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宝塚公演レビュー

紅ゆずる&綺咲愛里コンビ初のオリジナル作品二本立てで華やぐ 宝塚星組公演『ベルリン、わが愛』『Bouquet de TAKARAZUKA』

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組トップコンビ紅ゆずる&綺咲愛里コンビによる、初めてのオリジナル作品の二本立てである宝塚歌劇星組公演ミュージカル『ベルリン、わが愛』タカラヅカレビュー90周年『Bouquet de TAKARAZUKA』が日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(24日まで)。

ミュージカル『ベルリン、わが愛』は、1920年〜30年代にハリウッドと並び称される映画の都として発展したドイツ・ベルリンを舞台に、「映画」を愛した人々がナチス台頭の暗雲の中、信念を貫き通す姿が描かれている。

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【STORY】
1927年、ドイツ・ベルリン。ハリウッドと並ぶ映画の都にあって、ドイツ随一の映画会社であるUniversum Film AG(UFA)は、映画を芸術だと考える監督たちの意向を汲んだ作品作りを続けていたことから、大衆の支持が離れ、いつしか巨額の負債を抱えるに至っていた。倒産の危機を回避する為、重役たちはドイツで勢力を拡大していた国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の支持者であり、大実業家アルフレート・フーゲンベルク(壱城あずさ)に事業を譲渡するべきだと主張する。だが、社長のルードヴィヒ・クリッチュ(美稀千種)は作り手の表現が制限されることだけは避けるべきだと、譲渡を断固拒否。社長と志を同じくするプロデューサーのニコラス・カウフマン(七海ひろき)は、低予算で大衆を喜ばせる娯楽映画を必ず作り、起死回生のヒット作にしてみせると宣言し、不満を抱えた重役たちをどうにか押しとどめることに成功する。だが、そんな映画をいったい誰が創れるというのか。その時、1人の青年が「自分にやらせてくれ」と名乗りをあげる。彼の名はテオ・ヴェーグマン(紅ゆずる)。幼い頃から映画を心から愛し、今助監督としてUFAに勤める彼は、ハリウッドではすでにはじまっている、トーキーにこそ映画の未来があると考え、ヨーロッパ初の歌入りトーキー映画を定められた僅かな予算の中で、必ず創り上げると誓い、晴れて新作映画の監督を任されることになった。
早速、スタッフ、キャストの人選に入ったテオは、まず親友であり絵本作家であるエーリッヒ・ケストナー(礼真琴)に脚本を依頼。更に、ベルリンに興業に来ていた「黒いビーナス」と謳われるレビュースター、ジョセフィン・ベーカー(夏樹れい)に映画のヒロインを務めてもらおうと、彼女が出演している劇場に直談判に赴く。だが、肌の色による人種差別と闘うジョセフィンは、自分が出演することは貴方の輝かしい監督デビューに悪影響を与えてしまう、と出演を固辞。キャスト探しは振り出しに戻ったかに見えたが、ジョセフィンのバックで踊っていたレビューガール、レーニ・リーフェンシュタール(音波みのり)の自薦による猛アプローチに根負けしたテオは、カメラテストをすると約束。銀幕デビューができる!と有頂天になったレーニは、レビューガール仲間のジル・クライン(綺咲愛里)も、一緒に映画に出して欲しいとテオに声をかける。ジルを一目見た時から何かを感じたテオは、レーニと共にジルにも撮影所にくるようにと促すのだった。
テオが監督する初のトーキー映画は「忘れじの恋」とタイトルが決まり、サイレントこそ映画の神髄と信じる大俳優ヴィクトール・ライマン(天寿光希)の協力が得られないなど、困難もありながらテオの前向きな努力で進展。大部屋俳優だったロルフ・シェレンベルク(瀬央ゆりあ)と、レーニが主演カップルに、ジルも花売り娘の役柄で出演が決まる。恋人ルイーゼロッテ(有沙瞳)への想いを託したエーリッヒの脚本も仕上がり、ヨーロッパ初のトーキー映画は美しいメロドラマとして完成。観客の絶賛を集める大ヒット作となった。
だが、主役のレーニではなく、脇役のジルの清楚な魅力に評価が集まったことに、レーニの不満が爆発し、ジルの出自が密かに内通されてしまう。更に「忘れじの恋」1本のヒットでは、会社を立て直すことは難しいと重役たちから攻め立てられた社長のクリッチュは、遂にフーゲンベルクにUFAを売却。それはすなわち、大衆の為の映画創りを目指すテオの前に、ナチス宣伝全国指導者ヨーゼフ・ゲッベルス(凪七瑠海)が立ちはだかることを意味していて……

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映画がサイレントからトーキーへと移り変わった時代は、「映画」というジャンルが最も大きな転換点を迎えた時代でもあって、この過渡期の混乱を描いた作品はこれまでにも様々な形で作られている。ルドルフ・ヴァレンチノに代表される、声を必要とされていなかった時代のスターたちは撤退を余儀なくされ、一方美しい容姿と共に美しい声を持ったスターたちが、続々と現われ、映画の新たな黄金期を築き上げていく。これは宝塚が頻繁に取り上げている激動の時代「革命」を扱った題材と、ある意味で非常に近いものがあって、トーキーの出現は技術の進歩による、映画という創造の世界に起きた大革命だったと言えるだろう。
こうした変革の時代には、当然ながら多くのドラマが生まれるのは必定で、ここに目線を定めた作・演出の原田諒の着想は決して悪いものではなかった。実際、冒頭の場面で舞台いっぱいに観客席を作り、サイレント映画「メトロボリス」(※注・莫大な製作費が回収できず、UFA社の洛陽を招いた作品であるのは事実だが、映画そのものはSF映画黎明期の傑作とも、SF映画の原点とも呼ばれる名作サイレント映画なので、『ベルリン、わが愛』の描き方から「メトロポリス」=失敗作、と認識してしまうのは危険なことを記しておきたい)を鑑賞している登場人物たちの歌い継ぎから、映画会社の危機、テオのトーキー映画への挑戦の流れは、実にテンポの良い描き方で、物語が快調に転がり、続くドラマに期待を抱かせる。テオがジルにモノクロ映画ならではのメイク方法を伝授する場面、貧しい育ちをしたテオが映画だけが心の慰めだったとジルに語る場面、サイレントの名優が、対立していたテオの心意気に時代の趨勢を悟る場面、等々、「映画」への愛と変革期の悲喜こもごもを描いたシーンは、いずれも非常に美しく、印象に残るものばかりだ。

にもかかわらず、ドラマがサラサラと流れ、多分に淡々として見えるのは何故だろうか…と考えた時に、やはりナチス・ドイツの描き方が淡泊なことが関連しているのではと思えてならない。前述した冒頭の「メトロポリス」を鑑賞する客の中にも入ってはいるものの、ナチス宣伝全国指導者ゲッベルスが、劇中に本格的に登場するまでに開演から45分が経過している。しかも例えば三谷幸喜の「国民の映画」などに代表されるように、映画を愛し、ナチスの宣伝に活用したゲッベルスは、後にアドルフ・ヒトラーと、ナチスプロパガンダを語るに欠かせない人物として、あらゆるメディアで取り上げられてきた歴史上の重要人物だ。その人物が、映画を愛する人々を描く作品の中に登場すると聞けば、当然、主人公に立ちはだかる強大な敵として描かれるのだろうと、どうしても予想してしまう。それが、この作品では単純にヒロインのジルに横恋慕しただけの、有り体に言えば卑小な権力者にしか見えないのが、ドラマ全体の起伏までも小さくしてしまったのがあまりにももったいない。
作品の冒頭が1927年で、ゲッペルスがドイツの図書館からユダヤ人著作の書物を押収し、広場に集めさせて焼き払ったのが1933年だから、この時点ですでに劇中で6年の歳月が経っていることになるが、これも作品を観ているだけではそれほどの月日を経ているとはは感じられないのも響いている。この時点でジルはナチスプロパガンダ映画に必要不可欠な、大人気女優になっているという設定なのかもしれないが、作品を見ているだけでは、「忘れじの恋」で注目を集めた新進女優としか受け取れない為、余計にゲッベルスのジルへの執着が、単に個人の嗜好に見えてしまうのが痛かった。
やはりエンターテインメントの世界で、ナチスを描くというのは非常に重いものがあるし、作家自身にもそれ相当の覚悟が必要になる。そういう意味で『ベルリン、わが愛』は「映画愛」を描いた部分と、ナチス台頭の暗雲の部分とが、乖離してしまった面が大きく、サイレントからトーキーへの、映画大革命期に奮闘した若き映画監督の物語が、演じる紅ゆずるの個性も相まって、それこそ青春映画のような爽やかさを醸し出しているだけに、この分断が惜しまれた。テオの監督デビューを祝ってエーリッヒが乾杯するシーン、前述のテオがジルに映画愛を語るシーンなど、当然歌になり、ダンスになるだろとう思われた、ミュージカルならではの展開のチャンスを原田が見過ごしているのも気がかり。外部の評価も高い、宝塚期待の若手作家だけに、より一層丁寧な作品創りを目指して欲しい。次作を期待して待ちたいと思う。

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ただその中で、テオを演じた紅ゆずるの一直線に突き進む熱量の高さから、爽やかさを引き出したのは原田の功績と言える。実際、サービス精神に長け、二番手時代までに定着していた「ちょっとユニークなタカラジェンヌ」という紅の表看板に全く頓着せず、宝塚の二枚目として、主演男役として相応しい「映画は大衆が辛い現実をひと時忘れて、夢の世界に浸れる娯楽であるべきだ」との信念を貫くテオ・ヴェーグマンという役柄を用意したのは、これから続いていく紅のトップ時代にとって、非常に大きなポイントになるに違いない。それほど、テオを一途に演じる紅から立ち上った甘い二枚目男役の香りと、青春の輝きは素晴らしいものだった。テオが信じる映画のあるべき姿が、そのまま宝塚歌劇のあるべき姿に直結している効果もあり、紅が星組トップになって初のオリジナル作品が、紅の美点を存分に表出したことを喜びたい。

