えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。


ゲストに大和悠河『SWAN2017』

インタビュー

あの「ファミリー」が2倍になって帰ってくる!ミュージカル『アダムス・ファミリー』真琴つばさ・壮一帆 インタビュー

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ゴシックテイストのブラックユーモアに溢れたミュージカルとして、2014年の本邦初演が賞賛を集めたブロードウェイミュージカル『アダムス・ファミリー』。この舞台の再演が、日本版演出を担う白井晃が芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場で、10月28日から上演される。(11/12まで。その後、大阪、富山公演あり)
 
アメリカを代表する漫画家チャールズ・アダムス(1912〜1988)の一コマ漫画として世に出た『アダムス・ファミリー』は、その個性豊かなキャラクターが絶大な人気を博し、テレビドラマ、アニメ、映画と、多彩なメディアに進出、世界的に大ヒットを飛ばしてきた。そんな作品がブロードウェイミュージカルになったのは、2010年。『ジャージー・ボーイズ』のマーシャル・ブリックマン&リック・エリスの台本、『ビッグ・フィッシュ』のアンドリュー・リッパの作詞・作曲で、大評判となり、現在も世界各地で上演され続けている。
 
その作品の本邦初演で、アダムス一家の母親モーティシアを演じ、キャラクターにピッタリ! と喝采を浴びた真琴つばさと、今回の再演版で同じモーティシアをWキャストで演じる壮一帆が、ハロウィン・シーズンに挑むユニークなお化け一家のミュージカルへの意気込み、そして宝塚時代のことなどを交えて、語り合ってくれた「えんぶ10月号」の記事を別バージョンの写真とともにご紹介する。

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一見普通じゃない家族の普通の物語

──『アダムス・ファミリー』待望の再演ということで、まず初演のオリジナルキャストである真琴さんから、作品の魅力について教えてください。
真琴 一見普通じゃない家族の、普通の物語というところですね。役柄としては「おばけの一家」ではあるのですが、自分たちは全く普通にと言いますか、自分たちのルールに乗っ取って暮らしている。その「家族円満」のルールが、ちょっとしたきっかけで崩されることに対する恐怖感が、ブラックな笑いの中に描かれている作品です。
──壮さんは作品についてはどんな印象を?
 映画を観て思ったのは、ある程度のレベルを越した「普通」がシュールなんだなということでした。例えば電気ショックを与えて喜んでいたりなど、良い意味で最高に馬鹿馬鹿しくて、笑える。そのシュールさが良いなと。
──そんな作品の中で、演じるモーティシア役の魅力については?
真琴 まず私は、モーティシア役でやっと、自分の声質や声の低さなど地のままで活かせる役柄に巡り合えたので、それはすごく助かったこと、そして笑顔があまりない役柄なのが嬉しかったですね。私、笑顔がすごく苦手で。
 えぇ? そうですか?
真琴 「世界は私のものよ!」という感じの、ほくそ笑むような笑顔は大丈夫なんだけど(笑)。だから、そういう意味でも、すごく自分として役柄にフィットしたという思い出が強いです。そして、モーティシアは母として、妻として、女として、という3つの側面が描かれているのが魅力的な役で、その女心の部分が、初演ではもう少し出せたのではないかと今にして残念に思っているので、再演に向けてこの4年で自分がどれくらい進歩しているか、自分自身も楽しみにしています。
 私はお稽古場でマミさん(真琴)が思われている女心が、どんなものなのか拝見するのがまずとても楽しみです。きっと「元男役」の方々が女優として活動する時、超えるべきハードルがあると思うんです。それを同じ稽古場でマミさんから学び、感じることによって、自分が今後進んでいくべき道程の指針にもなるだろうと思っています。役柄としてはマミさんがおっしゃった通り、私も女心とプラス母性も課題なので、それをどう埋めていくかなのですが。フライヤーの扮装撮影の時に、演出の白井晃さんがいらしてくださって、事細かに指示を出してくださったんです。「もっとイッちゃった眼をして」とか。そこからもう演出を受けはじめたような気分になれたので、更に稽古が楽しみになっています。わからないなりに投げられたボールをガンガン打ち返したいと思っています。
真琴 私の写真はまだ手さぐりの時のものなの。だから、この写真よりはずいぶん役に対しての踏み込みも変わってはいるんですけど、でも、このフライヤーは皆さんに強い印象を持って頂けていたようで、実際舞台をご覧になっていない方々もフライヤーを覚えていてくださって、「『アダムス〜』再演するんだって?」と、たくさんの方から言って頂けるので、インパクトは残せたのかなと。
 私もこのフライヤー覚えていました。「面白そうだな」と思いましたから。
真琴 それは役柄のキャラクターや、演じた方々の個性がこの写真の中にギュッと入っているからこそだと思うし、ミュージカルやお芝居って、実際に観に行った時間だけではなく、観に行くまでのワクワクした時間も楽しんで頂けるものなので、初演をご覧になってくださった方はもちろん、フライヤーで興味を持ってくださった方たちにも再演の舞台をお届けできることが嬉しいです。特に今回、壮ちゃんとWキャストということで、私にとっては一度やったものだから、演じることに正解はないといっても、どうしてもそれが出てくると思うんです。でも壮モーティシアを客観的に観られることによって、また新たな発見があると思うので、それはすごく楽しみですね。壮ちゃんの感じるままに新しいモーティシアをやってくれたら良いと思う。
 そう言って頂けるのは本当にありがたいです。感謝して臨みたいです。

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「縁」を感じる2人で取り組むWキャストの醍醐味

──宝塚時代のお互いの印象はどんなものでしたか?
 私にとってマミさんはもう大スターです。私はファン時代、真琴さん、愛華みれさん、紫吹淳さん、匠ひびきさん、初風緑さん等々、素晴らしい方々が揃っていた黄金時代の花組にハマっていたこともあって、初舞台でご一緒できたのが信じられないくらいでした。その時は真琴さんは、もう月組の二番手スターさんになっていらっしゃいましたが、下級生の面倒もすごくみてくださって、うちの期では「センスも素敵、人柄も素敵!」と大人気でした!
真琴 本当に?(笑)
 本当です! そんな真琴さんと、今回Wキャストで作品に取り組めるのは、ご縁なのかなと感じます。だからこそ物怖じすることなくつとめたいです。
真琴 グイグイ来て!(笑)私はね、宝塚100周年の時にNHKの生中継番組で、壮ちゃんが黒燕尾のダンスを踊っているのを見て「あぁ、自慢できる後輩だ」と思ったのが何より印象に強いの。佇まいと品格があって。でもその後ご飯を食べる機会があったら、ざっくばらんで身近な感じがしたし、その上に明るさもあるから良いな! って。
──お2人とも、宝塚時代に『ミー&マイガール』のジャッキーを演じていますね。
 綺麗だった〜! マミさんのジャッキー! 声はとっても低かったですけど(笑)。
真琴 今のほうが低いけどね(笑)。でもそうか、ジャッキーね、共通点あるのね。そんな2人が、また同じ役を演じるので、「あのファミリーが帰ってくる」プラス壮ちゃんと私とで「2倍になって帰ってくる」を、お客様に楽しんで頂けるように頑張りましょう! 中華街にも行きたいね。ちょうどハロウィンだから一家でも歩きたいし!
 良いですね! ぜひ皆様も、KAAT神奈川芸術劇場に2回、観にお越しください!

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まことつばさ○東京都出身。85年宝塚歌劇団に入団。97年月組トップスターに。01年惜しまれつつ退団。以後は、コンサートやショー、ストレートプレイ、ミュージカルなどの舞台や、ドラマ、ラジオなどで女優として幅広く活躍。またバラエティ番組でも人気を博している。近年の主な舞台に、15年『BLOOD BROTHERS』、16年『The Sparkling Voice─10人の貴公子たち─』、17年『あさひなぐ』『にんじん』などがある。

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そうかずほ○兵庫県出身。96年宝塚歌劇団に入団。実力派の男役として頭角を現し、12年雪組トップスターに。14年惜しまれつつ宝塚を退団後、コンサート活動などを経て、16年ミュージカル『エドウィン・ドルードの謎』で本格的に女優活動をスタート。以後、順調にキャリアを重ねている。近年の主な舞台に、16年『Honganji〜リターンズ〜』『扉の向こう側』、17年『細雪』『魔都夜曲』MUSICAL『WILDe BEAUTY〜オスカー・ワイルド、或いは幸せの王子〜』などがある。


