宝塚ジャーナル

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インタビュー

ミュージカル『アルジャーノンに花束を』アリス・キニアン役に取り組む! 水夏希インタビュー

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現代アメリカの作家、ダニエル・キイスの代表作として、日本でも長く愛され続けている『アルジャーノンに花束を』。知能を人工的に発達させた時、人は本当に幸福になり得るのか?という重いテーマから、平凡に生きていけることの幸福や、家族への愛が立ちのぼる作品は、様々な形で映像化や舞台化がされてきている。
そんな作品群の中でも、珠玉のミュージカル作品として高い評価を得ているのが、鬼才荻田浩一の手によるミュージカル版。浦井健治を主人公チャーリーに迎え、9人の出演者で紡がれる舞台は、2006年の初演時から美しい音楽と、幻想性も加えた演出があいまって大評判となり、2014年にも再演。傑作ミュージカルとして人々の心に深く刻まれている。
 
その舞台が新しく主人公のチャーリィ・ゴードンに矢田悠祐を迎えて上演される。主人公チャーリィを1人の人間として見守り続けるアリス・キニアンには、元宝塚雪組トップスターで女優の水夏希。
この新たなカンパニーによる作品作りもたけなわの2月初旬、その稽古場を訪ね、アリス役への取り組み、矢田を盛り立てるカンパニーの話、荻田演出の面白さ、そして、直近に出演した宝塚OGによる『エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』で感じた思いなどを語ってもらった。

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今まで演じたことがない新たなキャラクター

──新生『アルジャーノンに花束を』が稽古に入って、進捗状況はいかがですか?
今回、結構本読み期間が多かったんです。私の今までの経験では、本読みはだいたい1回か2回ぐらいで立ち稽古になっていたのですが、今回は歌稽古もしながら、歌入りの本読みなども含めて2週間くらいありました。今回が再々演で、すでに出来上がっている作品ですから、しっかりと作品の全体像や、登場するキャラクターのイメージなども、荻田先生から詳しく教えて頂けたので、スタートとしてはスムーズに入れたかなと思っていました。ところが実際に立ってみると、座っていた時とは勝手が違うことがたくさんあって、改めて自分の中で構築していかなければと痛感しているところです。
──荻田作品は、メインで芝居をしているシーン以外にも、舞台に登場することが多いのでは?
そうなんです。すごく出ていますし、そのシーンでは空間を埋める必要があります。例えば病室とか研究室とかのシーンでも、セットがリアルに作り込まれているわけではなくて、すべてが抽象空間の中ですから、ここはどこで、手術から何日目で、私は何をしに、何の為に来たのかを、役者がすべて自分の中で作り込まなければならない。そこは丁寧にやりたいし、アリスとしての人生を埋めていく作業がたくさんあります。特にミュージカルなので、音楽とストーリーがリンクして折り重なるように進んで行くので、ひとつのミュージカルナンバーの間に時が経っていたり、シーンが変わったりすることがたくさんあります。自分の中で経過を整理してどんどん前に進まないといけないし、気持ちも変化していくので、難しいです。
──演じるアリス・キニアンという役柄について、稽古が進んでいる中だからこそ感じる思いや発見などはありますか?
今まで演じたことがないキャラクターだなと実感しています。これまでは、私が宝塚の男役出身ということもあって、男気があったり、気が強かったりなど自分の持ち味に近い役を頂くことが多かったんです。退団して6年半、今、7年目に向かっているところですが、今回は、今まで私が求められていた役柄とは全く別のキャラクターで、まず発声から違いますし、芝居をしている時のポジションも違います。そこで、役柄の構築の仕方、自分の中の何をピックアップしてアリスという人物を作っていくのかなど、これまでの経験とは全く異なるものを感じています。
──その意味ではチャレンジとも言えると思うのですが、そこから刺激を感じたり楽しさを見出したりという部分は?
まだ楽しいというところまでには至ってないのですが、自分と向き合って丁寧に模索していく中で、「あ、こんな面もあるんだ」とか「こういうところをすごく大雑把にやっていたんだな」とか、発見はすごく多いです。
──演出の荻田さんから、アリス役を演じるに当たって、こうあって欲しいなど要望はありましたか?
本読みでの細かい要望はなかったのですが、まだ稽古が始まる前、台本を読んだ段階で「台本のこの展開で、私ならアリスとは違う答えをすると思う」と相談したところ、「自分の持ち味とは異なるところで役作りをして欲しい」と。スタートからそれは意識して稽古に入りました。今のところ「アリス特訓・集中講座」みたいなことは特にないのですが(笑)、チャーリーとの対話や、ストラウス教授やニーマー教授とのシーンなど、関わる人たちのキャラクターを細かく説明してくださるので、そこからアリス像も浮かび上がってくるのを感じています。

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宝塚の時には見られなかった荻田さんの自由な一面!? 

──関係性を築いていくカンパニーの皆さんについてはどうですか?
矢田(悠祐)君と戸井(勝海)さんと(皆本)麻帆ちゃん以外は、とてもよく知っているメンバーばかりなので、やはり「はじめまして」の3人が非常に興味深いですね。あーこういう風にやるんだとか、例えば麻帆ちゃんの表現などは「私の引き出しの中に1ミリもないな」と思ったりするので、すごく刺激的で魅力的だなと思っています。チャーリーの矢田君は初主演のうえに本当に出ずっぱりで、歌も台詞も膨大だし、役柄もとても難しい。彼は今26歳ですけれど、ちょうど私もバウホールで初主演をさせて頂いたのがそのくらいで、急に場面や台詞が増えて必死だった自分と重なるところもありますね。今、稽古をしているところが、アリスがチャーリーを見守り、導くというシーンということもあって、チャーリーを心から応援する気持ちになります。ただこれから場面が進むと、チャーリーとアリスのパワーバランスも変わってくるので、その時に自分がどう居るべきなのか、自分がどう感じるのか、というのを、また丁寧にアンテナを張り巡らせていきたいと思います。
──水さんも1つの作品でほぼ出ずっぱりということを数々経験されていますから、矢田さんの気持ちがわかるでしょうね。
彼はそのうえ初主演で、「こんなに台詞を言ったことも、歌ったこともないんです!」と言うので、戸井さんや(小林))遼介君など先輩方も、「これがいいよ、こんな風にしてみたら?」とか、皆がかわるがわるあの手この手という感じで(笑)矢田君を応援しています。温かいカンパニーだなと思います。
──良い雰囲気で稽古が進んでいるのですね。荻田演出についてはいかがですか?
私は宝塚時代は、荻田先生とはショーでしかご一緒したことがなくて、お芝居は初めてなのですが、宝塚の時とは全く違う一面を垣間見るどころか「全然違う」(笑)、と感じるところが面白いです。
──具体的にどう違うと感じるのですか?
『アルジャーノンに花束を』という作品が再々演ということもあって、先生の中で、練り込まれて、膨らんでいらっしゃるということもあるのかもしれませんが、チャーリーをはじめとした役者たちへの要求もとめどなく出て来ますし、その合間に自分の頭の中にある「ボケ、ツッコミ」を全部自分でやるみたいなところがあって(笑)。「自由だぁ!」と思います(笑)。ご本人は「全然僕、自由になんかやってない」とおっしゃるかもしれませんが(笑)。宝塚の時には見せなかった面を開放していらっしゃるのが面白いなと思っています。特に今回、私は科学者、研究者の役なので、この世に生きている全世界の人たち、「人類」は、根本的にはだいたい同じフォルムと同じ内臓を持っているけれど、でも細かくは1人1人全部違いますよね。精神世界も違います。そういうことを扱っている作品に携わっているだけに、人間観察が面白いし、イマジネーションがどんどん膨らんでいく稽古場です。