ヒロイン・ジルの綺咲愛里は、レビューガールの謂わばアンサンブルとして登場する初登場シーンが、本当にアンサンブルの扱いのままだったことにかなり驚いたし(設定からして至極正しいのだが、やはり宝塚の常連ファンでなければ、この人が作品のヒロインだとわからない初登場というのはやや不親切かもしれない。非常にベタだし、それが良いと言っている訳ではないが、やはりベテラン作家なら、ここでジルがジョセフィン・ベーカーにぶつかって転ぶ…くらいの展開は用意すると思う)、上演時間残り15分になってやっと、テオを名前で呼ぶに至る展開なので、恋愛要素はかなり低めなはずなのだが、それでもきちんと紅の相手役に見えるのが宝塚マジックの妙。テオに口紅をひいてもらうシーン、満天の星空を眺めるシーンが、ラブシーン以上にロマンチックで、紅&綺咲の相性の良さを改めて感じさせた。テオへの尊敬が愛に変わっていく描写も自然で美しい。

テオの親友のエーリッヒ・ケストナーも実在の著名な作家で、礼真琴が扮した。ナチスに抵抗を続けながら亡命せず、ドイツで執筆を続けたケストナーを、あまりにも国民の人気が高かった為にナチスがおおっぴらに迫害できなかった、というエピソードが知られているが、今回の作中ではテオの良き友、良き理解者、協力者という形での登場。その為、礼にもシニカルな表現はほとんどなく、友人を想い、恋人を愛する溌剌とした青年として演じていて、その明るさが礼の個性によく合っている。歌声も伸びやかで、今の礼に無理がない役柄なのは嬉しい限りで、これもオリジナルの良さだろう。

礼の恋人のルイーゼロッテは、やはり実在のケストナーの内縁の妻。劇団四季でミュージカル作品にもなっているケストナーの代表作のひとつ「ふたりのロッテ」の主人公である双子の姉妹ルイーゼとロッテは、彼女の名前からとられたことで有名だ。それだけに、劇中で礼が「ルイーゼロッテ」と呼ぶ度に、愛らしい双子の物語が思い出され、演じる有沙瞳もこの作品から求められた「ひたすらな愛らしさ」をきっちりと体現している。作品を大きく動かすのは絵に描いたような敵役である、音波みのりが演じたレーニの方で、役の比重としては確実にレーニが高いが、ここは有沙に宝塚の娘役らしさを求めたということだろう。その宝塚の娘役らしさ、という意味において、「娘役の良心」とも思えるほどの存在である音波が、本来の個性とは異なるアクの強い役柄を、大胆に演じて新境地を拓いたことも喜ばしく、双方面白い配置だった。

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また、テオに新作映画の命運を託すプロデューサーのカウフマンの七海ひろきは、映画が政治利用されることを阻止しようとする、気骨ある人物を丁寧に描いている。テオにとって、つまりはテオを応援している観客にとっても「理想の上司」の役柄で、こういう温かい人物の造形は、七海の独壇場。もう少しカウフマン自身のドラマを描かれていたら、と惜しまれるが、紅との信頼関係をきちんと感じさせて、役柄を膨らませて魅せた七海の力量を評価したい。

他にも、星組には強力な上級生男役が揃っているのも魅力の1つで、クリッチェの美稀千種は沈みゆく船の船長にも似た役柄を、強さと脆さを併せ持って演じているし、フーゲンベルクの壱城あずさは、ナチスに与する大実業家の海千山千感を、いやらしくならない寸前で留めて演じていて目を瞠る。どちらかと言うと猪突猛進的な演技者だった時期もあるが、これだけ押し引きが自在にできる優れた役者となった今、退団してしまうのは宝塚の宿命とは言え、惜しみても余りある。そんな壱城の穴を埋める存在になるだろう天寿光希が、サイレントの名優が張る意地と懐の深さを十二分に見せている。組長の万里柚美演じるカフェの女将と、過去に浅からぬ関係だったという役柄に、違和感を感じさせなかったのも天晴れで、ラストシーンへの重要な伏線もさり気なく示した好演だった。そのカフェの女将ゲルダの万里も、持ち前の美貌がこうした訳ありの役柄にピッタリで、場を引き締めた。

若手に目を移すと、歌が上手いことがサイレント映画では役に立たず、大部屋俳優に甘んじているロルフに扮した瀬央ゆりあが、歌入りトーキー映画で主役に躍り出る、という設定に相応しい美しい声を聞かせたし、テオをスタッフとして盛り上げるクリストフの紫藤りゅうが、甘い優しい雰囲気を人の好い役柄に投影させていて、この人もずいぶん大きなスターになってきたと頼もしい。そのスターとしての押し出し十分なエルマーの天華えまの個性が濃い目なことも、二人の役どころを際立たせる効果になっている。彼女たちと、ベテラン勢との間に十碧れいや、麻央侑希がいることも星組の豊かさで、「メトロポリス」のラング監督で芸術家肌の気難しさを演じた十碧が、後半ナチス親衛隊の軍服姿で魅了すれば、UFAの重役陣の1人シュナイダーとして、抜群のプロポーションを誇っていた麻央が、終幕近くベルリンの男という、言わばモブの役柄で新聞を手に銀橋を渡る。その姿の良さがあまりにも目立っていて、この人はラストシーンに何か関りが?と注目させられたほどなのは、作品としては誤算かも知れないが、スターとしてはまさしく嬉しい誤算。ますますの活躍に期待したい。もう1人、この作品で退団する夏樹れいが、ジョセフィン・ベーカーとしてレビューシーンのセンターを取り、堂々の舞台姿を披露したのが嬉しく、ラストシーンに本来の男役姿で、車掌として登場するのも心憎い配慮だった。貴重な歌い手の退団が惜しまれる。

そして、ゲッベルスに扮した専科から特出の凪七瑠海は、専科転出後久々となった東京宝塚劇場への登場で、男役としてぐっと骨太になった居住まいが経て来た時間を感じさせた。前述したように、役柄の描き方に難しさがある中で、後半に集中した出番で、ナチスの影を精一杯体現している。特にセンターを割って、親衛隊を率いて登場する場面に、目を引きつける華があるのは凪七ならでは。本格的な登場が遅いだけに、組の一員ではない凪七が出演することに意義を感じる、カラーの違いが効果的だった。

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装置は原田作品お馴染みの松井るみが担当。冒頭の観客席、また映画フィルムを使った象徴的なセットなど、いつもながらの面白い装置に度々見入ったが、全体に色調が暗いのが、この時代のドイツ・ベルリンには相応しいものの、紅の創り上げた作品の爽やかさとはやや異質に映り、スターが創る宝塚歌劇ならではのこととして興味深かった。

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そんな作品の後に控えたのが、宝塚レビュー90周年を記念した『Bouquet de TAKARAZUKA』でベテランの酒井澄夫の作。岸田達彌演出のレビュー『モン・パリ』が初演された1927年、宝塚レビューの、つまり日本のレビューが誕生してから90周年を迎えたことを寿ぐレビューで、その後レビューの王様と称された白井鐵造、更に高木史朗、内海重典、といった歴史に残るレビューの大作家の作品を、その目で見て、聞いて、更に助手をしていたという酒井が、記念の年にこの作品を残したことに、まず大きな意義がある。

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特に、今の宝塚のショーの畳みかけるテンポとリズムの洪水に馴染んだ目には、この旧き良き時代を彷彿とさせるレビューの展開が、むしろ新鮮に映るのも発見で、星組にとってだけでなく、宝塚にとって貴重な作品となっていた。懐かしい名曲も多く、偉大な定番のもたらす安心感がある。
その中でも、ゴンドラに乗って登場する紅の華やかさだけでなく、紅&綺咲、礼&有沙、七海&音波、3組のこれぞ眼福なデュエットダンスに、凪七の歌という贅沢なフィナーレナンバーで、トップコンビが黒薔薇=黒の衣装という、定番の中の冒険とも言える、攻めの姿勢が感じられたのも面白く、2017年の掉尾を飾るに相応しい王道のレビュー作品となっている。

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また、初日の前に囲み取材が行われ、星組トップコンビ紅ゆずると綺咲愛里が公演への抱負を語った。

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まず紅が「お忙しい中お集まり頂きましてありがとうございます。星組の紅ゆずるでございます。初日に向けて今、星組メンバーは燃えております!」
と、紅らしいパッショネイトな挨拶を。

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続いて綺咲が「星組の綺咲愛里でございます。本日はお集まり頂きありがとうございます」とにこやかに語り、続いて記者の質問に答えた。

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その中で、初のオリジナル作品であることを問われると、紅が、再演物とは違い、自分達の色が出せる分、どの方向にも行くことができる難しさがある、とオリジナル作品ならではの良さと、だからこその難しさを語ると、綺咲も役を一から作っていくということの難しさをたくさん学んだ、と語り、前例がない作品への取り組み方を考えさせられた。

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また、レビュー90周年に際して、宝塚レビューの魅力は?との問いに、紅が「宝塚おとめ」という本も出ているように、と、宝塚の生徒名鑑の存在を例に出し、1人1人の生徒の名前、好きなものなど、個々の情報が発信されている、個々の魅力があることが、宝塚レビューの何よりの魅力なのではないか?と、持論を展開。組子1人1人に、個性を発揮して欲しい、とトップスター就任時の制作発表会見で語っていた通りの、トップとしての紅の目線が感じられる時間となっていた。

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尚、囲みインタビューの詳細は、舞台写真の別カットと共に、2018年1月9日発売の「えんぶ」2月号にも掲載致します。どうぞお楽しみに!

