女優としてミュージカルを中心に活躍中の彩吹真央が、デビューから20周年目という節目の年を迎える。その記念として、東京と大阪でコンサート『80 seasons』を開催する。
彩吹真央は、宝塚では少年性と同時に大人の色気を感じさせる男役として深みのある演技で活躍、退団後はみごとに女優に変身して、歌唱力と明るく清潔な個性を生かして、ヒロイン役からコメディエンヌまで幅広く活躍している。
今回は、そんな彩吹の宝塚歌劇での16年と女優としての３年を、出会った曲で綴っていくコンサートで、演じてきた役や世界が改めて蘇ってくるステージになりそうだ。その大舞台を前にした今の思いと、今回のステージの内容を彩吹真央にインタビュー。
１回に気持ちを凝縮して、たくさんの方と一緒の時間を楽しみたい
──いよいよ20年目ですが、ここまで続けてきたことへの感慨は、やはり深いでしょうね。
そうですね。幼いときからの夢が宝塚に入ることでしたから、そこでの卒業を決めたときは、先のことなど何も見えていませんでしたし、こんな記念のコンサートができるなど想像もしていませんでした。今、こういう形で20年目を迎えさせていただけるなんて、本当に有り難いことだなと思います。退団後に一度『Ｙ＋9cm』（11年）というライブをさせていただいているのですが、どうしてもミュージカルの舞台が続いて、こういう個人のコンサートという機会がなかなか作れなかったのです。でも、ライブのときにもファンの方から「もっとやってください」という声をいただいていたので、どうせならきちんと「20周年」と銘打ったコンサートをしたいなと、それはずっと考えていましたので、こうして実現できて嬉しいです。
──この時期に行うのも理由が？
春に、ということは以前から決めていました。出会いと別れの季節ですし、宝塚に入団したのも春、卒業した日も４月25日でしたから。
──そして、会場は東京はオーチャードホール、クラシック演奏会やバレエなどでも有名なホールですね。
会場を決めるときにいろいろ見せていただいて、そのときは「こんなに大きなホールで、できるかしら？」と思う部分もあったのですが、１回に気持ちを凝縮して、たくさんの方と一緒の時間を持ちたいなと思って決めました。
──あの空間に彩吹さんが歌声を響かせることを想像するとワクワクしますね。
私はクラシックの歌手ではないのですが、１人の歌い手として、歌だけであの空間をいっぱいにできるのだと思うと、私自身とても楽しみで、ワクワクします（笑）。
──第1幕は宝塚時代、2幕が女優になってからという構成だそうですが、宝塚時代は16年間ですから膨大な曲数からの選択ですね？
そうですね。でも、16年という年月は男役として生きていたので、やはり宝塚の歌＝男役の歌ということになります。その男役の歌を今の自分が歌うということを、お客様にどうキャッチしていただけるかわからないのですが、歌の気持ちを伝えるのは男役も女役も女優も関係ないと思っていますので、きっと楽しんでいただけるのではないかなと。
──ビジュアルもちょっと男役ふうになるのでしょうか？
バリバリの男役にはならないと思います（笑）。今の私のマニッシュな部分を見せるという形になるのかなと。やはり３年間女優をやってきた私として歌いますので。お客様の中には宝塚時代の私を知らない方もいらっしゃると思いますし、来ていただいた皆さんに楽しんでいただけるようにしたいので。
──当時の再現ではなく、今の彩吹真央が歌う宝塚の歌の魅力ということですね。
その素敵さを伝えられたらと思います。振り返ると、宝塚の歌には、メロディや歌詞の美しさや、情緒豊かなところなど宝塚ならではの良さがあって、和洋を問わず言葉が素敵なものが多いなと。それを改めて今の私がきちんと咀嚼して伝えられたらと思っているんです。
──今だから意味が深くなる歌詞もあるでしょうね。
それはすごく感じます。当時の自分なりにわかって歌っていたものが、いろいろな人生経験をして、改めて別の意味を感じたりしますし、男役女役関係なく、感銘を受ける曲がたくさんあります。それを作品をご覧になっていない方にも、「いい曲だなと」思っていただけるように歌えたら。
