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ミュージカルセーラームーンシリーズ最終章!お得なチケット販売中。

OG公演レビュー

誰の心にも届く美しい魔法の力 ミュージカル『魔女の宅急便』開幕!

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児童文学の傑作であり、スタジオジブリのアニメーションをはじめ、数々のメディアで取り上げられてきた『魔女の宅急便』が、装いも新たにミュージカルの舞台となって、新国立劇場・中劇場で開幕した(4日まで。のち8月31日〜9月3日まで大阪の梅田芸術劇場シアタードラマシティでも上演)。

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「魔女の宅急便」は、児童文学作家の角野栄子が1982年〜2009年の27年間に渡り執筆した全6巻の児童書。1989年に宮崎駿監督により、スタジオジブリが制作したアニメーション映画が大ヒットし、日本はもちろん、世界的に愛される作品となった。その後、1993年〜1996年には蜷川幸雄演出によりミュージカル化。2014年に実写映画化、そして2016年にはイギリス・ウェストエンドにて舞台化が行われるなど、様々なクリエーターの手によって、今尚大きな広がりを見せ続けている。

今回のミュージカル版は、そんな原作をもとに、新進気鋭の若手制作チームによる新脚本・新演出で繰り広げられる新生『魔女の宅急便』。ヒロインの魔女の女の子キキに「東宝シンデレラ」の上白石萌歌、空を飛ぶことに憧れる少年トンボにジャニーズJrの阿部顕嵐、キキの理解者となるパン屋のおかみさんおソノに宝塚で星組と雪組でトップ娘役を歴任した白羽ゆり、そのほか強力なキャスト陣が揃っての上演となっている。

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【STORY】
街の人々が皆家族同然で、人間と魔女が共に住むことを誰もが当然のこととして受け留めている小さな街で育った、魔女の女の子キキ(上白石萌歌)は、古くから伝わる魔女の世界の習わしにのっとり、13歳になった満月の夜、相棒の黒猫・ジジ(小林百合香、夏鈴・Wキャスト)と共に魔女のお母さんコキリ(岩崎ひろみ)、お父さんオキノ(横山だいすけ、中井智彦・Wキャスト)と暮らした家を離れて旅に出る。キキは自分で新しい町を見つけ、1年後には自力で暮らせるようにならなければならない。けれども、空を飛ぶ魔法しか知らないキキは、ようやく降り立った新しい町コリコで、故郷とは全く異なる大きな町での価値観の違いや、魔女であることに対する好奇の目や偏見に驚き、苦しむ。その中で、空を飛ぶことに憧れる少年トンボ(阿部顕嵐)との交流や、キキを家に迎え入れてくれたパン屋のおソノさん(白羽ゆり)に励まされながら、自立の道を探していく。

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そんなある日、キキは大急ぎで届けたいものがある、という女性から頼まれたプレゼントをなんとか約束した時間通りに届けられたことで、空を飛べることが人の役に立ったと喜ぶ。そんなキキを見ていたおソノさんの提案で、飛べることを生かしお届けもの屋さん「魔女の宅急便」を始めたキキは、次第にたくさんの依頼を引き受けるようになるが、それが仕事である以上、人の喜ぶ顔が見たいと願うキキの思い通りには、なかなかことは進まない。更に、何かとちょっかいを出してくるトンボへの淡い恋心も、まだまだ子どものキキには上手く咀嚼することができない。そうしたストレスが重なり、次第に体調を崩してしまったキキのもとへ、町長から町の1年で一番大きな行事に関わる、緊急の仕事が舞い込む。キキは無事にその依頼を果たせるのか。そしてトンボとの淡い恋の行方は……。

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まるで絵本を開くような美しいシルエットからはじまる舞台は、幕開きから音楽にのせて物語の世界観を実にスムーズによどみなく伝えてくれる。もちろんキキが空を飛び旅に出る幾多の場面では、ワイヤーアクションや、プロジェクションマッピングによる雄大な背景などが取り入れられているが、それ以上に印象的なのが、多くの重要な役どころを含めて多彩に活躍するアンサンブルの面々のレベルが非常に高いことで、彼、彼女たちが歌い踊り、ドラマを的確に運んでくれる様が心地よい。
それはつまり良質なミュージカルとしてのクオリティを、この作品が非常に高いレベルで保っている証でもあって、劇団四季で研鑽を積んだのちに、オリジナルミュージカルの制作に力を注いでいる演出・脚本・振付の岸本功喜、作曲・音楽監督・歌唱指導の小島良太の、ミュージカルのノウハウを知り尽くしている手腕が光った。
そのことが、スタジオジブリによるアニメーション版があまりにも広く認知されている作品を、今、改めて舞台化するという、相当な勇気がいっただろう企画を可能にする力になっているのは間違いない。この舞台には、魔法や、空を飛ぶ夢や、何よりも互いを思いやる心が生む奇跡を、素直に信じさせてくれる、ストレートに胸をうつ温かな煌めきが詰まっている。

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そんな作品の魅力を更に輝かせたのが、キキを演じる上白石萌歌の、なんとも愛らしい舞台姿だ。魔女の少女ならではの黒のワンピースに、頭には赤い大きなリボン。お馴染みの扮装が上白石の可憐な容姿と相まって、まるで童話の世界からそのまま飛び出してきたかのよう。笑顔はもちろん、悲しい顔も、寂しげな表情も、怒った顔でさえもなんとも可愛らしく、キキの故郷の街の人々のように、客席で彼女の成長と冒険の旅を心から応援したい気持ちにさせてくれる。よくぞ登場してくれた!と思うほど、魔女の少女キキに打ってつけで、この日の相棒、黒猫ジジ役の夏鈴との息もピッタリ。歌声も涼やかで、作品をその愛らしさと、懸命さで見事にリードしていた。

空を飛ぶことに憧れ、コリコの町で真っ先にキキと友達になろうとする学生トンボの阿部顕嵐は、爽やかな持ち味と、黒縁のメガネの奥からこぼれ出てくるような、アイドルらしい華やかさが魅力。キキとの交流に、初恋の少年少女の清真な香りが立ち上り、舞台にときめきともどかしさと、だからこその美しさを加味していた。ダンスシーンももちろん鮮やかに決めて、後半の盛り上がりに大きく寄与していた。

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コリコの町でキキに温かい手を差し伸べるおソノさんの白羽ゆりは、全編を通して妊婦姿での登場だから大きな動きこそないが、それでもなお白羽ならではの美しさと、優しさが際立つ。魔女が家にいるって素敵なことだ、と言ってくれるおソノさんは、観客の心に最も近い登場人物でもあり、ポイント、ポイントの出番を印象的に、更にちょっと気風の良い感覚で舞台を引き締めていて素晴らしかった。おソノさんの旦那さんのフクオさん(藤原一裕。なだぎ武とのWキャスト)が、無言の芝居で見守る姿も頼もしい。

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キキのお母さんコキリの岩崎ひろみは、ファミリーミュージカルの先駆的存在である『アニー』の歴代アニー役の1人だけに、お母さんを演じる立場になったのか、と感慨深いものがあるが、よく動く表情で舞台ならではの大きな表現を自然にこなしている力量はやはり確かなもの。また、お父さんのオキノの横山だいすけ(中井智彦とのWキャスト)は、今年3月まで歴代最長出演となる9年間、NHKEテレでうたのおにいさんを務めた人ならではの、子供の目線に寄り添った優しいお父さんの在り方が絶妙。キキを育んだ温かい家庭を、二人の雰囲気が醸し出していて秀逸だった。

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他に、幼いキキ、幼いジジが、現在のキキとジジと同時に舞台に出る構成も巧みだったし、前述したようにアンサンブルの面々の働き場も多く、原作にはないオリジナルなラストシーンも含めて、舞台ならではの魅力に溢れたミュージカル『魔女の宅急便』となっていて、公演期間があまりに短いのがもったいないと感じられる、優れた舞台に仕上がっている。

