えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

宝塚ジャーナルは2019年2月20日に引っ越しました。
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昭和〜平成の宝塚歌劇の名曲の数々を歌い継ぐ!『𠮷憲治&岡田敬二 ロマンチックコンサート』』6月に開催!

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瀬戸内美八、剣 幸、紫苑ゆう、杜けあき、南風 舞、こだま愛、
涼風真世、姿月あさと、朝海ひかる、大和悠河、実咲凜音
 
宝塚歌劇105周年となる今年、宝塚歌劇団音楽家𠮷憲治が活動60周年、共に名作を生み続けてきた演出家岡田敬二が活動55周年を迎えた。今回、2人のもとに宝塚歌劇団卒業生と現役生が集まり、昨年、20作目を迎えた「ロマンチック・レビューシリーズ」のナンバーや𠮷憲治の懐かしの名曲で綴る、華やかなコンサートを、6月1日・2日、梅田芸術劇場 メインホールで開催する。

白井鐵造『皇帝と魔女』から生まれたデビュー曲「愛の歌」、ザ!!レビューとも言える「ル・ポァゾン 愛の媚薬」、「シトラスの風」や、「朝日の昇る前に(華麗なるギャツビー)」「この愛よ永遠に TAKARAZUKA FOREVER(ザ・レビュー供法廖崟兇正しく美しく」など宝塚歌劇を彩ってきた数々の名曲と、時代を反影した主題歌を歌い継ぐスペシャルステージとなる。

出演は、瀬戸内美八、剣 幸、紫苑ゆう、杜けあき、南風 舞、こだま愛、涼風真世、姿月あさと、朝海ひかる、大和悠河、実咲凜音といった二人の作品にゆかりある宝塚歌劇団卒業生が集結。また、宝塚歌劇団から専科の美穂圭子、悠真 倫、愛月ひかるが特別出演する。

【コメント】 
 
𠮷憲治(作曲・編曲・音楽監督)
宝塚歌劇一筋の作曲活動 60 年。作曲数は 3000 曲を超える。
宝塚歌劇のショー・芝居はあくまでも「愛と夢とロマンの世界」。そこに流れる音楽は、時にやさしく、甘く、強く、激しく、そして喜び・怒り・哀しみ・楽しさもすべて「清く正しく美しく」あるべきと、一音一符大切にメロディを生み出してきた。
振り返れば半世紀以上、共に宝塚歌劇を愛し作品をつくり上げてきた岡田敬二氏との「ロマンチッ
ク・シリーズ」も20作品。皆さまに愛され口ずさんで頂いたその曲の数々。元トップスター中心に繰り広げる歌の響宴に是非酔いしれて頂ければ…。
<主な作品楽曲>
●「清く正しく美しく」  
●「丘の上のジョニー」(1978年『丘の上のジョニー』) 
●「この世にただひとつ」(1979年『心中・恋の大和路』)
●「この愛よ永遠に  TAKARAZUKA FOREVER」(1984年『ザ・レビューII -TAKARAZUKA FOREVER-』)
●「ル・ポアゾン 愛の媚薬」(1990年『ル・ポアゾン 愛の媚薬』)  
●「朝日の昇る前に」(1991年『華麗なるギャツビー』)
●「ナルシス・ノアール」(1991年『ナルシス・ノアール』)  
●「LOVER'S GREEN」(1992年『PUCK』)
●「熱愛のボレロ」(1994年『ラ・カンタータ!』)
●「シトラスの風」(1998年『シトラスの風』)
●「タカラヅカ・グローリー!」(2004年『タカラヅカ・グローリー!』)

岡田敬二(構成・演出) 
演出家生活 55 年を迎える今年、尊敬する憲治先生の名曲をベースにした、ロマンチック・コンサートを開催させていただく事になりました。嬉しい宝塚の名曲の数々をお楽しみいただければ幸いです。
<主な作品> 
●『ザ・レビュー』(1977年)
●『ディーン』(1981年)  
●『グラン・エレガンス』(1983年)  
●『キス・ミー・ケイト』(1988年)
●『グランド・ホテル』(1993年)
●『ザ・レビュー`99』(1999年)
●『タカラヅカ・グローリー!』(2004年)