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新たな回答を頂けた黄泉の帝王トート

──そうした新しい役柄を探求しながらも、先日まで宝塚OGによる『エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』公演では久しぶりに男役で、トート役に取り組んでいかがでしたか?
退団直後は、男役をやることを封印していたのですが、6年経って、男役であったこととか、女性として生きていくことが、自分の中で自然に受けとめられるようになってきたので、今なら男役当時のままの扮装を作品を通してやることも、きっと自分にプラスになることが多いだろうと思って、チャレンジさせて頂きました。とはいえ舞台に立つ前には、フルバージョンで男役をやった時に自分がどうなるのか、当時に戻ってしまうのか、それとも男役はもういいなと思ってしまうのか、不安も多かったのですが、実際には、今の自分の変わらない日常の中で受けとめることができたので、とても面白かったです。
──ある意味、男役を女優として演じることとがこなれてきたのでしょうか?
いえ、最初に稽古をした時には、同期などから「もうちょっとカッコよくキザってやってね」と言われたりしました(笑)。自分ではキザってやっているつもりだったし、男役にはすぐ戻れると思ってもいたのですが、退団してから日常生活の中でも、芝居の中でも、男役でやってきたことをやらないように、やらないようにと、意識して意識して削ぎ落として来ていたので、やらないことが日常になっていたんだなと気づきました。なので、あの頃の目線ですとか、動き、芝居のやり方を思い出していく作業もしました。その結果、お客様が「男役だった時とは全然違うトート像でした」と言ってくださったり、お客様から新たな回答を頂けた、面白い時間でした。
──トートという役どころが、男役と言い切っていいのかという独特な役でもありますから、女優としての蓄積も加味されたでしょうか?
どうなんでしょう? それは自分ではよくわからないけれど、確かにトートは独特で人間ではない役柄なので、そういうところもあったのかもしれません。ただやはり、『エリザベート』という作品自体の難しさと、男役を演じるという非日常に対する難しさもあって、ものすごく神経を遣って疲れました(笑)。
──でもまた水さんのトートに出会えたことは嬉しかったです。ほぼ当時のままの雪組メンバーでの上演もありましたし。
ありがとうございます。やっぱり懐かしかったです。すごく色々なことを思い出しました。「となみ(白羽ゆり)大人になったなぁ」とか「相変わらず綺麗だな」とか、ゆみこ(彩吹真央)とは退団してからもよく食事に行ったりしているので、男役同士として向き合っている状態が可笑しくて(笑)、舞台稽古では思わず笑ってしまったりもしました。ジュリさん(樹里咲穂)やガイチさん(初風緑)は、下級生の時にご一緒させて頂いていた方達だったので、メインキャストで、しかも男役の扮装でご一緒できるとは思わなかったですし。また、ナガさん(飛鳥裕)やケイコさん(美穂圭子)は「現役の方の醸し出す空気感はすごい!」と感嘆しました。
──現役のタカラジェンヌの方は、水さんから見てもそこまで違うものですか?
全然違いますね。やはり俗世とは違う世界にいらっしゃる空気感があって「あぁ、私もあの中にいたんだな」と改めて思いました(笑)。久しぶりに観に行くからと、現役当時の写真を現像して差し入れしてくださった知り合いの方がいて、今見るとこんな格好普通しないよねというものなんです(笑)。薄茶色のサングラスに、ハンチングをかぶって襟にファーのついたコートを着ていて(笑)、街中を歩いていたら絶対に目につく、「この人は何?」と思われるような格好で(笑)。でも確かに普通にこういうのを着ていたなと思って、懐かしくも面白かったです。

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原点を見つめ直して挑む『アルジャーノンに花束を』

──やはり結論としてはいい経験でしたか?
もちろんです。本当にいい経験になりました。宝塚という団体の一部だった自分が、退団してから全くの一個人になってから、自分は何故舞台に立つのか?何故この仕事を続けているのか?を問いかけていましたし、男役ではなくなって、例えば挨拶ひとつにしても、どういう言葉を選ぶのか迷ったり、戸惑ったりしたこともありましたから。改めて自分の原点を見つめさせてもらえました。退団したのだから、もう宝塚には所属していないんだと、自分から切り離して考えていた時もあったのですが、やはり私の原点は宝塚で、今なお宝塚にすごく守られている。宝塚から与えられるギフトが今もあるんだということが再確認できて、そういう部分で迷い悩む必要はないんだなと改めて思えました。
──こうしてフルバージョンで再現コンサートができるのは『エリザベート』くらいですし、歴代のトップスターの方々でも、作品に関わっていないと出られない場ですから。
本当に『エリザベート』との出会い、ご縁には感謝しています。あとは『ベルサイユのばら』も、こうした形でやったらいいのにと思います。
──それは本当に豪華なメンバーが揃いますね!
そう、すごいですよ!『ベルばら』は予算がかかり過ぎるかな?と思いますけれど(笑)、やりたいですね。
──また夢が広がります。そんな素敵な経験の上に、この『アルジャーノンに花束を』が続いているわけですが。
ギャップがすごいんですけれどね(笑)、黄泉の帝王からアリス・キニアンって。歌のキーも全然違うので、この稽古に入った最初の数日は「そんなに怖い声を出さないで」と何度も言われました。「ドスが効いちゃってるから、もっと儚げでかぼそい声でお願いします」って(笑)。ですから本当にまた新たなチャレンジです。
──では、そんな新たな水さんに出会える『アルジャーノンに花束を』への意気込みをお願いします。
新しい水夏希を是非観て頂きたいなと。元男役水夏希ではなく、1人の女優として作品に携われたらと思っているので、フラットな状態で観に来て頂きたいですね。初めてお会いするお客様も多いと思いますので、「え?宝塚の人だったんだ!」と思って頂けるくらいの、新鮮なものをお見せできたらと思います。作品としては切ないお話という印象をお持ちの方も多いと思いますし、確かに切ないお話ではあるのですが、その中に、つい当たり前だと思ってしまいがちの、普通に生きていけるありがたさや、家族や友人の大切さを、思い出して頂ける作品になるのではと思っています。色々な意味で人生への刺激を持って帰って頂ける作品ですので、是非劇場にいらしてください。

