えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

黒木瞳主演舞台『京の蛍火』

稽古場レポート

白井演出で更にファンタジックな舞台に!ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』公開稽古レポート

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世界中にファンを持つティム・バートンの監督作品をもとにした、ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』が、2月7日、日比谷の日生劇場で、待望の日本初上陸の幕を開ける(2月28日まで)。

家族の愛を、ティムバートンならではのファンタジックな色彩で描いた2008年の大ヒット映画が、ブロードウェイの舞台にミュージカルとして蘇ったのは2013年のこと。映画世界の物語の魅力はそのままに、アンドリュー・リッパによる美しい音楽と詞と、心躍るダンスに彩られた舞台は、更に大きな感動を巻き起こし喝采を集めて来た。
 
そんな作品の本邦初演となる今回の上演は、『ロンドン版 ショーシャンクの空に』『アダムス・ファミリー』『No.9〜不滅の旋律〜』『マホガニー市の興亡』など、数々の舞台で確かな演出力を発揮し、話題作を作り続けている白井晃が演出を担当。自らの体験談を、空想の世界にまで広げて語る父親エドワード・ブルームに川平慈英、その妻サンドラに霧矢大夢、父親の誇大な話を長じるにつれ素直に聞けなくなり、それがいつしか親子の溝となっている息子ウィルに浦井健治、その妻ジョセフィ—ンに赤根那奈、をはじめとした個性豊かな実力派俳優達が集結して創り上げられる日本版『ビッグ・フィッシュ』に大きな期待と注目が集まっている。
そんな舞台に向けての稽古が佳境を迎え、1月25日都内で公開稽古が行われた。

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まず稽古を前に、フォトセッションがあり、続いて演出の白井晃、出演者を代表して川平慈英からそれぞれ挨拶があった。
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白井 今日は『ビッグ・フィッシュ』の公開稽古にお越しくださってありがとうございます。この作品はティム・バートン監督の映画で有名なのですが、僕らがやっている作品はブロードウェイ版のミュージカルとして作られた『ビッグ・フィッシュ』です。2013年に作られたものなのですが、映画版とはまた違った形で楽しい音楽と、父親と息子の物語が強調された作品になっています。ご覧のようにですね川平慈英さんはじめ、浦井さん、赤根さん、そして霧矢さんと本当に個性的なキャストメンバーの皆さんに参加頂きました。もしかしたら…もしかしたら、ひょっとしてブロードウェイ版より良い作品になるんじゃないかと(川平の「来た〜!」という歓声で、キャスト陣から拍手)そんな予感がしております。と、手前味噌なんですけれど、それくらい充実した稽古をさせて頂いておりまして、楽しい雰囲気で作らせて頂いております。また今日は公開稽古で、稽古の途中段階ではありますが、皆様に観て頂ければ嬉しいです。よろしくお願い致します。

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川平
 川平慈英です。お寒い中稽古場まで足を運んでくださいまして、本当に感謝しています。ありがとうございます。まず楽しいです。本当に楽しいミュージカルに参加させて頂いて、その楽しさと喜びを感じながら稽古しています。個人的な話ですが、僕は今回劇中で3人の素晴らしい女優さんとキスさせて頂いておりまして、これはデカいです!(キャスト爆笑)、50を超えたおっさんが、霧矢さん、蘭々ちゃん、小林由佳ちゃんとね、白井さんありがとうございます!(会場からも笑い)でも冗談抜きに、素晴らしいチームと一緒に良いエネルギーになっています。圧倒的なミュージカルの楽曲と、ダンスとストーリー、これはもう感動間違いなしだと日々感じております。最後は特に感動的なシーンで、僕らも稽古していても涙が出てしまうんですけど、それくらい愛に満ち溢れた素晴らしい、温かいミュージカルになっております。東京の2月は1番寒い時期ですが、皆さんに日生劇場で心温まって、皆様と一緒に良い汗を分かちあっていいんです。2月は日生劇場で幸せになっていいんです!どうぞお客様にたくさんいらして頂けますよう、よろしくお願い致します。ありがとうございました。

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それぞれが、作品への手応えを感じていることが伺える力強い挨拶に続いて、1幕の通し稽古が行われた。

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川岸に佇むウィル(浦井健治)と、父親のエドワード(川平慈英)の会話から物語はスタート。結婚披露パーティを翌日に控えたウィルは、エドワードに得意の昔語りをしないで欲しいと何度も釘を差す。2人のどこかぎくしゃくした関係がこの短いシーンからすでに伝わってくる。

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時は遡り、ブルーム家のベッドルームで子供時代のウィルが父親に寝物語をねだっている。この幼いウィル役は鈴木福とりょうたのWキャストで演じられるが、この日は鈴木福が担当。ありものの童話を読み聞かせることに飽き足らないエドワードは、自身の子供時代、友人のドン(藤井隆)らと森に入って魔女に会った話を語って聞かせる。「ヒーローになれ」「おまえの欲しいもの」などのミュージカルナンバーにのって、舞台は華やかに展開。ベッドルームからの滑らかな展開が鮮やかだ。

