えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

黒木瞳主演舞台『京の蛍火』

会見

全ての山に登り続けて、北翔海莉宝塚に別れ ラストデーレポート

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2016年11月20日、宝塚歌劇団星組トップスター北翔海莉が、相手役の妃海風、最後の同期生である専科の美城れん、若手娘役の美都くららなど同時退団者と共に、宝塚に別れを告げた。

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1998年『シトラスの風』で初舞台を踏んだ北翔海莉は、翌年月組に配属。期待の新進男役として頭角を現したのち、2005年に宙組へ、2012年に専科へと異動。その時々で多彩で魅力にあふれた舞台姿を数多く残し、2015年満を持して星組トップスターに就任。レジェンドと呼ばれた柚希礼音の後を受け、高い技術力と「みっちゃん」という愛称に相応しい、温かな人柄とで、星組に新たな時代を築いてきた。何よりできないものがないというほど多才な人、しかもたゆまぬ努力の人として知られる北翔が、最近の宝塚トップスターの中では遅咲きの花だからこそ、蓄えた力を存分に発揮している姿には盤石の安定感があり、宝塚がディズニーの世界を歌い上げた『LOVE&DREAM』や、大劇場作品としては久しく上演されていなかった、本格的なオペレッタ作品『こうもり』など、抜群の歌唱力を誇る北翔率いる星組でなければ成し得なかった挑戦を果たして、大きな成果をあげていた。また、相手役の妃海風が北翔を心からリスペクトして、常に愛情のこもった瞳で北翔を見つめる姿が、宝塚ならではの美徳に通じ、常にハートフルで微笑ましい空気が舞台に満ちていたことが、星組の舞台の団結力を感じさせる美しさにつながっていたのも、得難いことだった。

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そんな、北翔時代のラストを飾るサヨナラショーは、宙組誕生の曲であり、北翔と美城れん、在団する最後の84期生が初舞台を踏んだ『シトラスの風』から、初舞台生のラインダンスで使用された「It's Today」のコーラスと共に開幕。北翔を筆頭に大階段に男役たちが居並んでのテーマ曲「シトラスの風」が、北翔と美城でパートを分け合うように歌われる。ブルーの華やかな衣装の北翔が一際爽やかだ。曲調は一転して『ノバ・ボサ・ノバ』の「アマール・アマール」へ。北翔の歌声は艶やかに変化。妃海風と二人のダンスも美しい。そのまま1人銀橋に出た北翔が、節目節目で務めてきた星組トップスターとなる前の主演作『想夫恋』から「桜夢幻」、『THE SECOND LIFE』から「君に伝えたいことがある」、『風の次郎吉〜大江戸夜飛翔〜』から「風をきれ闇を切れ悪を斬れ」をメドレーで。「君に伝えたいことがある」では本舞台で同時退団の美都くららが、七海ひろきにエスコートされてデュエットダンスを披露する餞の場面もあり、なんとも粋なはからい。『風の次郎吉』などは、続編があったらどんなに楽しかったろうか、と思われるエンターテイメント作品だっただけに、ここでの披露が嬉しかった。そこからいよいよ星組時代の楽曲となり、星組生たちと『THE ENTERTAINER!!』から「天翔ける翼」を力強く歌ったあとは、美城れんのソロ曲『タイタニック』の「My Heart Will Go On」。バウホール公演、『One Voice』で歌われた楽曲だが、こうした場で聞くととまた格別の感慨があり、美城の実力を改めて感じさせられた。

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銀橋を渡った美城が去ると、大階段にガラスの靴を手にした北翔と、舞台面に紫の美しいドレスの妃海が立ち、『LOVE&DREAM』屈指の名場面、『シンデレラ』の「夢はひそかに」が再現される。北翔のどこまでも柔らかく豊かな歌声が響き、妃海がトップ娘役時代に着用した数々のドレス姿の中でも、最も美しい衣装と言って過言ではない紫のドレスが、夢の世界に誘う。『LOVE&DREAM』は外箱公演の作品だったから、この得も言われぬ魅惑のシーンが、大劇場の大階段を使って再現されるゴージャスさが、目にもまぶしい。
続いて舞台はオペレッタの世界へ。北翔が『THE MERRY WIDOW』から「唇は語らず」を豊潤に歌うと、星組生が加わり『こうもり』の「ワインの火のほとばしりに」へ。次代を担う紅ゆずる、綺咲愛里も掛け合い、賑やかな歌と踊りに場は華やかに盛り上がった。その熱気の後を受けて妃海が水兵服で銀橋に現れ『南太平洋』から「ワンダフル・ガイ」をときめきを込めて浮き立つように歌う。轟悠との共演で若手娘役時代の妃海の代表作でもある作品の楽曲だが、「世界で1番の人よ、好きよ、好きよ、好きよ」と連呼する歌詞が、まるで北翔に捧げられているように聞こえるのは、このコンビが育んできた温かな雰囲気故だろう。

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そして、シャープなライティングが映える大階段に、粋なスーツ姿の北翔が登場。『ガイズ&ドールズ』から「運命よ、今夜は女神らしく」をソロで、更に白のドレス姿の妃海と「はじめての恋」をデュエット。ここからサヨナラショーは一気にクライマックスへ。『LOVE&DREAM』で歌われた「サムディ」を英語で披露する北翔の渾身の熱唱に、ボルテージは最高潮に達する。会場に美しいペンライトの灯りが広がる中、最後は『サウンド・オブ・ミュージック』の『Climb Every Mountain』をやはり英語で全員が唱う。「すべての山に登れ」という曲の持つ尊いメッセージは、北翔が星組生に、更に宝塚に残すものとして深く響き渡り、サヨナラショーの幕は下りた。19年間に、宝塚すべての組に出演してきた北翔ならではの、宝塚は1つと感じさせる、素晴らしいショーだった。

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劇場中に熱気が残る中、星組組長の万里柚美から退団者の履歴が紹介され、引き続いて準備の整った舞台で、宝塚の正装緑の袴姿の退団者たちが1人ずつ最後の大階段を降りてくる。5年間の幸せを語る美都くららの後に続いた専科の美城れんは、前もって用意した言葉ではなく、今感じる思いを述べたいというスピーチ。同期生の北翔海莉への感謝を語り、最後は退団作品にして文字通りの当たり役ともなった西郷隆盛を思わせる、薩摩弁で締めくくった。同じくトップ娘役の妃海風も今の心境を素直に吐露。訥々とした語り口の中に宝塚愛、何よりも相手役の北翔愛があふれ出ているのが印象的だった。
そして最後にトップスター北翔海莉がやはり緑の袴姿で大階段に登場。階段を降りる歩み、深く一礼する手の位置など、所作のひとつひとつが抜群に美しいのに、圧倒される。万雷の拍手の中、北翔は駆けつけた同期生とバトンを託す紅ゆずるから贈られたカサブランカの花束を手に、21年間の宝塚人生で出会えた縁が、何一つ欠けても今の自分はなかっただろうと語りはじめ、ファンへの感謝の言葉が続く。何よりも最後に「この21年間、とてつもなく苦しい時もありましたが、それ以上にとてつもなく面白かったです!」と言い切った爽やかさが、いつまでも耳に残った。言葉通りに長い道のりに多くあっただろう困難を乗り越えて、山の頂に到達した人にしか、北翔にしか言えない一言が、なんと清々しかったことか。名残尽きぬ客席からは、アンコールの拍手が幾度も繰り返された。

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【退団記者会見】 


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その後、余韻の冷めやらぬ劇場ロビーで北翔海莉退団会見記者会見が行われた。まず北翔が「皆様の応援と支えのお陰で、本日無事に、宝塚歌劇団男役の北翔海莉卒業することが出来ました。本当にありがとうございました。今の気持ちは皆様の質問にお答えして、色々な思いを伝えていけたらいいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します」と挨拶。続いて記者の質問に答えた。

【質疑応答】

──宝塚での舞台を全て終えて、改めて宝塚歌劇とは北翔さんにとってどのような場所でしたか?
今思ったと言うより、数日前に実は舞台機構のトラブルで3号セリが使えない日が1度あったんです。その時、開演時間が30分押してしまいお客様には大変ご迷惑をおかけしてしまったのですが、千秋楽を前にそういうことが起きて、いつもあまり顔を合わせることのなかったスタッフの方々が、本当に迅速にトラブルに対応してくださって、舞台を支えてくださっているスタッフの皆様の景色や、セリが使えなかった時にどうするべきか、共演者との信頼関係や、待っていてくださるお客様の存在を目の当たりにして、卒業を前に、宝塚の縮図を、神様に改めて見せてもらったような感じが致しました。そうしたすべてが凝縮した姿を卒業前に改めて知ることが出来て、本当に良かったなと。皆様よくおっしゃいますが、1人では舞台は成り立たない、宝塚は特に一流のスタッフの方々であったり、この劇場をお掃除してくださる方、販売をしてくださる方、本当に数えきれない方々の支えがあり、サポートがあっての私達の舞台なんだなというのを、こんなに素晴らしいところで(音楽学校時代を含めて)21年間も修行させて頂けた経験は宝物だと思います。
──芸能活動、舞台活動、ご結婚など、今後の活動予定については?
出来れば寿にいってみたかったのですけれども(笑)、まだそのご縁はこれからなんじゃないかなと思います。宝塚歌劇団の男役の北翔海莉としては本日を持ちまして卒業致しましたけれども、これからも世の為、人の為、エンターテイナーとしての北翔海莉で行きたいなと思っております。
──では芸能活動のご予定があるということで、期待していて良いのですね?
はい。

