えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

『不徳の伴侶 infelicity』

インタビュー

斬劇『戦国BASARA』に初登場の新キャラクター京極マリア役に挑む! 大湖せしるインタビュー

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大人気アクションゲームの舞台版として愛され続けている斬劇『戦国BASARA』最新作、斬劇『戦国BASARA』第六天魔王が渋谷のAiiA2.5Theater Tokyoで3月2日〜11日まで上演される(のち16日〜18日まで大阪・森ノ宮ピロティホールでも上演)。
歴史に名だたる戦国武将たちが、その歴史の枠を超えて闘いを繰り広げる斬劇『戦国BASARA』シリーズは、戦国アクションゲームの決定版として、長きに渡り熱い支持を受けてきた。その舞台版の最新作であるこのステージは、各地で戦火の上がる群雄割拠の日ノ本で、禍々しいまでに圧倒的な力でその名を轟かせる第六天魔王・織田信長が創る、恐怖の世をなくす為に、奥州筆頭・伊達政宗、武田軍大将・真田幸村をはじめ、様々な者たちが立ち上がる、というストーリーとなっている。
そんな作品で、舞台版の斬劇『戦国BASARA』には初登場となる新キャラクター、京極マリアを演じるのが、元宝塚歌劇団雪組で活躍した大湖せしる。宝塚歌劇の新人スターの登竜門である「新人公演」で主演をした男役としては、極めて異例の女役への転向を果たし、男役、女役双方で次々と大役を務め、現在女優としての歩みを進める大湖が、アクションに次ぐ、アクションの斬劇『戦国BASARA』の世界に挑む意気込み、また宝塚での異色の経験が生きているという、女優としての現在について語ってくれた。

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殺陣、殺陣、殺陣の圧倒的な舞台

──斬劇『戦国BASARA』に初参加ということになりますが、まず作品に接していかがですか?
とにかくなんと言っても殺陣がすごくて。殺陣、殺陣、殺陣という状態です。前回の舞台を観させて頂いた時にも、ただただ殺陣の凄さに圧倒されて、更にその間に皆さんお芝居もしながらですから、あっという間に時間が過ぎて、気が付いたら終わっていたという状態だったんです。ですから、この世界に私自身が出るとなった時にも、まず「殺陣!!」と思いました。私は宝塚時代に男役を11年間させて頂いていましたから、一応殺陣はいくつかやってはいたのですが、そうは言ってもバサラのようなすごい長モノ等は使った事が無かったので、どうなることかという思いがまずありました。でも今回は、前回の舞台以上に結構お芝居の部分もしっかりとあって、それぞれの関係性もお芝居として見せているので、私もお芝居の方が多めなんですけど、もちろん殺陣もさせて頂くので、とても盛りだくさんな作品になると思います。ここからいよいよ追い込みですね。
──本当に、殺陣に続く殺陣に圧倒される熱量の高い作品ですが、演じる京極マリア役については?
まず役を頂いた時に、キャラクターの描き方から色っぽい感じを受けて、動画を見てみましたら、やはり声の感じ等もすごく色っぽくて。その声優さんが沢城みゆきさんなんです。今、『ルパン三世』の不二子ちゃんの声優もされている方で。
──宝塚時代に大湖さんも演じた役ですね!
そうなんです!「あぁ、みゆきちゃんだ〜」と思って、私が宝塚で峰不二子を演じさせて頂いたご縁で、お知り合いになっているので、またみゆきちゃんが声優をしている役ということは、つまりとても色っぽい女性、魅力的な女性の役だと思って。実際に台本上でも、結構皆さんをかき混ぜるというか、ちょっと小悪魔的だったりもしますので、舞台の良いスパイスになればいいなと思っています。自分の欲望に素直で、正直な人で。この作品の登場人物は皆、自分がこれがやりたい!っていう方向に迷わず向かっていきますけど、それプラス自分が一番大切という考えの、自分にこそ一番価値があると思っている人なので、皆をかきまわしていく感じが出たらいいなと思いながら、作っています。まだまだ探求中ですが、今はとりあえず殺陣がついて、立ち稽古もついて、通してという状態なので、そこから深めていきたいと思います。

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イメージを大切にしながら、私風味を加味して

──宝塚でもキャラクターものの作品に多く出演されましたが、アニメーションや今回のゲームなど、キャラクターがある作品の楽しさ、また難しさはどうですか?
宝塚でさせていただいた『ルパン三世』にしても『るろうに剣心』にしても、舞台化は初めてでしたし、今回も俳優が演じるのは私が初めてなので、自分のインスピレーションを大事に作っていけるという利点はあります。一方で、原作ファンの方々がキャラクターに持っているイメージは厳然とありますから、そのイメージにどれだけ近づけられるかが難しいですね。ポーズの角度だったり、声質も声優さんが創られた世界観は踏襲しつつも、ただ声優さんの声真似になってしまってはいけないと思うので、役柄を内面からしっかり作っていって、キャラクターが出来上がるようにしていきたいです。
──イメージは大切にしながら、大湖さんが演じるならではのものも?
そうなんです。既存のものにただおさまってしまうのではなくて、そこに、私風味をちゃんとチョイスしながら入れていければと思います。
──そんな新しい舞台で、共演する方たちの印象はいかがですか?
宝塚を退団してから出演した舞台には、必ず元タカラジェンヌ、宝塚OGの方がいたんです。だから誰かしら知り合いがいたんですけど、今回は誰もいなくて。アンサンブルに知っている人はいるのですが、芝居で絡むキャストの方々は皆「はじめまして」なんです。私、実は結構人見知りなので、どうしようかなって思っていましたし、今回から入る初めてのキャラクターは、私と明智光秀の瀬戸祐介さんとお市の高柳明音さん、3人だけなので、出来あがっているカンパニーに入るドキドキ感があったのですが、皆さんウエルカムでホッとしました。特に私は前の舞台があって、お稽古に入ったのが遅かったので、今、必死についていってます。これからどんどんコミュニケーションを取っていけたらいいなと思っています。
──では前の舞台中にも、台詞を入れる準備などを?
していました! 前の舞台は博多弁で全然違う役柄だったので逆によかったのですが、セリフの量がすごかったんです。ですから、こちらをどうしようかと思ったのですが、終わって2、3日で覚えられるものでもないので、やっぱり同時にやらなければと。今日はこちら、次の日はあちらとか、切り替えながらやりました。今まで同時進行っていうのはなかったので、こういう大変さがあるんだなと。皆さん色々掛け持ちで出ていらっしゃるので、すごいなと改めて感じました。宝塚でも新人公演はありましたけれど、作品は一緒でしたし、基本的に同時進行というのはあり得なかったので、新しいチャレンジになりました。

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男役と女役、双方を経験したことが糧になっている

──宝塚退団後、バラエティに富んだ舞台を務めていますね。
もともと宝塚時代から型にハマらずにいたいと言いますか、色々なキャラクターが出来る役者になりたいという気持ちは強くありました。例えば、色っぽい役しか出来ないとかではなく、元男役でもあるので、その部分も活かした強い女性もやってみたいです。だから色々なものに挑戦していきたいですし、今回も2.5次元の世界って、人じゃない事をやってもいいと言うか(笑)、動きだったり見せ方などに誇張したものがあるのが、宝塚で培ってきたものと共通するので、やりやすかったりもします。  
──大湖さんは男役から女役に転向して、両方を幅広く経験していることが、色々な面で役に立っているのでは?
それはもう大いにありますね。自分が男役の時に女役さんを見ていて、女役さんのカッコいいはやはり可憐なカッコよさで、男役のカッコいいとは違いますよね。でも私には男役の引き出しがあるので、女役さんのカッコいいプラス大人のカッコいいを目指して作っていけたらと思っているので、今は両方させて頂いていて良かったと思います。
──しかも、双方で大役を演じてきました。
今思うと激動の青春時代だったなと思います。もう必死すぎて目の前のことしか見えていませんでした。だから今、宝塚を観に行って、「あぁ、すごいな。こんなことをしてたのか〜」と思いますね。もう無理だなって(笑)。舞台裏の事とかも知っているので、余計にすごいなと思います。自分のいた雪組は必ず観に行きますが、下級生の子達がどんどん立派になって、知らない下級生も増えましたが、皆堂々とやっているなと感動します。