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そこから物語は現代に戻り、ウィルの結婚披露パーティへ。妻・ジョセフィーン(赤根那奈)の妊娠を安定期に入るまでは隠しているつもりだったウィルの意向に反して、エドワードが「喜びごとを皆さんに伝えたい!」と話を公にしてしまったことから、2人の間の溝は決定的なものになってしまう。なんとか仲裁しようとする母サンドラ(霧矢大夢)の想いも虚しく、ニューヨークへ戻るウィルとジョセフィーン。それぞれの細かい表情の変化で、親子の関係を表す俳優たちの演技に見応えがある。

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だが、病院でジョセフィーンのお腹にいる子供が息子だと知ったウィルは、家族が増えること、自身が父親になることへの期待と不安の中で、自身の父親エドワードへの複雑な感情を吐露した「見知らぬ人」を歌う。思わず会場から拍手が沸き起こったほどの浦井の熱唱に、場が豊かに盛り上がる。

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一方エドワードは病を患っており、そのことをサンドラから聞かされたウィルは、父親の元に駆けつける。サンドラが夫と息子への思いを語るナンバー「わたしの人生のふたりの男性」がしみじみと美しい。だが、心配する息子夫婦にたいしたことはないのだと言い張るエドワードは、ジョセフィーンに昔の話を語りだす。「アシュトンで1番の青年」から続く、エドワードの夢物語は、舞台を一際賑やかな世界に誘う。ハイスクール時代のマドンナ・ジェニー(鈴木蘭々)らも加わり、何よりも川平の秀でたダンス力、軽快な動きが場を弾ませる姿は圧巻だ。

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父親の余命を悟ったウィルは、ジョセフィーンと共に父の創作物の整理をはじめ、それは同時に父の過去を旅することとなり、舞台はエドワードとサンドラが出会った、サーカスへと広がる。オーディションを受けにきたサンドラが踊る「アラバマの子羊」エドワードがサンドラに一目惚れをする「時が止まった」更にROLLY扮するサーカスの団長の強烈な個性で、舞台は更にテンポよく進む。1幕のラスト、遂にサンドラに想いを伝えたエドワードが手にするスイセンの花束から広がるのだろう、舞台一面の黄色が目に見えるような中、2人が愛を誓う「スイセン」のナンバーで1幕の通し稽古は締めくくられた。
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全体に感じられたのは、むしろ殺風景な稽古場でさえ、色鮮やかでファンタジックな舞台が容易に想像できる、実に滑らかな舞台の流れで、白井マジックと呼ばれる演出の白井晃の美しい舞台作りに感嘆させられる。川平のエンターティナーぶり、浦井の真摯な実直さ、霧矢の包容力と巧みさ、赤根の清新で真っ直ぐな視線などにはじまる、出演者の適材適所が心地良く、白井の言葉通り「ブロードウェイ版以上」の『ビッグ・フィッシュ』が生まれ出ることへの期待が高まる、本番の舞台にますます夢が膨らむ時間となっていた。

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〈公演情報〉
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ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』
脚本◇ジョン・オーガスト 
音楽・詞◇アンドリュー・リッパ 
演出◇白井晃
出演◇川平慈英 浦井健治 霧矢大夢 赤根那奈 藤井隆 JKim 深水元基 鈴木福/りょうた(Wキャスト) 鈴木蘭々 ROLLY ほか
●2/7〜28◎日生劇場
〈料金〉S席 13,000円 A席8,000円 B席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉03-3201-7777(東宝テレザーブ)



【取材・文・撮影/橘涼香】



水夏希出演、アルジャーノンに花束を




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柚希礼音が華麗にポップに挑む! シェイクスピア『お気に召すまま』公開稽古レポート

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シェイクスピアの傑作喜劇『お気に召すまま』が、設定を大胆に変えて現代に蘇る!
演出はロック・オペラ『アメリカン・イディオット』で記憶に新しい鬼才マイケル・メイヤー、舞台音楽はブロードウェイで数々の音楽を担当し、ピュリッツァー賞を受賞したトム・キット。この夢のコンビが、シアタークリエ10周年記念公演のために来日した。

2人のもとに集まった俳優は、元宝塚星組のトップスター柚希礼音、日米の舞台で活躍するジュリアン、ミュージカルは百戦錬磨の橋本さとし、狂気と情熱を平然と演じる実力派・横田栄司、ジャンルも幅広い人気男優・伊礼彼方、いぶし銀の演派・小野武彦、可憐で清楚な佇まいのマイコなど錚々たるメンバー。彼らが紡ぎ出すのは、1967年のサンフランシスコでのフェスティバル「Summer of love」を彷彿とさせるハッピーな舞台だ。そんなロックでポップなストレートプレイが、シアタークリエで2017年1月4日から2月4日まで繰り広げられる。その公開稽古が12月21日に行われた。

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【あらすじ】
ロザリンド(柚希礼音)の父(小野武彦)は、弟のフレデリック(小野武彦/2役)に政治家の地位を奪われ、政界から追放される。しかし、ロザリンドはフレデリックの娘シーリア(マイコ)との友情からワシントンD.C.に留まることが許され、2人は姉妹のように仲良く暮らしていた。
ローランド・ド・ボイス家の息子たちも彼女たちの近くに住んでおり、その3男オーランドー(ジュリアン)は長男オリヴァー(横田栄司)から、とある確執から苛酷な生活を強いられていた。オーランドーは一発発起、自分の運を試そうと、フレデリック主催のレスリングの試合に出場し見事に勝利する。この試合を見物していたロザリンドは彼に一目惚れし、2人は恋に落ちる。
しかし、ロザリンドは、彼らの関係に気づいたフレデリックによって、ワシントンから追放されてしまう。ロザリンドは男装して素性を隠し、シーリアとタッチストーン(芋洗坂係長)を伴ってアーデンの森(舞台ではヘイトアシュベリー)に辿り着く。
森には、ジェークイズ(橋本さとし)やアミアンズ(伊礼彼方)たちが悠々自適にヒッピー暮らしをしていた。森でロザリンドはオーランドーを見つけるが、男装している彼女に彼は気付かない。それにヤキモキしたロザリンドは彼の愛の告白の練習相手になることを自ら提案して……。

