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日本とアルゼンチン国交樹立120年を記念して、ブエノスアイレスから日本に伝来し愛されたタンゴの名曲で綴るコンサート『Todos del Tango Verano 2018』が、8月24日、25日、日本青年館ホールで開催される。
 
ブエノスアイレスで生まれ、欧州に渡り花の都パリで爛熟したタンゴ。そのタンゴが世界の裏側から日本に伝来して100年余り、日本は世界でも屈指のタンゴを愛する国と言われてきた。その日本で昨年、アルゼンチンとの外交樹立120年のプレ企画として、本格的なフルオルケスタの演奏と、歌と、ダンスで、アルゼンチンの著作権協会の後援も受け、タンゴが生まれてから現在までの歴史を振り返るという内容のコンサート『Todos del Tango〜タンゴのすべて』が開催され、大きな反響を呼んだことは記憶に新しい。

その豪華ステージがメモリアルイヤーの本番を迎えた今年、日亜外交樹立120周年記念特別企画『Todos del Tango Verano 2018』として開催される。もちろん今年もアルゼンチンタンゴのフルオルケスタの演奏という豪華で貴重なステージに、宝塚OGを中心に俳優から本場のダンサーまで華やかな顔ぶれが集結。演奏は平田耕治とグランタンゴオルケスタに加えて、アルゼンチンでカリスマ的人気を博し、YouTube再生回数も桁外れのバンドネオン奏者フェデリコ・ペレイロが特別来日して参加するという、まさに「タンゴ二都物語」に相応しいビッグイベントとなる。

そんなステージに、昨年に引き続いて立つのが姿月あさとと水夏希。今年20周年を迎えた宝塚歌劇宙組の初代トップスターの姿月と、雪組のトップスターだった水は、実は若手スター時代に月組で共に過ごし、姿月が本公演で演じた役柄を水が新人公演で演じたという縁もある間柄。宝塚OGを中心としたイベントで同じ舞台に立つ機会こそ多いものの、意外にもこうしてじっくり対談するのは極めて珍しいという2人が、タンゴの魅力や新たなステージへの意気込み、また互いの魅力などを語り合ってくれた。

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ここにしかない貴重で
贅沢なタンゴ尽くしのステージ

──まず前回公演に出演された時の思い出などからお聞きしたいのですが。
姿月 なかなか共演者の方々の場面を拝見する時間がなかったのが残念なくらい、ダンスもふんだんに入った他では観られない贅沢で素敵なコンサートで、ゆっくり客席で観たい!という思いが強くありました。
 皆さんとお会いするのは当日だけでしたからね。
姿月 そうだったね。
 それぞれ1人ずつの稽古で、集まっての舞台稽古もなかったので、出演者全員の前で歌ったのは当日だけだったんです。ですから大御所の歌手の方達も「緊張した〜!」とおっしゃっていたのがすごく印象的でした。
姿月 ダンスはいつから稽古していたの?
 ダンスはもちろんそんなに簡単にはできませんから、何ヶ月も前から稽古しましたが、それも各々でだったので。
──プロならばこそ!というステージだったのですね。そんな中でタンゴの魅力をどう感じましたか?
姿月 バンドネオンが入ることがやっぱり大きくて、耳で聴くイメージが全然違いますし、タンゴってシャンソンとは真逆の色香を感じるジャンルなんだなと感じました。
 私は前回歌わせて頂いた曲がミュージカル『エビータ』の「DON'T CRY FOR ME ARGENTINA」だったので、純粋にタンゴの曲というのはダンスをさせて頂いたパートだったのですが、リズムの揺れ、伸び縮みがとても独特で、テンポも演奏者によっても変わるというのをすごく感じました。それこそ一期一会で毎回変わるのがタンゴの醍醐味でもありますから、フルオルケスタの演奏によって新たな感覚があったのが、とても贅沢だなと思いました。
──水さんはこのステージ以前にも本格的なタンゴのステージに取り組んでいらしっゃいましたが、その時ともまた違う感触が?
 やっぱり緊張感がより大きかったです。3回だけのステージでしたから。
姿月 誰と誰が組んで踊るのかというのは、どうやって決まったの?
 私は以前出演させていただいたタンゴ公演の時にも組ませていただいていたクリスティアン・ロペスさんが振付や監修にも入られていて、また一緒に踊らせていただけたので、すごくありがたかったです。
姿月 やっぱり相性とかもある?
 そうですね。しかも他の人たちはこの公演で初めて組む方と踊ったので大変だったと思いますが、皆すごかったですね。
──本当に床スレスレでの回転技やリフトなど、見ていてもドキドキするようなダンスでした。
姿月 私、タンゴは女性側で踊ったことがないので(笑)、男性側の感覚なんだけど、男性側が一方的にリードするというのも違うよね。お互いの駆け引きというか、力の張り合いみたいなところもあって、それは歌にも通じるんだけど。女性側というのはどう?
 身を委ねていかないといけないんですが、自分でも立っていないといけないんです。そのバランスが難しいですね。「そんなに赤ちゃんみたいにしがみつかないで!」とよく言われます(笑)。
姿月 私たちバレエをやっているから足が外向きに開くじゃない?でもタンゴは真っ直ぐでないと、お互いの足が引っかかってしまうのよね。
 それが本当に難しいんです!
姿月 ただそれだけに上手くいった時は気持ち良いよね。「おぉ!」と思う。
 そうなんです!そういう意味でも、アルゼンチンの本場のダンサーの方と組んだダンスが歌と共に入ってくるという公演は、とても希少なのでゴージャスな公演だったと思います。

