えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

『不徳の伴侶 infelicity』

OG公演レビュー

愛加あゆも出演! ホットポットクッキング Presents Vol.4『GJ』初日開幕


舞台写真1

あらゆるジャンルの美味しい人材を、そのキャリアに関わらず、演劇という鍋に大胆に投げ込んでコトコト煮込み、舌がトロける美味しい舞台作品を作り上げるために結成した演劇プロジェクト「ホットポットクッキング」。
結成は2016年1月、期間限定ユニット「ビターチョコレート」のメンバーを中心に、毎回様々な演出家や俳優たちをゲストとして迎え、年2回程度の公演を上演し続けている。
今回の第4弾は、家族や友達、現代の人と人と関わり方を題材に、近年では『BIOHAZARD THE Experience』、『Defiled −ディファイルド−』、『シスター』などを手掛ける鈴木勝秀により「あてがき」された新作で、新たなホットポットクッキングを届ける。
その舞台が4月13日、 初日の幕を開けた。

【ストーリー】
「それはできないわ」「どうして?」「だって……契約だから」
ジュンコ(高橋胡桃)、セリナ(玉川来夢)、イヨ(橋本瑠果)は、ある日、弁護士のミヤタ(深澤大河))とミヤシタ(吉本考志)と共に、とある洋館を訪れる。
そこはジュンコの母親(愛加あゆ)と離婚した、ジュンコの父親(川口龍)の家だった。
父親の遺産整理……何年も会っていない父親が亡くなり、母親も早くに無くなっていたため一人娘のジュンコが遺産を相続することになったのだ。
遺産は、家に土地、家具に美術品…相続するなら相続税も掛かってしまう。ろくに顔も覚えていない父親の遺産の扱いに悩むジュンコをよそにセリナとイヨは言いたい放題。少し考えたいと家に残るジュンコ。そこに小学校の同級生のノゾミ(吉岡茉祐、永野愛理、内山日奈加)がやってくるのだが…

出演者は、第1弾より全作品出演の高橋胡桃、玉川来夢、橋本瑠果の3名に、「Wake Up, Girls!」より吉岡茉祐と永野愛理の2名が初出演している。
また、『ダイヤのA The LIVE』や『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』など、2.5次元舞台に多数出演の深澤大河。劇団公演を中心に活動しながら、NHK BSプレミアム『幕末グルメ ブシメシ!2』にも出演している吉本考志(劇団Patch)。その他にも内山日奈加、おふぃす3〇〇所属の川口龍と個性豊かな俳優が出演。そして『嫌われる勇気』以来、自身2、度目のストレートプレイ作品への出演となる愛加あゆが、ミュージカルだけにとどまらない更なる進化で大きな華を添える。

舞台写真2

【初日コメント】
 
高橋胡桃 
ホットポットクッキングPresents Vol.4『GJ』が、4月13日から22日まで赤坂レッドシアターにて開幕致します! ホットポットクッキングではVol.2の『憑依だよ!栗山ハルコさん!』以来の赤坂レッドシアターに戻って参りました。ホットポットクッキングではアイドル役から根暗な役、短編集や4人芝居と本当に色々なことを経験させて頂いた場でした。今回は作・演出に鈴木勝秀さんを迎えてのVol.4『GJ』は今までのコメディな感じとは変わり、ストレートプレイで観に来てくださる皆様にも新鮮で何か共感できて考えさせられるようなお話ではないかなと思います。今までの集大成をお見せする気持ちで頑張りますので皆様是非赤坂レッドシアターに足を運んでください!お待ちしてます!

玉川来夢
こんにちは。玉川来夢です! 今回私が出演する舞台『GJ』が4月13日〜4月22日まで、赤坂レッドシアターにて上演されます! 家族や友達をテーマとした作品になっています。私が今までやって来たストレート芝居の中でかなり好きな世界観かもしれません。先日お花屋さんに行った際に青い薔薇の値札にこう書いてありました。『いつも入荷するとは限りません!会えたらラッキーです』こんな風に書いてあったら出逢えたことに特別感を感じます。でも舞台も同じだなと私は思います。いつもやっているわけではないですし、この作品、この座組みに出逢えた事は奇跡的な事だなと…。劇場でお待ちしてます。

橋本瑠果
イヨを演じさせて頂きます。橋本瑠果です!今回、初めて鈴木勝秀さんに演出をして頂いて、今まで知らなかったお芝居のこと、毎日勉強の日々で1ヶ月弱のお稽古が本当にあっという間でした。そして今回私自身、高校を卒業して初めての作品です。今までとは違った橋本瑠果を見て頂けるよう頑張ります!公演期間も10日間あるので是非、皆さん赤阪レッドシアターに足を運んで頂けると嬉しいです!ホットポットクッキングの公式ツイッターにオフショットなど載っていますので、そちらもお時間あるとき覗いてみてください。劇場で皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!

深澤大河
ついに『GJ』が開幕します。
稽古中は様々なことを考えたり挑戦したりしていたので、稽古期間があっという間で、もう開幕するのかという感覚です。
以前、スズカツさんが「『GJ』は抽象舞台」とお話ししておりましたが、仰る通り、作品を共に作り上げている役者やスタッフでも、作品が終わった後に感じるものは色々と違っていました。
それ故に、観劇した人が何を感じるのか、印象に残る場面や台詞がどれなのか、僕ら役者側からしても未知であり、また楽しみな部分でもあります。
観た方がいる分、様々な解釈の仕方が生まれる作品ですので、是非考える事を楽しんで観て頂きたいと思います。

愛加あゆ
いよいよ4月13日より初日を迎えます『GJ』。
今回、私はスケジュールの関係で途中からの稽古参加だったのですが、稽古1日目にして、すっかり『GJ』の世界に入り込みました。鈴木勝秀さんのつくられる世界は、とても不思議で、観た方それぞれに色んな想像が膨らむ世界だと思います。
共演させて頂く方々は若さ溢れるフレッシュな方々が多く、このメンバーでこの作品に挑める事がとても新鮮で嬉しいです。
赤坂レッドシアターで22日まで公演しております。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

〈公演情報〉
ホットポットクッキング Presents Vol.4『GJ』
脚本・演出◇鈴木勝秀
出演◇高橋胡桃/吉岡茉祐(トリプルキャスト)、永野愛理(トリプルキャスト)/
玉川来夢、橋本瑠果/深澤大河、吉本考志、内山日奈加(トリプルキャスト)、川口龍/愛加あゆ
4/13〜22◎赤坂RED/THEATER
〈料金〉6,300円(全席指定・税込):
〈お問い合わせ〉hotpotcooking.info@gmail.com
〈公式ホームページ〉http://gj-hotpot-cooking.themedia.jp/


【資料提供/ワタナベエンターテインメント】




霧矢大夢×鈴木壮麻『I DO! I DO!』


kick shop nikkan engeki

謝珠栄演出&花總まり主演で新たな「カルメン」の誕生!『Romale ロマーレ〜ロマを生き抜いた女カルメン』上演中!

