えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

黒木瞳主演舞台『京の蛍火』

レビュー

クリスマスシーズンを彩るオリジナル作品ならではの二本立て 宝塚雪組公演『私立探偵ケイレブ・ハント』『Greatest HITS!』

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早霧せいな&咲妃みゆの絶妙なコンビぶりと組の総合力が相まって、目下ノリにのっている宝塚雪組が、久々のオリジナル作品でクリスマスシーズンを飾るミュージカル・ロマン『私立探偵・ケイレブ・ハント』とショー・グルーヴ『Greatest HITS!』が、日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(25日まで)。

ミュージカル・ロマン『私立探偵ケイレブ・ハント』は、20世紀半ばのロサンゼルスを舞台に、探偵事務所を営む主人公ケイレブ・ハントと、彼に関わる人々との交流が描かれていく作品。大掛かりな仕掛けやケレンはないが、これまで話題の原作もので多くのヒットを飛ばしてきた雪組にとって、久しぶりのオリジナルのスーツ物というところに、新鮮味と見どころがある作品だ。

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【STORY】

20世紀半ばのロサンゼルス。探偵事務所の所長ケイレブ・ハント(早霧せいな)は、共同出資者で共に事務所を営むジム・クリード(望海風斗)、カズノ・ハマー(彩風咲奈)と、主にハリウッドのセレブたちのトラブル対応にあたる日々を送っていた。ある日、ケイレブは会社側とのトラブルを抱えている、依頼人の映画監督(奏乃はると)を撮影所に訪ねるが、折も折、アンサンブルの女優アデル(沙月愛奈)が亡くなるという事件に遭遇する。
現場にはスタイリストとしてこの映画に関わっている恋人のイヴォンヌ(咲妃みゆ)も居合わせていて、2人は事態に困惑しながら、イヴォンヌの誕生日を祝うディナーの約束を確認して別れる。事務所に帰ったケイレブは、ジムとカズノと、3人それぞれが担当している案件の経過報告をし合うが、ジムとカズノが担当している案件双方から、新興のプロダクションとして台頭している「マックス・アクターズ・プロモーション」の名前が上がったことに驚く。遭遇したばかりの撮影所で亡くなった女優の所属先も、他ならぬ「マックス・アクターズ・プロモーション」だったのだ。この不自然な一致は本当に偶然なのだろうか。
そこへ行方不明の娘を探して欲しいという夫婦(鳳翔大・梨花ますみ)が事務所を訪ねてくるが、同じタイミングで警察から電話を受けたケイレブは、夫婦をジムたちに託して警察に駆けつける。ケイレブを迎えた懇意の刑事ホレイショー(彩凪翔)は、危険人物として拘留されていた男の身元引受人を託されたケイレブに、自分なら決してこんな役割りは引き受けないと釘を差すが、ケイレブにはこの依頼を断れない強い思いがあった。拘留されていた男ナイジェル(香綾しずる)は、かつてヨーロッパ戦線で共に戦った戦友だったのだ。
そんなあれこれでイヴォンヌとのディナーに大幅に遅刻したケイレブは、イヴォンヌが探偵という危険な仕事に従事しているケイレブを案じると共に、スタイリストとしての自身のキャリアアップを目指す思いの中で、ケイレブとの将来像に不安を覚えていることを知る。でも2人はお互いに愛し合っている。ケイレブはただそれだけをイヴォンヌに訴えるのだった。
そんな一夜が明けた時、事態は思わぬ進展を見せた。行方不明の娘を探していた夫婦が置いていった写真に写っていたのは、撮影所で亡くなった女優アデルだったのだ。更にそのことを夫婦が宿泊しているモーテルに知らせにいったジムは、ホレイショーと遭遇。なんとあの夫婦もひき逃げ事故にあい亡くなったと言う事実を聞かされる。最早すべてが偶然であるはずがない。ケイレブは裏世界に精通しているナイジェルからの「この件には関わるな」という忠告を聞きながらも、単身「マックス・アクターズ・プロモーション」の経営者マクシミリアン(月城かなと)を訪ねるが、そこにプレゼンに来ていたのはなんとイヴォンヌで……