【ロマンチック・レビュー シリーズ】
上演年  組  タイトル  主な出演者 
1984年 花組 ミュージカル・レビュー『ジュテーム』高汐巴、大浦みずき、若葉ひろみ
1985年 花組 ミュージカル・アドベンチャー『アンドロジェニー』−麗しき乙女たち− 高汐巴、大浦みずき、秋篠美帆
1986年 月組 グランド・レビュー『ラ・ノスタルジー』剣幸、こだま愛、涼風真世
1989年 雪組 グランド・レビュー『ラ・パッション!』杜けあき、鮎ゆうき、一路真輝
1990年 月組 ミュージカル・レビュー『ル・ポァゾン 愛の媚薬』剣幸、こだま愛、涼風真世
1991年 星組 ミュージカル・レビュー『ナルシス・ノアール』日向薫、紫苑ゆう、毬藻えり
1992年 月組 ミュージカル・レビュー『夢・フラグランス』涼風真世、麻乃佳世、若央りさ、
1994年 星組 ロマンチック・レビュー『ラ・カンタータ!』紫苑ゆう、麻路さき、白城あやか
1995年 花組 ロマンチック・レビュー『ダンディズム!』真矢みき、純名里沙、愛華みれ
1996年 雪組 ロマンチック・レビュー『La Jeunesse!』高嶺ふぶき、轟悠、花總まり、和央ようか
1997年 星組 ロマンチック・レビュー『魅惑 II—ネオ・エゴイスト!—』麻路さき、月影瞳、稔幸
1998年 宙組 ロマンチック・レビュー『シトラスの風』姿月あさと、花總まり、和央ようか、湖月わたる、朝海ひかる
2000年 花組 ロマンチック・レビュー『Asian Sunrise』愛華みれ、大鳥れい、匠ひびき
2001年 雪組 ロマンチック・レビュー『Rose Garden』轟悠、月影瞳、絵麻緒ゆう、朝海ひかる
2003年 宙組 ロマンチック・レビュー『テンプテーション!』—誘惑— 和央ようか、花總まり、水夏希、大和悠河
2005年 花組 ロマンチック・レビュー『ASIAN WINDS!』—アジアの風— 春野寿美礼、ふづき美世、彩吹真央、真飛聖、蘭寿とむ
2006年 星組 ロマンチック・レビュー『ネオ・ダンディズム!—男の美学—』湖月わたる、白羽ゆり、安蘭けい
2009年 宙組 ロマンチック・レビュー『Amour それは…』大和悠河、陽月華、蘭寿とむ、北翔海莉
2016年 星組 ロマンチック・レビュー『ロマンス!!(Romance)』北翔海莉、妃海風
2018年 宙組 ロマンチック・レビュー『シトラスの風−Sunrise−』〜Special Version for 20th Anniversary〜 真風涼帆、星風まどか


〈公演情報〉
『𠮷憲治&岡田敬二  ロマンチックコンサート』
作曲・編曲・音楽監督◇𠮷憲治
構成・演出◇岡田敬二
出演者◇瀬戸内美八 剣 幸 紫苑ゆう 杜けあき 南風 舞 こだま愛 涼風真世 姿月あさと 朝海ひかる 大和悠河 実咲凜音
毬乃ゆい、天羽珠紀、舞城のどか、桜 一花、鶴美舞夕、咲希あかね、隼海 惺
宝塚歌劇団 特別出演◇(専科)美穂圭子、悠真 倫、愛月ひかる
※剣 幸、姿月あさとは6/2のみ、涼風真世は6/1のみの出演となります。
●6/1・2◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S席11,000円  A席7,000円  B席5,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場メインホール 06−6377−3800
〈発売日〉5月11日(土)

ミュージカルレビューKAKAI歌会2019


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東山義久&海宝直人 ダブルキャストで主演のミュージカル『イヴ・サンローラン』開幕レポ&ステージフォト!

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 イヴ・サンローランは、約40年に渡りトップデザイナーとしてファッション業界をリードし、 貴族や女優等にも多大な影響を及ぼした20世紀を代表する世界的デザイナー。 そのイヴ・サンローランの切なくも美しい人生を、ファンタジックに、そしてドラマチックに描き出す舞台だ。

鬼才荻田浩一の作・演出、音楽を斉藤恒芳、衣裳を朝月真次郎が担当。Wキャストでタイトルロールを演じるのは、類い稀なる身体能力で魅了する東山義久と、 圧倒的な歌唱力で人気の海宝直人。共演に上原理生、大山真志、川原一馬、神田恭兵、奥田 努、和田泰右といった男性俳優陣、伊東弘美、皆本麻帆、さらに安寿ミラと豪華な出演者陣による新作オリジナルミュージカルとして作り上げられた。
その舞台写真とレポート(東山義久バージョン)が到着した。

