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井上芳雄主演により小池修一郎が新しく創造したミュージカル『グレート・ギャツビー』

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宝塚歌劇で初ミュージカル化され、日本演劇界の雄小池修一郎が世に出るきっかけともなった記念碑的作品である、ミュージカル『グレート・ギャツビー』が、楽曲を一新し、井上芳雄主演による男女版として、日比谷の日生劇場で開幕した((29日まで。のち、6月3日〜15日名古屋中日劇場、7月4日〜16日大阪梅田芸術劇場メインホール、7月20〜25日福岡博多座での上演)。

原作は、F・スコット・フィッツジェラルドの代表作であると同時に、アメリカ文学をも代表すると称される同名の傑作小説。経済、文化が大きく発展し、大バブル時代を迎えていた1920年代のニューヨークで、真実の愛を求め続けた男が、破滅へと向かう悲しくも美しい物語は、時を超え今も輝き続けていて、1974年にロバート・レッドフォード、2013年にはレオナルド・ディカプリオ主演による映画化がなされている。
そんな作品の、世界初のミュージカル化が、小池修一郎による宝塚歌劇団での上演で、1991年に杜けあき主演で初演(『華麗なるギャツビー』として上演)され、その優れたオリジナルミュージカルとしての完成度が大きな喝采を集めた。この作品の成果により、小池は第17回菊田一夫演劇賞を受賞。当時、宝塚歌劇団の若き才能として評価されていた小池に、演劇界全体が注目した最初の機会がこの作品の成功だったと言って間違なく、『エリザベート』『モーツァルト!』『ロミオとジュリエット』『スカーレット・ピンパーネル』『1789〜バスティーユの恋人たち』等々、海外ミュージカルの優れた潤色・演出で、日本ミュージカル界の中心的存在となっていく小池の、謂わば土台を創った貴重な作品だった。
更に2008年には瀬奈じゅん主演で、『グレート・ギャツビー』とタイトルを改め、1本立ての公演として日生劇場で再演されている。今回はそれ以来、9年ぶりの上演で、『BANDSTAND』でブロードウェイ・デビューを果たした新星リチャード・オベラッカーによる全曲書き下ろしの楽曲に、井上芳雄を主人公ジェイ・ギャツビーに迎え、初めての男女版としての上演となった。

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【STORY】
1922年、空前の好景気に沸くニューヨークへやってきたニック(田代万里生)は、隣接する豪邸で、夜毎開かれている豪華絢爛なパーティーへの招待状を受け取る。主の名はジェイ・ギャツビー(井上芳雄)。だが館を訪れたニックは、パーティに参加している大勢の客人のほとんどがギャツビーの顔も知らず、招待状すら持っていないことを知る。禁酒法の時代に堂々と本物の酒を振る舞うこのパーティには、誰もが自由に参加することができるのだ。しかも、その場に警官が踏み込んでくると、ようやくギャツビーその人が現れ、パーティに参加していた警視総監を促してすべてはお咎めなし。酒と同時にこの非現実な空間に酔ったニックは、喧騒から逃れて外に出て、ひとり佇み、湾の向こう岸の灯りを見つめるギャツビーの姿を目にする。初めて隣人同士の挨拶を交わしたニックに、ギャツビーは自分の出身地や戦地での経歴を話す。勢い自分のことも話す流れになったニックは、ギャツビーが見つめていた向こう岸に、自分の美しい従姉妹のデイジー(夢咲ねね)、その夫で大学の先輩のトム(広瀬友祐)夫婦がいることを告げるが、その時ギャツビーの顔色が変わったことには気づかなかった。
だが、そんなニックの存在が、やがてギャツビー、デイジー、トム、デイジーの友人で女子プロゴルファーのジョーダン(AKANE LIV)、更にはトムの愛人のマートル(蒼乃夕妃)とその夫ジョージ(畠中洋)の運命を、大きく変えていく出会いをもたらして……

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小池修一郎がこの作品をミュージカル化した最初は、宝塚歌劇の定番上演形態である、ドラマものとショーとの二本立ての1本としての上演だったので、作品は1幕もの約90分で出来上がっていた。この90分の中に、愚直なまでに、人生でただ1人愛した女性、デイジーを再びこの手に取り戻そうとするギャツビーの思いの深さと、それ故の軋みと掛け違いが悲劇を生んでいくドラマ世界が、宝塚歌劇の特徴である銀橋をはじめとした、盆、セリという舞台機構を駆使してひと時も止まらずに描かれる様は圧巻で、主題歌「朝日の昇る前に」は主演者である杜けあきの絶唱と共に、実に鮮烈な印象を残したものだった。それから17年後、宝塚歌劇の所謂外箱公演(宝塚大劇場、東京宝塚劇場以外の劇場で行う宝塚歌劇の公演全般)としての、日生劇場での再演では、休憩を挟む2幕ものの1本立てとして大幅に加筆され、楽曲もプラスされての上演となり、特に、その17年間の間に、海外ミュージカルの潤色・演出のジャンルで、大きな名声を得ていた小池の「ミュージカル」のノウハウが随所に加味されていたのが印象的な仕上がりとなっていた。
それから更に9年、今回の男女版の脚本と構成は、大きくはその08年の日生劇場上演時のものを踏襲していて、冒頭に結末を持ってきたことと、何よりもやはりミュージカルの要である楽曲が全く新しくなっていることととで、十分な新鮮さはありつつ、小池が本来この作品を描こうとした作劇の原点が揺らいでいないことに、まず大きな感動と感慨があった。それは演劇界の巨人とも言っていいだろう存在となった小池が、劇作家として確かな歩みをはじめた時の、謂わば非常に無垢でピュアなものを、未だ大切に心に持っていることの証でもあったし、更に、日本のミュージカル界のスターたち、特に男優たちが、ここまでダンディズムを描けるようになったことの、やはり証でもあった。