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『私立探偵ケイレブ・ハント』というタイトルが示す通り、物語は紛れもなく探偵ものなのだが、その上で謎解きに主眼を置かなかったのが、この作品の個性になっている。もちろん事件は起こるし、ケイレブたちは事件解決に向けて奔走するが、そのからくりはさほど難解ではなく、黒幕に意外などんでん返しもない。事件とその解決という流れだけに絞れば、探偵を主人公とするテレビシリーズの1話と言った趣きで、革命や、戦時下などギリギリの状況で、尚明日を信じる人々を描くことが多い脚本・演出の正塚晴彦作品としては、むしろ異色な部類に入るものと言える。実際従来の正塚であれば、最も力を入れて描写したのはケイレブとナイジェルの関係だったろうし(そうした場合話は、かつて雪組で上演された正塚作品『マリポーサの花』に近づく)、謎解きに重点を置くなら、二番手の役柄になるのは当然マクシミリアンだったろう。ヒロインも事件を通じてケイレブが出会う女性、ハリエット・マクレーンにシフトしていく可能性が高い。
けれども、そうしなかったこと、物語がはじまった時すでに恋人同士であるケイレブとイヴォンヌの恋愛模様を中心に、ジム、カズノ、ホレイショー、更に探偵事務所の事務方の面々など、キャラクターの立った登場人物たちそれぞれが、日々生きている日常を切り取り、ひとつの事件を経て彼らがまたそれぞれの1歩を踏み出す様を、むしろ淡々と描いたところに、この舞台が持つ軽やかな魅力がある。
派手さはないし、鳳翔大を筆頭にあまりにもの役不足が気の毒なスターたちの存在も散見されるから、好き嫌いは分かれる作品ではあろうが、有名原作をどう宝塚化するか?に主な興趣を引かれる作品に多く立ち向かってきた雪組にとって、早霧をはじめとした主要メンバーに当てて書かれたオリジナルのキャラクターを、シャレた台詞の応酬で演じていく、こんな舞台が用意されたのは決して悪いことではなかったと思う。特に早霧&咲妃の次公演での退団が発表され、その退団公演も日本ものと決まったから、ここでスーツ物の作品、更に早霧以下、演者の個性をこそ楽しめるオリジナル物が展開されたのは良いタイミングだった。作品の主眼が主人公とその恋人の恋のゆくえに収斂されていくのも、早霧&咲妃という当代の名コンビに相応しい。

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そんな作品でタイトルロールのケイレブ・ハントを演じた早霧は、一見クールな美青年、だが心には燃える信念を秘めていて、思いこんだらむしろ無鉄砲なまでに猪突猛進という役柄を、なんとも魅力的に演じている。さすがはオリジナルの当て書きならではの伸びやかさがあり、喜怒哀楽の表現をはじめとした一挙手一投足から目が離せない。かつて同じ正塚作品『ロジェ』で演じた殺し屋役のクールビューティぶりは今も忘れ難いが、そうした外見の美しさの中にある、早霧の熱血感な部分と、重ねて来た経験から巧まずして現れる大きさと余裕が、ケイレブの中に花開いていて見事だった。

一方、イヴォンヌの咲妃は、自身も才能があり、キャリアとスキル双方のアップに向けての目標もある自立した女性が、恋人との関係に惑うという、宝塚の娘役としては珍しいながら、現代の女性が共感しやすい役どころをきっちりと見せている。元から可憐な容姿だけではない芯の通った演技者である咲妃だが、どちらかと言えばおっとりした個性の持ち主でもあるので、今回示したシャープさは新たな魅力として印象的だった。

更になんと言っても、2人が物語の最初からすでに恋人同士だという設定に、トップコンビとしての2人のキャリアがすんなりと説得力を与えているのが強みだし、惑うイヴォンヌに対して、ストレートに想いを押していくケイレブという展開が実に新鮮。終幕イヴォンヌのスーツケースだけがパリに行ってしまったのか?が気になるところではあるが、いずれ気持ちを固めた2人が改めてパリや、ミラノへ旅立つ日もあるだろうなと思わせる、2人の未来に余韻を残すのが早霧&咲妃コンビならでは。何より、銀橋でのラブシーンのロマンチックさには脱帽だった。

ケイレブのピジネスパートナー・ジムに扮した望海風斗は、如何にもリラックスして肩の力が抜けている演じぶりが、より本人の魅力を倍化している。宝塚全体を見渡しても、目下最強の二番手と言って過言ではない望海をどの役にキャスティングするかによって、この物語の行方は全く違うものになったはずだが、それだけに敵役でないほがらかな望海を堪能できるのが、この作品のもう1つの魅力ともなっている。とても放っておけない庇護欲を掻き立てられる存在なのだろうレイラとの恋愛関係が、主人公カップルとの良い対比にもなっていて、レイラを演じる星南のぞみの、どこか未成熟を感じさせる個性も相まって効果的だった。

もう1人のビジネスパートナー・カズノに扮した彩風咲奈の、公演ごとに大きくなる存在感は目を瞠るばかり。事務所の中では1番の若手で、行動力もありつつ、年上の2人に対して妙に冷静なツッコミも入れる、この作品世界の中での「今時の兄ちゃん」をサラリと演じていて頼もしい。作劇としては有沙瞳演じる歌手ポーリーンとの間に、何か芽生えてくるのでは?と思わせる流れに、もうひと芝居欲しかったところだが、そう観る者にひっかかりを与えるのも、彩風の大きさ故だろう。

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また、探偵と刑事という異なる立場でありつつ、ケイレブとの信頼関係を築いているホレイショーの彩凪翔が、役柄に相応しい気骨のある雰囲気を巧みに醸し出しているし、そのホレイショーとコンビを組む若手刑事ライアンの永久輝せあも、上り坂のスター性でキャラクターをしっかりと立たせている。更に、ドラマのキーパーソンであるマクシミリアンの月城かなとが、比較的遅い出番を骨太に支えていて、進歩を感じさせる。純白のスーツもよく似合い、早霧と対等に渡り合う必要がある役柄に懸命に挑んだことは、組替えを控える月城にとって大きな経験となったことだろう。

