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イングリッド・バーグマンとウォルター・マッソー、ゴールディ・ホーンという、往年の名優たちが共演した映画版でも知られる傑作コメディ『カクタス・フラワー』が、水夏希と吉田栄作の初共演で、11月10日にDDD青山クロスシアターで開幕した。(12月8日まで。のち大阪、静岡でも公演)
 
舞台は NY。中年の歯科医ジュリアンは、家庭を大切にする誠実な男である事を証明するため、既婚者を装い、若い娘トニと交際している。ある日彼女から、「奥さんに会いたい」と迫られたジュリアン。堅物の独身看護師ステファニーを、急遽妻に仕立てるが……。
 
フランスの舞台劇『Fleur de cactus』を原作に、『ガイズ&ドールズ』や『ハウ・トゥー・サクシード〜努力しないで出世する方法〜』の脚本で高く評価されたエイブ・バロウズがブロードウェイで舞台化、大ヒットとなった作品だ。
今回の翻訳上演は、ミュージカルからプレイまで幅広く手がける板垣恭一が演出を務め、キャストには水夏希、吉田栄作、増田有華、松本幸大(宇宙 Six/ジャニーズ Jr.)、松尾伴内、青木さやかと、豪華キャスト6名が顔を揃えている。
どこか懐かしい正統派コメディでありながら、人間の愚かさ、愛おしさを見事に描き、古さを感じさせないこの作品について、堅物の独身看護師ステファニーを演じる水夏希と、歯科医ジュリアンを演じる吉田栄作にインタビュー。到着したばかりの舞台写真とともにご紹介する。

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クールな二枚目の中から
出てくるコメディセンス

──映画でも有名な作品ですが、お二人はどんな形で知りましたか?
吉田 僕は今回のお話をいただいてから初めてDVDを拝見しました。映画の公開が1969年で、ちょうど僕が生まれた年で。
水 えーっ!そうなんですね!
吉田 50年前ですから、やはり多少の古さは感じますが、イングリッド・バーグマンがそれまでと違う面をみせた作品で、ゴールディ・ホーンはそこからスターになっていったわけで、色々な意味でエポックな作品だったのだなと思いました。
 私も今回のお話があってからDVDを拝見して、王道のコメディというか、話の筋がよく出来ているなと。色々なことが一度ごちゃごちゃになるのですが、最後にうまく、それも思いがけない方向でまとまるのが見事で、物語をうまく着地させているなと思いました。
──正統派コメディを演じる吉田栄作さんは珍しい気がしますが。
吉田 そうですね。ただ作品の一部がコメディタッチになるというのは、例えば『ローマの休日』などで経験しているので。
 栄作さん素晴らしいです! コメディタッチの動きとか引き出しがすごく多くて、このクールな二枚目の中から出てくる!出てくる!(笑)。ご覧になる方はギャップ萌えすると思います。
吉田 いやいや(笑)。
──ジュリアンは歯科医で、なぜか既婚者と偽っているのですね。
吉田 これまではちょっと結婚はしたくないということで嘘をついていたわけですが、トニという若い女性を本気で好きになってプロポーズするんです。でも妻帯者だと言っていたばかりに、奥さんと会いたいと言われて、これまで頼りにしてきた看護師のステファニーに助けてもらいます。ステファニーは優秀で献身的でなんでもまかせられる女性で、それまでもきっと色々助けてもらってきたと思うんですが、ジュリアンはそれを当たり前のように思っていた。でもこの騒ぎをきっかけに、いつも近くで寄り添ってくれていた彼女の存在に気づくことになるんです。
──そのステファニー役ですが、水さんもあまり演じていない役どころでは?
 そうですね。でもステファニーのちょっとコメディな部分は、非常に近いです。私は人生がコメディで(笑)、日常的にかなりボケが入るので、それを知っているファンの人たちから見れば、「あるある!」みたいな感じだと思います(笑)。
──ではアプローチしやすいですね。
 でも自分に近いって一番難しいですからね(笑)。いつも通りってなんだろう?と、ごくナチュラルにやっていることを分析して演じるわけで、自覚しないでやっていることを客観的に捉え直すという作業が必要なので。
吉田 そう。芝居化するということが大事なんですよね。普通にやればいいと言いますけど、それが一番難しいんです。