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というのも、近年、海外ミュージカルの大作が、まず宝塚歌劇団で初演され、のちに東宝や梅田芸術劇場の製作で、男女版で上演されるという形態が、全く珍しくなくなった日本の演劇界に於いても、(それは小池修一郎という日本のミュージカル演出の第一人者が、宝塚歌劇団に在籍したまま外部のミュージカル作品の演出も精力的に手掛けていることが、まず最も大きな要因ではあろうが)、宝塚歌劇団のオリジナル作品が、改めて男女版で上演されるという今回の『グレート・ギャツビー』の持つ意味合いは、全く別の側面を持つものだったからだ。敢えて女性が男性を演じることで、確実に1つのファンタジー性と様式美を有する宝塚歌劇では、日本人が外人を演じることも、男性が1人の女性への愛の為に命を落とす様を、愚かな行為ではなく愛に殉じた至高の美しさとして描くことも、ある意味で容易だ。宝塚歌劇には「美しいものは正義である」という絶対的なセオリーがあり、それを最上のものとして理解し、賛美する観客が劇場を埋めている現実がまず大きな前提として現実にある。。宝塚歌劇が「舞台と客席が共犯関係になって創り出す幻想空間」と呼ばれるのはその為で、あの世界には−、報われぬ愛に殉じる男を愚かだと指さす者は誰もいない。
けれども、男女版のミュージカルとなれば話は全く違ってくる。この作品のジェイ・ギャツビーが、かつて家柄の違いの為に引き裂かれた愛する女性、ディジーを取り戻す為に、裏社会とも通じ財を成し、裕福な青年と結婚し子供までいるデイジーの家の対岸に豪邸を建て、彼女が訪ねてくる日を待ちながら、招待状不問の豪華なパーティを夜毎開き続けるという行為は、1歩間違えばストーカーとも取られかねない執念に違いない。しかもそうまでしても、思いが叶わないストーリー展開と、あまりにも孤独なラストを、リアルな男女が演じる舞台で同じように提示した時、ギャツビーが客席の共感を得られるか否かには、宝塚歌劇団での上演よりも遥かに高いハードルがあったはずだ。だからこそ、そこを脚本・構成がどう描いてくるのか?に注目もし、どこかで案じていた部分も確かにある。
だが、そうした構成上の配慮や、小手先の技巧に走ることなく、若き日の小池が作品に魅了され、宝塚歌劇の為に書き下ろしたミュージカル作品としての骨子をほぼ踏襲した状態のままで、井上芳雄のギャツビーは、その高いハードルを実に悠然と越えてきた。それはまさに目を瞠るほどの完璧な主演ぶりだった。 

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井上のギャツビーは、どんな違法な行為に手を染めていても、誇りを持ち、ただひたすらにデイジーを求め、愛に生き、愛に殉じる愚直な、それでいて圧倒的に美しい男性だった。それは、貧しい環境に生まれながら、自分が実は浚われたプリンスであり、いつか王国の使者が自分を迎えにくると信じながらも、その迎えを自分は断る。自分の王国は自分で創るのだと、空想の世界で自分を鼓舞する青年を、大の男がそんな夢物語に逃げ込んで…と笑い飛ばすのではなく、頑張れと素直に応援する気持ちにさせたほどの威力だった。それはドラマのどんな局面でも常に貫かれている、確かな実力に裏打ちされた上での井上のスター性のなせる技に他ならず、ミュージカル界の新星として彼がこの世界に登場してから、若き二枚目スターとして、プリンスとして走り続けてきた道のりがあったからこそ、成し遂げられた成果だった。彼の芝居にはかねてから、良い意味で宝塚のトップスターに通じる煌めきとオーラがあると感じていたが、この作品でその資質が最大限に生かされたと言っていいと思う。そうした意味で、井上なくしては成立しなかった舞台であり、彼がこのミュージカル『グレート・ギャツビー』のギャツビーを演じたことは、作品にとって、小池にとって、ミュージカルファンにとって、もちろん宝塚歌劇ファンにとっても幸福なことだった。「朝日の昇る前に」ほどには、キャッチーで圧倒的な主題歌としてそそり立つ楽曲がない中で、リチャード・オベラッカーの書き下ろした如何にも今の時代のミュージカルの楽曲、まず豊かな声量がなくては歌いこなせないナンバーを余裕たっぷりに歌ったのはもちろん、ジャズエイジの時代を巧みに表したジャジーな楽曲も、粋に歌いきった歌唱力も特筆すべきものだった。

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そのギャツビーが文字通り命を賭けて愛し抜いたデイジーの夢咲ねねは、何よりも美しくなくてはならない役柄をよく支えている。この人が美しくないと、すへてを凌駕するほど美しくないと、愛に殉じるギャツビーが愚かに見えてしまう。その最も大切な部分をきちんと示したのは、やはり宝塚歌劇の「美は正義なり」の世界の中で、長くトップ娘役を務めた彼女ならではの力量だろう。音域がやや合わないようで、歌唱に苦戦のあとが見受けられるのが気がかりだが、ギャツビーとの純愛を引き裂かれたあと「女の子は綺麗なおバカさんでいるのが一番幸せなのよ」と、自分に言い聞かせている、その実決して綺麗なおバカさんではない繊細さを秘めている、小池版『グレート・ギャツビー』ならではのデイジー像に相応しい存在だったことを、まず評価したい。

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図らずも彼らの恋の橋渡しをするキーマンであり、ドラマを俯瞰する語り手でもあるニックの田代万里生は、ギャツビーとの距離の取り方が絶妙なのに瞠目した。宝塚歌劇の初演ではこの役柄は所謂、組の準トップスター、二番手の男役と呼ばれる人材が演じていて(初演キャストは一路真輝)、その演者同士の関係性から、ギャツビーとニックがかなり早い段階から親密な友情を育んでいるように感じられたものだが、田代のニックは初めは明らかにギャツビーに対してうさんくささを抱いている人物として登場する。それが徐々にギャツビーにシンパシーを感じて行き、最後には完全にギャツビーの側に立つ、その変化が自然で明確なのがドラマを奥深いものにしていた。井上との個性の違いも実に効果的で、作品の語り部としての役割も的確だった。
また、デイジーの友人ジョーダンのAKANE LIVは、プロゴルファーという作中随一の自立した女性を、適度なドライさを見せて活写している。ニックとの恋の顛末に納得がいくトータルに芯の通った役作りで、見事な頭身バランスと美貌にショートカットのヘアスタイルがよく似合った。

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デイジーの夫トムの広瀬友祐は、上流の男の無意識に表す傲岸不遜の表現が巧みで、上背もありマスクも整った持ち前のビジュアル面の強みだけではない、演技面の充実が頼もしい。かなり歪んではいるものの、トムなりにはデイジーを愛してもいるのだろうと思わせたのが、役柄に奥行きを与えていた。

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そのトムの愛人マートルの蒼乃夕妃は、刹那的なフラッパーを気取りながら、意に染まない今の暮らしからトムが助け出してくれるのを、実は待っている一途さと、必死さの表出が巧み。そんな妻の心を知りながら、なんとかやり直したいと願う夫のジョージの畠中洋が、悲劇へと転げ落ちていくドラマ後半の展開を一手に握って、鬼気迫る演じぶりがすさまじくさえある。これもまたキャスティングの見事な勝利だと感じられる好演だった。