〈公演情報〉
宝塚歌劇星組公演
ミュージカル『ベルリン、わが愛』
脚本・演出◇原田諒
タカラヅカレビュー90周年 『Bouquet de TAKARAZUKA』
作・演出◇酒井澄夫
出演◇紅ゆずる、綺咲愛里 ほか星組
●2017/11/24日〜12/24日◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席12,000円 S席8,800円  A席5,500円 B席3,500円 
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001




【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】




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重厚な文芸作品と煌めきのレビューで輝くトップスター朝夏まなとの集大成!宝塚宙組公演『神々の土地』『クラシカル ビジュー』

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宝塚歌劇団宙組を2年半に渡って牽引してきたトップスター朝夏まなとの退団公演である、ミュージカル・プレイ『神々の土地〜ロマノフたちの黄昏〜』レヴュー・ロマン『クラシカル ビジュー』が日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(19日まで)。

ミュージカル・プレイ『神々の土地〜ロマノフたちの黄昏〜』は、ロシア革命前夜のロマノフ王朝で、ロシア最後の皇帝ニコライ二世の従兄弟ドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフを主人公に、作・演出の上田久美子が、滅びゆく帝国の黄昏にそれぞれの信念を貫いて生きた人々を描いた、文芸作品の香り高い一編となっている。

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【STORY】
1915年冬、ロシア。時の皇帝ニコライ二世(松風輝)の妻、アレクサンドラ皇后(凛城きら)は、皇太后マリア(寿つかさ)を始め、異国から嫁いだ自分を疎んじてきた貴族たちに心を閉ざしているばかりか、血友病を患っている皇太子アレクセイ(花菱りず)の、唯一治療できる祈祷師である怪僧ラスプーチン(愛月ひかる)に心酔し、政の全てを彼の祈祷によって司っていた。この為ロマノフ王朝は、皇帝一家とマリア皇太后を中心とする勢力に二分され、更に、重税と第一次世界大戦による疲弊にあえぐ民衆の不満が鬱積し、テロルが頻発するという一触即発の危機に瀕していた。
そんな祖国の状況を憂える1人の有能な軍人がいた。彼の名はドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフ(朝夏まなと)。皇帝ニコライ二世の従兄弟であるドミトリーは、民衆の憤懣を鎮める為には、ロマノフの一族が身を挺して前線で戦うべきだと考えていたが、皇帝一家の身辺警護の任務のために、ペトログラードへの転任を命じられ、釈然としない思いを抱えたまま、自身の出立を祝う壮行会に顔を出さず、雪の平原で鹿撃ちをしていた。そこへドミトリーを探して故セルゲイ大公の妃イリナ(伶美うらら)がやってくる。皇帝を狙ったテロルで命を落としたセルゲイ大公の未亡人のイリナは、アレクサンドラ皇后の妹で、夫亡き後もロマノフの一員として、この国の為にできることはないか?を考えながら、ロシアに留まっていた。肉親のないドミトリーは、伯父であるセルゲイ大公の許に身を寄せていて、二人は義理の叔母と甥という立場で出会ったが、共に暮らす日々の中で、実は心の奥底に秘めた、互いへの想いを抱いていた。「皇帝の傍で、この国を守って欲しい」イリナの言葉に動かされ、ドミトリーはペトログラードへ赴く決意固め、イリナもまた従軍看護婦として戦地へと旅立っていく。
だがペトログラードでは、ラスプーチンに奪われた権勢を取り戻そうと、マリア皇太后の許、青年貴族フェリックス・ユスポフ(真風涼帆)ら、多くの要人が加担したクーデターの計画が進んでいた。ラスプーチンを暗殺し、ニコライ二世を退位させ、ドミトリーを新しい皇帝に仰ぐ。突然クーデターの首謀者として白羽の矢を立てられたドミトリーは、計画に加わることを断固拒否し、まず二分したロマノフ王朝を再び一枚岩として、平和的な解決方法で、この危機を乗り切る術を模索する。その想いの中で、ドミトリーは皇太子アレクセイや、皇女オリガ(星風まどか)に、民衆の声や外の世界を見せようと努力し、いつしかオリガはドミトリーに惹かれていき、二人の間には結婚話が持ちあがるまでになる。
イリナの面影が胸に去来するのを感じながらも、ロマノフ王朝の為にオリガとの縁談を受け入れようと決意したドミトリーだったが、婚約披露の席上でラスプーチンに「この男の心には別の女性の姿が見える。この男はオリガ様を愛していない」と詰めよられ、答えに窮する。折も折、ドミトリーの婚約披露パーティに出席する為、ペトログラードにやってきたイリナが、ゾバール(桜木みなと)ら革命家たちの襲撃にあったという急使がもたらされ、九死に一生を得たイリナが憔悴しきった姿で皇帝の前に現れる。ドミトリーはオリガや皇帝一家が見つめる前で、イリナを強く抱きしめて……

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ロシアに起こった20世紀最大の人民革命、ロシア革命は、その革命によって成立した政権が、史上初めて社会主義の名のもとに新しい社会体制をつくり出し、反資本主義、反帝国主義の革命運動を全世界に拡大させる火元となり、世界史に革新的な作用を及ぼした変革として、歴史に大きな名を残している。だがその一方で、私有財産制による社会の不平等を批判し、生産手段の共有と共同管理による、平等な分配を目指した社会主義社会の思想と運動が、ロシア革命後この100年間でほぼ頓挫したのも、また歴史の事実に他ならない。端的に言って人類は「みんなの幸せは私の幸せ」という、性善説に基づく思想を共有するほどには、成熟していなかったのだ。
このことが、同じ革命を背景にしていながら、宝塚歌劇団が頻繁に取り上げてきたフランス革命ものと、この作品との色合いを決然と異にする源になっている。作品の最後にロマノフ王朝は滅びるが、王朝を倒した革命の思想もまた歴史の中に、ある意味で敗れ去っていくことを私たちは知ってしまっている。つまりここには本当の意味の勝者はいない。人類のどんな思想にも、支配にも、何者にも左右されず、ただ変わらずに残るのはロシアの大地のみ。それがタイトルの『神々の土地』であり、真の主人公はロシアの大地という作品の根幹となっている。
 
こう考えると、スターシステムを敷く宝塚歌劇で、このような作品が生まれ出たことには驚きを禁じえない。何しろ誰1人として勝利しない、カタルシスのない物語を、宝塚スターが演じるのだ。これが冒険でなくてなんだろうか。だが同時に、作・演出家の上田久美子の凄味をここまで感じさせた作品も、また初めてのことだ。
実際、舞台は非常に重厚で深みがあり、時にストレートプレイのような、更にはロシア文学そのままのような展開を見せ、観る側にも相当の体力を要求してくる。それでいて、場面、場面がまるで一幅の絵画のように美しく、その美しさにも壮絶な凄味があることによって、作品が宝塚世界の中に降り立つことを可能にしている。雪原で踊るドミトリーとイリナ。エルミタージュ宮殿の大広間。緋色の大階段でのドミトリーの任官式。ジプシー酒場の群衆の嵐のようなダンスと、その凄まじさに立ち尽くすドミトリー、オリガ、フェリックス。オケボックスから這い上がってくるラスプーチン。そのラスプーチンが、皇后アレクサンドラのマントを捧げ持ち銀橋を行き、やがて緋色の階段で繰り広げられるドミトリーとの死闘。すべての魂がロシアの大地に集う終幕。こうして思い返しても、まるで鮮明な絵柄がフラッシュバックするかのように、各場面が脳裏を駆け巡るのには恐れ入るしかない。上田の計算されつくした美意識と、強固な意志が、この格調高い文芸作品を骨太に描き出したのだ。相当な決意と自信がなければ、この作品を宝塚歌劇で創るのは難しかっただろう。作者の気概をもって瞑すべきだ。

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そんな作品が宝塚のトップスターとして、男役としての集大成となった朝夏まなとが、主人公、ドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフを実に魅力的に活写している。懐も深く、社交的で、誰からも愛される軍人であり、皇族であり、深く国を憂いてもいる。この男性を担ぎ上げて、ロマノフ王朝を立て直そうとする人々がいること、この作品の中だけの創作の設定に素直に納得できるし、朝夏の持つ輝かしい明るさが、役柄を更に膨らませていて、ドミトリーという人物の陰影も深まった。何よりも、ドミトリーが完全無欠なヒーローではないこと。心に深く秘めた恋があり、その思いに足を掬われるが、決して後悔はしない主人公の、明るさの中にあるからこそ際立つ、陰りと純粋を表出し得たのは、朝夏という存在あったればこそだ。「ここに残す我が思いを」というドミトリーの歌う歌詞と、去りゆく朝夏その人とがオーバーラップする姿が、いつまでも目に残るラストパフォーマンスだった。

そのドミトリーの永遠の想い人、大公妃イリナには、やはりこの公演をもって退団する伶美うららが扮した。前任トップ娘役実咲凜音の退団後、宙組はトップ娘役を空位としていたので、パンフレットなどの扱いこそヒロイン格ではないが、作品を観ればイリナが揺るぎないヒロインであることは明白。宝塚歌劇団にどのような事情があって、こうした措置が取られたのかはわからないし、今この時それを詮索するのは無意味だと思うから、ドミトリーと、愛情と共に信念でも結ばれているイリナに、ヒーローの心に忘れ得ぬ楔を残している女性に、伶美の美しさこそが相応しかったこと、この舞台にとって、伶美が何者にも代えがたい存在だったことだけを記しておきたい。この人の美はただそれだけで、すでにして芸だった。記録以上に、記憶に深く残る美しき娘役が、相応しい役柄を得て花道を飾ったのを喜びたい。

