宝塚BOYS2人

終戦直後の9年間だけ存在した「宝塚男子部」。その青春グラフィティを描く舞台、『宝塚BOYS』が8月4日に、東京芸術劇場プレイハウスにて幕を開ける。(19日まで)
2014年に創立100周年を迎えた宝塚歌劇団。「女性だけのレビュー劇団」として、日本のみならず今や世界的にも認知されている宝塚100年の歴史の中に、かつて「男子部」が存在していた事実は、ほとんど語られてこなかった。
1945年、敗戦の混乱が未だ残る日本で、「明日の宝塚スター」を夢見て集まって来た男たちは、9年後の解散の日まで、メインステージである宝塚大劇場に立つことは遂になく、ほぼ幻の存在だったと言える。けれど男たちもまた、宝塚に夢と青春を懸けた、宝塚歌劇を愛する1人に違いなかったのだ。
知られざる宝塚歌劇の歴史を紐解いて喝采を集めた傑作舞台『宝塚BOYS』が、その5回目となる今回の上演は、team SEAとteam SKYという2チーム制で、より多彩にパワフルに展開する。
その舞台に再び挑む良知真次と、紅一点として新たに加わる愛華みれが、作品への想いを語り合ってくれた「えんぶ8月号」インタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

宝塚BOYS良知さん

稽古場の空気を吸って
わかった「BOYS」の気持ち

──『宝塚BOYS』待望の再演ということで、まず、すでにこの作品に出演経験のある良知さんから、作品に感じたことを教えて下さい。
良知 100年以上の歴史を誇る宝塚歌劇団で実際にあったお話で、前回出演した時に僕自身が全てを出しきった為に、ほとんど記憶がないんです。台本を開いてみても全く覚えていなくて。それほど前回のメンバーとその時代を生き抜いたのだと思いますし、僕もそれから時間を経ているので、これは真っさらな気持ちで臨まないといけないんだなと思っています。
愛華 何年前ですか?
良知 4年前です。
愛華 それなら覚えていないのは良いことですよ。そのあとの期間に積み上げた経験が豊かだからこそ記憶がないんだから、今回生まれるものがすごく楽しみ!
──愛華さんは宝塚OGとして「男子部」があったことはご存知でしたか?
愛華 劇団にいた頃に情報としては耳にしていましたが、その情報に対しても斜に構えていた部分が正直あります。「BOYS」なんて要る? と。
良知 あぁ、やっぱり!(笑)
愛華 「男子部」が出来た当時、春日野八千代さん、越路吹雪さん、寿美花代さんたちが「ここは女の園です」とおっしゃっていたという記録も残っていて、「私たちを否定するの?」という気持ちに先輩方がなられていたんじゃないかというのは、私も男役だっただけによくわかるんです。女性として一番キラキラしている年代を、男性の服しか着ずに如何に「男」を極めるか、それに懸けて過ごしていたので。
──でもそれは非常にリアルな、この作品にとって必要な視点ですよね。
良知 まさにそうだと思います。僕は去年、宝塚月組で振付をさせて頂いたのですが、やっぱり男役さんってカッコいいんですよ! あぁ極めるとはこういうことかと思って、目線や仕草等、僕が男役さんから学んで、引き出しに入れさせて頂いたこともたくさんあります。更に、振付で稽古場に初めて入った時に「あぁここなんだ」と思ったんです。「この空気か!」と。それで初めて、燃焼し尽くしたと思っていた『宝塚BOYS』の舞台に対して小さな悔いが出て。この空気を先に知っていたら、もっと違う表現ができたんじゃないかと思ったので、今回のお話を頂けたのが本当に嬉しかったです。
愛華 宝塚の稽古場を知っているというのはとても大きいですよね。
良知 そうなんです。ここから舞台に立ちたい! と思った男子がいることも当然だなと思えましたから。
愛華 そういう「男子部」ができたからこそ、春日野先生はじめ当時の男役さんたちが、男子に負けない! という思いで、髭もつけ、低い声も出し、女性だからこその男役の魅力を極めていったという部分は確かにあると思います。だから宝塚100年の歴史の中の表には出ていないけれども、「男子部」の皆さんの存在が確かにその歴史を作ったスパイスになっていたと思うので、彼らが宝塚に憧れた純粋な気持ち、切なさが感じられる貴重な作品ですね。


