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先日掲載のインタビューで2つのカンタービレを語ってくれた森新吾。その1つ、森新吾presents『アクトカンタービレscene1〜 Smoky Dog 〜』が、九段のサイエンスホールで開幕した(25日まで)。 
※インタビューはこちらhttp://takarazuka-j.blog.jp/archives/1900538.html 
 
この舞台は、DIAMOND☆DOGS(D☆D)のメンバーとして活躍するかたわら、優れたクリエーターとして構成・演出・振付のジャンルでも才能を発揮している森新吾が新たなステージに挑む意欲作。昨年5月に森自身の主演作品として発信したショーアクト『ダンスカンタービレ』大成功を受けて、「カンタービレ=歌うように」と名付けられたシリーズとして、新たに森がストレートプレイの芝居に取り組んだ。脚本・演出に米山和仁(劇団ホチキス)を迎え、町田慎吾、水谷あつし、入山学、小寺利光、神永圭佑、宇佐見輝(劇団スタジオライフ)、若松渓太という、森を含めた8人の男優陣だけで演じられる、粋なワンシチュエーション作品となっている。

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【STORY】
とある波止場に建つ立ち入り禁止の第三倉庫。タバコをふかしながら1人の男(町田慎吾)が現われる。男は裏社会で「死神」と恐れられる敏腕の殺し屋で、今日の彼のターゲットは「同業者」だ。この倉庫はその同業者たちのアジトであり、お互いをタバコの銘柄で呼び合う彼らの中に、新入りとして潜入し合図が出たところでターゲットを抹消する、というのが依頼内容だった。そんな謎だらけの依頼に男が応えたのは「同業者」という言葉に強く惹かれたからだった。だが「セブンスター」と名乗った男の前に次々に現れたのは、如何にも中間管理職らしい気遣いでいっぱいの「ホープ」(森新吾)、彼を補佐しているらしい「ラッキーストライク」(小寺利光)、物腰の柔らかい「クール」(宇佐見輝)、アメリカ帰りの「マルボロ」(神永圭佑)、まだ年若い「わかば」(若松渓太)、そして強面だがノリの良い「ピース」(水谷あつし)という、とても同業者とは思えない面々。混乱する「セブンスター」は、ケーシー峯村(入山学)の深夜ラジオ番組『真夜中の死に物狂い』が流れる倉庫の中で、なんとか彼らの素性を知ろうとするが……。

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下手高みに倉庫の入り口。デスクにソファ、そしてダンボール箱が積まれた一室という、場面が動かないワンシチュエーションの中で物語は展開するのだが、こうした設定の作品としては目を瞠るほど、作品の自由度が高い。それは、1人部屋に流れるラジオ番組のDJ、異次元の存在である入山学が上手前に位置しているばかりでなく、この部屋に集まった7人の男たちが、それぞれのある「過去」を語るという流れで、時や場所が無理なく飛翔していく様が作品に広がりを与えていく効果が大きい。しかもタイトルといい、タバコの銘柄の役名といい、更にひとつ、ひとつのエピソードや設定が、クライマックスに向かって綺麗に回収されていくカタルシスは感動的で、8人の出演者全員の個性を役柄に活かし、笑って、笑って、でも最後に長いものに巻かれない男たちの信念が浮かび上がる、米山和仁の筆が冴え渡る流れに脱帽だった。

そんな作品で躍動する出演者たちは、何を書いてもネタバレになりそうで難しいのだが、とにかく全員がこの作品になくてはならない人材として、舞台に生きているのが素晴らしい。
 
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まず、そもそもストレートプレイに熱い想いを抱いてこの『アクトカンタービレ』シリーズを立ち上げた森新吾の、芝居への情熱がストレートに伝わってくる。D☆Dの作品群の中では比較的アクの強い役柄を演じることが多かったが、クリエーターとしての鋭い感性や知性が、穏やかな人となりに現れる素の魅力が役柄に生きていて、新たな境地を感じさせてくれている。踊れる人ならではの身体能力の高さが、コミカルな動きにも活かされ目にも楽しい。

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その森が新たなプロジェクトの盟友としてタッグを組んだ町田慎吾は、冒頭の登場から作品の世界観や設定を客席に語っていく語り部の役柄も併せて、物語を牽引していく。元々憑依型の演技者で、華やかな容姿からは想像できない表現も見せる人だが、今回の役柄はその変身の妙だけでなく、時に二枚目、時にものすごく三枚目と振り幅も豊かで、森が託した作品の芯となる男を十二分に演じている。客席に語り掛けるモノローグにも実は…が隠されているので、ここにも是非注目して欲しい。

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また、D☆Dのメンバーとして、森と共に15年間共に走ってきた小寺利光が、D☆D卒業後「役者」として作品に参加し、端正な良い男という小寺本人の資質が役柄に存分に活きていることもあって、森が役者小寺を必要とした理由がよくわかる。森との間にある仲間感にも当然ながら突出したものがあり、作品の味わいを深めた。
 
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カリカチュアされた役柄のカラーが、端正な二枚目の外見とのギャップを生んで、どこにいても目が離せない神永圭佑。立ち居振る舞いの柔らかさと、所属する劇団StudioLifeでの女役経験も巧みに活かされた宇佐見輝。溌剌とした明るさはもちろん、持ち前の歌唱力もまさかの形で披露してくれる若松渓太。と若手メンバーも充実していて、それぞれにとってこの作品が新境地になっているだろうことが嬉しい。

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そんな若手を包み込むように、舞台にどっしりとした重厚感を与えつつ、軽やかさもある水谷あつしの演技力が舞台に奥深さを加えたし、1人全く違う形で物語世界に関わっていく入山学の軽妙さの中に潜む凄味が、二転三転していくドラマのどんでん返しに次ぐどんでん返しを担って、二人の存在が作品を底支えした力は計り知れない。森が熱い信頼を寄せたベテラン勢が、この新たなプロジェクトを成功に導く立役者となったのがなんとも頼もしく、早くもシリーズ化への夢が広がった。

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何よりストレートプレイでありつつ、芝居に必要な要素としてアクセントのように入る極く短いダンス的な動きを含めた、全体の絶妙なテンポ感が「森新吾presents」の名に相応しいカラーを打ち出して絶妙。やはりD☆Dを卒業したTAKAが音楽を担い、森が作りたい世界を瞬時に理解できるクリエーターとして作品に寄与した力も大きく、おそらく物語の結末を知ってからもう一度観ると、更に作品の心地よさを感じられるだろう爽快な舞台になっている。

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〈公演情報〉
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森新吾presents
『アクトカンタービレ scene1 〜 Smoky Dog 〜』
総合演出◇森新吾
脚本・演出◇米山和仁(劇団ホチキス) 
出演◇森新吾 町田慎吾/小寺利光 神永圭佑 宇佐見輝(劇団スタジオライフ) 若松渓太/水谷あつし 入山学
●11/22〜25◎九段 サイエンスホール 
〈料金〉 7,500 円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉インフォメーションダイヤル 03-5793-8878(平日13時〜18時)
〈D☆D HP〉http://diamonddog-s.com




【取材・文・撮影/橘涼香】



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