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歌い込むほどに歌の真実が
深まるタンゴの名曲

──そんな公演が更にパワーアップして、いよいよ日本とアルゼンチンとの外交樹立120年のメモリアルイヤーに開催される訳ですが、楽しみにしていることや、歌う楽曲を教えていただけますか?
姿月 今年の特色はアルゼンチンで絶大な人気を誇っているバンドネオン奏者のフェデリコ・ペレイロさんが来日してくださることで、まずフェデリコさんと共演できるというのが本当に楽しみです。その中で私は「ラ・クンパルシータ」と「ウノ(ただひとつの)」と「時計」を歌います。

 タンゴ Federicoフェデリコ・ペレイロ
 
──今、取り組んでいていかがですか?
姿月 「ウノ」は去年このステージの為に新たに歌詞を書いていただいて、宝塚在団中にも歌った曲だったのですが、歌詞が全く違って、しかもなかなか出来あがらないばかりか、5回くらい変わって(笑)。歌い込むのが大変で良い意味で難しかったのですが、そこまで練って練って考えていただいた歌詞だけあって、音にもきちんと乗っていますし、だんだん自分の持ち歌のようになっていけたらいいなと思っている曲です。「時計」は自分のアルバムの1曲目に入れさせていただいていて、やっぱりこういうバンド編成で歌わせていただけるのが嬉しいです。また「ラ・クンパルシータ」は今の若い方々はあまり聴く機会がない曲かなと思うので。
──イメージとしてはタンゴの一番有名な曲という気がしますが。
姿月 菅原洋一さんがお歌いになっていたのを聴けたのは、私が最後の世代かな?というくらいだと思います。今お歌いになる若い歌手の方がとても少ないのが現状なので、こういう名曲は誰かが何かの機会に歌っていって、残していかなければならないと思うので、心して歌いたいです。「失われし小鳥たち」も大好きですが、これはどなたが歌うのかな?
 私です!
姿月 本当に?私が歌いたいと言ったら「もう決まっています」って言われたの!(笑)。ずいぶん前から歌っている曲なのよ。
 そうなんですか!?じゃあ私が先に選んでしまったのですね!すみません!
姿月 ううん、楽しみ(笑)。「夜のタンゴ」が安奈淳さんで、「ばらのタンゴ」が初風諄さんなんですって。
 「ばらのタンゴ」ってあの『ベルサイユのばら』の「ばらタン」ですか?(前奏を歌う)
姿月 そうそう。歌詞が入るのもまた新鮮。
──宝塚ファンの方々だと、大階段が思い浮かぶ曲ですね。そうしますと水さんは「失われた小鳥たち」と?
 昨年と同じ『エビータ』の「DON'T CRY FOR ME ARGENTINA」を歌います。私はズンコさん(姿月)のように持ち歌になっていると言えるような曲はないのですが、その中でもこの2曲は何回か歌わせていただく機会があったので。シャンソンにも感じることですが、タンゴってその時の自分によって歌が変わっていくんですね。回を重ねる毎に歌の中の真実が深まっていくので、自分でも楽しみにしています。『エビータ』の来日公演も来ているところなので、観劇もしますし、また刺激を受けて取り組みたいです。
──水さんはエバ・ペロンをご自身でも演じていて、ご縁がありますからね。
 そうですね。自分で更にその縁をつなげていきたいと思います。
姿月 アルゼンチンに行ったことはあるのよね?
 遊びに行ったことはあります。
姿月 やっぱり皆が街中で踊っていたりするの?タンゴは誰でも踊れるものなの?
 私が行った時はちょうどフェスティバルをやっていて、会場に踊れるスペースがあって、ものすごく小さいお子さんがおばあちゃんに教わっていたり、そういう光景はごく普通にありましたね。
──それだけ土地に根付いているということですね。そんなタンゴの表現を色々なかたちで経験を積まれている中で、楽しさ、難しさなどは?
姿月 原語は喋れない訳ですから、日本語が原曲に乗った時に、如何に音楽を崩さずに歌うかはやはり苦労する点です。日本語は子音にアクセントがないので丸くなってしまうので、タンゴのとがったリズムを出すのが難しいんです。
 英語ならなんとなくまだ意味もわかるんですけど。
姿月 そうそう、スペイン語だとまるでわからないからね!
 原語だとこの音まで言葉がつながっているけれども、日本語歌詞だとその前の音で言葉が終わっていたりということもあるので、それは原語を見ながら、また聞きながら、歌い込んでいかないといけないですね。
──日本語にすると意味が原語ほど入らないということもあると思うのですが、やはり聴いていてストレートに歌の心が伝わるのは日本語歌詞ですから。
 そうですよね!それはやっぱり大きいと思います。
姿月 今回も皆さん日本語で歌われることになっていますので、訳詞の先生が如何に原曲を活かすかに腐心してくださっているそうですから、それも楽しみですね。

