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レビュー

原作マンガと演劇への愛とリスペクトが詰まった舞台!『ガラスの仮面』

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美内すずえ原作の不朽の大長編マンガ『ガラスの仮面』が、大阪・松竹座公演を経て、9月16日から新橋演舞場で上演中だ。(9/26まで)
初演を踏まえたうえで新たな場面も加えられた再演で、物語の主軸を含めてよりドラマ性を増した『ガラスの仮面』となっている。脚本・演出のG2が初演を整理し直して、登場人物たち個々のドラマに踏み込んで、今回の物語を立ち上げようとしたことが伝わる内容で、それによって人間ドラマとしても深みを出すことに成功している。

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オープニングは一路真輝の月影千草が登場して、ビジュアルと佇まいによって一気に『ガラスの仮面』の世界に引き込む。そして貫地谷しほりの北島マヤ、マイコ演じる姫川亜弓、桜小路優の浜中文一、速水真澄の小西遼生と、劇中の主要キャストが次々に浮かび上がる。
さらにこの作品の大きなキーワードとなっている「紅天女」を演じる月影千草を見せることで、物語の大枠を見せていく見事な導入だ。

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次の場面はアカデミー芸術大賞を亜弓が『ジュリエット』の演技で獲得、月影が亜弓を「紅天女」の後継者に指名する。だがマヤも2年以内に同等の大きな演劇賞を受賞すれば候補者になれるとチャンスを残す。
そこから物語は、今回の大きな見せ場になっている「ふたりの王女」の上演にまつわる話へと進んでいく。出演者の降板で代役のオーディションに参加するマヤ、有名な7通りのエチュードなどのエピソードが出てきて、マヤの天才ぶりを発揮する。
速水真澄はそんなマヤに惹かれているのだが、会うと憎まれ口を叩き合う2人だ。

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「ふたりの王女」ではアルディスにマヤが、オリゲルドには亜弓が選ばれる。紫のバラの人の招待で、出かけた場所にはなぜか真澄が。そこで過去にオペラでアルディスを演じた北白川と出会い、ヒントを掴むマヤ。

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そんなある日、2人は特別稽古として月影に連れ出され、マイナス22℃の冷凍庫に入れられる。寒さと暖かさをその身体で実感、それぞれ表現へと生かしていく2人。

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一方、速水真澄は父の英介との確執で復讐に燃えている。また「紅天女」の上演にはそれを阻もうとする動きが…。ついにはスポンサーが降りたという知らせが届き、月影千草はそのショックで心臓発作で倒れてしまう。
 
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危篤の月影のもとに集まるマヤたち。その頃、月影は混濁した意識の中で師の一蓮との過去へ遡っていた。
「紅天女」の成功で一蓮の劇団は成功をおさめる。だが真澄の父、速水英介によって一蓮は自殺に追い込まれてしまう。後を追おうとする千草、だが一蓮は「紅天女」の継承を月影に託して消えていく。

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病のあと行方のわからなくなった月影を探して、速水の会社にまで押しかけるマヤは、真澄の見合い相手に出会ってしまう。

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月影千草不在のまま、いよいよ開幕する「ふたりの王女」。だが初日は嵐に…観客は誰も来ない。駆けつけてきたたった1人の観客、 速水真澄のために舞台は幕を開ける。

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「ふたりの王女」の公演は大成功! その演技が認められて、アカデミー芸術大賞で最優秀演技賞を受賞するマヤ、そこに紫のバラが届けられる。

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紫のバラの人はもしかしたら…と速水真澄を訪ねるマヤ。だが彼は婚約パーティーの席にいた。
傷心のマヤは、亜弓とともに「紅天女」の故郷、梅の谷で待つ月影千草のもとへ。そこで月影千草は「紅天女」の継承について2人に自分の想いを明かす。そして紅天女の面を取り出し…。

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今回のドラマの中で、初演より輪郭をくっきりと顕したのは、北島マヤと速水真澄の愛、そしてそれを阻むものの存在だ。真澄自身の内部にある葛藤、そして婚約者という大きな壁。それを前にたたずむマヤに月影千草の言葉が響く。
結ばれない愛を生きる……今もなお、一蓮への想いを抱き続ける月影千草は、おそらくは、速水真澄への想いを抱えたまま女優として生きていくことになるマヤであり、それが女優・北島マヤに与えられた新たな戦いなのだ。 
 
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初演のメンバーがほとんどそのままという座組の良さもあって、役者陣はそれぞれのびのびと熱演を見せてくれている。再び北島マヤ役を演じた貫地谷しほりはそのまま自在な天才女優で、マヤの永遠のライバル亜弓のマイコの気品と強さ、この2人が演じる劇中劇「ふたりの王女」は息詰まるほどドラマチック。そして大女優のオーラと女の情念をほとばしらせた月影千草の一路真輝は、圧倒的な存在感で物語を牽引する。

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青年らしい恋心と嫉妬に揺れる浜中文一の桜小路優、マヤに惹かれながらも父との確執ゆえに事業の鬼となる速水真澄を繊細さと男らしい魅力で見せた小西遼生、秘書として有能でありながら温かみのある水城冴子の東風万智子、そのほかにもお嬢様らしい婚約者役の中山由香、芸術家肌の一蓮・小林大介、「紅天女」への執着に燃える速水英介のたかお鷹、さらに西ノ園達大や松永玲子をはじめ、何役も演じて脇を固めている出演者たちの安定感が素晴らしい。

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舞台装置も一新、抽象空間の帆のような美術と階段を生かしたセットを盆で回すことで、テンポ良く物語が進んでいく。そういった仕掛けも含めて、演劇の創作現場の面白さをより浮かび上がらせる舞台に仕上げてみせた演出のG2。今回の『ガラスの仮面』は、そんなスタッフ、キャストたちのクオリティ高い再現度だけでなく、「演劇へのリスペクト」が全編に溢れていて、それはそのまま、超ベストセラーである原作が持つ「演劇への愛」へのリスペクトでもあるのだ。
 

〈公演情報〉
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舞台『ガラスの仮面』 〜惹かれあう魂〜
原作◇美内すずえ
脚本・演出◇G2
出演◇貫地谷しほり/マイコ/浜中文一/小西遼生/東風万智子/一路真輝 他
●9/1〜11◎大阪松竹座
〈料金〉1等席¥10,800 2等席¥6,500(全席指定・税込)
●9/16〜26◎新橋演舞場
〈料金〉桟敷席¥11,800 1等席¥10,800 2等席¥8,000 3階A席¥6,000 3階B席¥3,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(ナビダイヤル) または【大阪】06-6530-0333【東京】03-6745-0888(10:00〜18:00)
http://www.shochiku.co.jp/play/enbujyo/schedule/2016/9/9_1.php 



【文/榊原和子 撮影/小峯華衣子】



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佐藤アツヒロ主演で近松名作をアクション満載で描く『新版 国性爺合戦』開幕!

