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心躍り街中が華やぐ、クリスマスを間近に控えたホリデーシーズンをテーマに繰り広げる、宝塚歌劇花組公演スペシャルステージ『Delight Holiday』が、舞浜アンフィシアターで上演中だ(9日まで)。

スペシャルステージ『Delight Holiday』は、宝塚歌劇団のトップスターとして円熟の時を迎えている花組の明日海りおを中心に、トップ娘役仙名彩世をはじめとした18名で繰り広げられる、クリスマスシーズンにフューチャーしたコンサート。エンターテイメントの一大拠点ディズニーランド、ディズニーシーにほど近い、大型シアター・舞浜アンフィシアターでの宝塚歌劇初の公演で、アメリカ生まれの夢の聖地に、「宝塚」という日本が誇る夢の世界が降り立つ魅惑的なステージとなっている。

東京宝塚劇場とほぼ変わらないキャパシティーを持つ舞浜アンフィシアターは、駅からは少し距離こそあるものの、煌びやかな店舗の中を抜けていってこの夢のステージに到着する過程が、宝塚大劇場の花の道を歩いている時に通じる効果になりワクワク感をかきたてられる。更に劇場ロビーにはスターのメッセージ付きのクリスマスツリーや、明日海りお&仙名彩世が帽子を掲げて向かい合うフォトスポットも用意され、この季節ならではの特別感が満載。しかも客席がステージを三方からぐるりと取り囲む円形ステージ、という特徴を持ったシアターだから、座席によっては宝塚ファンにはお馴染みの「宝塚GRAPH」誌上で、長く掲載されている「Side Shot Selection」でしか見られない、ステージサイドからのスターを観られるというここにしかない醍醐味がある。

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そんな夢×無限大の中で繰り広げられるステージは、こうしたトップスターを中心としてきたコンサートステージ、近いところでは柚希礼音、龍真咲、朝夏まなとなどが展開してきたそれとは確かに異なる、どこかほんわかと柔らかい空気に包まれているのが印象的だった。

もちろんこうしたコンサートの定番とも言える客席がペンライトを持って振付にも参加する趣向や、平成最後のクリスマスシーズンに贈る平成30年を振り返るヒットソングメドレーや、明日海や仙名が華やかなトロッコに乗って客席通路を行く演出等々が、次々と繰り出されるのは変わらない。更に円形のステージを利用した多方向にグループを分けて踊られる振付など、本当に18人しか出演者がいないのだろうか?と思うような、たたみかけるダンスシーンもあれば、舞浜だからこそ抜群の効果を生むディズニーの名曲メドレー、明日海の代表的な作品からの佳曲が2パターンで展開される贅沢なコーナーと、内容はなんとも盛りだくさんだ。

でもどこかで、「行くぞ〜!ついて来い!」とでも言うべき、こうしたコンサートに常にあった疾走感とは違う空気が、このステージを包んでいる。それはギラギラではなく、確実にキラキラとしていて、ふわふわと温かな、シャボン玉に映る虹色のような美しさだ。

この空気感はなんなのだろう、と考えればすぐに思い当たる。それは明日海りおというスターが本来持っている、彼女にしかない特別の色合い、謂わば明日海色とも言える輝きに他ならない。トップスターとしての経験を重ねた明日海は、この人がスターとして注目を集めたはじめに持っていた中性的な香りや、瑞々しい王子様感を、男役の色気と艶とカリスマ性に塗り替えて成長を続けている。その日々の中で、本来の持ち味とは違うと思われていた骨太な役柄も手中に納めているし、更に役者としての突き詰めた表現にも磨きをかけてきた。

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そんな明日海が男役として獲得してきた大きさを超えるもの、素の魅力が、このコンサートという形式からこぼれ出たのには、改めて目を開かれる想いがした。役を演じる芝居とはもちろん、花組を率いる男役トップスターとしてのショー作品とも確かに異なる、「明日海りおコンサート」だからこそ、本人の個性そのものに作品が染まっていくのは、非常に興味深くまた嬉しいことだった。こんなに立派な男役に成長した明日海りおに、もう1度『Romeo & Juliette』のロミオ役か観たい!と望むのは観客のエゴに近いのかも知れない、そうどこかで戒めていた思いを、このコンサートが口にしても良いような心境にさせてくれた。明日海りおにはやっぱりロミオが似合う!王子様が似合う!、再演自体が叶う、叶わないではなくて、そんな夢をみることは決して大トップに成長した明日海に対して失礼なことではない。なぜなら明日海はこんなに柔らかく、ふんわりした、ほのぼのとしたスターなのだから。そう思えたのは『Delight Holiday』がもたらしてくれた、何よりのクリスマスプレゼントだった。稲葉太地の構成が奇をてらわない、極めてオーソドックスなコンサート形式だったことも、この効果につながったひとつだと思うと、もう少しだけトークを絞って、若手中心のシーンでつないでも良かったのではないかな?との気持ちも、ギフトボックスの片隅にしまっておこうという気にもなる。

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そんな中で、来年4月での退団を発表している仙名彩世の、清々しさがやはりひと際目を引く。明日海との数々のデュエットも魅せるし、ディズニーコーナー『アナと雪の女王』の「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」の熱唱は圧巻。大舞台を1人で支え切る実力派が、この地位を得たことを改めて嬉しく感じた。男役をリードする鳳月杏のシャープな持ち味と、抜群のプロポーションはこうした舞台でいや増しに際立つし、優波慧、聖乃あすかも力量を発揮。城妃美伶のヒロイン感はやはり貴重だし、芽吹幸奈の歌唱力も活かされた。

何より前述したように、本当に18人なのか?と見まごうほどに、花組選抜メンバーひとりひとりがステージの空間を埋めた力が大きく、平成最後のホリデーシーズンを明日海色に染めた、記憶に残るステージとなっている。

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〈公演情報〉
宝塚歌劇花組公演
スペシャルステージ『Delight Holiday』
作・演出◇稲葉太地
出演◇明日海りお、仙名彩世 ほか花組
●11/30〜12/9◎舞浜アンフィシアター
〈料金〉 8,800円 
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォシメーションセンター[東京宝塚劇場]0570-00-5100
公式ホームページ http://kageki.hankyu.co.jp/



【取材・文・撮影/橘涼香】



『暗くなるまで待って』


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