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さまざまな心地良い音楽と共につづられる、少しほろ苦さも残るラブストーリーだった。
舞台は太平洋戦争中のとある南の島。
フランス出身の農園主エミール(轟悠)と島の海軍看護婦ネリー(妃海風)との恋が話の中心となる。
普通、ラブストーリーというと、まず男女の出会いから恋に落ちるまでを描くことが多いが、この作品は二人が好意を抱き合っているところからはじまる。他の作品と少し毛色が違い、両思いになるまでの紆余曲折ではなく、思いが通じ合った後の心の動きを描いているのが、この作品の面白さだと思う。
どんなにのんびりとした空気が流れていても戦争中であるという状況は変わらず、どんなに相手を思っていても相手の全てを知っているわけではない。自身の生まれ育った環境、知らず知らずのうちに自分の中に植え付けられていた偏見・・・それらを超えてでも貫きたい一番大切な思いはなにか?その問いを物語の中でネリーは突きつけられる。
エミールへの思いをはっきりと自覚するたびに、成長していくネリー。
またそんなネリーを終始一貫して愛し続けるエミール。
この図式はそのまま轟と妃海の姿にも重なっているようだった。
妃海は去年の星組公演『めぐり会いは再び2nd』新人公演で初ヒロインを務めた95期の新進娘役。伸びやかな歌声と演技を披露し、ナンバーの多いこの公演でも堂々と抜擢に応えていたが、そんな体当たりで役と向き合い成長を遂げる妃海を側で支えていたのが轟である。
轟が愛に溢れた眼差しで妃海を見つめれば、それだけで妃海演じるネリーがより魅力的な女性として観客の目にも映る。娘役が男役を立て、男役をより魅力的に見せる、というのはよく聞くが、轟が実践していたのはその逆。娘役を魅力的に見せながら、なおかつ自身も主演をつとめる男役として作品の中心を担っていた。轟の男役芸が新しい次元に突入した感じだ。

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このエミールとネリーの恋をよりくっきりと浮かび上がらせるのが、ジョセフ・ケーブル中尉(真風涼帆)と島の娘リアット(綺咲愛里)との恋である。
リアットにはほぼ台詞がないのだが、例え言葉が完全に通じ合わなくとも気持ちは通じ合っているというのが彼女の表情を見ただけでもわかったし、黒塗りもよく似合う。「ハッピー・トーク」が歌われる中での踊りなどもとても可愛らしい。そんなリアットの純真さに惹かれていくのがジョセフだが、真風は丁寧に気持ちの変化やリアットを愛することで生まれた苦悩、決意を見せてくれた。ジョセフが下す決断が結果としてネリーの背中を押すし、彼とエミールとの友情も見所となる重要な役どころだが、落ち着いて役割を果たしている。

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またこの公演、ヒロインをつとめた妃海以外にも若手が多く出演している。全28名の出演者のうち、22名が90期以下(90期=2004年入団)のとても若い座組。それぞれが軍人役などで出演し、ミュージカルナンバーを楽しく盛り上げていた。
そんな中、ポイント、ポイントで作品を締めていたのが専科の面々や、星組の上級生である。
特に今回は英真なおきと美城れんの活躍が目立った。英真は島で土産物屋をしているブラッディ・メリー役。英真が歌う「バリハイ」が島独特の穏やかさやあたたかさを表現して作品の土台を築き上げていた。美城が演じた海兵のルーサー・ビリスはネリーに淡い恋心を抱いている役どころ。シチューポット(如月蓮)と一緒に行動していることが多い、基本はコミカルなキャラクターなのだが、ネリーに手渡した花束の真実を告げるところなど台詞の間もよく、ちょっと切なげで手持ち無沙汰に去っていく様子も場面になんともいえない余韻を残した。

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青い空に青い海、海の遠くに浮かぶ島、やしの樹、紅く沈んでいく夕日、夜になると輝く満天の星・・・南の島を感じさせる一場面一場面の美しさも見逃せない。
ポップな曲やゆったりとした曲、たくさんの楽曲と共に物語を楽しむミュージカルの醍醐味を味わえる作品だ。最後にネリーが選ぶ答えと、それによって生まれた笑顔に触れたら、誰もがきっと幸せな気持ちになれるに違いない。
公演は4月5日〜10日まで日本青年館にて上演中。 


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星組公演
ブロードウェイ・ミュージカル
『南太平洋』

潤色・演出◇原田諒

●3/19〜30◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
●4/5〜10◎日本青年館 大ホール

<公演HP>
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/320/index.shtml




【文/岩見那津子】

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