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舞台は私の人生になくてはならないもの

──宝塚を退団してから、時間の過ごし方は変わりましたか?
変わりました! 自由な時間がすごく出来て、舞台と舞台の間のお休みもしっかりあることに、どうしたらいいかわからなかったんです。宝塚の時は休みが本当に少なくて、そのちょっとした休みにも何かしていないと、自分が怠けてるみたいで「すいません、申し訳ない、どうしよう」(笑)というのがあったんですけど。今は、お休みはちゃんとプライベートの自分のリフレッシュとして使えるようになりました。
──では、今は余裕も?
そうですね。じゃあこの日にこれをしたから、次の休みにはあれをしようとか。してみたいことや趣味も増えました。
──そんな日々の中で、女優として目指しているものや、夢などはありますか?
今でも模索中ではありますね。退団して1年半経ちましたけど、舞台をやりつつ色々なことにも挑戦してみたいと思っています。でもやっぱり変わらないのは、舞台は外せないということです。私の人生に舞台はなくてはならないということはすごく感じるので、そこはしっかりしてるんですけど。具体的にどうなっていきたいとかは、まだ見定めていないというか。宝塚時代も、新人公演で主役をさせて頂いた時に、色々取材を受けさせて頂いて「これからの目標はトップスターですか?」と訊かれたりもしましたけれど、「何も考えてないです」と言っていました。先の事が考えられないというか、夢がないっていうのではなくて、今目の前の事をしっかりと、与えられたことをやっていれば、きっと自然に進むべき道が見えてくるなと思っていたし、今もそれは変わらないです。色々な役に挑戦できる女優にはなりたいとは思いますけど、「絶対にこう!」というのではなく、私の性格上「こうかな?ああかな?あ、でも違う、あ、そうだな」と試行錯誤していく中で「あ、ここかな」が見つかるのではと。ゆっくりなんですよ私、色々な意味で。でもそれが私らしくていいのかなと思います。特に宝塚と違って外の舞台は一期一会ですから、1つの作品が終わったらもう二度と会えない人もいますよね。最初はそれに慣れなくて、1作目の時には「この人たちともう会えないんだ」と思ったら、もう前楽ぐらいから泣きそうになっていたんですけれど。でも今は、だからこそ毎日が貴重だと思いますし、皆さんと連絡を取り合ったり、舞台を観に行ったりもできるので、これからもそういう出会いが沢山あるといいなと思います。
──では、その出会いの1つである斬劇『戦国BASARA』への意気込みを。
「戦国BASARA」と言っただけで、皆さんが「ああ、バサラ」とすぐ反応があるほど知られている舞台なので、責任を持ちつつキャラクターと向き合って、如何にイメージに近づけるように出来るか、しっかりとやっていけたらいいなと思います。皆が全力で毎日稽古に取り組んでいるので、その情熱やパワーを、直接感じて頂きたいです。公演期間が1ヶ月もないので、「観られなかったら残念だよ!生で観るべき舞台だよ!」と言いたいです。是非劇場にいらしてください!

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だいごせしる○兵庫県出身。02年宝塚歌劇団に入団。同年雪組に配属、以後、期待の男役として活躍。08年『マリポーサの花』新人公演で初主演。11年『ロミオとジュリエット』の「愛」役を務めたあと男役から娘役に転向。13年『春雷』で初ヒロイン。15年『ルパン三世』の峰不二子役は当たり役となる。16年『るろうに剣心』で惜しまれつつ退団。『グレート・ギャツビー』のジョーダン役を皮切りに、女優として多彩な活躍を続けている。近年の主な舞台に30-DELUX『新版 国性爺合戦』A NEW MUSICAL『クロスハート』ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』〜暁の調べ〜等がある。

〈公演情報〉
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斬劇『戦国BASARA』第六天魔王
原作◇CAPCOM(「戦国BASARA」シリーズ)
構成・演出・映像◇ヨリコジュン
企画・原作監修◇小林裕幸(CAPCOM) 山本真(CAPCOM)
出演◇眞嶋秀斗 松村龍之介 中尾拳也 沖野晃司/椎名鯛造 井上正大 瀬戸祐介/汐崎アイル/斉藤秀翼 桜田航成/高柳明音 大湖せしる/伊藤裕一/唐橋 充
●3/2〜11◎AiiA 2.5 Theater Tokyo
●3/16〜18◎森ノ宮ピロティホール
〈お問い合わせ〉
東京公演 サンライズプロモーション東京 0570-00-3337
大阪公演 キョードーインフォメーション 0570-200-888



【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】



水夏希・彩吹真央出演。夢幻朗読劇『一月物語』


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ミュージカル「陰陽師」で不老不死の占い師・八百比丘尼に挑む! 舞羽美海インタビュー

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本年春に中国での公演を予定しているミュージカル「陰陽師」〜平安絵巻〜が、3月9日〜18日、東京・日本青年館ホールでプレビュー公演の幕を開ける。
ミュージカル「陰陽師」は、中国のゲーム会社ネットイースゲームズが制作し、2016年9月に運営が開始されたソーシャルゲームが原案。細部まで描き込まれた美麗なグラフィックと豪華声優陣の起用で話題となり、全世界で2億ダウンロードを突破している。プレイヤーは妖が蠢く美しき平安時代を舞台に、様々な式神とともに魑魅魍魎と戦い、謎を解き明かしていく。
その舞台化となるミュージカル「陰陽師」〜平安絵巻〜は、演出・脚本・作詞をミュージカル『薄桜鬼』や『黒執事』シリーズ『Messiah メサイア』シリーズなどの毛利亘宏が手がけ、天才陰陽師・晴明役に良知真次、黒晴明役に佐々木喜英が扮するのをはじめ、豪華キャストが揃った。また、公開されたビジュアルにも絶賛の声が集まるなど、初日に向けてますます期待が高まっている。
そんな舞台で、人魚の肉を食べ不老不死となってしまった名高い占い師・八百比丘尼(やおびくに)役を演じるのが、元宝塚雪組娘役トップスターで、現在女優として活躍する舞羽美海。可憐な容姿と、醸し出される抜群の愛らしさで、明るい元気な役どころを数多く演じてきた舞羽にとって、ミステリアスな八百比丘尼役への挑戦は、新たな魅力が観られるに違いない刺激的な機会となる。間近に迫る公演を前に、舞羽美海がこの舞台への意欲を語ってくれた。

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ゲームに忠実でありつつ、生身の人間のエネルギーもある舞台に

──ミュージカル「陰陽師」に出演ということで、とても素敵なビジュアルが公開されていますね!
ありがとうございます!実はビジュアル公開の前は、かなり不安があったんです。自分もアニメやゲームなどは元々大好きなので、その世界観を崩してはいけないという気持ちがすごくあって。まずこのお話を頂いた時点で「私は八百比丘尼になれるでしょうか?」とお尋ねしたくらいです。撮影の時も八百比丘尼的なポーズ等には相当心を配ったのですが、ビジュアル解禁がこんなに怖かったのは初めてでした。これまでは自分でも情報解禁が楽しみだったのですが、今回は「あぁ、出る、どうしよう!」と思って(笑)。最初に解禁された、晴明の良知真次さんと神楽の伊藤優衣さんがとっても美しかったので、ここに並んで大丈夫かな?とドキドキしました。
──いえ、本当に素敵です!
そうですか?八百比丘尼ファンの方もとても多いので、皆さんに受け入れて頂けていたら嬉しいです。こういう世界に入らせて頂くのは初めてなのですが、衣装や小道具など、忠実に再現しようとされているスタッフの方々の熱意が素晴らしかったので、そこに乗せて頂いて頑張りました。
──参加するミュージカル「陰陽師」という作品については、今どんな印象を?
思った以上に壮大な世界になっています。台詞や内容もゲームに忠実なところがたくさんあって、胸が熱くなるシーンや、鳥肌が立つようなところもたくさんあります。作品の魅力に生身の人間が演じるエネルギーがプラスされた「陰陽師」の世界観になっているなと。また、音楽がとても面白いんです。「陰陽師」の世界ならではの曲ももちろんたくさんありますが、ロック調とか意外な曲もあったりして一筋縄ではいかないです。スピード感のある場面とじっくり見せる場面のさじ加減も絶妙なので、飽きさせないものになっていると思います。演出の毛利さんが「Wow!ファクター」と称して、観て下さるお客様が3分間に1度「Wow!」と発してしまうようなものを作ることを目指していて、心が3分間に1回動くような創りになっています。確かに曲を入れ込むところも、曲によって芝居が進むものとキャラクターに合わせたものとがあるので、「Wow!ファクター」がどう結実するのか楽しみです。日本でのプレビュー公演、中国公演での反応がそれぞれどんなものになるのか今からワクワクしています。