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マイケル・メイヤーとトム・キット、彼らが手がけるということは、必然的にこの舞台がロックなエンターテインメントになることを意味している。劇中に流れる音楽は、KORGのキーボード、チェロ、ドラム、ベースと、現代っぽい、ポスト・クラシカルな編成になっている。トム・キットがパンク・バンド、グリーンデイの楽曲を舞台『アメリカン・イディオット』でストリングアレンジしたバージョンを彷彿とさせる。今回はトム・キットが書き下ろした新曲が使われており、チェロのメロディが舞台を引っ張る。

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稽古シーンの始まりは、アーデンの森(ヘイトアシュベリー)。アミアンズ(伊礼彼方)がバンドの曲に合わせてアコースティックギターを片手に歌うのだが、これが自由を謳歌する歌そのもの。まさにジャニス・ジョップリンやジェファーソン・エアプレインの系譜に連なるような、フラワームーブメントな曲調で、のどかでいて、サイケデリック、しかもハッピーなフィーリングに満ちた歌だ。

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そこへ追放されたロザリンドの父親(小野武彦)が、まるで映画『地獄の黙示録』のカーツ大佐よろしく、集まってきたヒッピーたちに復讐めいた演説をするのだが、どこか胡散臭く、でも陽気な感触が舞台全体から漂ってくる。小道具もカラフルでサイケな色彩、まさに60年代後半にタイム・スリップしてしまったような感触を覚えるのだ。

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続いてのシーンは、ギャニミードと名前を偽った男装したロザリンド(柚希礼音)が、エリアンナと変名したシーリア(マイコ)を連れ立って、オーランドー(ジュリアン)の恋の指南役をかってでる重要なシーン。

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ここでは、柚希礼音がセリフと動きで魅せる。元男役トップスターだけあって、華麗でいて奔放、なのにどこか女性的。そんな柚希にしかできない男装の女性をしっかりと見せてくれる。シェイクスピアの長ゼリフも難なくこなし、口跡もよく、しかもアクセントにきっちりした抑揚がついているから、まるでロックスターのインタビューのように知性的で熱気があってカリスマ性がある。

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それに翻弄されるオーランドーのジュリアンは、男性ってなんだか単純とでも言わんばかりのおとぼけさ加減で、その見事な天然ぶりには笑わされる。シーリア(マイコ)は、2人のやり取りに横の方でクスクス笑って、まるでいたずら好きの女の子みたいで初々しい。

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ロザリンドにすっかり騙されたオーランドーは、ジェークイズ(橋本さとし)に恋愛相談するのだが、真剣に恋の話をしているのに、悲観論者のジェークイズは、どんどん論点をずらしていってしまう。そのセリフを淀みなく喋る橋本さとしの巧みさ。この場面はシェイクスピアらしいレトリックの面白さが伝わってくる。

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最後は、宮廷側(舞台ではワシントンD.C.にいる保守派)の人間だったオーランドーの兄・オリヴァー(横田栄司)も、ヘイトアシュベリーに足を踏み入れ、ヒッピーたちに感化されていくシーン。いかにも頭が堅いオリヴァーが、ヒッピーたちの奔放な生活に憧れを抱いてしまう葛藤を、横田栄司が狂気に満ちた気迫で演じてみせる。

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音楽は、ジェファーソン・エアプレインの名曲「ホワイト・ラビット」が流れるが、この曲は「不思議の国のアリス」を題材にしたサイケデリックでダークな感じの曲で、その曲に合わせて短銃を持った横田が狂気に冒されていく姿は、ヒッピーの申し子だった亡きジミ・ヘンドリックスを彷彿とさせる。

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また、そこに現れる弟オーランドー役のジュリアンも、上半身をはだけ、厚い胸板を見せていて、そこに、ヒッピームーブメントの裏にある肉体と精神のバランスが崩れ去ってしまった危うさや儚さを感じさせる。この精神と肉体の変調というのはとても現代的な問題であると同時に、この舞台を象徴する場面のようにも感じられた。
 
そんなヒッピーの興隆と挫折という通底する主題があるとしても、それをどこ吹く風と軽やかにユーモラスに演じる役者たち。そう、これはシェイクスピアの喜劇である。そこにはハッピーで感動的な大円団が待っていることは間違いない。
 
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〈公演情報〉
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『お気に召すまま』
作◇ウィリアム・シェイクスピア
演出◇マイケル・メイヤー
音楽◇トム・キット
出演:柚希礼音、ジュリアン、橋本さとし、横田栄司、伊礼彼方、芋洗坂係長、平野良、古畑新之、平田薫、武田幸三、入絵加奈子、新川將人、俵木藤汰、青山達三、マイコ、小野武彦 ほか
●2017年1月4日〜2月4日◎シアタークリエ
〈料金〉11,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777


