IMG_1207

DIAMOND☆DOGS(D☆D)のメンバーとして活躍するかたわら、優れたクリエーターとして構成・演出・振付のジャンルでも才能を発揮している森新吾が中心になって繰り広げる、ショーアクト『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girlsが銀座の博品館劇場で上演中だ(16日まで)

『ダンスカンタービレ』は、昨年5月に森新吾初の主演作品として発信したショーアクトで、19世紀末のロンドンを震撼させた「切り裂きジャック」をモチーフに、森と風花舞をはじめとした女性陣だけで紡がれた作品。そのダークでミステリアスな、感性を刺激するステージは大好評を博し、D☆D充電期間中の2018年、森はこの作品を核に「カンタービレシリーズ」と銘打った新プロジェクトを始動。11月にサイエンスホールで上演された男優だけのストーレートプレイ『アクトカンタービレscene1 〜 Smoky Dog 〜』が喝采を集めたのち、1年半ぶりの再演となる、今作品『ダンスカンタービレ2018』の幕が開いた。

IMG_0931

とは言っても『ダンスカンタービレ2018』は、昨年春の初演バージョンから更に深化を遂げ、作品の持つ物語性の骨子こそ変わらないものの、一層深い彩りと夢とうつつの狭間の迷宮を立ち上らせている。初演を観た方にも「そう来たか!」という驚きや発見があるだろうし、今回の上演で初めて作品に接する方、特に『アクトカンタービレscene1 〜 Smoky Dog 〜』から続いてこの作品の扉を開けた方には、森新吾というクリエーターの振り幅の広さが実感できるに違いない。

IMG_0541

実際、初演時はゲストだった町田慎吾が、森演じる男の良心とも、影とも、はたまた現実の姿とも見える役柄を演じることで、木野村温子と共に創り出す異空間の意図するところが明確になっていたり、そのゲストが日替わりで演じていた刑事役を、初参加の田野優花が女刑事として通して演じることで、更に大きな仕掛けが用意される等、作品の見え方がより鮮明になった部分は大きい。だがそれでいて、敢えて正解を求めようとしていない、理解するのではなく感じて欲しい、見た人の数だけ感じかたがあって良いという余白があるのもこのショーアクトの豊かさで、それが森新吾その人のものづくりに対する懐の深さを感じさせていた。

IMG_99

何より構成・演出・振付・主演を務める森の、確実に増したセンターを務める力が作品に芯を通している。それは初主演の機会だったこの作品の初演時よりも、この2018年バージョンが深みを増した最も大きな理由のひとつで、物語の中心にいることに森自身が格段に馴染んできたのを感じる。やはりライトの中で、舞台の上でこそ表現者は育っていくのだなと深い感慨を覚えた。クリエーターの森が、表現者の森に求めるものも、この後もっと深くなっていくに違いない。そう実感できる主演ぶりに拍手を贈りたい。

IMG_0986

同じく初演からの続投組では、もはや別格の感さえある風花舞の表現力が更に凄味を増していて目が離せない。謂わば物語の円の最も外側から周り続けなから、やがて核心へと迫ってくる役柄だが、持ち前の男前なダンスの切れ味と、元宝塚月組トップ娘役という出自から放つ無垢なものが、並び立って作品を底支えした力は絶大だった。

IMG_0938
IMG_0277

また、森を取り巻く女性たちの中でも大きなパートを担っている藤田奈那の表現力が格段の進歩を遂げているのも大きく、初演時に残っていた固さが完全に払拭され、しなやかに舞台に位置していたのが、役割りをより鮮やかにする効果になった長岡美紅、PSYCHE、橋本由希子もそれぞれの表現がより豊かになり、舞台上での個性が更に明確になって、持ち場を固めているのが頼もしい。

IMG_88

他方、初参加のメンバーでは、舞羽美海の宝塚雪組でトップ娘役を務めていた当時から群を抜いていた愛らしさ、可憐さがジャンルの異なるダンサーの中でひと際輝いただけでなく、退団後育んできた妖艶さや女性美が相まって何とも蠱惑的。優れたダンサーでもある一面も存分に発揮されていて、舞台をより高みへ引き上げる一翼を担っている。

IMG_0199

女性刑事役も務める田野優花は、『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』のサリー役が打ってつけだった姿を思うと、同じ女性かと見まごうほどのシャープな表現で魅了する。この人が新たに刑事役に扮したことが作中大きな意味を持つが、その展開を唐突に感じさせない存在感が際立った。伊藤佳耶芽もこの個性溢れる陣容の中で、きちんと自分自身を魅せているのが才能を感じさせた。

IMG_0459
 
そして町田慎吾が加わったことが前述したように、作品の骨格をより鮮明にしていて、元々憑依型の表現者である町田の、突き詰めた役柄の造形が強烈なインパクトを放っている。時にただ通り過ぎるだけという出番もある中にも、必然と意味を感じさせるのは流石の一言。ダンスと表現が全く浮かずに融合しているのも素晴らしい。この町田が対照にいることによって、木野村温子が誘う背徳の香りもよりくっきりと立ちあがる効果になっていて、初演時に比して一層役柄の必要性が高まり、木野村の身体表現はもちろん、怖さのある笑顔が印象的だった。

IMG_0626
IMG_1084

これら新しい組み立て方によって日替わりゲストの出番が集約されたからこそ、その日替わり感が強まっていて、「悪の華」を思わせた初日の東山義久がもたらした残像がなんとも強烈。 中塚皓平、植木豪、長澤風海が刻むアクセントも、それぞれに鋭いものがあるだろう。
 
IMG_0933
IMG_0788

総じて、クリエーターとしてはもちろん表現者としての森新吾の確かな進化が感じられる舞台になったことが嬉しく、「カンタービレシリーズ」の発展に更なる期待の高まる舞台となっている。 

IMG_0295
IMG_0385

IMG_0733
IMG_0768
IMG_0645
IMG_0771
IMG_0680
IMG_0974
IMG_1034
IMG_1273
IMG_1320
IMG_1340

〈公演情報〉
『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girls
構成・演出・振付◇森新吾  
出演◇森新吾/風花舞 舞羽美海 藤田奈那/長岡美紅 PSYCHE 伊藤佳耶芽 橋本由希子 木野村温子/田野優花  町田慎吾 
日替りゲスト◇東山義久(12日) 中塚皓平(13日) 植木豪(13日夜・15日夜・16日) 長澤風海(13日夜・14日・15日昼) 
●12/12〜16◎博品館劇場 
〈お問い合わせ〉博品館劇場 03-3571-1003



【取材・文・撮影/橘涼香】



『暗くなるまで待って』


kick shop nikkan engeki