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佐藤アツヒロを主演に迎え、近松門左衛門の代表作『国性爺合戦』を豪快なアレンジで展開する『新版 国性爺合戦』が、9月14日、東京からスタートした。このあと9月24日〜25日に愛知・東海市芸術劇場、9月30日に福岡・福岡市民会館、10月14日〜16日に大阪・シアター・ドラマシティでも上演するという長期公演だ。

今回の公演は、30-DELUX Dynamic Arrangement Theaterと銘打たれていて、歴史的背景の中で人間の心情を描き出すもので、昨年の『新版 義経千本桜』に続いて、古典をもとに西森英行が紡いだ美しいセリフと、伊勢直弘のスピード感あふれる演出という強力なタッグ、そして30-DELUXならではのスピード感溢れるアクションで再構築して展開する一大エンターテインメントだ。

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【物語】
17世紀日本。中国から海を渡りやってきた老一官(陰山泰)は、日本人の渚(緒月遠麻)を妻とし、一人の子をもうけた。その名は、和藤内(佐藤アツヒロ)。「俺はいつかデカいことをする」という野望を抱きながらも、恋女房の小むつ(名塚佳織・加藤雅美/Wキャスト)と共に、平和な日々を過ごしていた。和藤内は、幼い頃から、自分にしか聞こえない声を聞いていた。「お前は、世に比類なき天下人になるのだ…」

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ある日、老一官は、唐土より流れ着いた明の皇女・栴壇皇女(川口莉奈)から、祖国・明の危機を告げられる。裏切りの将軍・李蹈天(清水順二)により韃靼国の侵攻を受け、皇帝は殺され、皇子は呉三桂(田中精)によってかくまわれたものの、明は滅亡の危機に瀕しているという。
和藤内は、明朝復興の為に、父母と共に海を渡る。そして、かつての明の将軍・甘輝(馬場良馬)に助けを乞うべく、甘輝の妻・錦祥女(大湖せしる)に会うため、獅子ヶ城へ向かう。その全てを、一匹の虎(森 大)が見つめていた。

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果たして和藤内は、父が渇望する明朝復興を成し遂げられるのか? 海越えた地に、祖国の旗を再び掲げるための戦いが、今、幕を上げる…。

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父が渇望する明朝復興を成し遂げるべく闘う主人公和藤内(鄭成功)には、30-DELUXの主演は3年ぶりとなる佐藤アツヒロ。明朝復興という旗印に翻弄される壮大な人間ドラマのなかで大きく葛藤する主人公を熱演。共演には、舞台に映像にと幅広く活躍する陰山泰、宝塚歌劇団出身の緒月遠麻・大湖せしる、30-DELUXには3回目の出演となる馬場良馬など豪華ゲスト陣。そして、30-DELUX結成14年目を迎え、役者としても円熟期に入りつつある主宰の清水順二、宝塚歌劇『るろうに剣心』での殺陣指導が好評だった森 大、ドラゴンクエストライブスペクタクルツアーでもメインキャストを務めた田中精など、劇団の主力から若手までが熱い舞台を繰り広げている。

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【囲みインタビュー】

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東京公演の初日、9月14日の昼にプレス用公開稽古および囲み取材が行われた。
 
──まずは今の意気込みを。
佐藤 今回の作品はエンターテインメントで流れるような作品に出来上がってます。最後はとてもすごいものを観たという気持ちで、劇場をあとにしていただけると思います。
陰山 スペクタクルなシーン満載です。ポスターに「負けてなお誉れある旗を掲げてやればいい」という言葉がありますが、まさにこの言葉通りにそれぞれの旗をあげてやっていると思います。感動的なお芝居です。

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緒月 やりたかったお母さん役ができて、今とても嬉しく思っているのですが、和藤内の母として一官さんの妻として精一杯生きたいと思います。
馬場 今回、甘輝という高貴な役ですが、僕の高貴さとダンディさを(笑)全力で振り絞ってがんばりたいと思います。二刀流で戦いますのでそこもぜひ観ていただきたいです。
清水 30-DELUXの代表の清水です。去年ロンドン公演を行って、オリジナルの和物ミュージカルで殺陣の入ったものを上演したのですが、殺陣とか和物ということにとても大絶賛をいただきまして、マスコミ5社から五つ星をいただきました。ですから和物にもっと誠実に向き合っていきたいなと思い、昨年の『新版 義経千本桜』に続いて、今回も歌舞伎原作ものの『国性爺合戦』をやらせていただくことにしました。近松門左衛門の傑作で、なかなか上演されていないということで、あえてこういう大作に挑戦して、人形浄瑠璃とか歌舞伎をあまり観たことがない人にも、興味をもってもらえるような内容で、わかりやすいスペクタクル作品にしてあります。