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【囲みインタビュー】

初日を前にした通し舞台稽古のあと囲み取材が行われ、上白石萌歌、阿部顕嵐、白羽ゆり、岩崎ひろみ、横山だいすけ、藤原一裕が公演への抱負を語った。

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横山だいすけ、岩崎ひろみ、上白石萌歌、白羽ゆり、藤原一裕
 
──いよいよ今日からはじまりますね!
上白石 そうですね。昨日から舞台稽古だったのですが、昨日はどちらかと言うと場当たりなので、今日はじめて全部の場面を通してお芝居したので、その分気持ちの部分もつながったし、私自身も舞台の上で成長しているような気がしました。6時半からの(本番の)公演では、もっと楽しめるんじゃないかなと思います。
──お二人は初共演ですよね?
上白石・阿部 はい。
──どうですか?普段のジャニーズの舞台とはかなり違いますが。
阿部 全く違うので、皆さんに支えてもらって、学ばせて頂いております。初めてのことだらけで、僕は戸惑ってもいますが、歌もお芝居も上手い皆さんなので、盗ませて頂いている感じです。
──お稽古していていかがでしたか?
阿部 僕は幕から見ているのですが、ここの動きいいなとか、このセリフ回しいいな、と思うところを自分流に取り入れて、真似させてもらったりもしています。
──ちなみにどなたの?
阿部 だいすけさんの一番最後のセリフがあるんですけど、すごく意識しています。
横山 あー、それは嬉しいですね。
──だいすけさんも「うたのおにいさん」を卒業してこのミュージカルに。
横山 そうですね。僕も新しい環境の中で、こうして素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんとご一緒することができて、毎日毎日が楽しい稽古でしたし、外ではこういう感じなんだな!という気持ちで、毎日新鮮な気持ちでやれていたのが自分としても楽しかったです。
──うたのおにいさん時代とはまるで違いますよね。
横山 そうですね。今回おにいさんから「お父さん」になったので、お父さんとしてどういう風に居ればいいのかな?というのをキキちゃんの演技を見ながら、舞台の中では表現していないところでもどういう風にキキちゃんと関わりをもっていたのかな?とか、コキリさんとの夫婦感もどうやって出していけばいいのかなと考えました。
──お二人で相談されたりも?
横山 相談と言うよりは感じることが多いかな?と。
岩崎 ずっと一緒のシーンなので、なるべく嘘のない関係と言いますか、仲の良い家族になるように普段から会話するようにしていました。

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──世のお母さんの中には「だいすけロス」が広がっているとも。
横山 そう言われると少し恥ずかしいのですが、世の中のお父さんとお母さんの気持ちを少しでもつかんで、娘を笑顔で送り出してあげられる存在になれたらいいなと思っていて、「だいすけロス」と感じてくれている、「子供との時間を大切にしています」というような皆さんの声を、自分の力にして臨ませて頂きました。夫婦感としては「今日の料理何食べたい?」みたいな。
岩崎 舞台でもずっと喋っていますね。今(舞台稽古では)3回噛みましたけど(笑)。
横山 反省会をします!
──上白石さんは原作の「魔女の宅急便」を読んだ印象は?
上白石 私はジブリ作品のアニメーションで知っていて、大好きなのですが、このお話を頂いた時からジブリの世界観のイメージが固まってしまうのを避けて、映画は敢えて観ずに小説を読んで役作りをしました。
──どんな印象でしたか?
上白石 原作のキキの絵は髪が長くて大人びた印象があったので、このショートヘアも新しいキキを感じて、アニメで観るよりも自分の中で絵を想像するようにしました。
──阿部さんはどうですか?とても有名な原作ですが。
阿部 僕も知ったのは同じくジブリ作品からなんですけれども、原作も読んで、僕は上白石さんとは違って逆にアニメを観て自分なりにトンボを自分の中に落とす、ジブリ作品とは全く同じにはならずに解釈する為に、1回見直してどうやったら自分のトンボができるかを考えたりしました。
──ジャニーズのメンバーとは違って女性も多い舞台ですね。
阿部 一番気にしたのは着替えで、僕普通に楽屋の前とかで脱いじゃうんですけど、それはなるべく控えようかなと(笑)。普段(男性ばかりなので)周りの目を気にせずに脱いでしまう癖がついているので。
──白羽さんそのあたりはどうですか?
白羽 私も宝塚出身なので、女性ばかりの世界で堂々と着替えていましたから、そこは敢えて見ないように(笑)。
──役柄については?
白羽 おソノさんは、私全編通して妊婦役という舞台は初めてなので、今回は本当に挑戦だなと思っているのですが、お稽古場から10代の萌歌ちゃんと顕君のセリフにキュンキュンしていて。一番最初に合わせたところから、少しずつ慣れてきて、舞台稽古、そして本番もきっと違う空気になる、その空気が全部正解だと思うんです。その空気を共有できることが、おソノさんとして2人を見守る、「頑張って!」という気持ちにお稽古場から自然になれたので、そういう意味ではおソノさんという役柄に巡り合えて本当に良かったなと思えますし、藤原さんの安心感もすごくあるので本番が楽しみです。

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──藤原さんは頼れる存在で?
藤原 喋っていいですか?(全員笑)ここでは喋っていいですか?劇中は一切喋ってないので(笑)。安心感を持っていただけているなら僕も良かったです。
──プライベートでもお子さんが生まれられて。
藤原 そうですね。ブライベーとでも劇中でも生まれて。お稽古期間中に、演出の岸本さんから「もし稽古の日に奥さんの陣痛が来たらうちの稽古はいいですからね」と言って頂いていて、本当に稽古の日に準備していたら陣痛が来まして、言ってもらえていたので休ませてもらって立ち会うことができました。劇中ではちょっと立ち会えなかったですが(笑)。
──それは役作りの上でも貴重な経験に。
藤原 そうですね。
白羽 色々教えて頂いたりしました。
藤原 ちょっと妊婦さんの立ち方とか、うちの奥さんだけかもしれませんが結構ガニ股になってたんでね(笑)。このお腹の大きさなら何ヶ月ですねとか。
──すごく良いタイミングでしたね。
白羽 本当に! こんなタイムリーなことって!と皆でお祝いもできて、それもまた温かくで良いなと思いました。
──舞台で全くセリフがないというのは。
藤原 正直初めてのことで、咳払い1回だけなんです。だから何パターンも咳払いの練習をしました(笑)。
岩崎 マイクチェックも咳払いでね(笑)。
藤原 そうこれ(ピンマイクを示して)嫌がらせなのかな?と思ったんですけど(笑)。
──では身体全体で演技するということで。
藤原 そうです。2時間通してボディランゲージをやっていますので、そこを見て欲しいてす。
──役作りの苦労などは?
藤原 なかったです。プライベートでもお父さんになりましたので。
──記念すべき舞台になりましたね。
藤原 本当にプライベートとこんなにシンクロすることがあるんだなとありがたいです。

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──さぁ、いよいよあと3時間でお客様が入られますが。
阿部 早いなというのが率直な感想ですが、僕的には今までやってきたことを信じてやっていくしかないですし、本番は楽しんでやることが一番だと言われ続けてきたので、僕はキキちゃんと「はじめまして」からスタートして、最後には告白されるという役なので、ちゃんと舞台上で心を揺さぶらないとなと思っています。
──心揺さぶられそうですか?
上白石 稽古をしていくと、トンボとキキって、最初キキは「ふん!」としていて、演出の岸本さんから二人はなるべくこのキキとトンボの状態でいたいと言われていて。でも稽古中に色々な相談をしていると仲良くなってしまうので、最初のシーンの初々しさをどうやって出そうか?ということをすごく自分なりに考えました。
阿部 「はじめまして」って言い合ってね。
上白石 そう、毎日「はじめまして、よろしくお願いします」から始めていました。でも最終的にはトンボを救うというところにつなげなければならないので、自分の中に色々な引き出しをもって、そのどの引き出しからも感情が出るように気持ちを創っているつもりです。
──阿部さんのファンの方も大勢いらっしゃると思いますが、その視線などは気になりますか?
上白石 たぶん舞台上に立っている時は私はキキでしかないし、トンボでしかないので、ステージには「魔女宅」の世界しか広がっていないので、緊張もしないし、私はキキとして息を吸うたけです。
阿部 僕も袖にいる時からずっとトンボです。トンボになりきって、周りの皆さんとの会話も公演中はトンボっぽく話すように意識しています。トンボのままっていうのは同じです。
──大阪公演もありますか、まだ皆さんで食事に行ったりなどは?
藤原 今のところ僕の知る限りまだないです。僕が誘われていない可能性もありますが(笑)。
岩崎 お稽古が大変だったので、とりあえず東京を終えて、大阪に行ったらどこかに連れていって頂こうかなと。ちょうど顕嵐君の誕生日がね。
阿部 そうなんです。僕大阪公演の前日に誕生日で20歳になります。
──じゃあ19から20歳になる時にこの公演が。
阿部 そこもすごく誕生日の次の日から公演ということは、20歳になった次の日からの舞台なので、今から思い入れがあります。
──10代最後の舞台をどんな舞台にしたいですか?
阿部 やっぱり10代ならではのフレッシュさを残しつつ、まぁ20歳になってもフレッシュですけど(笑)、大人と子供の狭間をトンボなりに表現したいと思います。
──では皆さんにメッセージを。
上白石・阿部 『魔女の宅急便』観に来てください!待ってます!!