ドミトリーの旧友フェリックス・ユスポフの真風涼帆は、名門貴族の嫡男で、芸術を愛する遊び人の表の顔の中に、深い思慮を秘めている人物の造形が巧み。この人の個性には常に悠揚迫らぬものがあって、それが母親を「ママ」と呼ぶ男性像に全く違和感を与えない上に、ポイント、ポイントの出番を印象的にしている。ドミトリーへの思いを、友情以上、愛情未満のラインでまとめていたのも効果的で、二番手スターとして朝夏時代を共に走った真風ここにありの好助演だった。

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ドミトリーに恋する皇女オリガの星風まどかは、まるで絵に描いたような、宝塚の娘役らしいプリンセス像を愛らしく演じている。ドミトリーへの浮き立つような想いが、イリナの存在によって砕かれる。けれども、彼女の行動がただ嫉妬から発せられたものではなく、家族への思いとの狭間で悩み苦しんだことがわかる。皇后アレクサンドラとの芝居に深みが増し、成長を感じさせた。リリカルなソプラノも美しく、真風の相手役となる次公演への期待を高めた。

また非常に演じ甲斐のある役柄が多いのも、この作品の特徴。皇太后マリアに組長の寿つかさ、皇后アレクサンドラに凛城きらと、いずれも大役に敢えて男役を持ってきたのは、押し出しと同時に、宝塚の娘役という幻想世界を担っていない、生の女優に通じる実存感を求めたからだろう。その思惑は奏功していて、二人共に作品の重要なアクセントになっている。特に寿は、終幕この作品の真の主役である「ロシアの大地」に思いを馳せる台詞を明確に聞かせる役割を見事に果たした。

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ドミトリーの友人では、コンスタンチンの澄輝さやとが、高貴な身分の人間が示す全く悪気のない行為が、虐げられている側には嫌味にしか映らないという、大きなキーポイントをノーブルな二枚目像の中で体現していて美しい。ウラジミールの蒼羽りくの明るさ、ロマンの瑠風輝の弟分的な居ずまいと、互いにキャラクターをきちんと演じ分けていてそれぞれが引き立った。コンスタンチンに思われ、やがて彼を愛することで図らずも嵐を呼ぶジプシー酒場の歌姫ラッダの瀬音リサは、低音域から高音域までの難しいソロを見事に聞かせている。『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』の少女時代のアンネ・ローゼで聞かせた美しいソプラノの上に、この年月の進化が積み重ねられたこれも有終の美となった。ラッダの弟で、革命の活動家ゾバールの桜木みなとは、野性的なキャラクターに体当たりした迫力が際立った。これまで気品のある役柄での成果が目立った人だったが、こうした色の濃い役も手中に納めて、着々と役幅を広げているのが末頼もしい。同じ革命家のマキシムの和希そらの口跡の良さは群を抜いていて、踊りのキレも見事。エルモライの秋音光の、どこか破滅的な個性も役に生きている。

冒頭から、人物関係や舞台背景の説明役も担う、クセニヤの美風舞良、ジナイ—ダの純矢ちとせ、アリーナの彩花まりの貴婦人ぶりは見事で、特に純矢の一癖も二癖もある役柄の、適度なアクを交えた造形には惚れ惚れさせられる。ニコライ二世を徹底的に穏やかに演じた松風輝も、この温厚さが悲劇を生んでいく要因になっていることをきちんと示しているし、ロバト二コフの美月悠、ポポーヴィッチの星吹彩翔、イワンの風馬翔等、個性派がきちんと要所を固めているのも見逃せない。

そして、個性派とか、アクが強いとかいう言葉の中には納まらないのが、ラスプーチンの愛月ひかる。歴史に名を残す稀代の怪僧であり、創作世界の中でも度々取り上げられている人物を、禍々しく、おどろおどろしく演じきっていて、宝塚の二枚目男役の粋を完全に超えた、まさに怪演。ここまでやりきってしまうと、二枚目男役としてのアイデンティティに響かないかだけが心配になるのが、宝塚という世界の特殊な面でもあるが、愛月のラスプーチンが強烈であればあるだけ、朝夏のドミトリーの行動が正義に映る訳で、朝夏を美しく送り出す為の、影のMVPとも称せる存在だった。思えばこの人が突き抜けた役柄を演じたのは、朝夏のプレお披露目だった『TOP HAT』が最初だから、朝夏時代の集大成に、愛月のこうした異端な役柄の集大成が重なったとも言えるだろう。果敢な取り組みに拍手を贈り、次の時代での正統派二枚目にも期待している。
他に民衆の革命へのうねりを表現した群舞も素晴らしく、噛み応えのある重い作風に全力で取り組んだ宙組全員のパワーを強く感じさせる舞台だった。
 
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そんな作品の後に控えたのが、宝石の輝きをテーマに繰り広げられるレヴュー・ロマン『クラシカル ビジュー』で稲葉太地の作。冒頭から、ターコイズの真風、パールの伶美、翡翠の星風、ルビーの愛月、トパーズの桜木と、それぞれ宝石=ビジューを表した面々が踊ると、エルドラドの王・ダイヤモンドの朝夏が現われるという、贅沢な布陣。朝夏の太陽のような輝きを「太陽色のダイヤモンド」と表現したのがなんとも秀逸で、朝夏のキラキラと輝く笑顔が眩しい。

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そのまま、スーツにソフト帽、華やかな変わり燕尾、煌めく総スパンコールなど、様々な場面で、長い手足を駆使して、踊り続ける朝夏の姿が、「ダンサートップスター」の称号を手にしたこの人ならでは。なんの飾りもない正統派の黒燕尾で踊る終幕まで、朝夏の真骨頂が如何なく発揮されたレヴューになっていて、惜別の思いが募る。

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更にそれだけでなく、次世代の真風&星風はもちろん、愛月にも、更に桜木や和希にも大きな見せ場があるのが新鮮で、朝夏時代の集大成である作品から、次代の息吹も感じられるのは、これぞ宝塚歌劇のマジック。伶美をはじめとした、朝夏と同時退団の娘役たちにも餞があり、朝夏が築いた宙組の歴史と財産がキラキラと輝くレヴューとなっている。

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また、初日を前に囲み取材が行われ、宙組トップスター朝夏まなとが公演への抱負を語った。

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まず朝夏が「本日はお足元の悪い中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。千秋楽まで全身全霊で頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」と挨拶。続いて記者の質問に答えた。

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その中で作品について、大劇場公演中は様々に悩みもあったが、今は自分の中に降りてきていて、ロシアのうねりを全員で表わす芝居なので、宙組全員で作っている。と語り、またショーについては、皆様に元気になっていただける作品だと思うので、それを感じていただけたらと、熱く語った。

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また、最後の初日前会見に黒燕尾服で臨んだ心境を問われて、男役として自覚が芽生えた、宝塚という伝統の中で、黒燕尾の踊りを継承していきたいという思いが強くあったことを挙げ、やはり最後はこの姿でと思った。全く飾りのない皆と同じ黒燕尾でも、何か発するものが違うスターになりたいという憧れがあったことを語り、その目標通りのスターとなった朝夏の清々しさがあふれる時間となっていた。
 
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尚、囲み取材の詳細は、舞台写真の別カットと共に、2018年1月9日発売の「えんぶ」2月号にも掲載致します。どうぞお楽しみに!

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〈公演情報〉
宝塚歌劇宙組公演
ミュージカル・プレイ『神々の土地〜ロマノフたちの黄昏〜』
脚本・演出◇上田久美子
レヴュー・ロマン『クラシカル ビジュー』
作・演出◇稲葉太地
出演◇朝夏まなと ほか宙組
●2017/10/13日〜11/19日◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席12,000円 S席8,800円  A席5,500円 B席3,500円 
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001




【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


『えんぶ8号』
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本当の幸せ、人生の豊かさを問いかける、ハートウォーミングな作品『ハンナのお花屋さん─Hanna's Florist─』上演中!

