
オードリー・ヘプバーンの名演技で知られる映画の舞台化である。心理サスペンスの面白さを生かした室内劇の構造で、ヒロインが盲目というハンディを超えて悪漢たちと立ち向かうプロセスが魅力の人気戯曲で、ここ10年の間にも、三田佳子、安寿ミラ、彩輝なおといった女優たちによって上演されている。
今回の主役は朝海ひかる。このあと『ローマの休日』も控えている朝海にとっては、オードリー・ヘプバーンのイメージを意識せざる得ない舞台だったと思うが、中性的で硬質なオードリーのイメージを裏切らずに、独自のヒロインを作り上げてみせた。
場面はヒロインの留守宅に悪漢たちが集まるところから始まる。
事故で失明したスージーと結婚したサム(山口馬木也)はカメラマンで、空港で1人の女性から麻薬を隠した人形をそれと知らずに預けられる。だが、いつのまにかその人形は見当たらなくなってしまう。
サムが人形を隠したと疑う3人の男たちは、彼の留守に家にやってきて、スージーが盲目であることを利用して罠をしかけ、なんとか人形のありかを聞き出そうとする。
サムの友人のふりをするマイク(葛山信吾)、刑事と偽るクローカー(窪塚俊介)、サムを妻の浮気相手と言いがかりをつける男とその父になりすますロート(加藤雅也)。だが盲人ならではの聴覚と鋭い勘でそのことに気づいたスージーは、近所の少女グローリア(伊藤有沙)に助けを求め、サムが戻ってくるまで3人と闘う意志を固める。
タイトルにあるように、「暗くなればフィフティフィフティで闘えるはず」と思いつくスージーの頭脳戦略とその闘いぶりが、まず大きな見どころだ。同時に、それまで事故で光を失ったことに苛立ちを覚え、盲目である自分に反発さえ抱いていたスージーが、悪漢たちと闘い抜いたことで、自身の現実を受け入れて成長していく姿も描き出されている。
その内面のドラマには、並行して近所の少女グローリアとの関係の変化も描かれていて、2人がこの危機をともに闘うなかで、互いを必要とし存在価値を認め合う姿はまさに感動的で、この作品が持つ奥深さを感じさせてくれる。
スージーの朝海ひかるは、女優としてミュージカルには数多く出演してきたが、今回はストレートプレイに初挑戦。盲目であるいたいけさと悪漢たちに闘いを仕掛ける芯の強さを矛盾なく見せる。転倒する場面が何度もあったり、アクションがあったりと、普通のストレートプレイよりもハードな動きが多い舞台だが、身体感覚に優れているだけに、それらの見せ場をリアルに見せられるのは朝海の強みだろう。
スージーの夫サムには山口馬木也。愛情深く妻を見守り、なんとか自立をさせようとする優しさを全身で感じさせる。
悪漢のなかでも人間としてスージーと向き合い、彼女を傷つけまいとするマイクは葛山信吾。悪である自分への葛藤や苦悩が見える役作りだ。
テンションの高さとキレやすさでチンピラ風な悪を見せるクローカーの窪塚俊介は、個性の強さでいいスパイス役。
もっとも手強い悪漢のロート役には加藤雅也。人を殺すことを愉しむ人間の不気味さと怖さを前面に押し出して、 パラノイア的な恐さで迫ってくる。このロートとスージーの闘いが後半のクライマックスで、上背のある加藤が華奢な朝海に迫る構図だけで、手に汗を握らせる見どころになっている。
日常感いっぱいの普通の家にあるさまざまな家具や小物、たとえば照明や窓のブラインド、洗濯機や冷蔵庫、電話や花瓶などが大きな意味を持ってくる面白さ。また、そこで繰り広げられる恐怖に満ちた死闘。ワンシチュエーションの舞台劇ということを生かした優れた戯曲であることを、改めて感じさせてくれる舞台だ。そして、すさまじい闘いを終えたスージーと、その彼女を「スージーは1人で歩けるのよ」と誇り高く自慢する少女グローリア、その2人の姿にひときわ胸が熱くなる作品である。
『暗くなるまで待って』
作◇フレデリック・ノット
演出◇板垣恭一
音楽◇NAOTO
出演◇朝海ひかる、葛山信吾、窪塚俊介、山口馬木也、加藤雅也 他
●09/12/20〜29◎東京グローブ座
●10/1/9◎名鉄ホール
●10/1/11◎イズミティ 大ホール
〈料金〉
東京グローブ座 S席¥8500/A席¥6300(全席指定/税込)
名鉄ホール ¥8500(全席指定/税込)
イズミティ A席¥6500/B席¥6000(前売券 全席指定/税込)、A席¥7000/B席¥6500(当日券 全席指定/税込)
〈問合せ〉
東京グローブ座/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜19:00)
名鉄ホール/中京テレビ・事業部 052-971-2500(月〜金 9:30〜17:30)
イズミティ/(財)仙台市市民文化事業団 総務課企画調整係 022-727-1875(平日9:30〜17:00)
【文/榊原和子】















