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〈公演情報〉
ミュージカル『魔女の宅急便』
原作・監修◇角野栄子 
脚本・演出・振付◇岸本功喜 
作曲・音楽監督◇小島良太 
出演◇上白石萌歌、阿部顕嵐(ジャニーズJr)、白羽ゆり、岩崎ひろみ、横山だいすけ/中井智彦[Wキャスト]、藤原一裕(ライセンス)/なだぎ武 [Wキャスト]他 
●6/1〜4◎東京・新国立劇場 中劇場
〈料金〉S席10,500円 A席8,000円
●8/31日〜9/3◎大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシテイ
〈料金〉S席10,500円 A席8,000円
〈お問い合わせ〉アークスインターナショナル 0798-34-5377(平日13時〜18時) 
〈公式ホームページ〉http://www.musical-majotaku.jp/




【取材・文・撮影/橘涼香】




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原点に戻って、更にパワーアップしたノンストップステージ!『CLUB SEVEN ZERO』!

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ありとあらゆるエンターテイメントの要素をギュっと詰め込んで、ノンストップで走り続けるステージとして愛され続ける『CLUB SEVEN』シリーズの最新作『CLUB SEVEN ZERO』が、日比谷のシアタークリエでの開幕(6月8日〜22日まで。のち、5月26日〜28日◎シアター1010でプレビュー公演、6月3日、4日◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、6月23日◎刈谷市総合文化センターアイリス公演もあり)を前に、北千住のシアター1010でプレビュー公演を行った。

総合クリエーターである玉野和紀が手がける『CLUB SEVEN』は、ソング&ダンス、芝居、タップ、ミュージカル、スケッチと呼ばれるコントの要素を多く含んだ場面など、エンターテインメントのあらゆる要素を詰め込んだ、まさに怒涛のジェットコースターステージ。2015年に記念となる10作目の公演を大好評のうちに終えたあと、弟分的存在の若手主体による公演『GEM CLUB』がスタートするなど、新たな広がりも見せる中で、11作目となる今回は『CLUB SEVEN ZERO』と名付けられた、これまでの集大成であり、新たなスタートと位置付けられたステージとなっている。

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そんな舞台に集ったのは、玉野が『CLUB SEVEN』草創期に形を創ってくれたメンバーとして、絶大な信頼を寄せる吉野圭吾、東山義久、西村直人に加え、原田優一、蘭乃はな、香寿たつきが揃った男性5人、女性2人の、計7名。これはそもそも『CLUB SEVEN』がスタートした時と同じ、男女比率と人数によるメンバー構成で、近年の『CLUB SEVEN』としては、少人数、かつ、大人のメンバーだが、だからこそ『CLUB SEVEN』が原点に返り、更に大人のエンターテインメントショーであることを、改めて印象づける力になっている。

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ステージは、これまで『CLUB SEVEN』が築き上げてきた王道の形を踏襲している。1幕は、舞台奥に作られたドアを開けて登場してくる全員の、シャープなダンスからスタートして、趣向をこらした楽しさ満載のスケッチが続き、華やかな歌とダンスで締めくくられる。そして、1つの作品として成り立つほど密度の濃い「ミュージカル」から幕を開ける2幕は、メンバー紹介も兼ねたトーク、そしてお待ちかね、『CLUB SEVEN』の大名物「五十音メドレー」が展開されるという、たっぷり3時間超の内容。

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しかも今回は、集大成であり新たなスタートと銘打たれていることもあって、スケッチにはこれまで『CLUB SEVEN』で話題となった、名物キャラクターたちが数多く登場していて、A、B、2つのパターンが用意されている。何しろ早替わりに次ぐ、早替わりで展開される「五十音メドレー」だけで74曲を歌い踊る上に、スケッチがそっくり入れ替わるのだから、出演者の負担は相当なものだと思うが、そこは「一生懸命ってカッコいい」を掲げた『CLUB SEVEN』のこと。とにかく出演者全員が、フルパワーで舞台を駆け回り、踊り、飛び、歌い、芝居をするテンションの高さ、汗を飛び散らせ、時にゼーゼーと息切れしながらも、繰り広げられる全力のエンターテインメントに、感動せずにはいられない。

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特に、一生懸命さを前面に出すことが、オシャレじゃないと思われ勝ちの現代に、人が全力で頑張ることの感動を、愚直なまでに届けてくれるこの『CLUB SEVEN』の姿勢は、やはり何よりも貴重なもので、それが、ひいては生身の人間が目の前で展開する舞台芸術だけが持つ魅力、ライブの素晴らしさを伝えてくれるものになっている。それは、総指揮を執る玉野が人間の力を信じているからこそ生まれ、続いてきた『CLUB SEVEN』の神髄だろうし、そのことを誰よりも理解する盟友たちが集った『CLUB SEVEN ZERO』に、その精神が変わらずに輝いていることが何よりも嬉しかった。舞台芸術を、ライブを愛する人ならば、A、B、両パターンの『CLUB SEVEN ZERO』は見逃せない。とりわけ「五十音メドレー」などは各曲の展開が早いので、1回目には目が追い付かないシーンもあるから、なんとしても2回観なければ!と思えるこの上演形態は、観客にとってはかえってお得なことかもしれないと思わせられた。
 
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(注)ここから具体的な内容に触れている箇所があります。事前に情報を入れたくない方は、観劇後の閲覧をお勧め致します。

 

今回の『CLUB SEVEN ZERO』は、中でも2幕冒頭の「ミュージカル」が秀逸で、大人のメンバーが揃った『CLUB SEVEN ZERO』ならではの配置が、実に深い余韻を残すものとなっている。
なんとか劇場を守る為に、シビアな選択もせざるを得なかった支配人(西村直人)と、かつて劇場の華だったタップダンサーでありながら、時代の移り変わりと共に裏方に回っていた男性(玉野和紀)とが、互いに年老い、長年愛されてきた劇場に関わった人々を回想するところから、舞台ははじまる。
 
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そこにはタップダンサー(玉野)の相手役から1人立ちし、長く大スターとして君臨してきた女優(香寿たつき)、その相手役からやがて彼女を凌駕するスターとなっていく男優(吉野圭吾)、女優に憧れてこの世界を目指したが故に、人気が衰えていく彼女を案じるダンサー(東山義久)、この劇場のステージに立ちたいと、雑用係から舞台を目指す若いカップル(原田優一、蘭乃はな)が、それぞれの見せ場を持ちながら、時の流れと共に立場を変えていく姿が、流れるように描かれていく。
 