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ミステリアスで妖艶な八百比丘尼役で新たな挑戦を

──演じる八百比丘尼についてはどんなふうに捉えていますか?
まず美しい人だなと思います。妖艶な部分と、何百年も生きている彼女の心の部分、いわば外から見える部分と内面の部分とがあるので、内にあるものを垣間見せたり、また秘めたり、そのミステリアスな部分をどう表現するかだと思います。今まで頂いてきた役柄は明るく元気なものが多かったので、今回は私にとって新しい挑戦になりますし、八百比丘尼を通して新たな発見をしていければと。ゲームで八百比丘尼の声を担当されている沢城みゆきさんが大好きなので、雰囲気は踏襲しつつ、私なりの八百比丘尼になれたらと。今まで出したことのないテンションの声も出てくると思うので、八百比丘尼を好きな方にも納得して頂けるものにしていきたいですし、このカンパニーの方々との舞台上での化学反応も楽しみです。ストーリーがしっかりしているので、まず忠実に、そしてお客様の心を動かせるようにしていきたいです。
──宝塚時代にも『JIN─仁』など漫画原作の作品に取り組んでいますが、原作ものの楽しさと難しさについては?
やはり原作があるものには、作品のファンの方がいらっしゃるので、その方達にも納得して頂けるものであること。そして、舞台ならではのオリジナリティーを感じて頂きたいです。何よりも原作のイメージは大切に、その上で舞羽美海が演じさせて頂く意味や、作品を舞台化する意味も感じて頂けるものにと。八百比丘尼についてもそれは同じで、キメ台詞等は本当に忠実に台本にも出てきて「やっぱりここはそのまま使うんだ!」と思いましたし、映像や音楽のエネルギーも感じるので、舞台ならではの「陰陽師」、そして八百比丘尼を観て頂けるように頑張りたいです。
──共演者の皆さんも豪華なメンバーで、先ほどお話に出た化学反応も楽しみですね。
多方面で活躍されている方々ばかりで、私にとっては初めてご一緒させて頂く方が多いので、顔合わせは本当に緊張したのですが、本読みの段階で皆さんの個性やキャラクターが見えたので、新しい世界が広がっていく楽しさを感じています。オープニングのミュージカル・ナンバーも、重厚感がありつつスピード感もあり、エネルギーがダイナミックで、冒頭から作品の世界観に入ってきて頂けると思います。私自身ゲーム原作の舞台は大好きでよく拝見させて頂くのですが、冒頭のキャラクター紹介の場面になると「キタ、キタ!」という気持ちでテンションが上がるので、そこから楽しんで頂きたいです。

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宝塚というルーツと絆は一生消えない

──新しい出会いがたくさんある今回の座組ですが、昨年末には宝塚OGの方が沢山出演した『Pukul』にも参加しましたね。OGの方達が集結した舞台の経験はいかがでしたか?
すごく楽しかったです。OGの方達がメインの公演に出させて頂いたのは初めてで、最初は上級生の方々とご一緒するということで緊張したのですが、皆さん本当に優しくて。やはり同じルーツを持った方達との絆は一生消えないということを感じました。カンパニーの中では下級生でしたから、皆さんが気にかけてくださって、とくに水夏希さんや彩吹真央さんは雪組時代に本当にお世話になったのですが、今回も1つ1つご相談させて頂き、とても心強かったです。
──舞羽さんが新進娘役だった頃のトップスターが水さんでしたね。
そうなんです! ほかの方も私がファン時代にスターでいらした方々ばかりで、稽古初日はファン時代に戻ってドキドキしていました(笑)。そして、そういう方々がすぐにアドバイスしてくださるのが、何より宝塚の良さだなと。1人の俳優として色々な公演に参加している時も、伺いにいけば皆さんこころよく教えてくださいますけれど、あちらから言ってくださるということはあまりないので。今回は、必ずどなたかが見ていてくださって「あそこなんだけどね」と言ってきてくださるんです。そのおかげで色々なことを吸収することが出来ましたし、同時に「あぁ、私はまだまだだ!」と痛感しました。
──難しそうな新しいダンスがたくさんありましたね。
筋力や精神的な面で、まだまだ変われる、もっともっとやれると思いました。最初のお稽古から筋肉痛が何日も続いて、新しい振付がつく度に新たな筋肉痛になって、「もう立てない!歩けない!」と思うこともありましたが、曲がかかると動いている自分にも驚きました(笑)。色々なジャンルのダンスや音楽に触れる機会をもらえたことは財産ですし、人生で一番踊った公演でした。1曲を踊るだけでもいっぱいいっぱいだったのですが、通し稽古の数がとても多かったおかげで身体も慣れましたし、衣装や小道具によって動きが規制される中での、美しさ、ビジュアルを追求する、それが宝塚だなと改めて感じました。観に来てくれた同期生に「水を得た魚だね」と言ってもらえましたし、久しぶりのダンス公演がすごく嬉しくて、思いきり踊ることができました。自主稽古もたくさんしました。稽古場で一瞬で揃えられるのが宝塚ですから。ディスカッションにも参加させていただきましたし、上級生の方々の見せ方などを側で見せていただき、多くを学ぶことができました。

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ビジュアルにこだわり演劇のファンを増やしたい

──『Pukul』で様々なダンスや美しさの追求、小道具使いを経験した後、この「陰陽師」というのは、最適な流れですね。
すごく活かせると思います。杖の持ち方や、手の角度などビジュアル面でのこだわりがたくさんありますし、カラーコンタクトも生まれて初めて使用したので、すごく時間がかかったのですが、それ1つで自分が変われました。鬘や衣装の繊細なこだわりも素敵ですし、原作の世界からそのまま抜け出てきたという2.5次元の良さの中で、自分自身に発見があるのも楽しいです。八百比丘尼の美しさにも、とことんこだわりたいです。
──2.5次元と呼ばれる舞台がたくさん生まれて、それまで舞台そのものを観たことがなかった方も劇場に足を運ぶきっかけになっていますね。
舞台を観たいと思っても最初の1歩を踏み出すのにパワーがいりますから、そのきっかけになってくれているのは本当に嬉しいですし、ライブビューイングや、アリーナのようなところでのライブなど、若いお客様が観たい!と思ってくださるような工夫が様々にされているのもすごいなと。特にフライヤーのクオリティが高くて、絶対に目に留まるし、手に取って開きたくなるように作られているところも素晴らしいなと思います。
──では改めて、公演を楽しみにされているお客様にメッセージをお願いします。
ゲームに親しんでいらっしゃるお客様もこの壮大な世界を絶対に楽しんで頂けると思いますし、日本と中国で公演することも素晴らしいことで、どんどん演劇を好きになってくださる方が増えたらいいなと思います。また、ゲームをご存知ないという方にもきっと楽しんで頂けますし、観てからゲームに触れてみるのも新しい世界が広がると思います。この壮大なプロジェクトに関われたことがとても嬉しいですし、斬新な、今まで観たことがない世界をご覧頂けると思いますので、是非劇場に足を運んで頂きたいです。そして、ミュージカル「陰陽師」がこれからシリーズ化していく作品になってくれたらいいなと夢見ているので、精一杯頑張ります!


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まいはねみみ○兵庫県出身。07年に宝塚歌劇団入団。11年から雪組トップ娘役を務め、様々な作品で可憐な魅力を発揮した。12年『JIN─仁─』『GOLD SPARK─この一瞬を永遠に─』で惜しまれつつ退団。以後は女優として活躍中。主な出演作品は、映画『マザー』『超高速!参勤交代リターンズ』、ドラマ『早子先生、結婚するって本当ですか?』『プリンセスメゾン』『山女日記〜山フェスに行こう/アルプスの女王〜』、舞台『道頓堀パラダイス〜夢の道頓堀レビュー誕生物語』『ドリアン・グレイの肖像』『ダンス オブ ヴァンパイア』『Pukul』など。

〈公演情報〉
 
ミュージカル「陰陽師」〜平安絵巻〜
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原案◇本格幻想RPG「陰陽師」より (NetEase Inc./All Rights Reserved)
演出・脚本・作詞◇毛利亘宏
音楽◇佐橋俊彦
振付◇本山新之助
出演◇
良知真次/三浦宏規/伊藤優衣/舞羽美海/矢田悠祐/君沢ユウキ/遊馬晃祐/平田裕一郎/内海啓貴/片山浩憲/七木奏音/門山葉子/佐々木喜英/
西岡寛修 笹原英作 服部 悠 杉山諒二 松ヶ谷ほのか 渡邉 南 光岡茉美 佐竹真依 SATOCO
●プレビュー公演/3/9〜18◎東京 日本青年館ホール
●本公演/3/30〜4/22◎深セン、上海、北京〈料金〉プレビュー公演/S席 8,800円 A席 7,800円(前売、当日共・全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉ネルケプランニング  03-3715-5624(平日11:00〜18:00)