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──いよいよ初日を迎えますが、見どころは?
佐藤 芝居の流れでいろいろな演劇の手法が出てきて、1つではない面白さがあるので、観ていて楽しいと思います。
──衣裳はそんな感じですか?
佐藤 僕の場合は成長していくので、そのたびに衣裳が変わります。これは十代です。18とか19です。若い時代もありますが、気持ちは十代なので大丈夫です(笑)。
──そこからいくつまで?
佐藤 30前後まで成長していきます。
──アクションも多いそうですが?
佐藤 そこが30-DELUXの売りでもあるので。
──今回アツヒロさんにこの役をと思ったのは?
清水 江戸時代に初演されたとき、この主役が日本人と中国人の混血ということで大評判となったそうです。アツヒロくんは普段も熱くて、僕はこの役はアツヒロくんにしか見えなかった。これはアッくんしかいないと。熱くて真っ直ぐで純粋で、それが成長して色々な葛藤をして、最後に気づいて家族を大事にするという話なのですが、そこがぴったりだと思います。

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──稽古に入ってみていかがでした?
清水 カンパニーを全部引っ張っていってくれて、うちに若いメンバーにも気を遣ってくださったり、客演の方々へのケアも素晴らしい。アツヒロさんがいれば主宰の僕はいらないというくらい、ぐんぐん引っ張ってくれています。さらに舞台でも進化していくのを観ていただければ。
──それを聞いてアツヒロさんは?
佐藤 僕の中でも演劇をはじめて16年目なので、そのへんもがんばりたいです。
──久しぶりに動き回る舞台ですが?
佐藤 基本的には大丈夫なんですが、舞台セットが段段になってますので、足にきますね(笑)。
──ダンスも殺陣もあるそうですが?
佐藤 僕はダンスはないんですが他のメンバーが踊ります。歌う方もいます。
──体力維持は?ローラースケートとか?
佐藤 やってます。体力維持にはなります(笑)。劇中にはないんですが(笑)。
清水 今回は残念ながら入れてないんです。それ以上にアツヒロさんの素晴らしい見せ場が沢山ありますので。殺陣は全部で1000手以上あるのですが、とくにアツヒロさんの殺陣に注目してください。

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──緒月さんはアツヒロさんのお母さん役なんですね?
緒月 はい。アツヒロさんのお母さん役をさせていただけるという、本当に「光GENJI」世代としては、今、信じられない状況なのですが。
佐藤 やめてください(笑)。
緒月 ローラースケートも履いてましたし。小学校あげて履いてました(笑)。
──ちなみにどなたのファンでした?
緒月 アツヒロさんです。
佐藤 (笑)そういうことで。
──できたらお母さんではないほうが?
緒月 いえいえ、お母さん役をさせてもらえるだけでも嬉しいので、毎日毎日、新鮮に頑張ろうと思っております。
──新たな魅力の発見などもありましたか?
緒月 先ほど清水さんがおっしゃったように、本当にピュアで真っ直ぐで、嘘のない芝居をなさるので、こちらが引き込まれてしまって、つられて泣けてしまうくらいの素晴らしい熱量を出してくださるので、とても助けていただいています。
佐藤 いえ、とんでもないです。

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──他の方はいかがですか?
陰山 アッくんはじめ皆さん若いのですが、とてもフラットに付き合っていただけるので、溶け込ませていただいてます。とても楽しいカンパニーです。アッくんは気も遣ってくれるし、でもそうは見せないし。僕はアッくんと2回目なんですけど、今回改めて感心したのは、持っている自分だけの世界があって、孤独な青年像というか、物事を自分で考えて決めていくというその姿勢が、この役にぴったりなんですよね、良い役者だなと思います。
馬場 僕も2回目で、この作品について清水さんから、アツ兄が主演でこういう話だというのを、まだ全然決まってない段階でぽろっと(笑)小耳にはさみまして、これは自分もぜひ出していただきたいと。30-DELUXという劇団ともアツ兄とも、もう一度関わりたいと思っていたので、事務所にも清水さんにも「出たいです」と土下座をして(笑)掴んだ役なので、色々な意味でスパイスになればと思っています。
──そこまで思った理由というのは?
馬場 30-DELUXもアツ兄も熱くて、嘘がないし、作品作りのためには努力を惜しまないんです。毎公演、僕も出させていただくたびに、大きくならせていただけるんです。ですから今回は土下座して。
清水 土下座は……してないと思います(笑)。
馬場 夢の中だったかなあ(笑)。
清水 でも気持ちはわかりましたから。戦隊俳優から成長して、今回も大人の俳優として、アツヒロさんとは原作でも有名な和藤内と甘輝との対決があるのですが、そこは見どころになってます。

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──その場面をアツヒロさんと演じていていかがですか?
馬場 僕は実は殺陣が苦手なので、どうしても順序から、まず右、次は左とか覚えていきがちなのですが、アツ兄がお芝居で殺陣をしてくるので、アツ兄の眼を見ていると段取りとか頭で追おうとする自分がいなくなって、その場で芝居として殺陣ができるんです。本当に助けられながら、やっぱり殺陣って面白いなと思うことができるので、今回もそこを一緒に、甘輝というライバルの役ですが、がんばってアツ兄にしがみついていこうと思っています。
──皆さんの熱い思いを聞いていかがですか?
佐藤 いやもう感無量です。嬉しい限りです。1人じゃなんにもできないんですよ僕も。皆さんがいてこんなに立派な作品が作れるので、だからこそ頑張りたいなと思っています。

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〈公演情報〉
『新版 国性爺合戦』
作◇西森英行
演出◇伊勢直弘
出演◇佐藤アツヒロ、馬場良馬緒月遠麻 大湖せしる名塚佳織・加藤雅美(Wキャスト)/森 大田中 精林 明寛山口大地/清水順二陰山 泰
●9/14〜18◎シアター1010
●9/24〜25◎東海市芸術劇場
●9/30◎福岡市民会館
●10/14〜16◎シアター・ドラマシティ
〈お問い合わせ〉ジェイズプロデュース03-3980-2415
http://www.30-delux.net/kokusen-ya_kassen/sp01/sp.html



【取材・文・撮影/榊原和子】
 


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名曲揃いのミュージカルで明日海りおが躍動 宝塚花組公演『ME AND MY GIRL』

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数多い宝塚歌劇団の海外ミュージカルレパートリーの中でも、屈指と言えるハートウォーミングなロンドンミュージカル、UCCミュージカル『ME AND MY GIRL』が、明日海りお&花乃まりあトップコンビ率いる花組により、日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(31日まで)。