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分けても、苦渋の選択をする支配人を含め、すべての登場人物が劇場を愛し、ショーステージを愛していて、どんなに立場が異なろうとも、根底のところではその深い愛によって結ばれている、という姿には、胸にしみいる熱さがあった。この「愛」が、演じている、舞台にいる7人の出演者全員をつないでいることもまた明らかなのが、作品をより尊いものにしていて、スケッチや「五十音メドレー」の弾ける楽しさとの、実に効果的な対比を生むことに成功している。
そんな作品と、出演者全員を牽引する玉野が、いつもながら個々の持ち味を引き出す手腕が絶妙。それそれのメンバーを輝かせ、更に新たな面も提示して見せてくれるから、舞台がより軽快に弾む。特に「五十音メドレー」では、今回昭和の名曲が数多く選ばれているということで、実際にそうなのだが、それだけでではなく、ここ最近の大ヒットものもきちんと入れ込んできていて、その塩梅が巧みだ。

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玉野自身が演じる男性アイドルの名物シーンを、こう来たか!と思わせる発想で見せる場面など、アナログ感があるだけにその秀逸さに目を瞠るし、もちろんタップダンスも、今や出て来てくれないと『CLUB SEVEN』を観た気がしない「玉子ちゃん」も相変わらずパワフル。昨年末惜しまれつつ解散した某国民的アイドルグループのファンの方には、是非大判タオルハンカチを持参しての観劇をお勧めしたい、ツボを突きすぎるほど突いてくる選曲も含めて、充実の舞台を創り演じる姿には脱帽だった。

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その舞台で、二枚目スターぶりを発揮したのが吉野圭吾。このところミュージカルの舞台などでは、強烈なキャラクターアクターとしての顔を多く見せていただけに、本来の二枚目男優としてすっきりと立つ吉野がどこか新鮮に映ったのは、観客としても発見の思いがした。その意味で、「原点に戻るオトナの『CLUB SEVEN 』」というキャッチコピーを体現した存在で、ダンスやミュージカルでの二枚目ぶりが光る分、スケッチの思い切った各役の造形がより際立ち、中でも一斉を風靡したキャラクターに扮した時のおかしみが群を抜いていた。そういえば背格好が似ていたんだ、と感心したのも含めてこちらは観てのお楽しみといったところ。

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常にスターで、常に「カッコいい」東山義久が、大阪出身の人であることを強烈に想起させるのも、この『CLUB SEVEN』の醍醐味の1つ。踊ればもちろんだし、近年ますます進境著しい芝居の面でも、この人のカッコよさには常にため息が出るし、今回もそうした面が「ミュージカル」や、デュエットダンスなどで際立っているのだが、そこからスケッチや「五十音メドレー」で見せる完全に振り切れたコメディアンぶりに圧倒される。その全力投球がなんとも楽しそうなのが、根っこにある大阪人気質を感じさせ、だからこそ更に、持ち前の「カッコよさ」も引き立つという相乗効果を生んでいる。特に両性具有的な意味合いでない、可愛い女の子を演じている東山見られるのは『CLUB SEVEN』くらいのものだから、今後も是非このショーステージにも立ち続けて欲しい。

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『CLUB SEVEN 』シリーズの全てに参加していて、玉野と共に『CLUB SEVEN』の「顔」である西村直人は、玉野の「玉子」との名物コンビ「ニャンコ」をはじめとした、素晴らしく元気な老人役など、様々なキャラクターを瞬時に演じ分ける姿はもちろんのこととして、今回とりわけアイドルや、ひたすらにキメるダンスシーンなどで見せる、キリリとした二枚目の顔が印象に残った。年輪を重ねて肩の力が抜け、だからこそこれだけハードなステージでも、本人のキャパシティがいっぱいいっぱいにならないのだろう。「ミュージカル」での支配人役の滋味深さも含めて、進化する『CLUB SEVEN』と共に、西村の進化も大いに堪能できたのが嬉しい。

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男性陣の最年少メンバー原田優一は、近年こうした座組で最年少という立場が久しぶりだったそうで、定評ある美声を堪能できるだけでなく、若者に扮している原田も観られるのが目に耳に楽しい。特にこの人の女装と言う言葉さえ似つかわしくないと思える、本気の女の子ぶりは圧巻で、女性陣二人と共に三人で「女子アイドルグループ」の持ち歌を歌い踊る場面がいくつかあるが、もしかしたら最も曲に馴染んでいるのは原田かも知れない、と思わせる成り切りっぷりは必見。歌、タンス、芝居と三拍子揃った人ならではの多彩さを存分に発揮している。

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その女性陣は、いずれも宝塚OGで、元星組トップスターの香寿たつきは、「ミュージカル」で演じる大スター役の、いつ自分の時代が終わるのかを恐れ、崩れていく表現に、芝居巧者ぶりを存分に注ぎ込んだのをはじめ、スケッチのコメディセンスや、歌にダンスに大活躍。特に女性陣二人で、昭和を代表するアイドルデュオに扮するシーンが数回あるが、あの大スター役を演じた人と同じ人だとは思えないほどの愛らしさを醸し出していて、宝塚で獲得したスターオーラと、女優としての豊かな蓄積の全てがステージで輝いている。
 
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もう1人元花組トップ娘役の蘭乃はなは、今回のメンバーの中で唯一の『CLUB SEVEN』シリーズ初参加という人材だが、宝塚のショー作品などで培ってきた、場面に応じて瞬時に表情や色を変える術を、存分に発揮して『CLUB SEVEN』が求めるオールランドプレイヤーにきちんとなり得ているのが素晴らしい。自身の女優としてのキャリアのパロディ的シーンでの、ドレスの着こなしはさすがの一言だし、アイドルを演じるシーンなどで見せるどこか小悪魔的な顔も魅力的。踊れる強みも遺憾なく発揮して、『CLUB SEVEN ZERO』になくてはならない戦力となっていたのが何よりだった。

とりわけ、今回「シリーズ最高の平均年齢」だという「オトナ」が集まって創られた『CLUB SEVEN ZERO』が、シアター1010の『CLUB SEVEN』にはやや大きいのでは?とも思われた劇場空間を、楽々と埋めた様は見事なもので、原点に返った『CLUB SEVEN』シリーズの、大人が集まったからこその新たな可能性が拓かれたのが嬉しく、シアタークリエでの初日が待たれるステージとなっている。

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〈公演情報〉
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『CLUB SEVEN  ZERO』
脚本・構成・演出・振付・出演◇玉野和紀
出演◇吉野圭吾 東山義久 西村直人 原田優一 蘭乃はな 香寿たつき
●6/8〜22◎シアタークリエ 
〈料金〉10,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777
●5/26〜28◎シアター1010(プレビュー公演)
〈料金〉9,500円(全席指定・税込)
●6/3・4◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
●6/23◎刈谷市総合文化センターアイリス公演 




【取材・文・撮影/橘涼香】





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乃木坂46が挑む薙刀ガールズの青春物語! 舞台×映画連動プロジェクト 舞台『あさひなぐ』囲みインタビュー&舞台レポート

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第60回小学館漫画賞(一般向け部門)を受賞し、週刊ビッグコミックスピリッツ連載中の大人気コミック「あさひなぐ」(作:こざき亜衣)。武道「薙刀」に青春の全てを捧げた少女たちの成長物語として、絶賛を集めているコミックが、人気絶頂のアイドルグループ乃木坂46を迎えて、舞台化並びに映画化の連動プロジェクトが始動することになった。

その舞台版『あさひなぐ』が、5月20日、東京・EXシアター六本木で幕を開けた。脚本・演出を手がけるのは第三舞台出身で映像ディレクターとしても活躍する板垣恭一。出演者には元宝塚歌劇団トップスターの真琴つばさら実力派&個性派俳優陣が名を連ねる中、アイドルグループ乃木坂46のメンバーが体当たりで舞台に挑んでいる。薙刀経験はもちろん、演技経験も少ない彼女たちの本気は、まさに『あさひなぐ』の物語そのもの。ここにしかない、生の熱気が詰まったステージが展開されている。

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そんな舞台の開幕に先立つ5月19日、主人公東島旭役の斎藤飛鳥をはじめ、井上小百合、新内眞衣、若月佑美、生駒里奈、堀未央奈、衛藤美彩、北野日奈子といった乃木坂46のメンバー、そして元宝塚トップスターで舞台にまたバラエティーにと幅広く活躍している真琴つばさが、囲み取材に応えて、公演への抱負を語った。