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──在団中から芸事にいろいろと取り組まれてきましたが「男役芸」とはどんなものでしたでしょうか?また、今後、それを封印してしまうのでしょうか?或いは活かしていくのでしょうか?
「男役芸」というより「清く正しく美しくいる舞台人」というのが宝塚の伝統芸かなと思います。私は男役ですけれども女役の経験もありますし、それが宝塚の舞台人としての芸のひとつだと思って今まで追求して参りました。男役の魅せ方や男役の美学ではなく、宝塚のモットーに基づいた舞台姿、そして精神的な面をこれからも封印せずに繋げていけたら嬉しいかなと思います。
──星組の後輩たちにエールを送るとすると、どんな言葉をかけられますか?
この1年半様々なジャンルのものに挑戦させて頂きました。今の星組に私は何を残せたのだろうかと考えた時に、自分ではよく分かりませんけれども、挑戦する心、諦めない精神、限界を作らないという部分が、皆の心の中に、どこか頭の片隅に残っていたら嬉しいかなと思います。
──素晴らしいサヨナラショーでしたが、演出の岡田(敬二)先生になにかリクエストされたことはありましたか?
今までの私の主演公演や思い出の作品を入れるというのは、いつものサヨナラショーの作り方として変わらなかったのですけれども、作品と関係なく「Climb Every Mountain」という曲を最後に入れさせて頂きました。岡田先生と一緒にビルボードライブを創らせて頂きました時に、私が専科の時でしたがあの曲を歌いました。その時には、色々な思いもあり、全ての山に登れという曲を歌っておりましたが、卒業の時に、全ての山に登った私が歌うのではなく、今の星組の下級生たちにこれからも色々な困難や試練があると思うけれども、しっかり山を登って行くんだよというメッセージ性も込めて、岡田先生とこの曲を最後にしようと、二人で一致した気持ちでしたので、選びました。

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──お花はカサブランカでしょうか。その花に込められた思いと、受け渡しの時に紅さんとどんなことを話しましたか?
(話したことは)秘密です(笑)。お花はカサブランカです。ユリの中でも最も強い花だと言われているもので、どんな綺麗でない水の中でも、どんな状況でも力強く咲き誇るという意味が込められております。この19年間様々な道のりがありましたけれども、自分の義を貫いてきたという意味でこの花を選びました。さゆみちゃん、あ、紅さんからお花を頂いた時に、持ち方をずっとしゃべっていました。いつも通り、楽屋通りの会話でもありました。最後に次代を担う紅さんからしっかりお花を頂けたということは、本当は私がバトンタッチをする側なのですが、幸せなことだなと思いながら受け取りました。
──今現在の心境とファンの方にメッセージを。
今日はどんな1日になるのかなと思っておりましたが、やはり最後の最後まで悔いはないのですけれども、舞台に対してもっとこうしたいという芸事に対するゴールはなく、それに満足する自分ではなく、次につなげて行けるような精神状態だったかなと思います。宝塚の舞台としては最後になりましたけれども、いつも通り役に入ってしまったら邪念がなかったので、桐野利秋としての人生を全うした舞台で、気が付いたら終わっていたという状態でした。けれども、さすがにサヨナラショーの最後、「Climb Every Mountain」で、お客様のペンライトの光の景色を見た時には、皆様の目に見えない力と言いますか、愛を感じて、そこで初めて今までぶれなかった感情がぶれました。こんな私を見付けて頂いて、応援して下さったファンの方々、色々な道のりの中で、ずっと諦めないで、ファンの方々の方が諦めないで、信じて付いてきて下さいました。皆さんの応援がなければ私はトップになれていなかったなと思います。そういう意味では、皆様の応援のおかげだと。また、他の組から星組に参りました私を、星組の皆が温かく受け入れてくれて、しっかりサポートしてくださったからこそ今日の日を迎えることが出来ました。すべてのご縁に感謝する気持ちです。また今日はお天気が本当に良くて、昨日は雨、明日も雨予報という中、今日は雲ひとつない晴天で、本当に皆様のお力で、皆様に守られていることを実感した1日でした。

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──宝塚のトップコンビについて、また相手役の妃海風さんについては?
宝塚はどうしても男役がメインになって、添え花のような娘役、相手役というふうに思われがちなんですけれども、私はそうではなくて、妃海風という1人の舞台人と一緒に切磋琢磨できる間柄でありましたし、彼女の一生懸命な姿、共に同じゴールを目指していける向上できる仲でございましたので、そう言う意味では本当にすごい相手役さんだな、素晴らしい人と組ませて頂いたという気持ちでございます。ふうちゃん、妃海さんは、向上心も、芸事に対しての追求心もそうですが、何よりも宝塚を愛する気持ちが強い方なので、そういう部分で、私は宝塚を知らないで入団した、ファン歴がなくこの世界に入ったので、こうしたら宝塚ファンの方が喜ぶということ、お客様の目線からのことを教えてくださいました。学年は下なのですが、私にとっては上の方のような、相手役さんと組ませて頂けたかなと思います。彼女の幸せオーラのお陰で星組がいつも明るく穏やかに過ごせたんじゃないかなと感謝しておりますし、これからも次代を担う紅さん、綺咲さんもきっとそういう部分を引き継いでくれるのではないかな?と思っておりますので、 相手役を尊敬する気持ちを忘れずに、次の世代に繋げていってくれたら嬉しいなと思います。

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微笑みながら語る北翔の思いのこもった言葉の数々が聞かれた会見は、終始和やかな空気に包まれて終了した。
 
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この日は、北翔の言葉通り晴天に恵まれ、更に11月下旬とは思えないほどの暖かい夜で、劇場周辺に集結した8000人のファンにも天からの恵みが降り注ぐかのよう。その中で、挨拶の順番に舞台化粧を落とした退団者たちがパレード。その都度大きな拍手と歓声があたりを包み、惜別のセレモニーは最高潮に。その最後に北翔が登場。ファン1人1人と瞳を交わそうとするかのようにゆっくりと一歩、一歩を刻んで進む歩みが美しい。ファンからもお別れの言葉ではなく「みっちゃん、またね!」という大きな声がかけられ、明日への思いも感じさせるスッキリとした笑顔で、北翔は東京宝塚劇場前を歩み去っていった。暖かい夜に相応しい、穏やかな空気がいつまでも残った。

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その後、エンターティナーの北翔海莉でありたいという言葉通り、間を置かずにクリスマスディナーショー、更に来春の豪華日替わりゲストと創るライブ活動を行われることがいち早く発表され、北翔は新たな山の頂きへとスタートを切り、宝塚では紅ゆずると綺咲愛里による新生星組が動き始めた。繰り返される出会いと別れの中から、それぞれが進む道が華やぎに満ちたものとなることを期待し、祈っている。

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【取材・文・撮影/橘涼香 舞台写真提供/宝塚歌劇団】






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北翔海莉の馥郁たる集大成の舞台、宝塚星組公演『桜華に舞え』─SAMURAI The FINAL─『ロマンス!!(Romance)』

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豊かな歌唱力とおおらかな温かさで星組を牽引したトップスター北翔海莉と、その相手役として輝いたトップ娘役妃海風の退団公演である、宝塚星組公演グランステージ『桜華に舞え』─SAMURAI The FINAL─、ロマンチック・レビュー『ロマンス!!(Romance)』が日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(20日まで)。

グランステージ『桜華に舞え』─SAMURAI The FINAL─は、西南戦争に散った西郷隆盛の片腕、桐野利秋を、世に知られた「人斬り半次郎」としてではなく、己の信じる義を貫き通した最後の侍として描いた齋藤吉正の作品。去りゆく北翔海莉のイメージを歴史の登場人物に重ね合わせた意欲作となっている。

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幕末の動乱期に、雄大な桜島がそびえる薩摩藩の貧しい城下士の家に生まれた中村半次郎(後の桐野利秋・北翔海莉)は、幼馴染の衣波隼太郎(紅ゆずる)と共に、攘夷を成し遂げる為に京に上る日を夢見て、剣術の稽古に明け暮れていた。ある日半次郎は縁あって薩摩の英傑西郷吉之介(後の西郷隆盛・美城れん)と出会い、人と人が争うことのない、平和な世の中を作らなければならないという西郷の理想に感銘を受け、彼が目指す国づくりの為に命を賭けることを決意する。
やがて、隼太郎と共に京に上った半次郎は剣の腕で頭角を現し、薩摩を中心とする新政府軍と旧幕府軍の会津とが全面衝突した戊申戦争の最前線で、刀を振るう中で、自ら討ち果たした会津藩士大谷隆俊(美稀千種)の娘、吹優(妃海風)の命を救う。それは立場を全く異にする2人の、戦乱の中での出会いだった。 
時は流れ、明治維新後の帝都東京。半次郎は桐野利秋と名を改め、敬愛する西郷隆盛と同じ陸軍に籍を置き、陸軍少将としての任に当たっていた。一方幼馴染の隼太郎は警視隊の一員として、共に故郷薩摩=鹿児島を愛しながらそれぞれの道に邁進していた。そんな日々の中で利秋は、医学を学ぶ吹優の元を度々訪ね、記憶を亡くしている吹優に自分が親の仇だと打ち明けられずにいる後ろめたさを抱えながらも、穏やかな語らいの時に安らぎを見出していた。
だが、利秋の帝都での日々は、新政府への不満を抱える士族たちを救済する為朝鮮派兵を訴えていた西郷と、内政の安定を最優先とする大久保利通(夏美よう)の決裂によって一変する。陸軍大将の地位を辞し、鹿児島へと下野する西郷につき従った利秋は、日本の未来を隼太郎に託し帰郷するが、不満分子が西郷の元に結集することを恐れた政府と鹿児島の間に横たわる溝は、修復不可能なものとなってゆき……。