IMG_0726

ビゼーのオペラ等で、魔性の女、ファムファタールとしてのイメージが定着している「カルメン」の物語に、謝珠栄が新たな光を当て、カルメン役に花總まり、ドン・ホセ役に松下優也、ほか豪華キャストの出演で綴られるミュージカル『Romale ロマーレ〜ロマを生き抜いた女カルメン』が、池袋の東京芸術劇場プレイハウスで上演中だ(4月8日まで。のち4月11日〜21日大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演)。

IMG_0788

ミュージカル『Romale ロマーレ〜ロマを生き抜いた女カルメン』は、19世紀に書かれたメリメ原作の「カルメン」をベースに、小説、オペラの中では自由奔放な魔性の女として描かれてきたカルメンが、ロマ族としての誇りと、束縛を嫌う魂と、運命の恋の相手であるドン・ホセに抱いた想いにスポットを当てた、演出・振付の謝珠栄独自の視点で描かれる、謝珠栄版「真実のカルメン」が創造された作品となっている。

IMG_0748
IMG_0315

【STORY】
1880年頃──フランス人の学者ジャン(福井晶一)は、魔性の女として伝えられる「カルメン」の人生に深い関心を抱き、真実のカルメンを求めて、生前のカルメンを知る人物を探し続ける中で、1人の老人(団時朗)に出会う。はじめは頑なに口を閉ざしていた老人は、ジャンの懇願に折れて、訥々とカルメンが生きた日々を語り始める。
1830年スペインのセビリア。若気の至りの過ちから故郷を遠く離れざるを得なかった青年ドン・ホセ(松下優也)は、セビリアで生まれ変わり、新しい人生を歩もうと軍隊に入隊。軍の規律に忠実に、熱心に務めを果たし伍長に昇進していた。だがそんなある日、ロマ族の女工カルメン(花總まり)に出会い、一瞬にして激しい恋に落ちたことで、ホセの人生は再び大きく旋回する。誰の指図も受けず、世の中の規範に縛られないカルメンと共にいることは、ホセ自身が世の中のあらゆる規範を踏み外していくことに他ならなかった。ホセの上司スニーガ中尉(伊礼彼方)、カルメンの夫ガルシア(KENTARO)、イギリス貴族ローレンス(太田基裕)。次々に現れる、カルメンの魅力にとり付かれた男たち、カルメンがその視線を投げかける男たちを、愛故に嫉妬に狂ったホセは遮二無二排除しようとする。神に背き、罪を重ねる自分に懊悩しながらも、カルメンを独占したいという想いから逃れられないホセ。だが、カルメンにとって何にも耐え難いのは、その束縛だった。「私って女はきっとあんたを不幸にする」愛に溺れ身動きの取れなくなったホセに、出会いのはじめからそう言い放っていたカルメンは、遂にホセと自分との逃れ得ぬ運命に終止符を打とうとして……。

IMG_0698

演出・振付の謝珠栄がそもそも「カルメン」に関心を抱いたのは、1999年宝塚歌劇宙組で初演された柴田侑宏作『激情─ホセとカルメン─』の演出・振付を担当した時だったそうだ。この時、謝はメリメの原作、また『激情』で描かれる男性の視点から見たカルメン像を、女性である自らの視点でとらえ直したいという想いを募らせ、2008年に朝海ひかる主演で上演された『Calli〜炎の女カルメン』を創り出した。そこから10年。ロマ族として生まれたカルメンの、生まれ付いた民族の血が、彼女をどのようにつき動かしたのか?に、より深く切り込みたいとの願いがこめられて生み出されたこの『Romale ロマーレ〜ロマを生き抜いた女カルメン』では、更にカルメン像が神格化され、ドン・ホセとの運命の恋に、命を賭すカルメンの姿には、驚くほどのロマンが込められた。

IMG_0290

「ジプシーと呼ばれる流浪の民の由来はさだかではない。彼らの中でもロマと呼ばれる民族は、北インドに起源があると言われ、千年を超える時をさすらい続けている。祖国をもたず、どこにいても異邦人としてしいたげられ、差別されてきた。だが、彼らは民族の誇りを胸に、ロマとして生まれ、ロマとして生き、ロマとして死ぬ。その不屈の魂に敬意を表して、彼らを『ロマーレ』と呼ぶ」

IMG_0497

冒頭、フランス人学者ジャンに扮した福井晶一によって語られるこのモノローグが、ある意味では舞台のすべてを象徴している。作品の中でドン・ホセをはじめ、カルメンに魅入られる男たち、中でもカルメンの真実を知ろうとする、この舞台のストーリーテラーでもあるジャンは、謝珠栄の分身に他ならない。おそらく、1999年の出会いから、誰よりもカルメンに魅入られてきたのは謝本人で、彼女の目の中に映るカルメンの、その心根の美しさには驚嘆させられる。ここで描かれるのは、籠に入れられたら死んでしまう、ロマ族である自らの血と、ホセへの愛の狭間で、辿る道はただ1つしかなかった、血と愛に殉じたカルメンの姿だ。
もちろんこれは謝の目に映るカルメン像であり、ジャンが「あくまでも想像でしかない」「これは私の仮説です」、と繰り返しながら披露する「真実のカルメン」に、違和感を覚える観客も当然いるだろう。だが、1人のクリエーターが、20年に至る年月「カルメン」という女性に思いを寄せ続けて、たどり着いたのがこの「カルメン」であるのならば、その思いの深さにはもって銘すべきものがある。ここに描かれたカルメン像は、クリエーターの愛そのものだ。

IMG_0222

そう考えた時に、この作品のカルメンに、1999年の『激情─ホセとカルメン─』で同役を演じた花總まりが、再び登場したのにも、ひとつの運命を感じる。当代の姫役者である花總まりが演じた数々の役柄の中で、宝塚時代にも異色のものとして異彩を放っていたのが、このカルメン役だったが、今回の謝珠栄版で描かれた「真実のカルメン」には、その花總の姫役者としての資質こそが、最も似つかわしいものだった。1点これは花總本人の問題では全くなく、脚本上の問題として、歌詞では「あたし」の一人称が台詞では時折「あたい」になるのが気になったものの、この『Romale ロマーレ〜ロマを生き抜いた女カルメン』ならではのカルメン像として、花總の存在は最も理に適ったものに違いなかった。

IMG_0410

ドン・ホセの松下優也は、朴訥で一途な故に、カルメンへの愛に溺れ転落していく男性の哀しみと苛立ちをよく表現している。作品が白人男性のホセと、ロマ族のカルメンとの間にある障害の多さを描いている関係から、やむを得なかったのはわかるのだが、素の黒髪よりも、舞台の明るい髪色がもうひとつハマらず、折角の整った容姿を引き立てる色合いに研究の余地は残るが、現代の若手二枚目俳優で、観る者にここまで素朴な印象を与えられるのは貴重な資質。役者としての重要な武器になりそうだ。

IMG_0556

また、カルメンを巡る男たちのキャスティングが非常に贅沢なのもこの座組の特徴で、自信に満ち溢れ、女性としてのカルメンの魅力に惹かれながらも、ロマ族である彼女をハッキリと蔑視してもいるという、典型的なイヤな奴を堂々と演じた伊礼彼方の色悪ぶりは、カルメンとホセを追い詰める何よりの要素となったし、イギリス貴族ローレンスの太田基裕は、登場人物の中で階級も育ちも異次元である人種としての居住まいが実に巧み。良い意味で浮いていることが大きな効果をあげている。松下を含めたこの三人で、ホセのトリプルキャストというのも、演者の負担に目をつぶらせてもらえるとしたならば、観てみたかったなと思える布陣だった。

IMG_0742
IMG_0775

彼らの中で、ガルシアのKENTAROのアクの強さと、骨太な押し出しが際立ち役柄に相応しかったし、語り部である老人の団時朗の、動きが少ない中での存在感はやはりベテランの妙。更に、分けても贅沢な使い方だったジャンの福井晶一に至っては、もったいない気持ちさえ抱いたが、謝の分身という役柄であるからこその起用でもあるのだろう。ソロナンバーに群を抜く安定感があり、作品の質を高めた。

IMG_0760
IMG_0233

他に、一洸、神谷直樹、千田真司、中塚皓平、宮垣祐也のダンサー陣が、謝作品ならではのダイナミックなダンスに、芝居にと脇を固めた力も見逃せず、謝珠栄バージョンの「カルメン」、『Romale ロマーレ〜ロマを生き抜いた女カルメン』の創造に寄与していた。