〈公演情報〉
アダムスPR
PARCO Produce ブロードウェイミュージカル
『アダムス・ファミリー』
台本◇マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
作詞・作曲◇アンドリュー・リッパ 
原案・原作◇チャールズ・アダムス
翻訳◇目黒条/白井晃
訳詞◇森雪之丞 
演出◇白井晃
出演◇橋本さとし 真琴つばさ/壮一帆(Wキャスト)  昆夏美 村井良大
樹里咲穂 戸井勝海 澤魁士  
庄司ゆらの 梅沢昌代  今井清隆 他 
●10/28〜11/12◎KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉 
〈料金〉S席12,000円 A席9,000円 U-25チケット6,000円(全席指定・税込) 
大阪、富山公演有り
〈お問い合わせ〉パルコステージ 03-3477-5858




【取材・文/橘涼香  撮影/岩田えり】


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オスカー・ワイルドの人生を描くMUSICAL『WILDe BEAUTY』 斉藤恒芳、壮一帆、大月さゆインタビュー

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男性エンターテイメント集団として活躍を続けるDIAMOND☆DOGS(D☆D)が、結成15周年を迎えた記念プロジェクトの一環として、MUSICAL『WILDe BEAUTY〜オスカー・ワイルド、或いは幸せの王子〜』を、天王洲銀河劇場で上演する(13日〜18日まで)。
 
MUSICAL『WILDe BEAUTY〜オスカー・ワイルド、或いは幸せの王子』は、「サロメ」「ドリアン・グレイの肖像」「幸せの王子」などで知られるイギリスの劇作家・小説家・コラムニストのオスカー・ワイルドの人生を、彼をめぐる人々との関わりの中から照射していくミュージカル作品。
脚本・作詞・演出を荻田浩一、音楽は斉藤恒芳で、08年に初演されたものを、今回は東山義久率いるD☆Dのメンバーと、壮一帆、小野妃香里、大月さゆという女優陣による新たなカンパニーに当てはめて、大幅に改稿。2017年版の『WILDe BEAUTY』として上演する。
 
そんな舞台に出演する壮一帆、大月さゆ、作曲家の斉藤恒芳が集い、新たな『WILDe BEAUTY』に取り組む思い、斉藤メロディの魅力、更に宝塚時代の互いの思い出などを語り合った。

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大月さゆ、 斉藤恒芳、壮一帆

初演とはびっくりするくらい違う『WILDe BEAUTY』

──まず音楽の話から伺いたいのですが、08年の初演から今回の再演に当たって、音楽的な変化などはありますか?
斉藤 ナンバーは前回の初演と同じものをほぼ使っているのですが、とにかく物語が初演とはびっくりするくらい違っています。初演はとてもシリアスで、1幕の頭の序曲は女性の声だけだったり、2幕のはじまりも喘息の喘ぎ声だけだったり。
 あれも私は好きだったんですけれど、今回は違うのですね。
斉藤 そう。色々仕掛けがあった中でかなりシリアスに作っていたから。でも今回はキャストが大きく入れ替わっていて、曲もバラバラにして曲順を変えたら、同じ曲でもずいぶん印象が違ってきて、とても面白いです。すごくシリアスに書いた曲が全くシリアスでなくなっていたり、逆にかなり軽く歌う曲だったものが、とてもしっかり歌う曲になっていたりするので、全く新しい感触として、観て頂けるのではないかと思います。
──その中で、お二人の演じる役柄について話して頂きたいのですが、それぞれ繋がりがあるのかなと感じさせるような何役かを演じるのですね。
 私は「死神あるいは天使」という役どころがメインで、それは咲山類さんが演じる臨終の床にいるオスカー・ワイルドの深層心理の中に登場してきて、色々なことを彼に囁きかける存在です。初演とは役柄の設定が全く違うので、別物として捉えていますが、咲山さんの現実のオスカー・ワイルドに対して、やはり深層心理の中に登場してくる東山義久さんが演じる虚像の象徴としてのオスカー・ワイルドがいて、私と東山さんの対話がすごく多いんです。それが今、シリアスに囁くというよりは、荻田先生の演出で、東山さんと私が、起きた事柄を軽くというのではないのですが、面白がっているという形になっていて、咲山さんと3人のバランスを計っているという段階です。
作品自体が、ただのオスカー・ワイルドの一生を伝記的に描くのではなくて、彼が人生で出会った人たちとどう付き合って、何を感じて、どう心情が変化していったのか、というところが大きなテーマなのではないかなと、稽古の中で感じているので、更に私が物語を引っ張ると言いますか、先へ先へと誘導するような感じになればいいなと思っています。
ただ、2幕になると内容ももう少しシリアスになっていきますし、私もオスカー・ワイルドの恋人であったり、妻であったりというポジションも演じたりもしますので、それを踏まえた上で、死神としての自分がどういう居方をするのか、それを考えているところです。ガツンとシリアスにいくのか、あるいはどこかシュールな無邪気さが逆に怖いという感じを出すのか、そのあたりはこれから荻田先生とのご相談の中で固まってくると思います。結果的にどうなるかは、稽古の中で詰めていきたいです。

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大月
 私はオスカー・ワイルドと出会って、お互いに刺激し、刺激されるという役割りで、1幕で演じる女優のリリー・ラングトリーも、2幕のメイベル・ビアズリーも実在の人物です。実在の人物を演じる時は、資料を見たり、本を読んだりしますけれども、どうしても史実に縛られて逆に役の奥が見えにくくなったりもするんですね。ただ、台本だけですと結構シリアスな台詞が多かったりもするので、自分が調べたものと合わせながらその台詞を読むと、荻田先生の書かれた意図がまた違う意味に受け取れたりもして、それが結構面白いです。なるべく自分が事前に入れていた知識は一度壊して、オスカー・ワイルドという、流行最先端の人で、皆を刺激する存在だった人のはっちゃけている部分とか、想像をかき立てられる部分を表現したいと思っています。
 荻田先生は現代に例えることが多いよね。「こういうオバサンいるでしょ!」とか(笑)。
大月 そうなんです!
 「きっとこの時代にもいたはずだよ!」って(笑)。
大月 だから、オスカー・ワイルドは、彼の文章より話し方も発想ももっと面白い人のはず!という流れになっているので、リリー・ラングトリーもかなり面白いことになっていると思います(笑)。でもまだ2幕には入っていないので、メイベル・ビアズリ—がどんな人になるのかは未知の世界です。ミュージカルの作り方というのは、全体をザッと通してから細かく返していく、振付もバラバラについていくという形が多いのですが、荻田先生は、1つ1つの場面を細かくじっくり織り上げていって、振付もその1場面ずつ付けていく贅沢な作り方なので。
──メイベルは弟の画家オーブリー・ビアズリーを溺愛していて、オスカー・ワイルドに売り込みに行く姉の役ですね。台本を拝見すると、かなり色濃い感じのインパクトのある役柄ですが。
大月 それがどんな風になっていくのか、私も楽しみでもあり、ちょっと怖くもありというところです。

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音楽に負けない!と気合が入る斉藤メロディ

──ナンバーは初演のものを多く踏襲しているということでしたが、壮さん大月さんという新しい方たちが歌うことで、また新たな工夫なども?
斉藤 オスカー・ワイルドは耽美主義者だと言われていますし、周りにいる人たちも皆、美にこだわる人たちで、でも、そのこだわりが強いあまりに、ちょっと引いて見ると滑稽にも見えるんですね。ですから、美に対する完璧さと、その完璧さ故にちょっと馬鹿馬鹿しい部分が共存していて欲しいのですが。そこがなかなか難しいんです。死神が壮さんなので、スッと立っているだけでも威厳があるのですが、どこかその中にも滑稽さがあることによって、人生の哀れな部分が出たらいいなと。音楽でそこを後押しすると言いますか、一生懸命歌っているんだけど、ちょっとリズムを馬鹿らしい感じにしたりして、両面が出るようにと思っています。
──そんな楽曲を歌っていていかがですか?
 私は宝塚にいる頃から斉藤先生の曲が大好きで。『タカラヅカ・ドリーム・キングダム』という作品では、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたり、秒針の音が聞こえてきたり、あのシュールな感じが本当に好きでした。
大月 素敵でした!
 そうなんです。それが、私にとっては宝塚時代最後の荻田先生の作品となった『タランテラ』では、斉藤先生の曲の場面に出ていなくて、歌うことができなかった事がとても心残りだったので、今回、斉藤先生の曲をたくさん歌わせて頂けるのがとても嬉しいです。私にとって久しぶりのミュージカル作品でもありますし、歌唱指導の福井さんもとても素晴らしいので、自分にとって5歩も6歩も先に行けるチャンスだ!と思って、今、ガンガン食らいついていっています。男役から女優への声のチェンジも、自分の中ではとても必要なことなのですが、それだけでなく歌唱そのものも、稽古で、また舞台が開いたら1回目よりも2回目と、千秋楽まで向上心を持って取り組んでいきたいです。先日、歌稽古の時に斉藤先生が「♭がいくつ付いているというのは、こういう意味なんです」と説明してくださったことがすごく勉強になりました。あぁ、だからキーが合わないから上げてください、下げてくださいと簡単に言ってはいけないんだな、と。音楽業界の方にとっては当たり前のことなのでしょうが、私にとってはすごく大きな収穫だったんです。だから今、貪欲に吸収したいと思っています。ただ、今回、私のために書いてくださったオリジナルの曲は、今まであった曲よりも、ずっとキーが低いんです!「あ、やっぱりそうか、私の声質はここなのか」って(笑)。だからそれは磨いていこうと思います。