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カラーの違うお互いの魅力に
刺激をうけて

──お2人は宝塚の若手時代に共に月組にいらして、退団後もこうしたステージでの共演経験も豊富ですが、改めてお互いの魅力をどう感じているか教えてください。
姿月 タンゴダンスの舞台や他の舞台も観に行かせていただいているのですが、すごく大人の女性だったかと思うと、時にはものすごく可愛くてびっくりしちゃうほどです。タンゴでは可愛さも大人っぽさも共に生かせると思うし、特にタンゴダンスはずっと続けてきている人なので、今回どんな風に踊るのか、観るのが楽しみです。
 私は新人公演で3作品ズンコさんの役をやらせていただいたのですが、新人公演に出る側から見ると本役の方というのはもう雲の上の方で。退団して初めて共演させていただいた時でさえも「あ!本役の方だ!」と思ったくらいです(笑)。ですから打ち解けてお話しさせていただくまでにはちょっと時間がかかりましたが、『CHICAGO』もありましたし、同じ舞台に数多く出させていただいている中で、今は親しくお話しさせていただけています。
姿月 でも舞台で絡んだことがほとんどないのよね。『CHICAGO』も本当に一瞬だったし。
 そうなんです!一言交わしたかどうかというくらいで(笑)。
姿月 こういう取材のお仕事も2人でというのは全くなかったし、『「エリザベート」ガラコンサート』も2人共トート役で出演日が別々だったし、一緒に唄ったこともなかったから。今回こうして2人で話すというのはすごく珍しい機会よね。
──製作発表会見や、囲み会見などではよくご一緒にいらっしゃるイメージがあるのですが。
姿月 そう、それは必ず一緒!
 (湖月)わたるさんも一緒のことが多いですよね!
姿月 そうそう!(笑)
 そんな私がズンコさんに感じるのは、とにかく耳が繊細だということです。私には絶対に聞こえていない音を聞いていらっしゃるんだろうなと、いつも感じます。サウンドチェックにいらしても「ここをこうしたい」ととても細かくご自分の音創りをされているので、ズンコさんの耳を1日お借りしたい!と。そしてご自分の歌われる歌も、常により深くより高みを目指されていて、如何に歌を大切にしていらっしゃるかがヒシヒシと伝わるので、ズンコさんを見ていると「私頑張れ!」といつも思います。
──刺激になる存在なのですね。
 まさにそうです。
姿月 それは私もそうだよ。
──では是非何かの機会でデュエットなども聴かせていただけたら。
 「ピッチが違うよ〜」と言われるような気がします!(笑)
姿月 そんな(笑)。本当に何かそういう機会があったらいいですね。お互い全然カラーも違うから面白いと思う。
 本当にそうできたら嬉しいです!
──そんな夢も馳せつつ、まずこの大注目の『Todos del Tango Verano 2018』への意気込みと、楽しみにしている方達にメッセージをお願いします。
姿月 色々なコンサートがありますが、本当にここでしか観られないショーのようなコンサートなので、新しいタンゴの世界に、新しい息吹を吹き込むことができたらいいなと思っています。出演者もとても豪華で、中原丈雄さんなど皆様にはテレビドラマの俳優さんとして親しまれている方だと思いますが、シャンソンにもタンゴにもとても造詣が深い方だそうで、今回歌ってくださるのを私も楽しみにしています。初風さん、安奈さん、剣幸さんはじめ宝塚OGの方達もたくさん出演しますので、どうぞ皆様楽しみにしていてください。
 本格的なアルゼンチンタンゴではなかったにしても、宝塚時代にもタンゴがショーに入っていることはよくありましたから、そういう意味でもタンゴとは長い付き合いという印象があります。その中でプロのバンドネオン奏者の方、アルゼンチンのタンゴダンサーの方、そして歌手の方達という贅沢なコンサートなので、私自身も出演できることを本当に楽しみにしています。普段タンゴに触れる機会がない方でも絶対に楽しんでいただけると思うので、1人でも多くの方に観に来ていただいて、タンゴの魅力を知ってもらえたら。タンゴを聴いてくださる方がどんどん増えて、この企画も恒例のものになっていってくれたら良いなとも願っているので、是非会場にいらしてください!