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みずなつき○93年宝塚歌劇団入団。07年『エリザベート』のトート役で雪組トップスターに就任、10年に宝塚を退団。最近の舞台は、リーディングドラマ『サンタ・エビータ〜タンゴの調べに蘇る魂』音楽朗読劇『幸せは蒼穹の果てに』DANCE OPERA『マスカレード2015 〜 FINAL』30-DLUX『新版 義経千本桜』『Honganji』ENTERTAINMENT ORIGINAL MUSICAL SHOW『RHYTHM RHYTHM RHYTHM』DANCE LEGEND vol.3 BAD GIRLS meets FLAMENCO BOYS『FLAMENCO CAFE DEL GATO』ブロードウェイミュージカル 『CHICAGO 宝塚歌劇OGバージョン』プレミア音楽朗読劇『VOICARION〜女王がいた客室〜』『サラ・ベルナール』〜命が命を生む時〜など。宝塚OGによる『エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』では、久々にトート役を演じた。3月28日、29日に越路吹雪 三十七回忌特別追悼公演『越路吹雪に捧ぐ』、5月にドラマティカルシリーズ リーディングvol.1『パンク・シャンソン』〜エディット・ピアフの生涯〜、7月にはミュージカル・コメディ『キス・ミー・ケイト』への出演が控えている。


〈公演情報〉

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ミュージカル『アルジャーノンに花束を』
原作◇ダニエル・キイス 
脚本・作詞・演出◇荻田浩一 
出演◇矢田悠祐 蒼乃夕妃 皆本麻帆 吉田萌美 小林遼介 和田泰右 長澤風海 戸井勝海 水夏希
3/2〜12◎天王洲 銀河劇場 
〈お問い合わせ〉銀河劇場チケットセンター 03-5769-0011(平日10時〜18時) 
3/16◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス:0798-68-0255(10時〜17時)



【取材・文/橘涼香 撮影/安川啓太】




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ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』ついに開幕! 霧矢大夢・赤根那奈インタビュー

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ティム・バートン監督の映画で知られる『ビッグ・フィッシュ』のミュージカル版が、2月7日、白井晃演出で華やかに開幕した!(28日まで。日生劇場)
そのフォトレビューを、えんぶ2月号に掲載された霧矢大夢と赤根那奈の対談とともに掲載する。
 
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ティム・バートンといえば、『チャーリーとチョコレート工場』『アリス・イン・ワンダーランド』などで世界中に熱狂的なファンに支持されている。『ビッグ・フィッシュ』は2003年に彼が作った映画で、ファンタジックで温かな家族の愛を描いた作品だ。2013年には、ブロードウェイミュージカルとして蘇り、物語世界の魅力はそのままに美しい歌とダンスに彩られた舞台は、新たな喝采を呼び起こした。そんな作品のが数々の作品で示した演出力で、絶大な信頼を得ている白井晃によって、日生劇場の舞台を飾ることになった。

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【あらすじ】

エドワード・ブルーム(川平慈英)は昔から、自らの体験談を現実にはあり得ないほど大げさに語り、聴く人を魅了するのが得意。
自分がいつどうやって死ぬのかを、幼馴染のドン・プライス(藤井隆)と一緒に魔女(JKim)から聴いた話や、共に故郷を旅立った巨人・カール(深水元基)との友情、団長のエイモス(ROLLY)に雇われたサーカスで最愛の女性、妻・サンドラ(霧矢大夢)と出逢った話を、息子のウィル(浦井健治)に語って聞かせていた。
幼い頃のウィルは父の奇想天外な話が好きだったが、大人になるにつれそれが作り話にしか思えなくなり、いつしか父親の話を素直に聴けなくなっていた。そしてある出来事をきっかけに親子の溝は決定的なものとなっていた。
しかしある日、母サンドラから父が病で倒れたと知らせが入り、ウィルは身重の妻・ジョセフィーン(赤根那奈)と両親の家に帰る。
病床でも相変わらずかつての冒険談を語るエドワード。本当の父の姿を知りたいと葛藤するウィルは、以前父の語りに出ていた地名の登記簿を見つけ、ジェニー・ヒル(鈴木蘭々)という女性に出会う。
そしてウィルは、父が本当に伝えたいことを知るのだった−。
 
霧矢大夢と赤根那奈は、物語の中心となるブルーム家で、主人公の妻と、主人公の息子の妻、つまり義理の親子を演じる。宝塚時代にコンビを組んだこともある縁の深い2人が、女優として再び共演する舞台となる。

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大好きだった映画の舞台化に臨んで

──まず作品の魅力をどう感じていますか?
霧矢 ティム・バートン独特の世界で、ファンタジーの中に毒気やシュールさもありつつ、心に染み入るような作品だと思っていました。私自身映画のDVDも購入して人に勧めていたほど好きな作品だったので、今度は舞台版で、ティム・バートンマジックと同じように、演出の白井晃さんマジックに彩られたものになると思いますから、とても楽しみにしています。
赤根 私は映画館では観られなかったんです。
霧矢 生まれてた?
赤根 もちろんです!
霧矢 あぁ良かった(笑)。
赤根 宝塚の現役中に勉強の為に映画のDVDをたくさん観ていて、今日は何を借りようかな?と物色している時に、『ビッグ・フィッシュ』の綺麗な表紙が目に飛び込んできたんです。ですから最初はティム・バートンの監督作品だとも知らずに観ようと思ったのですが、実際に観始めると色々な要素が詰まっていて、観れば観るほど引き込まれ、考えさせられる作品でした。黄色のお花畑などもすごく幻想的で、それが舞台になった時どんな臨場感が生まれるのか、白井さんならではの世界になるのだろうと期待しています。
──それぞれ演じる役柄についてはいかがですか?
霧矢 川平慈英さん演じるエドワードの妻サンドラを演じさせて頂きますが、若い頃と年代を経てからとが交互に出て来て、その両方を演じるので、まずきちんと演じ分けなければと。更に息子であるウィルの少年時代も描かれますので、1人の人物の3つの世代を演じることになりますから、難しさもあると同時に役者冥利につきる面白さがあります。特にエドワードが語るストーリーではミューズの存在で、夫と息子の確執に心傷めながらも家族を常に見守っている女性なので、夫への愛情と共に家族への包容力を深く表現したいなと思っています。
赤根 私はウィルの妻のジョセフィーン役を演じさせて頂きますが、エドワード、サンドラ、ウィル3人の家族関係を、少し客観的に見つつウィルを支えている存在になれたらいいのかなと。それに役柄が身重ということで、私にとってはこれまでになかった設定なので、母性的な部分も出していけたらと思っています。