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幕末の動乱期に生きた人びとは、創作の世界でも数多く取り上げられていて、宝塚でもこれまで新撰組や、白虎隊などがその舞台を彩ってきた。勝者となり官軍となった者、敗者となり賊軍となった者、それぞれに信じる義があり、貫いた思いがあることが、様々なドラマを生む力となるのだろう。
そんな中で、西南戦争に至る維新の英傑西郷隆盛ではなく、桐野利秋を主人公に持ってきたところが、この『桜華に舞え』─SAMURAI The FINAL─の最大の眼目で、世にその人となりがさほどには知られていない人物なことが、創作の自由さを増している。実際、桐野が貫く信義、勇気、真心、情愛などを北翔の持ち味に重ね合わせ得たことが、作者の齋藤吉正の大きな功績であり、着眼点の勝利とも言えた。

なればこそ、西南戦争に散る桐野利秋の話でありながら、昭和維新を目指した青年士官たちの決起である「五・一五事件」から幕が開くサプライズや、その後舞台が戊申戦争に遡り、明治6年に飛び、更にまた幕末動乱期の11年前に遡るという、相当難解な時系列の混乱や、多用される薩摩弁の聞き取りにくさなど、作品に残る瑕疵がどうでもよくなるのは、この作品が北翔海莉の退団公演であるという、宝塚歌劇として最も大切な興行の主目的を十二分に果たしているからだろう。
星組のトップスターとして、今、宝塚を飛び立とうとしている北翔のこれまでの道のりが決して平たんではなかったことは、宝塚を愛するすべての人が知るところであり、彼女がこの場所に至ることができたのは、ただひたむきに己を信じ、誠実に精進を重ねた日々の賜物に他らない。そんなタカラジェンヌ北翔の軌跡と、常に温かでおおらかな人柄が、桐野利秋の信義に忠実でどこか不器用な生き様にすべて投影されているのは、見事としか言いようがなかった。その姿は正しく最後の侍であり、ドラマとしては当然悲劇に終わりながらも舞台に全員を従えた桐野=北翔の「泣こかい、飛ぼかい、泣こよかひっ飛べ!」で終わる、爽やかささえあるラストシーンに帰結する美しさには、宝塚歌劇ならではの美徳が詰まっているかのようだった。
 
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その感覚は、北翔1人でなく、死してこの国の肥やしとなると言い切る桐野の心に最後まで寄り添おうとする、吹優の妃海風にも、更に次代を担う紅ゆずる演じる衣波隼太郎に、義と真心を桐野が託し、隼太郎が確かに受け取ったと宣言する場にも脈々と息づいている。妃海の芯に強さを秘めた静かな佇まいは、どちらかと言えば元気溌剌のイメージがあった彼女が、トップ娘役という地位についてこそ獲得した柔らかさだし、これまでその器用さからコメディリリーフ的な役どころを与えられることが多かった紅が、星組のバトンをつなぐこの公演で、友情に厚く、己の信義故に悩み苦しむ役柄をナイーブに演じきったのは、何よりの収穫となった。会津藩士の生き残りとしてひたすら桐野を敵と追う八木永輝の妄執を表現した礼真琴、怜悧な役柄を大きな存在感で膨らませた川路利良の七海ひろき、隼太郎と思い合いながら、家の言いつけで桐野に嫁ぐ竹下ヒサの綺咲愛里の、次期トップ娘役に相応しい華やかさ、冒頭の展開を含め常にドラマを外から見る視点となった犬養毅の麻央侑希のスター性など、次代の星組を担う人材もそれぞれに働き場を得て輝いていたのが頼もしい。やはり退団公演にして、代表作を勝ち取ったと思える西郷隆盛の美城れんの適役ぶりと、それに相対した大久保利通の夏美ようのいぶし銀など、専科勢の活躍も見どころで、実に充実した中身の濃い仕上がりとなった。

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そんな芝居の後に続いたのが、ロマンチック・レビュー『ロマンス!!(Romance)』で、これまで多くの傑作を残してきた岡田敬二のロマンチック・レビューシリーズの第19作品目となる1本。ロマンチック・レビューシリーズはこのところ全国ツアーの演目としてよく目にしてきていたが、やはり大階段と80人になんなんとする出演者に彩られた大劇場レビューの豊かさには格別なものがある。これぞロマンチック・レビューと呼びたい、優しく美しい色合いがあふれるプロローグから、舞台には気品が満ちていて、まさに王道の宝塚レビューの趣き。今見るとどこかゆるやかにも感じられるテンポ感だが、それ故に、北翔の朗々たる歌声が劇場中に響き渡る様は圧巻。

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リストの「ため息」が使われたストーリー・バレエ、懐かしのロックンロール、情熱のボレロと、定番なればこその安心感に包まれた舞台は、北翔率いる星組にこそ相応しい。中でも、謝珠栄振付、玉麻尚一音楽による「友情」のシーンは、明日への扉を開けて飛翔していく北翔にオーバーラップされる、躍動感に満ちた惜別のシーンとして、強い印象を残した。
 
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全体に、北翔海莉、妃海風をはじめとした退団者たちの集大成として、馥郁たる香りを持った作品になっているのが素晴らしく、充実したサヨナラ公演となっている。

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【囲みインタビュー】

初日を控えた10月21日、通し舞台稽古が行われ、星組トップコンビ北翔海莉&妃海風が囲み取材に応えて、公演への抱負を語った。

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まず北翔が「今回、『桜花に舞え』と『ロマンス!!』が、 私ごとではございますが卒業公演となりました。 宝塚大劇場での公演を無事に終えまして、残るは東京のみのファイナル公演でございます。 待ったなしのノンストップで参りますので、とにかく全員が怪我をせずに、 全員揃ってゴールできることを目標に、そして、進化し続ける舞台を目指して頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願い致します」
 
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妃海が「私もご一緒に退団させて頂くことになりました。 大劇場公演もとてもとても毎日充実していて楽しかったので、東京公演も瞬間瞬間を大切に過ごしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します」とそれぞれ挨拶。記者の質問に答えた。

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その中で、東京公演への抱負を問われた北翔が、いよいよラストだがまだまだ作品も男役北翔海莉を極められると思うので、最後の幕が下りるまで極め続けたいと意欲を語ると、妃海が舞台稽古をしていると退団の実感がなくなっていると、素直な心境を吐露。「退めるのやめたら?」と北翔にユーモアたっぷりに問いかけられ、腕にすがるようにして笑い合う微笑ましいシーンに、和やかな笑いが広がった。

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更に、それぞれの言葉で抱負を語り、作品の見どころを話す中で、北翔の包容力、妃海の北翔へのリスペクトぶりが伝わり、なんとも幸せな空気が場を満たす。その場にいる誰でもがほのぼのとした気持ちになれる、北翔&妃海コンビならではの温かい時間となっていた。

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尚囲みインタビューの詳細は、2017年1月7日発売の「えんぶ」2月号にも舞台写真と共に掲載致します。どうぞお楽しみに!


〈公演情報〉
宝塚星組公演
グランステージ『桜華に舞え』─SAMURAI The FINAL─
脚本・演出◇齋藤吉正
ロマンチック・レビュー『ロマンス!!(Romance)』
作・演出◇岡田敬二
出演◇北翔海莉 妃海風 ほか星組
●2016年10/21〜11/20◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席 12,000円 S席 8,800円 A席 5,500円 B席 3,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001




【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


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ポップで賑やかな二本立て宝塚宙組公演『王妃の館』『VIVA! FESTA!』制作発表会見レポート

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宝塚歌劇団での本邦初演から20周年を記念したミュージカル『エリザベート』を大成功のうちに終わらせ、ますます意気上がる朝夏まなと率いる宝塚宙組が、2017年ミュージカル・コメディ『王妃の館─Chateau  de la Reine─』スーパー・レビュー『VIVA! FESTA!』を上演することになった(2017年2月3日〜3月6日宝塚大劇場、3月31日〜4月30日東京宝塚劇場での公演)。

ミュージカル・コメディ『王妃の館─Chateau  de la Reine─』は、「鉄道員」「壬生義士伝」など数々の傑作小説を世に送り出した作家浅田次郎のベストセラー「王妃の館」を原作に、宝塚歌劇ならではの演出を加えて作り上げられるミュージカルで、脚本・演出を担当する田渕大輔の大劇場デビュー作品。太陽王ルイ14世が残した「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ(王妃の館)」を舞台に、曰く付きのツアーに参加した個性豊かな登場人物たちが織りなす人間模様がコミカルに描かれていく。

そしてもう1本のスーパー・レビュー『VIVA! FESTA!』は、中村暁の作・演出によるレビュー作品。人々が非日常の空間に集う FESTA(祭り)をテーマに、リオのカーニバル、中欧・北欧に伝わるヴァルプルギスの夜、スペインの牛追い祭り、日本のYOSAKOIソーラン祭りなど、世界各地の FESTAを描いた各場面が、宙組のパワー漲るメンバーによって繰り広げられていく。

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そんな、期待の2作品の制作発表会見が10月26日都内で行われ、宝塚歌劇団理事長小川友次、演出家の田渕大輔、中村暁、、出演者を代表して、宙組トップコンビ朝夏まなと、実咲凜音、そして『王妃の館』原作者の浅田次郎が登壇。作品への抱負を語った。

