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巨匠ペーター・コンヴィチュニーの演出による最高傑作、ウェーバー作曲のオペラ『魔弾の射手』が、本日、東京文化会館で幕を開けた。(7月18日・19日・21日・22日)
 
この公演はハンブルク州立歌劇場と東京二期会との共同制作で、二期会の歌手たちに混じって、悪魔ザミエル役で元宝塚宙組トップスターで、退団後は女優として活躍中の大和悠河が、オペラデビューを飾ることでも話題を呼んでいる。

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ウェーバー作曲の『魔弾の射手』は1821年に初演、歌とセリフで演じられる「ジングシュピール」(歌芝居)で、ドイツの国民的オペラとして知られている。またドイツ・ロマン派オペラの原点とも言われ、スコアを読んだベートーヴェンはその類い希な独創性に驚嘆し、幼き日のワーグナーはこのオペラを観て、作曲家になる決意をしたと言われている。コンサートでも度々演奏される「序曲」をはじめ、勇壮な「狩人の合唱」、愛らしい合唱曲「花嫁は冠を編んであげましょう」などの名曲、また、アリアも随所に散りばめられ、聞きどころが満載だ。
 
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演出を手がけるペーター・コンヴィチュニーは、ベルリンでオペラ演出を学び、1980年以降ドイツを中心とする著名劇場で数多くのオペラを演出、90年代から斬新かつ挑発的な演出で、世界のオペラファンを常に驚愕させてきた。二期会では『皇帝ティトの慈悲』『エフゲニー・オネーギン』『サロメ』『マクベス』を手がけ、今回は5年ぶりの登場となる。
今回の『魔弾の射手』の演出は、1999年にハンブルク州立歌劇場で上演、どんなオペラも過去の物語としてではなく、常に現代社会とリンクさせ、さまざまな仕掛けや舞台美術で聴衆の内面を刺激する演出が冴え渡り、“鬼才コンヴィチュニー”の名をヨーロッパ中に響き渡らせた。今回の上演ではセリフ部分はすべて日本語で上演、大和悠河が悪魔ザミエル役を演じるにあたり、新たな解釈で役割りと登場シーンを膨らませ、より一層刺激的で現代性のあるオペラ『魔弾の射手』を立ち上げた。

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《ものがたり》
17世紀のボヘミア。
若い狩人のマックスは、明日開かれる射撃大会で優勝すれば、森林保護官の娘アガーテとの結婚が許され、保護官の後任に就くことができるが、調子が悪い。そこで、仲間のカスパールにそそのかされ、“百発百中の魔弾”を手に入れるため狼谷へ向かう。カスパールは悪魔ザミエルと取引をしており、マックスの魂と引き換えに、自身の命を延ばし、マックスは7発の魔弾を手に入れる。この魔弾は、6発までは自分の意のままになるが、最後の7発目だけは悪魔の望むところに命中するという。
大会当日。マックスは魔弾のおかげで好成績を収めるが、領主が命じて鳩を狙った最後の1発が愛するアガーテに向かって飛んでいく。しかしアガーテは、隠者にもらっていた白バラの花冠に守られて、その弾はカスパールを射抜いた。
マックスは全てを告白し、領主は彼を追放しようとするが、隠者のとりなしによって、1年の執行猶予の後にマックスとアガーテの結婚が許される。

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この作品の初日を前に2日間にわたりプレス用ゲネラルプローベ(総稽古)が行われ、2日目のゲネプロ終演後に、大和悠河への共同インタビューが行われた。

【大和悠河 
インタビュー】

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悪魔ザミエル役のさまざまな扮装の中でも最も衝撃的とも言えるバスタオルに黒いソフト帽、アタッシュケースという格好で記者たちの前に登場。初日を前にした心境とコンヴィチュニー演出について語った。

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──いよいよ明日、初日ですね。
今日はありがとうございます。今回初めてオペラデビューということで、私はもうオペラ大好きで、海外に行ってはオペラを観劇して、いつかオペラの舞台に立てたらこんな嬉しいことはないと。でも本当に夢のまた夢と思っていたのですが、今回、まさかこんな機会を与えて頂けて、二期会さんの舞台に立たせていただけて本当に嬉しく思っています。今、この東京文化会館に入って、ご一緒している東京二期会の歌手の皆様が、稽古場の時もそれは素晴らしい声と技を聴かせて頂いていたのですが、より生き生きと息づいていらっしゃって、また劇場の響きもやはり素晴らしくて、本当に良い仕上がりになっていると思います。私の悪魔ザミエルで役は、原作の『魔弾の射手』の中では2回しか出てきませんし、演出によっては声だけという場合もあるのですが、今回のコンヴィチュニーさんは、悪魔の匂いのするところにはすべて悪魔が出ているという演出をされていて、14回くらい出番があります。色々な場面に悪魔が登場して、実はこれは悪魔的要素で動いているんだよと、そういう演出をされています。そして出る度に違う格好をして、悪魔だけど変身をして人間界に入り込んでいる、そういう登場をさせていただいてます。コンヴィチュニーさんは、現代の今観るお客様に訴えかけるものを、作品から深く読み込んで、音楽から読み取って演出されるので、稽古場でも毎日が吸収の日々でした。ですから早く初日が開いて、お客様に早く観ていただきたいとワクワクしています。
──14回登場ということはその度に衣裳も?
そうです。引っ込みましたらすぐ着替えるという感じですが、早替えは宝塚出身なのでお手のものというか(笑)。ただ今回、悪魔ザミエルはコンヴィチュニーさんの演出でも、これまでは全部男性が演じていらしたのですが、今回初めての試みで女性でやりたいと。しかも男かなと思ったら次の場面は女性で、次は中性かな?というような得体の知れない生き物という、言ってしまえば両性具有という感じの存在になっていて、以前のコンヴィチュニーさんの演出ともまた違う悪魔ザミエルになっていると思います。