宝塚BOYS愛華さん

夢を果たせなかった
沢山の人たちの思いと共に

──そんな作品で、演じる役柄についてはどうですか?
良知 僕は「男子部」の1人として、2回目の舞台に臨むことになりますが、周りが変わると芝居ってすべてが変わっていくと思うし、この作品は誰が主役ということはなくて、全員が主役だと思っていますから、新しい「男子部」から生まれるものを、何よりも大切にしたいですね。2回目だから何かを変えなければ、とは思っていないし、そういう自家発電って(演出の鈴木)裕美さんが一番嫌いなことなんですよ。僕、ある作品で、最終通し稽古の直前の通しが終わった時に「良知、おひとり様でお芝居なさってどうされたの?」って言われたことがありますから!
愛華 自分で考えた芝居を「どうですか?」とお見せしたらそう言われたということ?
良知 やっぱり、「こうきたら、こう返そう」と自分の中で考えていたのを見抜かれたんだと思います。その時、じゃあ、考えなかったらどうなるんだろう? と立ち止まれたので、今回も裕美さんが組み立ててくださるものから、稽古場の中で湧き上がるものを見つけていきたいです。
愛華 私も同じで、君原さんという役は、「BOYS」の寮母として彼らを包みこむと同時に、自分も大劇場に立ちたかったけれど果たせなかったという夢を、彼らに託している人ですよね。だから、「BOYS」の生の感情、思いの深さを、稽古場でたくさん感じていきたい。私も宝塚音楽学校を一緒に受験した友人が不合格で、自分が宝塚にいることは、たくさんの人の夢と共に行くことなんだ、と思っていましたから、そういう感情も大切にしたいですね。特に、初演からずっとこの役を演じていらした初風諄さんの魂を引き継ぐわけですから。初風さんは私にとって、宝塚を退団した後、初めての舞台『チャーリー・ガール』で母親役を演じてくださったご縁もある、最も尊敬する上級生なんです。そんな初風ママが舞台に創り出された役の人生には到底及びませんが、でも私なりに精一杯、良知君たち「BOYS」を見守っていきたい。お稽古場にご飯炊いて行こうか!? と思うくらいで(笑)。だから今日こうして、まず良知君と話せたのは本当に良かった!
良知 僕こそです! 僕『チャーリー・ガール』拝見してるんですよ!
愛華 本当?
良知 はい。だから今日はすごく緊張していたのですが、貴重なお話も伺えて、ご一緒させて頂けることがますます楽しみになりました。
愛華 今20年分の距離が埋まった気がしました(笑)。この舞台は宝塚に夢を懸けた「BOYS」たちの物語で、私もその宝塚の出身者として彼らの夢にはもちろん共感しますし、お客様にもきっと共感して頂けると思いますから、私と一緒に彼らの夢を感じにたくさんの方に観て頂きたいです。
良知 エンタメが当たり前にある今の時代ではなく、夢を見ることが命賭けだった彼らの人生を、2チームそれぞれが一丸となって演じきりますので、是非皆さん劇場にいらして下さい!

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らちしんじ○東京都出身。15歳で芸能活動を開始。舞台、テレビ、映画、アーティスト活動、振付と幅広く活躍中。主な舞台作品はミュージカル『陰陽師』〜平安絵巻〜、ライブ・スペクタクル『NARUTO─ナルト─』〜暁の調べ〜、『ダンスオブヴァンパイア』『シャーロック・ホームズ2』『アルジャーノンに花束を』『ブラックメリーポピンズ』『黒執事』『スリル・ミー』『ロミオ&ジュリエット』『ライムライト』『幕末Rock』など。

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あいかみれ〇鹿児島県出身。85年宝塚歌劇団に入団。99年花組トップスターに就任。数々の舞台で活躍。01年退団後は女優に転身。ミュージカルはもちろん井上ひさし作品等でも大きな存在感を発揮している。主な舞台作品に『頭痛肩こり樋口一葉』『タンブリングFINAL』『あるジーサンに線香を』『女房は幽霊』『アリバイのない天使』『きらめく星座』など。


〈公演情報〉
宝塚BOYS_PR
 
『宝塚BOYS』
原案◇辻 則彦「男たちの宝塚」(神戸新聞総合出版センター刊)より
作◇中島 淳彦
演出◇鈴木 裕美
出演◇
○team SEA(8/4〜11)良知真次 藤岡正明  上山竜治  木内健人 百名ヒロキ 石井一彰 東山義久
○team SKY(8/15〜19)永田崇人 溝口琢矢 塩田康平 富田健太郎 山口大地 川原一馬 中塚皓平
○2team共通 愛華みれ 山西 惇
●8/4〜8/19◎東京芸術劇場 プレイハウス
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京  0570-00-3337 (10:00〜18:00)
※以下 全国公演はteam SKYのみの出演
8/22◎名古屋・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
8/25〜26◎福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
8/31〜9/2◎大阪・サンケイホールブリーゼ


【構成・文◇橘涼香 撮影◇岩田えり】




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