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慈英座長を中心に魅力的で温かいカンパニー

──白井晃さんの演出に期待していることは?
霧矢 『ビッグ・フィッシュ』の上演が発表になった時に、私は別の舞台に出ていたのですが、共演者の方達から口々に「『ビッグ・フィッシュ』を白井晃さん演出でやるんだ! いいね!」と言ってもらって、俳優たちの間で白井さんの演出の評価が本当に高いことを改めて実感しました。しかも稽古を突き詰めて熱心にやる方だそうで、私も稽古はできるだけたくさん丁寧にやりたいタイプなので、とても楽しみにしています。
赤根 私も色々な方から「白井さんの演出はすごく刺激になって勉強になるよ、良かったね!」と言っていただいてます。今回、初めてご一緒させて頂くので「よろしくお願いします! 厳しく教えてください!」という気持ちで臨みたいです。
──それぞれ夫役となる川平慈英さん、浦井健治さんの印象はいかがですか?
霧矢 私はポスター撮影の時に初めて川平さんにお会いして「テレビと一緒だ〜」と思ったのが最初だったのですが(笑)、とてもフレンドリーな温かい方で、場の空気を一瞬にして和ませてくださる方なので、町の人気者のエドワード役には本当にピッタリです。もうこのキャスティングだけで成功間違いなしだなと。浦井さんもとてもしっかりしているので、親子の関わりもきっとうまく表現されると思うので、「母です。よろしくお願いします」(笑)という気持ちです。
赤根 私も川平さんは映像で一方的に存じ上げていた方だったのですが、本当に和やかで温かい方なので、川平さんが座長のカンパニーなら、きっと皆で助け合いながら1つのものを創っていけると思っています。浦井健治さんはずっと前からミュージカル界のプリンスでいらした方なので、そんな方と夫婦役をさせて頂けるのは不思議な気持ちなのですが、ポスター撮影の時に初めてお会いしたら、もうそこから包み込んでくださるような方で。
霧矢 浦井さんは初対面の固さがない方なのよね。
赤根 そうなんです。だから気負わずに素直に向き合っていけたらと思います。

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宝塚時代の深い縁、そしてまた新たな舞台で

──宝塚時代にも縁の深かったお2人ですが、当時の思い出や印象などは?
霧矢 彼女は月組で初舞台を踏んだ時から、とても伸び伸びとしていて、華やかな容姿で月組の若手娘役のホープでした。そこから星組に組替えになってトップ娘役に就任しましたから、どんどん大きな花を咲かせていくのを、上級生として見守っていました。当時から物怖じしないおおらかさが魅力でした
から、今回も伸び伸びしてくれたらいいなと思っています。
赤根 私は入団する前から霧矢さんの完璧な舞台に魅せられていたのですが、入団してお稽古場で歌われているのを聞いて、更に心臓を鷲掴みにされて、この人のそばで学びたいと思い続けていたんです。相手役をさせて頂いた時にも、学年差のある私とずっとコミュニケーションを取ってくださって、包容力と温かさを感じていました。本当に素敵な男役さんで、今も素敵な女優さんですが。
霧矢 いやいや(笑)。バウホール公演の『大阪侍』では相手役としてコンビも組んでいたので、まさかこうして嫁姑としてまた巡り会うとは! という感じですが(笑)、お互いに退団して模索しながらの毎日ですので、良い意味で支え合っていきたいよね。
赤根 はい、よろしくお願いします!
──女優としてのお2人の共演もとても楽しみですが、では改めて意気込みをお願いします。
霧矢 魅力的なキャストの皆さんと、白井さん演出による舞台版の『ビッグ・フィッシュ』、寒い2月ではありますが、ハッピーになれる作品ですので是非劇場に足をお運び頂ければと思います。お待ちしています。
赤根 私は年頭から舞台に関われるのがすごく好きなので。
霧矢 わかる! エンジンかかるよね!
赤根 はい。ですからこの温かいカンパニーの皆さんと、更にお客様と一体になってスタートが切れるのを本当に楽しみにしています。頑張りますのでよろしくお願いします!

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きりやひろむ○大阪府出身。1994年宝塚歌劇団入団。2010年月組トップスターに就任。 平成21年度、文化庁芸術祭演劇部門新人賞受賞。12年4月、宝塚歌劇団を退団。退団後は女優としてスタート。『マイ・フェア・レディ』『オーシャンズ11』『I DO! I DO!』『ヴェローナの二紳士』『ラ・マンチャの男』『レミング』『THE LAST FLAPPER』など多彩な作品に出演している。第22回読売演劇大賞優秀女優賞受賞。

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あかねなな○富山県出身。2003年に宝塚歌劇団に夢咲ねねとして入団。月組に配属後の05年、『エリザベート』の新人公演でエリザベート役に抜擢、一躍注目を集める。08年星組に組替え。09年、星組トップ娘役に就任。『ロミオとジュリエット』『オーシャンズ11』など大作のヒロインとして活躍、15年に宝塚歌劇団を退団。退団後は『サンセット大通り』『1789-バスティーユの恋人たち-』に出演。17年5月には『グレート・ギャツビー』のヒロイン、デイジー・ブキャナン役が控えている。

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※この舞台はえんぶ4月号で特集します。お楽しみに!


〈公演情報〉

ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』
脚本◇ジョン・オーガスト 
音楽・詞◇アンドリュー・リッパ 
演出◇白井晃
出演◇川平慈英 浦井健治 霧矢大夢 赤根那奈 藤井隆 JKim、深水元基、
鈴木福・りょうた(Wキャスト)、鈴木蘭々、ROLLY ほか
2/7〜28◎日生劇場
〈お問い合わせ〉03-3201-7777(東宝テレザーブ)



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳(人物) 竹下力(舞台)】




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中村梅雀と大和悠河が共演する新橋演舞場『二月喜劇名作公演』まもなく開幕!

