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明治座で3月29日から4月15日まで、北翔海莉が初座長を勤めるミュージカル『ふたり阿国』が上演される。
この舞台は皆川博子の小説「二人阿国」を原作に、戦乱の世に咲き誇る芸の花・阿国と、彼女に憧れながらも同時に憎しみを抱き、のちに「二代目おくに」を名乗るお丹、「ふたりの阿国」の相反する生き方と、抑圧された名も無き民衆の声をテーマに描くオリジナルミュージカルだ。
阿国には元宝塚星組トップスターで圧倒的な歌唱力と抜群のエンターテインメント性を誇る北翔海莉。もう1人の阿国・お丹役は、AKB現役唯一の1期生で、2018年舞台デビューを果たした峯岸みなみが演じる。

【あらすじ】
戦乱が絶えない時代に、きら星のごとく現れた“阿国“と、彼女に憧れながらも同時に憎しみを抱き、のちにのちに「二代目おくに」を名乗る“お丹“。同じ芸の道を極めようとするも、相反する生き方を選ぶ女と娘。絶対的存在として何にも縛られない自由な阿国の強さ、そんな阿国との関係からお丹の成長物語が浮き彫りになる。そして、京で一番の色男、お丹が兄と慕う芸人、京の遊芸を取り仕切る有力者、お丹の父親など、彼女たちを取り巻く男たち。さらには移りゆく時代に翻弄されながらも強く生きる民衆たちの“叫び”にも焦点をあて、彼らの抗えぬ運命を描き出す。

共演者たちは、舞台・映像作品でマルチに活躍中の玉城裕規、ミュージカル界でも実力派として知られる坂元健児、個性的な風貌と声で活躍するコング桑田、バラエティやドラマでもお馴染みモト冬樹をはじめ、宝塚OGの桜一花や鳳翔大も出演するなど、多彩で実力あるキャストたちが揃った。
脚本は「柿喰う客」の主宰で作・演出家の中屋敷法仁、演出はオペラ、ミュージカルからストレートプレイまで幅広く手がける田尾下 哲、ジャンルにとらわれない歌、舞、殺陣、奇天烈をミックスさせた新しいエンターテインメント作品として、演劇の垣根を越える新しいミュージカルを作り出す。
その注目の作品で阿国を演じる北翔海莉に、この舞台への意欲を語ってもらった「えんぶ2月号」の記事を、別バージョンの写真とともにロングインタビュー版としてお届けする。

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阿国の神秘性や
カリスマ性を表現したい
 

──皆川博子さんの原作ですが、お読みになったそうですね。
はい。皆川さんの視点で当時の世相などを書いてあって、興味深く読みました。その舞台化されたミュージカル、木の実ナナさんが主演されていた『阿国』も映像で拝見しました。ナナさんにぴったりの役で、歌やダンスに力強さがあって、あれだけのパフォーマンスのできる女優さんはなかなかいないと思います。すごい作品を観たなという気持ちでした。そしてここから歌舞伎が発祥したのだなと、とても感動しました。
──今回は台本はどんなふうになりそうですか?
まだ台本をいただいてないので、どんなものになるかわからないのですが、たぶん阿国の芸はもちろんその人間性、なぜこの人に注目が集まるか、なぜこの人にみんなが付いていくか、演じる上でそこを表現しないといけないと思っています。そしてミュージカルですから、歌や踊り、日本舞踊はもちろん立ち廻りもありそうです。
──今回の脚本は中屋敷法仁さん、演出は田尾下哲さんという、現代演劇の先端を行く方たちです。たぶん現代感覚を取り入れた舞台になりそうですね。
キャッチコピーも「平成最後の春」とありますから、今の時代を映し込んだものになると思います。ただ、内容はやはり歌舞伎の原点についての物語なので、そこをきちん見せつつ、現代の世の中もうまく融合させていくものになるのではないでしょうか。
──それまでの田楽や能、狂言、さまざまな芸能のある中で、なぜ民衆が歌舞伎に熱狂したのか、それはやはり「阿国」の存在が大きかったのでしょうね。
私は宝塚を卒業してから、能の公演に出演したり、『蘭』では雅楽に触れさせていただいたのですが、どちらも神様の前で舞うわけです。阿国は出雲の人ですから、歌や踊りの中にそういうどこか神秘的な、カリスマ性というようなものもあったのかなと。それを表現できたらと思っているんです。日本舞踊は歌劇団でずっとお稽古させていただきましたけれど、卒業してから能や雅楽と出会って勉強することになりました。『恐怖時代』も歌舞伎の型の通り七五調の言い回しで演じました。そういう意味では、卒業して2年間のあいだに学ばせていただいた様々なジャンルが一気に詰まっていて、どれもこの作品に辿りつくための道だったのではないかと。ですから良い時期にこの『ふたり阿国』に出会えたと思っています。
──そういう巡り合わせが北翔さんは多いですね。雅楽との出会いもそうでしたね。
龍笛を習っていたら、その役がそのまま『蘭』で来たんです。ですから出会うべきときに出会うんだなと。稽古していたことを何年後かに表現する時期が来るんだなと思いました。