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宝塚歌劇団花組トップコンビ明日海りおと、仙名彩世を中心とした花組選抜メンバーによる、宝塚オリジナルの新作ミュージカル『ハンナのお花屋さん─Hanna's Florist─』が、東京赤坂のTBS赤坂ACTシアターで上演中だ(29日まで)。

『ハンナのお花屋さん─Hanna's Florist─』は、宝塚歌劇団女性演出家のパイオニア植田景子が書き下ろしたオリジナルミュージカル。デンマーク人のフローリスト・クリスを主人公に、世界中から人が集まる街ロンドンと、自然豊かな北欧を舞台に、21世紀に生きる人々が求める本当の幸せ、人生の豊かさを問いかける、ハートウォーミングな内容となっている。

【STORY】
ロンドンの閑静な高級住宅地ハムステッドヒースの一角にある、デンマーク人のフラワー・アーティスト、クリス・ヨハンソン(明日海りお)が営む花屋「Hanna's Florist(ハンナのお花屋さん)」には、今日も彼の花選びのセンスを愛する人々が次々に立ちより活気にあふれていた。
ある日、クリスの元に栄誉あるヴィクトリアン・フラワーショー入選の知らせが舞い込み、クリスは将来を嘱望されるフラワーアーティストとして一躍注目を集め、大手百貨店からの出店話まで持ちあがる。またとないビジネスチャンスにクリスの学生時代からの旧友で、今は「Hanna's Florist」の経営面を担当しているジェフ(瀬戸かずや)をはじめ、多くの従業員たちは意気上がるが、当のクリスにはこのままトップフローリストとしての成功を目指すことが自分の真の望みなのだろうか?という迷いがあった。
そんな時クリスは、仕事を求めてクロアチアからやってきた娘ミア(仙名彩世)に出会う。内線の傷跡が深く残る故郷を離れ、異国の都会で不安を抱えながら懸命に生きようとしているミアの姿を見るうち、クリスは次第に自分の心に気づかされていく。それは、幼い頃両親と過ごした故郷デンマークの森への郷愁と同時に、父・アベル(芹香斗亜)との、拭い去れぬ確執を思い起こすことだった。
折も折、アベルの年の離れた弟でクリスの叔父のエーリク(高翔みず希)が「Hanna's Florist」を訪れる。父アベルの心臓の調子が悪いことを聞かされ同様するクリス。だが、クリスにはすべてを放り出してデンマークに戻ることをためらう思いがあった。アベルは若き日にリトアニアから逃れてきた移民の娘ハンナ(舞空瞳)と愛し合うが、王家ともつながるデンマークの名門貴族の長男のアベルがハンナと結婚することは許されず、結局密かに愛し合うしかなかった二人の間に生まれたのがクリスだった。しかもハンナはアベルが家を守る為に行った非情な経営から起こった、労働者たちとの軋轢による放火に巻き込まれて命を落としてしまう。花を愛し、例えどんな境遇であろうともアベルを愛した母ハンナを見捨てた父を、クリスは許すことができず、1人ロンドンに出て、母の名前で母が愛した花を扱う店を開いたのだ。その葛藤の中、アベルの危篤の報せがクリスに届き……

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舞台に接してまず感じるのは、近年の宝塚全般に言えることなのだが、宝塚歌劇の世界がここまで現代劇と親和するようになったのだな、という感嘆だった。かつて、女性だけで「男役」と「娘役」を演じる宝塚歌劇の様式美と、現代劇のリアリティーが最も遠いところにあるのは一種の常識になっていて、現代を舞台にしたドラマを扱うことはすなわち冒険に属していたものだった。もっとも、天海祐希という、様式美の中に収まらない稀有なスターが宝塚歌劇に「ナチュラル」を持ち込んだ一時期には、宝塚歌劇にも現代劇の風が吹いたこともあったが、それはあくまでも1人の歴史に残るスター個人が起こした変革で、宝塚歌劇全体の常識を揺るがすものではなかった。
けれども、それから更に時が流れ、創立100周年を超え、更に新世紀の歩みを続ける宝塚には、いつか静かに現代の物語を取り込める世界観が浸透してきている。それは宝塚の外の世界で「2.5次元」と呼ばれる人気漫画や、アニメの舞台化が隆盛を極め、ある意味のユニセックス化が進み、端的に言えば、汗臭さの全くない綺麗な男の子が現実世界に大挙して登場してきた時代の変化と確実に呼応したものだ。これによって、美を追求する「男役」と現代の「男優」との差異が日増しに小さくなっているからこそ、スマホやSNSといった現代のツールを、非現実世界の象徴だった男役が手にすることの違和感もなくなっている。
この作品は、そうした宝塚世界の新たな流れにすんなりと寄り添い、現代のツールをふんだんに取り入れただけでなく、難民問題や、内線、地雷といった、世界が抱える困難なテーマにも、果敢に筆を進めている。その一方で、そうした深い問題意識を直截に訴えるのではなく、多民族のるつぼであるロンドンの「お花屋さん」を舞台にしただけでなく、主人公の過去をどこか幻想世界のようなデンマークの森の中に置き、作品全体にファンタジー色を加味したのは、作・演出の植田景子の周到な仕掛けだった。これによって、作品が生の苦みを過度に抱えることが防がれていて、松井るみのバレエの世界にも通じるような美しい装置の中で、あくまでも宝塚ならではの夢の世界の物語として、作品を観ることができた匙加減が絶妙だ。
ただ、その周到な仕掛けの為に、どうしても「1970年代のデンマーク」で展開される、主人公の両親の若き日の物語の方に、ドラマチックなベクトルが向くのは否めず、こちらのパートに登場する人物たちがより印象に残りやすいのは、現代パートを支える明日海りおと仙名彩世の主人公カップルにとっては、負荷の大きいものだったと思う。この辺りには、やはり推敲の余地も残るが、作者が現実世界で今、この時も起きている様々な問題を静かに見つめた目線は、新しい時代を迎えている宝塚にとって貴重なものに違いなかった。

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そんな作者の心意気を支えたのが、主人公クリスに扮した明日海りおだ。元々ファン諸氏の間では知らぬ人とてないお花好きの明日海が、花屋さんを演じる。この企画だけでまず心浮き立つものだったところに、冒頭深い森の大きな木の下でまどろんでいる明日海=クリスの姿が、まるで絵本の中の1ページのように浮かび上がる様の美しさには、目を奪われずにはいられない。この心象風景ひとつで、クリスという人物の人となりが浮かび上がるのは、まさに「花屋の王子様」に相応しい明日海の存在あったればこそだ。フラワーアーティストとして確かな才能を示しながら、自分が本当に求めているものを見つけ出せずにいるクリスが、決して一目惚れではないヒロインと交わすある種不器用な心の交流。そして両親への想い。それらすべてが現代の青年の生きざまとして共感できるだけでなく、あくまでも清心なのが、明日海の二枚目男役としての充実度を改めて感じさせる場となった。何より「花屋さんのエプロン姿」でカーテンコールをして、ちゃんとトップスターで、ちゃんと胸キュンなことは驚くばかり。文字通り明日海あったればこその企画だったと言えるだろう。

対するトップ娘役の仙名彩世のミアは、内線で心に深い傷を負い、自分だけが幸せになることは許されないと自分を責め続けている役どころ。しかも新天地を求めてきたロンドンでもクロアチア人であることで差別を受け、仕事も失い、終幕近くには住むところにも困っているという、宝塚のトップ娘役として珍しいほど過酷な状況に置かれていて、当然ながら美しい衣装もまとわない。このシビアさの中で、あくまでも透明感を失わなかったのは仙名の地力によるものだろう。ヒロインとして作中に立つことが大変難しい役柄を支えた、仙名の力量に拍手を贈りたい。
 
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一方前述したように非常に大きなドラマを背負っている「1970年代のデンマーク」パートで、クリスの父アベルを演じた芹香斗亜は、宝塚世界を体現したかの如くの貴公子ぶりで目を奪う。芹香が明日海の父親役と聞いた当初はいささかの驚きがあったが、蓋を開ければすべてが回想シーンのみの出演で、若く美しい姿のまま。しかも貴族の御曹司が、身分を超えた運命の恋に落ちたものの、周囲の猛反対の中ついに愛する女性を妻とすることができず、図らずもその命さえ失ってしまう、という、アベルのドラマだけで1本の作品が作れるほどの役柄を得て、恵まれたプロポーションと優しい面差しのすべてを活かした造形に成功している。この作品を最後に宙組への転出が決まっているが、これは間違いなく芹香の花組時代の掉尾を飾るに相応しいベストパフォーマンス。新天地での活躍がますます楽しみになった。

そのアベルの運命の恋人ハンナには、新進娘役の舞空瞳が抜擢された。初舞台当初からその美少女ぶりに注目の集まっていた人だが、まるで森の妖精さながらの登場シーンから愛らしさが全開。歌のキーがやや合わないところこそ散見されたものの、歌い出した時の笑顔も輝くようで、アベルが一目で恋に落ちることに説得力がある。上流社会でのお披露目に美しいドレス姿になるシーンまで用意され、思えばタイトルロールだから当然とはいいながら、破格のザ・ヒロインぶり。芹香との並びも絵のように似合い、このまま一緒に組替えをしても良いのではと思わされたほどだったが、それはまた後の話として、なんとも将来有望な娘役が現われたものだ。このままどこまで駆け上るか、期待して見守りたい。

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また、役柄が大変多いのもこの作品の特徴で、クリスの営む「Hanna's Florist」は、売り物の花よりも花を売る店員の方が多いのでは?と思うほどの賑やかさだが、だからこそ座付き作家の植田景子の行き届いた目配りを感じる。
クリスの旧友でビジネスパートナーのジェフの瀬戸かずやは、店のマネージメントを担当していながら、有名百貨店への出店依頼に慎重なクリスの気持ちを優先してやる男気を、さり気なく表現しているのはさすがに場数を感じさせる。その妻サラの乙羽映美の、すべてに気配りと機転の利く女性としてのスマートさも魅力的で、優れた歌唱力だけでなく演技力にも磨きがかかってきた。多くの店員たちにも、それぞれにカップルやドラマがあり、所謂小芝居を観る楽しさも大きい中で、Web担当のトーマスの優波慧は、ストーリーテラーの役割を口跡の良い台詞で活写。雰囲気もずいぶん柔らかくなってきた。野心家という設定がそれほど描かれていない中で、ライアンの綺城ひか理の姿の良さはやはり際立ち、黒髪を選択したのも良い判断だった。ヤニスの飛龍つかさの磊落さと、ヨ—ジェフの帆純まひろの闊達さに、ちゃんと個性が乗ったのも役を支えている。故障で夢を断念した元バレリーナ・アナベルの音くり寿にバレエシーンが用意されているのも、音の実力を活かす場になった。アジア女子チェンリンの美花梨乃、失敗続きの新米店員雛リリカも、集団の中でよく目立つ。