素敵だな、歌いたいな、と思った男性ソングを歌ってみます
──その選曲ですが、まず１幕はどんなものを？
基本は自分が主演させていただいたものです。それから自分でも楽しみにしているのは、宝塚を退団してから出演したミュージカルの中の男性ソングを歌ってみようかなと思っていて。素敵だな、歌いたいなと思った曲が何曲かありましたから。
──それは素敵ですね。そして、2幕は退団後の曲ということですが、こちらも20本近くの舞台に出ていて内容も幅広いので難しいですね。
自分でも並べてみて驚くのですが、可憐な役の次にコメディな役とか、シリアスな役のあとに思い切り弾けた役だったり、本当にいろいろで面白いです（笑）。今の予定では曲数はメドレーを入れたら20曲以上になると思いますが、何を選ぶか、絞る作業がけっこうたいへんでした。
──かなりバラエティに富んだ選曲になりそうですが、その１つ１つを歌い分ける彩吹真央の歌声が、やはり今回の聴きどころですね。
そうなればいいですね。声の七変化というか（笑）。ほとんど出ずっぱりなので、衣装もそんなに沢山着替えるわけではありませんし、声だけでキャラクターを伝えることになるので、その変化を楽しんでいただけるようにがんばりたいと思います。
──まさに今の彩吹真央のすべてを見せるステージになりそうですね。
そうなると思います。私をまだあまり知らない方には、いろいろな意味で、「面白い人だな」（笑）と思っていただけたらいいなと。
──それから、東京と大阪でそれぞれゲストも出演するのですね。
東京では井上芳雄さん、大阪では水夏希さんに出ていただきます。井上さんは私が退団後に初めて出演した『DRAMATICA/ROMANTICA』からのお付き合いで、事務所もそのご縁ですし、今のミュージカル界を背負っていらっしゃる方と、何度もご一緒させていただけるのは幸せだなと。ふだんはお芝居の話などを真面目にさせていただく間柄なのですが、舞台上ではなぜかお笑いコンビっぽくなる２人で（笑）、今回もトークはそういう感じになるかもしれません（笑）。水さんは宝塚で本当に縁の深かった方ですし、退団後も仲良くさせてもらっていて、水さんのショーやイベントに何回かゲストで出させていただいたりしています。ですから、今度は私のほうに出ていただきたいとお願いしたら、「もちろん！」と快諾してくださいました（笑）。
【Vol.２は明日掲載】
撮影協力：東京會舘
あやぶきまお○大阪出身、1994年宝塚歌劇団入団。雪組配属後、花組を経て雪組へ組替え。繊細な演技力とのびやかな歌声を持つ男役スターとして活躍。宝塚版『エリザベート』では、フランツ、ルドルフ役などで出演し、深みのある役作りで高い評価を得た。『ファントム』では、キャリエールを演じ、豊かな歌唱力を披露した。また、宝塚初の男役ユニット「AQUA5」に参加、CDを発売し、TV出演やコンサート開催など幅広く活動した。 2010年宝塚歌劇団を退団。主な出演作品は『DRAMATICA/ROMANTICA』『Pal Joey』『ロコへのバラード』『モンティ・パイソンのスパマロット』『サンセット大通り』。現在は、ミュージカルや舞台を中心に活動をしている。また、コンサートなどの歌手活動や声優などさまざまなジャンルにも積極的に挑戦している。今年は『シラノ』『ウェディング・シンガー』に出演。このコンサートのあとは『タンブリング』vol.４（8月）と『モンテ・クリスト伯』（12月）に出演が決まっている。
彩吹真央20周年記念コンサート
『80 seasons』
演出・振付◇港ゆりか
音楽監督◇宮崎誠
出演◇彩吹真央
遠藤瑠美子、福田えり
ゲスト出演◇井上芳雄（東京） 水夏希（大阪）
●4/20◎Bunkamuraオーチャードホール
料金 S席7000円 A席6000円 B席5000円
●4/28◎サンケイホールブリーゼ
料金 S席8000円 A席7000円
問い合わせ 東京音協 03-5774-3030
（現在の販売は電話のみ受付）
http://t-kaiin@t-onkyo.co.jp/
【取材・文／榊原和子 撮影／冨田実布】