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新橋演舞場で2月1日から12日まで上演される舞台『二月喜劇名作公演』で、中村梅雀と大和悠河が初共演する。演目は「恋の免許皆伝」、この『二月喜劇名作公演』は2本立てで、もう1つの演目は喜多村緑郎と河合雪之丞の出演する「江戸みやげ 『狐狸狐狸ばなし』」となっている。

「恋の免許皆伝」は明治43年に初演され、松竹新喜劇で近年再演されている「四海波」(作・一堺漁人)を、門前光三が脚色・演出するもので、上方発祥の傑作喜劇。共演に新派の波乃久里子、松竹新喜劇から藤山扇治郎、曽我廼家八十吉らが出演する。

【あらすじ】
泉州岸和田藩の武芸指南役の娘浪路(大和悠河)は、父譲りの剣術の腕前に加えて器量よしで、若い藩士や門弟たちの憧れの的だ。その婿養子に名家の出で剣の使い手である高砂頼母(中村梅雀)を迎えることになった。人柄も容姿もいい頼母に浪路は一目で恋してしまう。だが婿の腕前を見る木刀での試合で、頼母は浪路に負けてしまう。己の未熟を恥じた頼母は、腕前を鍛えるための武者修行に出る。頼母を愛する浪路は待ち続け、20年の時を経て戻った頼母と再び対戦することに…。
3場構成で2人の40年後まで描かれる、笑えて泣ける物語となっている。

※公演フォトレビュー追加しました。(2月5日) 

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この「恋の免許皆伝」の主演をつとめる中村梅雀と大和悠河、2人を囲む記者取材会が1月23日に行われ、それぞれ抱負を語った。

──この物語でおふたりは場面ごとに20年経った姿で登場するそうですね?
梅雀 40年間という長きにわたる2人の愛を3場面で見せるというお芝居で、人生の究極の3日間です。僕は22歳、42歳、62歳の姿で登場しますが、色々な状況の変化で、最終的には激変します(笑)。こちらはずっと美しいです。
悠河 いえいえ(笑)。私は19歳から始まります。次は39歳で女盛りの年頃で、最後は59歳です。でも今の59歳よりは老けた感じになると思います。
梅雀 その年齢まで2人とも愛をひたすらに貫くのですから純愛ですよね。今の時代ではあり得ないようなお話で、面白くて可笑しくてバカバカしくて、でも切なくて、でもお終いはとても幸せな気持ちになっていただけます。
──3回、立ち合いをするわけですね? 大和さんはたしか宝塚でも立ち廻りは?
悠河 ありました。洋物のほうが多かったですけど和物もありました。浪路は刀を持つと激変するお嬢様なのですが、私も刀を構えると血が騒ぐというか(笑)。
梅雀 見事に目つきが変わってます(笑)。立ち廻りは所作指導の尾上墨雪先生が、とても良い殺陣をつけてくださいまして、やってて楽しいし、観ているお客様も喜ぶものになっています。いわゆる形の立ち廻りではなく、リアルでスピード感があって、意外性も十分にあります。そして、3場がそれぞれ雰囲気が違いまして、原作者が歌舞伎出身の方なので、僕も久しぶりに渡り台詞を言ったりと、歌舞伎的な要素もありますが、基本はリアルなお芝居です。
──この『喜劇名作公演』は歌舞伎、新派、新喜劇、宝塚と色々な出身の方が参加されてますが。
梅雀 基本的に和物の基礎を身に付けている方ばかりです。そして舞台に慣れている方々、お客様の呼吸のつかみどころを知っている方ばかりで、しかもアイデアがそれぞれから出てきますから、稽古場から刺激的ですね。
悠河 私は初参加なのですが、皆さん立ったらすぐその場面の空気を作られる方ばかりで、梅雀さんにも、昨年、新派でご一緒した波乃久里子さんにも、色々教えていただいています。皆さんがあまりにお上手で、見ていて思わず笑ってしまったり(笑)。

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──共演は初めてだそうですが、お互いの印象は?
梅雀 なんといってもよかったなと思うのは、40年間思い続けることが出来る方で(笑)、真っ直ぐな可愛さがあるんです。抱きしめる場面が何回かあるんですけど、本当に可愛いなーと思いますし、悠河さんでよかったなと思います。
悠河 そんなふうに言っていただけるなんて。私がまだ慣れなくてぎくしゃくしているときも、包み込んでくださるので、本当に有り難くて、引かれないようにしないと。
梅雀 全然そんなことないですよ。
悠河 本当に優しくて、嬉しいです! 初めて抱き合うシーンを稽古したとき、思いのほか恥ずかしくて、あがってしまって、今までにないぐらい汗が出まして(笑)。「私は恥ずかしいんだ?!」と自分で思いました(笑)。
梅雀 いやあ、本当に初々しくて、真っ直ぐで、可愛いです!
──場面ごとに老ける姿はどうなりそうですか?
梅雀 そこはお楽しみに(笑)。久しぶりに3種類の外見を作るので、変身願望が満たされて、楽しいです。
悠河 初めて62歳で出てこられたときは、思わず稽古場で笑いが起きました(笑)。ここまで変わるのかというくらいの姿で出てこられるんです。思わず「こんなになるまで修行していたんだ」と。
梅雀 その老いて出ていくときは、動きや呼吸も全身を使ってますから、かなりの疲労感があるのですが、幕切れがそれを吹き飛ばすくらい喜ばしくて幸せで。それにその場面も墨雪先生が素晴らしいアイデアを出してくださったので、僕は乗りに乗ってます(笑)。お客様がそこで泣き笑いをしてくださったら最高ですね。
──大和さんは最近和物の舞台への取り組みが多いのですが、いかがですか?
悠河 昨年の新派公演『糸桜』を体験して、奥が深くて素敵だなと思いましたし、日本語もとても綺麗ですよね。そして久里子さんのお芝居がどんどん進化されていくのを拝見して、すごいなと。自分ももっと勉強したいなと思っています。
梅雀 すごいですよ、毎日かわいい着物でフル装備で来ますから(笑)。久里子さんなんか「毎日、すごいわね。こんな人いないわよ」と。
悠河 とにかく着慣れないので、着ている時間を長くして慣れないとと思っていて。宝塚の男役でもそうでしたが、着るものから役に入っていくほうなんです。
──大和さんはこれだけ長い人生を演じるのは?
悠河 初めてです。子供のある役まではやりましたが。3場では見た目はうまく変化させながら、内面のピュアさを保ちながらと思っています。 