そして忘れてならないのはナイジェルに扮した香綾しずるで、謂わば正塚的世界観を双肩に担った役どころを十二分に演じている。『ドン・ジュアン』の亡霊役での快演と言うより、怪演と言いたい記憶も鮮やかな今、本公演でもこうした役柄を的確に演じきったことは、今後の雪組での香綾本人の立ち位置にとっても貴重なものとなるに違いない。
 
他に、アデルの沙月愛奈、その友人ハリエットの星乃あんりが、作品のポイントとなる役どころをきちんと締めたし、探偵事務所の事務方、コートニーの早花まこ、ダドリーの真那春人、グレースの桃花ひななど、キャリアを活かした個性派たちの中に、新進男役の縣千を無理なく加えるなど、座付としての目配りも周到。トップコンビを核としたエンディングが前述したようになんともロマンチックで、観終わったあとの印象があくまでも重くならなかったのが、クリスマスシーズンによくマッチしていた。

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そのクリスマスシーズンにマッチしたという意味では、これ以上ないベストだったのが、ショー・グルーヴ『Greatest HITS!』で、稲葉太地の作。中詰めに用意されたクリスマス・メドレーが、大劇場公演時にはなんとしても早すぎる感があった分、この東京公演での季節感とのマッチングによる効果は絶大で、心躍る華やかさに満ちている。

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しかも、このショーがクリスマスシーズンに合致したのが、単純にクリスマス・メドレーがあるからだけではないのが大きなポイントで、『Greatest HITS!』というタイトルの示す通り、古今の名曲が網羅された音楽で構成されたショーの根底に、言語や民族、国境を越えて、世界をつなぐことができるのは音楽の力なのではないか?という作者である稲葉太地の壮大な思いが込められていることに、深い意味がある。

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スマートフォンで自分だけの音楽の中にに個々入りこんでいた若者たちが、今では見慣れなくなった煌めくジュークボックスから流れ出す、見知らぬ誰かと共有できる音楽によって新しい世界に誘われていくプロローグが、いつか世界の皆が肩を抱いて歌い合える日を夢見る主題歌へとつながる見事さ。自分さえよければ良いという、保護主義という名の、本来人が思っていても口にすることは謹んでいたはずの本音を、むき出しにすることに喝采が集まる、暗澹とした空気が覆う今の時代。そんな世界に、まるで夢幻としか思えない理想を、これだけ正面から、しかもエンターテイメントの中で唱えられるのは宝塚をおいて他にはないし、人々がほんの少し優しくなれる、街中のどこもかもが華やぐクリスマスシーズンに、これほど相応しいメッセージもまたない。

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そんな思いが集約されるのが、運命の歌手・望海風斗と、宿命・彩風咲奈が率いる赤と白に象徴された、戦いから逃れられないこの世界の格闘が描かれた果ての悲嘆が、人々を結びつけるものはただ愛であるという、早霧せいなと咲妃みゆによって踊られる、得も言われぬ幸福感に満ちあふれた、ミント・グリーンの衣装のデュエットダンスに昇華される一連のシーンの迫力と美しさだ。ここには早霧&咲妃というゴールデンコンビと、望海以下実力派がひしめく今の雪組ならではの力感が余すところなく活かされていて、ショー全体としても文字通りの白眉だった。決して声高ではないだけに、稲葉が発し、雪組が構築したメッセージには、心に沁み入るものがあった。何より、2016年の東京宝塚劇場の締めくくりに、宝塚ならではの美しき夢のような願いが発信されたことを喜びたい。

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初日を控えた11月25日通し舞台稽古が行われ、雪組トップコンビ早霧せいなと咲妃みゆが囲みインタビューに応えて、公演への抱負を語った。

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その中で作品の見どころを訊かれて、早霧はオリジナル作品ならではの雪組メンバーに当て書きされた芝居と、クリスマスシーズンにピッタリのショーの内容をあげると、咲妃も役柄に親近感を覚えてもらえるだろう芝居と、やはりこの季節にお客様と共に盛り上がれる場面が満載のショーだと呼応して相変わらずのコンビネーションの良さを発揮。

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また、ショーの内容にちなんでそれぞれのクリスマスの思い出を問われ、回答を咲妃に促して自分は発言しなかった早霧が、幼い頃の咲妃の愛らしいエピソードを聞き、自分の思い出は咲妃に負けるからと、結局回答を避けて記者たちを笑わせる一コマも。

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更に、来年7月での退団を共に発表した心境は?という質問には、心に決めていたことを公にしたことで、更に気が引き締まり、この公演に臨めるという早霧に、ゴールを設定し、限られた時間だということを実感したからこそ、最後まで早霧にしっかりとついていきたいと咲妃が語り、同じ月日を手を携えて共に歩んできたコンビならではのラストスパートに、大きな期待が高まる時間となっていた。

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尚、囲みインタビューの詳細は1月10日発売の「えんぶ」2月号にも舞台写真と共に掲載致します。どうぞお楽しみに!