【取材・文・撮影/竹下力】


柚希礼音主演『お気に召すまま』




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凰稀かなめのライブステージ『The Beginning2』稽古場レポート

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9月16日〜17日に東京EX THEATER ROPPONGIで、9月29日〜30日には大阪森ノ宮ピロティホールで開催される凰稀かなめのライブステージ『The Beginning2』の稽古が順調に進んでいる。その一コマを報告する。

この日は、フラメンコに通じると思えるスパニッシュなダンスシーンの振付が進んでいた。構成・演出・振付を担うTETSUがリーダーを務めるダンスグループ「Bugs Under Groove」のメンバーであるIYO-Pをはじめ男性ダンサーたちが、次々と振りを揃えていく。半拍の動きにまでこだわりを見せるTETSUの指示から、見事に統一されていく動きの中に個々の表現があってダイナミックだ。

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そこから、センターを務める凰稀かなめの振付に。本番では階段の上からの登場となるようで、階段を降りるタイミング、拍数の取り方などが入念に打ち合わせされていく。TETSUの動きに合わせて次々と振りを身につけていく凰稀。その凰稀が動きやすいように意見を取り入れながら柔軟に振りを変化させていくTETSU。信頼感が感じられる2人のやりとりには、時に笑顔も弾けて、真剣さと共に明るさがある。

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音楽が決まったところで、手拍子がはじまり、振りに続けてどちらの方向が良いかも検討される。その時、凰稀の振付を見つめていた他の出演者たちからも、同じリズムを刻む手拍子が自然と加わってきて、全員で創り上げるこの『The Beginning2』の在り方の一端が垣間見えた気がした。

続いて、今度は白華れみと宮菜穂子の女性メンバーの振付へ。曲の途中で上手下手から登場する2人の動きは、ジャンプを多用した華やかなもの。お互いに位置や振りを確認し合いながらの作業を繰り返し、何度となく話し合う2人の表情は実に真摯だ。

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それら、1つ1つのパーツの振付を進めていたTETSUが、全体の確認に入る。凰稀、男性陣、女性陣、個々に進められていた振りが重なった時の迫力には、大きな感動があって、ここにセット、照明、衣装が加わる本番のステージの熱量はいかばかりかと期待が高まった。そこに続く音楽が軽快でアップテンポなもので、ほんの触りをTETSUが踊ると凰稀からは思わず「楽しそう!」という声が。きっと更にショーアップされた総踊りが展開されるのだろう。華やかに盛り上がるステージが予見された。

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何よりも印象的だったのは、この時間にはわずかな出番しかなかった「THE CONVOY」の石坂勇、トクナガクニハルを含めた稽古場の雰囲気がとても熱く、わずかな待ち時間にも振りを確認する全員の姿勢が意欲的なこと。そこかしこで笑顔がこぼれ、一方でストイック。メリハリの効いた時間の中から生まれる『The Beginning2』が、前回よりも更に高みを目指していることが、確かに感じられる熱量の高い時間だった。



〈公演情報〉
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凰稀かなめ『The Beginning 2』 
構成・演出◇TETSU(Bugs Under Groove)
出演◇凰稀かなめ
石坂勇(THE CONVOY)、トクナガクニハル(THE CONVOY)、IYO-P(Bugs Under Groove)、白華れみ、宮菜穂子
●9/16〜17◎EX THEATER ROPPONGI(東京)
●9/29〜30◎森ノ宮ピロティホール(大阪)
〈料金〉10,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京音響 03-5774-3030(平日11時〜17時)
http://t-onkyo.co.jp/?s=凰稀




【取材・文・撮影/橘涼香】




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白熱した場面が展開! 「地球ゴージャス」『The Love Bugs』公開稽古レポート

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岸谷五郎と寺脇康文による演劇ユニット「地球ゴージャス」が、結成から21年目を迎える2016年の年頭を飾って、最新作『The Love Bugs』を赤坂ACTシアターで上演する(2016年1月9日〜2月24日まで。のち、愛知、福岡、大阪でも上演)。

今回取り上げられるのは、「 Bugs」=昆虫の世界。タイトルである『The Love Bugs』は「胸キュンする」「愛らしい」などを指すスラングでもあり、人間が住む世界のすぐ近くにありながら、誰も知らない昆虫ワールドで、小さな住人たちが繰り広げる「命」と「愛」の物語が、ファンタジックに、かつダイナミックに展開される。

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そんな舞台の稽古が佳境を迎え、12月21日都内の稽古場で公開稽古が行われた。まず、昆虫たちに扮する城田優、蘭寿とむ、大原櫻子、平間壮一、マルシア、そして岸谷五郎・寺脇康文によるフォトセッションがあり、続いて岸谷五郎・寺脇康文から、一同を代表しての挨拶があった。

寺脇康文 本日はありがとうございます。普段は我々役者一同は稽古場で稽古して、舞台で稽古して、そして本番仕込みをして、衣装を着て、照明が当たって、お客様に観て頂くという流れが必要なのですが、今日はこうして稽古を関係者以外の方々にも見て頂けるということで、良いチャンスを頂いたと思って役者一同張り切っております。ですから是非皆さんもお仕事ではありましょうが、どこかお客さんになったつもりで観て頂いて、楽しそうだなと思われたらお客様にも観て頂けるように記事を書いて頂けたらなと思っております。短い時間ではございますが、今日は楽しんで帰って頂ければと思います。よろしくお願いします。

