2012年にフランス・パリの「パレ・デ・スポール」で初演されて以来、絶賛を博してフランス国内で度々上演されてきたフレンチ・ロックミュージカルが、宝塚歌劇団の小池修一郎潤色・演出により宝塚バージョン、かんぽ生命ドリームシアター スペクタクル・ミュージカル『1789〜バスティーユの恋人たち』として本邦初演される（兵庫県・宝塚大劇場で４月24日〜６月１日、東京宝塚劇場で６月19日〜７月26日）。
この作品は、フランス革命に翻弄される様々な人間の生き様を、ポップな現代音楽に乗せてスペクタクルに描いてゆくもので、これまで数々のヒット作を発表し、宝塚のみならずミュージカル界の寵児でもある小池修一郎の潤色・演出のもと、宝塚歌劇ならではの、華やかでドラマティックな展開が期待されている。また、この公演は新しい世紀を迎えた宝塚歌劇団第101期初舞台生のお披露目公演でもあり、二重の華やぎに包まれた大作になりそうだ。
そんな公演の制作発表会見が、３月11日、都内で行われた。
会見はまず、主人公で革命を志向していく青年ロナン・マズリエ役の月組トップスター・龍真咲、フランス王妃マリー・アントワネット役の月組トップ娘役・愛希れいか、ロナンの友人の革命家カミーユ・デムーラン役の凪七瑠海、王弟シャルル・アルトワ役の美弥るりか、後に独裁政治を推し進めることになる革命家マクシミリアン・ロべスピエール役の珠城りょうによるパフォーマンスからスタート。今回は革命を志す側と、王族側に分かれたトップコンビ、龍と愛加が、それぞれの持ち歌を朗々と披露し、また劇中では立場を異にする美弥も加わって、龍、凪七、珠城の４人で繰り広げられた、この制作発表会だけのスペシャルな楽曲披露もあり、会場には早くもスケールの大きな作品の世界観が立ち現われていた。
続いて、記者会見が行われ、特別協賛の株式会社かんぽ生命保険から、取締役兼代表執行役社長の石井雅実氏、４月１日に歌劇団理事長職から阪急電鉄常務取締役創遊事業本部長へと就任する理事長小林公一氏、演出を担当する小池修一郎氏に、龍以下、パフォーマンスの出演者が加わり、檀上に集った。
まず、小林理事長から初めて宝塚歌劇に特別協賛をする株式会社かんぽ生命保険への謝辞と、新世紀に突入した宝塚歌劇がますますお客様に愛される為に、様々な挑戦をしていく、その挑戦の一つである作品なので、フレンチ・ミュージカルの本邦初演を華やかな宝塚に相応しい作品とするべく、関係者・出演者一丸となって努力していくので、是非公演を盛り上げて頂けるようよろしくお願い致します、との決意が語られた。
また特別協賛のかんぽ生命保険を代表して、石井社長から夢を持って挑戦される宝塚歌劇の皆様の人生を、人びとの人生を応援する生命保険会社が協賛できることを大変嬉しく思っている。101周年を迎えた宝塚歌劇団を、来年100周年を迎えるかんぽ生命保険が応援していきたい、旨の挨拶があった。
また演出の小池氏からは、この日がちょうど東日本大震災から丸４年を迎えた日であることが語られ、ちょうど４年前のこの日宝塚は同じフレンチ・ミュージカル『ロミオとジュリエット』を東京宝塚劇場で上演中で、２千人のお客様、出演者スタッフ一同と不安な時間を過ごした。そしてその後の様々に広がった悲しい出来事の中で、宝塚歌劇の使命はどのような時にでもお客様に、愛や喜びをお届けすることだと強く感じるに至った。歴史の事実を扱った今回の作品を通じてもまた、そうした事実を経て前向きに生きていく、明日への希望を持つ人間讃歌を伝えていきたいとの強い思いが語られ、出演者の挨拶へと引き継がれた。
龍 皆様本日は月組公演かんぽ生命ドリームシアター、スペクタクル・ミュージカル『1789〜バスティーユの恋人たち〜』の制作発表にお忙しい中お越しくださいまして、誠にありがとうございます。ロナン・マズリエ役を演じさせて頂きます龍真咲です。こうして日本初上演となりますこのミュージカルに、月組が携わらせて頂くこと、心より嬉しく思っております。この作品のエネルギーをしっかりと持ち、初日に向けて小池先生を筆頭に、メンバー全員で励んでいきたいと思います。そして最後になりましたが、株式会社かんぽ生命保険様にご協賛頂きましたこと、心より御礼申し上げます。本日はありがとうございました。