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他に、ギャツビーと裏社会とのつながりを表すウルフシャイムの本間ひとしの、常の軽やかさとは打って変わった迫力は嬉しい驚きだったし、デイジーの母エリザベスの渚あきも、楚々とした持ち味とは遠いところにある、厳格な女性の権高さをよく表現していて、作品の重要なポイントを締めていた。マートルの妹キャサリンの音花ゆり、デイジーの乳母のヒルダの七瀬りりこと女キャストの主要な役柄を、ほぼ宝塚OGで固めた小池の意図が、この作品の場合確実に生きていて、宝塚の為に書かれた作品を男女版の作品として構築する橋渡しの役割をそれぞれがよく果たしている。何よりも、男役が体現するダンディズムと美学を、生身の男性が表現してグロテスクにも、ましてや欠片も滑稽にもならなかったのは画期的で、宝塚から生まれたミュージカル界の雄小池修一郎の原点たる優れた作品が、男女版舞台との交感という、新たな可能性を拓くもう1つの原点となったことを喜びたい。

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〈公演情報〉
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ミュージカル『グレート・ギャツビー』
原作◇ F・スコット・フィッツジェラルド 
音楽◇リチャード・オベラッカー 
脚本・演出◇小池修一郎 
出演◇井上芳雄、夢咲ねね、広瀬友祐、畠中洋、蒼乃夕妃、AKANE LIV、田代万里生  他
●5/8〜29◎日生劇場
〈料金〉S席 13.000円、A席 8.000円、B席 4.000円
〈お問い合わせ〉帝国劇場日生公演係 03-3213-7221(10時〜18時)
●6/3〜15◎中日劇場
〈料金〉A席 13.000円、B席 7.000円
〈お問い合わせ〉0570-55-0881(10時〜18時オペレーター対応 24時間音声自動対応)
●7/4日〜16◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S席 13.000円、A席 9.000円、B席 5.000円
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3800(10時〜18時)
●7/20〜25◎博多座
〈料金〉A席 13,500円 特B席 11,000円 B席 8,000円 C席 5,000円
〈お問い合わせ〉博多座電話予約センター 092-263-5555(10時〜18時)




【取材・文/橘涼香 写真提供/東宝/梅田芸術劇場】


「朝海ひかる」女優10周年記念ツアーdance-live-「-will-」 




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水夏希が挑んだ朗読とシャンソンで綴るピアフの人生『パンク・シャンソン〜エディット・ピアフの生涯〜』開幕!

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元宝塚雪組トップスターで、現在女優として活躍を続ける水夏希が、エディット・ピアフを語り、歌い、演じるドラマティカルシリーズリーディングvol.1『パンク・シャンソン〜エディット・ピアフの生涯〜』が、5月2日、よみうり大手町ホールで開幕した(6日まで)。

エディット・ピアフはフランスが最も愛したと称される国民的歌手。「愛の讃歌」「バラ色の人生」「水に流して」など、今尚歌い継がれるシャンソンの名曲の数々と、歌と恋に生きた波乱に満ちた人生は、これまでも多くの舞台作品となって世に送り出されている。中でも美輪明宏主演による『愛の讃歌 エディット・ピアフ物語』や、大竹しのぶ主演による『ピアフ』は、それぞれのライフワークとも呼べる熱量の高さで、再演を重ねる作品としてよく知られた存在だ。

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そんなピアフの生涯に新たに取り組むにあたって、水夏希と構成・演出の鈴木勝秀が選んだ手法が、リーディングドラマ、朗読劇だったことがまず面白かった。舞台には、黒いドレスを着た小さな少女のようなマネキン人形がいる。そこへアコーディオンを演奏するアラン・パットンが登場し、やがて水夏希と、2人の男性が登場。この人形がピアフその人の身長とほぼ同じなのだという説明がなされる。これによって、エディット・ガシオンという名の無名の歌い手が、「ピアフ=小さな雀」という名で世に知られる偉大な歌手になっていく、その経緯が視覚的に印象づけられたのは、幕開きの巧みな導入になった。

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そこからは、大きな動きがない中で、ピアフの人生がリーディングで語られていく。前述した二つのピアフを描いた作品に共通していた、ピアフの激烈とも、苛烈とも感じる生き様が、ここでは語りの中に込められることによって、どこか精緻に、静謐になるのが、非常に新しい感覚として伝わってくる。とりわけ、恋多き女性、常に新しい恋を求め、1人ではいられないピアフの生き様、名声を保つ為に陥って行く薬物依存、そうしたドロドロとした面ももちろんきちんと描かれつつ、恋愛関係が終わった後も、ピアフが彼らと友情を保ち続け、彼らもまたピアフに生涯曲を提供し続けたことや、献身的にピアフを守り続けたマネージャーのルイ・バリエに代表される、ピアフとは男女の間柄にはならなかった男性もまた、ピアフを深く愛し続けたことなどが、むしろ煌めいて立ち上ってくるのが新鮮だった。
 
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その美しさを生んだ要因は、多くを観客の想像に委ねるリーディング・ドラマの特性と同時に、ピアフを演じ、語り、歌った水夏希の、理知的で清心な持ち味によるところが大きい。宝塚退団後、ミュージカル、コンサート、ダンス主体の公演等々、様々なステージで磨かれてきた「女優・水夏希」の美しさと艶めきが、このほぼ動きのない作品の中で、むしろハッキリと形を成して立ち現れた感覚が強烈だ。

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そこには「読む」という制約された表現の中だからこその豊かさと、演じ手の個性の双方が共に際立つ
効果があった。中でも、水がピアフの代表的なシャンソンを歌う時、立ち上がる、また机に横座りをする、そんな小さな動きと照明の変化にも、それまでの舞台が静かに進むからこそのインパクトがあって歌唱の説得力も際立つ。シャンソンは本人の年輪と経験が加味される毎に味わいが増すジャンルであることを併せて、良い分野への1歩を踏み出したと思う。5年後の水夏希、10年後の水夏希が、この作品に取り組んだ時に、作品からどんな香りが立ち、歌にどんな色が加わるか、想像しただけでドキドキするような気持ちにもなった。インタビューによれば、演出の鈴木勝秀が「あまり稽古をしないように」という趣旨の指示を出しているそうだが、その意図がよくわかる、今の水夏希が演じ、語り、歌うピアフ、つまりは、水の「今」を堪能できる舞台になっていると感じた。

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そんな舞台を共に飾るのが、いずれも日替わりキャストで、この日は福井貴一と渡辺大輔の出演。大雑把に分ければ、ピアフと関わった年長の人物を福井が、若い人物を渡辺が受け持つ形だが、それだけでなく、所謂ナレーターの部分も、実に巧みに2人が分担していて、澱みない構成が巧みだ。
ミュージカルの世界で若く、美しい二枚目としてデビューし、長く活躍してきた福井も、年輪を重ねて滋味深い紳士となり、こうした作品の重石として場を引き締めているのは感慨深く、気品ある持ち味がやはり舞台によく表れている。

