そうですよね、絶対!
 あ、でもそう思って見ると、ビックリしますよ。「え、そんなことしちゃうの?」っていう(笑)。
──女優同士としての共演は、すでに『マリーゴールド』でも初披露されていますが。
 それともまた、180度違うんです。
愛加 真逆ですよね!(藤重に)じゃ、お願いします。
藤重 えっと、では満を持して(笑)。忠という役を今回やらせて頂いているんですが、個人的に言うと、僕は特にドラマのイメージが強く残っていて、現在ものすごく悩んでいます。だからそのイメージを払拭する為にも、今は既存の作品から距離を置いて、俺の忠を追求している最中で。
 俺の忠(笑)。
藤重 そう(笑)。いつもは役柄と自分にどこかしら繋がる部分があって、そこから出来上がっていくのですが、今回自分と忠がとても遠いところにいるので。日々かなり葛藤していますね、探しているというか。ただ、もう今回は、共演者の皆さんが非常に舞台の経験豊かな方々なので、ある意味そこにお任せして、この関係性の中での忠を見つけていければいいのかなと。この人たちの間で忠という人物はどう育って、どう人間として生きていっているんだろうという作り方を今していて、探り探りの稽古ですね。それがいつもとは違った形です。

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必ず何か口ずさんで帰れる
魅力的なメロディーばかり

──舞台全体の中での立ち位置を考えているんですね?
藤重 もちろん普段も考えていないわけではないですけど(笑)、今回は特にそうですね。忠は本当に、完全なるマザコン野郎、マザコンを恥ずかしいと思っていないマザコンなので、そこは究極の愛だなと思っていて。所詮、男なんて女性から生まれてきたものなので、やっぱり母親には勝てない。その大きな愛を見せれたらね、(愛加に)お母さん。
愛加 お母さんをさせて頂きます。
藤重 そうなんですよ。だから、絶対現場では(愛加に)逆らえない(笑)。愛加さんより先に、稽古場に入っていないといけない。
 あ〜、だからいつも早いんだ(笑)。でも、宣伝用の動画を録った時、忠さん滅茶苦茶ハマってらっしゃいましたよ!本当に、失礼ながら最初はスタッフさんかと思った(笑)。
愛加 あの衣裳の着こなし方がハンパではなかったですよね(笑)。みんなでザワザワしました!
田村 凄かったですね。
 どこからどう見ても忠さんだった。
藤重 あそこで完成してた?(笑)
愛加 ハマりすぎていて驚きました(笑)。私服で稽古場にいらしたら「素敵!俳優の藤重さんだ!」ってなるのに(笑)。
藤重 あの日オギーさんに「今回悩んでいて」という話をしてたのに!
一同 ええ〜!?
藤重 衣裳って凄いですね(笑)。でも本当に、日々勉強させてもらっています。皆さんが盗めるところをたくさん持っていらっしゃるので、ちょいちょい盗んでますね。
──様々にメディアミックスが展開されている作品ですが、今回、ミュージカルならではの面白さはどう感じますか?
藤重 それは、田村くんが一番話せるでしょう!
田村 とりあえず先に喋らせようと思っていませんか?(笑)『深夜食堂』はもちろんストレート・プレイでやっても素敵になる作品だとは思うんですが、その場合どうしてもドラマや映画にも近くなる面があるかなと。折角『深夜食堂』を生のステージにあげて、華をプラスしたり、勢いやエネルギーをプラスした時に、一番良い形がミュージカルじゃないかなと自分は思っています。役柄に合わせた曲もあって、ミュージカルになることによって、より役の個性が引き立っているなと。もっと込み入った深い話は先輩方から(笑)。
藤重 いや、でも、おっしゃる通りですね。
田村 もうちょっと何かないんですか?(笑)
 (笑)私はこの間荻田さんとお話ししたんですけど、今回、それぞれの分野で活躍されている方々が、この『深夜食堂』のカンパニーに集結してるんですよ。それがリアルな居酒屋に集まるいわくつきの人々に繋がるんじゃないかなって。だから、最初に筧さんが豚汁を作るところから始まりますが、まさに私達はあの豚汁の「具」なんだなと思って。
愛加 豚汁の具ですか!
田村 凄いね。
 ちょっと上手い事言ってみるとね(笑)。で、この作品は韓国でミュージカル化されたものですから、日本と韓国の国民性の違いみたいなものはどうしてもあるので、今は私たち日本人の役者が、そこをどう滑らかにしていくかという作業をしています。やっぱり、何かしらのテンションというか、気持ちの膨らみがあってそれが歌になるのがミュージカルの醍醐味だと思うんですが、ミュージカル慣れしている私達が、違和感なくやってしまうことでも、例えば芝居一本でやっていらっしゃる方からすれば「何でここで歌う?ここで踊る?」と、ひっかかることがあるかも知れない。そいう異なる感覚を、リアルな居酒屋の店内のような、異種格闘技的な顔ぶれの中で、融合させられたら更に面白い事になるんじゃないかなと思っています。