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水夏希・姿月あさと

しづきあさと○大阪市出身。1987年宝塚歌劇団入団、花組、月組を経て、98年、宙組の初代トップスターに就任。00年退団。ソロヴォーカリストとして、また女優として、舞台や映像で活躍中。最近の主な出演作品は、「ブロードウェイミュージカル『シカゴ』〜宝塚歌劇OGバージョン〜」『薔薇とシンフォニー〜New Year Concert〜』、『The Sparkling Voice ー10人の貴公子たちー』、『姿月あさと 30th Anniversary Concert〜秋桜〜』、 「坂東玉三郎 越路吹雪を歌う『愛の讃歌』」、『Todos del Tango』、『Pukul』、『パリ祭』、『岩谷時子メモリアルコンサート』、『SHOW STOPPERS!!』など。

みずなつき○千葉県出身。1993年宝塚歌劇団入団、07年雪組男役トップスターに就任。10年に退団。以後は舞台を中心に活躍中。最近の主な出演作は、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』、『パンク・シャンソン』〜エディット・ ピアフの生涯〜、『ラストダンス−ブエノスアイレスで。〜聖女と呼ばれた悪女 エビータの物語』、『Pukul』、『一月物語』、『Flamenco マクベス 〜眠りを殺した男〜』、ミュージカル・コメディ『キス・ミー・ケイト』など。

〈公演情報〉
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日亜外交樹立120周年記念特別企画
『Todos del Tango Verano 2018』 
音楽監督◇平田耕治
ダンス監修◇クリスティアン&ナオ
出演◇初風諄 安奈淳 剣幸
日向薫 姿月あさと 彩輝なお(8/25) 星奈優里 水夏希 舞風りら
中原丈雄 石井一孝
峰丘奈知 成瀬こうき 愛耀子 真波そら 天緒圭花 美翔かずき 鳳真由 貴澄隼人 菜那くらら 水沙るる 苫篠ひとみ 富樫世羅 マキタマシロ Erinne(藤木えり)
森田晋平  
ダンサー◇クリスティアン・ロペス ギジェルモ・ボイド ダニエル・ボウアン エスキエル・ゴメス ほか
演奏◇平田耕治とグランタンゴオルケスタ
ゲスト◇フェデリコ・ペレイロ(バンドネオン)  
●8/24・25◎日本青年館ホール
〈料金〉S席11,000円 A席8,500円 B席7,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030(平日11:00〜17:00)




【取材・文/橘涼香 撮影/中田智章】



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