1937年にロンドンで初演された『ME AND MY GIRL』は、1646回のロングランを記録した大ヒットミュージカル。1930年代のロンドンを舞台に、そうとは知らぬまま下町で育った名門貴族の落とし種の青年ウィリアム(ビル)が、700年続く名家であるヘアフォード家の世継ぎに相応しい紳士として教育されながらも、恋人サリーとの愛を貫く姿が、心躍るミュージカルナンバーに乗せて描かれていく。

宝塚では1987年に剣幸&こだま愛主演による日本初演が大好評を博し、同年に再び上演されるという宝塚としては異例のロングラン公演を成し遂げたのを皮切りに、1995年には天海祐希&麻乃佳世率いる月組で、2008年には瀬奈じゅん&彩乃かなみ率いる月組で上演された他、中日劇場、博多座、梅田芸術劇場での再演を重ねて、累計観客動員数118万人を誇る大人気作品となっている。今回は久しぶりに宝塚大劇場と、東京宝塚劇場の本公演に戻ってきての上演となり、明日海りお&花乃まりあを中心とした、花組メンバー全員での華やかなステージが展開されている。

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改めて舞台に接してみて、この温かな作品が如何に宝塚歌劇の世界と親和性があるかを再認識させられる。まず全編が王道のシンデレラ・ストーリーでありつつ、主人公が男性という、美しい夢とロマンの世界を描き、男役を中心としている宝塚のセオリーに、作劇の展開がピタリと合致しているのだ。しかもヒーローとヒロインは、決してブレることなく互いを思い合っていて、次々と繰り出されるミュージカルナンバーは、いずれ劣らぬ名曲揃い。更に本当の意味での悪人は1人も出てこないという、ほのぼのとした世界観には、観ている側の心をたっぷりとうるおすものが満ちている。ロマンチックで、軽快なコメディで、とことんハートウォーミング。最強とはこのことだろう。

そんな作品で主人公のウィリアム(ビル)を演じる明日海りおが躍動している。この人の舞台にはまず何よりも品があって、ランべスの下町育ち丸出しの初登場シーンでさえも、演じるビルが大貴族にルーツを持つ青年であることがすんなりと納得できる。更にいたずら好きの役柄の行動が微笑ましいほど愛らしく見え、舞台に温かい香りが漂う。ますます冴えわたる歌唱力も大いなる力になり、「街灯に寄りかかって」の燕尾服にトレンチコート姿の端正さは見惚れるばかり。最後まで主人公たる輝きが際立つビルとして、しっかりと舞台に存在し得ていた。

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対するサリーの花乃まりあは、純娘役の枠にどこかで納まりきらない闊達さが、この役どころに打ってつけ。その印象が強いからこそ、ひたすらビルを想い、その想いの深さ故にビルよりも先に現状を認識して、自ら行動しようとする健気さが涙を誘う。明日海に呼応するように、歌も着実に進歩していて「一度ハートを失くしたら」の好唱は忘れ難いものだった。コンビとしての安定感が1作毎に増してきているのも心地良い。

そして、この幸福感いっぱいのミュージカル唯一の難関である、メインの役柄の数が限られているという問題を、今回はかなり入り組んだダブルキャストを組み、専科勢の応援を頼まず花組メンバーだけでの上演としたことでクリアしていて、それぞれを見比べる妙味の多い舞台となっている。

二番手男役の芹香斗亜は、Aパターンではヘアフォード家の女主人マリア公爵夫人の友人で、遺言執行人であるジョン・トレメイン卿、Bパターンでは、侯爵夫人の甥ジェラルドを演じた。ジョン卿は所謂シルバー世代のおじ様という役どころだが、若い芹香が実にしっくりと役柄に馴染んでいて、ナイスミドルの貫録もなかなかのもの。一方ジェラルドでは貴族独特の鷹揚さを持つ、どこか呑気な青年を柔らかく描写。すでにジェラルドだと、やや役が軽いかな?とさえ思わせるところが嬉しい驚きで、男役としての確かな成長を感じさせた。

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続く柚香光は、Aパターンでは婚約者のジェラルドをあっさりと振って、莫大な財産を相続するビルに堂々とアプローチする公爵夫人の姪ジャクリーン(ジャッキー)、Bパターンではヘアフォード家の弁護士パーチェスターを、というこれはかなりサプライズのある役替わり。柚香のジャッキーは何をしても憎めない可愛らしさがあるのが、役柄から計算高さによる嫌味を綺麗さっぱり拭い去って好感度抜群。一方のパーチェスターも歴代随一の二枚目の作りが実に上手くハマっている上、「家つき弁護士」の持ちナンバーもなんとも言えず愛らしいのに目を瞠る。柚香という人が個性的な美貌の下に、どこか小動物のような愛くるしさを秘めていることが、この二役で浮き彫りになったのが今回のサプライズの大収穫だった。

ビルを正当な世継ぎとして育てようとするマリア公爵夫人は、Aパターンが桜咲彩花、Bパターンが仙名彩世。2人共に歴代この役どころを演じてきたメンバーからするとかなり若いが、共にゆったりとした身のこなし、低いトーンの話し方で果敢に役柄に挑んでいる。今後魅力的な女役として花開く素地を十分に備えた2人にとって、大きな経験となったことだろう。

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Bパターンのジョン卿、瀬戸かずやは大人の個性の人だが、実は持ち味に若竹のようなものも秘めている人でもあって、その青い部分が今回はやや前に出た格好。それだけに「愛は世界をまわらせる」に弾けた楽しさがあり、次に控えるバウホール主演の成果が期待された。Aパターンのジェラルド水美舞斗は、実に爽やかで伸びやか。「あ・うん」の呼吸がある同期の柚香のジャッキーとのコンビネーションも秀でていて、今後も注目していきたい期待の男役の1人だ。Bパターンのジャッキーは鳳月杏。如何にも大柄なジャッキーだが、ジェラルドが芹香なだけにバランスは悪くなく、踊れる強みが「自分の事だけ考えて」のナンバーに輝いていた。Bパターンのパーチェスターは鳳真由。柚香のパーチェスターの新しさに比して、鳳のそれはこの役柄のオリジナル・キャスト未沙のえるから脈々と受け継がれてきた、可笑しみとどこかに残る切なさをも引き継いだ、安定の出来栄え。更にこの人ならではの温かみもあり、退団が改めて惜しまれた。