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愛加 そうですね!あとはシンプルにとても楽しい曲がいっぱいあるんです。色々な食べ物の要素を音楽で表現した曲とか、しっとりした曲、パワフルな曲。それを聞いているだけでも、お客様に楽しんで頂けるのではないかなと。
 メロディーラインが、ちょっと日本の歌謡曲に似てるよね。
藤重 そうそう、濃い。 
──耳馴染みが良いのですね?
 絶対、何かしら口ずさんでお帰りいただけると思います。
藤重 例えば筧さんがここでずっと練習してるじゃないですか。で、その後、自分のナンバーの練習だとしても、筧さんのメロディーが入っちゃっていたり!凄く入ってくる曲なんで。
愛加 あ〜、わかります!
藤重 「あれ、何だっけ俺の曲?」とかそういう感じなんで(笑)、スッと入ってきやすい曲ばかりですね。本当に色々なジャンルの色々なリズムがあって、面白いナンバーが揃っています。
田村 それぞれのキャラにピッタリですよね。

笑いのツボ満載の 
もうひとつの「荻田ワールド」

──先ほどからお話にも出ていますが、今回荻田浩一さんの演出ということで、所謂「荻田ワールド」と呼ばれる、ちょっと耽美だったり、ダークでゴシックな世界観のイメージが強い方ですが、今回の荻田演出はいかがですか?
 (男性陣に)お二人は荻田さんとは?
藤重 僕は初めてです。
田村 僕もです。
藤重 初めてなんですが、僕には凄くわかりやすいです。
愛加 私も壮さんも何度もご一緒させて頂いていますが、荻田さんの作り方って、振付をする前に、役者の心情を確認しながら、まず動線などがギクシャクしないように作ってから振付の方にお渡しするので、演出と振付に齟齬がないんです。だから私達も「ちょっと動きにくいな」ということがなくて。
 円滑ですね。
愛加 それが毎回、荻田さんの作り方でわかりやすいですよね。
藤重 そう、わかりやすい。「何でこっちに俺行くんだっけ?」みたいな感じになると、台詞が出なかったりするんですけど、動きと役の心理があっているから。
──荻田さんはバレエ等にもとても造詣が深いですね。
藤重 なんか目で踊ってない?いつも。曲になると目が急に変わる。
 絶対にお好きですから!
田村 芝居を見ながら、指揮してることもありますよね?
愛加 あります、あります!
 あとは、先ほどおっしゃったように、摩訶不思議でダークな、ドロドロの世界観を表現される事が多いんですけど、私はそうじゃない荻田さんも好きで。意外と、と言ったらなんですけど(笑)面白いんです。笑いのツボが関西出身者らしいの。そっちの荻田さんも凄く好きです。
──では今回の作品ではその方向性が。
 遺憾なく発揮されています!
田村 僕は凄く繊細だなという印象を受けました。相手の感情とか、役者のやりたいことに対しても演出の方向性が繊細です。特に小寿々役は繊細なシーンが多いんですけど、そういうところに関しても、細やかで強引に引っ張っていくことはしません。例えば、感情が乗らなかったら音楽を伸ばしたりなどのやり方も考えてくれて。だから結構、明るくてドタバタしてるシーンも多いんですけど、お客様がグサッと胸にくるようなシーンも、いくつもある作品になると思います。
 