IMG_0651
IMG_0198

【フォトレビュー】
IMG_0377
IMG_0366
IMG_0440
IMG_0580
IMG_0658
IMG_0660
IMG_0185

〈公演情報〉

666_play_image1

ミュージカル『Romale ロマーレ〜ロマを生き抜いた女カルメン』
演出・振付◇謝珠栄
原作◇小手伸也
上演台本◇高橋知伽江
音楽監督・作曲◇玉麻尚一
作曲◇斉藤恒芳、小澤時史
出演◇花總まり/松下優也/伊礼彼方、KENTARO、太田基裕/福井晶一/団時朗
一洸、神谷直樹、千田真司、中塚皓平、宮垣祐也
●3/23〜4/8◎東京芸術劇場プレイハウス
〈料金〉S席12,500円 A席9,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 0570-077-039
●4/11〜21◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈料金〉全席指定 12,500円(税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3888


【取材・文・撮影/橘涼香】



シラノ・ド・ベルジュラックお得なチケット販売中!


kick shop nikkan engeki

喜多村緑郎&河合雪之丞コンビで更なる広がりを見せる乱歩ワールド『怪人二十面相〜黒蜥蜴二の替わり〜』本日開幕!

IMG_1923

歌舞伎界から劇団新派の世界に飛び込み、新派に新たな風を吹かせて大活躍を続けている喜多村緑郎と河合雪之丞による自主公演『怪人二十面相〜黒蜥蜴二の替わり〜』が、春本由香をはじめとする劇団新派の面々と、ゲスト参加の元宝塚宙組トップスター貴城けいを迎えて、本日3月30日池袋のサンシャイン劇場で開幕する(4月1日まで)。

IMG_1426

「怪人二十面相」は日本に探偵小説の礎を築いた江戸川乱歩が、1936年〜1962年にかけて書いた少年少女向け探偵小説『少年探偵シリーズ』に主として登場した架空の怪盗。小説世界の中で、貴重な宝石等を巡って名探偵・明智小五郎や、彼の率いる少年探偵団との闘いが繰り広げられ、明智小五郎の永遠のライバルとも言える立ち位置にある大怪盗だ。
その設定を活かし、2017年劇団新派公演で大評判となり、今年6月早くも再演する『黒蜥蜴』で名探偵明智小五郎という当たり役を引き当てた喜多村緑郎が、引き続いて明智役を演じ、『黒蜥蜴』ではタイトルロールを演じた河合雪之丞が、今回は怪人二十面相を演じる。内容は新作でありつつ乱歩原作のシリーズものでもあるという魅力的な作品となっている。

IMG_1522

【物語】
大正ロマンの香りが残る昭和初期。殺生はせず、現金にも関心を示さず、これと目をつけた宝石や美術品を「〇月〇日に頂戴に参上致します」という予告状を送り付け、警察をはじめとした厳重にも厳重を重ねた包囲網を潜り抜けて、まんまと宝を盗み出していく「怪人二十面相」が世の中の関心を一手に握っていた。
そんな怪人二十面相から所有する財宝を頂戴する、という予告状を受け取った大富豪河野家の令嬢不二子(春本由香)から、捜査の依頼を受けた名探偵・明智小五郎(喜多村緑郎)は、警察と共に河野家の警護に当たるが、私立探偵の存在を好ましく思っていない警察から、全く素顔のわかっていない怪人二十面相本人ではないか?との疑いをかけられる始末。そんな明智に声をかけてきた大河原美弥子(河合雪之丞)に、深く感じるものがあった明智は直感的に美弥子こそ怪人二十面相であると悟るが、ほどなくして不二子は誘拐されてしまう。
事態は浅草で大人気のレビュースター花菱蘭子(貴城けい)をも巻き込み、急展開の様相を呈し始める。謎が謎を呼び、いつしか事件は、幽霊館の地下迷宮に眠る宝物と、その莫大な宝を巡る過去の殺人事件へとつながってゆき……

IMG_1673

「役者たるもの、口を開けてただ待っているのではなく、自分から何かをつかみ取りにいかなくてはならない」そんな思いで、自主公演開催を決意したという喜多村緑郎と河合雪之丞が、その題材に大きな注目を集めた『黒蜥蜴』と同じ江戸川乱歩の世界を選んだ、その着眼点の見事さが、舞台の求心力を高めている。元々歌舞伎とは異なる新たな演劇を志向した人々が、当時の現代劇として発展させたものが「新派」と称された、という歴史から続いてきた「劇団新派」だが、現在では古典作品の存続を守り続けている劇団、というイメージがむしろ定着している。その世界に歌舞伎界から飛び込み、文字通り新しい風を吹かせた喜多村緑郎と河合雪之丞の存在が、昨年の『黒蜥蜴』大成功の立役者となったことは記憶に新しい。喜多村のダンディズム、河合の女形ならではのこの世ならぬ者の色気とが、徹底的に非現実を貫くことで、逆に生半可な現実感から生まれてしまう空々しさから逃れて、迫力と冒険と迷宮感を高めることに成功した。江戸川乱歩の世界との親和した様は見事で、『黒蜥蜴』は劇団新派が掘り当てた新たな鉱脈として、鮮やかな印象を残したものだ。
 
IMG_1780

そんな二人が6月に再演を控えた『黒蜥蜴』の前に自主公演に打って出る、という心意気に感じた脚色・演出の斎藤雅文が、『黒蜥蜴』から時代を遡り、そこに至る物語を用意したのは、実に巧妙な仕掛けと言える。ここには、喜多村と河合の資質が生きる乱歩の世界観はそのままに、新たな謎、新たな事件、新たな迷宮が立ち現れる醍醐味がたっぷりと盛り込まれている。それによって、『黒蜥蜴』初演を観た観客には、ここからあの話につながるのか!という興奮を。この『怪人二十面相』ではじめてこの世界観に接した観客には、この物語からどう『黒蜥蜴』につながっていくのか?という興趣を、共にかき立てられる舞台になっているのが心憎い。

IMG_1479
IMG_1391

その中で喜多村緑郎は、若き日の明智小五郎を演じることで、爽やかな二枚目としての資質がより際立ち、一分の隙もないダンディズムを見せつけた『黒蜥蜴』の明智像とはまた違った、心優しく、感情の発露も豊かな青年ぶりに魅力を発揮している。抜群のプロポーションが引き立つ明智から一転、座ったままで講談を語るストーリーテラーの悟道軒円玉では、表現力の豊かさが前面に出ていて、講談の語り口も達者そのもの。実に贅沢な二役の妙味が味わえる。

IMG_1762
IMG_1783

怪人二十面相の河合雪之丞は、なぜこの女性が怪人二十面相となっていったのかの経緯と、過酷な運命がきっちりと書き込まれた脚色に応え、たおやかさ、はかなさを秘めた緻密な演技で魅了する。乱歩のシリーズの中で怪人二十面相の過去が描かれた作品もない訳ではないのだが「本人さえ自分の本当の顔がわからなくなっている」という設定だけに、この作品で描かれる「怪人二十面相」のいきさつにむしろリアリティーが感じられ、彼女を応援したい気持ちにさせられるのは、斎藤の筆に応えた河合あってこそだ。