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岸谷五郎
 本当にわざわざありがとうございます。稽古場までこんなにたくさんの皆さんに来て頂けて感謝しています。寺脇康文と「地球ゴージャス」を結成して21年目になります。そして『The Love Bugs』が14作品目になります。今回も当然新作で、再演はありません。今回やりきってこの作品はもう一生やらないつもりですが、2016年にあるべき作品として皆様にお目にかけられますよう、今スタッフ・キャスト一同厳しい稽古を積んでおります。エンターテイメントの世界では演劇というものはまだまだ力の小さいものです。皆様のお力を借りてこの『The Love Bugs』が幸せな作品になれるよう、よろしくお願い致します。今日はいくつかのナンバーを見て頂きますが、今回34名という本当に素晴らしいキャストが集まってくれました。皆強者揃いです。その辺も是非1人1人を楽しんで頂けたらなぁと思います。私だけちょっと稽古不足なもので今回は出ていませんが、本番は出ますので(笑)。本日はよろしくお願いします。

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一同から明るい声で「よろしくお願いします!」という声が飛び交う中、公開稽古はスタート。まず大原櫻子を中心とした、オープニングナンバー「THE TOP OF THE BEST!」が披露される。共演者の城田優と並んでいると、身長差もあり愛らしい少女のようだった大原が打って変わった迫力の歌声を披露。小柄な体躯までが大きく見える存在感で、『The Love Bugs』の昆虫ならではの世界が一気に展開されてゆく。

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続いて、マルシアを中心とするナンバー「Birthplace The Earth」へ。城田優、蘭寿とむ、大原櫻子、平間壮一らもからみ、この『The Love Bugs』の世界にだけ登場する固有の昆虫役だというマルシアが、想像力を広げた個性的な仕草と、パワフルな歌声で場面を作り上げ、これまで何度もショーストップの歌声を披露してきたマルシアならではの力量が噴出する。

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そこから、場面は蘭寿とむを中心とした「其々のオーディション」1部〜「ENJOY MY LIFE」へ。蘭寿のナンバーは舞台でも立て続けにあるということだが、時に妖しく時にコケティッシュにくるくると変わる蘭寿の表情と、何よりもしなやかなダンスから目が離せない。宝塚時代にもダンサーとしてならした人だが、男役とはまた違った魅力を放つ全身の表現が美しく、本番への期待をかきたてる。

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そうしてすっかり稽古場の空気がヒートアップする中登場したのが城田優。「伝説の雄」と名付けられたナンバーに臨む城田は、その名の通り伝説の人を思わせる、圧倒的な存在感。あたりを払うようなスターオーラと歌だけでなく、大勢を従えて踊るダイナミックなダンスも披露して、まさに圧巻のパフォーマンスだった。舞台での喝采が早くも聞こえる思いがする。

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最後に寺脇康文がアクションシーンを披露。鍛えられた身体能力の高さを短い場面でふんだんに伝えていて、これら各々の中心シーンがどうつながり、どう流れていくのかに期待せずにはいられなかった。場面を待つ出演者個々の明るい表情も印象的で、ここに岸谷五朗が加わり、どんな新しい世界が広がるのか、『The Love Bugs』の開幕がますます待たれる時間となった。

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〈公演情報〉
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地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14
『The Love Bugs』
作・演出◇岸谷五郎 
出演◇城田優、蘭寿とむ、大原櫻子、平間壮一、マルシア
岸谷五朗・寺脇康文 他
●2016年1/9〜2/24◎赤坂ACTシアター
〈料金〉S席12,000円、A席9,500円、B席8,500円(全席指定・税込)
〈問い合わせ〉チケットスペース 03-3234-9999(月〜土10時〜12時、13時〜18時)
●2016年3/1〜3/3日◎愛知県芸術劇場 大ホール 
●2016年3/11〜3/13◎福岡サンパレス 
●2016年3/19〜3/29◎(大阪)フェスティバルホール 


【取材・文・撮影/橘涼香】


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粟根まこと、松永玲子ほか、キーポイントQ&A【演劇人の活力源】など連載中!
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現代に蘇る寺山修司の『人魚姫』今日から開幕! 藤田俊太郎・悠未ひろ インタビュー


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寺山修司生誕80年を記念して、大人と子供のためのメルヘン作品、美女音楽劇『人魚姫』が、本日、9月18日、東京芸術劇場シアターウエストで開幕する(
27日まで。10月17日〜18日兵庫県立文化センター 阪急中ホールで上演)。

『人魚姫』は1967年に寺山修司と宇野亞喜良が作った人形劇団のために書かれた、切ない愛の物語。今回の上演では、13歳の時に米国アポロ・シアターアマチュアナイト(キッズ部門)で優勝を果たした抜群の歌唱力を持つ青野紗穂が初舞台で人魚姫を、元宝塚歌劇団男役スターの悠未ひろが船長=王子役を演じることにはじまり、ほぼ女性ばかりの出演者と人形で幻想的な舞台が展開される。演出は2015年2月に読売演劇大賞の杉村春子賞・優秀演出家賞を受賞した気鋭の若手藤田俊太郎。また同じ年の読売演劇大賞で選考委員特別賞を受賞した宇野亞喜良が、役者が操る人形と役者の衣装などを手がける。華麗でファンタジックで妖しさも帯びた美術、衣裳も含め、さまざまに期待が集まる舞台だ。