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〈公演情報〉
宝塚雪組公演
ミュージカル・ロマン『私立探偵ケイレブ・ハント』
脚本・演出◇正塚晴彦
ショー・グルーヴ『Greatest HITS!』
作・演出◇稲葉太地
出演◇早霧せいな、咲妃みゆ ほか雪組
●2016年11/25〜12/25◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席 12,000円 S席 8,800円 A席 5,500円 B席 3,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001




【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


柚希礼音主演『お気に召すまま』




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森光子の名作舞台に高畑淳子が新たな生命を吹き込んだ『雪まろげ』

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『放浪記』『おもろい女』とともに、故・森光子の3大代表作として知られる舞台『雪まろげ』。その名作が高畑淳子の主演で9年ぶりに再演、シアタークリエで上演中である。(19日まで。そののち12月まで全国ツアーあり)

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タイトルになっている「雪まろげ」とは、小さな雪の塊を積雪の上で転がしてだんだんと大きな塊にしていく遊びのことで、本作の主人公、温泉芸者の夢子がついた小さなウソが雪まろげのように次々とウソを呼び、やがて温泉街を揺るがす大きなウソになってしまうという笑いと涙にあふれた人情喜劇だ。 
初演は1980年、森光子が作家の小野田勇に「嘘つき女を演じてみたい」という希望を語ったことで生まれた作品で、07年まで471回にわたり上演され、森光子の代表作の1つとなった。今回の脚本・演出は、高畑と『ええから加減』でタッグを組み、藤山直美主演『おもろい女』の潤色・演出も手掛けたONEOR8の田村孝裕が担当している。

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夢子がなぜ「嘘つき女」になったのか、その出自や環境と関わる話は中国の大物政治家との関わりなどで明らかになっていくのだが、ただみんなに愛されたい、その場を楽しくしたいという気持ちで嘘をついてしまう夢子の心の寂しさが見えてくると、思わず胸を衝かれる。そんな夢子役を高畑淳子は体当たりで可愛く演じている。雪の中で踊る「津軽海峡冬景色」の舞姿でのオープニングから鮮やかで、森光子とはキャラクターがまったく違う高畑・夢子だが、役柄へのアプローチや物語を引っ張っていく演技力などはみごとで、名作舞台を確かに継承し、また新たな生命を吹き込んでいる。

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共演者も多彩な実力派ばかりで、土地のNO.1芸者でお金が大好物、通称コガネ虫の銀子に扮した榊原郁恵は、登場から目を惹く華やかさがあると同時に、かつては酒蔵のお嬢様だったという過去へのこだわりや、弟への想いなどが見えてくると、その嫌われる生き方にも思わず納得の拍手を送りたくなる。

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流れ者の踊り子で、ヤクザに追われていたところを夢子たちに救われて、この土地に居着いたアンナには湖月わたる。行動派なだけに波風を立てたりするのだが、実は優しい心根の持ち主で、夢子を慕って自分の恋心を諦めるなどいじらしいところもあるキャラクター。湖月はスタイルを生かしたダンサー姿から、次第に着物姿も身についた一人前の芸者になっていくアンナの変化をきっちりと演じてみせる。
そんなアンナに想いを寄せられながら、自分の詩をほめてくれた夢子と恋仲になる報道記者の大吾に的場浩司、この土地出身でいったんは東京本社で働いていたものの真面目すぎて出世が遅れている誠実な男性像を朴訥に演じている。

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そのほかにも。小料理屋を営むしっかりものの姉さん芸者で、実の子を妹と偽っているお千賀に柴田理恵、口は悪いが気立てがよくおせっかいなくらい人情家で銀子とすぐにぶつかる駒子に青木さやか、元ボクサーで食い気と飲み気は盛んだけれど芸の精進には今ひとつ身が入らない芸者のぽん太に山崎静代など、いずれも個性豊かな面々で、そんな女優たちが芸者姿でお座敷の遊びや踊りを見せるだけで舞台が楽しく盛り上がる。

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物語の後半は、夢子の大きなウソのために大騒ぎになっていくのだが、その顛末の中に当時の日本と国際関係なども浮かび上がる社会性や、登場人物たちそれぞれの一生懸命な人生が、観る者の感慨と共感を呼んで、さすが長く愛されてきた名作と頷ける舞台となっている。

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〈公演情報〉
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『雪まろげ』
作◇小野田勇 
脚本・演出◇田村孝裕
出演◇高畑淳子、榊原郁恵、湖月わたる、柴田理恵、青木さやか、山崎静代/的場浩司 ほか
●9/28〜10/19◎シアタークリエ
〈料金〉11,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ  03-3201-7777(9:30〜17:30)
●10/21◎クロスランドおやべ(富山)  クロスランドおやべ  076-668-0932
●10/23◎1富山県民会館(富山)  北日本新聞社事業部 076-445-3355
●10/25〜26◎北國新聞赤羽ホール(石川) 北國新聞赤羽ホール 076-260-3555
●10/29〜30◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール(兵庫) 芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255
●11/2◎まつもと市民芸術館 主ホール(長野)  SAC 055-228-3589
●11/5◎山形市民会館 大ホール(山形) 山形市民会館 023-642-3121
●11/7◎桐生市市民文化会館 シルクホール(群馬)  桐生市市民文化会館 0277-22-9999
●11/12◎新潟県民会館 大ホール(新潟) NSTイベントインフォメーション 025-249-8878
●11/16◎コラニー文化ホール(山梨) SAC  055-228-3589
●11/19〜20◎山口県立劇場 ルネッサながと(山口) 山口県立劇場 ルネッサながと 0837-26-6001
●11/23◎はつかいち文化ホール さくらぴあ(広島)  テレビ新広島 事業部 082-256-2213
●11/26◎レクザムホール(香川) 県民ホールサービスセンター 087-823-5023
●11/30◎岸和田市立浪切ホール 大ホール(大阪)  岸和田市立浪切ホール 072-439-4915
●12/3〜4◎刈谷市総合文化センター 大ホール(愛知)  メ〜テレイベント事業部 052-331-9966 
〈公演HP〉http://www.tohostage.com/yukimaroge/




【文/榊原和子 写真提供/東宝】


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笑いと涙で純愛を描く名作舞台『歌姫』上演中!