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【レポート】
イヴ・サンローランという名前は知っていても、彼の人となりや生き様を詳しく知る人はそれほど多くないだろう。この作品では、イヴの恋人かつビジネスパートナーであるピエール・ベルジェの回想から、彼の一生が歌と踊りに乗せて紐解かれてゆく。
生い立ちやパリで才能を認められた 17 歳の頃、クリスチャン・ディオールのメゾンに入った経緯や華麗なデザイナーデビュー、ピエールとの出会い…。今や「モードの帝王」と呼ばれる彼にも、繊細で圧倒的な美意識を持つ一人の青年として夢と希望に溢れた初々しい時代があったんだなぁと感じ入った。
面白いのは、イヴのいたずら書きに登場して後に絵本になったルル(後に彼のミューズとなったルル・ド・ラ・ファレーズを重ねている)、そしてクリスチャン・ディオール、エルザ・スキャパレリ、ココ・シャネルなどの有名デザイナーらが、入れ替わりでこの物語の案内役になること。様々な視点が時代を語るとともにイヴの多面性を見せてくれる。

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順風満帆だったデザイナー生活が歪み出すのは、フランス陸軍に入隊してから。精神を病んで 19日でドロップアウト。精神病院へと送られてディオールのメゾンを辞任。ピエールが奔走して彼を救い、メゾン「イヴ・サンローラン」が誕生する。イヴはプレタポルテを発表し、モンドリアン・ルックで大成功。今までにない概念、男物仕立てのパンツスーツやサファリルックなどで時代を切り拓いてゆく。
劇中でこういったモードやトレンドが見られるのは最高に楽しく、有名人が次々と登場するのも面白い。特に後半は、イヴの生み出した様々なモードがモデル役により紹介され、エレガンスと洗練の極致、ファッション界の空気感が味わえる。
印象的だったのは髪色を変えたアンディ・ウォーホルのナンバー。髪色を変えた何人ものウォーホルが歌い踊ることで、アメリカの大量生産という時代、そしてウォーホル自身の作風をも表す。こんなユニークな工夫は、ミュージカルという舞台芸術ならでは、だ。

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イヴが有名、大物になるにつれて、表舞台の華やかさと内面の闇のギャップがますます開き、ドラマの光と影が色濃くなる。アルコールに溺れて自堕落になるイヴに別れを告げるピエール。果たしてイヴは人生を終える時、幸せだったのかどうか。 
東山義久のイヴは優しげで繊細、どこか放っておけない魅力を放っている。イヴを支える上原理生のピエールがまた二枚目で、この二人がいちゃつく様子はあまりに幸せで微笑ましいとしか言いようがない。安寿ミラのココ・シャネルは強くカリスマ性に溢れて格好良い。皆本麻帆はキュートでチャーミング、伊東弘美は堂々たる風格でエルザを演じた。何役も演じるアンサンブルの活躍も目を引いた。
万華鏡で夢の世界を覗くように、立体で立ち上がり心に刺さるイヴの人生。必見だ。

(文:三浦真紀 写真:岩田えり)

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〈公演情報〉
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ミュージカル『イヴ・サンローラン』
作・演出◇荻田浩一 
音楽◇斉藤恒芳 
衣裳◇朝月真次郎
出演◇東山義久/海宝直人(Wキャスト) 
伊東弘美 皆本麻帆 
上原理生(Wキャスト※東京公演2/19まで出演) 大山真志(Wキャスト/役替り・全日程出演) 川原一馬(Wキャスト) 神田恭兵 奥田努 和田泰右 
青木謙 RIHITO 中塚皓平 橋田康 小野沢蛍 中岡あゆみ
安寿ミラ 
●2/15〜3/3◎よみうり大手町ホール
〈料金〉11,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799(平日 11 時〜18 時・土日祝 10 時〜18 時)
●3/26◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00〜17:00 月曜休み ※祝日の場合翌日) 
〈料金〉A席9,800円 B席6,800円(全席指定・税込)
〈公式サイト〉 https://www.yume-monsho.com/
 





ミュージカルレビューKAKAI歌会2019


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ミュージカル界の実力派が集結するミュージカルレビュー『KAKAI 歌会 2019』3月、三越劇場にて開催!