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──それはやはり壮さんの魅力を引き出すために?
斉藤 やっぱりまだ男役のイメージが強いんですよね。
 まだ退団して3年ですから!(笑)
斉藤 凄味があって、カッコいい声を活かしたいなと。作曲をしている時って、五線紙に向かってどう書こうではなくて、壮一帆に曲を書くのであれば、頭の中で壮一帆が歌ってるんです。オーケストラの伴奏もすべてついて、そこで歌っているバーチャル壮一帆が見えていて、その歌声を書きとっていく。全部聴音している感じ。だから宝塚の人たちに曲を書いている時も、「ちょっとキーが高い」とか言われると、「いや、そんなはずはない」って(笑)。
 そうなんですね。私も臨時記号に負けない!(笑)歌いこなしてみせます!
斉藤 去年、宝塚でイシちゃん(轟悠)の舞台をやったんだけど。
 『双頭の鷲』ですよね?観たかったんです!
斉藤 その時イシちゃんが、作曲家が斉藤だと分かった途端に「負けない!」って思ったって(笑)。
 わかる〜!!
斉藤 「音楽には負けない!」って宣言された(笑)。
 曲が良すぎるから。如何にして歌いこなすか。
大月 本当に自分の曲にもワクワクするんですけれども、皆さんが歌っていらっしゃる曲、1曲1曲を聞いていてもワクワクしますよね。私が斉藤先生で一番覚えているのは、宝塚雪組のショー『ソロモンの指輪』の波のシーンで「これはいったい何拍子なの!?」という曲があって。
斉藤 羽山紀代美先生のシーンだよね?
大月 そうです!
斉藤 あれは、作曲するより前にもう衣装が決まっちゃっていたの。曲を聞いて、こんなイメージのセットでこんな衣装というのではなく、「この衣装でやります」とデザイン画を見せられたらフラメンコの衣装で。「スペイン風のフラメンコでお願いします」と言われて、そうこられるとちょっと逆らってみたくなって(笑)。
大月 「フラメンコっぽくしないぞ」と? 
斉藤 ちょうどその頃スペインに行っていて、タブラオとかでフラメンコをよく聞いていたから「最新のフラメンコって今までとは違うんです」と言って、「1、2、3、1、2、3、4の7拍目でスカートを蹴り上げるので、ここでアクセントが欲しいんです」と、羽山先生の前で踊って見せて(笑)。
 作曲家が振付家に、踊って見せたんですか?(笑)

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斉藤 爆笑されたけど「わかりました」って(笑)。
大月 (笑)だからすごくカッコいいシーンだったんですけど、リズムを掴むのに皆でかなり苦労しました。しかも群舞だったので。
 目に浮かぶ(笑)。
大月 でも、その意外性がカッコ良くて、中毒のようになる曲が"斉藤ワールド"なんです。今回も「幸せの王子」になるところが、それまでのメロディと全く違って、すごく印象に残ります。
斉藤 あれは燕のイメージなので、伴奏が半音でゆっくり下がってきて、燕が大きく旋回していく感覚。それまでが車輪のイメージでゴリゴリしたリズムのところに、スーッと。
 だから、印象的なんですね。
──先ほど壮さんの声の魅力の話がありましたが、大月さんについてはどうですか?
斉藤 彼女は声がキラキラしているし、子音がよく立って歌詞が聞きやすいので、そこを上手く使いたいなと。「私はリリー」っていうところも、長台詞だからところどころ歌う感じかな?と思っていたら、荻田先生が「全部歌にしたい」と言ったくらいだから。
大月 私もあれは台詞になると思っていたら、全部楽譜が来て!自己紹介から自分へのツッコミも全部歌っていて(笑)。
斉藤 役の面白さが音楽で表せるといいなと思ったし、とても上手に歌っているよ。アレンジも更に華やかになるからね。
大月 歌唱指導の方からも的確なアドヴァイスを頂いて、自分の可能性が更に広がる気持ちがしているのも嬉しいです。
壮 「こんな気持ちで」というような感覚的なものではなくて、「ここに当てて」という理論的な教え方をしてくださるので、すごくわかりやすいですね。そういう意味でも、今回たくさんのことを学ばせていただいています。
──荻田作品に音楽を書く上で、特に意識していることや、魅力などはいかがですか?
斉藤 荻田先生の素敵なところは、まず歌詞が良いし、更に音楽を理解して歌詞を入れてくれるので、そこが何よりも信頼できますね。ブレスと違うところに歌詞を入れる人って結構いて。音楽はここで止まって、ここでブレスしたいのに、歌詞が続いてしまってブレスができない、ということがままあるので。荻田先生はブレスのポイントや、メロディのアクセントに言葉が綺麗にハマるのが、楽しい点です。だから「曲先」と言って、まだ歌詞も何もないところにメロディを先に作って渡すという形の時にも、「大丈夫かな?」というような疑いの気持ちがないんです。また「詞先」と言って歌詞が先に書いてある時にも、「世界観だけ受け取ってくれれば、歌詞は無視してくれてかまわない」と言ってくれて、こちらが山あり谷ありのメロディを書くと、そこに新たに歌詞を入れてくれたりもするので。
 だから今回のM3「天国の門の前で」も歌詞が全く変わったんですね!台本に書いてあった歌詞と、楽譜を渡された時とが全然違う歌詞になっていました。
斉藤 「最初の方で壮が歌う楽曲だから、エンターテイメント性を入れて、こういう解釈で」と言われて書いた曲だから。

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深い縁のある3人が、荻田作品で集う

──そんな荻田先生の話も含めて、せっかくなので宝塚時代のことも伺いたいのですが。
大月 荻田先生と壮さんと私が最後にご一緒した作品が、『タランテラ』なんです。
 私が花組に組替えになる前の、雪組最後の作品でした。
大月 そう思うと、何か不思議なご縁だなと。
 またこうして荻田先生のもとに集まったわけですからね。
──宝塚時代には壮さんはどんな先輩でいらしたのですか?
大月 まんまです。
斉藤 まんま?(笑)
大月 このまんま。全然変わられていないです。
 それよく言われます。「全然変わらない」って(笑)。
大月 本当にサッパリしていて、裏表がない、嘘のない方で、下級生としては本当にありがたい存在でした。嘘がないって素敵なことだなと思うので。だから久しぶりのはずなんですけれども、全然久しぶりの気がしないです。よそよそしさがなくて、安心していられる。
 助走なく、いきなりパッとハマれるよね。でもこの間、改めて年齢を聞いたら、お姉さんになっていてびっくりした(笑)。宝塚では新進娘役だった頃だから。
──その頃の大月さんはどんな印象でしたか?
 宝塚の男役同士で、高校生の男子生徒が「女子で誰が可愛いか」と言い合うような感じで、娘役さんの誰がタイプか(笑)みたいなことを話す時があるんですけど、私は「なつき(大月の愛称)」って言ってました(笑)。
大月 私、壮さんとご一緒させて頂く時には、真っ白な純娘役の役柄が多かったので。
 新人公演で主役とかしていたものね。
大月 あとは、怪我をした壮さんに歌う看護婦とか。
 『さすらいの果てに』だね。でも『DAYTIME HUSTLER』の、過去の記憶の中で踊るシーンでは、最後に「帰って!」って言われた(爆笑)。
大月 ひどい〜!(笑)
 そう、ひどい!(笑)でもあの可愛いなっちゃんが良い女優さんになって。女優さんとしては先輩ですから。
大月 そんな!そんな!
──女優同士としての初共演ですね。
 刺激になります。彼女が宝塚を退団して、女優さんとしてどういう風に芸を磨いてきたのかというのを、この作品を通じて知ることもできますし、本当に共演できて良かったです。
──斉藤先生から女優としてのお二人に期待することなどは?
斉藤 2人とも感覚が若いのが良いですね。壮さんは稽古場でも主演女優然としたところが全くないし、D☆Dの皆と一緒になってワイワイと創っていて、雰囲気もとても良いので、期待しています。
大月 D☆Dの皆さんは気さくですよね。
 D☆Dさんも15周年だけど、なつきも15周年なんだよね。
斉藤 宝塚の初舞台から15年?
大月 そうです。芸歴15年になりました。
 もう同期がトップの世代だものね。明日海りおと、今年、望海風斗も。
斉藤 だいもん(望海)と同期なんだ。
 あと男役だと美弥るりか、凪七瑠海。
大月 七海ひろき、退団した夢咲ねねも。
 男役も女役も美形揃いだよね!
──皆さんの活躍も励みになりますね。
大月 はい、本当に!