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まず会見は、朝夏まなと&実咲凜音によるパフォーマンスからスタート。実咲演じる弱小旅行代理店の女社長兼、ツアーコンダクター桜井玲子が、経営難に陥っていたパリの高級ホテル「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ」とタッグを組み、高額の「光ツアー」格安の「影ツアー」、それぞれの客に同じ客室を利用させる、という奇策に打って出たことを、朝夏演じるツアー客の1人であるセレブ気取りの恋愛小説家、北白川右京に見破られる場面の芝居が展開される。倒産寸前の弱小旅行代理店をなんとか守ろうとした玲子と、スランプに苦しんでいる作家の右京が、互いの心のうちを星空の下で打ち明けあい、やがて歌になっていく流れが美しく、ミュージカル版ならではの「王妃の館」への期待が高まった。

そこから会見の出席者全員が登壇。それぞれの挨拶から記者会見となった。

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【登壇者挨拶】
 
小川友次 本日はお集り頂きありがとうございます。そして浅田次郎先生にもご出席を頂きまして本当にありがとうございます。宝塚歌劇は102周年を迎え、皆様のおかげで順調な歩みを進めております。また先日まで上演しておりました、宙組朝夏まなと主演の『エリザベート』も大盛況でございまして、宝塚初演から20周年となる記念公演をこのように終えられましたこと、ご支援の賜物と感謝致しております。そして来年宝塚103周年、朝夏の宙組の4作目、『エリザベート』の後にどんな作品がいいだろうかと色々と考えたのですけれども、朝夏の全国ツアー作品『メランコリック・ジゴロ』を観て、あぁ、コメディも良いのではないか、ということから検討し、浅田先生の「王妃の館」が出て参りました。そこで舞台化をお願い致しましたところ、浅田先生からOKが頂けて本当に嬉しく存じましたし、田渕大輔君の大劇場デビュー作品と言うことで、シノプシスも面白く書けております。今、パフォーマンスを、あぁこういう風にミュージカルになるのかとご覧頂けたかと思いますが、宝塚的に出来ていると思いますので是非ご期待を賜りたいと思います。またレビュー『VIVA! FESTA!』の方でございますが、来年は日本初のレビュー『モン・パリ』誕生から90周年の年でございまして、私共はレビュー・カンパニーですから、中村暁先生が面白くまとめてくださると思います。朝夏を中心にこの2作で宙組は更に盛り上がっていくと思います。皆様どうぞよろしくお願い致します。
 
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浅田次郎 これまで実は宝塚を観たことがありませんでした。ミュージカルは好きなので、興味はあり是非1度観たいとは思っていて、お誘いを頂いたこともあったのですが、男1人では気が引ける、とは言え男2人でも(笑)。そうかと言って女性編集者に「宝塚が観たい」とも言い出せず、という状態でいたところ、本当に望外な「王妃の館」の舞台化のお話になり、躍り上がって喜んだという次第であります。「王妃の館」はお笑い小説です。私は色々な小説を書きますが、中でも「王妃の館」は徹頭徹尾オヤジギャグを散りばめた不思議な小説です。ルイ14世にはとても興味がありますし、パリも大好きですし、パリにいる間に思いついた小説で、そういう作品がこういう形で舞台になることは大変喜ばしく、今から楽しみでなりません。映像化でも舞台化でもそうなのですが、嫁に出した娘という感覚なので、どれだけ幸せになるのかを見ている父親の心境ですべてお任せしています。よろしくお願い致します。

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田渕大輔
 今回私は初めて宝塚大劇場の作品を担当させて頂くのですが、朝夏と実咲主演でということで、是非コメディがやりたいと思っておりまして、話が進み、浅田先生の「王妃の館」をミュージカル化させて頂けることになりました。先生の作品のお力をお借りして、2人の魅力をお届けできるような作品を作っていけたらいいなと思っております。浅田先生のお嬢様をお預かりしたような気持ちで、作品に登場する濃いキャラクターを私自身が先生の作品から感じる、ハートウォーミングなものに仕上げたいと思っています。よろしくお願いします。

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中村暁
 理事長からお話がありましたように、2017年は『モン・パリ』誕生90周年ということになります。宝塚歌劇にとって『モン・パリ』というレビューは大切なレビューです。初めて大階段やラインダンスを取り入れ、岸田辰彌先生が宝塚レビューの基礎を創り上げられたものです。そういうレビューを記念した年にやるということで、宙組公演としてスーパー・レビュー『VIVA! FESTA!』を企画しました。サブタイトルに「スーパーレビュー」とつけましたのは、新しいレビューにしたいということです。ここにいます、朝夏まなと、実咲凜音を中心に宙組の全員が躍動する舞台を創り上げたいと思っています。よろしくお願いします。

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朝夏まなと 
(『エリザベート』で)黄泉の帝王として君臨していた10日後に、ショッキングピンクの衣装で皆さんの前に出て、とても緊張致しました。今回宙組にとりまして約1年ぶりのオリジナル作品の2本立ての公演となります。『王妃の館』は、浅田次郎先生の小説が原作ということで、私も全国ツアー公演『メランコリック・ジゴロ』で、コメディの楽しさをすごく感じましたので、再び大劇場でコメディ作品に挑戦できることを、とても嬉しく思っております。また、この作品は田渕先生の大劇場デビュー作でもありますので、宙組一丸となって盛り上げて、浅田先生の素晴らしい作品の世界観を、お客様に喜んで頂けるような宝塚歌劇版の舞台として、お届けしたいと思います。そしてショーの方は中村先生ともお久しぶりなんですけれども、『HOT EYES!!』に続き、2つ目のショーなので、今の宙組の魅力を存分に発揮できるよう、私自身が引っ張って行きたいと思います。お芝居では色濃いキャラクターもたくさん登場しますし、お芝居、ショー共に宙組の魅力を存分に、皆様に楽しんで頂ける舞台を目指して参ります。そして、この公演は実咲の退団公演でもありますので、最後までいい舞台を一緒に創りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

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実咲凜音
 今回は、ミュージカル・コメディとショーの二本立てということで、今からとても意気込んでおります。お芝居の方では、今までにない役どころで、最後の公演となりますが、新しい自分をお見せできるように頑張りたいと思っています。ショーは、宝塚歌劇団に入団する前、私が客席から観させて頂いていた時に、とてもショーに憧れていて、感動したのをすごく覚えていますので、観てくださったお客様にも同じ思いをして頂けるような、楽しい、素敵で、華やかなショーにできればと思っております。朝夏さん率いる宙組の皆さんと共に創り上げる時間の一瞬一瞬を大切にして、取り組んで参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

【質疑応答】 

──浅田先生、宝塚はご覧になっていなかったとのことですが、今感じていらっしゃる印象は?
浅田 『エリザベート』を拝見したのですが、素晴らしいなと思いました。特に伝統というものを基盤にしながら、新しいものを創っているというそのスタイルが素晴らしいですね。
──舞台化に当たって、希望することは?
浅田 そういう注文は僕はつけません。嫁に出した娘に、相手の家にああせい、こうせいとは言えないでしょう(笑)。すべてお任せして楽しみにしています。
 
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──パフォーマンスをご覧になって、同じ作家の北白川右京像についてどうですか?
浅田 作家は本当はこうでなきゃいけない! すごく羨ましいなと思いました。こういう作家に早いうちになっておけばよかったのですが、デビュー時にボタンを掛け違えました。カツラを被っちゃうとか、もっと派手なファッションにするとかすれば、私の方向も違ったかも知れません(笑)。私は至って地味な小説家です。
──出演者のお2人、コメディ作品の難しさと楽しさは?またお互いを見てコメディに向いていると思う点は?
朝夏 コメディの難しい点は、狙っちゃいけないというところです。自然になるまで身体に叩きこんで、ポンと出た一言の間が面白かったりするので。自分の意図しているところと反して出たものの方が、お客様のウケが良かったりと言った、予測できないところが難しくもあり、それが上手くいった時の楽しさ、嬉しさもすごくあると思います。実咲凛音がコメディにどう向いているか?と言いますと、普段の彼女が出れば面白いと思います(笑)。

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実咲
 はい!普段の私が出せるように頑張ります(笑)。先ほどおっしゃったように、狙ってはいけなくて、はじめに本気で真剣にやらないと、お客様に伝わらないのでそれは難しいなと思いますし、舞台でお客様の笑い声をお聞きしたり、反応を感じることによってコメディ作品は空気が一体になって楽しめると思うので、それを目指したいと思います。朝夏さんは普段からこのようにいつも楽しいお話をしてくださり、ポロッと言ってくださる言葉に救われたりしますので、ついていけるように頑張ります。
──田渕先生から見た2人のコメディセンスは?
田渕 先ほどの発言にもあったように、朝夏さんは笑いに対してストイックで。
朝夏 (違う、違うと手を振る)。
田渕 稽古場の休憩所、リフレッシュルームでも笑わせてくれます。陽のオーラを持ったスターです。実咲さんは関西人なので、2人の普段の会話を是非お聞き頂きたいなと思うのですが(笑)、丁々発止のその雰囲気が今回出せたらいいなと思います。
 
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──中村先生、主演2人のショースターとしての魅力は?
中村 朝夏さんはその大きな瞳に優しさと強さが同居しているように感じます。そういう優しさと強さ、明るさ、烈しさを舞台に出してもらって、活かせたらいいなと思っています。宙組80数人を率いての歌、またダンスになりますので、そういうところでやりたいと思っています。レビューの醍醐味を感じさせてもらったらよいかなと。実咲さんは下級生の花組時代に『ファントム』という作品で初めて新人公演のヒロインを演じられた時に、堂々とやりきった感をしっかり見せてもらいました。今回もその感覚を見せて頂けたら。楽しみにしています。