【取材・文/橘涼香 撮影/友澤綾乃】




水夏希・彩吹真央出演。夢幻朗読劇『一月物語』


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平野啓一郎の代表作『一月物語』が夢幻朗読劇に! 水夏希インタビュー

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幻想的で日本の古典的な妖しさを漂わせる、芥川賞作家・平野啓一郎の代表作『一月物語』が、音楽と身体表現を織り交ぜて贈る珠玉の朗読劇として、3月7日〜12日よみうり大手町ホールで上演される。
 
『一月物語』は、明治三十年、奈良県十津川村を舞台に、神経衰弱の気鬱を逃れ、独り山中をさまよう青年詩人・真拆が、いつしか現実と夢界の裂け目に迷い込み、運命の女と出逢う、幻惑的な物語。この香気を放つ小説を、文学的でありつつポップでロックな創作スタイルが高い評価を得ている谷賢一が構成・演出し、小劇場ミュージカルから壮大なオーケストラまで幅広いジャンルを手掛けるかみむら周平の音楽・演奏によって、夢幻朗読劇として生まれ出る。
その作品で、運命の女・高子を演じるのが元宝塚雪組トップスターで、現在女優として多彩な活動を続けている水夏希。朗読劇にも積極的に取り組んでいる彼女ならではの、新しい夢幻の世界が広がるにちがいない。そんな彼女に、作品に感じている魅力、宝塚時代の盟友である彩吹真央、初顔合わせとなる久保田秀敏という、刺激的なWキャスト、バレエダンサーの横関雄一郎との共演への期待、更に、演出の谷賢一への期待など、公演への意気込みを語ってもらった。

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読めば読むほど味わい深い原作世界

──新たな朗読劇という形で、朗読劇には多く取り組まれていますね。
そうですね、嬉しいことに色々とご縁を頂いています。
──その中で今回は、平野啓一郎さんの代表作『一月物語』の朗読劇ということですが、まず原作にはどんなイメージを?
最初に思ったのが、文体が難しい!ということでした。ざっと読んで雰囲気は感じられたのですが、やはりきちんと読まなければと思い、わからない言葉などを調べながら読んでみたら、あまり現代では使われないような昔の漢字も多かったので、ですから第一印象はなかなか入りにくかったという感じでしょうか。でも難しい漢字が使われている分、文字自体が持っている雰囲気や、イマジネーションを喚起されるものが確かにあるんです。敢えて当て字が使われているところなどにも意味があると感じるので、読めば読むほど面白い作品だなと。読書というのは基本的にそうですけれども、この作品はとりわけ文章から情景が浮かんでくるのが印象的でした。
──その漢字を敢えて映像で出したりもするそうですね。
演出の谷賢一さんが、奇想天外な発想をされる方だと思うので、どう表現されるのか楽しみです。原作では私の役の登場は後半になってからですが、そのあたりにも色々構想がおありだろうと思います。バレエダンサーの横関雄一郎さんも出演されるので、ただ座って本を読むというものにはならないですし、作品自体もリアリティがありつつファンタジー色が濃いので、そこをどう融合させるのかも見どころになると思います。
──演じる「誘う女」高子についてはどうですか?
高子の母がなぜ蛇に魅入られてしまったのかを、探っていきたいと思っています。正解というか答えはないとは思うのですが、自分自身として腑に落ちるものはやはり必要になりますから、深く考えていきたいです。原作の中にも高子の台詞というのは少なくて、こう見えるという描写に寄って描かれているものの方が多いので、そこをどう具現化していくかが大切だと思います。

男役彩吹真央VSファムファタール水夏希 

──共演のキャストの方々で、特に注目されるのが、彩吹真央さんと久保田秀俊さんが真拆役でWキャストということなのですが。
それは私も同じです!(笑)「えっ?これどうなるの?」と。特にゆみこ(彩吹)は退団してから、あまり男っぽい役柄をチョイスしてこなかったと思うので、驚きもありましたが、やはり朗読劇ということで、声を聞いて想像して頂くという意味では、とても面白いWキャストになると思います。
──彩吹さんとの共演は懐かしさもありつつ、今回はまた別の期待があります。
ゆみこ(彩吹)が男性役で、私は女性役で、更に男性を惑わすファムファタールという存在でもあるので、ゆみことそういう関係性で演じるのか!と思うと、楽しみなのと同時に、ちょっとこそばゆいような気持ちもあって(笑)。彼女は作品ごとに役をとても細かく掘り下げてくる人なので、どう準備してくるかも楽しみです。
──そこからまた久保田さんに替わることによって、全く違うものになるでしょうね。
本物の若い青年ですからね!イケメンですし(笑)。私は今回初めてご一緒するのですが、劇中の高子も、真拆のことは知っているようで知らなくて、会ったことがないのに呼び寄せるという感覚に近いのですから、どこまで心でつながることができるか、そこが大事かなと思っています。
──これは絶対に両方を観なければ!という気持ちになりますね。
本当にそう思います。全然違うものになりますから。

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視覚で提示しないからこそ、想像力が喚起される朗読劇

──様々に携わっている朗読劇の魅力についてはどうですか?
やはりお客様が自由に想像できるということですね。私たちはその想像の手助けをして、色々なイメージを持って帰って頂く。おそらくお客様は私たちの演じた以上のイマジネーションを持たれると思うんです。言葉だけだからこその広がり、言葉から想像する音やビジュアルは、「この世界はこれです」と視覚で提示する以上の広がりがあるので、作品もやはり広がりのあるものに仕上がると感じます。
──水さんは踊らないのですか?
踊らないんです。今回、横関さんがご出演されるので「私も踊りたいです」と言ったのですが、谷さんに「いえ朗読ですから」と言われて(笑)。踊らなくてけっこうです、みたいな感じでした(笑)。
──実は観客側としてもちょっと期待していました。
私は踊る気満々だったんですけれどね(笑)。となると、本当に言葉だけですし、先ほども話に出たように原作の言葉が難しいものが多いので、それをきちんとお客様にお伝えする為には、読む側が相当しっかりイメージして、きとんと伝えようという意志を持つ必要があります。一方で、その難しい言葉自体が持っている響きによって、作品の世界観がより鮮明になると思うんです。明治という時代設定とか熊野古道とか、山の上にポツンとあるお寺とか、そういう雰囲気を感じて頂けるようにしたいですね。でも、私は踊りませんが(笑)、横関さんの踊りは本当素晴らしいので、稽古場で間近で拝見できるなんて夢のようです。きっとその素晴らしいダンスから伝わるものも多いと思います。私自身、今少し時間に余裕があるので、原点に立ち返って考えることも多いのですが、やはり力が抜けているということが、一番大切ではないかと。そして、それは歌も踊りも芝居も同じだと思います。もちろん自分が目指すところというのは必要ですが、それが明確にわかった上で力を抜いて自由に、フレキシブルにできることがベストだなと。横関さんのダンスを見ているとまさにその通りなんです。力強いのにきちんと力が抜けているから、伸びやかで、空間を動かすというのはこういうことなんだ!と思えます。ですから、得も言われぬ『一月物語』の世界観を、踊りで自在に表現してくださると思います。

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出会いというものはそのすべてがご縁

──踊りと言えば、水さんご自身も『Pukul』に取り組んで、初めてのダンスも多くあったと思いますが。
後遺症が大変でした(笑)。やっと復活しましたけれど、あちこち痛くて(笑)。でも謝珠栄先生は愛にあふれた先生ですし、メンバー全員が先生のやり方をわかった上で、その思いに応えたいと一丸となっていました。先生が提示してくださるものに必死でついていって、「いいね!」と言ってもらうために一生懸命になるというピュアな空間でした。稽古期間や稽古の仕方も宝塚時代を彷彿とさせるものでしたし、劇場にも宝塚時代のお客様がたくさんいらしてくださったので、温かい年末だったなと思います。
──男性キャストも出演していましたが、女性キャストは宝塚OGだけという、ありそうでない舞台でしたね。
そうなんです。でも違和感は全くなくて。男性キャストの皆さんが謝先生とお仕事をたくさんしていらしたこともあって、宝塚のことをよく理解してくださる方ばかりでした。岡(幸二郎)さんにいたっては、「この方も元タカラジェンヌだった?」と思うほどで(笑)。
──岡さんはご自分でも「元タカラジェンヌ」とおっしゃってますね。
 (笑)そういうノリの良さもあって、1つの空気感で固まったカンパニーでした。出会ったことのない世界観や、初めてご一緒する方によって、自分が刺激を受けることもすごく大切だなと改めて思いました。
──そういう意味で、良い流れで今回の朗読劇につながりましたね。
今回の公演はとてもご縁を感じることが多いんです。私は熊野古道は、まだ行ったことがないのですが、でもいつか行きたいとずっと思っていた場所なんです。今住んでいるところの氏神様も熊野神社で、そこにもご縁を感じています。熊野は神々の住む場所と言いますし、きっとこういう物語を書かずにはいられないような神秘的な場所なのだろうと思うので。
──惹かれていた場所の物語にめぐり合ったわけですね。
ただ、この作品に限らずすべてはご縁だなと思うんです。これまでの作品もそうですし、共演者の方も、スタッフの方も、出会いというもの、そのすべてがご縁ですので、その1つ1つを大事にしていきたいと思っています。