老舗百貨店の三人組、羽立光来、更紗那知、千幸あきは、作品が求めるコメディリリーフの役目をよく果たしたし、老婦人に扮した菜那くららも、ただのお得意様だけではない役割をきっちりと押さえている。図書館職員の真鳳つぐみも、ある意味ステロタイプな役柄にストレートに取り組んだ潔さが良い。クリスの子供時代の茉玲さや那の愛らしさは貴重で、悲劇の鍵を握る労働者ヘルゲの航琉ひびきのインパクトも作品を波立たせる効果になっている。

もちろん、クリスに父親の真実を伝えるエーリクの高翔みず希の誠実な温かさと、はじめにミアを雇い入れるエマの花野じゅりあが、本人の存在感で役柄を更に大きく見せた力が、作品の重要な重石になっているのも見逃せない。その意味でもう1人アベルの妻ソフィアの白姫あかりが、夫の心がハンナにあることに葛藤した年月を超えて、アベルの心情に深く思いを致す妻を絵空事にならずに見せたことが、作品にとって大きなポイントになり、力のある人だと改めて知らしめたのが喜ばしい。

何より、生演奏の音楽、矢車草の花束、アンデルセンとリトルマーメイドなど、植田景子の美意識が貫かれた舞台で、明日海以下花組生がそれぞれの力を発揮しているのが嬉しく、美しいヒューマニティにあふれた作品となっている。

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初日を前に、囲み取材が行われ、花組トップコンビ明日海りお&仙名彩世が、記者の質問に応えて公演への抱負を語った。

まず明日海が「本日はお忙しい中お集まり頂きましてありがとうございます。 いよいよ明日初日を迎えます。お客様に喜んで頂けるように頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします」と、決意をこめて挨拶。
続いて仙名が「本日はお集まり頂きまして、ありがとうございます。 いま舞台稽古を終えて、これから公演を重ねるごとにどう変化していくのか、どう進化していくのか、とても楽しみな気持ちでいっぱいです。よろしくお願いいたします」と高揚感を込めて挨拶。
 
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その中で、大好きなお花屋さんに扮する為に花屋修行にも出向いたという明日海が、水切りや葉を落とす力加減が難しく、トゲも刺さるなど、花屋さんの重労働ぶりを改めて知った話を披露しつつ、自分の大好きな花を花束にアレンジするのがとても楽しかった、花は贈られても嬉しいし、贈った人の笑顔が見られることも嬉しいと語ったのが印象的。無類のお花好きの明日海の面目躍如といった会見となった。

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最後に明日海が「これだけオリジナルのお芝居にたっぷりと向き合えることを、本当に幸せだと思います。でも自分が幸せだけではなくて、ちゃんと勉強をして、お客様にも、さっき言った私が花に対して感じていることじゃないですけど、私たちの舞台がちょっとしたハピネスに繋がればいいなと思います。芹香(斗亜)も花組公演に出るのが最後になりますし、今のメンバーでしかできない作品を、心を込めて、毎日新鮮に演じていきたいと思います」

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また仙名が「今明日海さんがおっしゃったように、小さなハピネスがたくさん溢れている作品ですので、お客様にも『こんなところに幸せがあったな』と思い出して頂いたり、気づいて頂けたり、感じて頂けたらなと思います。私自身も、この役に真正面から向き合って、深めていけたらと思っておりますので楽しみにしていてください」
とそれぞれの意気込みを語り、和やかな時間となっていた。

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尚、囲み取材の詳細は11月9日発売の「えんぶ」12月号に、舞台写真の別カットと共に掲載致します。どうぞお楽しみに! 

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〈公演情報〉
宝塚花組公演
ミュージカル『ハンナのお花屋さん─Hanna's Florist─』
作・演出◇植田景子
出演◇明日海りお、仙名彩世 ほか花組
●10/9〜29◎TBS赤坂ACTシアター
〈料金〉S席8,000円 A席6,000円
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター[東京宝塚劇場] 0540-00-5100
公式ホームページ http://kageki.hankyu.co.jp/



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】





誰か席に着いて
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理想郷に彩られた彩風咲奈の東京初主演作品、宝塚雪組『CAPTAIN NEMMO…ネモ船長と神秘の島…』上演中!

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雪組の二番手男役として、更なる活躍が期待されている彩風咲奈の東京初主演作品、MUCICAL FANTASY『CAPTAIN NEMMO…ネモ船長と神秘の島…』〜ジュール・ヴェルヌ「海底二万里」より〜が、日本青年館ホールで上演中だ(4日まで。のち、大阪・梅田芸術劇場シアタードラマシティで、16日〜24日まで上演)。

MUCICAL FANTASY『CAPTAIN NEMMO…ネモ船長と神秘の島…』は、フランスの作家ジュール・ヴェルヌの海洋SF小説「海底二万里」の主人公ネモ船長と、潜水艦「ノーチラス号」を題材に、作・演出の谷正純が新たな視点で理想の世界を描いたミュージカル・ファンタジーとなっている。
 
【STORY】
19世紀後半。南極付近で相次ぐ、捕鯨船の沈没事故の謎を調査する為、イギリス政府は海軍将校ラヴロック少佐(朝美絢)の指揮の下、フランスの海洋気象学者レティシア(彩みちる)、アイルランドの海洋生物学者ジョイス博士(華形ひかる)、イタリアの新聞記者シリル(永久輝せあ)を拉致し、南極へと向かっていた。
だが、彼らを乗せた船は謎の衝撃により沈没し、4人は不思議な島に漂着する。そこは神秘の島マトカ。南極付近にも関わらず、科学の力で自然が管理され、南国の様相を示すその島には、イギリス、フランス、ロシア、トルコ、ハプスブルグなどの帝国軍の植民地支配から逃れてきた人々が、平和な暮らしを営んでいた。
このにわかには信じ難い地上の楽園と人々を護ってきた男こそが、ネモ船長(彩風咲奈)だった。島民から絶大な信頼を得ている彼もまた、ロシア帝国の侵略にあったポーランド貴族の末裔であるばかりか、世界屈指の物理学者としての才能をロシア帝国に利用され、英知を極めた潜水艦「ノーチラス号」を製造させられた過去を持っていたのだ。だが、科学が戦争の道具になることを拒んだ彼は、同じく世界中から集められた学者や技術者と共に、自らが開発した「ノーチラス号」でロシア帝国を脱出し、大国に虐げられる人々を救う為、マトカに地上の楽園を築き上げていた。
そんな深い事情は全く知らされぬまま、争わぬこと、命を大切にすること、立ち入りを禁じる岩場に近づかないことを条件に、マトカで暮らすことを許された4人は、楽天家のジョイス博士が早くも島の暮らしに馴染んでいく様を見ながら、それぞれの想いで日々を過ごしていた。そんなある日、禁止区域に立ち入ってしまったレティシアは、「ノーチラス号」と、10年間行方不明だった父親のモリエ博士(汝鳥伶)の姿を目にして驚愕する。モリエ博士もまた「ノーチラス号」開発の為に、ロシア帝国に拉致された科学者の1人だった。
科学の粋を集めた「ノーチラス号」を争いの道具に使わせない為には、ネモ船長をはじめ、乗組員たちは死んだとこにするしかなかったのだ、と訴える父の言葉に複雑な思いを抱くレティシアだったが、やがてネモ船長の崇高な理想に惹かれていく。だがそんな時、ロシア軍の不審船がマトカを目指しているという報告がもたらされ……。

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ジェンダーのボーダーレス化が進む現在では、おそらく事情は大きく異なっていることだろうが、ある時代までは確実に、少女が必ず読む小説と、少年が必ず読む小説が、互いに名著であることは変わらないながら、厳然と分かれてそそり立っていたものだ。少女たちが読む物語が「赤毛のアン」「若草物語」「あしながおじさん」などであれば、少年が読む物語は「八十日間世界一周」「十五少年漂流記」「トム・ソーヤの冒険」などであっただろう。
そんな少年が読む物語、本を開けば冒険の世界に連れ出してくれる小説の1つに、このジュール・ヴェルヌの「海底二万里」があり、劇作家谷正純は、かつてその物語に夢中になった少年の1人だったそうだ。そう、きっと谷少年は、本当にこの小説世界を愛していたのだろう。謎の多いネモ船長、水銀と海水から取り出した塩化ナトリウムを用いた電池により、陸地との交流を一切絶った海底探検の航海を続ける「ノーチラス号」。そうしたすべてのしつらえが好きで、好きで、心底惚れ込んでいたのだと思う。だからこそ、モネ船長と「ノーチラス号」を自分の理想の世界の中で活躍させたいと願った。なぜならかつての谷少年は、今、宝塚歌劇団の劇作家であり、無から理想の世界を舞台の上に立ち上げる機会を持っている大人に成長しているのだ。愛してやまない物語の登場人物たちの、あったかも知れない人生を描き出す、二次創作と呼ばれるジャンルが隆盛を極めるこの時代に、仕事としてその夢が叶う谷は紛れもなくとても幸福な人で、この舞台『CAPTAIN NEMMO…ネモ船長と神秘の島…』は、ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」「神秘の島」に登場するネモ船長と、潜水艦「ノーチラス号」というキャラクターのみを取り出して創られた、ある種のパスティーシュものになっている。