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──これは喜劇ですが、どんなふうに演じようと?
悠河 周りの方々が面白く演じられているのを見て、私もちょっと案を出してみたのですが、私は笑いを取りにいってはいけないんだと気づきました。浪路は本当に一途に思っているだけでいい、お客様がそこを面白く思ってくださればいいので、本当に真面目にやろうと思っています。
梅雀 周りの方たちが笑いを誘って、空気をゆるめてくれるおかげで、2人の純愛がさらにギュッと引き締まるんです。そういうバランスの良さを掴める方がいっぱい周りにいますので。
──では最後に意気込みを。
梅雀 毎年恒例になりました『二月喜劇名作公演』ですが、やっぱり観にきてよかったねと言っていただけるように頑張ります。ちょっとほんわかして、ウルッときて、最後は幸せな気持ちになっていただけると思いますので、ぜひ観にいらしてください。
悠河 こんな素敵な役をさせていただけることを、本当に有り難く思いますし、梅雀さん久里子さんをはじめ、新派の方、新喜劇の方、皆様とこういう幸せになれる作品に取り組めるのがとても嬉しいです。全身全霊で取り組みますので、ほっこりしに来ていただければ嬉しいです。

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【公演フォトレビュー】
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舞台撮影/竹下力

公演情報〉
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『二月喜劇名作公演』
一、「恋の免許皆伝 一堺漁人作『寿祝う 四海波』より」
 脚色・演出:門前光三
 演出補:成瀬芳一
 出演:中村梅雀、大和悠河、波乃久里子、藤山扇治郎、曽我廼家八十吉 ほか
二、「江戸みやげ『狐狸狐狸ばなし』」
 作:北條秀司
 補綴・演出:成瀬芳一
 出演:市川春猿改め河合雪之丞、喜多村緑郎 / 渋谷天外、曽我廼家寛太郎 / 山村紅葉 ほか
●2/1〜12◎新橋演舞場
〈料金〉1等席13,000円 2等席8,500円 3階A席4,500円 3階B席3,000円  桟敷席14,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489
http://www.shochiku.co.jp/play/enbujyo/schedule/2017/2/post_306.php 





【取材・文・撮影/榊原和子】


水夏希出演、アルジャーノンに花束を




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『la vie d’amour2016 〜シャンソンに誘われて〜』 安寿ミラ・児玉明子 対談

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昨年11月、長いキャリアの中でも初めてというシャンソン・コンサート『la vie d’amour』に挑戦した安寿ミラ。好評を受けて、シリーズ2作目とも言うべき『la vie d’amour2016 〜シャンソンに誘われて〜』が、いよいよ明日、12月2日に幕を開ける。(4日まで。青山 草月ホール)
キャッチコピーの「錆色の魅惑の声」で、再び挑むシャンソンの世界。そのコンサートにかける想いを安寿ミラと演出を手がける児玉明子に話してもらった。

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 安寿ミラ・児玉明子

現実にお客さんが観たらという客観的な視点

──児玉さんは宝塚時代に安寿さんとの接点は?
児玉 私が歌劇団に入ったときは、もう退団されていたので、観客の立場でしか知らないんです。宝塚は子供時代に1度観ていて、それ以来初めてちゃんと観た公演が、『ヴェネチアの紋章/ジャンクション24』だったんです。そのとき、ヴェネチアで死んだ人が、幕間をはさんでショーになったらスーツ姿で出てきて(笑)。この繋がりはなんなんだろうと、ずっとわからないままでいたら、そのうちラインダンスになって、「ああ、意味はないんだ」と(笑)。
安寿 面白い(笑)。
──昨年の『la vie d’amour2016』を一緒に作られていかがでした?
児玉 とても楽しかったです。それにすごく勉強になりました。
安寿 えー? 
児玉 私にない想像力や、一番感じたのは、現実にこれをお客さんが観たらどうなんだろうという客観的な視点で。
安寿 客観視はすごくしますね。自分のショー(『ダンスアクトFEMALE』)をずっと作ってきましたし、出演者のほうがお客さんの立場とかわかる部分があるんですよね。
──第1部のほうのドラマですが、昨年の三角関係のアイデアも安寿さんからだったそうですね。
安寿 去年は洋介(佐藤)くんと、今年も出てくれる(中塚)皓平くんの2人を生かそうと思ったんです。せっかくこんな素敵な男性ダンサーが2人揃うのだから、私が絡むより2人を絡ませるほうが妖しさが出るかもしれないと。それが受けまして(笑)。
児玉 受けましたね(笑)。
安寿 男と女はありがちだし、その前の『FEMALE』でも洋介とはさんざん踊っていたので、私自身も男同士が見たいなと思って。
──素敵な男性2人のデュエットとかは、男役経験者ならではの発想でもありますね。
安寿 (笑)綺麗な2人でしたでしょ? それに私が嫉妬するというのは、自分でもすごく面白いなと思いました。
──それを受けて児玉さんが具体化していったのですね。
安寿 すごかったですよ。私がプロデューサーと音楽監督にそういう話をしているそばで、ここで椅子を使おうとか、ばーっとメモを書き出していって。早いんです! 
児玉 出ないときは出ないんですけど、そのときはどんどんイメージが溢れてきて、次々に出てくるので、書かないと忘れてしまうと思って(笑)。

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一緒にものを作っていくうえで面白い人

──具体的にどんなことを思いつくのですか?
児玉 あの話で一番大事なのは、男性2人は喋らないけれど物語を進めていかないといけない。ですから女性が不自然じゃなく喋りながら物語を進めていく。そのために女性のシチュエーションが重要だなと。お金持ちで年下の夫に不安があって、浮気されるんじゃないかと思っていて、そういう人ならどういう行動に出るのか、その人の生きている環境などが具体的に浮かんでくるんです。
安寿 最後の結末も、私が考えたのとはまったく違う結末を持ってこられて、「あ、そっちのほうが絶対いいですね!」と。私の考えは女性が死ぬ形だったんです。でも「いや、相手を殺すほうがいいと思います」と。確かにそのほうがフランス的なんです。
──イメージが共有しやすかったわけですね?
安寿 一緒にものを作っていくうえで、これだけ面白い人はそうはいないなと思いました。すごく触発されて楽しかったです。ずっとメールで歌詞などもやりとりして。そういう私の発想を否定する人だとやりにくいし、全部受け入れてくれるとまた逆につまらないし。有り難いことに、受け入れてくれたうえで、これはどうですかと提示してくれるので。
──そういう作業留学経験も大きいですか?
児玉 それはありますね。留学前は色々用意してしまうほうだったんです。先にイメージを作って、お願いしますとスタッフや出演者の方に頼んでいました。でもそのやり方だと、作品限界が自分の中で止まってしまうんです。せっかく沢山の方と一緒に作れて、初めましての方も沢山いるなかで作る。そして自分だけのものではないので。カナダに行ったとき、色々な人が長い時間をかけて作っているのを見て、ものを作ることは色々な可能性を取り入れることだと学びました。沢山の人がアイデアを持ち寄るから、演出としてそれをまとめるのにすごく大変なこともありますが、でもそのほうが可能性が広がるんです。
安寿 そう思います。人それぞれ考えを持っている。そういう作り方だったから前回は作る過程もとても楽しかったんです。