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ブレない阿国と
自分の弱さに振り回されるお丹

──チラシビジュアルも現代的でありながら、いかにも歌舞伎という感じでとても華やかですね。
撮影のとき、フラメンコではないですけど鳳凰のように舞う写真も撮りました。阿国の大きさとか誰にもつかまえられない高みへ飛翔するようなイメージを表現しています。時代の流れや動きに振り回されない、逆にそれを逆手にとってみんなの注目を集めていくような、そういう強い芯を持った女性ではないかと。周囲に振り回されないというところは自分にも共通するところがあると思います。
──自分の信念や表現に真っ直ぐで一途なのですね。
お客様を喜ばせたい、びっくりさせたい、その原点はブレないのが阿国なんです。
──だからこそ後世まで残ったわけですね。峯岸みなみさんが演じるもう1人の「おくに」ことお丹は、世間の流れに翻弄されてしまいます。
お丹はどこか自信がなくて不安で、自分の弱さに振り回されてしまうんですよね。女性同士として阿国への嫉妬もある。阿国は人と自分を比べない生き方をしているわけですが、お丹はつねに競ってしまう。そこがお丹の弱さなんです。
──やはり圧倒的な才能を持った人がそばにいたら、憧れと嫉妬を持ってしまう。それが普通の人間だと思います。
私が思う阿国は、相手は人じゃないんですよね。天を相手に自分は人としてどうあるべきかを考えている。そういう阿国で、お丹との差をしっかり出していきたいと思っています。
──峯岸さんとはもう会いましたか?
お会いしました。アイドルでした(笑)。いつもテレビなどで拝見している通り可愛らしくて。でもグループの1期生であるという力強さを感じましたし、芯のしっかりした方で、すごくプロ意識もある方だなと思いました。
──宝塚もそうですが、大勢の仲間を引っ張っていくのは並大抵ではないと思います。北翔さんも卒業してからも『蘭』で大きな座組を経験していますね。いかがでした?
いえ、もともとあまり引っ張るというより「みんなで行きましょう」というタイプなので(笑)。男性のいる座組でも、そこはまったく変わりないんです。「付いてこい」という性格ではないので。
──今回も明治座の座長ですが、この劇場で看板を張る気持ちはいかがですか?
明治座さんへはいつも観客として通っていたので、あの板の上に立てることは夢を見ているような気持ちです。長い伝統と歴史のある劇場ですから、自分が本当に真心で、ブレない心で立たないと、劇場に見抜かれるというか見透かされるような気がします。そうならないようにしっかり精進しないと。やはり歴代のさまざまな素晴らしい俳優さんが演じてこられたわけですから、その重みを感じると気合いが入ります。

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芸事は知れば知るほど
面白いし、ゴールがない

──共演の方々は初めての方が多そうですね。
ほとんど初めての方ですが、歌劇団の後輩もいますし、何人か共演している方もいます。市瀬秀和さんは『恐怖時代』で初めてお目にかかって、それ以来、殺陣の稽古に毎週通っているんです。卒業したら殺陣の稽古はやめようと思っていたのですが、ずっと刀を握ってます(笑)。阿国も殺陣があるそうです。
──綺麗な殺陣の出来る女優さんは少ないですから。
宝塚を卒業して私はどういう表現者になりたいのかなと考えたとき、美空ひばりさんという方は、歌はもちろんですが、和物ができて、踊りも殺陣も男装もできる。そういう女優って凄いなと思ったんです。今、ミュージカル界には沢山の女優さんがいますけれど、やはり洋物がメインですので、日本舞踊の基本とか所作とか立ち廻り、男装ができるという人はわりと限られているかなと。私はそこを追求していきたいと思いました。
──しかも大劇場で、目の肥えているお客様が多い舞台でそれが出来る人は数少ないです。それは北翔さんの大きな武器ですね。
二階席三階席まで届くパフォーマンスというのは、自分にとっても課題ですし、その課題を勉強すべき時期に、この『ふたり阿国』というのは、良い勉強の機会をいただいたなと思っています。
──ますますフィールドも広げているし、やりたいことも増えていってますね。
卒業してから習い事も増えていて(笑)、今までは長唄の三味線でしたけど、共演した三林京子さんに「あなた清元やったらいいわよ」と言っていただいて、大御所の清元美治郎先生を紹介していただいて、長唄だけでなく清元の世界も知ることができました。お能も「新作能『マリー・アントワネット』」が再演を続けていて、常にお能の舞台に立たせていただいています。そういう意味では、宝塚はゴールではなく、あくまでも基盤作りの場で、芸事の基礎をきちっと稽古させていただいたことはとても有り難かったなと思います。
──北翔さんの習い事は、芸事の源流へとどんどん遡っている気がします。
そうかもしれません。すべてが繋がっている気がしますし。芸事は知れば知るほど面白いし、ゴールがないんですよね。