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一方、そのミュージカルの世界に、今現在、若く美しい二枚目として存在している渡辺が、これまでの舞台から放ってきたパワー全開の勢いが、ここでは静かに体内に籠められていて、新たな魅力を見せていたのが素晴らしい。佇まいに誠実さがあるのも好ましく、渡辺本人にとってもこの舞台は非常に貴重な経験になったのではないか。ここからの彼の活躍がますます楽しみになった。

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この男性2人の共演者には、山路和弘、石橋祐、辻本祐樹(※「辻」の正式表記は一点しんにょう)、牧田哲也が名を連ねていて、顔ぶれによって全く違った舞台を観ることができるだろう。別の組み合わせも是非観てみたい。何よりも、水夏希が新たに取り組んだ舞台が、将来への可能性をたっぷりと感じさせてくれたことが嬉しく、「ドラマティカルシリーズ リーディング」が、長く続いてくれることを期待したいステージとなっている。
 
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〈公演情報〉
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ドラマティカルシリーズ リーディングvol.1
『パンク・シャンソン〜エディット・ピアフの生涯〜』
構成・演出◇鈴木勝秀
アコーディオン◇アラン・パットン
出演◇水夏希/福井貴一・山路和弘・石橋祐
日替わりゲスト◇辻本祐樹・牧田哲也・渡辺大輔(五十音順)
※5/6  14時回は出演者4名での特別バージョンとなります。
●5/2〜6◎よみうり大手町ホール
〈料金〉8,900円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030(平日 11:00〜17:00/土日祝休)

 



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【取材・文・撮影/橘涼香】

抱腹絶倒のコメディ!〜崩壊シリーズ〜『リメンバーミー』上演中!

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昨年4月、開幕とともに口コミで話題が話題を呼んだ衝撃の喜劇、〜崩壊シリーズ〜『九条丸家の殺人事件』。その崩壊シリーズ第2弾となるのは『リメンバーミー』。東京公演が4月13日〜30日、俳優座劇場にて、そののち大阪、名古屋、福岡でも公演する。
 
作・演出は前回に引き続き、構成作家のオークラ。バナナマンや東京03など数々の人気芸人の傑作コントはじめ、人気バラエティ番組「ゴッドタン」などで知られている。キャスト陣も前回に続いて山崎樹範、松下洸平、上地春奈、大水洋介(ラバーガール)、伊藤裕一、彩吹真央、梶原善が登場、さらに今回新たに味方良介が参戦、芸達者な豪華メンバーが揃った。

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【あらすじ】
史上最低最悪の公演「九条丸家の殺人事件」から1年…。劇団「荻窪遊々演劇社」の舞台監督の杏里は子供を授かり、恋人である座長の栗須は結婚を決意する。しかし、杏里の父親が猛反対。「劇団員風情に、娘をやれるか!」と怒鳴られ、なんとか説得をするが、犒觝Г両魴錙匹鯑佑つけられる。「俺を泣かせてみろ!」
1年ぶりに再会したかつてのメンバー。父親を泣かすために始まった芝居は、新たなる崩壊の始ま
り…!?

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素人劇団「荻窪遊々演劇社」の、公演初日の劇場で全ての出来事は起こる。
舞台裏では、座長で作・演出を手掛ける栗須健司(山崎樹範)と舞台監督の杉山杏里(上地春奈)の結婚を祝うサプライズを、メンバーが仕掛けていた。

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2人の結婚を許さない杏里の父に認めてもらうために、栗須は芝居で彼を泣かせなければならない。そのために練った悲恋物の上演に懸けている。それを助ける個性あふれる劇団員たちが、無事にその芝居をエンディングまで演じられるか。杏里の父を泣かせることができるのか。一瞬も目を離せない、スピード感とテンポのよさで、抱腹絶倒のコメディーとなっている。

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崩壊シリーズという副題にもある通り、劇団も公演中の芝居も崩壊していく。上演中にも関わらず個人の感情を爆発させる人と、そのために生じた芝居のほころびを埋めようと必死になる人たちが右往左往する。そのシチュエーションだけで面白く、息もつかせぬ展開に引き込まれる。

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なによりこの芝居を見るべきものにしているのは、演技巧者たちが「素人芝居」をすることだろう。元消防士や無職もいれば元キャバ嬢もいるという、素人劇団ならではの絶妙な下手さで芝居をする出演者たちが見どころだ。
彩吹真央は劇中劇の病弱なヒロイン役が思い出したように咳をしたり、わざとらしく倒れたりと、体を張るコメディエンヌぶり。また、事態に翻弄されまくる山崎樹範、フォローが巧みでカッコよく踊る松下洸平、豹変するキャラでインパクト満点の伊藤裕一、意外と普通のようでやっぱり変な大木洋介、恐くてかわいい上地春奈、安定のおとぼけ感の梶原善、そして初参加の味方良介は華麗なバカキャラが楽しい。1人ひとりのキャラが立っていて、それぞれ目が離せない。

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座長の山崎樹範が「中身はないです」と豪語するように、ドタバタに徹して、そのために用意周到、細部まで手を抜かずに考え抜かれて作られているのが気持ちいい。回り舞台と仕掛けで、次々に炸裂するネタで笑わせ、ちょっと泣かせる。バカバカしいまでの一生懸命さで、体当たりする役者たちのパワーで、観るものを元気にさせてくれる舞台だ
 
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〈公演情報〉
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〜崩壊シリーズ〜『リメンバーミー』
作・演出◇オークラ
出演◇山崎樹範/松下洸平 味方良介 上地春奈 
大水洋介(ラバーガール) 伊藤裕一/彩吹真央/梶原善
●4/13〜30◎俳優座劇場
●5/3・4◎松下IMPホール
●5/11◎日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
●5/13・14◎都久志会館
〈お問い合わせ〉東京/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
http://www.houkai-st.com/





【取材・文/佐藤栄里子 写真提供/エイベックス・ライヴ・クリエイティブ】 




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オシャレなウイットと音楽の魅力にあふれたミュージカルコメディ『紳士のための愛と殺人の手引き』上演中!