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好きなシチュエーションが病院とか裏切りとか(笑)

──今回はドラマの部分は、シャンソンの「100万本のバラ」をモチーフにするそうですが。
安寿 「100万本のバラ」は絵描きが女優に恋をして、100万本のバラを贈る。でも女優は次の街へ行って、絵描きは取り残されるという話ですけど、その続きで相当ブラックですし、フランス女性の良いところも悪いところも前回よりさらに入ってます(笑)。
児玉 前回よりヘビーな内容です。でもそれを唐突に感じさせないように、歌って演じる安寿さんはとても大変だと思います。 
──そういう女性像はフランス好きの安寿さんの実感だそうですね。
安寿 フランス女性って、恋愛にしても生き方にしても、とにかく半端ないですし、強さは世界一だと思います(笑)。欲しいものは絶対手に入れるし。
児玉 私は留学先がフランス語圏のカナダのケベック州だったんですけど、そこではそんな強い女性というイメージがないんです。でもパリに行くと安寿さんが言うイメージはあります。今回の女性は具体的に言うならピアフかな?
安寿 ピアフより強いかも。
──そのイメージは安寿さんと重なる部分は?
安寿 (笑)私はここまではしないと思う。
児玉 違うからやりたいんでしょうね。
安寿 そうかもしれない。できないからやってみたい。
児玉 好きなシチュエーションを伺ったら、病院とか裏切りとか出てきて(笑)。
安寿 暗いことばっかり言ってましたね(笑)。それでおまかせしていたらアル中の女性になったんです(笑)。でも、ファンの方たちからは、「とうとう来ましたね」「やりましたね」というリアクションが多くて。なんなんでしょうね(笑)。

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2部の最初の曲は王道でお客さまに乗ってもらう

──今回出てくる曲は前回と違うものになるそうですね。
安寿 全部新しい曲です。本当にシャンソンって素敵な曲が多いんです。選びきれないくらいあるので。
──児玉さんは、改めて今回シャンソンと向き合っている面白さは?
児玉 宝塚では出せないようなドロドロしたところを出せるのが面白いですね。それに2回目というので色々探していくと、「あ、こんな曲もある!」という発見がすごくあって。
安寿 こういう面白い曲があるというのを、おこがましいですけど、もっともっとお客さまに教えてさしあげたくなる。そのへんのセレクトが児玉さんとはうまく合うんです。
──シャンソンにとくに惹かれる部分というのは?
児玉 私はフランス語をずっと続けていて、わかってくるとシャンソンの原詞が読めるんです。そうすると余計深さとかに惹かれますね。
安寿 私もやろうかな。ちゃんと原語で歌えれば楽しいでしょうね。
児玉 今でも発音、綺麗ですよ。
安寿 「パリの空の下」を8小節くらいだけ去年歌ったんですよね。いつかそれを全部歌うのを目標にして。
児玉 「愛の讃歌」とか原詞も似合うと思いますよ。
安寿 すごく習いたくなってきた(笑)。

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──こういう作品を手がけると、ショーをもっと作りたくなりませんか?
児玉 なりますね。原作ものの舞台を多く作っていますと、とらわれないで自由に作れるものをやってみたくなります。自由と言ってももちろんテーマとか物語とか、ベースに流れるものはあるというような。
安寿 ストーリーのあるショーっていいですよね。私もそういうの好きだから。
──今回の第2部のテーマ的なものは?
安寿 今年はフランスのジタンのイメージです。そのテイストで、知らない曲から始めようと思っていたんですけど、あるテレビ番組のあるシャンソンのライブでお客さまが乗っている姿を見て、やっぱりお客さまが乗りやすいものがいいなと。ですから最初の曲は王道でいきたいと言って変えてもらったんです。格好はジタンですが王道のシャンソンからはじめたいと。
児玉 そういう意見をどんどん言ってもらうのは、私としてもウエルカムなんです。安寿さんの経験に助けられるというか、選択に迷ったとき選んでくれたり。
安寿 勘なんですけどね(笑)。お客さまありきで、お客さまの観たいもの、聞きたいものはなんだろうと考えるので。ショーの頭の曲は、絶対に聞き覚えのあるもので始めたほうがいいなと思ったんです。

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可愛さと厳しさが安寿さんの魅力

──歌手としての安寿さんの魅力というのは?
安寿 歌手なんて言わないでください。シャンソン協会に怒られますよ(笑)。
児玉 女優さんだからいいんだと思うんです。シャンソンの1曲に詰まっているドラマを表現できる。私は美輪明宏さんが好きで、高校生の頃、渋谷にあったジァンジァンへも聴きに行ってたんです。その時、美輪さんの前に、まだ有名じゃないシャンソン歌手の方が歌うのですが、声が良いとか歌がうまい歌手の方もいるんですけど、美輪さんとは説得力が違うんです。
安寿 そういう説得力の違いは、シャンソンははっきり出ますよね。年齢でもないし、歌のうまさとも違う。あれは不思議だなと思います。すごいなと思った人は他に何を歌っているのか気になるし、聴きたくなる。
──その人そのものに惹かれる感じになるのでしょうね。
安寿 個人的にも興味を持つような感じになりますね。
児玉 だからピアフには惹かれるんだと思います。それにジャンヌ・モローとか、フランスの女優といえばアヌーク・エーメとか、何とも言えない魅力ですよね。女優さんが歌うのも好きなんです。
安寿 アヌーク・エーメは「男と女」ですね。すごく綺麗で素敵ですよね。歌の中に匂いを感じます。

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──宝塚時代には接点のなかったお二人ですが、一緒に仕事して改めての感想は?
児玉 安寿さんは年上なのに可愛いらしい方だなと。仕事はとても厳しい方だと思うので、いい意味で緊張感もあるのですが、それだけだとしんどいので、とても可愛い部分があるのでリラックスできるというか。
安寿 「可愛い」だけ太字で書いてください(笑)。
──もの作りへの厳しさがあるから、ここまで続けてこられたのでしょうね。
安寿 『FEMALE』を13回も続けてこれたのは、それがあるからかもしれませんね。
児玉 そして、これは違うという場合に、ただの否定ではなく、だったらこうしようという、つねに前向きな提案があるんです。
──そんなお二人に最後に意気込みを。
児玉 幸せなことにまた2回目をさせていただけるのは、前回観てくださったお客さまのおかげです。その方たちに喜んでいただき、いい意味で裏切れるような舞台にしたいと思っています。
安寿 すごく楽しみにしてくださっているという声が沢山聞こえてきて、ちょっとプレッシャーなのですが(笑)。でも一番楽しみにしているのが私だと思いますので、去年同様、それ以上に面白い舞台を観ていただけると思います。楽しみにしていらしてください。
 