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役者の妙が存分に感じられる楽しい作品

──では、改めて今回の作品『WILDe BEAUTY』を楽しみにしている方々に、意気込みとメッセージをお願いします。
大月 荻田先生のお芝居に出るのは『凍てついた明日』以来なので、10年ぶりくらいになります。その時もたくさんのことを教えて頂いたのですが、今回もこの短い期間でも、毎日がとても濃いなと感じているので、自分がちゃんとそれについて行って成長して、斉藤先生の音楽とこの作品を、自分の持っているものすべてで盛り上げていけるように頑張りたいと思います。
 最近改めて思うのは、芸事をやるというのは自分自身を知ることなんだなと。その中で、荻田先生は一緒に仕事をした人に対してすごく愛情を持たれる方で、その愛情の向こうにある、荻田先生独自のその人に対する解釈、人となりについて聞くのがとても好きで、それが刺激になって今日までやってきた気がします。ですから、今回のこの作品でも、自分自身の新たな一面を荻田先生によって引き出していただき、それを知ることですね。そして、これまでは1曲か2曲だった斉藤先生の楽曲に、今回はがっつりと取り組ませて頂くので、先ほども言いましたが、このチャンスをしっかりと掴んでいきたいと思います。
斉藤 初演をご覧になって、暗いミュージカルだと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、全然違って楽しいものに、役者の妙が存分に感じられる作品になっていますので、是非楽しみに劇場にいらしてください。

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大月さゆ、 斉藤恒芳、壮一帆

さいとうつねよし〇静岡県出身。7歳よりクラシックピアノ、9歳で作曲を始め、各コンクールで注目される。東京芸術大学音楽学部作曲科在学中の90年、ヴァイオリニスト葉加瀬太郎、ベーシスト竹下欣伸と“クライズラー&カンパニー”を結成。国内外だけでなく、国際的に活躍。96年解散後は、渡辺美里、石井竜也、中西圭三などのアーティストの編曲、プロデュースの傍らソロアルバム「リラクシング・ピアノ」をリリース。作曲家として、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』ロックオペラ『ハムレット』SHOW-ism 次悄腑罐ぅ奪函戮覆匹侶牴山據映画音楽、CM音楽、アニメ『仮面ライダーキバ』の音楽まで幅広く手がけている。99年、宝塚歌劇団宙組公演『激情』で文化庁芸術祭優秀賞を受賞。
 
そうかずほ○兵庫県出身。96年宝塚歌劇団に入団。12年、雪組トップスターに。14年『一夢庵風流記・前田慶次/My Dream TAKARAZUKA』で宝塚を退団。コンサート活動などを経て、16年『エドウィン・ドルードの謎』で本格的な女優活動をスタート。以後、舞台や映像で幅広く活躍中。出演舞台は、『Honganji〜リターンズ〜』『扉の向こう側』『Dramatic Musical Collection 2016』『細雪』音楽劇『魔都夜曲』など。10月にはミュージカル『アダムス・ファミリー』への出演が控えている。

おおつきさゆ〇石川県出身。03年『花の宝塚風土記/シニョール・ドン・ファン』宝塚歌劇団の初舞台を踏む。雪組に配属ののち、娘役として『堕天使の涙』イヴェット、『エリザベート』新人公演のエリザベート、『凍てついた明日−ボニー&クライドとの邂逅−』のボニー役などで活躍。10年、『ソルフェリーノの夜明け/Carnevale睡夢』で宝塚を退団。以後は女優としてミュージカルを中心に多彩な活躍を続けている。16年石川県能美市観光大使に就任。


〈公演情報〉
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DIAMOND☆DOGS 15TH ANNIVERSARY SERIES
MUSICAL『WILDe BEAUTY〜オスカー・ワイルド、或いは幸せの王子〜』
脚本・演出・作詞◇荻田浩一
音楽◇斉藤恒芳
出演◇東山義久、壮一帆
小野妃香里、大月さゆ
森新吾、小寺利光、中塚皓平、和田泰右、咲山類、TAKA
●9/13〜18◎天王洲 銀河劇場
〈料金〉S席 9,000円 A席 6,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉公演事務局 03-3492-5300 (平日14時〜18時)




【取材・文/橘涼香 撮影/安川啓太】



『SWAN 2017』


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芸能生活30周年記念コンサート The 30th Anniversary Stage 「This is My Love」を開催! えまおゆうインタビュー

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元宝塚歌劇団トップスターで、今年、芸能活動30周年を迎えたえまおゆうが、その記念コンサートThe 30th Anniversary Stage 「This is My Love」を、9月29日〜10月1日に開催する。

宝塚在団中は容姿端麗な男役であり、朗々とした歌声と芝居心で観客を酔わせていたえまおゆう。退団後もその演技力と歌唱力を生かして、ミュージカルやライブ活動を続けている。その30年間を振り返る、現時点での集大成的なステージになるという。
 
舞台は二部構成で、第一幕は芝居仕立ての「From Mum」(作:斎藤栄作、演出:川麻世)、第二幕はショーで「えまおゆうトーク&ライヴ」。宝塚OGの久路あかり、美翔かずき、ミュージカルの世界で活躍する小野田龍之介らが共演。さらにショーのゲストとして、同期で宙組トップスターだった姿月あさと、1期下で星組娘役トップを務めた白城あやか、ロックミュージシャンで音楽プロデューサーで俳優でもあるROLLYと、アコーディオン奏者の桑山哲也が、日替わりで出演するという豪華さだ。
このコンサートを前に、えまおゆうの想いと近況を語ってもらった。

えまおゆう_メインビジュアル
コンサートビジュアル

宝塚に入ってからの人生をドラマ仕立てで

──芸能生活30周年、おめでとうございます。
ありがとうございます。本当は、結婚退団が理想の辞め方という時代に育ったので、退団したらすぐ結婚するつもりでいたのですが、結局いまだに独身で(笑)、この仕事を続けています。
──その30年間を、このコンサートで皆さんに観ていただくわけですね。
そうですね。それに、私はこの9月17日で50歳になるんです。もう人生半世紀なので、それも含めて、色々な意味での記念にしたいなと。
──50歳ですか! 公演はその直後ですね。
はい。50歳を皆さんにも一緒に祝っていただこうと思ったので(笑)。
──コンサートの構成ですが、一幕と二幕になるのですね。
第一幕がドラマ仕立てで、第二幕はショーです。ドラマは斎藤栄作さんに書いて頂きました。
──斎藤栄作さんは、『familia 〜4月25日誕生の日〜』『Honganji』などの脚本を手がけていて、演出家としても知られています。
斎藤さんは宝塚の舞台スタッフをしていたこともあって、主宰する劇団POOL-5もよく観に行っていました。私の退団公演も進行スタッフで入っていたんです。そういう縁もあって、今回「書いてくれる?」と言ったら、引き受けてくれて。
──どんな物語になりますか?
私の宝塚に入ってからの人生を、あり得ない架空の設定の中にポンポンと入れていく形です。例えば母に私が言われた言葉とか、歌劇団にいるときの出来事などを題材に、エピソード的に綴っていって、それを6人の共演者とともに演じます。皆さんには何役もやっていただくことになると思いますが、私は私の役だけやります(笑)。
──演出は川麻世さんが担当されるそうですね。
そうなんです。麻世くんとは昔からの知り合いで、たまたま去年、声をかけていただいて『スパイス』という舞台に出たのですが、そのとき麻世くんと色々話していくうちに、この人、演出家の才能があるなと思ったんです。私の台詞なども「こうしたらいいんじゃないの」とか演出家の人と相談しながら、とてもわかりやすくアドバイスしてくれて。ですからぜひその才能を発揮してもらおうと思ってお願いしました。最初、オファーしたとき、「僕、出ないの?」と聞くから、「演出も演者もやって中途半端になってしまうと困るし、麻世くんには才能があるんだから、きちんと演出家デビューしてもらわないと。これを機会に演出家としてどんどん出ていってほしいから」と。でもそのあと、「ぶんちゃん(えまお)が出してくれないんだよ」と、色々なところで言ってるらしいです(笑)。
──楽しい方ですね。そして第二幕のショーではどんな歌を?
色々な曲を考えていますが、やはり宝塚の時の曲は欠かせないと思っています。とくに私にとって思い入れのある曲は、お客様も聴きたいのではないかと。
──たとえば『エリザベート TAKARAZUKA20周年 スペシャル・ガラ・コンサート』で歌った曲なども聴けるのでしょうか?
はい。たぶん歌うと思います。ゲストに同期の姿月あさとや、一期下の白城あやかがきてくれるので、そこでお聴かせできるかなと。
──それは豪華ですね。ショーの演出については?
全体の構成は、私、えまおゆうになります。そしてステージングを元月組の檀ひとみさんにお願いしています。檀さんはオールマイティーな方で、脚本や演出も手がけていらっしゃるので、色々な面で頼りにしています。

