IMGL1447

ダンス界の革命児として、さまざまなジャンルとのコラボレーションで作品を創造してきた上田遙が、シェイクスピアの『マクベス』を元に新しい表現をめざす。その舞台『FLAMENCO マクベス』〜眠りを殺した男〜が、5月23日にシアター1010で幕を開ける。(27日まで)
 
本作品は、2014年秋に圧倒的評判を博した『サロメ』の第二弾として企画されたもので、ファンタジックにしてゴージャスな「ドラマティック・スーパー・ダンス・シアター」というコンセプトで『マクベス』を再構築。魔女の予言により、自分の主人ダンカン王を殺してしまうマクベスとその夫人を通して、人間の心の弱さ、闇の深さをフラメンコダンスなどで表現していく。
 
出演は、マクベスに東山義久、マクベス夫人に水夏希、マクベスを操る存在の「運命」にフラメンコ界の至宝・小島章司、そしてマクベスを愛する「骨」という役に森新吾、ほかにD☆Dのメンバーや、フラメンコダンサー、また『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』でタイトルロールを演じた木村咲哉も出演する。
その稽古も終盤に入った稽古場での水夏希インタビューを、上田遙の熱い檄が飛ぶ稽古場風景とともにお届けする。

【水夏希インタビュー】

IMGL1321

夫人は悪も持っているが
同時に人間の弱さも持っている

──ダンスで表現される部分が多い作品だと聞いていますが、ほとんど踊りですか?
私は踊り8割、あと台詞とか歌で2割くらいですね。ダンスは上田遙の世界という感じで、フラメンコもあればコンテンポラリーもあるし、さまざまな表現がミックスされている感じです。私も少しだけフラメンコっぽい振りも踊ります。
──シェイクスピアの原作と大きく違うところは?
一番違うところは、たとえばダンカン王の息子たち、マクダフなどは登場しないんです。物語はマクベスとマクベス夫人、ダンカン王、バンクォーの4人に絞り込まれていて、そのほかのストーリーはカットされています。だから『マクベス』の物語の真髄だけをドラマとして見せていく形です。
──マクベスがなぜダンカン王を殺したか、なぜ王にならなければならなかったか、そして、なぜ滅んだかというようなことでしょうか?
そうですね。ただ最後の解釈が違っていて、原作通りマクベスは死ぬわけですが、死んだ瞬間に本当の生を勝ちとるんです。そこまでマクベスは小島章司さんの「運命」に操られ試されていたわけですが、最後に自分自身の本当の生を勝ちとる。でも、その時はもう彼の死の瞬間なのですが。
──上田さんの解釈ではマクベス夫人こそ悪だそうですが、演じていてそう思いますか?
確かに悪も持っていますが、同時に人間の弱さを持っている人だなと。本物の悪は最後まで悪であり続ける強さがありますけど、夫人は悪を貫き通せず最後は狂ってしまうので。その弱さとか繊細さは演じる上で持ち合わせていたいし、やはり純粋にマクベスのことを愛していたんだと思います。夫が王様になれれば素晴らしいだろうなと思っていたけれど、そんなことは叶わない夢のはずだった。ところが手を伸ばせば届くところに王冠がきて、思わず手を伸ばしてしまった。欲望のままに、それが悪いことだとも思わずに。実際に手を下したのはマクベスですが、夫人が自分の欲望(夫を王にする)のために、マクベスに手を下させたので、やはり上田先生のおっしゃる通り、客観的に考えると悪はマクベス夫人のほうにあると思います。