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──実咲さん、退団公演ということで総決算の舞台となりますが。
実咲 今日舞台の1場面を皆様に観て頂いて、まだまだ最後の公演と言いましても、課題はたくさんあると感じました。朝夏さんはお芝居をされる時に日々違う感情を出されるので、その方の隣に立たせて頂くことで学ぶことがたくさんありましたので、最後までたくさん吸収をして、新しい一面をお見せできるように、朝夏さん率いる宙組の公演の一員として、作品の1つの力になりたいと思っています。

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──朝夏さん、今の実咲さんの発言を受けて相手役さんにエールと、コンビとしての最後の公演に対する意気込みを。
朝夏 実咲の退団公演なんですけれども、常日頃言っていることですが、より良い作品を創り上げるというのが私達のテーマなので、最終的には見送る形になりますが、作品を創る上では妥協せず、いつも通りに良い作品を創り上げていきたいと思います。彼女の集大成なので、下級生に伝えていって欲しいですし、娘役として立派な花を咲かせて欲しいと思います。

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〈公演情報〉
宝塚歌劇宙組公演
ミュージカル・コメディ『王妃の館─Chateau  de la Reine─』
原作◇浅田次郎 「王妃の館」(集英社文庫刊)
脚本・演出◇田渕大輔
スーパー・レビュー『VIVA! FESTA!』
作・演出◇中村暁
出演◇朝夏まなと、実咲凜音 ほか宙組
●2017/2/3〜3/6日◎宝塚大劇場
〈料金〉SS席12,000円 S席8,300円  A席5,500円 B席3,500円 
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター 0570-00-5100
●2017/3/31日〜4/30日◎東京宝塚劇場 
〈料金〉SS席12,000円 S席8,800円  A席5,500円 B席3,500円 
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001
公式HP https://kageki.hankyu.co.jp/

※Chateau  の「a」には「^」がつきます。



【取材・文・撮影/橘涼香】



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新生月組始動!宝塚月組公演『グランドホテル』『カルーセル輪舞曲』制作発表会見レポート

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新トップスター珠城りょうを中心とする宝塚月組で、、ザ・ミュージカル『グランドホテル』と、モン・パリ誕生90周年レビューロマン『カルーセル輪舞曲』が上演されることになった(2017年1月1日〜30日宝塚大劇場、2月21日〜3月26日東京宝塚劇場での上演)。

ザ・ミュージカル『グランドホテル』は、1928年のベルリンを舞台に、高級ホテルを訪れた人々が1日半のうちに繰り広げる様々な人生模様を描いたミュージカル。原典の映画は群像劇を総称する「グランドホテル形式」という言葉を産んだ作品としても知られ、1989年トミー・チューンの演出・振付により、ブロードウェイで上演されたミュージカル版はトニー賞5部門を受賞。宝塚歌劇では、同氏を演出・振付に迎えて、1993年に涼風真世、麻乃佳世を中心とする月組での初演が、大きな喝采を集めた。今回はそれ以来となる待望の再演となり、トミー・チューンを特別監修に、岡田敬二、生田大和が演出を担当。新トップスター珠城りょうが実は破産状態にあるものの、貴族のプライドを失わないフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵、トップ娘役の愛希れいかがロシア出身の世界的なバレリーナ、エリザヴェッタ・グルーシンスカヤに扮し、更に、初演で涼風が演じた不治の病に侵された会計士オットー・クリンゲラインを美弥るりかが演じるなど、新たな『グランドホテル』の誕生が期待される。

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 また、日本初のレビュー『モン・パリ』誕生90周年を記念した、稲葉太地作による優美で華やかなレビュー『カルーセル輪舞曲』も同時に上演。日本からパリを目指した『モン・パリ』とは逆に、パリを出発して宝塚を目指すお国巡り形式になるというレビューとあって、宝塚ならではの豪華な二本立てに、大きな注目が集まること必定だ。

そんな作品の制作発表会見が、9月8日都内で行われ、宝塚歌劇団理事長小川友次、演出家の岡田敬二、生田大和、稲葉太地、出演者を代表して珠城りょう、愛希れいか、美弥るりか、そして、オリジナル演出・振付、特別監修のトミー・チューンが登壇。作品への抱負を語った。

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 まず、会見は出演者によるパフォーマンスからスタート。『カルーセル輪舞曲』から、愛希れいかが、「モン・パリ〜我がパリ〜」を歌うと、珠城りょうが同作品の主題歌を初披露。レビューの華やかな世界の一端が舞台に立ち現れた。

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続いて、音楽が鋭く変わり、『グランドホテル』のテーマが流れる。本編でもドラマの語り手役となるオッテルンシュラーグ役の夏美ようのアナウンスで、珠城のガイゲルン男爵、愛希のグルーシンスカヤ、美弥のクリンゲラインが紹介され、舞台は『グランドホテル』の世界へ。ホテルの部屋でアクシデントのように出会ったガイゲルン男爵と、グルーシンスカヤが、嘘から始まった恋に落ちていくシーンが演じられる。たばこをくゆらせる珠城の大人の魅力が光り、愛希と繰り広げる雰囲気に満ちたデュエットが美しい。

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一転、株で大儲けをしたクリンゲラインとガイゲルン男爵が、祝杯をあげて踊り明かすシーンとなり、軽快な音楽に乗せて歌い踊る珠城と美弥の明るさが弾ける。最後はこのパフォーマンスだけの趣向として、愛希も加わり、主演コンビの役柄が変更されることによって、宝塚初演版にはなかったシーンや楽曲も登場するという、新たな『グランドホテル』への期待が更に高まった。

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そんな華やかなパフォーマンスに続いて、会見の出席者全員が登壇。それぞれの挨拶から記者会見となった。

【出席者挨拶】

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小川友次 本日はお集り頂きありがとうございます。更にニューヨークから、レジェンドと申し上げて良いトミー・チューン氏が起こしくださいました。心より御礼申し上げます。おかげ様で宝塚は102周年を迎え、昨年の101周年は100周年にも増して、新記録を達成する多くのお客様に来て頂きました。102周年の今年も宝塚大劇場は100%近い大入り、また東京宝塚劇場は龍真咲退団公演の月組公演が終わったばかりですが、本当に多くのお客様に愛されて101%を越えるお客様をお迎えすることができました。深く御礼申し上げます。来年103周年の正月公演を珠城りょうという若いトップスターを中心にやると決まりました時に、何をやろうか?となった時に、やはりこの素晴らしい『グランドホテル』をもう1度やりたい、という気持ちが強くありました。そこにこうしてトミー・チューン氏が起こしくださり、許可も得て、違うバージョンで新しいリボーンとなります。お楽しみにして頂けたらと思います。私自身が今よく海外バージョンのCDを聞くのですが、最後の大好きなフィナーレナンバーが、来年元旦から聞けるのかと思うと、今からワクワクしております。またショーでございますが、1927年の『モン・パリ』から90年が経ちます。岸田辰彌先生が小林一三の命を受けて1年間欧米で勉強されて、持ち帰られたのが『モン・パリ』でございます。宝塚の原型であります、ラインダンスや、何より英語では「レビュー・カンパニー」でありますから、その勉強をされた岸田先生の作品から90年の今、今度はパリから宝塚に帰ってくるレビューを創るということで、これも本当に楽しみでございます。この2作品で、来年の正月に新月組のお披露目、ここにいる3人を得たからこそ、この公演ができると信じ、期待しておりますので、皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。

トミー・チューン この度、こうしてまた宝塚と仕事ができるとは思ってもいませんでした。正に夢のようです。本日はお越し頂きまして本当にありがとうございます。

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岡田敬二
 何よりも23年ぶりにブロードウエィからトミー・チューンさんをお招きして『グランドホテル』が再演できるということを、日本側のスタッフの1人として大変光栄に誇りに思っております。23年前と言いますと、トミーさんも50代半ばで、『ウィル・ロジャース・フォーリーズ』でトニー賞を受賞された頃です。私共がこの『グランドホテル』を上演するに当たりまして、1年2ヶ月の打ち合わせ期間と、3ヶ月の稽古をやりました。『ブロードウェイ・ボーイズ』という作品と、『グランドホテル』での公演でしたが、トミーさんたちのブロードウェイのスタッフと、私共宝塚のスタッフが四つに組んでミュージカルを創った、宝塚歌劇団と致しましても大きな冒険であり、思いとなった作品でございます。今回夢が叶って、もう1度トミー・チューンさんとお仕事ができるというのをとても嬉しく思います。更に、宝塚103年目の冒頭に、珠城君を中心とする月組の新しいメンバーで、生田大和先生、ショーの稲葉太地先生、今や宝塚歌劇団を代表する期待の若手演出家である二人の演出を、私自身も大変楽しみに致しております。

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生田大和 今回『グランドホテル』という作品に演出として声をかけて頂けました。エンターテイメント作品としても極上のものでありながら、芸術的なスピリットを併せ持った美しい作品に携われることに感激しております。トミー・チューンさんの名に恥じぬようなものにできるように、頑張って参りたいと思います。23年前の初演当時、私は中学1年生で、ミュージカルに目覚めたのが中学2年生の時だったものですから、惜しいことに1年の違いで観ることができなかったのです。つまり私は何も知らない新参者なのですが、改めて資料などひも解いて行きますと、そのスピリット、哲学的な部分、美しい演出、それらすべてに天才のなせる技ではないかと感じて感動致しました。それを今度は演出という立場で実際に稽古場で形にしていかなければならないという立場で、大きなプレッシャーと共に喜びを感じております。1989年のブロードウェイの上演までに、様々な困難があったことも資料から読み解けるので、単に形を整えるのではなく、そのスピリットを探求していけるよう、良き演出家であると同時に、良き研究者としても、1928年にグランドホテルで生きる人々と共に私自身も生きて参りたいと思います。