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「見せ方」と「自然体」、
良いところを盗み合う

──今お稽古を進められているなかで、お互いに感じている魅力を教えてください。
 しげさんも田村君も、とにかく声が素敵で!
田村 ありがとうございます、照れるけど。
愛加 そうですね、本当に素晴らしいですよね。
藤重 俺、二人が喧嘩してるところ大好きだな。女同士の喧嘩なんですけど(笑)。
田村 自分は、宝塚時代のお二人を知らないんですけど、この現場にいると「あ、宝塚の方だ」っていう印象が全くないです。普通の女優さんに見えます。
 私達は宝塚OGの中で、そういう意味では割と稀有な存在で(笑)。「宝塚っぽくない」ってよく言われるんです。
愛加 はい(笑)。
田村 そうなんですね! お茶漬けシスターズ以外の役も面白いですよね。
愛加 壮さんのもう一つの役、凄く面白いし、周りに従えている方も面白いし、曲ももちろん素敵ですし、グッとくる場面ですね。
 私はね、卵焼きとウィンナーの歌を真剣に歌いながら、一生懸命に踊ってる男子4人組が大好きで!慣れていない事に挑戦していらっしゃるから、大変そうではあるんですけど、その必死さが逆に胸を打つ!
愛加 私もあそこ大好きです!もう、可愛い。みんな可愛い(笑)。
藤重 ええと説明させてもらいますと(笑)、舞台の導入部なんですね。
壮 とても大切な!
藤重 そう、大切なところなので、男子4人責任をひしひしと感じながら、変な汗をかいてる(笑)。
 あそこは、逆にこなれないでほしい。
田村 いやでも、あれはこなれないでしょう(笑)。
藤重 たどたどしい感じを残したいですね。
田村 ちょっとお酒が入った、くらいの感じで。
藤重 急にバッキバキに踊ってたらちょっとね。
田村 まだ芝居じゃないし、踊りじゃないしね。
藤重 でも、そうやってると「ちゃんと踊ってください」って言われそうな気がする(爆笑)。
田村 ギリギリを攻めたいですね。あと、忠さん役は、ちゃらんぽらんだし、酒も飲んで、本当にどうしようもない男なんですけど、でも後半に、物凄く胸を打つシーン、「急にどうした」みたいな事がありまして。そこでしげさんの人生経験みたいなものが忠に重なると言いますか、滲み出ている部分が結構くるんですよ。
愛加 私、あそこお母さん役でずっと寝てるんですけど、上着を掛けてくれるシーンがあって。あれは荻田さんの指定ですか?
藤重 いや、なんかこうね。
 あそこは見ていてドキッとする。
愛加 私も良い息子持ったよ!みたいな(笑)、息子からの愛情をね。寝てるだけなんですけど母は感じてるんですよ。
藤重 そんな事を感じてるんだ!
愛加 そうなんです。
 私はすべてを絵にする為に計算しながら動く癖がついているんですけど、しげさんのお芝居は、その上着をかけるにしても、座る、お酒を飲む、注ぐ、などのタイミングにしても、物凄くなめらかにやってらっしゃるので注視しちゃいますね。どうしても、大きくわかりやすく動いてしまう私にとって、普段のしぐさをこういう空間で何気なくやるというのが、今一番のヒットする項目で、いかに自然に見せるかというのを、いつも学んでいます。
藤重 ああ、ええと、今度飲みにお連れしますね(笑)。
 ありがとうございます!
田村 同席します、自分も(笑)。
藤重 いやぁ、でもそんな風に言ってもらえる感じじゃないですよ、本当に、いっぱいいっぱいで。みんなバンバン進んでるんですけど、僕1人だけよく言えばしんがり的な、一番後ろをついていってるイメージですから。
田村 そんなことないですよ!
藤重 田村君とはこの間、役作りでとあるバーに行ったんですけど、全く違和感なくカウンターに入って。
壮 カウンターに?
田村 内側に行ったんですよね。
愛加 内側?
藤重 そう、実際のお店の内側に入ったんですけど、本当に違和感がなくて。ご経験あるんですか?(笑)
田村 ないです、もちろん!苦労してるところです!(爆笑)
藤重 逆に(女性二人の)「見せ方」を、僕は盗ませてもらっています。
田村 ここがポイントというところが、ハッキリわかりますよね。
藤重 「あ、この角度か」みたいなのがあるんですよ。
 それは無意識だと思うのですが、それがダメな時もあるから。
藤重 その辺りは、お互いに良いと思うところを盗み合えればね。ただ、俺が絶対に見るのは、愛加さんの、二人が喧嘩したところの、はけ際の横顔。
愛加 あそこ見られてますか!?
藤重 あれ、俺、ツボで。(壮に)見えないでしょ。振り返った後の顔が良いの!めっちゃ“男”なの。
 ええ〜!?凄いね!「一生懸命やってんだな」っていうのはひしひしと感じてたけど。
愛加 一生懸命です!