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ルドルフを演じると一気に
ワープする

──宝塚歌劇100周年のイベント以来、宝塚OGの方々との共演も増えていますね。
やはり宝塚出身というだけで、先輩後輩、学年に関係なく仲良くなれるというのが、宝塚だけのすごさだし、素晴らしさだと思います。改めて、本当に良いところだなと。在団中は、厳しいなキツイなと思うこともありましたが、今になってみると、言ってもらってよかったなということばかりです。
──だからこそ一致団結した舞台が作れたのでしょうね。『エリザベート・ガラコンサート』は、まさにその力に圧倒されました。
とくに星組バージョンに参加した私としては、星組の団結力を自慢したいです(笑)。ルドルフは下級生時代に演じた役でしたが、私はルドルフで嬉しかったですし、みんなでマリコさん(麻路さき)を盛り上げていこうという、星組ならではのパワーの凄さをひしひしと感じました。
──ルドルフは当たり役でしたね。トートとの銀橋のシーンは、やはり特別な思いがありましたか?
いつも当時に一気にワープしちゃうんです(笑)。実は去年、ちょっと自分の宝塚史みたいなライブを、初めて自分でプロデュースして、JZ Bratという所でやらせて頂いたのですが、あの曲になると自然に魂がそこにワープしてました。
──もともと成りきり型というか、芝居心では定評がありましたね。
ちょっと憑依体質みたいです(笑)。『殉情』の公演中は佐助になっていましたし、沖田総司(『峠の群像』)とか坂本竜馬(『猛き黄金の国』)とか、毎回その役そのものに変化している自分を感じながらやっていました。
──男気のある爽やかな二枚目がよく似合いました。
性格が男みたいなんですよ。男の人といるほうが楽だし、男友達が多いんです。みんな男同士みたいな関係で、色気がないんです(笑)。
──色々な意味で男役に向いていたのですね。
そう思います。このコンサートのために、周りの人に昔の思い出話など聞いたりしているのですが、先日、たまたま姉が亡くなった母からの手紙を見つけたそうなんです。姉は若い頃アメリカに留学していたのですが、その姉に母が送った手紙で、内容は、矢代の伯父(劇作家:矢代静一)に呼び出されて、私のことをあの子は宝塚に入れるべきだと言われたから、毎日、一生懸命牛乳を飲ませてますと書いてあったそうです。
──お母様の想いが伝わります。これまでの絆や出会いなどを振り返る良い機会にもなりますね。
在団中も退団してからも色々なことがありましたけど、周りの方たちのおかげでここまで来れたなと思います。今回の企画に協力して下さる方たちもそうですが、本当に有り難いなと思っています。

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103年続いている宝塚を背負っている責任感

──女優としてももう15年になりますね。今年の春のタクフェス公演『わらいのまち』では、かなり強烈な女性の役をパワフルに演じていて、その役者根性に感動しました。
あの公演では、作・演出の宅間(孝行)さんに稽古場で何度も泣かされました(笑)。宅間さんの中では、宝塚から思い切り外れてほしいという意図があったと思うのですが、人前でオナラとか下品なことを平気でする女性の役で、ダメ出しが「鼻クソの投げ方が違う」と。「そんなもの投げたことないですから」と言い返しました(笑)。
──泣かされながらも最後までやり切ったわけですね。
もし私が普通の女優だったら降りていたかもしれないんですけど、「宝塚のトップって、そんなに芝居ができないの?」と言われて、そこで吹っ切れましたね。「そうか、私が降りたら宝塚の他のトップスターが、みんなそうだと思われるんだ」と。「私は103年続いている宝塚を背負っているんだ」と。宝塚では1人が失敗したらみんなでその責任を取るんだと教えられてきましたから。
──投げ出すわけにはいかなかったんですね。
それは本当に思いました。でもあの経験で、もう何が来ても耐えられるだろうなという、わけのわからない自信はつきました(笑)。やっぱり、ああいう時の気持ちって、なかなか味わえるものではないので、これから何かのときに役に立つかもしれないと(笑)。人間としての引き出しは増えたかなというのはありますね。
──50歳を迎えて女優としてさらに前に進むためにも、無駄にはならないですね。
高畑淳子さんとか戸田恵子さんとか60歳代の方々が、すごく活躍してらっしゃいますよね。ああいう良いお芝居の出来る女優さんに少しでも近づけたらと。でもストレート・プレイばかり出ていると、たまにはミュージカルに出たいと思うんですよね。
──えまおさんは歌唱力でも定評がありますから。
下級生の時はダンスが大好きで、ダンスばかりやっていたのですが、母から言われたんです。「年をとったら今みたいにハードな事はできなくなるから、歌をちゃんと勉強しなさい」と。言うことをきいて勉強してきて良かったなと思います。とくに去年は歌の仕事が多かったのですが、色々な方に「歌がうまくなったね」と言って頂いて。それはきっと人前で歌っているからで、それが何よりの勉強になるのだろうなと思いました。やっぱり舞台って、毎回すごく緊張するんですけど、お客様からの良いエネルギーをもらえるんですよね。だからこれからも、どんどんお客様の前に出て、エネルギーを頂こうと思っています。
──最後に皆さんへこのコンサートのPRをぜひ。
今年30周年ということで、やはり宝塚なくしては私の30周年はないので、宝塚に対しての感謝を織り込みつつ、こういうことも経て今があるという話を盛り込んだ、涙あり笑いありの面白いお芝居になると思います。川麻世さんに演出して頂くのも、彼は感性が豊かなだけでなく、いつも心がピースなんです。ですからこのお芝居も温かいものを持って帰って頂けると思います。ショーに関してはROLLYさんや桑山哲也さんというミュージシャンの方々、宝塚OGの姿月あさとや白城あやかがゲストで出てくれるので、トークを交えた楽しいステージになればいいなと思っています。タイトルが「This is My Love」、私の愛という意味なんですが、実は川麻世さんも芸能生活40周年記念で、5月に「This is My love…僕の愛」というCDを出したばかりだそうです。あまりの偶然に2人ともびっくりしたのですが。でも、愛が希薄になっている時代だからこそ、愛が必要ですし、私の愛を皆さまにいっぱい手渡しできるコンサートにしたいです。

【プロフィール】
えまおゆう○東京都出身。1987年宝塚歌劇団入団。『宝塚をどり讃歌/サマルカンドの赤いばら』で初舞台。星組に配属され、歌、ダンス、芝居と三拍子揃った華やかな男役として活躍。2002年雪組トップスターに就任。同年9月『追憶のバルセロナ/ON THE 5th』で宝塚歌劇団を退団。以後は女優として数多くの舞台に出演し、歌手としてもコンサート、ディナーショーなど様々なステージで活躍している。


〈公演情報〉
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えまおゆう30周年記念コンサート  
The 30th Anniversary Stage 『This is My Love』
総合演出◇えまおゆう 
脚本◇斎藤栄作
芝居演出◇川麻世
出演◇えまおゆう/久路あかり 美翔かずき/矢部貴将 縄田晋 照沼大樹/小野田龍之介
日替わりゲスト◇姿月あさと、白城あやか、ROLLY、桑山哲也
9/29〜10/1◎竹芝 NEW PIER HALL
〈料金〉8,900円(全席指定・税込)
〈一般前売〉9月3日
〈お問い合わせ〉イベントインフォメーション:0570-550-890 (平日13:00〜17:00)




【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】




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井上ひさしの傑作音楽喜劇『円生と志ん生』に挑む! 大空ゆうひインタビュー

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昭和を代表する噺家、六代目三遊亭円生と五代目古今亭志ん生。2人は戦時中、連れだって満州各地を放浪し、終戦の8月15日を迎えたが、そのままソ連軍によって占領された満州南端の大連市に封じ込められた。この史実をもとに、彼らが人生との戦いを通じて話芸を磨き上げていく様を、虚実を交え趣向を凝らして描いた、井上ひさしの『円生と志ん生』が、こまつ座第119回公演として10年ぶりに上演される。
 