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稲葉太地
 『モン・パリ』誕生90周年の記念レビューを、ということで大変重く責任を感じております。岸田先生が作られたレビューから、こちらにおられる岡田先生もそうですが、たくさんの先輩方の仕事、作品作りに敬意を表して、もう1度勉強し直して、私なりにこの新しいレビューを創って行きたいと思っております。更にそれ以上に大きな使命として、こちらにおります珠城が、この公演から新しい月組のトップスターとなります。珠城、愛希、美弥を中心と致します、新しい月組の魅力を1番活かすことが、わたしに与えられた1番の使命ではないかと思っておりますので、この新生月組が繰り広げる、1番素晴らしいレビューを目指して皆と一緒に作品を創りたいと思っております。また、私事ですが『グランドホテル』はとても大好きな作品で、「前もの『グランドホテル』です。トミー・チューンさんもいらっしゃいます」と伺った時に「そっちの助手でいいです」と言ったほどでした(笑)。23年前『グランドホテル』と『ブロードウェイ・ボーイズ』私は劇場で拝見しておりました。7月の暑い東京公演だったと記憶しております。その時にエンターテイメントというものの素晴らしさをとても感じておりました。その、後ものを務めさせて頂く、宝塚の定番である二本立ての興行の後ものを務めさせて頂くことを大変光栄に思っております。

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珠城りょう
 私事ではございますが、月組の主演男役として皆様の前でご挨拶させて頂くのは本日が初めてでございます。『グランドホテル』、そして『カルーセル輪舞曲』どちらも本当に大きなもので、お話を伺った時には驚きましたし、自分自身務まるのかどうかという不安も正直ありました。ですが、『グランドホテル』という作品の様々な資料を拝見させて頂いたり、実際に譜面を頂いて、この制作発表に向けてのお稽古を進めていくうちに、この作品に携わらせて頂けることがどんなに幸せか、という想いの方が強くなってくる毎日でした。この楽曲を歌えること、この作品ができることがどれだけ役者として幸せなのだろうかという想いが、自分の中に溢れてきました。それと同時にショーの方でも、『モン・パリ』の90周年という記念すべき年に、新たに私たちの為にオリジナルでショーを作って頂ける、それも本当に光栄なことだと思っております。非常に個人的なことになってしまうのですが、私は宝塚初観劇が岡田先生の作品で、それを観て宝塚受験を決めました。それ以降入団してからは岡田先生とのご縁はなかったのですが、このように新生月組、私のお披露目という時に先生とご一緒にお仕事をさせて頂けるということに、深いご縁を感じております。また生田先生や、稲葉先生には新人公演時代からたくさんお世話になりまして、ここに至るまでの色々な引き出しを作って頂きました。今ここでお2人の先生と関わらせて頂けること、そしてトミー・チューン氏をお迎えして新たな『グランドホテル』を作っていけること、すべての奇跡に今心から感謝致したいと思います。まだまだ舞台人としても、男役としても未熟ですし、まだ磨いていかないといけないところはたくさんあるのですが、今の自分にできる精一杯の努力をして、今の私たちにしかできない二つの作品に仕上げていきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。

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愛希れいか
 パフォーマンスの方で初めにショーの方の歌を少し歌わせて頂いたのですけれども、稲葉先生からも少しだけ構成をお聞きしてとてもワクワクしております。お正月の、1年の幕開けに、そして新しい月組のスタートにとても相応しい作品になるのではないかと楽しみに致しております。そしてお芝居の方『グランドホテル』ではエリザヴェッタ・グルーシンスカヤ役をさせて頂きます。本当に多くのブロードウェイミュージカル作品の中でも、特に大切にされてきた作品の1つではないかと思っております。こうしてトミー・チューン氏をお迎えして、再演させて頂けますこと、とても幸せで、光栄です。お役につきましては、バレリーナなのですが、生きることに希望を失い、踊ることに情熱を失った彼女が、男爵に出会い、愛すること愛されることの喜びと、踊りへの情熱を取り戻していくことを、私なりに大切にしっかりと演じて参りたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。

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美弥るりか 個人的な話になってしまうのですが、私自身、初演でこの役を演じられた涼風真世さんに憧れて、宝塚への受験を決めました。更に生まれて初めて劇場に観に行ったのもこの作品で、私にとって『グランドホテル』と『ブロードウェイ・ボーイズ』は、これなしには宝塚を語れないくらい熱いものがありますので、今、この作品を月組で再演することができ、しかもオットー・クリンゲラインという役に自分が出会えたことに心から感謝しております。まだまだ自分が本当にオットーを演じるのだということが夢のようなのですが、子供の頃にはわからなかった色々なものがギュっと詰まった素晴らしい作品ですので、自分なりにこの役をもっともっと深めて、魂を込めて大切に、この役に出会えた奇跡に感謝して演じたいと思います。そしてショーの方は、私は今日パフォーマンスの方には出演していないのですが、すでに主題歌が頭の中をぐるぐる回っておりまして、きっと皆様にもすごく楽しんで頂ける素敵な主題歌だなと思いました。稲葉先生のショーには1度『GOLDEN JAZZ』に出させて頂いておりまして、先生のショーの魅力というのは団体で作る魅力だけではなく、先生から観た個人個人の生徒が、どんな場面に出て、どんなパフォーマンスをすればその人自身が1番輝いて見えるか、素敵に見えるか、という先生のこだわりが細かいところまでギュッと詰まっているところが、素敵だなといつも拝見していましたので、私自身もどのような場面に出るのか、新しい自分に出会えるのかを楽しみにしております。そしてこの作品で、珠城りょうちゃんと愛希れいかちゃんの新しいお披露目、ここからが月組の新しいスタートとなりますので、私も微力ではありますが力になれるよう精一杯頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

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【質疑応答】

──今回『グランドホテル』は新しく演出が変わるということですが、今お聞かせ頂ける範囲でどのようになるのか教えてください。また岡田先生と生田先生の役割り分担はどのように?
岡田 私はもう70代で後進を育てるという立場ですので、先ほどご紹介しましたように生田さん、稲葉さんというのは、歌劇団の新しい力ですから、『グランドホテル』の演出をやりたいという手は、歌劇団の中でずいぶん上がったですが、成長株である生田先生にお願いしました。私は全体を見ますけれども、ディテールに関しては生田さんが頑張ってやってくれるだろうと思います。23年前を含めた全体には責任を持ちますが、細かいことは生田さんがやってくれると期待しています。ですので、最初のご質問に関しましても、生田さんがお答え致します(笑)。
生田 分担という形ですが、稽古場の実働部隊として骨組みを作っていくのが自分の役割りだと心得ております。稽古場で実際に人を配置し、動かし、ステージングを振付の御織ゆみ乃さんと一緒に、創り上げていく形になります。その上で岡田先生にご覧頂き、更にはトミー・チューン氏に監修して頂く。演出が変わるということですが、もちろん今回は新生月組のお披露目でございますから、男爵が芯となる、主人公ですが、元々『グランドホテル』は「グランドホテル形式」という言葉を生み出したほどの群像劇ですから、その中で誰を軸にしていくかで見え方が変わると思います。23年前の初演でもオットー・クリンゲラインという人間にフォーカス、焦点をあてまして、元々2時間10分の作品を抜粋して創り上げたのが、宝塚版の成立過程であるのかなと思うのですが、今回は男爵と彼を愛するグルーシンスカヤ2人に焦点を当てるということになりますので、2時間10分の原典からどう抜粋して見直すか?が軸になると思います。その上で演出をその為に変えるということはなく、あくまでもトミー・チューン氏が作られた世界観というものを大切に、なぞるのではなく、スピリットを掘り下げていければと思っております。

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──トミー・チューンさんは宝塚OGによる『CHICAGO』ニューヨーク公演もご覧になったそうですが、宝塚がブロードウェイミュージカルを演じる意義をどう感じられていますか?
トミー ニューヨーク公演の『CHICAGO』は大変素晴らしいもので、Aプラスでしたが、あの作品にはショッキングな台詞も含まれていて私が宝塚と関わらせて頂いてから23年が過ぎていることもあって、宝塚は今このように変わっているのか?と驚いたところもありました。ですが、あの『CHICAGO』はやはり特別なもので、宝塚は今でもオリジナルで、スペシャルな団体だと思っております。
──演出の先生方、今の月組の魅力をどう捉えて、作品に反映しようと思われていますか?
生田 今の月組のそれぞれの魅力は、大変芝居巧者の方が揃っている組だという印象がございます。それは他の組を決して貶めるものではないのですが、特に月組さんの脇を固めてくださる上級生、また下から押し上げてくる下級生の勢いにはなかなか素晴らしいものがあると思います。それはやはり霧矢大夢さんトップの時代、龍真咲さんトップの時代、それぞれで育ってきたものがありますので、それを引き受けて珠城さんが立つことになります。私は珠城さんとの関わりで言いますと『スカーレット・ピンパーネル』という作品の新人公演の演出を私が担当させて頂きました。(珠城に)あれは、たぶん初主演でしたね。