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宅間孝行の代表作の1つとしてドラマ化もされた人気作『歌姫』が、“タクフェス”第4弾として、9月の大阪公演を皮切りにスタート、ただいま東京で上演中だ。(16日まで。このあと福岡、仙台、新潟公演あり)
 
東京セレソンデラックスの代表作の1つでもある『歌姫』は、2004年に初演。07年には1カ月間の長期公演にパワーアップして待望の再演を果たした。さらに同年、TBS系列にて長瀬智也・相武紗季主演でドラマ化をされ、大きな話題を呼んだ。また 14年3月には、松本利夫(MATSU)を主演に劇団EXILE版『歌姫』が上演された。そして今回、タクフェス名義では初の『歌姫』上演となっている。 

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【物語】 
土佐の漁場町にひっそりと佇む映画館「オリオン座」。時代の流れには逆らえず、ついに迎えた閉館の日、小泉ひばりが東京から息子を連れて訪れる。そこで最後に上演されたのは、1960年代に作られた「歌姫」という作品であった。それは戦後のドサクサで記憶喪失になった男と彼を愛する女性の純愛物語。この映画を最後に上演する事が、先月亡くなったこの映画館の持ち主、松中鈴の遺言であったという。この作品には一体どんな意味があるのか…そしてひばりがこの映画を観に来た理由は…。

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昭和30年代の高知・土佐清水、そこにある古い映画館オリオン座を背景に、戦後のドサクサで記憶喪失になった男と彼を愛する女性の純愛が笑いと涙、満載の中で描かれる舞台で、今回は主役の宅間以外は、ほとんどが初役で、新鮮かつ豪華な顔ぶれとなっている。

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記憶を亡くしてオリオン座の夫婦に助けられ、今は映写技師をしていて、「土佐清水一の暴れん坊」と言われるほど喧嘩に強い主人公の四万十太郎には、初演以来この役を演じてきた宅間孝行。太郎といつも喧嘩しながらも惹かれ合っているヒロイン、オリオン座の次女・鈴には今回が舞台初挑戦となるAKB48の入山杏奈が扮している。

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また町のチンピラで鈴に片想いするクロワッサンの松に阿部力、漁師頭で太郎のライバルのゲルマンに北代高士といった暴れん坊たち。
お遍路の途中でこの町に逗留することになる神宮寺くんに黒羽麻璃央、近所でバーを営むメリーに樹里咲穂、その恋人のロシアに滝川栄治、オリオン座のそばで旅館を営む安田カナの鯖子などがオリオン座に入り浸る。

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家族の日常を描き出すのは、鈴の姉で東京に嫁いでいる小日向泉に原史奈、夫の小日向晋吉に越村友一、オリオン座のオーナーで鈴の両親、岸田浜子と勝男にはかとうかず子と斉木しげるといった面々でそれぞれ芸達者な顔ぶれだ。
また、わけあって東京から太郎を訪ねてくる及川美和子に酒井美紀、美和子の父の相良金蔵に藤木孝が扮して物語の核を担っている。

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昭和30年代の荒っぽい漁師町で繰り広げられる人間模様、それぞれの恋、想い。背景には戦争の影もさして、変わりゆく時代の中で、束の間の光のように輝くオリオン座の日々。人と人の出会いと別れを愛おしく切なく描いて、まさに名作中の名作ラブストーリーである。

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〈公演情報〉
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タクフェス第4弾『歌姫』
作・演出◇宅間孝行
出演◇宅間孝行 入山杏奈 阿部力 黒羽麻璃央 酒井美紀 樹里咲穂
原史奈 滝川英治 越村友一 北代高士 安田カナ かとうかず子 
斉木しげる 藤木孝 ほか
●10/5〜16◎サンシャイン劇場
●10/22〜23◎キャナルシティ劇場
●10/29◎仙台・電力ホール
●11/3◎りゅーとぴあ・劇場
〈お問い合わせ〉
東京/エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ 03-5545-9703(24時間自動音声)
http://takufes.jp/utahime/



【文/榊原和子 写真提供/エイベックス・ライヴ・クリエイティブ】


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揺るぎない定番の香気 宝塚宙組『エリザベート〜愛と死の輪舞〜』

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日本初演から20周年となる大きな節目の年を記念して、朝夏まなと、実咲凜音を中心とする宙組が不朽の名作に挑む、宝塚宙組公演三井住友VISAミュージカル『エリザベート〜愛と死の輪舞〜』が東京宝塚劇場で上演中だ(10月16日まで)。