舞台は、昭和20年夏から22年春までの600日間。占領軍によって閉ざされた港湾都市大連に、いつ祖国へ帰れるのかもわからぬまま封じ込められた実直勤勉な円生と気ままで大酒飲みの志ん生、そして20万人の日本人。その混沌の中で2人は4人の女性たちと関わり、結果的に彼女たちを救っていく姿が描かれていく。
エピソードは5つあり、その中で登場する女性たちをすべて4人の女優が演じ分ける。この戯曲の鍵にもなっている、人生の大きな壁に直面した個性豊かな女性たちの姿から、人と人が関わることでしか生まれない「笑い」の大切さが浮き彫りになる。井上作品ならではの妙味と力のある作品だ。
そんな作品で、次々と役を変えて登場する女優の1人として、こまつ座の舞台に初登場する大空ゆうひ。元宝塚宙組のトップスターで、現在女優として多彩な活躍を続ける大空が、念願だったというこまつ座の舞台初出演への意気込み、井上ひさしの世界の魅力や「笑い」の力、また宝塚出身者として感じることなどを語ってくれた。

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言葉の力と、4人の女性が次々と役を変えていく面白さ

──今回の舞台は昭和を代表する噺家、三遊亭円生と古今亭志ん朝を描いたものですが、まず大空さんがこれまで持っていた落語のイメージはどんなものでしたか?
実際に寄席に行ったこともあるのですが、特に1年前くらいから興味が膨らんできていて、もっと色々観たいなと思っています。やはり話術の素晴らしさというものにとても関心がありますし、同じ噺でも、噺家の方によって全く違うものになるのが興味深いです。例えば15分の間、たった1人で観客を惹きつけ続けて最後まで持っていくエネルギーには、芝居と同じものを感じますから、役者としても、吸収できるものがとても多いですね。機会があったらやってみたい、習ってみたいなあ、なんて…(笑)
──では、この舞台にはより心惹かれるものがありますね。
私自身は噺家の役ではないですが、稽古場で落語の世界に多く触れられるでしょうし、声の力、話し方の力というのはとても奥が深いので、自分の台詞にとっても勉強になるだろうと思っています。
──そんな中で、井上ひさしさんの戯曲を読んだ時、まず何を感じましたか?
円生さんと志ん生さんのやりとり自体がまず落語のようですし、言葉のやりとり、言葉の面白さ、更にそこに4人の女性が次々と色々な役で関わってくるという構成がすごく面白いなと思いました。1つの作品でこんなに役が変わっていくことは、なかなかないので、面白そうだということと同時に、難しそうだなとも思いました。
──その様々な役を演じ分けるにあたって、描いているプランなどはありますか?
まだプランと言えるようなものはないのですが、様々な役を演じることを楽しめるところまでは行きたいなと思います。全体を通して、この苦しい時代に生きた女たちの人間臭さや、大地に足をつけて踏ん張っている感じ、踏ん張っているといっても、歯を食いしばっているというのではなくて、こんなに大変な局面に立っていても、粋な会話も交わし、可笑しみをもって生きていく。私にとって今までにない世界観ですし、この舞台で新しい景色が見られたらいいなという目標があります。稽古場ではたくさん苦しむと思いますし、緊張感ある日々にもなると思いますが、念願叶ってこまつ座の舞台に立たせて頂くのですから、楽しまないでどうする!という気持ちもあるので、楽しむための努力を重ねていきたいです。

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無駄なものが1つもなくて美しい井上作品

──こまつ座の舞台に立つのが念願だったという言葉がありましたが、井上ひさし作品の魅力をどう感じていますか?
私自身はまだ実際に井上先生の書かれた台詞を自分で発したことがないので、想像の部分もあるのですが、舞台を拝見していていつも感じるのは、演じている皆さんが井上先生の言葉の持つ力に引き上げられる部分が、きっとあるのではないかと。句読点の位置、言葉の並べ方、会話のリズム、それらすべてに井上先生の想いが籠められていて、他愛もない会話が挟まれていながら、実は1つも無駄なものがないという美しさを感じます。ですから、自分が余計なものを入れてはいけないと思いますし、その美しさを大切にしたいです。これだけ多くの人を惹きつけてきた何か、それは自分自身が作品に入って、自分で言葉をしゃべったときにこそ、見出せるのではないかという期待がありますので、それを探っていきたいです。
──この作品の描き方もまさにそうですが、井上作品はどんな困難な中にも必ず笑いがあり、難しいことも易しく語ってくれますね。
そこに、すごく大人の粋を感じますし、おしゃれな伝え方で、カッコいいなと思います。先日、『イヌの仇討』を拝見したのですが、やはり死生観といいますか、命の尊さ、大変な状況の中でも精一杯生きることを、決して重くなく伝えてくださっていて、明日も一生懸命生きようというエネルギーをもらえたので、今回の作品からもそういった力が伝えられたら素敵だなと思います。
──今回の共演者は、『HEADS UP!』で演出家としてご一緒されたラサール石井さんをはじめ、皆さん多彩な方々ですが。
演出家と役者としての関わりだったラサールさんと、初めて役者同士として共演させて頂きます。ほかの皆さんとも「はじめまして」ばかりですが、女性4人はいつもチームで場面を作っていく関係なので、チームワークがとても必要ですから、気持ちを合わせて共に生きられたらいいなと思っています。素敵な方たちばかりなので、私も刺激を受けつつ、皆さんに負けないようにきちんと立っていられるようにしたいです。
──大空さんは宝塚という女性だけの劇団の頂点にいらした方ですから、女優さん同士のコンビネーションは得意なのでは?
それが宝塚を退団してから、どちらかと言うと男優さんが沢山出る作品に多く出ていたので、ここまで女優さんたちとがっちり組んでのお芝居というのは珍しいので、楽しみですし、お互いに良い化学反応を生んでいけるように頑張りたいです。

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人間の発する熱と温度のある笑いの力が必要な時代

──大空さんはこれまで、どちらかと言うとシリアスな作品や役柄が多かったように思いますが、「笑い」の大切さや力についてはどう感じられますか?
確かにシリアスな方向性のものに多く出演してきました。シリアスなものや難解なものには、頭を使ったり、衝撃を受ける楽しみがあるのですが、やはり今、色々な意味でストレス社会になっているのを感じますし、ネット社会で種々雑多な情報があふれてもいますよね。その中で、人間の発する熱と笑い、生の温かさ、温度のある笑いって、落語もそうですが、演劇だからこそだと思うんです。目の前で人が発する温度には実は大きな力があるので、その温度のある笑いが、今の時代には本当に必要だと思います。この作品にはまさにその大切なものが詰まっているので、それをきちんと伝えたいと思いますし、観てくださる方々の心が、少しでも温かくなってお帰りになって頂けたらいいなと思います。
──舞台には、同じ演目でもその日その回だけしかない空気がありますね。
舞台はまさしく総合芸術で、お客様が入って初めて完成するわけですから、そこにはお客様の温度があるんですよね。役者たちもそれを肌で感じながら、その温度に呼応して巻き込んでいったり、逆に巻き込まれそうになったりというエネルギーのやりとりが、大変でもありつつ、やはり生の舞台の醍醐味だなと思います。その温度があるから、例えば無表情でいても心では怒っているとか、笑っているけれども泣いているとか、泣きたいから笑いとばしているとか、そういう内面すべてが伝わるので、辛い状況でも笑う、うじうじしていたとしても「うじうじしちゃってさ!」と言ってしまえるような、素敵な温度の空間を皆さんと一緒に作れたらいいですね。

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私の中に含まれている宝塚という成分

──そういうライブの中から生まれた空気感は、宝塚時代から経験してきたと思いますが、宝塚歌劇も100周年を超えて、更に多くの注目を集めています。そんな宝塚への思いは今、いかがですか?
先日も宝塚の舞台を観て来たのですが、今こうして私が女優として舞台に立っている中にも、宝塚という成分は絶対に含まれているんですね。特別な時間を過ごさせてもらったと観る度に思いますし、後輩たちにはいつまでも宝塚の美しい精神を引き継いでいって欲しい、卒業生にとっても永遠に誇れる場所であって欲しいと思います。同時にやはり私自身も宝塚の卒業生として、舞台を観た方に、「宝塚ってこの程度なのか」と思われてしまったらとても悔しいので、宝塚の卒業生であることに誇りを持っていたいと思います。 
──大空さんは多岐に渡る幅広い作品に出ています。その大空さんを通じて、これまでと違う演劇に触れるお客様もいらっしゃるでしょうね。
私が出なかったらこういう舞台を観る機会がなかったとか、私をきっかけに新しいジャンルの舞台が好きになったとか、そういう言葉をいただくと嬉しいですね。
──そういう意味では、今回のこまつ座への初出演も、関心を持っている方が多いでしょうね。
もちろん井上先生の作品のファンだったり、こまつ座の舞台をお好きな方もいらっしゃると思いますが、初めて触れる方もいらっしゃるので、沢山の方に観て頂ける機会の1つになったらいいなと思います。
──では、改めて意気込みをお願いします。
憧れのこまつ座の舞台に立たせて頂くので、この機会を十分に味わって、新しい景色を見られるように、稽古場では苦しみつつ、素敵な作品になるように頑張りますので、皆さん是非劇場に足をお運びください。