他にこれはシングルキャストだが、ヘアフォード家の執事ヘザーセットの天真みちるが、立っているだけでクスリとさせるコメディセンスを如何なく発揮。この人のパーチェスターも観てみたかったと思わせる存在感だった。また、ランべスの街角での幻想の男女に、花組の期待の若手男役と娘役が集結するなど、隅々にまで見どころが満載。誰もが等しく幸福感を得られるだろうハッピーエンディングのラストシーンまで、目の離せない公演となったことが何よりだった。

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初日を控えた6月24日通し舞台稽古が行われ、花組トップコンビ明日海りおと花乃まりあが、囲み取材に応えて公演への抱負を語った。

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まず、明日海が「花組の明日海りおでございます。本日は朝早くから来て頂きましてありがとうございます。いよいよ東京にやって参りましたが、東京の皆さんにも思いっきりハッピーな気分になって頂けるようよう、組子一丸となって頑張りたいと思います」また花乃が「花乃まりあでございます。本日はお集り頂きありがとうございます。私も明日海さんと同じように、東京の皆様にもハッピーな気持ちをお届けできるように頑張りたいと思います」とそれぞれ挨拶。続いて記者の質問に応えた。

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その中で、作品の魅力を問われた明日海が楽曲の素晴らしさをあげると、花乃はビルという役は、まさに理想の男性で、その魅力が作品の魅力であり、明日海さんに本当にピッタリ、と明日海を絶賛。それに応えて明日海も花乃の持ち味がサリーに合っていて、何が起こっても対応してくれる頼もしさを感じる、と語り、2人の信頼感はより強固になっている様子。終始、互いの目を見て、うなづきあいながら語る姿が真摯で、作品と同様に花組のコンビの温かさも伝わってくる時間となっていた。

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尚、囲み取材の詳細は、9月9日発売の「えんぶ」10月号にも掲載します。どうぞお楽しみに!


〈公演情報〉
UCCミュージカル『ME AND MY GIRL』
作詞・脚本◇L・アーサー・ローズ&ダグラス・ファーバー
作曲◇ノエル・ゲイ
改訂◇スティーブン・フライ
改訂協力◇マイク・オクレント
脚色◇小原弘稔
脚色・演出◇三木章雄
出演◇明日海りお、花乃まりあ ほか花組
●6/24〜7/31◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席 12,000円 S席 8,800円 A席 5,500円 B席 3,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001(劇場・月曜休み)




【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


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粟根まこと、松永玲子ほか、キーポイントQ&A【演劇人の活力源】など連載中!
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ゴールデンコンビが鮮やかに描き出す名画の世界 宝塚雪組公演『ローマの休日』

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映画史に燦然と輝く不朽の名作を、早霧せいな、咲妃みゆを擁する宝塚歌劇団雪組がミュージカル化した、タカラヅカ・シネマティック『ローマの休日』が、名古屋中日劇場での公演を終え、東京赤坂ACTシアターで上演中だ(7月10日まで。のち、大阪梅田芸術劇場メインホールで7月30日〜8月15日まで上演)。

イタリアのローマを舞台に、ヨーロッパの伝統ある王家の一員である王女とアメリカ人新聞記者が、1日だけの有り得ない休日を共に過ごすことによって生まれた、切ない恋模様を描いた『ローマの休日』は、1953年の公開以来、今尚世界中で愛されているアメリカ映画の金字塔的作品だ。主演のグレゴリー・ペックとオードリー・ヘプバーン、特にシネマの妖精とも謳われたオードリーの代表作とも言える映画であり、おそらくは誰しもが1度は目にしたことがある名画だろう。

そんな作品を宝塚歌劇がミュージカル化する。更にコンビとして充実の時を迎えている雪組トップコンビ早霧せいなと咲妃みゆで、という企画が発表された時点から、これは必ずやヒットするな、という予感に満ちていたものだが、想像通り幕を開けた舞台は、今やゴールデンコンビと呼んで間違いない2人と、層の厚い雪組メンバーの魅力があふれだす舞台となっていた。

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大劇場公演とほぼ同じ、休憩込約3時間で演じられる作品は、思った以上に原作映画の展開を忠実に拾って進んでゆく。更に盆回しも多用されるものの、基本的には本舞台とカーテン前の芝居で進めて行く田渕大輔の演出は、現代の演劇の主流からするとかなりクラシックで、安定感がある代わりにどうしても新味には薄い面があるのは否めない。また、これは3都市の異なる劇場をめぐるという制約もあった故か、『ローマの休日』でおそらく最も有名なシーンである、ジェラートを手にしたアン王女と新聞記者ジョー・ブラッドレーが再会するスペイン広場のシーンの、肝心の階段が大変簡素なのには、宝塚と言えば大階段を見慣れているからこそ、ちょっと驚かされもした。

けれども、そうしたあれこれが、舞台を観ているうちに瞬時にしてどうでもよくなる魅力が、作品から迸っているのもまた事実なのだ。特に、映画版では余裕綽々の大人の男であるジョー・ブラッドレーが、まだ多分に未成熟な青さも持つ青年として描かれ、作品が王女の成長物語なだけではなく、ジョー自身の成長物語ともなっているのは、基本的に男役が、つまり男性の役どころが主人公になる宝塚に『ローマの休日』世界を無理なく持ち込んだ、田渕の脚色の成果として高く評価できる。更に、真実の口の前で、実は互いに本当のことを言っていない2人の想いが交錯する「本当の二人、本当の物語」や、クライマックスの「約束の場所」など、ミュージカルナンバーにも耳に馴染む美しい曲が多く、『ローマの休日』のミュージカル化としても、宝塚化としても大きな成果をあげていた。