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9月はじめの稽古場では、ダンスシーンの白熱した稽古が展開中だった。悠未ひろを中心に、芝居からそのまま続くという形ではなく、むしろきっぱりとしたアクセントとして挿入されるミュージカルシーンだけに、効果をあげる為に、出演者1人1人の顔の角度、笑顔にまで強い意識が求められる。繰り返すにつれ、場面がみるみる締まってくるのが伝わってくる。

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稽古場にところ狭しと飾られた美術の数々も、東洋的なものと西洋的なものがミックスされた上に、一目で宇野ワールドとわかる独特の美しさとオーラを放っていて、それらに囲まれた空間にいるだけで、舞台が創り上げる世界に誘われる思いがする。演出の藤田、美術の宇野が熱心に見つめる場面の先に広がる、本番の舞台への期待がいやがうえにも高まる時間だった。
 
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そんな稽古場で、演出を手掛ける藤田俊太郎、男役の幻想性をまとって王子様を演じる悠未ひろに、それぞれ作品への思い、また意気込みなどを語ってもらった。

【藤田俊太郎インタビュー】

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──この作品を演出しようと思われたきっかけは?
今回は僕から発信した企画ではなく、プロデューサーから「寺山修司さんの作品を演出しませんか?」と依頼されたところからのスタートでした。でも、元々寺山さんが大好きでしたし、また美術の宇野(亞喜良)さんも、僕にとっては藝大時代からスターでいらした方ですから、寺山さんの台本で宇野さんが美術をされるカンパニーに関われるということで二つ返事でした。寸分の迷いもなかったです。
──寺山作品の面白さをどう感じていますか?
様々な観点があると思いますし、寺山さんには色々な種類の作品があります。60年代後半から「天井桟敷」を率いてアバンギャルドな演劇をしている寺山さんというのが、最も一般的なイメージだと思うのですが、この『人魚姫』は違っていて、「天井桟敷」結成前に、人形の為に書かれた芝居です。俳優ではなく人形が演じる為の本なので、アバンギャルドな面もありながらも、まるで短歌のような、寺山さんの抒情的な面が凝縮されているんです。寺山さんが少女の視点で書かれた詩集などもたくさんありますが、この台本にも少女の視点で描かれた抒情性が詰まっているので、それをどう演出していくかがポイントですし、作品の最大の魅力だと思っています。
──先ほど「スター」という表現をされた宇野さんの魅力は?
その手から創られるものすべてが素晴らしいです。絵画も立体的な人形も、すべてが宇野さんにしか描けない世界で、僕はもう昔からただ圧倒されるばかりでした。60年代、70年代を経て今なお、時代に関わらず輝き続けておられて、たくさんの方達が宇野さんの美術、その独特のビジュアルに魅せられているというのは、本当に大きな魅力があるのだと思います。
──そういう方と実際に、現場で共に仕事をされていかがですか?
宇野さんともこの間お話したのですが、何がこんなにも胸震わせるものを残すのかな?と思った時に、おそらく僕は宇野さんの美術を通して自分自身の中に、少年性ではなく少女性を発見するんですね。良い意味でのある種の違和感と驚きを宇野さんの美術から感じる。インスパイアされるものに、少年の目線ではなく抒情的な少女性に気づかせるものが、誰しもの中にあるのではないかと思っています。不思議な言い方として残しますが「自分の少女時代」に出会うんです。
──それはある意味でかなり劇的ですね。
そうですね。自分がかつて感じていたかも知れない目線だったり、感覚に気づくことですから。