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市村正親8回殺される!? という目を奪われずにはいられないキャッチコピーで、大きな注目をを集めている話題作、ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』が、日比谷の日生劇場で上演中だ(30日まで)。

『紳士のための愛と殺人の手引き』は、2014年のトニー賞で作品賞、脚本賞他4冠に輝いたブロードウェイミュージカル。エドワード朝時代のイギリスを舞台に、伯爵家の爵位継承順位8番目の男が、上位の邪魔者たちを次々に手にかけていく、その「殺されるサマ」の馬鹿馬鹿しさが、観客を爆笑の渦に巻き込む、ブロードウェイらしいウイットに富んだ作品で、今回の上演が本邦初演となっている。

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【STORY】 

優しい母に突然先立たれ、仕事のあてもなくどん底に落ち込んでいる青年モンティ(ウエンツ瑛士・柿澤勇人、Wキャスト)のもとに、亡き母の古い友人ミス・シングル(春風ひとみ)が訪ねてくる。彼女が持ってきたのは、なんとモンティの母が実は大富豪の貴族「ダイスクイス・ファミリー」の血縁であり、モンティにも爵位継承権があるというビッグニュースだった。とは言ってもモンティの継承権は8番目。つまり現伯爵を含めた、ダイスクイスのメンバー8人(いずれも市村正親)が死ななくては、伯爵にはなれない。
はじめは、途方もない夢物語としか思えなかったモンティだが、せめてこの血縁を利用して就職口の斡旋をしてもらえないかと、打診の手紙をダイスクイスメンバーに送るものの、相手にもされない。しかも、亡き母も彼らに生前援助を願い、冷たく拒絶されてきた事実を知り、モンティはついに決意する。「もしも8人全員が死んだなら、自分が伯爵に!莫大な財産と城をこの手にできる!」

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目標に向かって歩み出したモンティは、1人、また1人と奇妙で奇抜な方法でダイスクイスメンバーを手にかけていく。モンティを愛しているが、文無しの男とは結婚できないと金持ちに嫁いでいたガールフレンドのシベラ(シルビア・グラブ)とのよりも戻り、一方で継承権上位の1人ヘンリーの妹フィービー(宮澤エマ)とは結婚の約束が整い、人生の上昇気流に乗るモンティ。そしてついに、最後の1人をあの世に送り、晴れて念願の伯爵に!と思ったその時、モンティはあまりにも意外な殺人の容疑で逮捕、投獄されてしまう。絶体絶命のピンチに立たされたモンティの運命は…!?

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舞台に接してまず感じるのは、あぁブロードウェイミュージカルだなというシンプルな思いだった。何しろ人の死を、それも例えば、壮絶な復讐の果てのやむにやまれぬ行動などと言った、良い悪いは別にして犯人の心情にも寄り添えるような設定も何もないまま、次々と殺されていく登場人物たちの、死にざまの馬鹿馬鹿しさを笑い飛ばそうという感覚は、日本人の資質からはなかなか生まれ出ないものに思えたからだ。

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けれども、それを如何にも軽快なウイットの効いたブラックジョークに変換したのがこの作品の眼目で、とにかくテンポ良く、物語が弾んでいて、その実にオシャレな感覚に引き込まれる。特に、ソロ、デュエット、重唱、コーラスと、多彩に展開されるナンバーがいずれも佳曲揃いで、例えば『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』と言った、重さのあるオペラティック・ミュージカルにも全く引けを取らないスケールや、面白さがあるのには感心させられた。阿部裕、彩橋みゆ、高谷あゆみと言った、ミュージカルの常連組がアンサンブルに入っていて、ずいぶん贅沢な布陣だなと思っていたが、それもそのはず、彼、彼女らが歌うコーラスが、作品の面白さを何倍にもしているだけでなく、それぞれに大きな活躍の場があって、メインキャストだけでなく、全員で創り上げるミュージカルの醍醐味が満載。おとぎ話の絵本のように作られた装置(石原敬)や、カリカチュアされた振付(広崎うらん)が、作品の軽やかさを支えていて、それらをまとめた寺崎秀臣の演出にも日本人にも観やすい工夫が随所になされていて好感が持てた。

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そんな作品のウイットに富んだ楽しさを決定的なものにしたのが、次々と殺されていくダイスクイスメンバーを、早替わりに次ぐ早替わりで演じ分けた市村正親の怪演だ。もともとトニー賞受賞式を中継するテレビ番組に出演していたミュージカル界のプリンス井上芳雄が「日本でこの役を演じられるのは市村正親さんしかいない」と公言したことが、市村が作品を知った最初の機会だったそうだが、その後もブロードウェイで作品を観て来た誰もが「この役は市村さんにしかできない」と言い続け、市村本人がまだ作品を観ないうちに出演が決まったという逸話が、さもあろうと思える。この老若男女、時によっては数分しか出番のない役柄もあるダイスクイスの人々を、しかも数十秒レベルの早替わりにも関わらず、何の苦もなくと客席には思わせて、見事に演じ分けられるのは、確かに市村しかいないだろう。
特に、市村正親というミュージカルスターがもともと根底に持っているチャーミングさが、奇想天外な殺され方をするすべてのダイスクイスの人々の中に生きていることが、ブロードウェイ作品ならではのウィットを、日本の湿気に浸すことなくカラッと伝える力になっていて、あっという間に別人になって登場する市村を観るだけでも、十分入場料金以上の価値がある。何より、物語の主筋を担っているのは紛れもなくモンティなところを、こうきたか!と思わせるラストシーンで、すべてさらっていくのは、ミュージカル界のキングオブキング、市村正親ならではの離れ業。なんてシャレた終わり方!と思わせる観劇後の印象を、すべて市村が創り出しているのに脱帽だった。

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その物語の芯となる、モンティをWキャストで演じたウエンツ瑛士は、まず何よりも美しい二枚目として登場してきて、客席の視線を集める力がこの役柄に相応しい。失意の中にいるモンティが、思いもかけない自分の出自を知らされる。それでも彼はすぐに人を殺そうとする訳ではない。はじまりはほとんど偶然だし、綿密に立てられた計画もないまま、どこか運命のジェットコースターに乗ったかのようなウエンツのモンティは、深刻には悪びれずに、常にユーモアの香りも醸し出す。この感覚は、人が次々に死ぬことを笑い飛ばすこの作品に打ってつけで、観客が早替わりを続ける市村に興じると同時に、ウエンツのモンティを応援する気持ちに自然になれる魅力となっていた。次々と人を殺していくモンティが、全く予想外の容疑で足をすくわれる終盤の、非常に良くできた作劇の展開にも、モンティはどうなるの?という関心が高まるのも、このウェンツの魅力あってこそのこと。歌唱力も十二分だし、何より多くの役柄を鮮やかに演じ分ける市村に真向うから渡り合った経験は、大きな財産となるだろう。これからも積極的にミュージカルの舞台に関わって欲しい人材だ。