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おおぞらゆうひ〇92年宝塚歌劇団に入団。09年に宙組男役トップスターに就任。12年に退団後、13年蜷川幸雄演出『唐版 滝の白糸』で女優としてスタート。以降、舞台や映像作品で活躍しながら、自身が企画・プロデュース・主演を務めた舞台『La Vie』や、音楽ライブを開催するなど多彩な表現活動を展開している。近年の主な舞台作品に『死と乙女』『TABU ―シーラッハ「禁忌」よりー』『HEADS UP!』『SHOW ル・リアン』『冷蔵庫のうえの人生』『磁場』『カントリー〜THE COUNTRY〜』など。映像作品に『紅白が生まれた日』『誤断』等がある。今年12月から来年3月にかけて『HEADS UP!』再演への出演が控えている。

〈公演情報〉
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こまつ座『円生と志ん生』
作◇井上ひさし
演出◇鵜山仁
出演◇大森博史、大空ゆうひ、前田亜季、太田緑ロランス、 池谷のぶえ、ラサール石井
ピアノ演奏◇朴勝哲  
●9/8〜24◎紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA (東京都)
〈料金〉9,000円 学生割引 5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉こまつ座 03-3862-5941 
●9/30〜10/1◎兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール (兵庫県) 
●10/8◎ 日立システムズホール仙台 シアターホール (宮城県) 
●10/14◎ 川西町フレンドリープラザ(山形県)
〈公演HP〉
 http://www.komatsuza.co.jp/program/

【スペシャルトークショー】
★9月11日(月)1:30公演後 樋口陽一(比較憲法学者)― 井上ひさしにとっての笑い ―
★9月14日(木)1:30公演後 大空ゆうひ・前田亜季・太田緑ロランス・池谷のぶえ
★9月17日(日)1:30公演後 大森博史・ラサール石井
★9月21日(木)1:30公演後 雲田はるこ(漫画家)―『昭和元禄落語心中』ができるまで ―
※アフタートークショーは、開催日以外の『円生と志ん生』のチケットをお持ちの方でもご入場いただけます。ただし、満席になり次第、ご入場を締め切らせていただくことがございます。
(出演者は都合により変更の可能性がございます。)




【取材・文/橘涼香 撮影/竹下力】



ミュージカルセーラームーンシリーズ最終章!お得なチケット販売中。


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注目の最終章がまもなく開幕! ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Le Mouvement Final- 大和悠河インタビュー

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ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」の最新作が、9月8日から東京、愛知、大阪で上演される。今回のタイトルの副題にある「-Le Mouvement Final-〈ル ムヴマン フィナール〉」とは、フランス語で“最終楽章”という意味。2013年から紡がれたセーラー戦士が奏でる物語の結末となる。

【STORY】
衛のアメリカ留学のため、空港へ見送りに来ていたうさぎだったが、何者かに衛の身体を粉々にされてしまう。ショックでうさぎは記憶を失い倒れてしまうが、それを受け止めたのはスーパーアイドル、スリーライツのメンバーだった。
その日は、スリーライツが出演する音楽祭の当日。うさぎたちも出演予定だったが、そこで新たな敵に襲われる。「シャドウ・ギャラクティカ」と名乗る敵集団は、セーラークリスタルを狙うセーラー戦士だった!
さらに、謎の少女ちびちび、そして新たなセーラー戦士、セーラースターライツも現れ、今までにない壮絶な戦いへと突き進んでいく。

このシリーズに2013年からタキシード仮面・地場 衛役として5年連続出演。宝塚時代を超越するような男役の美学で「セーラームーン」の世界を立体化するのに、大きな役割を果たしてきた大和悠河。改めて今回の「セーラームーン」の世界と、また最近の女優としての活躍について話してもらった。
 
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男役として追求し続けてきた精神が原作を立体化する原動力に

──悠河さんは、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」(セラミュー)には、2013年からタキシード仮面として出演、作品を牽引してきました。
私自身はセーラームーン世代ではなかったのですが、出演することが決まってコミックを読んでみたら素晴らしい作品で大好きになりました。またタキシード仮面という役柄が宝塚の男役の表現と重なる部分が多かったことで、男役として追求し続けてきた精神そのものが、原作を立体化する原動力になったのかなと思っています。
──今でこそ大和悠河のタキシード仮面はスタンダードという感じになりましたが、最初はある意味チャレンジだったのでは?
やはり1作目は、女性がタキシード仮面を演じるとどうなるのだろうと、制作する側にも未知なものへ挑戦する気持ちがあったと思います。また、その公演から他の男性役も全部女性が演じることになったので、出演者・スタッフの皆さんにとっては探り探りという部分があって、私は男役として当たり前のことをしているのに、歩き方1つから驚かれたり、感心していただいたり、斬新な表現として受け止めていただきました。そこから新しいセラミューを皆さんと一緒に作り上げることが出来て、2作目からはそれをベースに作るかたちになりました。
──セーラー戦士の5人は、当時あまり舞台経験がなかったということもあり、舞台に立つためのノウハウを教えてあげたりもしたそうですね。
初めて舞台に立つという人も何人かいました。宝塚でいえば、初舞台生と作品を創り上げるようなものです。宝塚はトップスターと初舞台生が直接組むことはまずありえない世界ですから、ここではどういう形でやっていこうかと考えを巡らせて、5戦士とはちょっと部活みたいな感じでいつも一緒に集まって、ミーティングしてお稽古してということを積み重ねていきました。私も自分の初舞台を思い出すような気持ちで、同時にどこか上級生感覚になって(笑)、見守るようにここまでやってきたと思っています。
──その新しいセラミューが、どんどん盛り上がって、海外にまで広がりました。
パリで「JAPAN EXPO 2014」の催しに参加したのが初めてで、そのとき、海外でのセーラームーン人気を実感しました。2015年には上海公演を行いましたし、今年も4月にアメリカのヒューストンで開催された「Anime Matsuri 2017」に参加しました。どこへ行ってもお客様がすごい熱狂ぶりで、今さらですが日本のマンガやアニメの人気のすごさを実感させられます。私は昨年、ブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』(宝塚OGバージョン)のニューヨーク公演で、主人公のロキシー・ハートとしてリンカーンセンターに出演したのですが、そのとき大勢の現地のファンの方が楽屋口に集まってきたんです。口々に「セーラームーンのLegend of Tuxedo Mask (伝説のタキシード仮面)に会いに来た」と言われて。それを聞いてびっくり! 本当に感動しましたね。

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ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Amour Eternal-(2016年) (c)武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2016

武内直子先生が描かれる世界観の素晴らしさ

──海外でもファンを増やしているセラミューですが、昨年からセーラー5戦士が新しいキャストになりました。新しい戦士たちの印象はいかがですか?
一番感じたのは、役や舞台への取り組みが早くて、セラミューの世界にすっと入ってきたことです。それは前回のメンバーたちが作り上げた舞台を観ていたことが大きいと思います。前回のセーラー5戦士に憧れて、良いところを見習うことで、具体的に作りやすい面があったのだと思います。
──地場 衛の相手役、月野うさぎ役も大久保聡美さんから野本ほたるさんに代わりました。
野本さんは大久保さんとはキャラクターが違うので新鮮でした。シリーズも4作目に入ったことで内容も深まり、ラブシーンも多くなったりしたのですが、そこも野本さんはとても自然に演じてくれました。
──そしていよいよ今回は、2013年からのシリーズの最終章ということですが、ストーリー的には地場 衛が危機に陥るとか?
そうなんです。アメリカ留学に行くはずの空港で、姿を粉々にされてしまうんです。それをみんなが解決しようとして戦うわけですが、セーラー戦士VSセーラー戦士という壮絶な戦いになっていきます。でも、原作のラストシーンはとてもロマンティックな終わり方になっていて、そこに武内直子先生の精神が集約されていると思うのです。それをどこまで舞台で表現できる演出になるか…。武内直子先生が描かれている世界観がとにかく素晴らしくて、醸し出されるあの素敵な空気感をなんとか舞台でも表現したいと、いつも思わせられます。先生と私の美学が1つに溶け合って、巨大な宇宙空間になっていくような、そんな伝説の舞台になるように、心を込めて臨みます。
──観客だけでなく演じる側も感動させてしまうものがあるのですね。
テーマの1つが「愛」で、今の世の中でも変わらず人間の根底にある「誰かのために」という精神が、しっかり描かれているところが素晴らしいんです。誰かのために命を投げうってまで戦うし、自分を犠牲にして何かを差し出すという思いが描かれていて、演じるたびにこちらの精神も洗われます。ピュアな気持ちになりますし、改めて一途な思いに気づかせてくれるんです。そういうところが私自身とても共感できる作品で、男性のお客様も涙していたり、世界中どこでもそれはわかっていただけるテーマだと思います。
──まさにセーラー戦士は、愛と正義のために戦っているわけですね。
その戦士が女の子たちというのもカッコいいですよね。まもられる側だった女の子たちが、逆に男性をまもったりする。それが女の子たちに勇気を与え、そういうセーラー戦士に憧れる読者にとともに作品も育ってきたと思います。まさに愛の世界ですね。人が人として存在するかぎり変わらない愛の世界。人のためにつくすこと、愛の世界のために戦うことを教えてくれるんですね。
──そのセーラー戦士たちをタキシード仮面は、色々な局面で支えますね。
カッコいい女の子たち、がんばっている女の子たちを、さりげなく見まもっている、その大きさを出せればと思いますし、頼りになる存在でいないといけないと思います。ここというときに力が出せないのが地場 衛でもあるのですが(笑)、彼女たちがより力を発揮できるように、輝けるように、心の拠りどころでいたいなと思っています。
──そういう懐の深さが魅力ですね。
わきまえているんですよね。彼女たちの力を信じているから、自分にまかせろとか前に出ていかない。そこが武内先生の描かれる素敵さで、本当の強さは奥が深いなと思わせられるんです。