愛希 今回マリー・アントワネット役をさせて頂きます愛希れいかです。日本初上演となるこの作品に挑戦させて頂けることを、大変嬉しく思うと同時に、世界中でたくさんの人に愛されているマリー・アントワネット役をさせて頂けることを本当に幸せに思っています。この作品の世界観の中で彼女の目指した王妃というのはなんだったのか、そして1人の女性、母親として懸命に生きていく姿も大切にしながら、公演を観終わった後お客様に、もっとマリー・アントワネットのことを愛して頂けるように演じることができたらなと思っております。これからこの作品が愛され続ける作品の一つとなりますよう、心を込めて精一杯務めて参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。本日は本当にありがとうございます。
凪七 革命家の1人でありますカミーユ・デムーランをさせて頂きます凪七瑠海でございます。今回このような曲も素晴らしく斬新でスケールの大きな作品に出させて頂けることを嬉しく思っております。私は歴史上の人物でありますカミーユ・デムーランを、革命史の中でとても重要な役割りを果たす人物でもありますので、彼の熱い気持ち、心を思い浮かべながら大作に挑んでいきたいと思います。本日は本当にありがとうございます。
美弥 ルイ16世の弟であり、マリー・アントワネットの悪友と呼ばれていたアルトア伯を演じます美弥るりかでございます。フランスで大人気のこの作品を日本で初めて上演するということで、その舞台に出演させて頂けることをとても光栄に思っております。私の役は軽薄な考えの持ち主であり、自分の手を汚さずに王位にのし上がろうとする悪意をもった人物でもありますので、龍真咲さんが演じられるロナン側の皆さんからとても憎まれる役として、色濃く演じていけたらなと思っております。精一杯頑張って参りますので、どうぞよろしくお願い致します。ありがとうございます。
珠城 ロペスピエール役を演じます珠城でございます。今回このような作品を、日本初上陸で、しかも月組で初演を務めさせて頂くこと、本当に幸せに思っております。革命家のロベスピエールは皆様もよくご存知の人物だと思いますが、後に独裁者と呼ばれる前の、革命に燃えている全盛期の彼を演じることになっておりますので、心を込め、彼が何を求めていたのかを情熱的に演じたいと思っております。本日は本当にありがとうございます。
それぞれが役柄に対する熱い思いを語ったのち、質疑応答となった。
【質疑応答】
──『ベルサイユのばら』という同じフランス革命を扱った作品を財産としている宝塚歌劇で、今またこの作品を取り上げるに至った経緯は？ また今月いっぱいで理事長職を退かれるにあたって、これまでを振りかえって改めて。
小林 『ベルサイユのばら』は宝塚の財産ですが、フランス革命を宮廷側から描いているのに対して、今回の作品はフランス人が作ったということで、民衆側から描いています。この時代は宝塚にとって得意分野でもありますので、きっと新しい宝塚の財産になるだろうということで、この作品を取り上げることになりました。また、2004年から宝塚歌劇理事長職について11年間、皆様に支えて頂き務めさせて頂きました。今後は創遊事業本部長という立場になりますので、宝塚を側面から支えていけたらと思っています。この間皆様から厳しいお言葉も頂戴しましたが、基本的には優しくして頂きました（笑）。本当にありがとうございました。
──主人公のロナンには歴史上にモデルになった人物がいるのでしょうか？ また宝塚には『ベルサイユのばら』があり、小池先生自身の作品にもフランス革命を反対側から描いた『スカーレット・ピンパーネル』がありますが、今回の作品を作るにあたってそれらに対する意識は？
小池 ロナンに対しては特段のモデルはいないと思います。私も調べたのですが。ただ当時、彼のような青年はたくさんいたと思いますし、フランスに限らず民主化運動が起こる時には、必ず学生や労働者から参加する人がいますので、その典型として描かれていると思います。そして宝塚は『ベルばら』共和国とも言えまして、私もその共和国の臣民の1人です。そのことからしても実はマリー・アントワネットと自分が関わるとはゆめゆめ思っておりませんでした。生涯ないと思っていたので驚きましたが、今回はロナンたち市民側がメインで、彼らが倒そうとする王宮の中にアントワネットはいますので、彼女をどう描くかということはドラマにとって非常に重要でありますし、フランス人からしますと彼女は従来よく言われていますように、オーストリーからきた嫁なんですね。