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スポーツに例えて
わかりやすい板垣演出

──吉田さんは、ジュリアンという役へのアプローチはいかがですか?
吉田 この作品は、全部のキャラクターがそれぞれ背負ってる背景がけっこうリアルで、そこをきちんと持って演じないと嘘くさくなるんです。演出の板垣(恭一)さんもそれをとても大事にされていて、例えば松本(幸大)くんのイゴールなら売れない作家で、松尾(伴内)さんのハーヴェイはジュリアンと友人関係だとか、そういう要素を体の中にちゃんと持って芝居をしないといけない。ですからジュリアンも、まずはそういう背景を体に入れていくことが大事だと思っています。コメディという部分はその後のことなので。
──そのコメディ部分ですが、演じるときの一番大事なことは?
吉田 まずは台詞の掛け合いが大事ですね。それも絶妙なタイミングでやらないといけない。
 この作品の登場人物たちは、相手には嘘をついているのがわからないと思って喋っているのですが、お客様にはそれがわかっている。そこを笑っていただくわけです。その見せ方がやはり難しいですね。
吉田 ジュリアンはそれが一番多いのでたいへんです(笑)。
──キャストは6人と少人数で、若手では松本さんと増田有華さんが参加していますね。
吉田 2人ともすごく頑張っています。大人のコメディなので難しいと思うのですが、そこを必死で付いてきてますね。
 本当に真面目で一生懸命で、稽古が終わったあとも板垣さんがワークショップ的なことをされていたり、芝居の基礎を教えてもらっているなと。
吉田 板垣さんの愛をものすごく感じますね。
──青木さやかさんと松尾伴内さんは、コメディには強い方たちです。
 お二人とも楽しくて、出ていらっしゃるシーンをいつも笑いながら拝見しています。私も絡む場面があるのですが、毎回変えてこられるのでリアルに笑ってしまって(笑)。ステファニーとしてはイラッとしなくてはいけない場面なのに、困ったなと(笑)。
──笑いのシーンは、受ける難しさもありそうですね。
 でも受け身すぎると会話が成立しないので。飛んでくることをにしっかり反応しないといけないかなぁと。
吉田 この台詞をどう受けてどう返すかという、言葉のキャッチボールをちゃんとするのがストレートプレイの基本ですからね。 
 私は今回が初のストレートプレイなのですが、会話の1つ1つへ細かく丁寧に反応することが大事だなと、そこをちゃんとやらないとストーリーが流れていってしまうというのがよくわかりました。
──ストレートプレイへの初挑戦で、またフィールドを広げていくことになりますね。
 というより、これまでもミュージカルや朗読で演じてきたお芝居の世界を、さらに掘り下げていってる感じがします。今まではあまり意識せずに演じていたものを、丁寧に細かく自覚しながらやっている感じです。
──宝塚を退団して9年ですね。退団直後だったらこのステファニー役は難しかったですか?
 全然できなかったと思います。今も全然出来てないんですけど(笑)。台詞を覚えて、立ち位置を覚えることは簡単なんです。ここで振り向いてとか。でもそれではまったく面白くないんです。そんな記号的なことをやってもただ説明しているだけでしかなくて。板垣さんがいつもおっしゃっているのは、台詞じゃないところで何を感じさせるかということで、そこが一番難しいところなんですが。でもこれを乗り超えたら何か1つ掴めるのだろうなと思っています。
──板垣さんはロジカルに演出をつける方だそうですね。 
吉田 よくスポーツに例えてくださるんですが、僕はバスケットボールをやっていましたから、とてもわかりやすいですね。フォーメーションを大事にするとか、出来ないやつがいたら出来るまで付き合うとか、そういう意味では映像より舞台のほうがスポーツに近いですから。 
 そう思います。とにかくすごく丁寧に演出してくださるんです。それだけコメディというのは難しいのだろうなと思います。