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 安寿ミラ・児玉明子

あんじゅみら○長崎県出身。1980年に宝塚歌劇団で初舞台を踏み、92年花組トップスターに。95年『哀しみのコルドバ』『メガヴィジョン』で退団。女優として舞台を中心に活躍中。「ANJU」の名で自身のダンスアクト『FEMALE』の構成・演出をはじめ、宝塚歌劇団など舞台の振付を数多く手がけている。主な出演舞台は『グリークス』『マクベス』『アルジャーノンに花束を』『タイタニック』『グランドホテル』など。

こだまあきこ○東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業。在学中から宝塚歌劇団の演出助手となり、98年に宝塚バウホール花組公演『Endless Love』で演出家デビュー。10年に文化庁の新進芸術家海外研修制度でカナダへ留学。13年5月に宝塚歌劇団を退団。以来、『女海賊ビアンカ』、『La Vie―彼女が描く、絵の世界』、ライブ・スペクタクル『NARUTO―ナルト―』、『la vie d’amour〜シャンソンに誘われて〜、舞台『GOKU』、ライブ・ファンタジー『FAIRY TAIL』、VOCE CONCERTO『GALAXY DREAM』など。



〈公演情報〉
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『la vie d’amour 2016』
〜シャンソンに誘われて〜
監修◇酒井澄夫 
構成・演出◇児玉明子
出演◇安寿ミラ/神谷直樹 中塚皓平
●12/2〜4◎草月ホール
〈料金〉8,800円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799(平日11:00〜18:00、土日祝10:00〜18:00)
http://www.kyodotokyo.com/la_vie_d'_amour2016





【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】




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シャンソン・コンサート第2弾『la vie d’amour2016 〜シャンソンに誘われて〜』安寿ミラ インタビュー

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昨年11月、長いキャリアの中でも初めてというシャンソン・コンサート『la vie d’amour』に挑戦した安寿ミラ。好評を受けて、シリーズ2作目とも言うべき『la vie d’amour2016 〜シャンソンに誘われて〜』を、今年12月2日から4日まで青山の草月ホールで上演することになった。

出身の宝塚歌劇団で身につけたパリの香りとエレガンスは、シャンソンに世界によく似合う。キャッチコピーの「錆色の魅惑の声」で、再び挑むシャンソンの世界。そのコンサートにかける想いを安寿ミラに聞いた「えんぶ」11月号の記事を別バージョンの写真とともにご紹介。

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人間のドラマが描かれている曲ばかり

──昨年のコンサートは、1部がドラマ仕立て、2部がショーという構成で変化もあり、観ごたえがありました。
嬉しいことに観てくださったお客様にも面白かったと言っていただきました。1部の物語もシャンソンの世界だからこそ出来上がったようなもので、ちょっと大人のドロドロの愛の話でしたが、演じていても楽しかったです。
──シャンソンならではの苦みもある話でしたね。
歌詞を変えたりせずに、そのまま全部あの話にあてはまったのがシャンソンのすごさですね。人間のドラマが描かれている曲ばかりで、まさにシャンソンの持つ魔力だなと思いました。
──そして2部のショーで一気に楽しく華やかな世界になりました。
お客様をドロドロのまま帰すわけにはいかないので(笑)。ダンスアクトの『FEMALE』シリーズもそうなのですが、お客様には最終的には笑顔になって帰っていただきたいという思いがあって。私が宝塚出身だからかもしれませんが、劇場では現実を忘れていただきたいと思っているんです。
──今年の劇中ドラマはどうなりますか?
演出の児玉(明子)さんが相当おもしろい物語を考えてくれています。フランス女性の強さとか激しさとか甘さとか、全部がミックスしたようなテイストなんですが、児玉さんはカナダに留学していた経験もあるので、それが生きていると思います。ドラマのモチーフになる曲は「百万本のバラ」で、あの曲だけでも十分に物語が成立するのですが、それを裏切って、最後に「そうなんだ!」というものになると思います。

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声だけで人間とか人生が演じられるすごさ

──今年は何曲くらい歌うことになりますか?
1部2部合わせて全部で22、23曲くらいになります。昨年と違う曲ばかりですからそれだけでも覚えるのに大変なのですが、シャンソンは1曲1曲にドラマがありますから、すごくエネルギーを取られるんです。いわば芝居を20何本やるようなもので、1公演終わるとぐったりという状態で、ダンス公演よりきついですね。
──色々な人生を生きるということですね。
でもそのぶん、シャンソン歌手の人って、すごく楽しい職業なんだろうなと思うんです。芝居ではなく声だけで人間とか人生が演じられる。聴く方はその3分間で世界を見るわけじゃないですか。私もこのシリーズのおかげで、声だけで歌だけで演じる面白さが、少しだけわかった気がするのでよかったなと思います。
──それだけに年輪とか経験がそのまま映し出される世界なのでしょうね。
ジュリエット・グレコさん、あの方の公演を聴きに行ったら、歌っているというより喋っているんです。ピアノにつかまってずっと喋っているだけなんですが、それが素晴らしくて、彼女の人生が伝わってきて、これがシャンソンなんだと思いました。私はエディット・ピアフを演じたことでシャンソンと出会ったのですが、あの公演がなかったら、多分出会っていなかった。でも今はこうしてコンサートで色々な曲に出会えて、大嫌いだった自分の声も(笑)シャンソンだったらそんなに悪くないじゃない?と思えるので、有り難いです。今年もまたこうして、シャンソンへの挑戦をさせていただけるのですから、素敵な世界をお届けできるようにがんばります。

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あんじゅみら○長崎県出身。1980年に宝塚歌劇団で初舞台を踏み、92年花組トップスターに。95年『哀しみのコルドバ』『メガヴィジョン』で退団。女優として舞台を中心に活躍中。「ANJU」の名で自身のダンスアクト『FEMALE』の構成・演出をはじめ、宝塚歌劇団など舞台の振付を数多く手がけている。主な出演舞台は『グリークス』『マクベス』『アルジャーノンに花束を』『タイタニック』『グランドホテル』など。

※構成・演出の児玉明子と安寿ミラの対談も近日公開します。お楽しみに! 


〈公演情報〉
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『la vie d’amour 2016』
〜シャンソンに誘われて〜
監修◇酒井澄夫 
構成・演出◇児玉明子
出演◇安寿ミラ/神谷直樹 中塚皓平
●12/2〜4◎草月ホール
〈料金〉8,800円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799(平日11:00〜18:00、土日祝10:00〜18:00)
〈公式HP〉http://www.kyodotokyo.com/d-amore





【取材・文/吉田ユキ 撮影/安川啓太】




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