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華やかなステージ、ミュージカルレビュー『KAKAI 歌会 2019』が、3月に三越劇場にて開催される。構成・演出は原田優一、出演者は原田をはじめ、泉見洋平、出雲綾、今井清隆、田村良太、畠中洋、原田薫、愛加あゆ、宮島朋宏(50音順)といったミュージカル界の実力派ばかり。2013年に三越劇場にて初演を行ったミュージカルレビュー『KAKAI 歌会』は好評を博し、チケットは即日完売した。以降、シリーズ化し地方公演や豪華客船「にっぽん丸」での上演も行いつつ、2015年、2017年に三越劇場で2年ごとに上演してきた。
シリーズのテーマとして、「my favorite songs“私のお気に入り”」を掲げ、「歌を奏で、歌で遊ぶ」ことをモットーに、「大人の歌遊び」としてこれまでご自身が出演してきた作品や大好きな作品のナンバーを各々が選曲し生バンドで歌う。正統派ミュージカルナンバーから笑いや技巧に溢れたアレンジ、J-POP、歌謡曲と年齢・性別を問わず幅広い観客に楽しんでもらえる企画だ。

今回はミュージカルの名ナンバーを集め、昔話「桃太郎」をベースにしたオリジナルミュージカル「ピーチ・ジョンヌ」、アニメソングメドレー、わらべ歌レビュー、そして「KAKAI 歌会」名物のマッシュアップと合計71曲を上演時間約2時間で歌い繋ぐ。
構成・演出はミュージカル『マリー・アントワネット』ルイ 16 世役、『レ・ミゼラブル』マリウス・アンジョルラス役、『ミス・サイゴン』クリス役等、ミュージカルで幅広く活躍する原田優一。近年では演出活動にも力を入れていて、三越劇場開場90周年記念ミュージカル『デパート!』やオフブロードウェイ・ミュージカル『bare』等を演出している。 

【構成・演出・出演:原田優一コメント】
この度4回目となる『歌会』ですが、毎回「予想と期待は超えるものであり裏切るもの」を私のモットーとして作ってきましたが、今回はキャスト数が過去最多の9名という時点で私の予想を遥かに超えてきました(笑)。
こんなにも魅力的で豊富なキャラクターが揃ったのですから、作り手の私としては気合いが入らない訳がありません。あの手この手を使って最高の材料を生かした最高の料理をお届けしたいと思います。大人の音楽遊びを全身で浴びにいらしてくださいませ。

実力派のキャストが自ら「大事にしている曲」「歌いたい曲」を持ち寄り、レビューとして構成。老舗デパートの中にあるレトロかつ重厚な趣の劇場で、生バンドをバックに華やかに、美しく(!?)、楽しく歌い、踊る! 


〈公演情報〉

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ミュージカルレビュー『KAKAI 歌会 2019』
構成・演出原田優一
音楽監督YUKA
振付中村陽子
出演◇泉見洋平、出雲綾、今井清隆、田村良太、畠中洋、原田薫、原田優一、
愛加あゆ、宮島朋宏(50 音順)
●3/8〜17◎日本橋・三越劇場(日本橋三越本館6階)
〈料金〉S席7,800円 A席6,500円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉三越劇場 0120-03-9354 (10:30〜18:00) 
 
 


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ミュージカル『イヴ・サンローラン』いよいよ舞幕! ココ・シャネルとサンローランの母親を演じる! 安寿ミラ インタビュー

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フランスを代表する伝説のファッションデザイナー イヴ・サンローランの華麗な人生の光と影を描くミュージカル『イヴ・サンローラン』。この舞台が、いよいよ明日、2月15日によみうり大手町ホールで開幕する。(3月3日まで。3月26日には兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールでも上演)
 
イヴ・サンローランは、約40年に渡りトップデザイナーとしてファッション業界をリードし、 貴族や女優等にも多大な影響を及ぼした20世紀を代表する世界的デザイナー。
彼の切なくも美しい人生を、ファンタジックに、そしてドラマチックに描き出すこの舞台で、作・演出を担当するのは、文化庁芸術祭演劇部門優秀賞も受賞し、ミュージカルだけでなくストレートプレイやショー等の演出も手がけて、高い評価を得ている荻田浩一。主演のイヴ・サンローランはダブルキャストで、類い稀なる身体能力で魅了する東山義久と、圧倒的な歌唱力で人気の海宝直人が演じる。 共演には上原理生、大山真志、川原一馬、神田恭兵、奥田 努、和田泰右といった若手注目株の男性俳優陣と、伊東弘美、皆本麻帆、そして安寿ミラと多彩で華やかなキャストが揃った。
その舞台で、世界的デザイナーのココ・シャネル役、イヴ・サンローランの母・ルシエンヌ役など複数の役柄で出演する安寿ミラに、作品と役柄について話を聞いた。
 