1996年に宝塚雪組によって初演されたこのウィーンミュージカルは、宝塚歌劇に歌だけで綴るミュージカルの可能性を拓いたとの大きな喝采を集め、9回目の上演となるこの宙組公演宝塚大劇場初日に、上演回数900回、東京公演中に1000回を記録する、宝塚歌劇の大人気演目として成長を遂げてきた。タイトルロールのオーストリー=ハンガリー帝国の皇妃エリザベートを愛する、黄泉の帝王トート=「死」を主人公に据えた、宝塚バージョンならではの幻想性は、同じく小池修一郎が演出を担う、東宝バージョンが大きな演出変更を加えつつ進んでいるのに対して、基本路線をほぼ踏襲してここまで歩んできた。そこには、何よりもこの形こそが宝塚に相応しいという、確固たる信念と同時に、日本を代表する人気ミュージカルの1つとして作品が定着する、その本邦初演を担ったのは宝塚バージョンであるという誇りも感じられ、揺るぎない定番の香気を放ち続けている。

特に、今回の宙組公演には、長く作品の演出助手を務めてきた小柳奈穂子が、小池と共に共同演出として名を連ねたこともあってか、これぞ正統であるという原典への矜持を持って臨んだ初演の雪組バージョンと、そこから宝塚ならではの膨らみを加味した再演の星組バージョン、2つの初期上演の形態への、真摯なオマージュが感じられる。端的に言って、きっちりと正統派であり、尚ヒヤリとした空気感と、静かなる昏さが全体を貫いていて、そこに登場した9代目トートである朝夏まなと以下、現宙組のスターたちの演じぶりに集中できる仕上がりとなっていた。

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そのトップスター朝夏のトートは、基本的に銀色をベースにしていたトートの髪色を黒に変更。複雑な色味が混ざってはいるものの、やはりこの「黒いトート」というビジュアルにまず異色さと、ロックな香りがただよっている。それに呼応するかのように、朝夏トートには「死」の持つ絶対的な優位性が際立っていて、むしろ生ある者を見下しているとも感じられるのが面白かった。これぞ「黄泉の帝王」というある種の尊大な雰囲気があるが故に、そのトートが1人の少女、エリザベートを愛してしまった戸惑いが良く伝わってくる。元々が太陽のような明るさを持った、陽性の魅力にあふれている人だが、その持ち味を反転させ、蒼い血が流れるトートの幻想性という以上に、、むしろこの世の者ならぬ覇者としての大きさを表現したのは、朝夏ならではのトート像として興味深かった。指先にまで神経の行き届いた演技、また踊れる人ならではの重力を感じさせない動きも秀逸だった。

対するエリザベートの実咲は、自身念願だったという役どころに体当たりで挑んでいる。タイトルロールであり、宝塚の娘役としてこれ以上はないほどの大役だが、持ち前の歌唱力をフルに発揮して、難曲の数々を歌いこなしているのが見事。特に後半のエリザベートの苦悩と孤独の表現に秀でていて、死に魅入られると言うよりは、死とさえも格闘し必死で闘い抜いてきた人の哀愁が漂った。次公演での退団が発表されているが、最後まで力の限り走り抜けてくれるだろう。成果を見守りたい。

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皇帝フランツ・ヨーゼフ1世には真風涼帆。20代から70代までを演じるという、宝塚の二枚目スターには難しい役柄だが、劇中のその時の流れを最も表す人物として、場面場面の表現に工夫がある。歌唱力も長足の進歩を遂げていて、エリザベートに一目で恋をする若き皇帝の「嵐も怖くはない」から、老境に至って尚変わらぬ愛を訴える「夜のボート」まで、場に相応しい低音を響かせた。本来の持ち味としては、ルイジ・ルキーニが柄ではないかと思っていたが、馥郁たる二枚目をゆったりと演じて、新境地を拓いている。

そのルイジ・ルキーニは愛月ひかる。物語の語り部でもあり、全体を俯瞰し、時に作中にも自在に関わる、難役であると同時に、もう1人の主役とも言える大役に、果敢に挑んでいる。まず何よりも姿の良さが抜群で、カフェの店主に扮しての、白いカフェエプロンのあしらいなどは、よくぞというほど決まっていて、目に楽しい。本来の持ち声が高いこともあって、男声音域に突入しているほど低音のルキーニのナンバーは挑戦だっただろうし、滑舌にも工夫の余地があるが、この大役の経験は、愛月にとって今後の大いなる糧となることだろう。
 
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皇太子ルドルフにはトリプルキャストが組まれて、東京公演初日は澄輝さやとが登場。繊細で、ナイーブ過ぎるが為に、どこか病んだ雰囲気が初めから醸し出されていて、トートにつけ入られる、死に魅入られることが当然と思わせる、これは適役だった。また、二番手として登場した蒼羽りくは、皇位継承、すなわち将来の皇帝としての夢や、もっと言えば野心も潜む燃え滾るような皇太子像を披露。その想いの強さをトートにすくわれるのが、これもまたよく理解できる面白いルドルフだった。もう1人、高貴なる二枚目の青年皇太子として大劇場で大きな評判を取った桜木みなとが控えていて、これは三者三様の、妙味に満ちた役替わりとなっている。ルドルフを演じていない時に演じる、革命家も役替わりで、それぞれに個性が際立っていた。

