宝塚ジャーナル : さらに進むための新たな春！　彩吹真央インタビュー Vol.２

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デビューから20年目という節目の年を迎える彩吹真央。
その記念として東京と大阪で開催するコンサート『80 seasons』は、宝塚歌劇での16年と女優としての３年を振り返り、19年間の歩みのなかで出会った曲で綴っていくステージだ。
その大舞台にかける思いと、コンサートの内容を語ってくれたＶol.１に続いて、女優としての彩吹真央の「今」と「これから」を聞く。

初めは言えなかった「女優です」も、今は誇りを持って言える

──ところで今年ももう２作品に出演、このあともコンサート以外に２公演の予定が決まっているという活躍ぶりですね。退団してまだ３年なのに、ミュージカル界では欠かせない女優さんになって、しかも幅広い役柄を演じている。ご自分でも刺激的な毎日だったのでは？

本当にそうです。女性役という意味ではどれも未知の役柄ではあるのですが、それ以上に「こんな役も私にやらせてもらえるんだ？！」という新鮮な驚きが、３年経ってもまだ続いています。もともと好奇心が強くて、とくに新しいジャンルの役には興味があるので楽しいです。さまざな役柄に出会うおかげで、自分への発見もたくさんあったし、役柄の幅も自然に広がってきているのかなと。でも、まだこれからもいろいろな役に出会えるのではないかと楽しみです。

──女優らしさもずいぶん身についてきましたね。

やはり最初は「女優です」と言えないくらい照れくさかったのですけど（笑）、３年経って、今は女優であることの誇りを感じますし、本当に素敵な仕事に就いているなと思います。舞台人としては宝塚時代も、男役という、ほかではできない素晴らしい仕事をしている誇りはあったのですが、女優という仕事に就いて、改めてこんな素敵な仕事はないなと。自分ではない役を生きることができて、それを観て楽しんでいただいて、お客様も自分も幸せにできる、なんて楽しいんだろうと。考えてみたらこの間までパリのお姫様だったのに、今はアメリカではっちゃけているんですからね（笑）。でも、まだまだやってない役は沢山ありますから、これからもいろいろな役柄に出会いたいです。

──ここまでの過程の中で、女優・彩吹真央にとくに変化を与えた作品はありますか？

『DRAMATICA/ROMANTICA』（10、11、12年）は３回出させていただいて、そのなかで確実に成長させていただいたと思います。１回目は卒業後すぐで「初めまして」の私、次の年は少し進歩した私、３年目はさらに進歩した私、同じ形の作品の中で、反省する部分も見えたし、成長したことも確認できて自信に繋がりました。それから初めてのミュージカルの『Pal Joey パル・ジョーイ』（10年）は、今だったらまた違う役作りになっていたかもしれませんが、あのときのまだ未知のなかで出していたパワーみたいなものがよかったのかなという気もします。

──初主演の『ロコへのバラード』（11年）はタンゴの作品でしたね。

あの作品では主演の責任感もありましたが、タンゴにきちんと向き合ったおかげで、リードされることや愛されること、男性がいて女性がいる、つまり男役のときに学んでいたことの真逆を基本から学ばせてもらったなと思います。

──その直後の『モンティ・パイソンのスパマロット』（12年）はすごく振り幅が大きくて、コメディエンヌぶりが最高でした。湖の貴婦人の彩吹さんが華々しくて、堂々としていてカッコよくて。

あの作品、大好きでした（笑）。宝塚にいたからこそできる役ですよね。なかなか日本ではあまりないナンセンスなコメディ・ミュージカルですけど、出演していて気持ちよかったです。

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この世界で私にできること、役割りは沢山あるんだと

──そのあとは盲目のお母さん役の『道化の瞳』（12年）や、大作ミュージカル『サンセット大通り』（12年）のシナリオライターなど、話題作にいろいろ出演されましたが、やはり今年１月の『シラノ』で、名作ミュージカルのヒロインを演じた経験は、彩吹さんにとって大きかったのでは？