でもこの作品ではフェルゼンに対しても共感を持って描いていて、私たちが思っているマリー・アントワネット像とそれほどかけ離れてはいないです。それにしても『ベルサイユのばら』は、今考えましても、歴史上の人物と創作上の人物を絡ませて実に見事に描かれていて、池田理代子さんは天才だなと改めて思っておりますが、今回の作品の革命も極端に違うことを突きつけている作品ではありませんので、敢えて言うならこの作品のロナンの恋人が、マリー・アントワネットの亡くなった息子のルイ・ジョセフの養育係であったというところが、『ベルサイユのばら』で言うところのオスカルやアンドレと同じように、創作されている人物ですので、そのロナンとオランプとの関係がこの作品のオリジナリティであると思います。
──『スカーレット・ピンパーネル』でも宝塚バージョンとしての創作部分が素晴らしかったですが、今回の作品でも宝塚ならではの部分や、また新しい曲が入ることなどはありますか？
小池 幕開きからフランスで上演されたものとは大きく違います。もともと最初にパリで上演されて、フランス圏でツアーを周り、再びパリで2013年に上演された時には、筋が変わっているんですね。最後に死ぬ人物も変えてあったりします。ですから違う二つの筋があるところから、今回宝塚の龍真咲というスターを中心とした構成で作っています。バスティーユの攻撃の時に、門に通じる橋を吊り上げてあるのを、民衆側の人が登っていって切り落として橋を渡したという、その一番乗りを果たした人物がロナンだという設定にしています。民衆たちがバスティーユを目指したのは、要塞の地下に火薬庫があって火薬を取りに行った為なんですが、それを先導した人と仮定しています。曲に関しても、実際に使われた曲、使われなかった曲、また今回の為に書き下ろしてくれた曲とたくさんありまして、これを好きに使いなさいと言われているのですが、音域の問題があって、女性だけで歌いますので、場合によっては向こうの舞台では女性が歌っていたんだけれども、宝塚の舞台では男役が歌った方がハマるなというものは、男役にもっていったりもしています。今整理をしていますが、ずいぶん歌う人を入れ替えていますので、オリジナルの舞台をご存知の方にはその違いもみて頂けるのではないかと思っています。
──資料に作曲家の名前がありませんが、複数の方が作っているからですか？
小池 そうです。５、６人でチームを組んで作っていまして、彼らは打ち込み系で作るので、１曲の中でもみんなでどんどんアイディアを出し合って、誰かのモチーフに誰かが手を加えてというかたちで作られているものが多いので、合作のような形で曲が作られていると思います。
──パフォーマンスで歌ってみた曲の感触は？
龍 お稽古は少しずつはじまっていたのですが、今日制作発表で皆様の前でパフォーマンスをしていよいよこのミュージカルがはじまるんだなということを改めて感じることができました。本来は美弥が参加しないナンバーにも今回は参加していて、敵対するチームであっても、ひとつの思いを皆で共有することができてとても良い機会になったと思いますし、皆様の質問にもありましたが、小池先生の海外ミュージカルの新作ということで、どのような驚きや発見があるのか、皆様も楽しみにしていらっしゃると思いますが、私たちもこれからのお稽古でどんな発見があるのかとても楽しみなので、改めて小池先生についてしっかりやっていきたいと思いました。
──マリー・アントワネットのお衣装がまた素晴らしいですね。
愛希 私もこのような衣装を着させて頂き、また髪もだいぶ盛っておりますの（笑）、自分がマリー・アントワネットをさせて頂くんだなと実感しております。初登場のシーンでもとても豪華なことになるであろうと思いますので、頑張ります。
──実在の人物たちの中で、革命を志向する架空の人物をどのように演じたいですか？