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──そうした発見の中で、『人魚姫』の演出プランについては?
上演に向かって稽古をしている今の段階での演出プランを端的に言いますと、元々が、アンデルセンの童話である「人魚姫」、「リトル・マーメード」を底本に寺山さんの言葉で67年に書かれた人形の為の芝居です。ですから、まず人形劇をどう演出するのかを考えると、普通では表現できないキャラクターが出てくるんですね。クジラとか、そして人魚とか。物語はどなたもご存知のアンデルセンの童話ですから、単純な話なんです。人魚の女の子、人魚姫が人間の船長、王子に対して憧れを抱いて、初恋を胸に海の世界を飛び出て地上の世界に行くのですが、その初恋に破れて海の世界に帰ろうとした時には海はない。故郷は喪失してしまっている訳です。
これにどうやって色々な観点を持ち込んで上演するか?しかも人形劇ではなく、となると、普通にやったのではできない。そこで台本を読み込み、宇野さんとも話し合っていった結果、少しずつ見つかった観点が寺山さんの抒情性だったんです。短歌の中に凝縮されている寺山さんの抒情性がこの台本の中にはある。では、どうやってこの海を読み解こうか?と思った時に、寺山さんが青森にいた時に見ていた東京の風景、憧れがここにはあるんですね。実際に寺山さんが東京に出てこられてから書かれた「天井桟敷」のアバンギャルド性ももちろん内包してはいるんだけれども、一方で性的な台詞は1行もないんです。で、僕自身は秋田出身、東北の出身なんです。だからこそ寺山さんの田舎の少女の視点で書かれたような抒情性に惹かれるし、そこに僕が憧れていた宇野さんの美術がある。となると、この物語の人魚姫と王子様を読み解く上で、答えとしてバッと見つかったのが東北の海でした。東北の海の中で生きる少女。
今、東北の海岸の風景というのは一変しています。僕もボランティアで行きましたが、先日、この芝居に入る前にも自分の故郷には寄らずに、太平洋側をずっと旅してきました。やはりボランティアで見た時のように海岸沿いの風景は一変していました。でも、東北の方々は今、その2011年を語り継ごうとしておられて、語り部の方達がたくさんいらっしゃいます。ですから寺山さんの1967年の作品を今、2015年に上演しようとした時に、何が違うかと言えば当然ですが、2011年があった、ということなんです。これは歴然とした事実としてそこにある訳です。
じゃあ僕は東北人としてどうしようか。今、一変している東北の海岸沿いの風景は、もしかしたら東北の海の中で鮮やかな祝祭として生きていて、その祝祭の世界にいた青野(沙穂)さんの人魚姫が、悠未(ひろ)さんの王子様がいる、宇野さんの美術のある海の上の世界に憧れていった。そして自分が1番大事な声すらも失っても構わないという強い思いで行ったけれども、その初恋は実らずに海の世界に帰ろうとしたらその海はない。そう読み解くと全部つながるんです。少女が、悠未さんという男役がきちんとできて明晰な台詞術をもった素晴らしい存在感を持った王子と、宇野さんの美術と、黒色すみれさんが演奏する音楽に出会うという構造を作れば、この作品が演出できると思った、それが大枠です。それらがひとつひとつ具現化していったのがこの風景です(稽古場を示す)。
──舞台への期待がますます大きく膨らみますが、改めて見どころを。
まず寺山さんの言葉。その力に恐れおののきながら、毎日稽古をしています。日々発見の連続です。そして宇野さんの素晴らしい美術。更に笠松泰洋さんの音楽の構成が、寺山さんの言葉を通して、オペラのようでもあり、ミュージカルのようでもある色々な要素を、音楽の中に読み解かれています。出演者も皆素晴らしくて、悠未さんの歌は圧倒的ですし、人魚姫を演じる青野さんの17歳の溌剌とした歌声、その2人の主役と僕は考えているのですが、2人を軸に、出演、そして演奏の黒色すみれさんの奏でる音楽も良いですし、全員が本当に素晴らしいので、僕はこの出会いの中に、新しい観点を持ち込み、新しい表現ができないか?と思って演出をしています。人形もたくさん出てきますし、元々人形劇として書かれた寺山さんの作品が、どのようにしたら今の時代に新しく生まれ変われるか。僕自身も挑戦です。是非観にいらしてください。

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ふじたしゅんたろう○秋田県出身。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科在学中の04年、ニナガワ・スタジオに参加。当初俳優として活動し、05年以降15年初頭まで蜷川幸雄作品に演出助手として関わってきた。11年『喜劇一幕・虹艶聖夜』で作・演出を手がける。12年、彩の国さいたま芸術劇場さいたまネクスト・シアター『ザ・ファクトリー2(話してくれ、雨のように……)』を演出。14年1月〜2月新国立劇場小劇場で上演の『The Beautiful Game』を演出、その成果で15年2月第22回読売演劇大賞の杉村春子賞・優秀演出家賞をダブル受賞。絵本ロックバンド「虹艶Bunny」としてライヴ活動も展開中。


【悠未ひろインタビュー】

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──寺山修司作品にはこれまでどういう印象を持っていましたか?
私はこれまで宝塚ひと筋で、舞台が好きというよりもとにかく宝塚が好きという人間でしたから、お恥ずかしい話ですが、ほとんど存じあげていませんでした。ただ、住んでいるところが下町なので、歴史ある古書店で寺山修司さんの作品がコーナーになって並べられていたりするのを見て、改めてこんなにすごい方の作品に私が出させて頂いて大丈夫かな?と思ってしまっているところです。なので、事の重さが皆さんよりはわかっていないところがあったのではないかと思います。
──ではかえって自然体で作品に飛び込める面がありますね。
過度にプレッシャーを感じずに、この作品の中で私にできることはなんだろう?と探しながら、演出の藤田さんと、このキャストのメンバーと作る新しいものを、と思っています。
──戯曲を読んでの感想はいかがでしたか?
台詞がまるで詩のようで、とても文学的で、私のこれまでの感情の襞の中では手が届いていなかった部分の、心をくすぐられるものを感じました。藤田さんは、寺山さんがいなかったら自分はこの世界に身を置いていなかった。寺山さんがいたからこそいまの自分がある、といつもおっしゃっていて、台詞の抒情性の素晴らしさについてたくさんお話してくださるので、更に深く感じ取れてきていて、音楽的なものや崇高さも感じます。
──そんな作品の中で、悠未さんの王子様が観せて頂けるということなのですが。
今回も男役でのオファーを頂きまして。もちろん宝塚を退団して以降、男役だったらなんでもやります、というスタンスでいる訳ではないのです。でも、『人魚姫』という、自分自身が幼い頃から知っている物語の王子様役、寺山さんの戯曲の中では「船長」という役柄になりますが、皆が憧れて恋する「王子様」に扮することができることに魅力を感じました。特に私は宝塚時代も悪役や、色の濃い役柄が多かったので、白いイメージの役はさせて頂いた経験が少ないですし、更に外部で、宝塚の男役としてではなく、今の自分にできる新たな男役スタイルを、藤田さんに引き出してもらえるのではないかと。稽古でも、私が宝塚で培った男役としての経験から提案したものを、藤田さんが「あ、いいですね」と言ってくださることもあれば、「せっかく僕が演出するので、ここは大劇場スタイルではない形でやってみましょうか」と、おっしゃられることもあって、お互いにアイディアを出し合ってすり合わせているので、今、とても楽しいです。
──宇野亞喜良さんの装置や衣装についてはいかがですか?
これまで触れたことのない、まるで美術品の中で、こうしてお稽古させて頂いているので、もうここにいるだけで不思議な世界に迷い込んだような気持ちがします。