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180度違うココ・シャネルと
イヴの母ルシエンヌ
 
──安寿さんにとってフランス、とくにパリは30年近く訪れていて縁が深い場所ですから、イヴ・サンローランも身近な存在では?
それが、そんなに身近な存在ではなかったんです。高名なデザイナーですから一般的な知識はありましたが、それ以上ではなくて、たとえばサンローランのもので持っているのはバッグと香水くらいしかなくて。
──演じる役は同じ時代のデザイナー、ココ・シャネルということですが、ぴったりですね。
皆さんにそう言われますし、シャネル役と聞いたときは「あ、来たか!」と(笑)。でも実はココ・シャネルという人のことも、そんなに詳しくは知らなくて、一代で世界的なブランドを築いた人で、自立した強い女性でというイメージくらいしかなくて。色々な資料を見たら、イヴ・サンローランとはデザイナー同士として刺激し合える存在で、わりと仲が良かったのだなと。
──そのシャネル役だけでなく、イヴ・サンローランの母のルシエンヌ役も演じるのですね。
少年時代のイヴの若い母親で出てきます。作・演出の荻田(浩一)さんは、「シャネルとルシエンヌは180度違う人」とおっしゃっていて、本当に正反対の女性なんです。シャネルは言っていることがすごくよく分かるし、喋り方も普段の私みたいな感じでいいのですが(笑)、ルシエンヌは息子を溺愛している母親で、そのへんは想像しながら作っていっているところです。
──サンローランの一家は仏領アルジェリアで暮らしていたそうですね。
オランというところで生まれて、豊かな自然の中で伸び伸び育ったようですね。姉が2人がいて、みんなに愛されて甘やかされていたようです。ルシエンヌはそういう一家の典型的な母親という感じだったのかなと思っています。
──さらにもう1役、ベティ・カトルーも演じます。
イヴの友人のモデルなんです。彼女が出ている『イヴ・サンローラン』というドキュメンタリーがあるのですが、それを見たら、すごく強い女性でシャネルと似ているんです。劇中でベティに「シャネルがこう言っていたわ」とか喋らせたりするので、荻田さんにとってシャネルと重なる存在として出しているのかもしれません。
 
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孤独で壮絶な闘いの代償として
世界中が彼の服を愛する
 
──ミュージカルということで、音楽はいかがですか?
すごく難解です(笑)。斉藤恒芳さんですから曲はどれも素敵なんですけど、海宝(直人)さんですら「難しい」と言っていて。「あなたがそう言うのなら、私たちはどうしたらいいの」と(笑)。シャネルの長いソロもあるのでプレッシャーです。詩も荻田さんなので美しいのですがすごく抽象的で、歌い手がちゃんと理解していないと伝わりにくいだろうなと。でも素敵な曲ばかりで、イヴが歌うソロなどすごく綺麗で、聞いてて泣けてくるくらいです。
──ダンスもあるのですか?
私は踊らないのですが、6人のアンサンブルの方がダンサーで、ダンスで空間を繋いでいったり、モデルになってランウェイを歩いたりするんです。すごくカッコいいです。時空も変わるし、荻田さんらしい立体的な構成になっていて、とても幻想的な舞台になると思います。
──イヴ・サンローラン役は、東山義久さんと海宝直人さんがダブルキャストで演じますが、2人の個性の違いは? 
ヨシ(東山)の場合は、デザイナーとしての孤独がかつて彼が演じたニジンスキーとも繋がるのですが、こういうふうに生きたい、もっと自分はこうなりたい、強くなりたいという、それが見えるようなサンローランです。海宝さんは、自分は全てできるだろうという自信を踏まえた上で、でも誰か居てほしいというンローランで、そばで支えてあげたくなる、母性本能をくすぐられる甘さがあります。そのどちらもイヴ・サンローランなのだと思います。 
──今、稽古している中で作品全体からどんなことを感じますか?
やはり荻田さんらしい作品だなと。芸術家の苦悩とか葛藤、名声を掴んでいる人たちがどれだけ孤独だったか、どれだけ繊細だったか、そこに集約されていると思います。名声も富も得ているのに、芯の部分ではこんなにも孤独で苦しんでいたんだという、そこをさらけ出してくる舞台だなと。
──次々に新しいものを創り続けなくてはいけないのですから、本当に苛酷だと思います。
デザイナーって次のシーズンのモードを1人で考えて生み出すわけですよね。それも何百着という単位で。次第にアイデアも枯渇していくでしょうし、誰も助けてくれない。とくにフランスのデザイナーは世界中から注目されているし、国にも期待されていますから。
──創り出すものが国の経済にまで影響するわけですね。
毎回毎回、壮絶な闘いですよね。その中でお酒とか薬物とか、あるいは人に縋ったりすることになる。伝記映画でもそのへんは赤裸々に描かれていましたけど、心も体もボロボロになっていく。でもその代償として、世界中の人たちが彼のファッションを愛して着てくれている。シャネルにもサンローランにも伝えてあげたいですよね。貴方たちの生み出したものは、今でもこんなに愛されているし生きていると。
 