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一方の柿澤勇人は、1幕の序盤では、どちらかといえば声も弱々しく、動きも最小限に抑えて、社会の風に晒されていない子供のような無垢な演技を心がけていた。シルビアとのデュエット「あなたがいなきゃ」も透き通ったピュアな歌声だ。しかし、この作品では、殺人を犯すに連れて心が成長し、大人のモンティになっていく。柿澤はどちらかといえば、表情や動きで、モンティのずる賢さ、悪意や野望を表現するのではなく、心の機微を繊細に表現しようと、声のトーンを少しずつ地声に近づけて自信ありげな声を出したかと思えば、動きも少しずつオーバーにしていく。あくまで派手なリアクションやアクションは抑えめに、市村正親のダイスクイスを支える優しい演技だった。少しずつ心が成長し、モンティが変わっていく様を、伸びやかな歌で表現していたのが彼の特徴で、2幕の最後には、深みのあるバリトンを日生劇場の最後列まで響かせた、歌声の張りの強さはさすがというほかなかった(※柿澤勇人評・竹下力)。

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そんなモンティをめぐる女性たち、モンティを愛しているが、お金のない結婚はその愛を破壊すると、愛していない裕福な男と結婚するシベラのシルビア・グラブは、真剣な話をしようとしているモンティに「ドレスをまだ褒めてくれていない」と訴える、幼さと色っぽさを上手く共存させている。ピンクで統一された衣装も美しく着こなし、コミカルでありながら、愛のない結婚に覚える焦燥をにじませる按配も巧みだった。

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モンティが狙うターゲットの1人ヘンリーの妹フィービーの宮澤エマは、おとぎ話感を高めるシーソーに乗るシーンがピッタリの愛らしさの中に、役柄のやはりこの人もダイスクイスの一員だと感じさせる自意識過剰な振る舞いを、本人が大真面目故の可笑しみに持っていくことに成功している。これだけ可憐できちんと歌える宮澤は、ミュージカル界にとって貴重な存在。モンティをめぐるシベラとフィービーのやりとりも、もう1つの笑いどころとして楽しめるし、ドラマティックな歌声のシルビアに対してリリカルな歌声の宮澤が、良い対比となっていて、終盤近くに2人が歌う「邪悪な女」の盛り上がりに寄与していた。

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もう1人、モンティが次々と人を殺していく、つまりはこの物語を転がしていくそもそものきっかけとなる、ミス・シングルの春風ひとみは、洋画の世界から抜け出したかのような「老嬢」を生き生きと演じている。冒頭の出番から、再登場までに相当の時間が経過する中で、作品が求めるインパクトをきちんと残したのは、宝塚時代から長きに渡る女優生活を通じて、優れた演技派としての地位を確立し続けている春風ならでは。伸びやかな歌声が健在なのも嬉しい。

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他に、前述したようにアンサンブルのメンバーの活躍も素晴らしく、市村を筆頭に総力をあげた舞台が、出演者の力量によってあくまでも軽やかに弾んだことを喜びたい、優れたブロードウェイミュージカルの本邦初演になっている。

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 〈公演情報〉
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ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』
脚本・歌詞◇ロバート・L・フリードマン
作曲◇スティーブン・ルトバク
演出◇寺秀臣
出演◇市村正親、ウエンツ瑛士/柿澤勇人(Wキャスト)、シルビア・グラブ、宮澤エマ、春風ひとみ、阿部裕、小原和彦、香取新一、神田恭兵、照井裕隆、安福毅、彩橋みゆ、折井理子、可知寛子、伽藍琳、高谷あゆみ、RiRiKA
●4/8〜30◎日生劇場
〈料金〉S席13,000円、A席8,000円、B席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9:30〜17:30)
 
 

【取材・文・撮影/橘涼香(ウェンツバージョン) 取材・文・撮影/竹下力(柿澤バージョン)】



ミュージカルレビュー『歌会』 




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中山優馬の硬質な美が具現する天才クリエーター中原淳一の信念。『それいゆ』再演が開幕!

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太平洋戦争の混乱期に、色鮮やかなイラストで女性たちに光と希望を与え続けた天才クリエーター・中原淳一に中山優馬が扮する話題作『それいゆ』が、池袋のサンシャイン劇場で上演中だ(11日まで。のち福岡・小倉の北九州芸術劇場中劇場で14日〜15日、兵庫・新神戸オリエンタル劇場で19日〜23日まで上演)。

『それいゆ』は、戦中戦後の暗い時代にあって、夢を忘れなければ現実を生きることが難しい女性たちに、暮らしもファッションも心も美しくあれ、というメッセージを発し続けた挿絵画家・人形作家の中原淳一の人生を描いた作品。2016年の初演の大好評を受けて、同じ中山優馬主演で、愛原実花ほか1部キャストを入れ替えての再演となった。

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【物語】
太平洋戦争が日本全土に暗い影を落としていた1940年、中原淳一(中山優馬)は若くして挿絵画家・人形作家としての確固たる地位と人気を得ていた。戦に勝つためには、すべての贅沢は敵と見なされていたこの時代に、大輪のひまわりの花のように美しい女性たちの挿画を淳一が描き続ける雑誌『少女の友』は、多くの少女たちに夢と希望を与えるバイブルで、いつか舞台女優になる夢を抱きながら、生家の困窮と向き合っている大河内舞子(桜井日奈子)も、淳一の挿絵を心の支えにどうにか現実と折り合いをつける日々を過ごしていた。
そんなある日『少女の友』編集長の山嵜幹夫(佐戸井けん太)は、淳一に「挿絵の少女画をモンペ姿で描いてくれないか?」と持ちかける。「中原淳一の描く少女画は敵性文化。かつ華美にして優雅、これは時局に合わない」との軍部からの圧力を受けた山嵜は、淳一の画風の変更か、雑誌からの追放かの苦渋の決断を迫られていたのだ。懇願する山嵜に対し、淳一はあっさりと「ならば辞めます」と言い放つ。「美しく生きる」という信念を貫くことこそが、自らの使命だと信じる淳一にとって、時局にあった機能性だけを追求したモンペ姿の女性を描くことは、到底受け入れられることではなかった。激昂した山嵜と物別れになったあと、舞子や、淳一に歌の才能を高く評価されたことで、時代の荒波の中で歌うことを諦めていた心を奮起させた天沢栄次(施鐘泰)、自身もイラストレーターである助手の桜木高志(辰巳雄大)、『少女の友』の担当編集者の元内弥生(愛原実花)ら、淳一を慮る人々は、難局の中で創作の場を自ら切り開き、信念のままに突き進もうとする淳一をただ見守るしかなかった。戦中戦後の激動の時代、「美しく生きる」という信念を抱きながら活動を続ける淳一の、生涯をかけて貫こうとした思いの行方は?、そしてその果てに辿り着いた結末とは……?