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何より、主人公を演じる2人、早霧せいなと咲妃みゆの絶妙なコンビネーションが素晴らしい。早霧のジョーは、野心家で現状に不満を抱いている青年が、その野心を満たすことよりも大切なものに気づき、生涯の思い出として残るだろう恋を得た、成長と心の機微を十二分に表現している。また咲妃のアンは、押し寄せる公務の連続にナーバスになっていた王女が、1日だけの自由を得、初めての恋を知り、それ故にまた自身の王族としての責任に目覚めてゆく過程を、気品ある立ち居振る舞いと声を持って丁寧に演じている。このコンビが魅力的なのは、孤高にも通じる張りつめた弦のような美しさを持ちながら、一方でびっくりするほどホットでいたずらっ子にも通じる面も持つ早霧の個性と、基本的に憑依型の演技者でありつつ、どこか天然でおっとりもしている咲妃の個性が組み合わされることによって、これぞ宝塚のコンビらしい、愛らしさとゆめゆめしさが醸し出されることにある。2人のやりとりの中に「ツンデレ」と呼びたいような押し引きが自然にあって、なんとも言えない良い雰囲気と、信頼感が立ち込めるのだ。この2人で『ローマの休日』という企画を聞いた時に、まさに膝を打つような気持ちにさせられたのはその魅力故で、おそらくは誰でもが知っているだろう結末に、それでも涙を誘われる力には、絶大なものがあった。

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そんな2人を支える雪組メンバーも充実している。ジョーの相棒的存在であるカメラマン・アーヴィングを演じる彩凪翔は、ジョーに振り回されながらも、その心根に加担してやる良い奴を、存在感たっぷりに活写した。『るろうに剣心』で、非常に思い切ったイヤな奴に愛しささえにじませた好演以来、男役として幅を広げていて、ますますの活躍が楽しみだ。また、宝塚版で思い切ったナルシストのイタリア男として描かれた、王女の髪をカットする美容師マリオに扮した月城かなとは、正統派の二枚目としてはかなり思い切った演技を披露。こちらも着実に次につながる経験となりそうだ。この2人は、梅田芸術劇場メインホール公演では役替わりも予定されていて、実に興味深い。全国から改めて大阪公演を観劇に出向く観客も多いことだろう。心憎い企画と言える。

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他に、ジョーの上司である新聞社の支局長役を演じる鳳翔大が、冒頭二役で映画スター役も演じていて、押し出しもプロポーションも抜群で目を引くし、アーヴィングの恋人フランチェスカ役の星乃あんりが、イタリアの良い女に相応しい雰囲気をまとっていて成長を感じさせる。王女の側近の伯爵夫人役の梨花ますみ、大使役の奏乃はると、秘密諜報部員を率いる将軍役の真那春人等が舞台を引き締め、他にも新聞社の支局員を大幅に増やすなど、基本的には役柄の少ない原作映画世界を広げる為の努力は涙ぐましいほど。それに応えた雪組の出演メンバー達が、街の人々や物売りの人々などに扮してローマの名所を巡る作品を大いに盛り上げ、ミュージカルとしての楽しさを倍化していて、宝塚ならではの美点が輝いていた。

思えば同じ時期に雪組は、二番手男役スター望海風斗を中心とした『ドン・ジュアン』で、宝塚の域を広げた作品を作り上げていたが、トップスター早霧せいなとトップ娘役咲妃みゆが、その対局にあると言ってもいい「これぞ宝塚!」なロマンティックにあふれた『ローマの休日』を見事に構築していたのが頼もしく、改めて、組全体の層の厚さと勢いを感じさせる得難い時間となっていた。


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初日を控えた6月24日、通し舞台稽古が行われ、雪組トップコンビ早霧せいなと咲妃みゆが囲み取材に応えて公演への抱負を語った。

【囲みインタビュー】

——いよいよ明日から東京公演が始まりますが、先に行われた名古屋公演の反響はいかがでしたか?
早霧 名古屋のお客様、更に中日劇場に各地から集まってくださったお客様には、初日から私たちの想像を上回る反応でご覧頂けました。稽古中はどうしても反応が直にかえってこないので、不安で、暗闇の中を手探りする状況で稽古をしているのですが、初日が明けてから、本当にお客様の反応が良すぎて、それに救われて公演できた中日劇場だったなと思っております。東京に集まってくださるお客様と、名古屋に集まってくださるお客様は、土地柄と言いますか、質がおそらくまた違うと思いますので、期待しながら、その明日からのお客様の反応を楽しみにしたいなと思っております。
咲妃 毎回お客様の反応が少しずつ異なっていて、演じる側としても毎日新鮮な中日劇場公演でした。お客様に気付かせて頂くことも多々あって、とても勉強になりましたし、短い期間ではありましたが、その経験を活かして東京公演も頑張りたいと思いました。

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——『ローマの休日』に限らず『ルパン三世』や『るろうに剣心』などみなさんの頭の中にイメージができあがっているものを、新作としてやるということに対しての難しさは? 
早霧 アニメや漫画とは違って、今回は映画、映像化されたものしか資料がないので、逆に『ローマの休日』は、映画にしばられないようにしました。私が演じるジョー・ブラッドレーという役の設定も、(田渕大輔)先生が宝塚版として新たに付け加えてくださった部分もあったりしたので、そちらを膨らませつつ、でも皆様から愛されている『ローマの休日』という映画の世界観の中で、また違ったジョー・ブラッドレーを生きることを目指しました。今回は、『ルパン三世』『るろうに剣心』とは、アプローチの仕方が、私自身は違ったのですが、(咲妃に)どうですか?
咲妃 『ローマの休日』と言えば、オードリー・へプバーンさんが演じたアン王女と言ってもよくて、私自身も昔から好きな映画ですし、好きなお役ですし、オードリーさんの代名詞とも言えるような役柄なので、正直に申し上げますとプレッシャーと言いますか、自分にないものだらけすぎてとても不安でした。でも田渕先生が宝塚版として素敵な脚本に仕上げてくださいましたので、私だったらどうアン王女を生きていくかなと、日々追求しながら、今も臨んでおります。 映画の世界観をきちんと大切にしつつ、舞台の、その瞬間をご覧になるお客様の空気感を感じつつ演じていけたらと思っております。