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(後列)北野 新内 若月 井上
(前列)衛藤 堀 斎藤 生駒 真琴

【囲みインタビュー】

──皆さんの役どころと初日に向けての意気込みをお願いします。
 
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衛藤 主人公の東島旭たちの学校のライバル校の、強豪國陸高校のキャプテン、寒河江純役を演じます。(隣の堀を示して)一堂寧々のことをすごく気にかけていて、とても優しい性格のキャプテンです。今もずっと稽古していて、明日が初日という実感がまだわかないんですが…(周りを見て)最初(に話す)って緊張しますね(笑)。ライバル校という立ち位置ではありますが、二ツ坂高校の成長と同時に、私たちの高校もどういう風になっていくのかと言うのが見どころですし、真琴(つばさ)さんはじめ大勢のキャストの方がいらっしゃるので、みんなで最後まで頑張りたいなと思います。

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 私は同じ國陸高校の一堂寧々ちゃんという子を演じさせて頂くんですけれども、寧々ちゃんは1年生にしてすごく薙刀が強い役で、旭ちゃんのライバル役としてやらせてもらいます。でも実際は(隣の斎藤を示して)バチバチしていないと言うか、二人ともゆとり世代なので(笑)マイペースなんですよ。二人ともゆったりしてるので、ちょっとケンカっぽくなったりするシーンなども「ごめん!」と思いながらやっているのですが、日常のストレス発散じゃないですけど、ここでちょっと思い切って絡んで、寧々ちゃんを演じたいなと思います。

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斎藤 東島旭役の斎藤飛鳥です。私は薙刀を知らないところから入って、薙刀を握ったことがない状態から、みんなで一緒にはじめて、みんなでステップアップしてきたので、一緒にやってきたことを信じれば、きっと初日も上手くいくんだろうなと思っています。ただ何より私このメガネ姿がとうしてもドンくさいなと思って(笑)、それを見られるのがちょっと不安で緊張します。
──メガネが大きいんじゃないですか?
斎藤 いえ、そんなことはない…。
生駒 (斎藤が)小さいからメガネがデカく見えるんだよ!(笑)。

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生駒
 生駒里奈です。今回二ツ坂高校薙刀部の部長の野上えりを演じさせて頂きます。はじめて薙刀を触って、はじめての殺陣、乃木坂のメンバーに関しては、舞台経験豊富なメンバーもいれば、まだまだ演技経験も少ないメンバーもいる中で、初体験、初めてやるという苦労がたくさんあった稽古期間だったなと思います。今こうして、劇場に入ってお稽古をしているのですが、どんどん自分の中に野上えりが入ってきて、明日初日を迎えて、きっと皆さんに薙刀をお見せできるんじゃないかな?と思います。素敵なキャストの皆様に囲まれて初日を迎えられることが嬉しいので、明日は一生懸命精一杯頑張りたいと思います。

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──真琴さんどうぞ。
真琴 この流れおかしいでしょう?(全員笑いながら「大丈夫、大丈夫」と口々に言う)そう?じゃあ、白滝院の副住職の寿慶役をさせて頂いております。私のお寺に皆さんが合宿でくるんですけれども、二ツ坂の皆さんに薙刀の教士として精神を教えていますが、皆さんの頑張りに感銘を受け、強さとは何か?ということを改めて感じさせてもらっているお役を頂いています。
──明日の初日については?
真琴 明日ですか?「明日は明日の風が吹く」(全員笑)、頑張りたいと思います。すごく皆さん薙刀をゼロからはじめているので、そこからの成長ぶりを、役と自分が重なって感動しています。

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井上 八十村将子ちゃん役の井上小百合です。将子ちゃんは剣道の経験者で、そこから薙刀部に入るという子で、剣道をやってきたという面を持ちつつ、自分と日々戦っている子なので、その繊細なところと荒い口調のギャップを上手く表現できたらいいなと思います。この見た目からしても普段のアイドルとは全然違うので、最後まで乃木坂46とバレないように毎日頑張りたいです。よろしくお願いします。

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若月
 宮路真春役を演らせて頂きます若月佑美です。宮路真春先輩は、原作のこざき亜衣先生の憧れを全部詰めたキャラクターだというお話を頂いた時に、どうしよう頑張らなきゃと思ったのと、やっぱり主人公の東島旭を薙刀部に入れたのが宮路真春なので、そこのところをどう表現するかというのが、すごく大変だなと思いつつも、頑張らなければと思ってやってきました。明日の初日は、映画版の宮路真春役は白石麻衣と公表されているので、その時点でファンの方的に「麻衣だ!」という熱気が高まっているところをですね、逆に舞台の初日を迎えて「あ、若月もいけるじゃねぇか!」と言ってもらえるように、頑張らなければと思っています。
 
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新内
 紺野さくら役の新内眞衣です。さくらちゃんはですね、高校1年生でお嬢様で、ブラックな感じで、私と似ている部分は身長くらいしかないんですけれども(笑)、でもだからこそやりやすい役であって、こざき先生もナチュラルブラックと言っていて、本当にブラックなことしか言っていないのですが、でも真の部分では薙刀が大好きというところもちゃんと演じられたらいいなと思います。

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北野 的林つぐみ役の北野日奈子です。ライバル校なので、なかなか姿を現しづらいのですが、こざき先生が私の役を「気の良い不器用」と言っていらっしやって、気の良い不器用について三日間くらい考えたんですけれども、よくわからなかったんです(笑)。で、台本を読んでこんな感じかな?と思って演じています。試合は本当にしてるので、(防具の)中身は私たちなので、面かぶってやっているので、頑張ります!
──斎藤さん、メガネがちょっと…ということでしたが、皆さんのビジュアルや髪型については?
斎藤 触れざるを得ないのが(新内を示して)、この人26?
新内 25だよ!(全員笑)
斎藤 25歳が制服来て、私と同い年の役なんですよ。すげーなって(笑)。芸能人ってすごいことするよなって思います(笑)。
──斎藤さんは舞台は初めてですか?
斎藤 そうですね。あまりやったことがないです。
──どうですか実際、初めてやってみて。
斎藤 もともと感情表現が薄い方で、表情筋が動かないのがコンプレックスだったので、舞台って大きく見せなければいけないから、私には絶対向いてないんじゃないかな?と思っていたのですが、やっていく内に、だんだんステージで表現する楽しさですとか、舞台に立っている間はずっと気を抜けない緊張感もだんだんと楽しめるようになってきたので、きっとこの後もそれが増して、舞台が楽しめるようになるんじゃないかなという気がしています。
真琴 台詞にエネルギーがあります、彼女は。
斎藤 いえいえ、そうやってつばささんがハードルを上げると私は苦しいので(笑)。
──斎藤さんと堀さんは激しいシーンがあるんですか?
堀 ちょっとまだ初日を迎えていないのでネタバレになっちゃうのですが、アイドルらしからぬと言うか、人らしからぬ(笑)暴力的なシーンもあるので、そこはちょっと見どころかな?と思います。
──それがストレス解消に?
 いえいえ(笑)、でも声を張り上げるので、普段は声が小さめなのですが、そこでストレスが飛んでいくなと思って、お腹から声を出してます!

