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様々なジャンルのスターたちが勢ぞろいし、4時間に渡る豪華公演を繰り広げる『歳が暮れ・るYO 明治座大合戦祭』が日本橋浜町の明治座で上演中だ(31日まで。のち2019年1月19日大阪・梅田芸術劇場メインホールでも上演)。

この公演は演劇製作会社る・ひまわりと老舗大劇場の明治座がタッグを組み、2011年から続いている“祭”シリーズと呼ばれる作品の第8弾。日本の歴史に題材を求めた芝居と、出演俳優たちのキャラ祭りでもあるオリジナルユニットショーという、3部仕立てで構成された4時間超えの舞台は、「この舞台を観ないと年が越せない!」という多くのファンを生み出し続け、年末の風物詩ともなっている。
そんな公演の平成最後となる『歳が暮れ・るYO 明治座大合戦祭』は、武田の嫡男として生まれながら、戦いを嫌い、平安な世を願い続ける武田晴信(後の信玄・佐奈宏紀)と、異形として生れついた己の境遇を嘆き、無慈悲な世を恨み続けてきた山本勘助(内藤大希)との出会いが、戦国最強と謳われた武田軍誕生につながっていく秘話を描いた『風林火山す・る』と、芝居のキャラクターと演じる本人たちが融合したオリジナルユニットが繰り広げる熱いライブ『KAI ROCK FESTIVAL』の、明治座の伝統にのっとった1幕&2幕芝居、3幕歌謡ショーの2回の休憩込みトータル4時間越えで展開されていく。

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第1部『風林火山す・る』は、3人の少年(松本岳、近藤頌利、松村優)が廃墟となった古い劇場を探検に訪れると、劇場の番人(加藤啓)が現われ、舞台上に時が止まったように佇んでいた登場人物たちが動き出す…という凝ったオープニングからスタート。謎の男(槙尾ユウスケ)が1冊の本を手に、武田信玄と山本勘助の物語を読み進めていく。

ここからは“祭”シリーズ恒例となった、歌あり踊りあり笑いあり涙ありの歴史エンターテインメントが怒涛のように繰り広げられる。基本的に装束も話し方も時代考証無視の煌びやかさ満載だから、もちろんこの時代のことを全く知らなくても十分楽しめるのだが、学校で習う程度の知識があると「おっ!」と感心するくらいに、ハチャメチャな世界のようでいて、歴史の事実はきちんと押さえている脚本のほさかようの作劇が深い。特に今回の『風林火山す・る』は、戦国最強の武田軍の将・武田晴信(信玄)と軍師・山本勘助という、頻繁に映像化、舞台化がなされてきた、日本の歴史上でも人気の時代と人物たちが描かれているだけに、そのオールスターぶりが楽しい。演出の板垣恭一が出演者たちそれぞれの武器や個性を、ケレン味たっぷりに盛り込んでいることも活きていて、30人近い出演者全員に見せ場が作られ、作品全体はもちろん、誰をお目当てに客席に座っても満足できるエンターテインメントになっているのが素晴らしい。

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そんな公演でW主演を務める1人、武田晴信の佐奈宏紀は、鮮やかな薔薇柄のケープという、この衣装が着こなせる人もそうそういないだろう、と思わせる衣装に負けない華やかさで舞台に位置している。戦乱の世に生まれながら戦いを好まないという、この作品の武田晴信像に真実味を持たせているのも見事で、晴信の語るある意味の夢物語をいつしか信じたい気持ちにさせる主演ぶりだった。

もう1人の主演者山本勘助の内藤大希は、一転生まれついての異形の者として忌み嫌われているという立場からの登場だが、その暗い設定があるだけに、自らの境遇を嘆く「ひとりきりで生まれて」や、心の内を吐露する「夢は見ない」などのソロナンバーの圧倒的な歌唱力が光り輝く。まさに劇中の空気を一瞬で変えるショーストップの趣で、非常に効果的なW主演となった。

また勢いのある若手たちに混じって、各ジャンルの主演クラスの人材が参加しているのも“祭”シリーズの醍醐味で、ミュージカル俳優として多くの舞台に出演してきた泉見洋平が今川義元に扮し、持ち前の歌唱力はもちろん、思い切り振り切った役柄を体当たりで演じているのも目を奪う。

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一方、元宝塚宙組トップスターの貴城けいが、上杉謙信を演じて、男役経験者ならではの立ち居振る舞いと、女優として輝かせてきた美しさ双方を十二分に活かした、美しき毘沙門天に説得力を与えている。更に武田信虎の加藤茶がコメディアンの軽みを巧みに織り交ぜて、作品を支えて大きなアクセントになっていた。