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人間の醜さや影の部分と
美しさや光の部分を同時に描く
 
──女優・安寿ミラにとって荻田作品の魅力はどんなところですか?
荻田さんは自分が観たい舞台、作りたい作品の色がすごくはっきりしているので、そこへ入っていけばいいので、ある意味ではラクなんです(笑)。もちろんシャネルもルシエンヌも簡単な役ではないですし、とくに今回はルシエンヌ役のような母親役を演じさせてもらうことは、自分にとってまた役柄が広がる楽しみがあります。
──そういう意味では、昨年の夏の稲垣吾郎さんとの舞台『君の輝く夜に』も、新鮮な安寿ミラでした。
あれは等身大でしたね(笑)。普通の女性で、すごくやりやすかったです。とくにそのあとの舞台が『タイタニック』(再演)でしたから、稽古しながら等身大ってなんてラクだったんだろうと(笑)。
──同年代のキャリアウーマンから、上流社会の老貴婦人への変身ですね。
自分でもなんという振り幅なんだろうと(笑)。でもアイダさんは本当に素晴らしい女性ですから、あの役をまた演じられて良かったです。
──今回の3役も楽しみです。最後に改めて抱負を。
ルシエンヌ役は、とにかく息子を愛し抜くだけです(笑)。私、意外と子供好きなんですよ。とくに男の子が好きで、小さな男の子を見たら付いて行きたくなっちゃうくらいで(笑)。シャネル役のほうは、皆さんが「ぴったり」とおっしゃる意味がわかるような、チクッと言う一言を面白がっていただけたら(笑)。作品の見どころとしては、皆さんの知らないイヴ・サンローランの世界、彼を取りまく人間たちとか、彼自身の苦悩や孤独を、難解だけど素敵なメロディと美しい歌詞で伝える舞台で、人間の醜さや影の部分と美しさや光の部分を、同時に描き出す舞台になると思います。
 
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あんじゅみら○長崎県出身。1980年に宝塚歌劇団で初舞台を踏み、92年花組トップスターに。95年『哀しみのコルドバ』『メガヴィジョン』で退団。女優として舞台を中心に活躍中。ANJUの名で自身のダンスアクト『FEMALE』の構成・演出をはじめ、宝塚歌劇団など舞台の振付を数多く手がけている。近年の主な出演舞台は『アルジャーノンに花束を』『グランドホテル』『タイタニック』『FREE TIME,SHOW TIME君の輝く夜に』など。3月は宝塚歌劇公演、月組のレビュー・エキゾチカ『クルンテープ 天使の都』、『仙名彩世 ミュージック・サロン』の振付も手がける。
  
〈公演情報〉
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ミュージカル『イヴ・サンローラン』
作・演出◇荻田浩一 
音楽◇斉藤恒芳 
衣裳◇朝月真次郎
出演◇東山義久/海宝直人(Wキャスト)
伊東弘美 皆本麻帆
上原理生(Wキャスト※東京公演2/19まで出演) 大山真志(Wキャスト/役替り・全日程出演) 川原一馬(Wキャスト※2/20以降出演)神田恭兵 奥田努 和田泰右
青木謙 RIHITO 中塚皓平 橋田康 小野沢蛍 中岡あゆみ
安寿ミラ
●2/15〜3/3◎よみうり大手町ホール
●3/26◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈東京公演料金〉11,000円(全席指定・税込)
〈兵庫公演料金〉A席 9,800円、B席 6,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京公演 キョードー東京 0570-550-799
〈お問い合わせ〉兵庫公演 芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255 
 
 
 

【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】



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