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だから、この舞台には谷正純という作家が、これまでにも度々描いてきた、非暴力による博愛、争いのない桃源郷への憧れがたっぷりと詰まっていて、その真っ直ぐさがあまりにまぶしい。谷は愛するネモ船長と「ノーチラス号」を、彼の理想の世界で活躍させたかった。愛するキャラクターに、己の理想を託したのだろう。
そう思って見回せば、現実世界には残念なことに今、この瞬間にもあちこちで争いが続いている。地上の楽園マトカが、どこかに出現する可能性は悲しいかな極めて少ない。けれどもだからこそ、こんなファンタジーを真正面から描く作家が、いても良いのかも知れないと、ふと思わされてしまう。もちろんそうは言っても、作劇には粗さもあって、そもそもあの人が拉致されたのは、どういうからくりだったのか?とか、モールス信号が出て来たのは何の伏線だったのか?とか、あちこちに疑問は残るし、何よりも幻の楽園マトカを守るために、ネモ船長と乗組員が取った結末には、これ以外の終わり方はなかったのか?ネモ船長はあなたが惚れ込んだ大切な主人公でしょう?と、谷と話し合ってみたいような気持ちにもさせられる。それでも、フランスの作家であるジュール・ヴェルヌが、当時同盟国であり、ヴェルヌの本を出版していた版元の重要な市場でもあったロシアを悪役にすることが許されず、ロシア帝国に事実上占領されていたポーランドが、独立を目指した戦いによって家族を惨殺されたポーランド貴族という、ネモ船長に描いていた当初の設定を捨てざるを得なかったという、これぞ「大人の事情」を、谷が自分の理想の世界の中で復刻させたのだなと思うと、その一途さには脱帽するしかない。

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そう思わせた大きな要因に、ネモ船長を演じた彩風咲奈の存在が挙げられる。赤の群舞の中に白の衣装で、これぞ主役の登場!とゾクゾクさせられるようなプロローグでの初登場シーンから、たなびかせた金髪のロングヘア—の似合うこと、似合うこと。何しろ雪組は非常に多く日本物の作品に取り組んできた組だし、更にその間にあった数少ない洋物でも、彩風の役どころはスペイン人だったり、アジア系だったりしていた為に、金髪の彩風を見た自体がいつ以来だろうか?『ベルサイユのばら』新人公演のフェルゼン?かと、にわかに確信が持てなかったほどで、役柄がポーランド貴族であったが故の、このインパクトは絶大だった。しかも、折り紙つきのプロポーションで着こなす、青のロングコートの軍服姿、シックなジレとロングブーツ等々、どの姿もため息もの。早くから新人公演主演を幾たびも務めた雪組のサラブレッドの彩風だが、『ルパン三世〜王妃の首飾りを追え』の頃から、つまりは雪組が早霧せいな時代に入った頃から、一公演毎に殻を破り存在感が頭抜けてきて、人はこれほど長足の進歩を遂げるのものなのかと、ここ数年の変貌には感嘆するばかり。生来の芸風にある鷹揚さに押し出しが加わり、満を持した東京初主演を、堂々と務めた姿が頼もしかった。望海風斗時代に入った雪組で、更に大きな責任を担うことになるが、その準備はすでに万端だと示せたのが何よりだ。

そんな彩風の比重が大きいこともあって、ヒロインは2幕まで終わってみれば確実にレティシアの彩みちるだし、パンフレットの扱いも事実その通りなのだが、1幕終了時点では、ネモ船長に復讐しようとするという、衝撃的な登場をしたヴェロニカの野々花ひまりとどちらが相手役になるのだろう?としばし迷ったほどだったし、インドの王女潤花もよく書き込まれていて、期待の娘役たちがそれぞれ大きな為所を担っている。もちろんすでに東上する公演でのヒロイン経験がある彩の落ち着きに1日の長があるが、野々花も潤も十二分に目を引き、将来が楽しみな娘役たちが活躍しているのが嬉しい。

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更に、この作品の大きな注目ポイントの1つに、雪組に新加入となった朝美絢と、現在雪組若手男役の最大の注目株永久輝せあを、どんな役柄でキャスティングしてくるか?があったが、海軍士官の朝美には持ち前の硬質な美貌が生き、新聞記者の永久輝には華やかなスター性が生きるという、それぞれの特性をよく生かしつつ、2幕で大きな変化も与えてあるのが、座付き作家ならではの技で、これは大変面白い起用だった。この経験によって、それぞれ本公演でも活躍の場が更に広がるのではないか、期待したい。
他にも、舞咲りん、愛すみれの歌唱力、綺羅星揃いの航海士チームと、人を見る楽しさが満載。特に、かねてから注目株の縣千だけでなく、彩海せらがとても目立つポジションを得ていて、あの綺麗な男役は誰だろう?と思わせたのはなかなかに巧みな配置だった。モリエ博士の汝鳥伶の重厚感は言うまでもないし、ジョイス博士の華形ひかるなどは、あまりに贅沢な使い方でもったいないほどだったが、温かみのある演じぶりが、作品の理想を助けていた。

総じて、作家の愛と理想がひしひしと伝わる作品で、結末に議論はあるだろうが、主演の彩風以下、スターの魅力を改めて感じさせる舞台となっている。

〈公演情報〉
宝塚雪組公演
MUCICAL FANTASY『CAPTAIN NEMMO…ネモ船長と神秘の島…』
〜ジュール・ヴェルヌ「海底二万里」より〜
脚本・演出◇谷正純
出演◇彩風咲奈 ほか雪組
●8/29〜9/4◎日本青年館ホール
〈料金〉S席 7,800円 A席 5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター[東京宝塚劇場] 0570-00-5100
●9/16〜24◎梅田芸術劇場シアタードラマシティ
〈料金〉全席 7,800円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場シアター・ドラマシテイ 06-6377-3888




【取材・文・撮影(2幕)/橘涼香 撮影(1幕)/岩村美佳】




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新コンビで贈る宝塚王道の二本立て公演! 宝塚花組公演『邪馬台国の風』『Sante !!』

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充実の時を迎えているトップスター明日海りおに、新トップ娘役となった仙名彩世の新たなコンビを中心とした宝塚花組公演古代ロマン『邪馬台国の風』レビュー・ファンタスティ—ク『Sante !!〜最高級ワインをあなたに〜』が、日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(27日まで)。
古代ロマン『邪馬台国の風』は、今から約1800年前の古代日本に女王卑弥呼が治める国があったという、その伝承だけが世に広く知られている女王卑弥呼を足掛かりに、想像の翼を広げたオリジナル作品となっている。

【物語】
3世紀半ばの古代日本──日本列島が「倭」と呼ばれ「王」を指導者とする幾つものクニと、クニとの争いが長く続いている時代。クニグニの連合の中心である邪馬台国と、対抗勢力の狗奴国との勢力争いは日増しに激しさを増し、民の苦しみが続いていた。その一人であり狗奴国との戦で両親を失い天涯孤独の身となっていた少年タケヒコ(華優希)は、大陸から渡来してきた李淵(高翔みず希)に助けられ、彼の元で戦術と生きる術を学ぶ。時が経ち、戦術にも長け凛々しい青年に成長したタケヒコ(明日海りお)は、李淵からもう教えることはない、旅立つ時が来たと諭された折も折、狗奴国の将クコチヒコ(芹香斗亜)の率いる兵に李淵を殺され、新たな運命へと足を踏み出す日を迎える。 
ある日タケヒコは、やはり狗奴国の兵に襲われていた娘マナ(仙名彩世)を助ける。神の声を聞く霊力を持つマナは、巫女となる為に邪馬台の里に向かう途中で、マナはタケヒコがいつか海を渡り、遠いクニに行くこと、タケヒコと自分は遠い昔に出会い、再び巡り合う日を誓い合っていたと告げる。不思議な運命を感じた二人はたちまちにして惹かれ合うが、マナは自分の霊力を人々が平和な暮らしを取り戻す為に役立てたいと語り、邪馬台の里へと向かう。マナを迎えに来た邪馬台国の兵の長アシラ(鳳月杏)は、タケヒコの優れた武術を認め、邪馬台国の兵となることを勧める。
邪馬台国の平和に尽力することは、亡き両親、李淵、更にマナを守ることにもなると決意したタケヒコは邪馬台国の兵となり、ツブラメ(水美舞斗)フルドリ(柚香光)イサカ(城妃美怜)ら、仲間を得て更に力を発揮するようになる。
ちょうどその頃、倭国連合の中心となる邪馬台国の王が亡くなり、諸王たちは次の王を誰に定めるかを議論するが、我こそがその任に相応しいと自負する奴国の王ヨリヒク(瀬戸かずや)の思惑は諸王の支持を得られず、大巫女(美穂圭子)より、次の大巫女に指名されたマナを、女王卑弥呼として即位させる案が決着する。だが、ヨリヒクはこれに憤慨し、同じように自分こそが女王となるべきだと考える邪馬台国の亡き王の娘アケヒ(花野じゅりあ)の讒言に乗り、狗奴国の王ヒミクコ(星条海斗)に通じ、狗奴国に邪馬台国を攻めさせ、卑弥呼を追い落としその地位にとって代わろうと企てる。
そうした策謀が渦巻いているとは露知らぬまま、マナは女王卑弥呼として即位。その宴の席でタケヒコは初めて新しい女王が、あの日運命の相手だと感じたマナその人だと知る。遠く身分を隔ててしまった二人。だが、互いを想う気持ちは変わらず、二人は禁じられた逢瀬の時を持つ。だがそれこそが、女王卑弥呼の失墜を狙う者たちの計略に他ならず……