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——映画の名シーンを実際に演じてみていかがですか?
早霧 そうですね……(しばらく考えて)色々なローマの名所と言われる場所を一緒に巡っていますが、私的にはローマの名所よりも、実は1番ジョーのアパートの中での2人のやり取りが、映画の中でもとても印象に残っています。何回か、そのシーンが出て来るので、そこがもっと面白くならないかな?もっとコミカルにならないかな?と。実際、映画の中で演じられている、グレゴリーさんとオードリーさんの2人のやり取りにしかない世界観があるのであれば、私と咲妃にしかできない世界観があるんじゃないかなと思っていて。そこは名優さんたちをかなりライバル視して明日からもやりたいなと思います。
咲妃 とてもテンポ感の必要な物語の展開だと、私は感じていて、その中でコメディタッチの場面が多いので、日々色々とちぎさん(早霧)にご指導を仰ぎながら務めています。コミカルにやるとするとこうだよ、という(アドヴァイスで)ほんの少しの間の取り方や抑揚などが変わるだけで作品の面白さが変わってくるんだろうなと思うので、(咲妃が自分を褒めるので、どんどん背を向ける早霧の、その背中を追うように)本当に素晴らしいなと思って。ベスパの運転もお上手ですし。
早霧 あれは、誰でも乗れますよ(笑)。

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——お2人ならではの役作りと、宝塚版のみどころを。
早霧 私が映画を観てはじめに抱いた印象として、完成された大人の男性と、まだ大人になり切れていない少女との話というのが残ったのですが、宝塚版として描いてくださっているのは、私が演じているジョーという男性もまだ完成されていず、時に子供っぽいところがあったり、まだまだわがままで自分勝手な所も大いにあるという設定の中で、彼も王女と出会ってひとつ、ふたつ、大人になっていくというところがポイントになっているんじゃないかなと思います。それはやはり宝塚ということで、男性側が主軸になるというか、そこもたぶん関係していると思います。その中で王女はそういう男性と出会っても、映画版と変わらず王女が王女らしくいられるところが、ゆうみちゃん(咲妃)の難しいところであり腕の見せ所であり、今みせていて素晴らしいところであると思います。(驚いて早霧を見る咲妃に)誉め返しです(笑)。そういうところが宝塚版だなぁと思いますし、街に出て行くところで、私たちが実際観たであろう風景を、一緒に出ている仲間たちが体現してくれていて、ローマの街が生き生きと描けているんじゃないかなと。それが宝塚の華やかさであり舞台化した良さ、意義なのではないかと思っています。

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咲妃
 私らしくと先ほど申し上げましたが、それとは別の次元で、お話しの流れとしては原作映画に忠実に創って下さっています。その流れの中で私が決してオードリーさんの真似にならず、その時に受けた感情でどのようにその場に存在するか自分自身この作品を1回、1回、新鮮に演じるにあたってとても課題だなと思います。何公演も演じていく中で、慣れが生じてしまわないように、毎回丁寧にリアルを追求していくことが、私らしいアン王女を築いていく近道になるのではないかと思って、頑張りたいと思います。
──では最後に意気込みをお願いします。
早霧 明日の初日から千秋楽まで、出演者一同心をこめて演じ続けたいと思いますので、是非、劇場でお待ちしております。
咲妃 日々進化した舞台をお客様にお楽しみ頂けますよう、一生懸命心をこめて演じて参りたいと思います。最後までどうぞよろしくお願い致します。

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〈公演情報〉
宝塚雪組公演
タカラヅカ・シネマティック 『ローマの休日』
脚本・演出◇田渕 大輔
出演◇早霧せいな、咲妃みゆ 他雪組
●6/25〜7/10◎赤坂ACTシアター
〈料金〉S席8,800円、A席6,000円
〈お問い合わせ〉阪急電鉄歌劇事業部 03-5251-2071
●7/30〜8/15日◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S席8,800円、A席6,000円、B席3,000円
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場メインホール 06-6377-3800



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


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望海風斗の圧巻の歌唱力が光る! 宝塚雪組公演ミュージカル『ドン・ジュアン』

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宝塚雪組の二番手男役、望海風斗を中心に繰り広げられるミュージカル『ドン・ジュアン』が、KAAT神奈川芸術劇場で上演中だ(26日まで。のち、大阪梅田芸術劇場シアタードラマシティで7月2日〜12日まで上演)。

モリエールの戯曲、また舞台をイタリアに移したモーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』等で知られる、スペインを舞台にした伝承「ドン・ジュアン伝説」が、フランス産ミュージカル『ドン・ジュアン』として蘇ったのは2004年のこと。究極のプレイボーイが辿る愛の末路を、フラメンコをベースとした珠玉の名曲で綴った作品は、カナダでの初演のあと、パリや韓国で上演を重ね、好評を博してきた。今回の宝塚雪組公演は、そんな作品の本邦初演で、背徳にまみれ、快楽を追い求めるプレイボーイが、基本的には美しい愛と夢を描いてきた宝塚でどう表現されるのかと共に、大きな期待と注目を集めての上演となった。

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アンダルシア地方、セビリアで物語は始まる。スペイン貴族ドン・ルイ・テノリオ(英真なおき)の跡取りでありながら、酒と女に溺れ悪徳の限りを尽くす放蕩息子ドン・ジュアン(望海風斗)は、夜毎女たちとの情事に浸っていた。ある夜、ドン・ジュアンは騎士団長の1人娘(笙乃茅桜)を一夜の快楽の相手に選ぶが、そのことが誇り高き騎士団長(香綾しずる)の激怒を招き、決闘を挑まれる事態に発展してしまう。剣の腕も確かなドンジュアンは闘いには勝利したものの、騎士団長が最期に残した「お前はいずれ〈愛〉によって死ぬ。〈愛〉が呪いとなる」という予言に苛まれ、やがて亡霊にとりつかれるようになる。
そんなドン・ジュアンを案じる唯一の友ドン・カルロ(彩風咲奈)の忠告も、修道院を出てまでドン・ジュアンと結婚したものの、今は顧みられることのない妻エルヴィラ(有沙瞳)の慟哭も彼には届かず、放埓な生活を続けるドン・ジュアンは、つきまとう亡霊に導かれるように、亡き騎士団長を讃える石像を製作している女性彫刻家のマリア(彩みちる)に出会う。一心にノミを振るうマリアの美しさ、ひたむきさに惹かれるドン・ジュアン。それは、かつて経験したことのない、心の震え〈愛〉の訪れを彼に自覚させ、マリアもまたその想いを真っ直ぐ受け留めるに至る。だが、マリアの婚約者ラファエル(永久輝せあ)が戦地から戻ったことをきっかけに、亡霊の呪いの言葉通り、ドン・ジュアンは〈愛〉の呪縛に絡め取られてゆき……