IMG_1606
IMG_1653

更に作品に華やかさを加えたのが、レビュースター花菱蘭子を演じた貴城けい。とにかく登場しただけで舞台がパッと明るくなる華に圧倒されるし、やはり乱歩の小説世界に登場する「黄金仮面」にも扮して、久々に男役時代の香りも醸し出す。それが全く浮かないどころか、舞台のエンターテインメント性を高めていて、私生活では夫君である喜多村との、夫婦としての初共演の話題もあり、自主公演を興行面でも支えた力は大きい。当然ながら二人のコンビネーションは抜群で、更に現代的なカラッとした風情があるのが、喜多村&河合コンビとの好対照として互いに引き立て合ったのが素晴らしかった。

IMG_1553
IMG_1899

事件の発端となる、河野家の令嬢不二子を演じた春本由香は『黒蜥蜴』に続く令嬢役で、更にこちらでも賊に誘拐されるという同じ設定にも関わらず、両者を全く違う色合いで演じ分けていて、確かな力量を感じさせる。この作品の世界が、やがて『黒蜥蜴』につながっていく上で重要な鍵を握っている人物でもあり、この驚きと興奮は、是非劇場で体感して欲しい。

IMG_1505
IMG_1853

また、この興行に賛同して参加した劇団新派の面々にも大きな活躍の場があるのが、自主公演に打って出た喜多村と河合の劇団への熱い思いを感じさせて、双方の心意気が大人数の舞台を弾ませたことも見逃せない。この高い熱量を持った劇団新派による江戸川乱歩の世界が、6月の『黒蜥蜴』公演はもちろん、更にシリーズ化されていく未来にも大きな期待を寄せられる、必見の舞台となっている。

IMG_1762
IMG_1520

【囲み取材】

IMG_1328
春本由香、河合雪之丞、喜多村緑郎、貴城けい

初日を前に3月29日、通し舞台稽古と囲み取材が行われ、喜多村緑郎、河合雪之丞、春本由香、貴城けいが、記者の質問に応えて公演への抱負を語った。

──それぞれの役どころと見どころをお願いします。
貴城 (喜多村からどうぞ、と促されて)えっ?私から?
喜多村 いいじゃない?(笑)
貴城 レビューの女王花菱蘭子と黄金仮面をさせて頂きます。まず黄金仮面で久しぶりのちょっと男役スタイルというようなものや、台詞があったりするのが、自分の中でもとても新鮮です。そして物語の中でも重要な役割をさせて頂いているので、蘭子もそうですし、黄金仮面もとにかく華やかに舞台を彩れるように演じられたらな、と思っております。
喜多村 私は明智小五郎と悟道軒円玉という講釈師の二役でございます。とにかく自主公演ならではの分量の多さ、明智もですし、また円玉の講釈が三くだりあるのですが、講談がこんなに大変だったとは!と。狂言回し的な、ストーリー進行をする上で非常に重要な役どころになっています。ですので神田陽子さんに教わりまして、きちんとやったつもりではございますが、何しろ分量が多くて…そんなことは言い訳にできませんが(笑)。また、明智小五郎は前回の『黒蜥蜴』に行く前の、成長過程のちょっと青っぽさがにじみ出た明智小五郎と、『人情馬鹿物語』や新派の『遊女夕霧』の悟道軒円玉は、本当に憧れの役だったので、スタイルは違いますが、非常に大きな二つの役で、明日の初日どうしようかな、という不安な気持ちでいっぱいです。初めてですね、不安になったのは。大体舞台稽古では完璧な方なのが、ちょっと今はドキドキしています。

IMG_1387

河合 私は怪人二十面相をやらせて頂きます。この人物がどのような人生を歩んで怪人二十面相になったか?というところが、面白く描かれていますのと、更に、6月にまた上演させて頂きます『黒蜥蜴』に、怪人二十面相がどのように関わっていくのか?というところが、本当に見どころになっております。私自身もこういうお役は好きで、自分の中に染み込みやすいお役ですので、そういう意味でもこの自主公演でやらせて頂くのは本当に嬉しいです。この作品が6月の『黒蜥蜴』に「こうつながっていくのか!」というのが、ご覧になって頂けたらわかりますので、一生懸命頑張って演じたいと思います。
春本 私は河野不二子という役をやらせて頂くのですけれども、前回の『黒蜥蜴』もお嬢様の役どころでしたが、今回もまたお嬢様なのですが、ちょっとコンプレックスを抱いていて、という役どころで『黒蜥蜴』にこの作品がつながっていくというところの、キーポイントにもなるのかなというお役ですので、精一杯やらせて頂いております。

IMG_1372
 
──昨年の上演で大評判となって、6月に早くも再演される『黒蜥蜴』に行く前の時点の物語という、とても魅力的な設定ですが、企画はどのように?
喜多村 我々は新派に所属させて頂いてまだ日が浅いので、はじめは古典を勉強したいな、という気持ちが強かったのですけれども、やはり6月の『黒蜥蜴』に向けて、まだ観たことがない方も、初演をご覧になった方も共に楽しめるシリーズもののような形にできないかなという案が出てきました。それを受けて『黒蜥蜴』の斎藤雅文さんが「じゃあ、僕が書く」と、お忙しい中書いてくださって。出来上がったストーリーが大変面白くて、『黒蜥蜴』と凌ぎを削るようなものになりました。また、劇場のサイズも大きくなりましたので、スペクタクル性も加味されていて、今回の舞台をご覧になって頂けたら、6月の『黒蜥蜴』が更に楽しめる二部作となっていますので、これを自主公演でさせて頂いたことは間違っていなかったと思っております。
──この舞台を観ることによって『黒蜥蜴』ももっと楽しめるものに。
喜多村 そうです、多分10倍、20倍楽しんで頂けると。
河合 また『黒蜥蜴』をご覧になった方も、とても楽しみにしてくださっているのではと思いますし、今回初めてご覧になるお客様は、是非『黒蜥蜴』を観たいと思って頂けるのではないかなと。そういう本当にしっかりとしたつながりのある作品に出来上がったことを、とても喜んでいます。
喜多村 道具も前回の『黒蜥蜴』の世界観のまま、またちょっとデラックスになりましたので、『黒蜥蜴』の舞台にもまた、更に可能性を感じさせるような自主公演になったと思います。

IMG_1410

──宝塚のレビュースターでいらした貴城さんが、レビュースターの役を演じることについては?
貴城 このお芝居では、ショーナンバーがたくさんあるということではなくて1点集中型で頑張っているのですが、レビューの場面ではなくても、普段の会話の中でもレビューの女王らしさを醸し出せたらいいなと思っています。宝塚時代の華やかなレビューの経験が、もしかしたら役に立っているかも知れないですね。
──貴城さんが座組に入られたことで皆さんはいかがですか?
河合 普段はお食事を一緒にしたりして何気ない話をしている仲で、宝塚時代には舞台を拝見したことがなかったのですが、やっぱり宝塚のトップスターさんというのは、本当にスターさんなんだ!と、こうして舞台で間近で接して思いました。華やかさを添えてもらえて嬉しいですし、またこの夫婦初共演というのが。
喜多村 夫婦になってからね。
河合 そう、なってからの初共演がね、ひとつの大きな話題になるのではないかと思っております。
喜多村 本当に初めてなんですよね。夫婦になって仕事場も一緒で、24時間一緒だなというのが初めてで。劇中にも僕たちが夫婦であることと、明智と黄金仮面の関係とがリンクしている場面もいくつかありますし、円玉と花菱蘭子が絡むところもありますので。ちょっと我々としてはプライベートを覗かれているような、少し恥ずかしい気持ちもあるのですが。