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まだまだ質問は続く気配だったが、残念ながら時間切れとなり、全員から「ありがとうございました!よろしくお願いします!」という気合いの入った挨拶があり、囲み取材は終了。引き続いて、公開舞台稽古として、2つの場面が披露された。

【公開稽古】

●1幕2場より
旭(斎藤飛鳥)、将子(井上小百合)、さくら(新内眞衣)が薙刀部の勧誘を受けるシーンから、抜粋して場面が展開された。
まず、中央に薙刀部部長のえり(生駒里奈)と、エースの真春(若月佑美)が薙刀を構えて背中合わせに立ち、えりの「ようこそ、薙刀の世界へ!」という台詞をきっかけに、迫力ある剣舞がはじまる。 

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希望にあふれる薙刀の世界がダイナミックに表現され、やがて寿慶(真琴つばさ)、二ツ坂高校薙刀部新監督に就任する福留やす子(則松亜海)、薙刀部顧問の小林先生(石井一彰)ら、全出演者が登場。華やかな舞台の幕開けを感じさせた。

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●1幕9場より
続いて、二ツ坂高校と國陸高校の練習試合のシーンがはじまる。
まず、審判員(則松亜海)と小林先生(石井)の、温度差のあるコミカルな会話から場面はスタート。試合がはじまり、本格的に防具をつけた各キャラクターの殺陣は真剣そのもの。その中で振り回される薙刀を、審判員と小林先生がジャンプしてかわすなど、如何にもコミック原作らしい流れもあって、引き付ける。

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やがて旭(斎藤)が1本を取りながら敗れ、二ツ坂高校の敗戦が決まってしまった中、試合に臨む緊張感を切らさない真春(若月)の雄姿、更に、旭と寧々(堀未央奈)のライバル同士が、思いをぶつけあう、会見でも話題になった激しいシーンの応酬があり、熱い場面が繰り広げられた。
最後に旭が、次こそは勝ちたいという思いを吐露して、旭のこれからの成長を予感させながら場面披露は終了。公演への期待が高まる時間となっていた。
 
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〈公演情報〉
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舞台『あさひなぐ』
原作◇こざき亜衣「あさひなぐ」小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中
脚本・演出◇板垣恭一
出演◇齋藤飛鳥 井上小百合 新内眞衣 若月佑美  生駒里奈 堀未央奈 衛藤美彩  北野日奈子 (以上、乃木坂46) 七瀬公  大音智海  下司尚実  白勢未生 小山雲母 萩原麻乃 石井一彰  則松亜海  真琴つばさ 
●5/20〜31◎東京・EXシアター六本木
〈料金〉7.800円
〈お問い合わせ〉日比谷シアタークリエ 03-3591-2400
●6/2〜5◎大阪・森ノ宮ピロティホール
〈料金〉指定席 7.800円 立見席 6.800円
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888
●6/9〜11◎名古屋・愛知県芸術劇場大ホール
〈料金〉全席指定 7,800円 追加席A 6,000円 追加席B 5,000円
〈お問い合わせ〉キョードー東海 052-972-7466
〈公式HP〉 http://asahinagu-proj.com/stage.html#!page1 

※東京公演全席完売につき、5月30日19時開演回のライブ・ビューイング開催。
全46館映画館にて。公演後、映画『あさひなぐ』全キャスト発表スペシャルイベント付き。
〈料金〉3.600円 ※映画館により特別シートなど追加料金が発生する場合あり。

c2017 舞台「あさひなぐ」製作委員会 c2011 こざき亜⾐/小学館



【取材・文・撮影/橘涼香】


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井上芳雄主演により小池修一郎が新しく創造したミュージカル『グレート・ギャツビー』

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宝塚歌劇で初ミュージカル化され、日本演劇界の雄小池修一郎が世に出るきっかけともなった記念碑的作品である、ミュージカル『グレート・ギャツビー』が、楽曲を一新し、井上芳雄主演による男女版として、日比谷の日生劇場で開幕した((29日まで。のち、6月3日〜15日名古屋中日劇場、7月4日〜16日大阪梅田芸術劇場メインホール、7月20〜25日福岡博多座での上演)。

原作は、F・スコット・フィッツジェラルドの代表作であると同時に、アメリカ文学をも代表すると称される同名の傑作小説。経済、文化が大きく発展し、大バブル時代を迎えていた1920年代のニューヨークで、真実の愛を求め続けた男が、破滅へと向かう悲しくも美しい物語は、時を超え今も輝き続けていて、1974年にロバート・レッドフォード、2013年にはレオナルド・ディカプリオ主演による映画化がなされている。
そんな作品の、世界初のミュージカル化が、小池修一郎による宝塚歌劇団での上演で、1991年に杜けあき主演で初演(『華麗なるギャツビー』として上演)され、その優れたオリジナルミュージカルとしての完成度が大きな喝采を集めた。この作品の成果により、小池は第17回菊田一夫演劇賞を受賞。当時、宝塚歌劇団の若き才能として評価されていた小池に、演劇界全体が注目した最初の機会がこの作品の成功だったと言って間違なく、『エリザベート』『モーツァルト!』『ロミオとジュリエット』『スカーレット・ピンパーネル』『1789〜バスティーユの恋人たち』等々、海外ミュージカルの優れた潤色・演出で、日本ミュージカル界の中心的存在となっていく小池の、謂わば土台を創った貴重な作品だった。
更に2008年には瀬奈じゅん主演で、『グレート・ギャツビー』とタイトルを改め、1本立ての公演として日生劇場で再演されている。今回はそれ以来、9年ぶりの上演で、『BANDSTAND』でブロードウェイ・デビューを果たした新星リチャード・オベラッカーによる全曲書き下ろしの楽曲に、井上芳雄を主人公ジェイ・ギャツビーに迎え、初めての男女版としての上演となった。

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【STORY】
1922年、空前の好景気に沸くニューヨークへやってきたニック(田代万里生)は、隣接する豪邸で、夜毎開かれている豪華絢爛なパーティーへの招待状を受け取る。主の名はジェイ・ギャツビー(井上芳雄)。だが館を訪れたニックは、パーティに参加している大勢の客人のほとんどがギャツビーの顔も知らず、招待状すら持っていないことを知る。禁酒法の時代に堂々と本物の酒を振る舞うこのパーティには、誰もが自由に参加することができるのだ。しかも、その場に警官が踏み込んでくると、ようやくギャツビーその人が現れ、パーティに参加していた警視総監を促してすべてはお咎めなし。酒と同時にこの非現実な空間に酔ったニックは、喧騒から逃れて外に出て、ひとり佇み、湾の向こう岸の灯りを見つめるギャツビーの姿を目にする。初めて隣人同士の挨拶を交わしたニックに、ギャツビーは自分の出身地や戦地での経歴を話す。勢い自分のことも話す流れになったニックは、ギャツビーが見つめていた向こう岸に、自分の美しい従姉妹のデイジー(夢咲ねね)、その夫で大学の先輩のトム(広瀬友祐)夫婦がいることを告げるが、その時ギャツビーの顔色が変わったことには気づかなかった。
だが、そんなニックの存在が、やがてギャツビー、デイジー、トム、デイジーの友人で女子プロゴルファーのジョーダン(AKANE LIV)、更にはトムの愛人のマートル(蒼乃夕妃)とその夫ジョージ(畠中洋)の運命を、大きく変えていく出会いをもたらして……

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小池修一郎がこの作品をミュージカル化した最初は、宝塚歌劇の定番上演形態である、ドラマものとショーとの二本立ての1本としての上演だったので、作品は1幕もの約90分で出来上がっていた。この90分の中に、愚直なまでに、人生でただ1人愛した女性、デイジーを再びこの手に取り戻そうとするギャツビーの思いの深さと、それ故の軋みと掛け違いが悲劇を生んでいくドラマ世界が、宝塚歌劇の特徴である銀橋をはじめとした、盆、セリという舞台機構を駆使してひと時も止まらずに描かれる様は圧巻で、主題歌「朝日の昇る前に」は主演者である杜けあきの絶唱と共に、実に鮮烈な印象を残したものだった。それから17年後、宝塚歌劇の所謂外箱公演(宝塚大劇場、東京宝塚劇場以外の劇場で行う宝塚歌劇の公演全般)としての、日生劇場での再演では、休憩を挟む2幕ものの1本立てとして大幅に加筆され、楽曲もプラスされての上演となり、特に、その17年間の間に、海外ミュージカルの潤色・演出のジャンルで、大きな名声を得ていた小池の「ミュージカル」のノウハウが随所に加味されていたのが印象的な仕上がりとなっていた。
それから更に9年、今回の男女版の脚本と構成は、大きくはその08年の日生劇場上演時のものを踏襲していて、冒頭に結末を持ってきたことと、何よりもやはりミュージカルの要である楽曲が全く新しくなっていることととで、十分な新鮮さはありつつ、小池が本来この作品を描こうとした作劇の原点が揺らいでいないことに、まず大きな感動と感慨があった。それは演劇界の巨人とも言っていいだろう存在となった小池が、劇作家として確かな歩みをはじめた時の、謂わば非常に無垢でピュアなものを、未だ大切に心に持っていることの証でもあったし、更に、日本のミュージカル界のスターたち、特に男優たちが、ここまでダンディズムを描けるようになったことの、やはり証でもあった。