龍 『1789』のフランスで上演された資料をたくさん見させて頂いたのですが、その中でも実在の人物にはその人の人生や、またどのようにして歴史に関わってきたかが明確になると思うのですが、私と致しましては歴史上の人物ではないので、光が当たらない革命のバックグラウンドを支えた１人として主張できたらなと思っています。もともとのモデルがいないので、私自身の想像と、先生のイメージの中から人物を生み出すというのは、再演が多かった月組の中ではあまりしたことがなかったので、自分に対する挑戦だなと思っております。また今までは主役というのは綺麗なお衣装で歌を唄って、煌びやかな場面の中にいるというのが宝塚のイメージではないかと思うのですが、そこを覆して地に足をつけて、少し血なまぐさかったり、土を感じるような、匂いのするような役に作ることができたらなと思っております。私が今までしてきた役は高貴な役であったり、『ミー＆マイガール』のように実は高貴だとか、そういうバージョンが多かったのですが、本当に民衆の１人から立ち上がって、普段ならば大勢口で何かをするということはあまりないのですが、その中で月組の状態とリンクするところがたくさんあると思うので、しっかりと皆を引っ張っていきたいなと思っております。
──歴史上の人物を演じられる皆さんは、自分の役に対してどういうイメージを？
愛希 私は今まで演じさせて頂いた役が、例えば『ベルサイユのばら』ではロザリーだったりで、このような身分の高い役はほぼ初めてでございます。ただマリー・アントワネットは王妃ではありますけれど、少女のようなとても可愛い面を持っているのが共感される部分なのではないかと私は思っておりますので、私自身が田舎育ちですので、そういう親しみやすい部分を出すことができたらなと思っています。貴族にはほど遠い自分ですけれど、頑張っていけたらなと思っています。
凪七 カミーユ・デムーランというのはどの資料を読んでも、まず見た目的には目がギョロッとしていて、髪はくせ毛のもじゃもじゃの黒髪で、青白くて線が細くてという、バスティーユ牢獄を落とす時に「皆武器を取れ！」と先頭を切った人だとは思えないような人物だな…という印象ではあるんです。気分が高揚してくると吃音が出てどもってしまったりもする、引きこもりそうな人物かと思いきや、それも乗り越えて「行くぞ！」と皆をひきいた、バイタリティにあふれた熱い人だと思うので、その部分や、人間臭さを大事にしたいと思います。
美弥 アルトア伯はアントワネットの悪友と言われているくらいなので、色々な資料を見ても軽薄で享楽的だと書かれています。そういう部分も感じさせつつ、小池先生が書いてくださったもののなかには、とても鋭い部分もたくさんあると感じましたし、自分の指示や考えによって話が展開していく部分もある役割りなので、そういった鋭い部分、頭が切れるところも出していけたらなと思っています。
珠城 ロベスピエールという役は、宝塚でも『ベルサイユのばら』や『スカーレット・ピンパーネル』にも出てくる、教科書にも出でくる本当によく聞く人物だと思うのですが、そうした色々な資料がある中で『1789』という作品の中で自分がどういう風にいたらいいのか、をまずは考えようと思っています。後に独裁者と呼ばれてしまうのですが、この時代の彼は理想と自分の意思を強く持っている青年で、弁護士で品もありますし、市民の意思を声にしたいという強い思いを持って生きている人物だと思いますので、そのあたりをもっともっと深めて演じていけるように作っていきたいと思っています。
かんぽ生命ドリームシアター
スペクタクル・ミュージカル『1789〜バスティーユの恋人たち』
Le Spectacle Musical ≪1789 - Les Amants de la Bastille≫
Produced by NTCA PRODUCTIONS, Dove Attia and Albert Cohen
International Licensing & Booking, G.L.O, Guillaume Lagorce
潤色・演出◇小池修一郎
出演◇龍真咲、愛希れいか ほか月組
●4/24〜66/1◎宝塚大劇場
〈料金〉SS席 12,000円 S席 8,300円 A席 5,500円 B席 3,500円 （全席指定・税込）
〈お問い合わせ〉0570-00-5100
●6/19〜7/26◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席 12,000円 S席 8,800円 A席 5,500円 B席 3,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉03-5251-2001