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これまで宝塚歌劇で上演されてきたフランス産ミュージカル、『ロミオとジュリエット』『太陽王〜ル・ロア・ソレイユ』『1789〜バスティーユの恋人たち〜』などと共通する魅力として、この『ドン・ジュアン』も何より、美しく力強いミュージカル・ナンバーの数々がドラマを牽引している。その音楽の多彩さをまるごと舞台に乗せた上で、生田大和の潤色・演出はドン・ジュアンの奥底にある心の渇きや孤独と絶望を視覚的に表現することによって、一見救いようのない稀代のプレイボーイの行動に、一偏の救いと哀しみを加えている。これが、宝塚歌劇にとって重要な要素になったのはもちろん、フラメンコ・ダンサーである佐藤浩希振付による、スペインの香りを迸らせたサパテアードにも大きな工夫と見応えがあって、象徴的に使われた薔薇の赤と共に舞台に深い印象を残していた。ドラマ性以上に、どこかコンサート的な魅力を放つフランス産ミュージカルに、文学の香気を伴う抒情性を持たせたのは、生田ならではの仕事ぶりと言える。

そんな舞台でセンターを務める望海風斗が圧倒的だ。これまでにも宝塚の粋をひとつ踏み越えている、と感じる色濃いキャラクターの造形で成果を残してきた人だが、今回のドン・ジュアン役は、それらの大きな到達点として君臨していて、快楽を貪り放蕩の限りを尽くす1幕と、愛を知り希望を持ったが故に嫉妬に狂い、怯え、混乱の中で純なものを立ち昇らせてゆく2幕との差異が絶妙だった。何より、定評ある豊かな歌唱力が、しばしばショーストップを思わせるほどの絶唱につながり、ただただ耳福の時を生み出してくれる。文字通り望海あったればこそ成功した公演と言ってよく、雪組の二番手男役という現時点で、輝かしい代表作を手にしたことに拍手を贈りたい。

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対する女性彫刻家マリアに扮した彩みちるは、『るろうに剣心』で主要人物の1人、明神弥彦に扮して溌剌とした少年役を生き生きと演じたのが記憶に新しいが、今回のマリア役では真っ白の純娘役ぶりを披露。生きがいにしている仕事を、結婚を期に辞めることを婚約者に迫られて惑うという、現代の女性にも通じる悩みを抱えているヒロイン像は共感しやすく、ひたむきな愛らしさがある。本人比としてはよく向上している歌唱面で一層の研鑽を積めば、更に伸びてくるだろう。注目していきたい娘役だ。一方、ドン・ジュアンの妻エルヴィラを演じた有沙瞳は、その歌唱力での輝きが際立つ。夫をなんとか振り向かせたいと思うあまりの行動も、感情の振幅もよく表現していて、高い地力を示していた。劇中、もう1人のヒロインとも言える存在に描かれている中で、充実した成果をあげたのが喜ばしい。

そのエルヴィラに口にできない想いを寄せるドン・カルロの彩風咲奈は、全体の語り部的な役割を担い、ドン・ジュアンの友を自負するものの、当のドン・ジュアンには友人と認識されていないという、大変難しい役どころをよく支えている。演出に相当な配慮はあるものの、基本的にはかなりの辛抱役なのだが、それをきちんとこの公演の二番手格の男役が演じる役柄としてキープしたのは、このところ進境著しい彩風あったればこそ。男役彩風咲奈の大きな経験として、次につながる舞台となった。一方、マリアの婚約者ラファエルの永久輝せあは、ドラマ展開の鍵を握る大きなポジションを得て、充実した存在感を示している。持ち味に骨太な野性味があるのもこの役柄に打ってつけで、伸び盛りの勢いを感じさせた。

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また、ドン・ジュアンの父ドン・ルイ・テノリオの英真なおき、ドン・ジュアンのかつての情人の1人イザベルの美穂圭子が、確かな歌唱力を持った専科勢として、楽曲が大きな比重を占める作品に欠かせない助演者として屹立したのはもちろんのこととして、思い切ったメイクで舞台に深い影を落とした騎士団長、転じて亡霊役の香綾しずる。ドン・ジュアンの快楽の相手の1人であるアンダルシアの美女と、本来の男役の硬質な魅力が光るフェルナンド役を見事に演じ分けた煌羽レオ。注目の新進男役である縣千など、雪組メンバーもそれぞれの持ち場で充実。日本初演のフランス産ミュージカルを、堂々と活写したのが頼もしかった。

何よりも、組の半数のメンバーで、これだけの成果があげられる雪組の層の厚さは驚異的で、贅沢な余韻に浸れるスケールの大きな舞台となっている。


〈公演情報〉
宝塚雪組公演
ミュージカル『ドン・ジュアン』
作詞・作曲◇Felix Gray
潤色・演出◇生田大和
出演◇望海風斗 ほか雪組
●6/18〜26◎KAAT神奈川芸術劇場
〈料金〉S席7,800円、A席5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉阪急電鉄歌劇事業部 03-5251-2071(10時〜18時 月曜定休)
●7/2〜12◎梅田芸術劇場シアタードラマシティ
〈料金〉7,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場シアタードラマシティ 06-6377-3888(10時〜17時半)



【取材・文・撮影(1幕)/橘涼香 撮影(2幕)/岩村美佳】




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