IMG_1363

河合 でも二人の場面はね、家で十分稽古できますからね。
喜多村 そう! だからこの人(貴城)との場面だけは、なんとか台詞覚えてるの(笑)。
貴城 ええー?そこだけ?(笑)
喜多村 他のところは全然覚えられない(笑)。ここだけでも相当な台詞量なんですけどね。
貴城 言い訳してる!(笑)
喜多村 自主公演なので僕ら中心に書いてくださったので、もうすごい量なんです。もう天文学的な(笑)。今も頭の中をグルグル文字が、ワードが回っていて沸騰しそうなのですが。そういう意味では今回奥さんに、興行面でも役者としても助けてもらって、ちょっと見直したと言うか。
河合 惚れ直した?
喜多村 惚れ直したと言うか、まぁ(笑)。とにかく6年ぶりなので、共演するのは。

IMG_1738

──貴城さん、今日宝塚音楽学校の合格発表がありましたが、後輩たちにエールを。
貴城 今回劇団新派という、1つの劇団に入れて頂いて、あぁ劇団っていいなとすごく感じました。外でお仕事をしていますと、色々な方が集まったカンパニーでやることが多いのですが、新派は、宝塚もそうですが劇団の温かさみたなものをすごく感じます。上の人がお芝居を見てくれて、色々なことを教えてくれる。私も今回色々と教えて頂いたのですが、劇団って普通のカンパニーではないような、幸せな場所だなというのを思い出させてもらいました。宝塚に入ってずっとやっていると、その有難さが感じにくい時もあるかもしれませんが、仲間がいること、家庭的な場所に入れたことに、皆さん感謝を持って頑張って欲しいなと思っています。

IMG_1356
IMG_1335


IMG_1470
IMG_1628
IMG_1585
IMG_1654
IMG_1688
IMG_1636
IMG_1766
IMG_1832
IMG_1817

〈公演情報〉
『怪人二十面相〜黒蜥蜴二の替わり〜』
20180126_gallery001
20180126_gallery002

 
原作◇江戸川乱歩
脚色・演出◇斎藤雅文
出演◇喜多村緑郎、河合雪之丞、春本由香、貴城けい 他
●3/30〜4/1◎サンシャイン劇場 
3月30日 14時開演/18時30分開演
3月31日 14時開演/18時30分開演
4月1日   13時開演  
〈料金〉1階席 5,000円 2階席 4,000円
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 (オペレーター対応/10:00〜18:00 または03-6745-0888)



【取材・文・撮影/橘涼香】



雑誌「えんぶ」2018年4月号販売ページ


kick shop nikkan engeki 

若き原石たちのエンターテインメントショー再び!『GEM CLUB II 』シアタークリエで間もなく開幕!

IMG_9523

若き才能ある原石たちが競い合う珠玉のエンターテインメントショーの第二弾『GEM CLUB II 』が、シアター1010でのプレビュー公演を大好評のうちに終え、3月24日からシアタークリエでいよいよ初日の幕を開ける(4月5日まで。のち、4月14日〜15日大阪・サンケイホールブリーゼ、4月18日名古屋・日本特殊陶業市民会館でも上演)。

IMG_9605

玉野和紀が長年手掛けている、ノンストップエンターテインメント・ショー『CLUB SEVEN』のDNAを受け継ぎ、若き才能たちの集う新たなショー・ステージとして、SHOW HOUSE『GEM CLUB』が幕を開けたのは2016年のこと。若き原石=GEMたちが、それぞれの得意分野に留まらず、あらゆるジャンルからバラエティー豊かに組み込まれたダンス、歌、ドラマに真剣に立ち向かう姿が、青春そのものを思わせる熱いパフォーマンスにつながり、大人のおもちゃ箱と言った粋な趣のある『CLUB SEVEN』とは、ひと味もふた味も違う、ここにしかない熱量と魅力を生み出して、鮮烈な記憶を残した。 
今回の舞台は、そんなステージの第二弾で、玉野総支配人のもと、オーディションを勝ち抜いた面々が創る、更なる熱量を伴ったステージとなっている。

IMG_9010

【STORY】
東京のとある場所に佇むSHOW HOUSE『GEM CLUB』。かつて才能を持った若者たちが、切磋琢磨しながら煌びやかなショーを創り出すことで喝采を集めたSHOW HOUSEも、2年の歳月が流れるうち、活躍していた若者たちはそれぞれに巣立っていき、今は総支配人のタイガー(玉野和紀)、チーフのアクア(原田優一)、リーダーのロードナイト(中河内雅貴)だけが、披露するあてのないショーの稽古を続けていた。
そんな状態に苛立つロードナイトをタイガーとアクアが宥めているところに、颯爽と現れたのはSHOW HOUSE『GEM CLUB』の新オーナー・ダイヤ(壮一帆)だった。「メンバーがいないのなら、新しいショーを創る為の人材を探しに行きましょう!」ダイヤの男前の号令一下、街へ飛び出した4人は、手分けして新たな才能の原石=GEMたちをスカウトして歩く。ストリートシンガー、パフォーマー、メイド喫茶、時代劇のエキストラ等々。自らを表現することをそれぞれに模索していた若者たちが、1人、また1人とSHOW HOUSE『GEM CLUB』に集い、いよいよ新たなショー創りへの道程が始まった!

IMG_9114

2幕構成からなる舞台は、1幕を才能の原石を探して歩くスケッチミュージカル。2幕をそうして集まったメンバーたちが創り出した新たなショーという流れの中で進んでいく。前回の『GEM CLUB』の設定をそのまま引き継ぎつつ、若者たちがすべて入れ替わっていることに違和感がない、自然な作劇が実に上手くできていて、総合クリエーターの玉野の手腕が早くも発揮されている。

IMG_9144
IMG_9280

更に、新たな才能がオーディションを受けに来たのではなく、こちらからスカウトして歩くという設定が効いていて、新たなGEMたちの個性が様々な場所で発揮されているのが面白い。それによって本人たちの得意分野もきちんと織り込まれつつ、楽しい遊びもたっぷり、新たな挑戦もたっぷりで、1幕から次々に、ある意味奇想天外に場面が変わっていくことにも無理がない。映像を上手く組み込んだ松井るみの装置が、そのスムーズな場面転換を支えていて、約1時間10分の1幕があっという間に過ぎて行ったのには驚かされた。

IMG_9306
IMG_0153

だから、もちろんそんな彼らが創ったショーという設定の2幕は、更に多彩な場面が繰り出され続けて、玉野、壮、原田、中河内の謂わば「大人組」と、GEMたちの組み合わせの妙もたっぷりとあり、全員が八面六臂の大活躍。一生懸命の輝きが、舞台をキラキラと彩るのが、この青春エンターテイメントならではで、とにかく全員を応援したい気持ちになれる熱量が素晴らしい。今回はメドレーがこれまでとは違った形で作られているが、1幕とのリンクが上手くなされていて、これもまた楽しい仕掛けになっている。
 
IMG_0074
IMG_0048

そんな、舞台の総合クリエーターである玉野の豊かな発想力が、今回の舞台では更に際立って感じられる。例えばこれまでのキャリアの中で、和物を多く演じてきた松田岳に、ちゃんと時代劇の場面を用意しただけでなく、そこに玉野本人お得意のおこちゃまキャラを無理なく組み入れる等、構成が冴えに冴えていてお見事の一言。若い人材を引き上げて行こう、立派なダンサーとしての、ショースターとしての土台を創ってやろう、という玉野の意欲が、舞台をこれだけ弾ませていることを思うと、頭が下がるような気持ちにもなった。

IMG_9414

新オーナー役の壮一帆は、宝塚退団後、ここまで自然体で女優になった人も珍しいと思えるほど、持ち味をすんなりと役柄に活かしている。男前で気風が良くて、でももちろんながら決して男役ではない。その塩梅が絶妙で、元男役としての特性を個性にくるみこみ、美しい女優として舞台に立つ姿が清々しい。ショーでは大人組での粋でカッコいいダンスも披露。得難い存在となった。