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──髪型もベリーショートからロングまで色々あるそうですね?
昨日のゲネプロのあとにコンヴィチュニーさんから、全部の場面のカツラを変えてほしいという要望がありまして(笑)、急いで自分の手持ちのカツラや床山さんのものや、色々ある中で急遽決めていったのですが、また初日にはどうなるかという(笑)。コンヴィチュニーさんという方は初日が開くぎりぎりまで、発想が浮かぶとどんどん変えて行かれる方なので、そこは私もびっくりしつつ楽しんでいて、新たな一面を引き出していただいてます。私はとくに男性の衣裳を着るシーンも多いので、そこは今まで宝塚で培ってきたもので、また女優になってから培ったものもありますので、それをこのオペラという芸術の中で、華開かせることができるんじゃないかなと。今まで積み上げてきたものが1つになるような感覚があります。
──オペラ出演の夢が叶った今、改めて感じることは?
まずこの東京文化会館の舞台に立った瞬間、本当に嬉しくて、宝塚大劇場も広い劇場なのですが、立った感覚はそれ以上に広くて声が響くんです。この幸せな感覚とともに、お客様に呑まれないようにと。それは宝塚で培った心構えというか、それがふつふつと蘇ってきました。それにオケピットも広くて、オーケストラの方がチューニングをしているだけで嬉しくて(笑)。歌手の方の声がすごく響いて幸せだなと。そしてオペラ作品という骨格のしっかりした作品に出られることを、本当に幸せに思っています。

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──3幕初めに「狩人の合唱」を台詞で、しかもソロで語りますね。あそこはまさにザミエルの見せ場になっていますし、凄みがあります。
あそこは本来は合唱場面で、とても有名な誰でも知っている曲なのですが、実は歌詞がとても残酷というか、狩りをしている男性の気持ちとか闘争心とか、すごく残虐な意味もあったりするんです。それをコンヴィチュニーさんが、「みんなは知らないで口ずさんでいるけど、こんなに残虐なことを言っているんだ」ということで、ザミエルに語らせているんですね。ハンブルグでの初演ではブーイングが出たというくらい衝撃的な演出になっていますが、コンヴィチュニーさんからは、それくらい大切な場面なのだと言われていますので、私も肝に銘じて演じています。しかも女性である私が男性の格好をして男性のそういう面を語っているというのは、ちょっと皮肉で面白い場面になっていると思います。
──バスタオル1つで出る気持ちはいかがですか。
最初そう聞いたとき「え、バスタオル1つですか」と(笑)。どういう意図があるのだろうとコンヴィチュニーさんに聞きましたら、「ここは悪魔が、避暑地にいるオナシスを訪ねていくビジネスマンのように、ちょっと暑いからバスタオルで仕事しに行くんだ」と(笑)。マックスに握手を求めるシーンなんですが、そういう発想が湧いたらしいです。でも実際にこの姿で舞台に立つと「なんて気持ちいいんだろう」と思いました(笑)。

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──コンヴィチュニーさんからゲネを観て感想はありましたか?
はじめはコンヴィチュニーさんは、私の存在を掴みきれないところがあったようで(笑)、でもこの舞台に来てから掴んだらしく、私に色々なことをさせたくなったようで、今日もカツラについて変わったように、色々なアイデアをどんどん出して下さっています。とても有り難いです。 
──最後に皆様へアピールを。
この『魔弾の射手』というのは単なるドイツのメルヘンチックなお話で終わらずに、ウェーバー作曲の素晴らしい音楽に乗せて、現代の私たちにも訴えかけるものがあります。ぜひ観に来ていただいて、ハートをズキュンと射貫かれていただいて(笑)、帰りには素敵な音楽を口ずさんで帰っていただければと思っています。

【フォトレビュー 18日、21日出演者バージョン】 

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※お断り:すべての舞台写真はゲネプロでの扮装・髪型です。
 
〈公演情報〉
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東京二期会オペラ劇場 ハンブルク州立歌劇場との共同制作 
『魔弾の射手』 
【オペラ全3幕】日本語および英語字幕付き原語(ドイツ語)歌唱、日本語台詞上演
台本◇ヨハン・フリードリヒ・キント
作曲◇カール・マリア・フォン・ウェーバー
指揮◇アレホ・ペレス
演出◇ ペーター・コンヴィチュニー  
舞台美術◇ガブリエーレ・ケルブル
照明◇ ハンス・トェルステデ
演出補◇ペトラ・ミュラー  
合唱指揮◇増田宏昭
管弦楽◇読売日本交響楽団
●7/18、19、21、22◎東京文化会館 大ホール
【7/18、21 出演組】
オットカール侯爵:大沼徹/クーノー:米谷毅彦/アガーテ:嘉目真木子/
エンヒェン:冨平安希子/カスパール:清水宏樹/マックス:片寄純也/隠者:金子宏/
キリアン:石崎秀和/ザミエル:大和悠河
【7/19、22 出演組】
オットカール侯爵:藪内俊弥/クーノー:伊藤純/アガーテ:北村さおり/
エンヒェン:熊田アルベルト彩乃/カスパール:加藤宏隆/マックス:小貫岩夫/
隠者:小鉄和広/キリアン:杉浦隆大/ザミエル:大和悠河

〈お問い合わせ〉チケットスペース 03-3234-9999
二期会チケットセンター 03-3796-1831(平日10:00〜18:00/土曜10:00〜15:00/日・祝休業)
http://www.nikikai.net/lineup/freischutz2018/index.html




【取材・文/榊原和子 舞台撮影/友澤綾乃】 
 



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