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──確かに周りを見回しただけで幻想的な空間ですね。
普通のミュージカルや、芝居の稽古場とはまったく違いますよね。
──宇野さんの作品についてはどんな印象を?
お名前はやはり失礼ながら存じあげないまま、絵本や雑誌などで目にしていて、作品にはよく親しんでいました。改めて伺ったら「かの有名な」というようなすごい方でいらして。でも作品だったら「私、子供の頃から知っている!」という気持ちがありましたので、懐かしさと同時に、嬉しさを感じます。作品の中には斬新なものもあるのですが、夢々しく美しくメルヘンの世界そのものの作品も多くて、とても惹かれますね。
──その独特の世界観の中で王子様を演じられますが、悠未さん自身も王子様に憧れた経験は?
あります、あります!(笑)幼い頃読んだ絵本から「いつか私にも白馬に乗った王子様が現れる」と憧れて、大人になっても心のどこかでは待っているところがありますね。
──そんな少女の憧れを今回具現化するにあたっては?
今回はキャストのほとんどが女性なので、男性のお客様にも沢山いらして頂きたいですが、まず女性の目から見て素敵!と思える男性像を作りたいです。それは宝塚の時から意識して作っていたものでもありますし、ときめいて頂けるような、本当の男性にはない柔らかさや、繊細さが醸し出せればいいなと思っています。それが私が退団しても男役を演じる時に目指しているところでもあります。宝塚は宝塚として世界が確立していますが、そこから抜け出した時に演じる男役が、違和感があっておかしいではなく、形を変えて成立するものとしてやっていけたらといつも思っているので、今回はまた良い挑戦の機会を頂いたなと。まだどうなるのかがハッキリ見えている段階ではないのですが、それは、自分の想像以上のところにゴールがあるからこそだと思いますから、絶対に良いものになると信じて進んでいきたいです。
──では、改めて意気込みを。
アンデルセンの童話、絵本の「人魚姫」とはまた違って、寺山さんと宇野さんと藤田さんが作られる『人魚姫』には色々なメッセージが込められていて、でもそれを押し付けるのではなく、お客様それぞれに感じとって頂けたらと。東北の海が舞台になっていて、日本ものの香りを持ってはじまって、そこに西洋のものがミックスされていく不思議な世界観になっています。私自身がこの世界に入っていることも不思議な雰囲気でしょうし、人魚姫役の青野さんはじめ、「初めまして」の方達との出会いから生まれる融合と化学反応を是非楽しんで頂きたいです。本当に美しい世界になると思いますので、多くの方に観にきて頂けたら嬉しいです。精一杯頑張ります。

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ゆうみひろ○東京都出身。97年、宝塚歌劇団入団。『Le Petit Jardin』(05年)、『逆転裁判3』、ディナーショー『Heroe』(13年)等に主演作の他数々の名舞台を残した。13年『風と共に去りぬ』アシュレ役にて宝塚歌劇団を退団。退団後は、14年に『東京會舘 悠未ひろトークショー』『日経ホール チャリティーコンサート』主演、『MOONSAGA−義経秘伝−第二章』(平教経役)『悠未ひろクリスマスディナーショー』、15年『NARUTO-ナルト-』 (大蛇丸役)、同作品のワールドツアーなどに出演。ホンダCM「Nシリーズ就職篇」で歌唱も披露するなど、活躍の場を広げている。

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〈公演情報〉
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美女音楽劇『人魚姫』 
作◇寺山修司 
演出◇藤田俊太郎  
美術・衣裳・宣伝美術◇宇野亞喜良  
作曲・音楽監督◇笠松泰洋   
振付◇新海絵理子  
出演◇青野紗穂、悠未ひろ
水嶋カンナ、フラワー・メグ、佐藤梟、関根麻帆、有栖川ソワレ、日和佐美香、神谷沙奈美
高畑こと美、大内慶子、小川愛理、肥田ももな、金世那
人形遣い:ルナティコ  
演奏:東グルナラ   
演奏・出演:黒色すみれ
●9/18〜27◎東京芸術劇場シアターウエスト
●10/17、18◎兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
〈料金〉前売り¥5,000 当日¥5,500(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉
東京公演:Project Nyx 03-6312-7031 http://www.project-nyx.com  
兵庫公演:芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255
http://www1.gcenter-hyogo.jp/sysfile/center/top.html


【取材・文/橘涼香 撮影/アラカワヤスコ】


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