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他に目立ったのは、マダム・ヴォルフを演じた伶美うらら。ちょっと予想しなかったサプライズな配役だったが、歌声に迫力があり、何よりも輝かしい美貌を惜しげなく披露。取り揃えている店の女の子たち以上に、本人に現役感がありスペシャルというのは、ドラマとしてはやや問題のあるところかも知れないが、この女性も王族クラスにだけ対応してきた、元高級娼婦なのだろうな、と言った、マダム・ヴォルフ自身のドラマにも思いが馳せられるほどのインパクトだった。また、少年ルドルフに扮した星風まどかの愛らしさが抜群。作品のポイントとして大きな成果をあげていた。ポイントという意味では、ヴィンデッシュ嬢の星吹彩翔の熱演も目立ったし、風馬翔、和希そら、留依蒔世など、歌手が軒並み入っていて、当初もったいないように感じていた黒天使の存在感はやはり抜群。瑠風輝のエーヤンの歌手などをはじめ、歌い手が黒天使に回っても尚、コーラスの宙組の力が健在なことも嬉しかった。最後はもちろん、宝塚バージョンならではの心躍るフィナーレナンバーが控え、何度観てもこのフィナーレは巧みにまとまっている。朝夏&実咲によるデュエットダンスは、麻路さき&白城あやかコンビによるそれの、懐かしい復刻バージョンだったが、朝夏が銀橋での華麗なジャンプを見事に決めて、この2人にも相応しいものとなっていたのが何よりだった。

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初日を控えた9月9日、通し舞台稽古が行われ、朝夏まなとと実咲凜音が囲み取材に応えて公演への抱負を語った。

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まず朝夏が「皆様、本日はお忙しい中、お越しいただきましてありがとうございます。 千秋楽まで精一杯務めて参りますので、どうぞよろしくお願い致します」。また実咲が「皆様、本日はお忙しい中、本当にありがとうございます。 真摯に向き合い千秋楽まで務めたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します」とそれぞれ挨拶。続いて、記者の質問に答えた。

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その中で、『エリザベート』20周年に当たり、これまで演じてきた多くの人たちとは違う、自分ならではのオリジナリティをどう出してきたか?を問われた朝夏は、黄泉の帝王である死神が愛に出会った二面性を大切にしたいと語り、実咲もまた、エリザベートの共感できる部分とエゴイストな部分を、共に出していきたいと答え、共に役柄に対して、単純な解釈ではない複雑さを加味することで、魅力を打ち立てようとしていることが伝わってきた。

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また宙組の『エリザベート』ならではの魅力として、朝夏が初心に還って譜面に真摯に向き合ったことを挙げると、実咲は「コーラスの宙組」の力を挙げ、やはり同じ目線で作品に対峙している、2人の想いが感じられる時間となっていた。

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尚、囲み取材の詳細は11月9日発売の「えんぶ」12月号にも掲載致します。どうぞお楽しみに!


〈公演情報〉
宝塚宙組公演
三井住友VISAカードミュージカル『エリザベート〜愛と死の輪舞〜』
脚本・歌詞◇ミヒャエル・クンツェ
音楽◇シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション◇ウィーン劇場協会
潤色・演出◇小池修一郎
演出◇小柳奈穂子
出演◇朝夏まなと、実咲凜音 ほか宙組
●9/9〜10/16◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席 12,000円、S席 8,800円、A席 5,500円、B席 3,500円(税込)
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001(劇場・月曜休み)



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】
 



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原作マンガと演劇への愛とリスペクトが詰まった舞台!『ガラスの仮面』

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美内すずえ原作の不朽の大長編マンガ『ガラスの仮面』が、大阪・松竹座公演を経て、9月16日から新橋演舞場で上演中だ。(9/26まで)
初演を踏まえたうえで新たな場面も加えられた再演で、物語の主軸を含めてよりドラマ性を増した『ガラスの仮面』となっている。脚本・演出のG2が初演を整理し直して、登場人物たち個々のドラマに踏み込んで、今回の物語を立ち上げようとしたことが伝わる内容で、それによって人間ドラマとしても深みを出すことに成功している。

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オープニングは一路真輝の月影千草が登場して、ビジュアルと佇まいによって一気に『ガラスの仮面』の世界に引き込む。そして貫地谷しほりの北島マヤ、マイコ演じる姫川亜弓、桜小路優の浜中文一、速水真澄の小西遼生と、劇中の主要キャストが次々に浮かび上がる。
さらにこの作品の大きなキーワードとなっている「紅天女」を演じる月影千草を見せることで、物語の大枠を見せていく見事な導入だ。

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次の場面はアカデミー芸術大賞を亜弓が『ジュリエット』の演技で獲得、月影が亜弓を「紅天女」の後継者に指名する。だがマヤも2年以内に同等の大きな演劇賞を受賞すれば候補者になれるとチャンスを残す。
そこから物語は、今回の大きな見せ場になっている「ふたりの王女」の上演にまつわる話へと進んでいく。出演者の降板で代役のオーディションに参加するマヤ、有名な7通りのエチュードなどのエピソードが出てきて、マヤの天才ぶりを発揮する。
速水真澄はそんなマヤに惹かれているのだが、会うと憎まれ口を叩き合う2人だ。

