10月9日に開幕したミュージカル『ALL SHOOK UP』に出演のあとは、OGたちとのレビュー、そしてダンス公演やコール・ポーターのミュージカルなど、湖月わたるの活動には注目作品が並んでいる。そんな作品群について、そして舞台人としての方向などについて話してもらった。
【人間を演じること】
ーーこれまでいろいろなミュージカルに出演して、すっかりミュージカル女優としても活躍中ですが、振り返ると08年4月の『カラミティ・ジェーン』あたりから女優らしさが出てきた気がします。
『カラミティ・ジェーン』は音楽劇で、ジェーンの若い頃から年を取って死ぬまでを演じるなど、はじめての挑戦で大きなポイントになった公演でした。退団してからすごく幅広くお仕事をいただいて、いろいろなジャンルで音楽と触れ合って、そのなかで改めてミュージカルならではの魅力も発見することができたと思います。それに、退めたあとに男性の役を演じる機会があったことで、新しい自分を発見することができました。宝塚にいたときは男性を演じるという意識が強かったし、退団した直後は女性を演じるんだという意識があったんですが、両方を交互に演じるようになって、演技のうえでは人として感じることは一緒なのではないかと。たまたま性別で違うだけで、人間を演じる楽しさを感じるようになりました。
ーー男役らしさとか女性らしさとか、技術への意識から脱して、人を演じる楽しさに没頭できてるということですね。
そうですね。自分らしさというか、自分が演じるうえでどう表現したいかに没頭できる。今、2度目のサンドラを演じて、この3年間で得たものを改めて感じてます。同じ作品だからこそ少しは進歩できた部分もわかるし、女優としての自分を捉え直すいい機会になったと思います。
ーー客観的に見ると、湖月さんの資質は外国のミュージカルに向いていて、必要な華やかさとか明るさはクリアしているし、ゴージャス感もあるのはメリットですね。
でも退団するときには、ローラとかサンドラのような役を頂けるとは思ってなかったので、自分でもびっくりしました(笑)。私の持ち味が翻訳ミュージカルにもし合っているなら(笑)、それはそれでよかったし、自分の持ってるものを生かせる役に出会えて幸せだと思います。
【二面性を表現】
ーー大きなカンパニーの仕事と並行して、ダンス公演『GILLEージル』とか去年の20周年記念公演『ACHE エイク〜疼き〜』とか、自分のジャンルを着々と広げていて、チャレンジャーだなと。
やっぱり“進化していかないといけないんだろうな”とつねに思ってるんです。男性を演じるときも宝塚時代とは取り組み方が違うという話をしましたが、私もそうですが人間って女性的な面と男性的な面という二面性があると思っているんです。宝塚を卒業したから男役も卒業というのではなくてーー最初はそうしていかないといけないのかなと、思っていたところもあったのですがーーこの3年間でいろいろな経験させていただくうちに、自分の持ってる両面性を生かして挑戦していきたいと思うようになったんです。たぶん私にしかできない人間像があって、それは男役で培って来たものと女性を演じてきたなかで出てくるものがミックスされたもので、たとえば現実にはいないような男性であったり、『GILLE』や『ROSE ADAGIO』に繋がるものかなと。
ーー性別を超えた自由な世界?
たとえば西島さんと私のどちらが王子か王女か、観たかたが自由に考えられるような世界で、服装は男でも女性の気持ちを表現してるかもしれないし、西島さんのほうに女性を感じるかたがいてもいい。そういう微妙で深い表現ができればいいなと思っているんです。
ーー湖月さんが男性役をやると単純にかっこいいと思えるので、それは捨てないでほしいですね。今年の宝塚歌劇団のTCAスペシャルのゲストで、素に近い感じで出てきたのに男役のかっこよさがまだ残ってると、すごく評判になりましたから。
(笑)、もちろんいろいろな形で挑戦していきたいと思ってます。
【星組OGばかり!】
ーー『ALL SHOOK UP』のすぐあとに『レザネ・フォール』というレビューがありますね。
これは宝塚OGの私たちだからこそできる、オリジナル・ミュージカルです。昨年末の宝塚を題材とした『愛と青春の宝塚』では、戦時中の先輩方を演じました。『レザネ・フォール』は1928年のパリのレビュー小屋の話で、宝塚歌劇団の演出家の大野拓史さんが作・演出をしてくださいます。なんと出演者が鳳蘭さんを中心に星組OGばかりで、男優さんは福井貴一さんだけ、黒一点ですね(笑)。レビューのシーンもあると思いますし、私に『ACHE』を作ってくださった大野先生がまた私たちに当てて書いてくださるのがすごく楽しみで。やっぱり翻訳劇とまた違うオリジナルで、どんなふうにみんなのカラーを生かしてくださるかが楽しみでなりません。
ーーそして西島千博さんと『GILLE』に続いて来年2月に『ROSE ADAGIO』。こちらは湖月さんの得意のダンスを生かした公演で。
2年ぶりの第2弾です。演出してくださる川崎悦子先生は宝塚時代から私をよく知っててくださる先生で、すごく素敵な振付をしてくださるんですが、前回は完璧に私を男性像でイメージされて(笑)、今回もたぶん男性に近いイメージではないかと思ってます。有名な「眠れる森の美女」を題材に、現代に置き換えたものですが、曲も前回同様マリンバのSINSKEさんが書いてくださるので、ほとんどオリジナルに近いものと思っていただければ。『GILLE』もそうでしたが幻想的で耽美的な世界を作り出したいと思っています。
ーー西島さんとは素敵なダンサーですが、一緒に踊る気持ちはいかがですか?
