日本のみならず、世界でも圧倒的な人気を誇る漫画『NARUTO─ナルト─』の初の実写舞台化である『ライブ・スペクタクル NARUTO─ナルト─』が、渋谷のAiiA 2.5 Theater Tokyoで上演中だ（４月５日まで。その後、全国公演、東京凱旋公演を経てワールドツアーもあり）。
２次元で描かれた漫画・アニメ・ゲームなどの世界を、舞台コンテンツとしてショー化したものを総称した「2.5次元ミュージカル」は、今や演劇界の一大勢力として発展していて、AiiA Theater Tokyoが、AiiA 2.5 Theater Tokyoと名乗り、2.5次元ミュージカル専用劇場として、この１年間運用されていくことが決まっているほどのムーブメントとなっている。
その皮切りに用意された、この『ライブ・スペクタクル NARUTO─ナルト─』は漫画家・岸本斉史氏が約15年間にわたり週刊少年ジャンプ(集英社)に連載していた作品の初の実写舞台化。全700話、コミックスにして実に全72巻という長大な原作の、第１部、１巻〜27巻にストーリーを絞りこみ、体内に九尾の妖狐を封印された落ちこぼれ忍者である主人公・うずまきナルトが、里一番の忍「火影」の座を目指し、ライバルたちとの戦いや友情、孤独や葛藤を織り交ぜつつ成長してゆく姿が描かれていく。
まず何よりも感心したのが、脚本・演出を担った児玉明子の漫画世界を実写舞台化するにあたっての、豊富なアイディアの数々だ。もともと原作世界が、主人公を忍者に設定しているものの、実際に存在していた忍者を扱った時代劇ではなく、忍者アカデミーなどの言葉も飛び交う、現代文化をミックスしたあくまでもオリジナルの世界観を持っている。そこに様々な能力を持つ忍者たちが、特殊な妖術を使ってバトルを繰り広げるから、生身の人間が演じるには本来かなり高いハードルがあったと思われるが、それを映像効果、照明効果、また時にはパペットなども用い、見事に実写化することに成功していて驚かされた。
とくに、こうした企画の場合、主に客席を埋めるのはそもそも原作のファンであろうから、客席の予備知識を無意識に期待しそうなものだが、まったく原作を知らない客層にも、この世界の成り立ち、交わされる用語の解説などを、舞台のスピードを落とすことなく丁寧に取り入れているのが好印象。これによって、たとえば出演の役者ファンが客席を訪れたとしても、置いてきぼりにならずに作品を楽しむことができるし、逆に原作漫画に興味を持てることもあるだろう広がりを感じさせるのが何より。
宝塚歌劇団の作・演出家として活動した後、外部に出てこうした2.5次元作品での活躍が目立つ児玉だが、その才能と資質が良く活かされる方向性を確実につかんだと思う。この作品でも優れた成果を上げていて、前述したように「2.5次元ミュージカル」が現在大きな潮流となっているだけに、これからの仕事にも大いに期待したい。
とくに、こうした企画の場合、主に客席を埋めるのはそもそも原作のファンであろうから、客席の予備知識を無意識に期待しそうなものだが、まったく原作を知らない客層にも、この世界の成り立ち、交わされる用語の解説などを、舞台のスピードを落とすことなく丁寧に取り入れているのが好印象。これによって、たとえば出演の役者ファンが客席を訪れたとしても、置いてきぼりにならずに作品を楽しむことができるし、逆に原作漫画に興味を持てることもあるだろう広がりを感じさせるのが何より。
宝塚歌劇団の作・演出家として活動した後、外部に出てこうした2.5次元作品での活躍が目立つ児玉だが、その才能と資質が良く活かされる方向性を確実につかんだと思う。この作品でも優れた成果を上げていて、前述したように「2.5次元ミュージカル」が現在大きな潮流となっているだけに、これからの仕事にも大いに期待したい。
また、選りすぐられた出演者が、2.5次元作品の要である原作世界のビジュアルの再現をそれぞれ見事に成し遂げていて目を瞠る。主人公「うずまきナルト」に扮した松岡広太をはじめ、「うちはサスケ」の佐藤流司、「春野サクラ」の伊藤優衣、「我愛羅」の須賀健太などなど、各々がまるで原作漫画から抜け出したかのよう。舞台上でバトルが続く展開にも、イメージを裏切らない優れた身体能力も示し、疾走感にあふれた作品世界を十二分に支えていた。なかでも「はたけカカシ」の君沢ユウキのセリフ発声の明晰さが群を抜いていたし、テレビドラマなどでお馴染みで「桃地再不斬」の内田朝陽は、そのなりきりぶりがあまりにすごくて、逆に誰だかわからなかったほど。2.5次元作品を支える役者魂に拍手を贈りたい。
更に、特筆すべきはナルトたちにとって、今回の作劇中最大の敵となる「大蛇丸」の悠未ひろの迫力ある存在感だ。宝塚歌劇の男役として活躍し、退団後２作目の舞台だが、公演イメージソングは用意されているが、劇中歌うシーンはほとんどない『ライブ・スペクタクル NARUTO─ナルト─』の中で、ほぼ唯一の歌声も披露。その朗々とした響きも手伝って、出番はそれほど多くないながら、強烈なインパクトを残すことに成功している。宝塚の男役の中でも頭抜けた長身の持ち主だったが、その恵まれた体躯を活かし、退団後、悠未ひろならではと言える仕事をしているのが頼もしい限りで、作品の大きなスパイスとなっていた。
大長編である原作の性質上、作品は「次回に続く」的な終わり方をするが、それもまた更なる展開への期待を高めるし、イメージソング「光追いかけて」をナルト役の松岡が爽やかに歌い、全員の合唱へとつながりながら、出演者たちが客席に降りてくるカーテンコールの演出は、ファンにはたまらないプレゼントとなったことだろう。ワールドツアーでの熱狂と喝采が目に浮かぶような、爽快なステージで、公演を重ねて更に高まるだろう熱に期待が持てる舞台だった。
『ライブ・スペクタクル「NARUTO─ナルト─』
原作◇『NARUTO─ナルト─』岸本斉史 （集英社 ジャンプコミックス刊）
脚本・演出◇児玉明子
音楽◇増田俊郎
出演◇松岡広大 佐藤流司 伊藤優衣 須賀健太 君沢ユウキ 平川和宏 市瀬秀和 木村達成 内田朝陽 今村美歩 伊波杏樹 服部翼 加藤諒 飯山裕太 植田慎一郎 高橋紗妃 梅垣義明 悠未ひろ
●3月21日〜4月5日◎AiiA 2.5 Theater Tokyo
●4月10日〜12日◎キャナルシティ劇場
●4月17日〜19日◎梅田芸術劇場 メインホール
●4月23日〜25日◎多賀城市民会館 大ホール
●4月29日〜5月10日◎AiiA 2.5 Theater Tokyo（東京凱旋公演）
〈料金〉S席7,500円 A席5,000円（前売・当日共 全席指定・税込）
〈国内公演チケット問い合わせ〉サンライズプロモーション東京
0570-00-3337（全日10時〜18時）
0570-00-3337（全日10時〜18時）
ワールドツアー
●マカオ公演 5月22日〜24日◎ベネチアンシアター
●マレーシア公演 5月30日〜31日◎マレーシアインターナショナルエキシビジョン＆コンベンションセンター
●シンガポール公演 6月6日〜7日◎リゾートワールドシアター
〈公演問い合わせ〉ネルケプランニング 03-3715-5624（平日11時〜18時）