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「ふたりの王女」ではアルディスにマヤが、オリゲルドには亜弓が選ばれる。紫のバラの人の招待で、出かけた場所にはなぜか真澄が。そこで過去にオペラでアルディスを演じた北白川と出会い、ヒントを掴むマヤ。

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そんなある日、2人は特別稽古として月影に連れ出され、マイナス22℃の冷凍庫に入れられる。寒さと暖かさをその身体で実感、それぞれ表現へと生かしていく2人。

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一方、速水真澄は父の英介との確執で復讐に燃えている。また「紅天女」の上演にはそれを阻もうとする動きが…。ついにはスポンサーが降りたという知らせが届き、月影千草はそのショックで心臓発作で倒れてしまう。
 
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危篤の月影のもとに集まるマヤたち。その頃、月影は混濁した意識の中で師の一蓮との過去へ遡っていた。
「紅天女」の成功で一蓮の劇団は成功をおさめる。だが真澄の父、速水英介によって一蓮は自殺に追い込まれてしまう。後を追おうとする千草、だが一蓮は「紅天女」の継承を月影に託して消えていく。

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病のあと行方のわからなくなった月影を探して、速水の会社にまで押しかけるマヤは、真澄の見合い相手に出会ってしまう。

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月影千草不在のまま、いよいよ開幕する「ふたりの王女」。だが初日は嵐に…観客は誰も来ない。駆けつけてきたたった1人の観客、 速水真澄のために舞台は幕を開ける。

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「ふたりの王女」の公演は大成功! その演技が認められて、アカデミー芸術大賞で最優秀演技賞を受賞するマヤ、そこに紫のバラが届けられる。

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紫のバラの人はもしかしたら…と速水真澄を訪ねるマヤ。だが彼は婚約パーティーの席にいた。
傷心のマヤは、亜弓とともに「紅天女」の故郷、梅の谷で待つ月影千草のもとへ。そこで月影千草は「紅天女」の継承について2人に自分の想いを明かす。そして紅天女の面を取り出し…。

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今回のドラマの中で、初演より輪郭をくっきりと顕したのは、北島マヤと速水真澄の愛、そしてそれを阻むものの存在だ。真澄自身の内部にある葛藤、そして婚約者という大きな壁。それを前にたたずむマヤに月影千草の言葉が響く。
結ばれない愛を生きる……今もなお、一蓮への想いを抱き続ける月影千草は、おそらくは、速水真澄への想いを抱えたまま女優として生きていくことになるマヤであり、それが女優・北島マヤに与えられた新たな戦いなのだ。 
 
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初演のメンバーがほとんどそのままという座組の良さもあって、役者陣はそれぞれのびのびと熱演を見せてくれている。再び北島マヤ役を演じた貫地谷しほりはそのまま自在な天才女優で、マヤの永遠のライバル亜弓のマイコの気品と強さ、この2人が演じる劇中劇「ふたりの王女」は息詰まるほどドラマチック。そして大女優のオーラと女の情念をほとばしらせた月影千草の一路真輝は、圧倒的な存在感で物語を牽引する。

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青年らしい恋心と嫉妬に揺れる浜中文一の桜小路優、マヤに惹かれながらも父との確執ゆえに事業の鬼となる速水真澄を繊細さと男らしい魅力で見せた小西遼生、秘書として有能でありながら温かみのある水城冴子の東風万智子、そのほかにもお嬢様らしい婚約者役の中山由香、芸術家肌の一蓮・小林大介、「紅天女」への執着に燃える速水英介のたかお鷹、さらに西ノ園達大や松永玲子をはじめ、何役も演じて脇を固めている出演者たちの安定感が素晴らしい。

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舞台装置も一新、抽象空間の帆のような美術と階段を生かしたセットを盆で回すことで、テンポ良く物語が進んでいく。そういった仕掛けも含めて、演劇の創作現場の面白さをより浮かび上がらせる舞台に仕上げてみせた演出のG2。今回の『ガラスの仮面』は、そんなスタッフ、キャストたちのクオリティ高い再現度だけでなく、「演劇へのリスペクト」が全編に溢れていて、それはそのまま、超ベストセラーである原作が持つ「演劇への愛」へのリスペクトでもあるのだ。
 

〈公演情報〉
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舞台『ガラスの仮面』 〜惹かれあう魂〜
原作◇美内すずえ
脚本・演出◇G2
出演◇貫地谷しほり/マイコ/浜中文一/小西遼生/東風万智子/一路真輝 他
●9/1〜11◎大阪松竹座
〈料金〉1等席¥10,800 2等席¥6,500(全席指定・税込)
●9/16〜26◎新橋演舞場
〈料金〉桟敷席¥11,800 1等席¥10,800 2等席¥8,000 3階A席¥6,000 3階B席¥3,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(ナビダイヤル) または【大阪】06-6530-0333【東京】03-6745-0888(10:00〜18:00)
http://www.shochiku.co.jp/play/enbujyo/schedule/2016/9/9_1.php 



【文/榊原和子 撮影/小峯華衣子】



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