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珠城 はい、そうです。
生田 その時に大変感じましたのが、彼女自身が持っている何かを演じる以前に、エネルギーが身体の中に満ちている。珠城りょうという形を作っているものの中にあるエネルギー、その熱さ、もしくは熱、光の強さに驚いたのをよく覚えています。実際、稽古場、舞台稽古を経て、大劇場の本番の舞台のセンターに立っている姿が立派だった。もちろん男役として恵まれた体格を持っていることもありますが、それに負けない努力を積み重ねてきた人だと思いますので、そして「新生」ですから、1番若い組になりますので、そういった若々しさが魅力になると思います。それを男爵という役を演じるに当たって、男爵の優雅さと、生きる為に払わなくてはならない代償、そういったものの中で、彼女が元々持っている明るさというのが、役作りの上で大きな救いになるのではないかと想像しております。
稲葉 私は今年の東京のお正月公演だったのですが、月組公演のショーの『GOLDEN JAZZ』という作品を担当させて頂きまして、その時にすごく感じたのは、上級生から下級生までが表現者としてとても一流だということでした。1列目、2列目にいる人たちが本当に表現をするので、下級生がその背中を見て育つと、技術がまだまだ足りない学年の子たちでも、ものすごいエネルギーを発揮してくるんですね。これはやっぱり前に立っている人たちが、大きな表現をしないとそこにいることが許されないというくらいだからだと思います。ここにいる面々、美弥は星組からの組替えですが、もう来て何年ですか?
美弥 4年半です。

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 4年半、そういう風に見てきて、もちろん珠城も愛希もずっと上級生の背中を追い続けて今、このポジションにいる訳で、そういう意味では表現者として一流の人たちが集まった組としてイメージしております。珠城も新しくトップスターになりました。で、この公演から組長も新しくなりまして、本当に5組の中で1番若い組になりますが、受け継いでいく精神みたいなものは変わらないと思いますので、素晴らしいパフォーマンスを芝居でもショーでも発揮してくれるでしょう。そこが1番の魅力だと思っております。
岡田 私たちの演出部には、生田先生、稲葉先生だけでなく、植田景子先生、上田久美子先生、原田諒先生など、大変優秀な若手の先生方がいらっしゃいます。私はもう歌劇団に53年おりまして、植田紳爾さん、酒井澄夫さん、もうその次は私なので、私は力の限りレビューの灯をともして頑張りたいと思いますが、その中で宝塚が小林一三先生の精神を守って、世界で唯一の歌劇団の精神を守っていってくれるような人たちを、影ながら助けていく形になるのかな?と思っています。今『エリザベート』をやっている小池修一郎先生は、私の助手を14年間やってくれた人ですし、生田先生、稲葉先生は、その小池先生の助手を務めておりました。そういう意味では、私は彼らのサポートをしながら、トミー・チューンさんの精神を守って、『グランドホテル』を一生懸命作っていきたいです。

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──では、最後に珠城さん、どんな月組を作っていきたいか、またどんなトップスターになっていきたいですか?
珠城 私自身、皆様の前でご挨拶をさせて頂くのも本日が初めてということもありまして、これからどんな風になっていくんだろうかは、自分でも期待と不安が半々な気持ちです。舞台では磨いていかないといけないところ、もっと研究して男役らしくなっていきたいところはありますが、つい先日ご卒業された龍さんがいらした時の、下級生に至るまでエネルギー溢れる、1人1人が舞台に賭ける熱い思いのある月組の、その先頭を走っていく上で、自分が1番舞台に対してひたむきに、明るく務めていけたらいいなと思っております。トップとして、ということはまだお稽古もスタートしておりませんし、舞台にも立たせて頂いておりませんので、まだ実感がないところもあるのですが、こうあらねばならぬと思うのではなくて、まだまだ自分も成長段階ですから、月組の皆様と一緒に1歩1歩進んでいければいいなと思っております。ただ、その真ん中にいるだけということで、皆様の思いを受けて、力強く一緒に歩んでいけたらと思っています。

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〈公演情報〉
宝塚歌劇月組公演
ザ・ミュージカル『グランドホテル』
脚本◇ルーサー・ディヴィス
作曲・作詞◇ロバート・ライト、ジョージ・フォレスト
追加作曲◇モーリー・イェストン
オリジナル演出・振付・特別監修◇トミー・チューン
演出◇岡田敬二
演出◇生田大和
翻訳◇小田島雄志
訳詞◇岩谷時子
モンパリ誕生90周年 レヴュー・ロマン『カルーセル輪舞曲』
作・演出◇稲葉太地
出演◇珠城りょう、愛希れいか ほか月組
●2017/1/1〜1/30日◎宝塚大劇場
〈料金〉SS席12,000円 S席8,300円  A席5,500円 B席3,500円 
〈問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター 0570-00-5100
●2017/2/21日〜3/26日◎東京宝塚劇場 
〈料金〉SS席12,000円 S席8,800円  A席5,500円 B席3,500円 
〈問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001




【取材・文・撮影/橘涼香】



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日本初演から20周年 宝塚歌劇宙組『エリザベート〜愛と死の輪舞〜』制作発表会見レポート

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思えばすべてはここからはじまったと言える宝塚歌劇団での日本初演から、今年2016年、20周年を迎えた三井住友VISAカードミュージカル『エリザベート〜愛と死の輪舞〜』が、その記念の年に宝塚歌劇団宙組で再演されることになった(兵庫・宝塚大劇場で7月22日〜8月22日、東京宝塚劇場で9月9日〜10月16日の上演)。

美貌のオーストリア皇妃として知られるエリザベートの数奇な運命に、彼女を愛する黄泉の帝王トート(死)という象徴的な存在を絡ませて、ハプスブルク帝国の黄昏の日々を描いた1992年ウィーン生まれのこのミュージカルは、今も世界中で上演され続ける大人気作品となっている。我が国でも1996年の宝塚雪組での初演以来、宝塚で、また東宝でと再演を繰り返し、チケット入手困難が続くメガヒット作品として定着している。
特に、黄泉の帝王トートを主人公に据えた宝塚版ならではの幻想性は、高い評価を集めていて、初演の雪組以来、各組での再演が続き、上演回数899回、観客動員数216万人を誇る、宝塚歌劇を代表する作品の1つとなっている。

そんな作品が、今回朝夏まなと率いる宙組で再演されることとなり、4月15日都内で華やかに制作発表会見が行われた。

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会見は、まず宝塚9代目の黄泉の帝王トートとなる宙組トップスター朝夏まなとと、タイトルロールのエリザベートに扮するトップ娘役の実咲凜音のパフォーマンスからスタート。歴代銀色をベースにしていた髪色を、黒のロングという新鮮なビジュアルで登場した朝夏が、初演時宝塚版の為に書き下ろされた「愛と死の輪舞」を深い思いを込めて歌う。

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続いてエリザベートと言えばの1幕最後の白いドレスで登場した実咲と2人で、2002年の花組公演から加えられたトートとエリザベートが互いの思いをぶつけ合うナンバー「私が踊る時」が歌われ、新たに生まれる宙組版『エリザベート』への期待が高まる時間になった。

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続いて、宝塚歌劇団理事長小川友次、この公演の協賛会社である、三井住友カード株式会社代表取締役久保健、潤色・演出の小池修一郎、演出の小柳奈穂子、更に、朝夏まなと、実咲凜音が登壇。それぞれの挨拶となった。

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まず小川理事長から、1992年にウィーンで生まれたミュージカル『エリザベート』を20年前の雪組初演で、心血を注いで作り上げた小池修一郎が、宝塚の財産となる作品に仕上げてくれた。それから20年、『エリザベート』は宝塚の宝物であると同時に、日本のミュージカル界の宝物ともなっている。自分にとっても『エリザベート』は、宝塚大劇場の総支配人であった時の1998年の宙組公演、また、梅田芸術劇場でウィーンからの招聘公演を実現した場に立ち合うなど、縁も思い入れも深い公演で、その作品を今ノッている宙組で、『Shakespeare〜空に満つるは、尽きせぬ言の葉〜』のシェイクスピア役などで力をつけてきた朝夏まなと主演でやれることがとても嬉しい。演出には小池修一郎に加え小柳奈穂子も加わり、宙組公演初日に900回の節目の上演を迎える宙組の『エリザベート』が、宝塚の『エリザベート』の歴史にどんな1ページを刻むのかに、ご期待の上ご支援賜りたいとの言葉が述べられた。

続いて協賛会社の三井住友カード株式会社の久保社長から、宝塚で9回を数える『エリザベート』のこれまでの公演すべてに協賛していて、特別な作品に感じている。宙組公演だけで考えると、18年ぶりの上演となりその間の宙組の成長が現れる場ともなるだろう。スターとしての風格を増している朝夏まなとのトート、娘役なら誰でも1度はと夢みるはずのエリザベートに挑む実咲凜音、どこか心弱い、憎めない皇帝を演じる真風涼帆、影の主役とも言えるルキーニを演じる愛月ひかる、など、それぞれが個性を出して、小池、小柳両演出家の元、また新しい『エリザベート』が生まれることに期待しているとの力強いエールが送られた。

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それを受けて、潤色・演出の小池修一郎から、20年前には、トップスターに黄泉の帝王役など大丈夫なのか?と危惧するお言葉を頂いてはじまった『エリザベート』に対して、今や、この場にいない真風や愛月の魅力までもを久保社長が語ってくれるに至ったことに感動した。20年間の重みを感じる。『エリザベート』は、この20年間愛され続け、宝塚でも様々なスターがそれぞれのアプローチで演じてきたが、今、扮装して「愛と死の輪舞」を歌う9代目トートの朝夏まなとを見て、ある意味削ぎ落とされた核心をついたものになっているのに感心した。歌も非常に良くなっていて精進の賜物だろう。2代目のトートだった麻路さきさんが「生きている人間で、黄泉の帝王を見たことがあるという人はいないはずだから、自由な表現が許されるはずで、私は私のトート像を作る」という趣旨の明言を残していて、その後に続いた人たちが役柄におおらかに取り組める礎となったが、朝夏からはそれら先輩たちが積み上げてきたものを突き抜けて、原点に返っているものを感じるので、これからの仕上がりが楽しみだ。エリザベートの実咲凜音は、トップ娘役としてのキャリアを重ねてきているが、どんなにキャリアがあっても、この役柄は緊張を強いられるし、おそらく本人にとっても念願の役どころではないかと思うので、朝夏の核心をついてくるトートに対して存在し得るエリザベートになって欲しい。そして今回小柳奈穂子が演出として自分を助けてくれる。彼女は98年の宙組公演時に、まだ研修という形で正式に入団する前から、演出補の中村一徳の下について仕事をしてくれており、正式に宝塚に入団した後、02年の花組公演からはずっと最初に作品を掘り起こしていく段取りからの担当をしてくれているので、誰よりも『エリザベート』には詳しい。今回満を持した共同演出として腕を振るって欲しい。新しい曲や場面が加わるということこそないが、きっと新しいものが観られると思うので、よろしくお願いしたい、と、新たな朝夏と実咲による宙組バージョン、共同演出の小柳への期待が語られた。