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朗読劇の概念を超えたなんでもありの舞台に

──今回の演出の谷さんとの出会いもまた興味深いですね。
舞台は度々拝見していて、この方は止まらないタイプだなと思っていたんです。きっと話も止まらないし(笑)、稽古も止まらない。1日中芝居のことを考えているタイプの方だなと感じるので、その世界にどっぷりつかっていきたいです。
──水さんの新しい面も引き出してくださるでしょうね。
すごく期待しています。最初にご挨拶した時も面白かったんです。谷さんが演出された作品の楽屋で大空さんと話してらっしゃる時に、お話の中で「今度水夏希さんとご一緒するんです」とおっしゃっていたので、横から「すみません、水夏希です」って言ったんです(笑)。本当にたまたまで。そしたら「おぉ〜!」って、この表現はちょっと失礼かもしれませんが、一見チャラい感じで(笑)。谷さんというお名前からは、どうしても宝塚の谷正純先生が思い浮かぶので、もう少し重い感じの方を勝手に想像していたんですよね(笑)。でもそういう、ちょっと軽い感じの谷さんが(笑)、実はこの『一月物語』のような幻想世界に精通していらして、頭脳明晰で、様々な知識をお持ちで、演劇に対して深い愛情があって。そういう方とご一緒に作品づくりが出来ることは、すごく幸せだなと思います。
──かみむら周平さんの音楽も含めて、新しい朗読劇の舞台になりそうですね。では改めて、この舞台を楽しみにされている方たちにメッセージをお願いします。
良い意味で朗読劇の概念を超えた、なんでもありの舞台になると思います。精神論も入ってくるような作品で、「何をもって自分というのだろうか?」というようなことも出てきますし、作品を通して自分と向き合うことになると思います。原作を読んでからご覧になるのも楽しいと思いますし、原作を読んでいなくても、風が吹いたり、水が流れたりするさまをこの舞台で感じていただけるはずです。平野啓一郎さんのファンの方は、それぞれ持たれているイメージがおありだと思いますが、そこは朗読劇なのでイメージを限定しませんし、原作世界をさらに拡げるものになると思います。聴覚はもちろん、視覚的にも、文学的にも、心に残る作品になると思いますし、絶対に面白いものになると思います。劇場でお待ちしております。

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みずなつき○千葉県出身。1993年宝塚歌劇団入団、2007年雪組男役トップスターに就任。2010年退団後は、舞台を中心に活動中。主な出演舞台は『7DOORS〜青ひげ公の城』、『客家〜千古光芒の民』、『屋根の上のヴァイオリン弾き』、『新版 義経千本桜』、『FLAMENCO CAFE DEL GATO』、ブロードウェイミュージカル『シカゴ』宝塚OGバージョン、『エリザベートTAKARAZUKA20周年 スペシャル・ガラ・コンサート』、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』『パンク・シャンソン』〜エディット・ ピアフの生涯〜』ミュージカルコメディ『キス・ミー・ケイト』『ラストダンス−ブエノスアイレスで。〜聖女と呼ばれた悪女 エビータの物語』『Pukul』など。4月6日、7日にCOTTON CLUB LIVE 『Middle of the journey』、5月にDRAMATIC SUPER DANCE THEATER FLAMENCO 『マクベス〜眠りを殺した男〜』、6月〜8月にミュージカル・コメディ『キス・ミー・ケイト』の全国ツアーが控えている。
 
〈公演情報〉
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夢幻朗読劇『一月物語』  
原作◇平野啓一郎
構成・演出◇谷賢一
音楽・演奏◇かみむら周平
振付◇宝満直也
出演◇水夏希 横関雄一郎(バレエダンサー) 榊原毅 
彩吹真央・久保田秀敏(Wキャスト)
●3/7〜12◎よみうり大手町ホール 
〈アフタートークショー〉
・3/8(木)19:00 水夏希・久保田秀敏
・3/9(金)15:00 水夏希・彩吹真央
〈料金〉7,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030(平日11:00〜17:00)
〈公式HP〉http://ichigetsu.com/



【取材・文/橘涼香 撮影/友澤綾乃】



帝劇ミュージカル『1789』
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待望の本邦初演の舞台ミュージカル『マディソン郡の橋』に挑む!山口祐一郎&涼風真世インタビュー

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クリント・イーストウッド監督・主演による大ヒット映画『マディソン郡の橋』が、珠玉のミュージカル・ラブ・ストーリーとして生まれ変わったミュージカル『マディソン郡の橋』が、3月2日〜21日、日比谷のシアタークリエで本邦初演の幕を開ける(2月24日〜26日北千住シアター1010でプレビュー公演。3月28日〜4月1日大阪・梅田芸術劇場シアタードラマシティでも上演)。

「マディソン郡の橋」はロバート・ジェームス・ウォラーの世界的な人気小説。アイオワの農家で夫と子供たちとの家庭を18年間営んでいた女性と、彼女の前に突然現れたカメラマンの男性との、たった四日間の、だが二人の心に永遠の楔を残した恋を描いたこの作品は、1995年に映画化。世界中で一大ブームを巻き起こした。更に、2013年に現代ミュージカルのヒットメイカーの1人、ジェイソン・ロバート・ブラウンの作詞・音楽によってミュージカル化がなされ、翌2014年にはブロードウェイに登場。その年のトニー賞オリジナル楽曲賞、編曲賞を受賞するなど、高い評価を得た。
そんな、文学、映画、演劇の三つのジャンルで愛される物語が、シアタークリエ10周年記念ラインナップの1本として、山口祐一郎と涼風真世というベストキャストを得て、数々の美しい世界観を紡いできた荻田浩一演出によって上演されるとあって、今、大きな期待が集まっている。

その待望の日本初演の舞台で、ロバート・キンケイド役を演じる山口祐一郎、フランチェスカ役を演じる涼風真世を囲んで、1月30日都内で合同取材会が行われ、主演の二人が作品への想いと意気込みを語ってくれた。

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1960年代の社会規範の中で生まれた「四日間の純愛」

──今、感じている作品の魅力を教えてください。
山口 この作品は原作、そして映画と本当に多くの方に楽しんで頂いて愛されているもので、ご覧になった方々それぞれが、その時のご自身の想いや立ち位置で、全く違うものを感じておられると思います。それだけ多くの方が見入ってしまう魅力を持った作品なので「ここが魅力です」とか「ここを是非観て欲しい」とかを申し上げるよりも、作品の中に入った自分が、毎日の稽古の中でどんな形になるのか?、そこで何が起こるんだろう?という思いでいます。なので「どうぞここです」と提供するものを決めるというよりも、自分もどうなるんだろうと思いながら日々稽古をしています。
涼風 山口さんがおっしゃった通りだと思いますし、四日間の恋と言われていますが、私は大人の初恋、純愛だと捉えています。その後の人生において、私が演じるフランチェスカは、ロバートと出会った四日間の純愛を大切に生きていったのではないか、そう感じて今はお稽古に取り組んでいる最中です。
山口 皆さん1人1人の中にもきっとあると思いますよね。日常生活とは別の「あの人との思い出」というものはね。
 