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彼らを中心に登場人物が動いていくのだが、武田家では冒頭から賑々しく登場する武田軍の四天王・飯富虎昌の兼崎健太郎、板垣信方の中村龍介、小山田虎満のKIMERU、甘利虎泰の滝口幸広が、それぞれの役柄の個性をきっちりと造形しているし、晴信思いの弟・信繁の永田聖一朗は甘やかさ、天然な鋭さを持つ同じく弟の信廉の田中涼星の飄々とした佇まいも後の展開に生きていく。高坂弾正の松本岳、真田幸綱の近藤頌利、内藤昌豊の松村優は、冒頭の少年役から作品世界に入ってくる流れを面白く作り、晴信の正妻・三条の方の隅田美保のしとやかであろうとしながら、こぼれ出る破天荒も笑わせる。

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今川家軍師の太源雪齋の谷戸亮太と、家臣・庵原忠胤の二瓶拓也のカリカチュアされた動きの中にある本気。上杉家軍師の宇佐美定光の小早川俊輔、直江兼続の加藤啓の歴史上の人気キャラクター揃い踏みに説得力を与える個性。諏訪家の諏訪頼重の久ヶ沢徹が醸し出す歴史ものとしての重みと、その娘諏訪姫の井深克彦の茶目っ気の対比が生む絶妙なバランス。強いインパクトを残す村上家の村上義清の木ノ本嶺浩の登場シーンと歌等、各々の活躍が舞台を盛り上げる。語り部として登場する謎の男の槙尾ユウスケと、謎の青年の杉江大志も物語の展開をフォローしつつ、自らの存在でも話を引っ張る力になった。

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更に物柔らかだが、戦国の世に暗躍している顕如の辻本祐樹が醸し出す食わせ物感が実に巧みで、側近の下間信康の大薮丘とのかなり捻じれた関係性も目を引く。大薮丘は体調不良の為28日公演を残念ながら休演した井澤巧麻(29日以降の出演については追って発表)に代わって、山本勘助の弟・光幸も二役で務めたが、とても代役とは思えない見事な演じぶりで公演を支えた。井澤の1日も早い復帰を願うと共に大薮の健闘を称えたい。

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この全員が揃っての第1部1幕ラストの大ナンバー「正しい道」の盛り上がりには、グランドミュージカルさながらの趣があり、見てのお楽しみとなる第1部2幕と、更に盛り上がること間違いなしの第2部ショー『KAI ROCK FESTIVAL』と共に、平成最後の年末を是非劇場で彼らと共に熱く過ごして欲しい舞台となっている。

【コメント】 
初日を前にW主演の佐奈宏紀と内藤大希から公演への意気込みを語るコメントが届いた。

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佐奈宏紀
柄にもなくたくさんの不安を抱えながら稽古に入ったのですが、毎日稽古をしていく中で、漠然と悩んでいたことにも先輩が的確なアドバイスをくださり、皆さんに助けて頂きひとつひとつ具体的に解消されていきました。普段は同世代の共演者が多いので、先輩がいっぱいいて、惜しみなく頼っていい、皆さんが頼らせてくれる環境がる・ひまわり作品の良いところだと思います。そして何より(W主演の)大希君がいつもニコニコと受け入れてくれる感じが本当に支えになっています。
お芝居は歴史ものなので難しいイメージを持たれるかもしれませんが、言葉も現代にも置き換えられたり、物語も身近で誰でも当てはまる内容だったりするので、メッセージもガツンと届くと思いますし、感じてほしいと思います。また、二部のユニット「TONO&KERAI」は先輩に頼らず若手だけで何とかできないかと皆で試行錯誤して作り上げましたが、稽古で出し切った感じがするので、10公演最後まで同じテンションで乗り切れるかというのも見どころかもしれないです(笑)。

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内藤大希
去年初めて参加させて頂いた“祭”シリーズですが、W主演決定の発表から約半年(8月に上演した)リーディング公演ではお客様の前でお披露目があり、昨年W主演の安西・辻本両座長からバトンを引き継ぎ、日に日に実感しています。演出の板垣さんのもと、(W主演の)佐奈と二人で自分たちができることを頑張る、二人の力を出し惜しみせず全力で稽古から臨んで本番を皆様に観に来て頂くということを念頭に稽古に励んできました。たくさんのスタッフ・共演者に支えられて最終稽古を終え、これから皆様に観て頂くのが楽しみです。

〈公演情報〉
『歳が暮れ・るYO 明治座大合戦祭』
演出◇板垣恭一
脚本◇ほさかよう
出演◇佐奈宏紀(W主演) 内藤大希(W主演)/ 辻本祐樹 / 泉見洋平 / 貴城けい / 加藤茶 ほか
●12/28〜31◎明治座
〈料金〉S席12,000円 A席5,800円
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター03-3666-6666(10時〜17時)
●2019/1/19◎梅田芸術劇場 メインホール
〈料金〉S席12,000円 A席8,000円 B席4,000円
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場06-6377-3800(10時〜18時)



【取材・文・撮影/橘涼香】






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