ロクサーヌ役ではヒロインということを改めて教えていただきました。お稽古に入って鈴木綜馬さんに絡むちょっとコメディチックなシーンがあったんですが、演出の山田和也さんに「ヒロインであることを忘れないでください」と言われて、ヒロインという立場を自覚しました。あのシラノが愛し続け、クリスチャンにも愛される、周りのみんなに愛され謳われるロクサーヌを演じられる幸せを、いつも感じていました。同時に、愛される人にならなくてはと思いましたし、すごく掘り下げて考えるようになりました。人間の温かさだったり、純粋な部分だったり、そこを大事にしようと。それに楽曲も多くて、しかも難しかったので、本当にいろいろなチャレンジをさせていただいたと思います。

──シラノとの心の通い合いがよくわかりました。可愛くて最後のほうでは母性的なところが魅力的でした。

シラノの鹿賀さんの役の掘り下げが深くて、その鹿賀さんに付いていって、ロクサーヌの人間としての価をどこまで上げられるか、それを一生懸命考えて舞台に立っていました。こういう重厚なミュージカルならではの奥の深さも日々感じましたので、これからも出演させていただく機会があればいいなと思っています。

──そういう本格ミュージカルで武器になるのが、彩吹さんの歌唱力ですね。

『シラノ』では、初めて濱田めぐみさんとダブルキャストで共演させていただくことになり、最初はプレッシャーもありましたが、この方と一緒に並ばせてもらえるのは光栄だし、自分なりに自分ができる歌唱をさせてもらおうと思っていました。でも、実際にお稽古場で濱田さんとご一緒してみて、いい意味で刺激だけでなく勉強もさせてもらいました。役についてもコミュニケーションを取ったり、めぐさんの演じるロクサーヌを見せてもらったりしたことが、すごく役に立ちました。それだけに、また『モンテ・クリスト伯』でダブルキャストになると知って「嬉しいな！」と。

──また、いいコミュニケーションができそうですね。

一緒にご飯を食べに行ったり、お話をするのが楽しみです。実は年齢も１つしか違わないし、私が宝塚歌劇団に入った年と、めぐさんが劇団四季に入った年がほぼ同じで、劇団を卒業したのも同じ年。その2人がダブルを二度目というのも、きっとご縁があるんだろうなと。でもお互いに「ダブルではなく本当の共演がしたいね」といつも言っているんです（笑）。

──その機会もきっとありそうですね。そういう「次の彩吹真央」にとっても、このコンサートは大きな節目ですね。

節目であると同時に新しい出発だと思っているんです。20年目の記念となるこの４月に、こういうコンサートをさせていただくのは、19年間の自分を振り返ることで心新たに進みたい、まだまだもっと進んでいくんだという、その思いを新たにするということなので。

──つまり20年目というのは、次の30年、40年への一歩ということですね。

最初のほうでもお話に出ましたけれど、宝塚を卒業したての私は、何も先が見えてないという中でスタートしました。でも今は、この世界で私にできること、私の役割りは沢山あるんだと感じています。3年前とは違って「しっかり前に進んでいきたい」と、そうはっきり言える自分がここにいる。それがとても幸せです。でもそれは自分だけの力ではなく、周りの方々のおかげですし、支えてくださった方々や応援してくださる方たちのおかげです。その方々へのお礼になるような、いつまでも心に残るような素敵なコンサートになればいいなと思っています。

撮影協力：東京會舘

あやぶきまお○大阪出身、1994年宝塚歌劇団入団。雪組配属後、花組を経て雪組へ組替え。繊細な演技力とのびやかな歌声を持つ男役スターとして活躍。宝塚版『エリザベート』では、フランツ、ルドルフ役などで出演し、深みのある役作りで高い評価を得た。『ファントム』では、キャリエールを演じ、豊かな歌唱力を披露した。また、宝塚初の男役ユニット「AQUA5」に参加、CDを発売し、TV出演やコンサート開催など幅広く活動した。 2010年宝塚歌劇団を退団。主な出演作品は『DRAMATICA/ROMANTICA』『Pal Joey』『ロコへのバラード』『モンティ・パイソンのスパマロット』『サンセット大通り』。現在は、ミュージカルや舞台を中心に活動をしている。また、コンサートなどの歌手活動や声優などさまざまなジャンルにも積極的に挑戦している。今年は『シラノ』『ウェディング・シンガー』に出演。このコンサートのあとは『タンブリング』vol.４（8月）と『モンテ・クリスト伯』（12月）に出演が決まっている。