──有名な物語ではありますが、改めてお二人からそれぞれの演じるキャラクターについて教えてください。
山口 1960年代の物語で、皆さんは生まれていらっしゃらなかったと思うのですが、僕は生まれていたんです(笑)。60年代〜70年代にかけて「ウーマン・リブ」とかね、女性解放運動が全部終わって、今ここにも、こうして女性記者の方たちがたくさんいらっしゃるんですけど。でもこの時代って男女の役割分担が決まっていて、女性はこうしなければならない、という抑圧されたものや、無言のプレッシャー等が色々ある訳です。特にフランチェスカさんがいるのが、アイオワのコーン畑、僕もそこに行ってきましたけれど、時速80マイルで数時間走っても360度コーン畑なんですよ。その中で、朝から晩まで、晩から朝まで、ただ、牛とコーン畑の面倒をずっと見て、ご近所と言っても双眼鏡で見てようやく見えるかな?というほどのところで。にもかかわらず、本当にお互いがお互いを双眼鏡で見ていて、誰が街に来て朝ごはんに何を買ったかまで、皆わかっている。ちょっと前の日本の共同体や、地域社会にもあった暮らしです。そこに世界中を渡り歩いているカメラマンの僕がくる。彼は一応カメラマンという職業があるから、社会の中にはいるんですが、家族もなければ、地域のコミュニティの活動も何もなく、一度結婚はしたもののすぐに別れてしまって、ただ1人でずっとカメラマンを続けている。一般的な社会規範の中のギリギリにいる人物です。その彼が、典型的な農村地帯の家族の中にいるフランチェスカに、マディソン郡の橋で出会う。マディソン郡の橋、屋根付きの橋なんですね。この中に屋根付きの橋をご覧になった方いらっしゃいますか?、あぁ、いないんだね。僕は見たんですけど、屋根付きの橋ってね……
司会 山口さん、橋の話はそのくらいで(笑)。
山口 あぁ、そうですか?(笑)、では、そんな男です(爆笑)。
涼風 山口様が今フランチェスカのことも話してくださいましたが、イタリア出身の女性です。夫がいて、子供が二人、息子はマイケル、娘はキャロライン。何不自由なく生活はしているけれども、どこかに何かね。何かが起こって欲しい訳ではないのですが、皆様もたぶん日々の生活をしていく中で感じているだろう「何か」を思って生きている女性、というところです。そこにナショナル・ジオグラフィックの写真家である、ロバート・キンケイドさんが突然現れた。そこからドラマがはじまっていきます。
司会 フランチチェスカはイタリア人で、ナポリ出身。海のある街ですね。
涼風 そうです。
山口 ミラノではないんですね?(笑)
涼風 ミラノではなく、ナポリです(笑)。
司会 海の街から畑に来た人。
涼風 船に乗り、電車に乗り、最後はトラックで。楽曲の中にもあるのですが、300エーカー走ってアイオワについて、そこから18年間、夫と子供の為に頑張ってきた女性です。

魅力的であればあるほど、一筋縄ではいかない

──作品の音楽的な魅力はどうですか?
涼風 フランチェスカはイタリア出身ということで、オープニングの楽曲でフランチェスカがモノローグ的に、イタリアからアイオワに来た経緯を歌にのせて皆さんにお届けします。そこに、フランチェスカの不安や葛藤、将来どうなるんだろうという思いがあり、またイタリアの街を思わせるようなものがかなり盛り込まれています。主にフランチェスカの歌は三拍子なんですね。その三拍子の中にトニー賞をもらった作曲家の方の想いがこめられていると感じます。私は日本人なので、とても三拍子が難しくて、今闘っている状態ですし、素晴らしい曲であればあるほど、日本語を音符にのせた時の困難な部分がありますので、なんとか消化している最中です。
山口 魅力的な楽曲という意味で、ワルツが難しいというお話がありましたが、1曲の中で変拍子、拍子が変わっていくんです。四分の三から、四分の四になり、八分の七になって、また四分の四へとね。八分の七なんてやめてくれと思うんだけれども(笑)。でも、きっと皆さんも、コミュニケーションをとりたいのに、なかなか取れないとかいう局面があると思いますが、それって難易度が高いんですよね。魅力的な相手であるからこそ、自分でつかんだり、中に入り込むことをなかなか簡単にさせてもらえない。その代わり、そこに一体感を得られた時、その人と気持ちがカチッと合った!という時、楽しいでしょう?その感覚を今、僕もお稽古の中で味わっています。
 
──共演の多いお二人ですが、お互いの魅力をどう感じていらっしゃいますか?
山口 出会ったのが今で良かったなと思います。今だから、色々な意味でコントロールが効くんですけど、もうちょっと前に出会っていたら人生ダメにしてしまっていたかも知れない(笑)。特にこういうお芝居をやっていると、もうちょっと早く出会っていたら危なかったな、と思いますね。いいものって自然に見えるんですよ。何かそこでやっているとは見えない。だから女性の皆さん、是非涼風さんをよく見て、「あ、あれだな」というものを盗んでください(笑)。ようやく僕もこの年齢になって見えるようになってきた「あ、なるほどな」と思うテクニックね(笑)。それも無意識で出来ているというレベルに持っていく術を、今度の舞台を観ながら盗んでください。きっと皆さんのこれまでの人生の色や質感を変えてくれると思います。
涼風 何度か共演させて頂きましたが、山口様をこんなに間近に感じられるのが初めてなので、ドキドキしてます。
山口 僕もです。
涼風 今、顔が見られません!(笑)これが純愛なのかも知れないです。照れるな!(爆笑)っていう心境で、毎回お稽古に臨んでいる涼風真世です。
山口 若い頃、隣の劇場(東京宝塚劇場)でやっていたでしょう?あー!(惜しかった!というリアクションをするので、会場笑)

観客と同じ空気と時間を共有する、舞台だからこそ伝わる作品の機微

──原作本も、映画も大ヒットした作品ですが、舞台作品ならではの特徴や感じていることは?
山口 舞台の最大の魅力は、今のこの空間と同じで、皆様の息遣いや、体温を1つの空間で共に感じ、同じ時間を過ごすことができるということですよね。それがあるが故に、感じてもらえるものがあると思います。映画ではある一定の効果を持たせる為に、登場人物を脚色している面があります。我々二人の関係をピュアに見せる為に、例え家庭を持っていようと、例え社会生活の中である一定の役割を担っていようと、そのつながりに背くことになるかも知れないめぐり会い、出会ったことによって始まる人間関係は、1960年代においても、ただ否定するだけのものではない。ということが際立つように、最初の一般的な家庭関係の中で、コミュニケーションが上手く取れていない夫婦関係ですとか、置かれている環境が全く文化に乏しい、図書館もなければ、映画館もなければ、本当に何にもない。あるのはコーンの貯蔵庫と牛の道具を売っている店だけだとか。それらを強調すると、ロバートというカメラマンがポンと登場してきた時に、二人の関係が映えるんです。でもそれは今の情報コントロールと一緒で、作品が持っている色々な魅力を、提供している側が選択して、最初からテイストを決めて相手に出しているんです。まず原作があって、その原作から映画にいった時に、二人のラブストーリーが単なる背徳的なものではないと見せる為に、家族から全く無視されているフランチェスカを描くんですが、今回の舞台の場合はそうではないんです。登場人物の1人1人が、本当に誠実に生きていて、魅力的なんだけれどもちょっとかみ合わない。良いお父さんだし、良い娘だし、息子なんだけれども、ちょっとかみ合わない。皆さんも持っているかも知れない、決して特殊ではない兄弟や、親子の関係なんです。だから本来それだけで良いはずなのに、そのちょっとかみ合わないところをクローズアップして、全く孤立している寂しい女性に描かれていたフランチェスカを、舞台はそうは描いていないんです。皆が魅力的なんだけれども…という、その機微は舞台の魅力ですね。
 
──誰もが誠実に生きているのだけれども、微妙なズレが繊細に表現されているのですね?
山口 あとは日本ですから、宗教観が違うということもあると思います。アメリカでは、子供を持つまでの夫婦の関係はこうあるべき、母親と父親になった夫婦はこうあるべき、親子の関係はこうあるべき、というものが濃厚に出るので、それに背いた時の批判というのはやはり原作にもあちこちにあります。映画でもそうですね。だから、僕たち二人の関係を美しく見せようとすると、家族の描き方が頑迷になる。でも、2018年の今、日本の僕たちが観ると、母親はこうあるべきだと思っているお父さんだとしても、その人はその人なりに一生懸命生きているとわかるし、何か物足らないけれども、いったん引き受けた家族なのだから、私はここで生きていかなければ、と思っているフランチェスカの気持ち、その双方を理解できる。そして、どんなに誠実な良い人であっても、新しい出会いによって、ポッと生まれてしまった気持ちというものは止められない。それをどうやって止めるのか?なんですよね。だから今稽古場でね、涼風さんに対して「ごめんなさい、僕がこんなところに出てきたばっかりに」と思いますね。しかも、僕はその場から消えますから。無理難題を女性に与えておいて、僕はその現場からいなくなる。で、その後、すべてを引き受ける女性、と思うと、本当になんてけしからん奴だ!と思うんですが(笑)。でも、僕はそれを忘れて、ロバートはロバートなりの生き方をしている、というところを演じたいです。
 