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鮮やかな色使いと、今見てもモダンで華やかな女性たちを描き続けた中原淳一の存在は、様々な形で紹介され、多彩なグッズなども数多く発売されているから、現代の女性たちにも広く知られていると思う。けれども、中原が生きた戦中戦後の暗黒の時代に、これだけ優雅で華やかな絵柄を描き続けることが、どれほどの困難を伴うものだったかに、実感を持てる世代は年年歳歳少なくなっているのが現実だ。この舞台は、そんな困難の中にあっても、人は姿も心も「美しく生きる」べきだとの信念を貫き通す中原淳一の姿と戦いと苦悩を、丁寧に紡ぎだしていて、改めて中原が唱え続けた尊いメッセージに気づかせてくれるものになっている。しかもそこには大量消費やブランド信仰など、誰もが持っているものを持っていれば安心、という現代の風潮への厳しい批評眼も込められていて、ふと己を振り返る心持ちにさせられた。特に、人から押し付けられた価値観に染まってしまって、いつかそれが自分が選び取ったものだと思いこんでしまう恐ろしさについて、劇中の中原が力説する件には、今の世の中に最も大切なメッセージが込められていて、胸に深く刺さるものがあった。

そんな作品で、信念の人中原淳一に扮した中山優馬の、硬質な美と鋭さを併せ持った真っ直ぐな芸風が、作品の芯に相応しい存在としてそそり立っている。誰もが国民服を着、モンペ姿でいることが美徳とされた時代に、真っ白のスーツに、カラフルな色合いの蝶ネクタイという出で立ちで登場する中原の、天才であるが故の特異さや、信念を貫くことを自分だけでなく周りの人間にも強いてしまう厳しさを十二分に作中に描いて尚、中原が決して傲慢にも、冷たくも見えないのは中山の持つスター性によるところが大きい。それはすなわち中原淳一という天才クリエーターが持っていたはずのカリスマ性に、直結するものに他ならず、初演から1年を経ずしての再演を成し遂げた原動力となったことにも納得の主演ぶりだった。究極の美を求め続ける中原が、苦悩の中で見せる孤独感の表出も見事で、何よりこうした時代があり、中原淳一というクリエーターが如何に時代と闘いながら己の信ずる道を全うしたかを、人気アイドルでもある中山が主演したことによって、若い世代に広く知らしめる機会にになったことは、非常に大きな意義があった。脚本の古家和尚、演出の木村淳、美術の中村知子ら、スタッフワークの真摯さと共に、企画そのものにも拍手を贈りたい。

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そんな中原の生き様と時代に翻弄される人々では、流転の人生を強いられながら中原の描く美しき女性たちへの憧れを、心の底に持ち続けた大河内舞子の桜井日奈子が、本人の持ち味にぴったりのふっくらと柔らかい乙女の姿から、家の為にした望まぬ結婚からどん底の暮らしを経て、再生していくまでを、様々な表情で描き出している。この舞台で女優デビューをした桜井にとって、この再演の機会もまた貴重な経験であったろうことはもちろんのこと、どこかにクラシックな持ち味があるのも作品に良くあっていて、将来に期待を抱かせた。
作品の語り部的存在でもある歌手の天沢栄次の施鐘泰は、時代の価値観にがんじがらめになっていた冒頭から、中原に感化されていき、最後には唯一の理解者ともなる人物を温かく演じている。役柄に相応しい美声も実に効果的で、これぞ適材適所の配役。起用に応えた好演が素晴らしい。
孤高の存在であるが故に、ある意味世間とは相容れない中原をサポートし続ける桜木高志の辰巳雄大は、非常に難しい天才との付き合いの中で、言うべきことは言いつつ結局は補佐している人の優しさがよく伝わってくる。この人物の気苦労が容易に想像できるだけに、後半の中原との意見の食い違いの切なさが増し、役柄の行動に同情できるのは、辰巳の存在感と役作りあってのことだろう。

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中原に心酔する編集者元内弥生の愛原実花は、決して多いとは言えない出番の中で、的確に役柄の思いを伝える演技力が際立った。編集長と中原との間に立って、なんとか場を納めようとしたり、また編集長の本音をズバリと言い当てたりする芝居の中で、あくまでも中原の才能を信じている女性としての立ち位置が揺るがないことが、作品の大切なポイントとなっている。モンペ姿でも尚光るスタイルの良さも健在で、良い助演だった。
舞子の夫となる五味喜助の金井勇太は、徹底的な俗物を堂々と活写。美を求める中原との対比を表す存在として、十二分なインパクトがあり、その姿が臆面もなく下卑ているが故に、終幕の心根にハッとさせられる大きな役割を果たしていた。中原のようにどんな時代にあっても信念を貫ける人が稀なことを思うと、この人物の行動は軽々しく非難できず、更に哀切を伴ったのは金井の地力に違いない。
もう1人、中原の才能を高く評価するが故に、そのブレない生き方に嫉妬も覚えていく編集長、山嵜幹夫の佐戸井けん太は、自身に十分能力がありながら、天才を前にして気持ちが揺れる、謂わばインテリジェンスからくる懊悩をよく表現している。特に時代が移り行く中で、役柄が重ねた年輪、老いを自然に身にまとっていく演技が絶妙で、さすがはベテランの味わい。作品の重石となっていた。

他に、中原が求める「究極の美」を観客の想像力に委ねたり、信念を貫き通す中で抱える自己肯定への苦悩や怯えを、マスクの登場人物と人形で表わした幻想的なシーンなど、目を引く仕掛けが随所にあり、すべてが浄化されるラストシーンの美しさと共に、見応えある舞台となっている。

初日を控えた4月5日公開舞台稽古を前に、囲み取材が行われ、主演の中山優馬をはじめ桜井日奈子、施鐘泰(JONTE)辰巳雄大(ふぉ〜ゆ〜)、愛原実花、佐戸井けん太など、メインキャストが公演への抱負を語った。

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施鐘泰(JONTE)、桜井日奈子、佐戸井けん太、金井勇太、愛原実花

【囲み取材】

──いよいよ再演と言うことですが、1年を待たずに再演が決まった時にはどう思われましたか?
中山 すごく早い再演だったので、本当にありがたく嬉しく思いました。再演ができるということは、劇場に足を運んで頂いたお客様に評価を頂けたということなので、嬉しいです。
桜井 私はこの舞台で女優デビューさせて頂いたので、そんな舞台の再演でまた皆さんと一緒にお芝居できることが本当に嬉しいです。

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──皆さんと合流した時には喜びもひとしおだったのでは?
中山 本当に先輩方がたくさんいらっしゃる中で、懐かしさもすでにあって、ファミリーの中に帰ってこられたような気分もありました。
──内容はほぼ変わらないのですか?
中山 そうですね。より進化した『それいゆ』になっています。
──衣装も少し変わりましたか?
中山 はい、グレードアップしまして、気合いが表れています。
──役柄としてはどうですか?
中山 素晴らしい役どころを頂いておりますし、お芝居って本当に楽しいなと日々思うことばかりです。
──前回は拝見していて涙が止まりませんでしたが。
中山 ありがとうございます!
──そういうファンの方からの反響も聞こえてきましたか?
中山 嬉しいお声をたくさん頂いて、だからこそこの再演ができるということで、今日ゲネプロ、明日本番とやる気でいっいっぱいです。
──その中でお稽古はまた1からでしたか?
中山 はい、立ち稽古に入るまでから、ガッツリとやりました。
佐戸井 ガッツリだったね。