とても想像力豊かで魅力的なかたです。クリエイティブなお仕事をされているので、凄いと思います。そんな方と踊らせていただくので、私も今以上にレッスンに励もうと思います。
【縁の深い荻田作品】
ーーそして5月に元宝塚歌劇団演出家の荻田浩一さんで『絹の靴下』。これはグレタ・ガルボの映画「ニノチカ」もあるし、ブロードウェイ・ミュージカルをフレッド・アステアで「絹の靴下」として再映画化したものもありますね。
荻田先生ですから、原作からどこまで飛躍するか楽しみです。荻田先生とは本当にご縁があって、先生の初演出した新人公演が私が主演した『カサノヴァ・夢のかたみ』で、演出家としてのデビュー作『夜明けの天使たち』が私の初主演で、初めてのショー作品『パッサージュ』にも私は出ていましたし、芸術祭作品賞を受賞した『ロマンチカ宝塚'04』のときにはトップで主演してました。そんな荻田先生が、私にこのニノチカ役が似合ってると言ってくださったので、私をよくご存知の先生がそう言ってくださるならと思って。正面からぶつかっていきたいと思ってます。
ーーダンスもたくさんありそうで楽しみです。
デュエットダンスがあるんです。これは名倉加代子さんが振付けしてくださるそうなので、すごく嬉しいです。ニノチカが初めて絹のストッキングをはいて女性として目覚めていくシーンがあって、そこをどう振付けしてくださるのかどんな踊りになるか、わくわくしています。今回初めて今村ねずみさんと踊るのも楽しみです。
ーー今村さんも男前でセクシーなダンスを踊られる人ですね。
素敵なダンスをご一緒しながら女性に目覚めたいと思います(笑)。ダンスがたくさんあるミュージカルというのがなんといっても嬉しいんです。最近のミュージカルはほとんど歌がメインで、なかなかダンスをたくさん踊らせていただくことが少ないので。これは音楽もコール・ポーターさんですから、美しいメロディがたくさんありますし、おかしな3人組も出てきますし、ハッピーなミュージカルです。それに樹里(咲穂)ちゃんとの共演はすごく久しぶりなんです。劇団で宙組で一緒だった頃以来かもしれません。それも含めて見どころ満載な作品になると思います。
ーーではまず『ALL SHOOK UP』をがんばっていただいて。
2年前より女性として進化したサンドラに会いにきてください(笑)。
●10/9〜17◎青山劇場
●10/23〜25◎シアターBRAVA!
● 11/7〜8◎愛知県芸術劇場 大 ホール
演出・振付◇デビッド・スワン
脚本◇ジョ−・ディピエトロ
出演◇坂本昌行 玉置成実 湖月わたる 岡田浩暉 諏訪マリー 尾藤イサオ 他
<料金>青山劇場/SS席¥12000 S席¥11000 A席¥9500
<お問合せ>東京公演/Quarasエンタメ事務局 0570-044-099
東京グローブ座 03-3366-4065
大阪公演/キョードーチケットセンター 06-7732-8888
名古屋公演/キョードー東海 052-972-7466
●11/21〜22◎東京厚生年金会館大ホール
● 12/14〜15◎梅田芸術劇場メインホール
構成・演出◇大野拓史
出演◇鳳蘭 麻路さき 湖月わたる 彩輝なお 星奈優里 福井貴一 他
<料金>東京厚生年金会館/S席¥8500 A席¥5000
梅田芸術劇場/S席¥8500 A席¥5000 B席¥3000
<お問合せ>梅田芸術劇場/06-6377-3800
●2010/2/11〜14◎天王洲 銀河劇場
●2/19〜20◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
構成・演出・振付◇川崎悦子
音楽・演奏◇SINSKE(マリンビスト)
出演◇西島千博 湖月わたる 他
<料金>銀河劇場/S席¥8800 A席¥6800
シアター・ドラマシティ/¥9000
<お問合せ>梅田芸術劇場/06-6377-3800
●2010/5月中旬◎青山劇場
●2010/6月中旬◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
作詞・作曲◇コール・ポーター
演出◇荻田浩一
出演◇湖月わたる 今村ねずみ 樹里咲穂 渡部豪太 戸井勝海 伊礼彼方 神田恭兵 他
<お問合せ>梅田芸術劇場/06-6377-3800
【取材・文/榊原和子】