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というのも、近年、海外ミュージカルの大作が、まず宝塚歌劇団で初演され、のちに東宝や梅田芸術劇場の製作で、男女版で上演されるという形態が、全く珍しくなくなった日本の演劇界に於いても、(それは小池修一郎という日本のミュージカル演出の第一人者が、宝塚歌劇団に在籍したまま外部のミュージカル作品の演出も精力的に手掛けていることが、まず最も大きな要因ではあろうが)、宝塚歌劇団のオリジナル作品が、改めて男女版で上演されるという今回の『グレート・ギャツビー』の持つ意味合いは、全く別の側面を持つものだったからだ。敢えて女性が男性を演じることで、確実に1つのファンタジー性と様式美を有する宝塚歌劇では、日本人が外人を演じることも、男性が1人の女性への愛の為に命を落とす様を、愚かな行為ではなく愛に殉じた至高の美しさとして描くことも、ある意味で容易だ。宝塚歌劇には「美しいものは正義である」という絶対的なセオリーがあり、それを最上のものとして理解し、賛美する観客が劇場を埋めている現実がまず大きな前提として現実にある。。宝塚歌劇が「舞台と客席が共犯関係になって創り出す幻想空間」と呼ばれるのはその為で、あの世界には−、報われぬ愛に殉じる男を愚かだと指さす者は誰もいない。
けれども、男女版のミュージカルとなれば話は全く違ってくる。この作品のジェイ・ギャツビーが、かつて家柄の違いの為に引き裂かれた愛する女性、ディジーを取り戻す為に、裏社会とも通じ財を成し、裕福な青年と結婚し子供までいるデイジーの家の対岸に豪邸を建て、彼女が訪ねてくる日を待ちながら、招待状不問の豪華なパーティを夜毎開き続けるという行為は、1歩間違えばストーカーとも取られかねない執念に違いない。しかもそうまでしても、思いが叶わないストーリー展開と、あまりにも孤独なラストを、リアルな男女が演じる舞台で同じように提示した時、ギャツビーが客席の共感を得られるか否かには、宝塚歌劇団での上演よりも遥かに高いハードルがあったはずだ。だからこそ、そこを脚本・構成がどう描いてくるのか?に注目もし、どこかで案じていた部分も確かにある。
だが、そうした構成上の配慮や、小手先の技巧に走ることなく、若き日の小池が作品に魅了され、宝塚歌劇の為に書き下ろしたミュージカル作品としての骨子をほぼ踏襲した状態のままで、井上芳雄のギャツビーは、その高いハードルを実に悠然と越えてきた。それはまさに目を瞠るほどの完璧な主演ぶりだった。 

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井上のギャツビーは、どんな違法な行為に手を染めていても、誇りを持ち、ただひたすらにデイジーを求め、愛に生き、愛に殉じる愚直な、それでいて圧倒的に美しい男性だった。それは、貧しい環境に生まれながら、自分が実は浚われたプリンスであり、いつか王国の使者が自分を迎えにくると信じながらも、その迎えを自分は断る。自分の王国は自分で創るのだと、空想の世界で自分を鼓舞する青年を、大の男がそんな夢物語に逃げ込んで…と笑い飛ばすのではなく、頑張れと素直に応援する気持ちにさせたほどの威力だった。それはドラマのどんな局面でも常に貫かれている、確かな実力に裏打ちされた上での井上のスター性のなせる技に他ならず、ミュージカル界の新星として彼がこの世界に登場してから、若き二枚目スターとして、プリンスとして走り続けてきた道のりがあったからこそ、成し遂げられた成果だった。彼の芝居にはかねてから、良い意味で宝塚のトップスターに通じる煌めきとオーラがあると感じていたが、この作品でその資質が最大限に生かされたと言っていいと思う。そうした意味で、井上なくしては成立しなかった舞台であり、彼がこのミュージカル『グレート・ギャツビー』のギャツビーを演じたことは、作品にとって、小池にとって、ミュージカルファンにとって、もちろん宝塚歌劇ファンにとっても幸福なことだった。「朝日の昇る前に」ほどには、キャッチーで圧倒的な主題歌としてそそり立つ楽曲がない中で、リチャード・オベラッカーの書き下ろした如何にも今の時代のミュージカルの楽曲、まず豊かな声量がなくては歌いこなせないナンバーを余裕たっぷりに歌ったのはもちろん、ジャズエイジの時代を巧みに表したジャジーな楽曲も、粋に歌いきった歌唱力も特筆すべきものだった。

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そのギャツビーが文字通り命を賭けて愛し抜いたデイジーの夢咲ねねは、何よりも美しくなくてはならない役柄をよく支えている。この人が美しくないと、すへてを凌駕するほど美しくないと、愛に殉じるギャツビーが愚かに見えてしまう。その最も大切な部分をきちんと示したのは、やはり宝塚歌劇の「美は正義なり」の世界の中で、長くトップ娘役を務めた彼女ならではの力量だろう。音域がやや合わないようで、歌唱に苦戦のあとが見受けられるのが気がかりだが、ギャツビーとの純愛を引き裂かれたあと「女の子は綺麗なおバカさんでいるのが一番幸せなのよ」と、自分に言い聞かせている、その実決して綺麗なおバカさんではない繊細さを秘めている、小池版『グレート・ギャツビー』ならではのデイジー像に相応しい存在だったことを、まず評価したい。

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図らずも彼らの恋の橋渡しをするキーマンであり、ドラマを俯瞰する語り手でもあるニックの田代万里生は、ギャツビーとの距離の取り方が絶妙なのに瞠目した。宝塚歌劇の初演ではこの役柄は所謂、組の準トップスター、二番手の男役と呼ばれる人材が演じていて(初演キャストは一路真輝)、その演者同士の関係性から、ギャツビーとニックがかなり早い段階から親密な友情を育んでいるように感じられたものだが、田代のニックは初めは明らかにギャツビーに対してうさんくささを抱いている人物として登場する。それが徐々にギャツビーにシンパシーを感じて行き、最後には完全にギャツビーの側に立つ、その変化が自然で明確なのがドラマを奥深いものにしていた。井上との個性の違いも実に効果的で、作品の語り部としての役割も的確だった。
また、デイジーの友人ジョーダンのAKANE LIVは、プロゴルファーという作中随一の自立した女性を、適度なドライさを見せて活写している。ニックとの恋の顛末に納得がいくトータルに芯の通った役作りで、見事な頭身バランスと美貌にショートカットのヘアスタイルがよく似合った。

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デイジーの夫トムの広瀬友祐は、上流の男の無意識に表す傲岸不遜の表現が巧みで、上背もありマスクも整った持ち前のビジュアル面の強みだけではない、演技面の充実が頼もしい。かなり歪んではいるものの、トムなりにはデイジーを愛してもいるのだろうと思わせたのが、役柄に奥行きを与えていた。

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そのトムの愛人マートルの蒼乃夕妃は、刹那的なフラッパーを気取りながら、意に染まない今の暮らしからトムが助け出してくれるのを、実は待っている一途さと、必死さの表出が巧み。そんな妻の心を知りながら、なんとかやり直したいと願う夫のジョージの畠中洋が、悲劇へと転げ落ちていくドラマ後半の展開を一手に握って、鬼気迫る演じぶりがすさまじくさえある。これもまたキャスティングの見事な勝利だと感じられる好演だった。