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──佐戸井さん、再演についてはどうですか?
佐戸井 それは嬉しいですよ。再演できるっていうのはそんなにたくさんある話ではないので、こういうお話を頂いてこのメンバーでまたやれるというのが、本当に嬉しいなと思って、稽古初日などはドキドキしました。
──セリフはすぐ出てくるものですか?
佐戸井 忘れているつもりでも、やってみると結構出てくるじゃないかと。まだまだボケてないなと(爆笑)。
──本当にアットホームな雰囲気ですが、その中で愛原さんは初参加ということですよね?
愛原 はい、緊張したのですけれども、キャスト、スタッフの方々が皆温かくて、なんとかご一緒させて頂けているという感じです。

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──実際入ってみてどんな雰囲気でしたか?
愛原 すごく皆さん仲が良くて、さすがは1つの舞台を創って来た方々で、私も客席で観ていて泣いてしまって、客観的に感動したので、絶対にお客様にもすごく感動して頂けると思います。
──また、前の公演の時には日奈子ちゃんトレーニングがあったと聞いていましたが、今回は?
中山 今回もこの可愛い顔でガッツリやられました(笑)。
──どんなことをしたんですか?
中山 日奈子式トレーニングで、声を出して身体を動かして、鬼教官でした(笑)。
──(笑っている桜井に)笑っていますが、鬼だったんですか?(笑)
桜井 鬼じゃないです(全員爆笑)。
──(全員が口々に「日奈子式トレーニングを知らない人もいるよね?」と言い合うのを受けて)ちょっとここでやってもらえますか?
中山 今ですか?
佐戸井 えっ?ここでやるの?
桜井 じゃう私も一緒にやりますね(全員で両手を広げて腰を落とし、桜井の掛け声と共に「あ〜はい!あ〜はい!」と声を出しながら動く)。
中山 ありがとうございました!(笑いと拍手)。
──シゴキは大丈夫ですか?
桜井 いえ、これから本番なので疲れさせてはいけないので…
佐戸井 (「優しい!」「ありがとう」とまた口々に声があがるのを受けて)本当はこんなもんじゃないんです(笑)
辰巳雄大 もっと楽しそうにやられてますよね(笑)
──そんな鬼教官でありつつ、締まった感じがしますよね?
中山 そうですね。この舞台で女優デビューをされて、そして今回二十歳を越えて1回目の舞台ということで、歴史的な舞台になられたと思うので、そこに一緒に出られるというのはありがたいですね。

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──二十歳を越えてということは、お仲間同士でお祝いなども?
中山 皆で寄せ書きをしてプレゼントさせて頂きました。
──何か心に残るものも?
桜井 中原淳一さんの絵の裏に皆で寄せ書きしたものを頂いたんですけれども、金井さんからの「そんなに、連続で、いい仕事、夢のようだ」と書かれたメッセージにズキンと来ちゃって。
金井 「そ」んなに「れ」んぞくで「い」い仕事「ゆ」めのようだ、だよ?これ縦に読んでみて?
桜井 えっ?
辰巳 後ろ見て?後ろ!(ポスターの「それいゆ」を指して)これ、これ!
 「そ」んなに、「れ」んぞくで、「い」い仕事、「ゆ」めのようだ!
桜井 (初めて気づいて)えー!?キャー!!
金井 俺が本当にそんなこと思ってると思ってたのかよ!(笑)思ってるよ!このヤロー(爆笑)。
辰巳 俺も思ってるよ!(笑)
桜井 そうだったんですね!ごめんなさい、知らなかった! 
 やっぱり丸で囲まないとダメだったんだね(笑)。
──皆さんは気づいてたんですよね?
 全員気づいてました。
桜井 すみません!
金井 良かった、良かった、気づいて。
辰巳 忘れ去られるところでしたよね(笑)。

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──こうして可愛い日奈子ちゃんを中心にしつつ、座長としてはまた身を引き締めてということになりますね?
中山 そうですね。本当にこの日を楽しみにしておりましたし、楽しみにしてくれているお客様がいらっしゃいますので、全力を注いで、皆で1つの作品を作りたいなと思います。──まず池袋サンシャイン劇場で、そしてこの後地方にも。
中山 はい、小倉の方にも行かせて頂いて、その後神戸の方にも行かせて頂くので楽しみです。
──何か楽しみにしていることはありますか?
中山 やっぱり地域によってお客様の感性や反応も多少違ったりもするので、それが舞台の良いところで、生の空間で生のエネルギーを受け取れるのが1番楽しみなところです。
──北九州と神戸で、何かピンポイントでは?
中山 ピンポイントというと、やっぱりご飯じゃないですか?神戸は?
佐戸井 南京町とか、中華街ね。
──北九州は?
佐戸井 屋台あるのかな?
辰巳 小倉はどうなんでしょう?
 屋台は博多が有名ですけど。
中山 でもそういうイメージがありますから、色々行きたいですね。
──皆さん仲が良いので、どこかで目撃されるかも?
中山 美しくご飯を食べていたいですね(笑)。
愛原 テーマは!
全員 美しく!
──ではファンの皆様にメッセージをお願いします。
中山 舞台『それいゆ』再演はじまります。本当に全力を注いで稽古をしました。素晴らしい作品に仕上がったと思いますので、是非劇場でお待ちしております。

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〈公演情報〉
『それいゆ』
脚本◇古家和尚
演出◇木村淳(関西テレビ)
出演◇中山優馬
桜井日奈子、施鐘泰(JONTE)、辰巳雄大(ふぉ〜ゆ〜)、愛原実花、金井勇太、佐戸井けん太 他
●4/6〜11◎東京・サンシャイン劇場
〈料金〉9,000円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10時〜18時)
●4/14〜15◎福岡小倉・北九州芸術劇場 中劇場
〈料金〉9,000円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉スリーオクロック 092-732-1688(平日10時〜18時半)
●4/19日〜23◎兵庫・新神戸オリエンタル劇場
〈料金〉S席 9,000円、A席、6,000円(全席指定・税込)※未就学児入場不可
〈お問い合わせ〉 梅田芸術劇場 06-6377-3888(10時〜18時)
 
 http://www.ktv.jp/event/soleil/index.html



【取材・文・撮影/橘涼香】




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