IMG_9462

チーフの原田優一は、近々の舞台で、ステージをただ歌いながら横切るだけで、ここまで笑わせることができるのは、日本中で原田1人ではないか、と感嘆した記憶が新しいが、今回もその巧まずして表れるなんとも言えない可笑しみと、やる時はやる!のショーマンぶりの切り替えに、惚れ惚れさせられる。玉野が創るなんでもあり、ないものはないというステージに、打ってつけの人材として是非今後も登場し続けて欲しいと願う。

IMG_9362

リーダーの中河内雅貴は、中河内が「大人組」になったんだ…という、深い感慨を覚えずにはいられない存在として、まさにGEMたちの目標的立場の人。どこか斜に構えていて、一匹狼を気取っていて、でも実はとても熱い真っ直ぐさが見て取れたこれまでの持ち味から、良い意味で力が抜けていて、余裕を感じるのに、しみじみとさせられる。ダンス力にも今の言葉で言えば「ヌケ感」が感じられるようになり、GEMたちの理想の未来像として、更に大きな存在になっていってくれることだろう。

IMG_9130

その中河内とGEMたちの中間地点にいるかな?と思わせたのが東山光明。ミュージカル経験も豊富な人だけに、彼の歌で場面が創られていることも多く、大真面目な熱唱でありつつ、実はあまりにも馬鹿馬鹿しい歌詞、という場面を、堂々と歌い切っていて、これは喝采もの。しっとりと歌うシーンもあり、もちろんダンスも芝居もあり、GEMたちの兄貴分として存在感を示していた。

IMG_9690

そして、若きGEMたちは、前述したようにそれぞれに個性を発揮し、かつ新たな挑戦に果敢に取り組み、SHOW HOUSE『GEM CLUB』の真の主役として輝いている。木戸邑弥は多彩な役柄を生き生きと演じつつ、どこにいても溌剌とした笑顔が印象的。長身の多和田秀弥はダイナミズムと共に、どこか朴訥とした二枚目ぶりも目を引く。持ち前のストリート系のダンス力はもちろん、様々なダンスに気を吐く本田礼生の身体能力の高さは絶品。前述の得意の和物だけでなく、ダンス力と共にジェントルマンの執事役も目立った松田岳が放つ、どこか天然のおおらかさは全体の清涼剤。とびっきり可愛いが、決して可愛いだけではない古田一紀の、本気が感じられる激しいダンスシーンへの取り組みにも心打たれる。Wキャストの女性キャストは三森すずこを見たが、愛らしさが少しもあざとさにならない舞台ぶりに感心させられた。個性の異なる新垣里沙の登場にも期待が高まる。

IMG_0001
IMG_9605
IMG_9655

総じて、玉野がいみじくも言った「必死で楽しく大変に」に、すべてが集約される舞台で、この経験の1回、1回がGEMたちを大きく飛躍させることだろう。彼らの成長を楽しみに、何度でも劇場に通いたい舞台となっている。

IMG_9608
IMG_9630
IMG_9649
IMG_9679
IMG_9699
IMG_9719
IMG_9745
IMG_9762
IMG_9794
IMG_9881
IMG_9910
IMG_9951
IMG_9984
IMG_9528

〈公演情報〉
SHOW HOUSE『GEM CLUB  II 』
作・演出・振付◇玉野和紀
出演◇玉野和紀 / 中河内雅貴 東山光明 / 木戸邑弥 多和田秀弥 本田礼生 松田岳 古田一紀 / 三森すずこ・新垣里沙(Wキャスト)/ 原田優一 / 壮一帆
●3/24〜4/5◎日比谷シアタークリエ
〈料金〉9.500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9:30〜17:30)
4/14〜15◎大阪・サンケイホールブリーゼ
4/18◎名古屋・日本特殊陶業市民会
〈公式ホームページ〉http://www.tohostage.com/gem_club/


 

【取材・文・撮影/橘涼香】



えんぶチャート2017掲載!えんぶ10号


kick shop nikkan engeki

大人気ソーシャルゲームが華麗に舞台化!ミュージカル「陰陽師」〜平安絵巻〜開幕!

IMG_8986

中国、深セン、上海、北京での本公演が決定しているミュージカル「陰陽師」〜平安絵巻〜が、3月9日東京・日本青年館ホールでプレビュー公演の幕を開けた(18日まで)

ミュージカル「陰陽師」〜平安絵巻〜は、中国のゲーム会社ネットイースゲームズが制作し、2016年9月に運営が開始されたソーシャルゲームが原案。細部まで描き込まれた美麗なグラフィックと豪華声優陣の起用で話題となり、全世界で2億ダウンロードを突破したメガヒットゲームとなった。プレイヤーは妖しが蠢く美しき平安時代を舞台に、様々な式神と共にに魑魅魍魎と戦い、謎を解き明かしていく。
その舞台化となるミュージカル「陰陽師」〜平安絵巻〜は、演出・脚本・作詞をミュージカル『薄桜鬼』や『黒執事』シリーズ『Messiah メサイア』シリーズなどの毛利亘宏が手がけ、天才陰陽師・晴明役に良知真次、黒晴明役に佐々木喜英が扮するのをはじめ、伊藤優衣、元宝塚雪組トップ娘役の舞羽美海など、豪華キャストが揃い、幻想的なゲームの世界が、こだわり抜いた衣装、音楽、装置、映像などで、目の前に立ち現れる、驚きと感動の舞台が展開されている。

そんな作品の公開ゲネプロが、初日を夜に控えた3月9日日本青年館で行われ、それに先立つ初日会見に、晴明役の良知真次、黒晴明役の佐々木喜英、源博雅役の三浦宏規、神楽役の伊藤優衣、八百比丘尼役の舞羽美海、大天狗役の矢田悠祐、酒呑童子役の君沢ユウキ、茨木童子役の遊馬晃祐に、脚本・演出・作詞の毛利亘宏が登場。公演への抱負を語ると共に、記者の質問に答えた。

IMG_8523
後列/遊馬晃祐、君沢ユウキ、矢田悠祐
前列/舞羽美海、佐々木喜英、良知真次、三浦宏規、伊藤優衣


【初日会見・挨拶】


遊馬 茨木童子役の遊馬晃祐です。1ヶ月間あった稽古もあっという間で今日初日を迎える訳ですが、僕の役、茨木童子としては君沢さんの酒呑童子を思って、常に考えて舞台上でも行動してますので、そこを是非見てもらえたら嬉しいです。そして僕のキャラはすごい強いキャラで、ゲームの中でなかなかゲットできないキャラなんです。遊馬だったら弱いんですけど、この衣装、キャラをお借りして最強のキャラ茨木童子を演じますので、是非注目して頂きたいです。そして…。
君沢 お前、1時間喋るつもり?(笑)
遊馬 いや、あの(笑)、本当に映像が素晴らしくて、僕は稽古中見られなかったのですが、場当たり中に見ていて本当に綺麗で、その中で演じさせてもらえるのがすごく幸せですし、最後まで怪我なく駆け抜けたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
君沢 酒呑童子役の君沢ユウキです。お足元の悪い中お集まり頂きありがとうございます。ご覧の通り見たことのないミュージカルになっております。僕は背中に壺を背負い、頭に赤いカリフラワーのようなものをかぶり(笑)、袖では皆に邪魔だと言われて(笑)。でもこの作品は本当に壮大で、すべてこの衣装が物語っていると思いますので、僕たちの全力をどうか楽しみにしていてください。あと写真でなるべく頭切らないでください(笑)。