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ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Amour Eternal-(2016年) (c)武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2016

再演で改めて感じた『CHICAGO』の奥深さ

──ところで悠河さんはこのセラミューと並行して、ブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』をはじめとするミュージカルやショー、新派や松竹新喜劇など和物の伝統的な舞台への出演、また来年はハンブルグオペラ歌劇場と二期会(日本の世界的なオペラ団体)の提携公演でオペラデビューを飾ることも発表されました。まさに振り幅広く活躍しています。
それぞれまったく違う世界なので、その中で大和悠河という存在を改めて自覚することができている気がします。自分でもその変化を楽しませていただいています。
──ブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』は長く上演されている傑作ミュージカルですが、演じていてその魅力はどこにあると思いますか?
とにかく良く出来たミュージカルなんです。ボブ・フォッシーさん振付のダンスはもちろんのこと、曲もいいし、衣裳もシンプルですがカッコよくて、すべてに無駄がないんです。ある意味、演じる体そのもので魅せていく、そこに難しさとカッコ良さがあります。演じれば演じるほど面白くなりますし、作品の良さも改めて感じています。
──ロキシー役は当たり役の1つになりました。
再演で演じることができたおかげで、ロキシーという女性を深く理解できたと思います。はじめは弱そうに見えますが、したたかというか、周りを利用してでも生きていく強さがある女性で、可愛いだけでないその強さは、男役をやってきたからこそ出せるところもあるので、とても楽しく演じることができました。
──宝塚歌劇団のOG公演の良さについてはいかがですか?
黙っていてもわかり合えるものがあって、カンパニーが自然にまとまるのは、本当に素晴らしいなと思います。やはり初めて会う方ばかりの稽古場は、探りながら関係性を築いていきますけれど、宝塚出身者ばかりですと、あるルールが出来ていますから、自分の役と舞台に集中できるんです。とくに『CHICAGO』は、アメリカ側のスタッフの方が直接指導してくださる、オリジナルのクオリティを大事にする舞台ですから、宝塚で鍛えられた出演者だからこそ、クリアしていけた部分もあったと思います。

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新橋演舞場「二月喜劇名作公演」より(撮影:竹下力 )

和物の世界を極めている方々から学べる幸せ

──そしてもう一方の和物の舞台は、昨年の『糸桜』で新派という伝統を重んじる舞台に初めて出演、好評でした。
女性役での和物舞台は、宝塚を退団してから演じるようになったので、まだまだ経験が浅いのですが、周りの大ベテランの方々に教えていただきながら取り組んでいます。『糸桜』では、波乃久里子さんにどれだけ教えていただいたことか。新派作品は、日本的な情緒やしっとりとした雰囲気が大好きですので、出演できてとても幸せでしたし、またあの世界で鍛えていただきたいなと思っています。
──今年は新橋演舞場の「二月喜劇名作公演」の『恋の免許皆伝』で、和物の喜劇にも取り組みました。
本当に面白い作品でした。喜劇なのに純愛で、私は武家の娘で、19歳から59歳までを演じ、初めての老け役も経験させていただきました。やはりこの作品でも、久里子さんや相手役の中村梅雀さんに、所作などを色々と教えていただきました。和物は本当に奥の深い世界ですから、その世界の良さに触れることができたのは有り難かったですし、それを極めている方々と共演させていただける機会があるのは、私にとってとても幸せなことです。これからも、ますますしっかりとお勉強させていただいて、私の中にしっかりとした基本を身に付けたいとおもっています。
──そういう意味では、現在出演中の新版喜劇!『売らいでか』も喜劇名作の世界ですね。
今回で2回目の出演をさせていただいていますが、座長の浜木綿子さんはじめ芸達者な、こちらも大ベテランの方ばかりで、本当に得るものが多いんです。とくに私は浜さんを、「この方は天才だ!」と尊敬していますから、そばでそのお芝居を見せていただくだけで得るものが沢山あります。浜さんが子役さんに「こう言ってごらん」とアドバイスするのを聞いているだけで、聞き惚れてしまうんです。それに子役さんといえども愛情たっぷりに厳しく指導されていて、あんなに教えてもらえて羨ましいと思うくらいです(笑)。性格もとてもさっぱりした方で、男前で、話しやすくて大好きな方なので、この作品で全国ツアーなど1ヵ月くらい浜さんとご一緒していることが嬉しくて仕方ないです。

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自分らしくいること、無理をせずにいることを大事に!

──4月にシアタークリエで上演された『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』には、声だけの出演もしましたね。
スヌーピーの漫画『ピーナッツ』が大好きで、ずっと愛読していたので、喜んで参加させていただきました。SNOOPY - チャールズ・モンロー・シュルツ(Charles M.Schulz)の偉大な精神の世界が 私の喜劇の世界に広がっていくことが理想的な夢の世界です。好きなものがお仕事に繋がっていくのは嬉しいですね。
──漫画からオペラまで本当にフィールドが広いですね。
色々な方に「ずいぶん色々なジャンルに出ているんですね」と驚かれたりするのですが、自分ではこだわりなくやっていく中で、いつのまにか広がっていって、そのぶん引き出しが増えてきて有り難いです。 
──テレビでの取り上げられ方もですが、大和悠河のある種のライフスタイルが、皆さんの興味を引くのだと思います。
宝塚時代は私生活を見せないように生きていましたが、自分としては当時も今も変わりなく生きていて、今はそれをほんの少しオープンにすることで、そのままの大和悠河を見ていただこうと。そして、面白いなとか楽しそうだなと思っていただければいいなと思っているんです。余計なことを考えずに自分らしくいること、本当の意味で無理をせずにいたいなと、いつも思っていて、その気持ちに素直に生きてきたし、これからもそう生きていければいいなと思っています。
──最後に、改めてミュージカル『美少女戦士セーラームーン』-Le Mouvement Finalへの意気込みを。
いよいよ2013年からのシリーズの最終章なので、みんなでまとまってガツンとした舞台を作りたいですね。毎回、進化したいと思っていますし、今回もさらに進化したタキシード仮面、地場 衛をお見せできるよう磨きをかけていきます。ぜひ観にいらしてください。


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やまとゆうが○東京都出身。95年宝塚歌劇団入団。天性の華やかさと類まれな抜群のスター性で早くから抜擢され宙組トップスターとして人気を博す。09年卒業後は、ブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』、新派公演『糸桜』、新橋演舞場公演「二月喜劇名作公演」他、数多くの主演・ヒロインを務め、舞台、テレビなど幅広い分野で女優として活躍する一方、本の執筆や連載など多彩な才能を見せている。2018年7月、ハンブルグ州立歌劇場と二期会の提携公演『魔弾の射手』でオペラデビューが決定している。


〈公演情報〉
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ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Le Mouvement Final- (ル ムヴマン フィナール)
原作◇武内直子(講談社刊)  
脚本・演出◇平光琢也  
音楽◇佐橋俊彦  
出演◇野本ほたる 竹内 夢 小林かれん 楓 長谷川里桃/大和悠河 他
●9/8〜18◎AiiA 2.5 Theater Tokyo
9/23〜24◎アイプラザ豊橋  
9/29〜10/1◎梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ  
〈料金〉S席8,800円 A席6,800円(前売・当日共/全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)

 (c)武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2017



【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】


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