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その共同演出の小柳からは、初演の雪組公演当時はミュージカルサークルに籍を置く大学生で、大変な話題になった作品だったのだが、チケットが取れずに観劇が叶わなかった。そんな作品に共同演出として制作発表会見の場に臨んでいることに、隔世の感を覚える。98年から助手として関わってきたが、これまでの上演を見ながら掘り起こしていく作業を各組でしていて尚、スターや組の個性によって変わっていくものがあり、歌舞伎的な魅力も持った作品だと思う。自分としても18年間『エリザベート』に関わってきたことが演出家としての大きな勉強の場となったので、観客であった時の驚きも活かしながら、宙組のチームワーク、コーラス力をもって、「死」の話ではありながらもビビットな『エリザベート』が生まれるよう力を尽くしたいという思いが語られ、出演者挨拶へと引き継がれた。

【出演者挨拶】

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朝夏まなと
 日本初演から20周年という記念すべき年に、『エリザベート』を上演させて頂く責任と喜びをひしひしと感じております。私はこの作品に入団1年目の時、春野寿美礼さんがトートをされた
02年の花組)公演に出演させて頂きまして、私の宝塚人生の初台詞を頂きました。「ミルク」の場面での「病人がいるんだ!」という一言だったのですが、この一言が言えなくて、小池先生からその時出演されていた立ともみさんに「この子をみてやってくれ!」と言って頂き、立さんに特訓して頂いたのを今でも覚えています。そんな私の思い入れのある公演で、主人公トートをさせて頂くことにはとてもプレッシャーがありますが、今、先生がおっしゃっていた核心をついた、削ぎ落とされたトートとは何なのか、自分なりに考えて、突き詰めていきたいなと思っております。また宙組と致しましても、今とても団結力があって、それぞれの向上心も強いので、この作品に体当たりでぶつかっていって、皆様に楽しんで頂ける『エリザベート』を作っていきたいと思っております。先生方どうぞよろしくお願い致します。三井住友カード様のご協賛に感謝しつつ、宙組の『エリザベート』をしっかりと作り上げたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

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実咲凜音
 この度は宝塚での『エリザベート』20周年という記念すべき年に、この作品に携わらせて頂けることを本当に奇跡のように思っております。目の前の壁はとても高いですが、演出の小池先生、小柳先生、朝夏さん率いる宙組で作り上げる新たな『エリザベート』をお届けできるように、私も魂をこめて取り組みたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

【質疑応答】

──朝夏さんのビジュアルイメージはどんな発想で決まったのですか?
小池 髪を黒くしたのですが、以前彩輝直さんに05年月組)黒を提案したところ「ごま塩が良い」ということで(笑)白黒にした経緯があって、今回朝夏に削ぎ落とされたシャープなイメージがあるのには、黒い髪から来ているものもあると思います。メーキャップも含めて、今までのトートが狙ってきた綺麗さとはちょっと違うのではないかな?と、死が本来持っている暴力性のようなものも感じさせるのではないか?と今日すごく思っています。衣装の有村淳さんにも9人9様のトートの衣装を作って頂いていて、本当に毎回大変だと思いますし、クリエイターとしての葛藤もあったと思いますが、今回すごくカッコよいなと。20周年の進化したものを感じました。なぜ黒髪にしたかと言いますと、ハッキリ言って色が尽きて来たというところもありまして(笑)、赤とかはちょっとトートとしては違う、やはり寒色系の何色かでと思い、こういう形になりました。

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──小柳先生の担われる役割は?
小池 まず前回までのものを掘り起こして、新たに生まれた感情を曲や場面に与えていく訳ですが、どうですか?
小柳 助手なんですが、これまでも演出家のつもりでやらせて頂いていて、「これでどうだ?」と小池先生にぶつけて行くつもりでおりました。ですので、これまでと作業的に違うということはあまりないかと思いますが、やっぱり今日ここに来て「演出家」として名前を紹介されると心構えが違うなと感じるので、そういう意味で変わっていく部分はあるかと思います。ただ、役割分担としては変わらないと思います。
小池 98年に彼女がまだ女子大生という立場で研修に来ていた時に、実際の助手としてあらゆる雑役をやらせていて、今回の『エリザベート』はどう思う?と訊きましたら、姿月あさとさんのトートだったのですが、「宙組の『エリザベート』はバロックだ」と答えました。それはどういうつもりで言っているの?と更に訊きましたら、彼女が色々と答えてくれたことがとても面白くて、私自身が宝塚で3回目の『エリザベート』をどうやってまとめようかとても悩んでいた時に、若い人の新鮮な意見が参考になりました。それから上演の度に意見を訊いていて、ここは変えた方が良いのか?或いは変えない方が良いのか?についてもいつも相談してきました、彼女自身もどんどん成長していて、一方僕の方は齢を重ねておりまして(笑)、もしかしたらちょっと見方が昔に還っているかも知れない。そんなこともありますので、今の彼女から出てくるものを、今の自分の観点でジャッジをしていくことになるだろうと思います。

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──朝夏さん、実咲さん、最初に観客として『エリザベート』をご覧になったのはいつですか?また、その時に最も印象に残った場面は?
朝夏 私は出演が決まった入団1年目にビデオで拝見したのが最初です。私はあまり宝塚ファン歴が長くなくて、入団してから色々なものをたくさん観るようになったのですが、その今まで自分が観た作品とは全然違う「これは宝塚なのだろうか?」と最初には思ったくらい、すごくスタイリッシュで歌だけで綴られていくミュージカルというものに衝撃を受けました。どこの場面というよりも、全体が衝撃的でした。
実咲 私は舞台を直接拝見させて頂いたのは瀬奈じゅんさんがトートをされていた月組09年)公演でした。その後映像ですべての『エリザベート』を拝見させて頂いたのですが、印象に残っている場面はやはり1幕最後の場面の「鏡の間」で、エリザベートが、私が今着ているこの衣装を着て振り返った瞬間の気迫に圧倒されて、その場面が印象に残っております。
──役作りの為に、された取り組みは?
朝夏 私は普段は明るい役ですとか、私自身太陽のような存在で在りたいと公言しているので、その真逆と言っていいトートという役に挑むにあたっては、敢えてネガティブなものの捉え方をしてみたり(笑)を内面的にやってみました。
実咲 資料が本当にたくさんありますので、その中で彼女が生きた人生の喜怒哀楽を、如何に私も体験できるかということに、リアルなところに挑戦させて頂きたいと思っておりますので、資料を拝見させて頂いて自分の中で想像を膨らませていくことを、今の段階ではさせて頂いています。

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──初演から20周年の記念公演に臨まれる意気込みと、1番好きなナンバーを教えてください。
朝夏 私自身にとってトート役に挑むということは、とても挑戦なんですね。なので今までの私のイメージをガラッと変えられるような、人が私に対して持っていらっしゃるイメージを覆せるようなトートを演じたいと思います。好きなナンバーはたくさんあるのですが、これからもっと歌いこんでいきたいと思っているのは「愛と死の輪舞」です。これはやはり宝塚の為に最初に作られた曲で、その後海外の方でも「ロンド」という曲として採用されたということなので、宝塚オリジナル曲であるということと共に、トートが1番最初にエリザベートに対する思いを歌にするので、この歌を大切にしていきたいなと思います。
実咲 この作品をさせて頂けるとお聞きした時に、まさかという思いでした。もちろん嬉しいという思いもあったのですが、20周年というプレッシャーの方が大きかったです。けれども、させて頂けるからこそ、今回朝夏さんが削ぎ落とされたトートを出しておられると小池先生がおっしゃっていましたが、本当に私もご一緒させて頂いて空気感を肌で感じさせて頂けたので、それに対するエリザベート像というものを、私自身が追求していけるところが、今回の私にとって、また作品をどのようにお見せできるかの課題だと思います。心を込めて、魂を全て注ぎ込んで演じたいと思います。好きなナンバーは、素晴らしい曲ばかりなので、今日歌わせて頂いた「私が踊る時」が、歌わせて頂いたことで改めて素晴らしい曲だと感じました。
 
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〈公演情報〉
宝塚歌劇宙組公演
三井住友VISAカードミュージカル『エリザベート─愛と死の輪舞─』
脚本・歌詞◇ミヒャエル・クンツェ
音楽◇シルベスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション◇ウィーン芸術協会
潤色・演出◇小池修一郎
演出◇小柳奈穂子
出演◇朝夏まなと、実咲凜音 ほか宙組
●7/22〜8/22日◎宝塚大劇場
〈料金〉SS席12,000円 S席8,300円  A席5,500円 B席3,500円 
〈問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター 0570-00-5100
●9/9日〜10/16日◎東京宝塚劇場 
〈料金〉SS席12,000円 S席8,800円  A席5,500円 B席3,500円 
〈問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


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