IMG_8581
 
良知 良かったね、昨日から考えてたのウケて(笑)。
君沢 やめろって!(笑)
矢田 大天狗役の矢田悠祐です。本日はありがとうございました。僕も見ての通りすごく幅が広くて(笑)、初めてつけましたね、こういう翼を。君沢さんと袖で嫌われる二人(笑)、スペース的な意味で。人間的な意味じゃないんですよ(笑)。
君沢 わかってるよ!(笑)
矢田 そんなすごい衣装を着させてもらって、遊馬さんも言っていましたけれど、僕らも昨日初めて映像を見て、ゲームの世界に入り込めるような作り込んだ世界になっていると思うので、楽しみにして欲しいなと。個人的には大天狗は源博雅との関係性がゲームで深く描かれていて、そこを僕らなりに楽しみながら作っていったので、注目して観てください。よろしくお願いします。

IMG_8896
 
舞羽 本日はありがとうございます。八百比丘尼役の舞羽美海です。本当にゲームの幻想的な世界から飛び出したキャラクターの個性が、舞台上でぶつかって面白い作品になっています。ゲームの美しさを生身の人間がやるパワーと面白さを楽しんで頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。
伊藤 本日はありがとうございます。神楽役の伊藤優衣です。まさか10才以上も下の年齢の子を演じるとは思ってもいませんでした。最後まで若さを大事に頑張りたいと思いますので、見守って頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。
三浦 源博雅役の三浦宏規です。本当にゲームの世界そのままという感じで、ストーリーはもちろん音楽も、衣装も、映像もすごく素晴らしくて、総合芸術として皆さんに楽しんで頂きたいなと思います。そして、後は中国公演も1ヶ月ほどありますので、先輩方に嫌われないように、謙虚に頑張っていきたいと思います。

IMG_8973
 
佐々木 本日はありがとうございます。黒晴明役の佐々木喜英です。僕は良知さんが演じる晴明と、もう1人の晴明という黒晴明という役を演じるのですけれども、その黒晴明がどうして誕生したか?というストーリーも舞台の中で登場してきますので、是非楽しんでもらえたらいいなと思います。この「陰陽師」という素晴らしい作品を、日本でも、もっともっと知ってもらいたいですし、2.5次元という素晴らしいミュージカルをもっと世界に広めていきたいと思いますので、どうぞ応援よろしくお願いします。
良知 晴明役の良知真次です。ゲームの原作では晴明ではじまり、晴明で終わるんですけれども、中国の皆さんはもちろん、ゲームを知っている皆さんがお持ちの晴明像というのは、本当にカッコよくクールで、そういう晴明ではじまる物語がどんどん進んでいくので、今回のミュージカルもそうなっていて、僕は常に舞台上にいて、皆が次々に出ていくのを見守る。稽古場でも誰よりもずっと出ているのですが、それぞれがそれぞれのキャラクターのもと、しっかりとした作品が作れていると思います。ゲネプロ、初日に向けて頑張っていきたいと思います。
毛利 脚本・演出・作詞の毛利亘宏です。本日はありがとうございます。誰も見たことがないようなミュージカルに仕上がっているというような気がしております。ある種のエンターテインメントショーであり、すごく深いドラマがあり、短い時間にギュッとたくさんの楽しさや、色々なことが詰め込まれた作品になっております。舞台に接した皆さんに、驚いて、感動して帰って頂きたいと思いますので、よろしくお願い致します。

IMG_8774


【質疑応答】

──ゲームの中から飛び出したような衣装ですが、実際に身に着けてみて、衣装によって助けられたこと、また大変なことは?
遊馬 僕のキャラクターは右腕が半分ないです。なので基本的には左手を使っているのですが、利き手ではないので、アクションにしてもお芝居にしても、それがどうしても難しくて苦戦しましたが、稽古してきたので、是非そこにも注目して観て頂きたいです。
君沢 ご覧の通りお辞儀をするだけで一苦労です(笑)。でも、こういうものを着けてやっている人はあまりいないと聞いたので、それはそれで良かったなと思っています。こんな感じで(頭を振るので全員笑)。
矢田 僕は真っ直ぐ歩けなくて、斜めにならないといけない。舞台裏が普通の人が二人で歩けるくらいなので、僕はずっとカニ歩きで下手から上手まで移動しないといけない(笑)。こういう体験を初めてしました。
良知 ふざけてるのかと思った(笑)。
矢田 ふざけてない!横歩きだけど(笑)。でも素敵な翼なので、舞台上ではどんどん羽ばたいていこうかなと思います。

IMG_8812
 
舞羽 そんなに支障はない衣装で(笑)。でも本当に今回お衣装と、ウイッグと、色々なものに助けられているなと思いました。音楽もすごく世界観に合っていますし、すべてが揃って完成する感じがしています。
伊藤 神楽の衣装は刺繍がすごくて、すでにあったものではなくて、衣装さんが頑張って丁寧に刺繍して作ってくださったので、大事にしたいなという気持ちをずっと持っています。
良知 あと、頭に金魚がいるね!
伊藤 そうなんですよ!
良知 それも観て欲しいね。
三浦 弓がやはり大きいですね。持ち替えてしまいます。何回持ち替えたかわからないんですけど。弓を壊さないように気をつけて使いたいと思います。 
良知 何回か稽古場でね(笑)。

IMG_8951
 
三浦 やめてくださいよ!(笑)、何回かやってしまったので、本番では気をつけたいと思います。
佐々木 黒晴明は誰よりもメイクに時間がかかります。今日はまだ初日なのでメイクさんにもちょっと手伝って頂いたのですが、それでもメイク、衣装、ウイッグ、全部完成するまでに2時間ぐらいかかって、これから中国も回りますし、1人でなんとか1時間ぐらいでできるようにしたいと思いますので、日々メイクも上手くなっていくと思います。
良知 もう落とさなければいいんじゃない?(笑)。
佐々木 いや、外歩けないですよ!(笑)。
良知 僕は今回晴明をやるに当たって、結構扇子を使う動きがたくさんあるんですけれども、この扇子がちょっとお値段は言えないのですが、ウン十万円するということで、これは冗談ではなく本当なんです。これを結構回したり、舞ったりするので、それも是非観て頂きたいです。あとは僕、ネイルサロンというものに初めて行ったんです。で、女性がネイルをして男性に気づいてもらえなくてケンカするという話をよく聞きますが、その苦労を今回、34年間生きてきて「なるほど、こんなにネイルというのは大変なんだな」ということもわかりましたし、その大変さを、この衣装を含めて皆様に届けられるということが本当に一同幸せだと思っていますので、早く、ゲネ、初日を迎えて皆様に観て頂きたいなと思います。

IMG_8807
 
──中国公演もありますが、海外に行かれるにあたって楽しみにしていることは?
遊馬 僕は海外公演をしたことがないので、実際にお客様がどういう反応をするのか、先輩にはちょっと聞いているのですけれども、生で体験したことがないので、そこが楽しみの1つです。
君沢 僕はよく海外公演に行かせてもらうのですが、コスプレをしてきてくださる方がいらっしゃるので、皆のコスプレを楽しみに。(頭を示して)これをつけてきてくれる人がいるか、あ、でも邪魔かな?客席で(笑)。
良知 邪魔だよね!(笑)
君沢 そういうことを楽しみにしています。
矢田 僕は中国公演に行ったことがあるんですけど、日本と全然反応が違って面白かったのをすごく覚えているので、今からとても楽しみです。ミュージカルなので、ミュージカルとして楽しんで頂けるのが、こちらとしても楽しみです。
舞羽 私も初めて行かせて頂くのですが、皆から聞く反応の違いとかもすごく楽しみです! 
伊藤 私は早くタピオカが飲みたいです(笑)。プリンが1個丸ごと入ったタピオカがあるんですよ。ミルクティーの。それが本当に美味しくてとても楽しみです。
三浦 僕は中国は3回目になるので、今度こそは万里の長城に行ってみたいと思います。やっぱりすごいので、万里の長城って。
良知 この格好で行くってこと?(笑)
三浦 この格好では行きません!(笑)
 