──涼風さんは舞台ならではの魅力についていかがですか?
涼風 ミュージカルということで、やはり歌を聞いて楽しめるということがまずありますし、ライブなので、同じことをしていても日々違う、お客様と共に作られる空気感、世界観の中で上演できるというのは、舞台になった時の魅力だと思います。

今の時代の日本でこそ、作品を通してクリアになるものが多くある

──先ほど現地に行かれたというお話もありましたが、それぞれの役作りで特になさったことは?
涼風 私は田舎育ちなんですね。フランチェスカはイタリアからアメリカに行きましたが、私は宮城県石巻市で生まれ、北海道の釧路に行き、富山に行き、そこで宝塚を観て、受験の前にやはり父の転勤で大阪に移り、宝塚に入って生活をして、今は宝塚を退団して東京に住んでいる。全く違うようで、どこか自分に似たところのあるフランチェスカなので、親しみもありますし、同じ女性ですから気持ちもわかります。料理も洗濯も掃除ももちろんしますし。皆さんがフランチェスカをどう感じていらっしゃるのかはわかりませんが、私としては、私がフランチェスカを演じるというよりも、舞台に立っている私の姿そのものが、フランチェスカであれば良いな、と思ってお稽古に臨んでいます。
山口 カメラマンという職業で、芝居の中の台詞にもあるのですが、現場に行って、現実そのものに関わった仕事をしているんですけれども「自分は常に客観的にしか人を見ない」とロバートは言うんですね。よく戦場や、災害の写真を撮られる方の中には「写真を撮っている前に何故助けなかったんだ」と言われて、自殺してしまわれた方もいらっしゃる。そういうロバートのような仕事をしている方は、以前は極限られていたんだけれども、今は多数派になっていて、今、ここにいらしている方たちは皆さんそうですよね?
涼風 さっき皆さんが撮影されているのを見た時に、そう思いました。
山口 基本的に、共同体や家族関係が、今の時代は薄まってきていて、原作では社会の端っこにいるロバートが、いつの間にかある意味多数派になってきている。そういう意味では、彼の持っている疎外感とか、孤独とかには、皆さん共感できるんではないかな?と思ってやっていますね。一方で、夫がいて、子供がいて、親がいて、すべてが満ち足りていると見える人ほど、心の中にふっと隙間を感じることもあると思います。ロバートは1人で死んでいく訳ですけれども、この物語の1960年代、僕が子供の頃ですが、1人で亡くなる方は本当に少なかったんです。でも今は、1人で亡くなるということをベースに、物事を考えて行きましょう、という時代になっている。だからむしろ、今の時代の日本でこそ、なんとなくうっすらと見えていたものや、とりあえず考えないように横に置いていたものが、この作品を通してクリアになるんじゃないかなと思います。ちょうど良い時期に、日本で観て頂けることになったのでは?と思いながらやっていますね。
 
──特に印象に残るシーンはありますか?
涼風 今回の舞台は出演人数がとても少ないんです。これまでのミュージカルですと、アンサンブルの方がいらして、プリンシパルがいるという構成なのですが、今回は全部で9人だけの出演者で作られている舞台なんです。ですから、1人1人が自分の役柄や、歌などの役割分担に、今まで以上の責任感と集中力を持ちながら臨んでいるお稽古場だと感じていて、私はフランチェスカに集中しています。その中で印象的なのが、今は山口祐一郎さんとの場面を1時〜4時までお稽古し、4時から他の皆さんとのお稽古をしているので、濃密であると言えば、祐様との場面、フランチェスカとロバートとの場面が1番深く進んでいる状態です。昨日の段階までですが。なので、ここからまた1人1人のお稽古がどのように進んでいくのか、2月が勝負だと今は思っています。答えになっていますでしょうか?(笑)
山口 だいたい作品と個人的なことというのは、どこかで自分で見つける時に引き寄せたり、また忘れたりしながら作品に向かっていく訳ですけれども、この作品には色々な台詞があって、個人的にすごくフィットする場面があるのですが「それはここと、ここです」と言ってしまうと、僕の一番パーソナルな部分だから、できれば触れたくない(笑)。ですからそれはどこか?というのを、是非舞台を観ながら探してください。「あ、今、額に汗が流れた」とかね(笑)。「こんなところで流れる訳ないのでは?」とか、「なんでこんな、なんでもないところで言いよどむんだろう?」とか。でもなんでもないからこそ、その人個人の、こっそりと誰にも知られずにいたい、静かな部分であったりするんですよ。自分でも芝居をしながらそのことに後で気づくんです。後で気づくというのはどういうことかと言うと、帰宅して夜中にまた台本を見る訳です。その時にスーッと記憶が流れていって「どうしてあそこでひっかかったんだろう?」と反芻すると、理由はやっぱり僕自身なんです。「あ、この台詞なんだな」と。するとその台詞をきっかけに、自分でも見ないようにしていたものが「祐一郎君、君はこのことにこだわっているじゃないか」とか「このことがそんなにまだ心に刺さるのか」と自問自答するものがいっぱいあります。だから是非、そういうのを見つけて頂いて、ちょっと汗の分量が増えたな?と思ったら、この部分かな?と思ってください。
 
──では、最後に公演への意気込みを。
涼風 私はたぶん生まれてはじめて「演劇とはこういうものだ」とか「演じるとはこういうことなんだ」とか「ミュージカルとはこうなんだ」とかではないところからスタートしています。自分がどうなるのかが、まだわからないです。是非劇場に足をお運びください。
山口 以下同文です。
涼風 ダメ!(笑)
山口 いえ、以下同文です(笑)。どうぞよろしくお願い致します!

〈公演情報〉
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ミュージカル『マディソン郡の橋』
脚本◇マーシャ・ノーマン
音楽・詞◇ジェイソン・ロバート・ブラウン
原作◇ロバート・ジェームス・ウォラー(「マディソン郡の橋」)
翻訳・訳詞・演出◇荻田浩一
出演◇山口祐一郎、涼風真世
彩乃かなみ、石川新太、島田彩、加賀谷一肇、戸井勝海、伊東弘美、石川禅
●3/2〜21◎シアタークリエ
〈料金〉S席 11,800円  A席 9,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9時半〜17時半)
プレビュー公演
●2/24〜26◎シアター1010
〈料金〉11,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉シアター1010チケットセンター 03-5244-1011(9時半〜18時)
●3/28〜4/1◎梅田芸術劇場シアタードラマシティ
〈料金〉12,500円 (全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 06-6377-3888 


【取材・文/橘涼香】




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KAAT神奈川芸術劇場『三文オペラ』明日いよいよ開幕!松岡 充インタビュー

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白井 晃芸術監督を中心に、才能ある若手演出家をフィーチャーして作品作りに力を注いでいるKAAT神奈川芸術劇場。今回は、劇作家・翻訳家としても活躍する谷 賢一の演出により、ブレヒト&ヴァイルの名作『三文オペラ』を上演。いよいよ明日、1月23日から幕を開ける。(2月4日まで)
主人公のマクヒィスにはSOPHIA・MICHAELのヴォーカルで、俳優としてもさまざまな顔を見せてくれる松岡 充。マクヒィスを巡る女性たちには、全日本国民的美少女コンテストのグランプリでドラマなどで活躍する吉本実憂、AKB48の峯岸みなみという初舞台の2人に、宝塚歌劇団元宙組トップスターの貴城けい、ナイロン100℃の村岡希美といった豪華な顔ぶれ。男優陣も舞台・映像と幅広く活躍中の高橋和也、さらに白井 晃も俳優として出演する。

【あらすじ】
マクヒィス(松岡 充)は、乞食商会社長ピーチャム(白井 晃)のひとり娘ポリー(吉本実憂)をみそめ、その日のうちに結婚式を挙げる。それを知ったピーチャムとピーチャム夫人(村岡希美)はなんとか別れさせようと、マクヒィスと長年の親友同志である警視総監タイガー・ブラウン(高橋和也)を脅し、マクヒィスを逮捕させようとする。両親の企みをポリーから聞いたマクヒィスは、逃げると称して娼館に立ち寄るが、そこで昔なじみのジェニー(貴城けい)に裏切られ、逮捕されてしまう。牢獄に入れられたマクヒィスをたずねたポリーと、マクヒィスといい仲になっているブラウンの娘ルーシー(峯岸みなみ)が鉢合わせすると、二人の嫉妬の口論を利用し、マクヒィスはまんまと脱獄するが・・・

1928年という、ナチス台頭前夜の混沌の中で生まれたこの戯曲が、2018年の日本で、何を浮かび上がらせるだろうか。
今回、主役のマクヒィスを演じる松岡 充が、ブレヒトの戯曲やヴァイルの音楽への彼ならではの読み解きなど、この作品について熱く語ってくれた「えんぶ4月号」のインタビューをご紹介。
 