IMGL1202

五感を研ぎ澄ませていないと
付いていけない上田ワールド

──マクベスと夫人はいわば一心同体ですが、相手役の東山さんとは色々な作品で共演していますね。
何度も共演していますが、そんなにがっちり組むことはなかったんです。それに今回は、2人のシーンがかなり重要で、それぞれの内面のドラマを表現して踊るので、ショーでコンビネーションを見せるのとはまったく違う感じです。ワンシーンのダンスの中でドラマが進んで行くのですが、2人の力関係を表現したり、マクベスに懇願したり、マクベスが決意を固めていったり、マクベスが揺らいでいるとか、そういう様々なドラマが踊りの表現に込められています。
──東山さんと組んで踊ることの、やりやすさや難しさなどは?
やはり男性なので力強いですし、踊りをずっと続けている方なので、どう出ても受け止めてくれる安心感があります。難しいのは、こちらがそのパワーに押されないようにしないといけないことで。他にはない強さというか、それはクラシックバレエの方やコンテンポラリーダンサーの方とはまた違う、東山義久という存在そのものから発しているオリジナルのパワーなんです。
──上田遙さんの演出や振付はいかがですか?
遙さんとはなんか似てるんです(笑)。おっしゃっていることが感覚でわかる。でも振付に付いていくのはたいへんです! その場でどんどん付けていくし、しかもそれが出来る出来ないに関係なく「次行こう!」と。せっかちなんです!(笑)。休憩中も結局確認作業をするので、「全然休憩してないんですけど!?」みたいな(笑)。
──それを覚える水さんもすごいですね。
いやもう必死です(笑)。家に帰って思い出しながら。でもなぜこういう振りがついたのかわからないというような振りもあって(笑)。なんといっても感性のままに付けていく方なので。だから稽古場でも五感を研ぎ澄ませてないといけないんです。
──天才肌の方ですからね。やはり天才的フラメンコダンサーの小島章司さんも、今回参加していますが、間近でご覧になっていかがですか?
素晴らしいです!舞台上にある台の上で踊られるのですが、そこに行くまでの階段などでは年齢相応の動きをされているのに、台の上に立った途端に別人のようになられるんです。サパティアードの強さとか、かもし出す線の太さ。マクベスと一緒の場面など東山さんのほうが圧倒的に若いし骨太なんですけど、それにまったくひけをとらないパワーがあって、本当に魂で踊っていらっしゃるのだなと感動します。

IMGL1284

小島章司のフラメンコと
尺八のコラボレーション

──この作品は歌や台詞もあるということですが。
歌は私は1曲だけですが、D☆Dの咲山(類)さんとTAKAさんが魔女のナンバーを歌いますし、東山さんは2曲あります。台詞部分は森(新吾)くんが、ストーリーテラーとして受け持っていて、さらに作品のダンスのモチーフを繋いでいく役目や、お客様と舞台を繋いでいく役目もあって、すごく重要な役割を演じています。
──上田さんらしい立体的な作りのステージになりそうですね。
殺陣あり、コンテンポラリーあり、フラメンコあり、それに演奏はドラムや尺八ですから。ただ、音楽は全編が和ではなくて、「運命」のパートが尺八とのコラボになります。なぜ尺八かというと、「運命」のいる台を能舞台に見立てているのだそうです。魔女という存在は日本には馴染みがないということで、神楽とか能の世界に置き換えていて、そこで「運命」が舞うわけです。だから小島さんの踊るときだけ尺八なんです。
──そこはまさに見どころですね。
すごいです! 普通フラメンコは12カウントなんですが、尺八はノーカウントで、譜面も何もないんです。それがフラメンコに合わせて、音色が鳴って、シーンが立ち上がっていくのですから、素晴らしいです。小島先生は、めったに日本で踊られない方なので、今回、すごく貴重なものを観せていただいてるなと思います。
──それから木村咲哉くんも出演していますね。
バンクォーの息子で未来の王です。ソロも踊りますし、歌もあります。子供の俳優さんと一緒というのは、私は初めてなんです。学校で勉強をちゃんとして、放課後に稽古場に来るんですよね。もうそれだけで感動するし、可愛いし、いつも笑顔だし、癒やしです(笑)。物語でも未来の王ですけど、本当に未来が楽しみです。