IMG_8692

佐々木 僕も中国公演に行ったことがありまして、ミュージカルだったのですが、すごくお客様がライブのように盛り上がって楽しんでくださったので、それがすごく嬉しくて。なので今回も楽しい時はいっぱい笑って欲しいですし、感情を素直に出して楽しんで頂けたら嬉しいなと思います。
良知 僕は前回『NARUTO』という舞台で上海に行かせて頂きましたが、今回この「陰陽師」は深セン、上海、北京と三都市、約1ヶ月公演をさせてもらいます。制作発表で上海に僕と(伊藤)優衣ちゃんと行ったんですけれども、その時から反応が全然違って、本当に原作が中国のものなので、期待感がすごいんですね。制作発表だけでそれだけ思って頂いたので、今回全キャストが揃ってオープニングを迎えたら、これは多分お客様はすごくびっくりされるでしょうし、夢のようなことが現実に起こる瞬間だと思いますので、早く中国の皆様に届けたいと思います。
毛利 全く違う反応が返ってくるのが本当に楽しいですし、とにかく1つの日本発のミュージカルというものが、世界に認めてもらえる瞬間が目の前に迫っていると思うと、本当に興奮します。

IMG_8782
 
──では、最後に良知さんから公演を楽しみにされている方々にメッセージを。
良知 ミュージカル「陰陽師」〜平安絵巻〜全世界で2憶のダウンロードがあったゲームになります。その世界を今回2.5次元で僕たちが演じる訳ですけれども、今までの2.5次元のミュージカルと、今回は何が違うかと言うと、中国と日本が合作で創る作品になりますので、すごく規模も大きいですし、日本と中国が協力してここまで素晴らしい作品ができるんだ!という想いで僕たちも作っていますので、ミュージカルという以上は、歌あり、踊りあり、芝居あり、殺陣あり、そして映像ありと、すべての要素が入っておりますので、是非多くの方に観て頂きたいです。皆様知っての通り今回「陰陽師」というタイトルで、羽生結弦選手が金メダルを獲ったように、この2.5次元ミュージカルの「陰陽師」〜平安絵巻〜も、舞台で金メダルを獲れるように頑張っていきますので、是非マスコミの皆様、ファンの皆様、たくさん宣伝して頂いて、是非1人でも多くの方に観て頂きたいと思います。ありがとうございます。

【ゲネプロ】

IMG_8564

それぞれの個性的な挨拶に続いてゲネプロが行われ、陰界に属する魑魅魍魎が、人々の住む陽界にまで跋扈し、陽界の秩序が危機にさらされている、という作品の世界観の中で幕を開けた。

この時代に天文を読み解き呪術を操るだけでなく、陰陽二つの世界を自在に行き来し、陽界の平安を守る異能者を、人々は「陰陽師」と呼んでいた。中でも天才的な陰陽師として知られる晴明(良知真次)は、都にその名を轟かせていたが、その彼が自らが陰陽師であること自体の記憶を失っているという、非常にミステリアスな状況で物語は始まる。
それでも晴明の胸には「都を守らなければならない」という使命だけが強く残っていて、同じく記憶を失っている謎の少女・神楽(伊藤優衣)と共に、悪鬼を倒しながら記憶を取り戻そうとする。その道程の中で、人魚の肉を食べてしまった為に不老不死の身になったという八百比丘尼(舞羽美海)、皇室の血筋を引く貴族の青年で、弓術と結界術を得意としている源博雅(三浦宏規)等、仲間が増え、一行は徐々に力を蓄えてゆく。
遭遇する妖怪が増えていくにつれ、手掛かりも多くなり、やがて晴明は都を壊滅せんとする大きな陰謀があることに気付く。ところがこの陰謀の首謀者が、晴明自身であるとの嫌疑をかけられたことから、晴明は自らの分身である、黒晴明(佐々木喜英)の存在を知ることとなる。大天狗(矢田悠祐)、雪女(七木奏音)を従えて、都に仇なす黒晴明が何故生まれ出たのか。深まる謎に近づくことは、晴明が記憶を失うこととなった、すべての始まりに近づくことでもあって……。

IMG_8620

たたみかけるように進むドラマは、鮮やかな殺陣と多彩な音楽、更に美しい映像によってスピーディに進んでいく。大きな衣装を身に着けたまま、目の前で走り、飛び、戦うキャストの身体能力は目を瞠るばかりで、キャラクターが生きて動いている力感は圧倒的だ。

IMG_8845

中でも、晴明の良知真次、黒晴明の佐々木喜英、八百比丘尼の舞羽美海、大天狗の矢田悠祐等、ミュージカル経験の豊富なメンバーの高い歌唱力が、ミュージカルとしての「陰陽師」の醍醐味を深めたことも大きく舞台に貢献している。更に、文字通り出ずっぱりの良知真次が、あくまでもクールでありつつ、記憶がない晴明が、黒晴明の誕生の秘密を追い求める苦悩も的確に表し、物語に深いドラマを生む。源博雅の三浦宏規、酒呑童子の君沢ユウキ、茨木童子の遊馬晃祐、黒無常の平田裕一郎、白無常の内海啓貴らが生み出す豪快さと、黒晴明一派の佐々木、矢田、七木、彼らに翻弄される紅葉役の門山葉子等の、ダークでミステリアスなカラーとのメリハリもしっかりしていて、怒涛の展開を飽きさせない。中国生まれのゲーム世界の見事なミュージカル化が、母国である中国で喝采をあびることが予見できる、必見のプレビュー公演となっている。

IMG_8834

カーテンコールでは観客への撮影タイムも用意されていて、思い出を携帯電話やスマートフォンに記録できる(デジタル一眼レフカメラ等の専門機器の持ち込みは不可)。11日、13日、14日、15日、16日には公演終了後にキャストによるお見送りも予定されているなど、劇場で特別な体験ができる舞台だ。
(詳細は公式ホームページ参照) 

〈公演情報〉
s_ミュージカル「陰陽師」_メインビジュアル

ミュージカル「陰陽師」〜平安絵巻〜
原案◇本格幻想RPG「陰陽師」より (NetEase Inc./All Rights Reserved)
演出・脚本・作詞◇毛利亘宏
音楽◇佐橋俊彦
振付◇本山新之助
出演◇良知真次/三浦宏規/伊藤優衣/舞羽美海/矢田悠祐/君沢ユウキ/遊馬晃祐/平田裕一郎/内海啓貴/片山浩憲/七木奏音/門山葉子/佐々木喜英/西岡寛修 笹原英作 服部 悠 杉山諒二 松ヶ谷ほのか 渡邉 南 光岡茉美 佐竹真依 SATOCO
●プレビュー公演/3/9〜18◎東京 日本青年館ホール
●本公演/深セン・3/30〜4/1◎深セン保利劇院
上海・4/7〜15◎虹橋芸術センター
北京・4/20〜22◎北京展覧館劇場
〈料金〉プレビュー公演/S席 8,800円 A席 7,800円(前売、当日共・全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉ネルケプランニング 03-3715-5624(平日11:00〜18:00)



【取材・文・撮影/橘涼香】



帝劇『1789』


kick shop nikkan engeki
記事検索
演劇キックラインナップ

演劇キック

観劇予報

宝塚ジャーナル

演劇人の活力源

日刊えんぶ

えんぶ情報館

えんぶショップ

えんぶミロクル

えんぶfacebook

広告について