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演じやすくて現代的な谷賢一の上演台本

──まず、この作品についてどんな印象がありましたか。
題名や有名な「マック・ザ・ナイフ」の曲については知っていましたが、それ以上のことは正直あまり知りませんでした。出演が決定してから、内容を知っていく中で、100年近く前の作品なのに、世界中でこれだけ何度も上演されたり、色々な演出家や俳優がトライしたいと思う、その理由がわかりました。現実を映し出す作品というか、現在の僕らの生きる社会を、すごく投影しやすい作品だと思いました。
──演出する谷 賢一さんが翻訳も手がけたそうですが、上演台本はどんな感じですか?
全部現代の言葉に置き換えてあるので、言いやすいです。原作戯曲も読みましたが、比喩を連ねたり、わざと回りくどく言ったりするところが多くて、当時だとそう表現するしかなかったのかもしれませんが、谷さんの訳は、今の若者の表現だとこうなるよという、そういう置き換えをしています。
──ある意味、意訳という感じなのでしょうか?
そうかもしれないですね。それは僕もミュージシャンで歌詞を書いているので、すごく理解できるんです。たとえば僕は、「愛の讃歌」という邦題で有名なエディット・ピアフの「Hymne a L’Amour」という曲を僕の訳詞で歌っているんですが、直訳ではなく、元の歌詞が言おうとしていることを僕の言葉で書き直したんです。その訳で許可をもらうために海外のエージェントに送ったら、素晴らしいと褒めてくれて、この歌詞は曲の想いをよく表現していると、すぐに許可が下りたんです。日本語というのは、幅広い意味を表現できる言語だと思います。ですから谷さんが、ブレヒトの書いた言葉の一番言いたいことを、色々なニュアンスを込めて意訳されているのは、演じる側からも楽しみなことなんです。
──音楽監督は志磨遼平さんで、舞台の音楽監督は初めてということですが。
パンキッシュなロッカーの方で、この『三文オペラ』の中で描かれる民衆のパワーを表現するにはぴったりの方だと思います。ヴァイルのことは、以前からすごく尊敬していて、自作の曲にはヴァイルの影響を受けて作ったものもあるそうです。この『三文オペラ』の音楽に携われて嬉しかったとおっしゃっていました。
──どんなアレンジになっているのでしょうか?
昭和な感じと言ったらいいのか、戦後の高度成長期の歌謡曲的なテイストを取り入れて、庶民から生まれてきた泥臭いパワーみたいなものを感じさせるものになっています。今回、谷さんや志磨さん、そして振付の近藤良平さん、その他にも才能ある気鋭のスタッフの方ばかりで、素晴らしいカンパニーになっています。

絵に描いたような情けない男、マクヒィス

──色々うかがっていると、まったく新しい『三文オペラ』になりそうですね。
そう思います。もちろんそのぶんプレッシャーもすごくて(笑)。有名な作品だけに、好きな方の中に、こうでなくてはならないという価値観も確立していると思います。でも新しいものとして上演する以上は、どこか壊さなくてはいけない。だけど、その壊すことを「わかってない」と受け取られるかもしれない。でもそれは覚悟して挑むしかないだろうなと。
──演じるマクヒィス役ですが、悪党とも言われたり、かっこいい英雄にも見えたり、色々な見方があります。
僕から見たら「ザ・男」ですね(笑)。男というのは、女性のように地に足をつけて強く生きてはいけない、情けない生き物だと僕は思っていて、そういう男性を絵に描いたようなのがマクヒィスだと。でも、男のロマンみたいな不確かなものを原動力にして、人生を進んでいけるのが男でもあって、そういう魅力をふんだんに持っている人だと思います。
──そういう自由なマクヒィスと対峙する警視総監のタイガーと乞食商会のピーチャムを、高橋和也さんと白井 晃さんが演じます。
お名前を聞いたときワクワクしました。まさに二大神のように立ちはだかるお二人の間で、マクヒィスらしく自由に動き回って、翻弄できればいいなと思っています。女優陣も素敵な方ばかりで、吉本実憂さんと峯岸みなみさんは初舞台ですが、二人とも舞台に出たくて、自分から参加してくれただけに、稽古場でも早くから台詞を入れてくるし、気合いがすごくて頼もしいです。

観客の心に深く傷を付けていく

──沢山のミュージカルに出演している松岡さんですが、今回、ヴァイルのオペラということで、音楽活動にフィードバックするものは?
すごくあります。僕らのやっているロックは、いわゆる西洋の音楽理論で、コードの中でやっているわけですが、ヴァイルの作る音楽は無調音楽というもので、音楽理論から外れているんです。なぜここでこの音になるのか、なぜここへ行くのか、音楽理論的には崩壊しています。だから無調音楽と言われているわけですが。それと同じようにブレヒトの戯曲も、これまでやってきた作品とは違う、初めて出会う感覚なんです。ミュージカルって、感情が高まって高まって、台詞よりもリアリティを伝えられるから音楽で表現する、そういうものだと思っていましたし、実際そういう作品が多いです。でもブレヒト&ヴァイルの作品は、そういう方法とは、ある意味、真逆に創られているんです。
──それが、いわゆるブレヒトの異化効果ということですね。
それを初めて体験しました。はいここまで、ここから歌ですという、その突き放し方がすごい。今までも色々なことを演劇から学びましたけど、今回、また新しい世界と出会って、演劇は深いな、目から鱗だなと。
──音楽経験からブレヒト&ヴァイルを理解するところは、さすがミュージジャンですね。曲そのものは歌っていていかがですか?
最初に違和感があるんですよ。でも、それが逆に癖になる。それは音楽だけでなく、シーンも、それぞれのキャラクターもそうです。賢いなと思ったらバカだったり、色男に見えるけどよく見ると醜男だったり、本当はどっちなんだ?という違和感を覚えさせることによって、観客の心に深く傷を付けていく。そしてその傷は、忘れていた頃に日常生活の中にふと出てくるんです。ブレヒトは、観た人の人生の中で違う価値観が生まれるぐらいのものにしないと、意味がないと言い続けた人です。それが全部詰まったような作品ですから、そこをちゃんと理解しながら、受け入れながら、そして観る方にちゃんと傷を残したいと思っています。

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まつおかみつる○大阪府出身。ロックバンドSOPHIAのボーカリストとして95年デビュー。02年『人にやさしく』(CX系)で俳優活動開始。04年『リンダ リンダ』で舞台デビュー。07年『タイタニック TITANIC the MUSICAL』主演で本格ミュージカルに挑戦。13年SOPHIAの活動休止後、MICHAELを結成。音楽活動はもちろん、番組MC、フォトグラファー、小説、エッセイの執筆などジャンルを超えて活躍中。最近の主演作品は『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『私のホストちゃん』『フォーエヴァー・プラット/Forever Plaid』『DAYDREAM BABYS*』『不届者』など。昨年は映画『TOKYOデジベル』(辻仁成監督)にも主演した。

〈公演情報〉
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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『三文オペラ』
作◇ベルトルト・ブレヒト
音楽◇クルト・ヴァイル
演出・上演台本◇谷 賢一
音楽監督◇志磨遼平(ドレスコーズ)
出演◇松岡 充吉本実憂峯岸みなみ/貴城けい村岡希美/高橋和也白井 晃 
青柳塁斗、相川 忍、今村洋一、小出奈央、小角まや、奈良坂潤紀、西岡未央、野坂 弘、早瀬マミ、平川和宏、峰亮介、森山大輔、和田 武 
 
●1/23〜2/4◎KAAT神奈川芸術劇場 ホール
〈料金〉S席7,800円 A席6,000円  U24チケット 3,900円(観劇時24歳以下対象・当日指定席引換・要身分証明書) 高校生以下チケット1,000円(当日指定席引換・要学生証) シルバー割引7,300円(観劇時65歳以上対象) 
(全席指定・税込) 
 P席2,000円/劇中に登場する『ピーチャム乞食商会』にちなみ、ピーチャム商会の一員としてライブで演劇に参加。オールスタンディングの自由席。開演60分前までに集合、「P席レッスン」を受けていただくことが必須。P席はチケットかながわのみの取扱い。
 〈お問い合わせ〉チケットかながわ0570-015-415(10:00〜18:00)
●2/10◎札幌市教育文化会館 大ホール
〈お問い合わせ〉札幌市教育文化会館 事業課 011-271-5822
〈公演HP〉http://www.kaat.jp/d/sanmon




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