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──お二人同士としてはどうですか?今回。
壮 私は『マリー・ゴールド』の時には、脳内でノッキングを起こしたんです。二人で見つめ合って芝居をしてるのに「え?私、スカート穿いてる」っていう。今は一役者同士としてできているので。
愛加 私もそうです。
 ただ、これが最初だったらどうだったろう。
愛加 私は多分それこそ喧嘩の場面とか、躊躇したかも知れないです。ボン!と行けていなかったかも。
 そこは一作品ガッとやり合ったからね。『マリー・ゴールド』でも喧嘩するところがあったし。まぁ、あれはもっとお耽美だったけど(笑)。でも、あれがあるから今回があってね。
愛加 良い流れでしたね。
 ありがたいし、役者同士になれたというか。
愛加 良い先輩です。
──元トップコンビのお二人の共演が続くのもご縁ですね。
 本当にたまたまなんですけど、珍しいかなと。
愛加 はい、そうですね。

人と人とのつながりや
愛の詰まった作品に!

──最後に意気込みを伺う前に、『深夜食堂』にご自身が行ったとしたら、何を頼みますか?
藤重 僕は、豚バラにもやしとニラを入れた炒めものですね。鹿児島の黒豚がいいんですけど。
愛加 そこはこだわりの?
藤重 ですね。僕、それがこの世の終わりの、最後に食べたいものなんですよ。
 へえ〜。
藤重 それぐらい好きなの。「誕生日に何食べたい?」って言われたら、毎年リクエストするくらい。だからマスターに頼んじゃいます。作ってって。
田村 俺は多分、豆腐ですね。
愛加 豆腐!?
壮 温かいの?
藤重 何かける?
田村 できれば、ごま豆腐とか、ジーマーミ豆腐とか。
愛加 あ〜美味しいですよね!
田村 ちょっと変わった豆腐と、日本酒とかでいきたいなと思います。
 私はだいたい深夜に行くお店だったら二軒目とかになるんで、その時はもう飲んでるからお味噌汁。
藤重 ああ、良いですね。何味噌汁ですか?
 あんまり具とかも要らないので、できれば「あおさ」がいいな。
一同 ああ〜!
 あと何か梅干し系のものがあれば。梅水晶とか。サッパリしたものがいいのかな。食事した後に行くなら。
藤重 酒飲みだ!(笑)
田村 確かに(笑)。
愛加 私はお漬物かな。漬物、凄く好きなんですよ。
田村 へぇ〜、意外。
藤重 何の漬物ですか?
愛加 ぬか漬けが好きなんですけど。でも、何でも好きなんです。
 漬物、良いよね。

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──そういう、メニューに無いんだけど言うと出してくれる「めしや」というのが『深夜食堂』のファンタジーというか、素敵なところですね。では改めて公演への意気込みと、楽しみにしているお客様へのメッセージをお願いします。
愛加 本当に色々な場面があって、見た後にお客様が凄くほっこりできるような作品だと思うので、見る前よりも少しでも幸せな気持ちで帰って頂けたらとても嬉しいです。是非そう思って頂けるように、稽古を頑張りますので、何回でも見に来て頂けたら!お待ちしています。
田村 自分は何かやりたいなと思う時、やっぱり、観た人のためになるか、メッセージ性があるか、観てパワーをもらえるか等、そういうところをかなり考える方なのですが、そういうメッセージとか、パワーという点でいっても、かなり良いものができるんじゃないかなと思っていて。本当に色々な人、役柄がいて、みんな葛藤があり、背負っている人生があって、その上でこれからどう生きるかという部分も描かれているんですね。それがお客様の胸に刺さるように、頑張っていきたいです。その為にこの「豚汁の具」である僕達がどれだけいい味を出せるかなっていうのが(笑)。
 それ、私の見解なだけで(笑)、そう決まったわけじゃないから。
田村 それを頂いて(笑)、良い「具」になれるように自分も頑張りたいと思います。
壮 私は今回台本に没頭して読み始めた頃に、ふと思い出した感覚があって。私が本来なぜ色々な人と喋るのが好きなのかという原点になった、十代の頃のある方との出会いがあるのですが、その人の事を思い出したんです。その人との出会いで今の自分があるし、自分の人間性や人生が凄く変わったんです。だから、この作品をご覧になったお客様が、何か一つ、例えば忘れかけていた気持ちですとか、自分の人生に影響を与えた人ですとか、「そういえば」と思い出して、その方の人生がより豊かになるような、そんなきっかけの一つになったら嬉しいなと思います。また今回のカンパニーには、二十代も二人いるんですけど、同年代の人も多くて、そういう人たちがカウンターに並んだ時に、役者人生だったり、その人自身の人生というものが、きっと背中からも滲み出ると思うんです。だからこそ自分もそこに埋没しないように、しっかりと個性なり色なりを出して、しっかり役として存在していけたらいいなと思います。
藤重 結構出てる。
一同 (笑)。
藤重 衣食住の人間の生活を考えるとするならば、「食」って、真っ先にそれを失うと人間の命に関わってくるものだと思うんですね。だから食を通じて人の繋がりを描くというのは、まぁ僕の中ではですけど、命に繋がる重たいテーマだなとの想いがまず入口にあって。僕は凄くシンプルで、実生活では子どもがいるので、仕事を頂けること自体幸せなんですけど、その仕事をやるかやらないかの分かれ道って、自分の子どもに見せて、愛が伝わるか伝わらないかだけなんですね、その役が何であろうと。オカマであろうと、人殺しであろうと、そこに愛があるのかないのか。僕は、この作品にはその愛が詰まっていると思うので、これからそのメッセージ性をもっともっと膨らませて、みんなで作っていきたいです。毎回僕ゲネプロとか子供に観てもらっていて、2歳くらいから来てるんですよ。
一同 へぇ〜!
藤重 でもね、子どもって泣くんですよ、不思議なことに。パパが死んだわけでも何でもないシーンで、泣くんですね。ちゃんと伝わるんです。だからやっぱり、そういう作品に育てていきたいなと。
 あぁ〜、良いなぁ!
愛加 凄く良い話。
田村 素晴らしい。
藤重 とても愛が詰まっている作品になりますので、是非ご期待ください!
 