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古代日本に女王卑弥呼がいたという伝承は、その人となりはもちろん、邪馬台国が日本のどこにあったのかという議論にも決着がついていない、神秘のペールに包まれたものだ。それだけに、女王卑弥呼は常に歴史上の女性の中でも大きな人気を博しているし、ある意味で1つも正解がない、創作のし甲斐のある時代であり、人物だと言えるだろう。
実際、この『邪馬台国の風』でも、髪型や装束を文献に頼らず自由なビジュアルを選択したことにはじまって、どちらかと言えば劇画よりの世界観が、宝塚の男役と娘役を引き立てる要素となっている。これは作・演出の中村暁の賢い選択だったと思うし、少年タケヒコと入れ替わり、青年タケヒコが登場する演出や、女王となった卑弥呼が鏡を手に舞台中央高見に現れる場など、如何にも雅で、古式ゆかしい宝塚ロマンの香りが漂う各場面には、懐かしさも覚えた。
だから、このゆったりした展開が宝塚ならではの「古代ロマン」を目指している故のことなのは十分伝わるのだが、その為にドラマの筋運びも淡々と緩やかなものになっていて、やや時間切れの印象も残る。特に主人公二人が、運命の恋よりも邪馬台国の平安を願うという、崇高な思いに帰結するドラマの、最大の山場であろう邪馬台国と狗奴国との頂上決戦が描かれず、効果音だけの演出になったのはもったいない。
もちろんこれによって舞台上の山場が卑弥呼が日蝕を預言した神秘の場に集約される効果はあったのだが、卑弥呼=マナを守ろうとするタケヒコ、そのタケヒコを守ろうとして倒れた戦友のツブラメ、フルドリ、イサカ、更には最大の脅威であるはずの狗奴国の権威を唱え続けたクコチヒコの死が、ドラマの中でどうしてもあっさりと過ぎていってしまったのが惜しまれる。
もちろんこうした優雅な世界観は宝塚に似つかわしいし、ポスタービジュアルから感じたワクワクした気持ちが、出演者たちが動き出すことで更に増幅されてもいたので、その優雅さを損なわない程度に、舞台機構を利用するなどして、全体をもう少しアップテンポすると、更に見応えのある作品になり得たのではないか。東京公演に際してラストシーンにタケヒコの旅立ちを描くなど、ブラッシュアップされた部分は多々あり、作家の意欲は感じるので、また様々な可能性を掘り下げていって欲しい。

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そのポスタービジュアルで、まず見る者を惹きつけたタケヒコの明日海りおは、こと改めて言うことではないかも知れないが、それでも本人からあふれでる「華」に圧倒される。特にプロローグを経て、少年タケヒコからの入れ替わりで、ドラマ部分として初登場した時の明るい笑顔がなんとも爽やかで、物語の展開に期待を抱かせるに十分。登場人物の多くがタケヒコに惹かれていく展開を、ものの見事に納得させる好漢ぶりが際立った。和洋折衷のビジュアルもよく似合い、古代のヒーローに瑞々しい現代性を与える力ともなっていた。
 
不思議な霊力を持つ少女マナの仙名彩世は、この公演から花組トップ娘役の地位に就いた。大劇場ヒロインデビューが伝説の女王卑弥呼というのは、これまで大人の女性を演じた経験も豊富な仙名にとって与しやすい役柄だったと思うし、事実さすがの位取りと押し出しを見せてくれているが、恐らくこの人が経てきた道程で敢えて封印してきたのだろう少女性が、マナの造形からこぼれ出てきたのが面白かった。必ずしもヒロイン候補ではなかった実力派がこうして大きな地位を得て、更に意外な魅力を発揮していることは喜ばしく、良い披露となったのは何よりのことだ。

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狗奴国の将クコチヒコの芹香斗亜は、本人の抜群のプロポーションと、花組の二番手男役として培ってきた存在感ひとつに賭けて、役柄を支えたのが天晴れ。クコチヒコという人物には、個人のドラマと言えるものがほとんど描かれていず、それでいて主人公に対峙する強敵として在ることが求められている、作品の中でも難役中の難役だが、それがかえって、黒装束の美しさと威圧感とで全編を押し切った芹香の自力を改めて感じる場となっていた。大劇場公演としてはこれを最後に宙組に転出することが発表されたが、新天地でも大きな戦力となることだろう。期待したい。

タケヒコの戦友たちの中では、フルドリの柚香光に明るさと柔らかさが増してきたのが目を引いた。元々の個性に鋭さがある怜悧な美貌の持ち主だが、その外見の中に実はある本人の茶目っ気や、少年性に通じる個性が、伸びやかに現れるようになってきているのは、二枚目男役として価値ある成長と言える。芹香転出で更に大きな責任を負うことになるのは必至だから、この変化は組にとっても喜ばしいことだ。

また、ツブラメの水美舞斗は、言葉を発することができないという非常に難しい、だからこそ舞台上で強烈な印象を残せる役柄に巡り合い、存分にスターとしての輝きを発揮しているし、イサカの城妃美怜も男勝りの女兵士が心に秘めるタケヒコへの想いを健気に描き出して見応えがある。アシラの鳳月杏はやはりその存在感で役を大きく見せているし、イサカと同じくタケヒコに想いを寄せるフルヒの桜咲彩花のたおやかさも良い。ツブラメに片思いしているトヨの朝月希和、卑弥呼付の女官イヨの音くり寿、少年タケヒコの華優希など、期待の娘役たちを上手く見せたのをはじめ、羽立光来、優波慧、綺城ひか理、矢吹世奈、等、歌える人が歌い、踊れる人が踊る中村の目配りはなかなかに周到だ。

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敵方としては奴王ヨリヒクの瀬戸かずや、アケヒの花野じゅりあに、何故卑弥呼に敵対するかがわかりやすい理由が、きちんと描かれているのが好走してインパクトがあるし、大巫女の美穂圭子、狗奴王ヒミクコの星条海斗の専科勢はびっくりするほど贅沢な起用法で、作品の濃いアクセントとなっている。いつもながらの天真みちるの芸達者ぶりも楽しめるし、この公演が退団公演となる夕霧らい、梅咲衣舞の、花組の貴重な人材を大切に扱っているのにも好感が持てた。

全体に、神の声、予知、盟神探湯の儀式など、古代ならではのしつらえのそれぞれは印象的で、宝塚ならではの世界観が描かれている舞台だった。

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そんな雅で緩やかな世界から一転、「ワインを飲んでみる数々の夢」をテーマに繰り広げられる華やかなレビュー、レビュー・ファンタスティ—ク『Sante !!〜最高級ワインをあなたに〜』は藤井大介の作。ワインの香り、更にシャンパンの泡が弾けるような、ちょっと大人で、畳みかける怒涛のスピード感あふれるレビューになっている。

特に、「ボルドーの5大ワイン」と称して、芹香、柚香、瀬戸、鳳月、水美が女役で登場する冒頭から、藤井好みの世界が炸裂。観客と「Sante !!」という客席下りも含んだ賑やかなシーンから、明日海、仙名を筆頭に、花男、花娘と称される、こだわりの美学が詰まった花組ならではの場面が立て続き、もうすべてがあっという間。あまりに盛りだくさんで目が足りないという気持ちにさせられる贅沢感が良い。

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中でも、美穂のエディット・ピアフと星条のマルセル・セルダンという専科メンバーのこれぞ!というシーンが用意されていたり、瀬戸と、女性役に回った水美に、和海しょうという贅沢な「オペラ座」の1場面など、アクセントを挟みつつ、明日海の出番もたっぷりという構成が良くできていて、宝塚を花組を長く観ている人ならば、涙を禁じえないだろう「乾杯」による大階段のダンスも美しく揃い、新トップコンビのデュエットダンスまで、「これぞ花組!」を感じさせる充実したレビューとなっている。

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初日を前に囲み取材が行われ、花組トップコンビ明日海りおと仙名彩世が記者の質問に答えて公演への抱負を語った。

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まず明日海が「今日はお忙しい中お集まりくださいましてまして、ありがとうございます。本当に暑い中の公演になりますが体調に気をつけて、心して頑張りたいと思います。よろしくお願いします」と挨拶。

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続いて仙名が「本日はお集まり頂きまして、ありがとうございます。東京の皆様に楽しんで頂けるように精一杯頑張っていきたいと思います」

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と述べて、それぞれが公演への想いを語った。

その中で、作品の見どころは?との質問に、「お芝居は東京にくるにあたりおのおのブラッシュアップを重ねて、立ち廻りやお芝居も、より楽しんで頂けるものになっているのでは」と明日海が語ると、仙名も「セットや曲やお衣装や全て揃うととても神聖な感じがして想像を膨らませている」と、更なる意気込みを感じさせる力強い言葉が聞かれた。

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またショーは、「花組ならではの熱いショー、藤井大介先生ならではのチョイワルという感じのショーです」と明日海が表現すると、仙名も「明日海さんもおっしゃった通りちょいワルな感じもする、てもゴージャスでオシャレなショーです」と言葉を揃え、早くもコンビとしての息があった回答となった。

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更に、どんなトップコンビになっていきたかという問いには、「こういうトップコンビになりたいです!、と言ってしまうと、それにしかなれないような気がするので、作品ごとにお客様に新鮮に映るようなトップコンビでいたいです」と語った明日海が「あ…言っちゃいましたね」と思わず言って、場の笑いを誘うなど終始和やかな雰囲気の会見で、新たな花組トップコンビに対する期待の高まる時間となっていた。
 
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尚、囲み取材の詳細は舞台写真の別カットと共に、9月9日発売の「えんぶ」10月号にも掲載致します。どうぞお楽しみに!


〈公演情報〉
宝塚花組公演
古代ロマン『邪馬台国の風』
脚本・演出◇中村暁
レビュー・ファンタスティーク『Sante !!』
作・演出◇藤井大介
出演◇明日海りお、仙名彩世 ほか花組
●7/28〜8/27◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席 12,000円 S席 8,800円 A席 5,500円 B席 3,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001

※『Sante !!』のeには「アクサン・テギュ」がつきます。



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


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