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他に、ギャツビーと裏社会とのつながりを表すウルフシャイムの本間ひとしの、常の軽やかさとは打って変わった迫力は嬉しい驚きだったし、デイジーの母エリザベスの渚あきも、楚々とした持ち味とは遠いところにある、厳格な女性の権高さをよく表現していて、作品の重要なポイントを締めていた。マートルの妹キャサリンの音花ゆり、デイジーの乳母のヒルダの七瀬りりこと女キャストの主要な役柄を、ほぼ宝塚OGで固めた小池の意図が、この作品の場合確実に生きていて、宝塚の為に書かれた作品を男女版の作品として構築する橋渡しの役割をそれぞれがよく果たしている。何よりも、男役が体現するダンディズムと美学を、生身の男性が表現してグロテスクにも、ましてや欠片も滑稽にもならなかったのは画期的で、宝塚から生まれたミュージカル界の雄小池修一郎の原点たる優れた作品が、男女版舞台との交感という、新たな可能性を拓くもう1つの原点となったことを喜びたい。

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〈公演情報〉
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ミュージカル『グレート・ギャツビー』
原作◇ F・スコット・フィッツジェラルド 
音楽◇リチャード・オベラッカー 
脚本・演出◇小池修一郎 
出演◇井上芳雄、夢咲ねね、広瀬友祐、畠中洋、蒼乃夕妃、AKANE LIV、田代万里生  他
●5/8〜29◎日生劇場
〈料金〉S席 13.000円、A席 8.000円、B席 4.000円
〈お問い合わせ〉帝国劇場日生公演係 03-3213-7221(10時〜18時)
●6/3〜15◎中日劇場
〈料金〉A席 13.000円、B席 7.000円
〈お問い合わせ〉0570-55-0881(10時〜18時オペレーター対応 24時間音声自動対応)
●7/4日〜16◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S席 13.000円、A席 9.000円、B席 5.000円
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3800(10時〜18時)
●7/20〜25◎博多座
〈料金〉A席 13,500円 特B席 11,000円 B席 8,000円 C席 5,000円
〈お問い合わせ〉博多座電話予約センター 092-263-5555(10時〜18時)




【取材・文/橘涼香 写真提供/東宝/梅田芸術劇場】


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水夏希が挑んだ朗読とシャンソンで綴るピアフの人生『パンク・シャンソン〜エディット・ピアフの生涯〜』開幕!

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元宝塚雪組トップスターで、現在女優として活躍を続ける水夏希が、エディット・ピアフを語り、歌い、演じるドラマティカルシリーズリーディングvol.1『パンク・シャンソン〜エディット・ピアフの生涯〜』が、5月2日、よみうり大手町ホールで開幕した(6日まで)。

エディット・ピアフはフランスが最も愛したと称される国民的歌手。「愛の讃歌」「バラ色の人生」「水に流して」など、今尚歌い継がれるシャンソンの名曲の数々と、歌と恋に生きた波乱に満ちた人生は、これまでも多くの舞台作品となって世に送り出されている。中でも美輪明宏主演による『愛の讃歌 エディット・ピアフ物語』や、大竹しのぶ主演による『ピアフ』は、それぞれのライフワークとも呼べる熱量の高さで、再演を重ねる作品としてよく知られた存在だ。

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そんなピアフの生涯に新たに取り組むにあたって、水夏希と構成・演出の鈴木勝秀が選んだ手法が、リーディングドラマ、朗読劇だったことがまず面白かった。舞台には、黒いドレスを着た小さな少女のようなマネキン人形がいる。そこへアコーディオンを演奏するアラン・パットンが登場し、やがて水夏希と、2人の男性が登場。この人形がピアフその人の身長とほぼ同じなのだという説明がなされる。これによって、エディット・ガシオンという名の無名の歌い手が、「ピアフ=小さな雀」という名で世に知られる偉大な歌手になっていく、その経緯が視覚的に印象づけられたのは、幕開きの巧みな導入になった。

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そこからは、大きな動きがない中で、ピアフの人生がリーディングで語られていく。前述した二つのピアフを描いた作品に共通していた、ピアフの激烈とも、苛烈とも感じる生き様が、ここでは語りの中に込められることによって、どこか精緻に、静謐になるのが、非常に新しい感覚として伝わってくる。とりわけ、恋多き女性、常に新しい恋を求め、1人ではいられないピアフの生き様、名声を保つ為に陥って行く薬物依存、そうしたドロドロとした面ももちろんきちんと描かれつつ、恋愛関係が終わった後も、ピアフが彼らと友情を保ち続け、彼らもまたピアフに生涯曲を提供し続けたことや、献身的にピアフを守り続けたマネージャーのルイ・バリエに代表される、ピアフとは男女の間柄にはならなかった男性もまた、ピアフを深く愛し続けたことなどが、むしろ煌めいて立ち上ってくるのが新鮮だった。
 
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その美しさを生んだ要因は、多くを観客の想像に委ねるリーディング・ドラマの特性と同時に、ピアフを演じ、語り、歌った水夏希の、理知的で清心な持ち味によるところが大きい。宝塚退団後、ミュージカル、コンサート、ダンス主体の公演等々、様々なステージで磨かれてきた「女優・水夏希」の美しさと艶めきが、このほぼ動きのない作品の中で、むしろハッキリと形を成して立ち現れた感覚が強烈だ。

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そこには「読む」という制約された表現の中だからこその豊かさと、演じ手の個性の双方が共に際立つ
効果があった。中でも、水がピアフの代表的なシャンソンを歌う時、立ち上がる、また机に横座りをする、そんな小さな動きと照明の変化にも、それまでの舞台が静かに進むからこそのインパクトがあって歌唱の説得力も際立つ。シャンソンは本人の年輪と経験が加味される毎に味わいが増すジャンルであることを併せて、良い分野への1歩を踏み出したと思う。5年後の水夏希、10年後の水夏希が、この作品に取り組んだ時に、作品からどんな香りが立ち、歌にどんな色が加わるか、想像しただけでドキドキするような気持ちにもなった。インタビューによれば、演出の鈴木勝秀が「あまり稽古をしないように」という趣旨の指示を出しているそうだが、その意図がよくわかる、今の水夏希が演じ、語り、歌うピアフ、つまりは、水の「今」を堪能できる舞台になっていると感じた。

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そんな舞台を共に飾るのが、いずれも日替わりキャストで、この日は福井貴一と渡辺大輔の出演。大雑把に分ければ、ピアフと関わった年長の人物を福井が、若い人物を渡辺が受け持つ形だが、それだけでなく、所謂ナレーターの部分も、実に巧みに2人が分担していて、澱みない構成が巧みだ。
ミュージカルの世界で若く、美しい二枚目としてデビューし、長く活躍してきた福井も、年輪を重ねて滋味深い紳士となり、こうした作品の重石として場を引き締めているのは感慨深く、気品ある持ち味がやはり舞台によく表れている。

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一方、そのミュージカルの世界に、今現在、若く美しい二枚目として存在している渡辺が、これまでの舞台から放ってきたパワー全開の勢いが、ここでは静かに体内に籠められていて、新たな魅力を見せていたのが素晴らしい。佇まいに誠実さがあるのも好ましく、渡辺本人にとってもこの舞台は非常に貴重な経験になったのではないか。ここからの彼の活躍がますます楽しみになった。

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この男性2人の共演者には、山路和弘、石橋祐、辻本祐樹(※「辻」の正式表記は一点しんにょう)、牧田哲也が名を連ねていて、顔ぶれによって全く違った舞台を観ることができるだろう。別の組み合わせも是非観てみたい。何よりも、水夏希が新たに取り組んだ舞台が、将来への可能性をたっぷりと感じさせてくれたことが嬉しく、「ドラマティカルシリーズ リーディング」が、長く続いてくれることを期待したいステージとなっている。
 
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〈公演情報〉
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ドラマティカルシリーズ リーディングvol.1
『パンク・シャンソン〜エディット・ピアフの生涯〜』
構成・演出◇鈴木勝秀
アコーディオン◇アラン・パットン
出演◇水夏希/福井貴一・山路和弘・石橋祐
日替わりゲスト◇辻本祐樹・牧田哲也・渡辺大輔(五十音順)
※5/6  14時回は出演者4名での特別バージョンとなります。
●5/2〜6◎よみうり大手町ホール
〈料金〉8,900円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030(平日 11:00〜17:00/土日祝休)

 



朝海ひかる女優10周年記念ツアー『will』 




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【取材・文・撮影/橘涼香】

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