■プロフィール 
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そうかずほ〇兵庫県出身。96年宝塚歌劇団に入団。12年雪組トップスターに、14年宝塚を退団。16年ミュージカル『エドウィン・ドルードの謎』で本格的に女優活動をスタート。以後、順調にキャリアを重ねている。近年の主な舞台は、『扉の向こう側』『細雪』『魔都夜曲』MUSICAL『WILDe BEAUTY〜オスカー・ワイルド、或いは幸せの王子〜』ミュージカル『アダムス・ファミリー』『戯伝写楽 2018』『GEM CLUB供戞SHOW  STOPPERS!!』『マリー・ゴールド』など。11月末にライブ『SO BAR 供戞2019年『Le Pere 父』『ベルサイユのばら45 〜45年の軌跡、そして未来へ』、への出演が控えている。

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まなかあゆ○富山県出身。05年宝塚歌劇団入団。12年、壮一帆の相手役として雪組トップ娘役に就任。14年宝塚を退団。主な出演作品にミュージカル『ブロードウェイと銃弾』、ミュージカル『王家の紋章』、ミュージカル『マリーゴールド』がある。舞台『嫌われる勇気』や朗読劇『私の頭の中の消しゴム10th』にも出演するなど、ミュージカルにとどまらず活躍の場を広げている。

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ふじしげまさたか〇山口県出身。1994年「愛してるなんて言葉より…」でアーティストデビュー。「激しく激しい情熱」「FOREVER」「rainy night」など数々の楽曲を発表。現在はシンガーソングライターとして、またテレビ、映画、舞台など俳優としても精力的に活動中。主な出演作品に、ドラマ『龍馬伝』『相棒』、映画『彼岸島』『表と裏』、舞台『RENT』『緋色八犬伝』などがある。

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たむらりょうた〇東京都出身。2013年『レ・ミゼラブル』のマリウス役でミュージカルデビュー、2017年まで同役を務める。少人数のミュージカルから大規模なミュージカル作品まで幅広く参加。近年は『魔界王子』などの漫画原作ミュージカルや『TRAMP』、社会派劇団ワンツーワークスの『蠅の王』でストレートプレイ出演など、更に多岐に渡る活動を展開している。またコンサート、ソロ・ライブも精力的に行っている。

〈公演情報〉
AD深夜食堂
 
ミュージカル『深夜食堂』
原作著作◇安倍夜郎「深夜食堂」(小学館)
Book&Lyrics by JEONG, YOUNG 
Music by KIM, HAESUNG
演出◇荻田浩一
日本語上演台本・訳詞◇高橋亜子
出演◇筧利夫 
藤重政孝 田村良太 小林タカ鹿 碓井将大 エリアンナ AMI(アミ) 谷口ゆうな 愛加あゆ 壮 一帆
演奏◇熊谷絵梨(Pf)、相川瞳(Perc.)、中村康彦(Gt.)、中村潤(Vc.)
●10/26〜11/11◎新宿シアターサンモール
〈料金〉8,200円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉info@meshiya-musical.com
〈公式HP〉http://meshiya-musical.com
〈公式ツイッター〉@meshiya_musical



【取材・文/橘涼香 撮影/山崎伸康】

 



舞台『刀使ノ巫女』


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