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正直に生きたら良いことあるよ!
というハッピーな物語

──お二人は初共演ですが、稽古の中で感じたお互いについては?
吉田 仕事の話で言えば、この公演でストレートプレイに初めて取り組んでいらっしゃる。そしてこの方向もやっていきたいという思いがあることで、すごく真摯に、それは皆さんそうなんですが、一生懸命に取り組んでいらっしゃる。その姿がとても愛おしいですね。この作品は相手役に対してそういうふうに思う気持ちが大事なのですが、そう思わせてくれます。一緒に良い作品にしていきたいし、この作品がまた次に繋がっていくことがお互いに一番いいことなので。
 栄作さんはとにかくかっこいいです! 本当にそれ以外の言葉が見つからないんですけど。でも先日親睦会があって、お酒を召し上がられて、意外な面も見られて(笑)、それも含めて素敵だなと。なんといっても誰もが憧れる方で、その方の相手役でいつも側にいられる、それはやっぱり楽しいし、嬉しいです(笑)。とにかくこの作品を引っ張っていってくださる存在で、この作品の中で自由に存在していらっしゃる。一緒に出ている場面はもちろん、他のかたとの場面でも、「なるほどなあ」と思いながら拝見していて、コメディの勉強もお芝居そのものも学ぶことばかりです。
──吉田さんは、明るい役も陰のある役も、二枚目もコメディも出来て、作品の幅も広いですね。
 だからすごく安心なんです。栄作さんに寄り添っていれば間違いないという安心感があって、1人でなんとかしなきゃという感覚がまったくないんです。
吉田 そういうふうに思っていただけるのが一番嬉しいですね。共演の方に安心してやっていただけるということが、僕のやるべき仕事だと思いますから。
──舞台も数多く出ていらっしゃいますが、映像の仕事にフィードバックするものは?
吉田 舞台はやり直しがきかないということで、すごく芝居の筋肉が鍛えられるんです。僕は映像から出てきて、今も基本では映像の人間だと思っていますが、そこに帰ったときに、舞台で学んだことが大きく反映されているのを実感しますから。
 舞台での経験が具体的に役に立つということですか?
吉田 そう。例えば打てなかった球が打てるようになるとか、ピッチャーだったら球種が増えていくとか、登山で言えば見たことのない景色を見られたとか。新しい役柄や台本に出会ったとき、解釈や表現の仕方が広がるのを自分でも感じるので、やはり舞台を続けることは、僕にとって大事だなと思っています。
──そんなお二人が演じる『カクタス・フラワー』について、改めてメッセージをいただければ。
 お客様に絶対にクスクス笑っていただける作品です。でも笑いだけでなく、観ている方の人生で共感できるところも多いと思いますし、最後は、正直に生きたら良いことあるよ!みたいな、背中を押してもらえるようなハッピーなお話です。
吉田 観にきてくださるお客様も、それぞれ色々な人生を抱えていらっしゃって、その大事な時間を劇場に来ていただくわけですから、とにかく楽しんで笑っていただいて、最後はほっこりした気持ちで帰っていただけたら。東京公演だけでも37回ありますから、毎日どんどん深まっていくと思います。その成長とか進化もぜひ観ていただければ嬉しいですね。

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■プロフィール
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みずなつき○千葉県出身。1993年宝塚歌劇団入団、2007年雪組男役トップスターに就任。2010年退団後は、舞台を中心に活動中。主な出演舞台は、『屋根の上のヴァイオリン弾き』、『新版 義経千本桜』、ブロードウェイミュージカル『シカゴ』宝塚 OG バージョン、
ミュージカル『アルジャーノンに花束を』、リーディング『パンク・シャンソン〜エディット・ピアフの生涯〜』、ミュージカル『キス・ミー・ケイト』、『ラストダンスーブエノスアイレスで。聖女と呼ばれた悪女 エビータの物語』、DRAMATIC SUPER DANCE THEATER FLAMENCO 『マクベス〜眠りを殺した男〜』、夢幻朗読劇『一月物語』など。

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よしだえいさく○神奈川県出身。1988年、東映映画『ガラスの中の少女』でスクリーンデビュー。以降、TV ドラマ『もう誰も愛さない』では、ジェットコースタードラマとして話題に。また音楽活動でも、シングル 17 枚、アルバム 8 枚をリリース。毎年夏に音楽ライブも展開、2009  年にはメジャー音楽活動も再開した。最近の出演作は、舞台『私はだれでしょう』、『これはあなたのもの1943−ウクライナ』、『ローマの休日』、映画『グッバイエレジー』、『花戦さ』『響 -HIBIKI-』、ドラマはNHK 土曜ドラマ『忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜』、TBS『LEADERS供戮覆鼻 

【舞台フォトレビュー】 
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〈公演情報〉
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シーエイティプロデュース
『カクタス・フラワー』
作◇エイブ・バロウズ
上演台本・演出◇板垣恭一 
音楽◇和田俊輔
出演◇水夏希・吉田栄作/増田有華・松本幸大(宇宙Six/ジャニーズJr.)
/松尾伴内・青木さやか
●11/10〜12/8◎DDD青山クロスシアター
●12/11◎サンケイホールブリーゼ
●12/13◎静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール
〈料金〉8,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉atlas 03-6279-0545(平日12:00〜18:00)  


 

【構成・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃 舞台写真提供/シーエイティープロデュース】



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