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結婚で今まで以上に沢山の
お客様の心に寄り添えると

──女優北翔海莉の好奇心と探究心はまだまだ果てしないですが、2018年秋には結婚もされました。仕事もずっと続けていくのですね。
もちろんです。
──聞くところによりますとお料理も上手だそうですね。
15歳から宝塚に来て約20年間一人暮らしをしていますから(笑)。食生活は舞台に立つための健康管理として大事ですから。宝塚は1か月公演でしたから、自分が倒れるわけにいかないという環境でやってきました。みんながインフルエンザに罹っても、自分は絶対に罹るわけにはいかないというのがトップの立場なので、ある意味根性で乗りこえてきました。そういう意味で体調管理は誰にも頼ることができないので、当たり前のこととしてやってきたし、それはこれからも変わりないです。
──そういう役者としての生活と結婚とは、北翔さんの中で無理なく成立すると。
はい。それに関しては全然苦にならずにできると思いましたし、逆に結婚したことで視野が広がるという気持ちもありました。お互いに目指しているもの、志しているものが一緒で、お客様を喜ばせたい、作品を通してお客様の心を温めたいというものだったので、一緒になったら今まで以上に沢山のお客様の心に寄り添うことができるのではないかと、そういう夢が叶うのではないかと思ったんです。
──芝居という共通するものへの思いや信念が一緒というのは幸せですね。
結婚は自分の人生なのですけど、それを通してお客様のことも考えることができたので。
──ファンの方にとっても、それは嬉しいことでしょうね。
結婚の報告をしたら泣き出してしまったファンの方もいらっしゃったのですが、引退するわけではないので、これからも応援していただければと。
──一回りも二回りも大きくなった北翔海莉を見てもらいたいですね。 
そう思います。お芝居1つとっても歌でも、恋をしたり、失恋したり、親になったりと、色々な思いをすることで表現の幅も広がると思うんです。私はまだまだ人生経験が少ないので、色々な経験をして、もっともっと幅広く表現していければと思っています。
──さらに素敵な役者さんになると思います。楽しみです。「北翔海莉」と「藤山扇治郎」という2人の役者さんを好きなお客様は、この結婚を本当に祝福していると思いますし、喜んでいると思います。改めておめでとうございます。
(笑)ありがとうございます。なんか照れますね。
──最後に改めて『ふたり阿国』への意気込みをいただけますか。
憧れの明治座さんの舞台に立たせていただく喜び、それ以上に、劇場に相応しいものを観せなくてはというプレッシャーも感じています。でもこれだけ豪華な出演者の皆さんと共演させていただけるので、演出の先生はじめスタッフの方々や共演の方々に、新しい北翔海莉を作っていただけるのではないかとワクワクしております。平成最後という時期に、記念すべき公演をさせていただけるのは光栄です。そして阿国が歌舞伎の原点であったように、この舞台を観たお客様が「あ、役者になりたいな」とか、「こういう舞台を作る人間になりたい」とか、俳優だけでなく舞台というものに関わりたいと思うような、そういう舞台にしていければいいなと。私の後ろに沢山の仕事があり、沢山の人たちがいる、この仕事の素晴らしさを伝えられたらと思っています。そして、明治座さんは売店がすごく充実していて楽しいです(笑)。私も観劇の度に売店をウロウロしています。美味しい食べ物だけでなく、公演関連グッズも販売しますので、そちらも楽しみにしていてください。

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ほくしょうかいり○千葉県出身。1998年宝塚歌劇団に入団。月組、宙組、専科を経て15年に星組トップに就任。16年11月『桜華に舞え』『ロマンス!!(Romance)』で退団。17年9月のミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』で主演、女優活動をスタート。「現代能『マリー・アントワネット』〜薔薇に魅せられた王妃〜」、「藤間勘十郎文芸シリーズ其ノ参『恐怖時代』『多神教』」(主演)『蘭 〜緒方洪庵 浪華の事件帳〜』(主演)『海の上のピアニスト』(主演)など。
 
〈公演情報〉
Okuni
 
明治座3月・4月公演
ミュージカル『ふたり阿国』
原作◇皆川博子「二人阿国」より
脚本◇中屋敷法仁
演出◇田尾下 哲
出演◇北翔海莉 峯岸みなみ(AKB48)
玉城裕規 
グァンス(SUPERNOVA) 細貝圭 伊藤裕一 雅原慶 平田裕一郎
市瀬秀和 大沢健 中村誠治郎
桜一花 鳳翔大 高岡裕貴 関根慶祐(K-SUKE) 今川宇宙 カムイ
坂元健児 コング桑田 モト冬樹
●3/29〜4/15◎明治座
〈料金〉
オリジナル特典付SS席13,500円 S席10,000円 A席7,500円 B席4,800円 C席2,500円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター03-3666-6666 (10:00〜17:00)



 
【構成・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】


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