IMGL1242

息もつかせぬ勢いで
展開する110分

──この作品は水さんにとっても、また新しいチャレンジが多そうですね。本誌えんぶのインタビューでは「持っている引き出しを総動員」すると。
総動員でも太刀打ちできないです(笑)。ただ、今までもそうでしたけど、毎回総動員して立ち向かう中で、同時に新たな引き出しを増やしながらやっていく。それが次に繋がるわけですから。今回もまた絶対に自分の引き出しが増えるなと、そこは間違いない作品に出会ったと思っています。
──上田さんとの出会いで改めて感じることは?
もっと早く出会っていたらと思う気持ちもありますが、でも今だからこそ遙さんがおっしゃっていること、舞踏に関する感性だとか、話してくださる経験や言葉がすごく有り難いし、すごく興味を持って聞けるんです。それは今だからこそで、外の世界の色々なジャンルのものと出会ったから理解できるんです。身体の動かし方ひとつでも、宝塚時代はそれこそボディをいかに動かさないかで生きてきたのに、今はここだけ(上半身)で動いてくださいとか。この間など「皮で踊らないで」と言われました(笑)。胸のへんにすごく力が入っているから、そこは抜いて「背面と骨だけで踊って」と。そういえば宝塚は皮で踊っていたなと。男役はそれで見せてきたわけですから(笑)。
──そういう違いを体現できる水さんはやはり素晴らしいです。では改めて見どころとメッセージを。
とにかく見どころ満載で、最初から男性たちのすごい殺陣で始まります。人数も沢山でもの凄い迫力です。そこから息もつかせぬ勢いで、次々にアトラクションが展開します。その合間に森くんがふっと空気を緩めてくれたり、緊張感をだしたり、流れにも緩急があります。踊りだけでなく音楽も台詞もどれもドラマティックで、110分という上演時間の中にすごい情報量と見どころが満載ですので、ぜひ楽しみに観にいらしてください。

IMGL1298

【稽古場レポート】 

_MG_8183
剣や旗を持ってのダンスやアクロバティックな動きは、上田遙作品のオープニングならではのダイナミズムだ。

IMGL1332
旗振りの動きを固めていく上田遙(左)。

IMGL1420
ダンカン王を演じるのは優れたフラメンコダンサーとして知られる箆津弘順。 

IMGL1427
バンクオーの息子役で出演の木村咲哉。リトルダンサーとしての実力を発揮!

IMGL1476
ダンカン王を迎えての宴会のシーン。艶やかに舞うマクベス夫人の水夏希。

IMGL1479
ポーズが固まるまで待機中のカメラの前に映り込む「骨」の森新吾。稽古場のムードメーカーだ!

IMGL1740
ついに王になるマクベス。夫妻は戴冠式へと向かう。

IMGL1761
コンテンポラリー風で激しさの中にも優雅さが漂う夫妻のデュエットダンス。

IMGL1767
荘厳な音楽とともに誇らしげに王座に立つ夫妻。

IMGL1792
王になるマクベスにとって邪魔者となるバンクオー、中塚皓平が演じている。

IMGL1908
マクベスを惑わす妖しい歌を歌い上げるのは魔女の咲山類とTAKA。

IMGL1827
マクベス夫妻の周りで不穏な空気を醸し出す「骨」の森新吾。

IMGL1496
ダンカン王の亡霊を見るマクベス。「骨」とコロスたちがマクベスを翻弄する。

IMGL1542
「骨」が次に呼び出した死者は?怯える夫を抱きしめるマクベス夫人。

IMGL1577
亡霊たちに惑わされ夫人の姿さえもわからなくなるマクベス。

IMGL1650
葛藤や苦悩を表現する夫妻のダンスは体勢が複雑なだけに、コロスとの息が重要だ。

IMGL1635
上田遙の「いいね、水ちゃん」という声に笑顔になる水夏希。真剣な中にも笑いが絶えない稽古場で作品作りが進んで行く。
 
〈公演情報〉
PR

DIAMOND☆DOGS 15TH Anniversary Series 
Dramatic super dance theater Flamenco
『マクベス 〜眠りを殺した男〜』
台本◇上田遙/河内連太 
演出・振付◇上田遙 
音楽◇T-LAYLA
出演◇東山義久 水夏希 木村咲哉 森新吾 小寺利光 中塚晧平 和田泰右 咲山類 TAKA 
箆津弘順 小島章司 ほか 
●5/23〜27◎THEATER 1010 
〈料金〉9,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799(平日11:00〜18:00 土日祝10:00〜18:00)


【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】



えんぶ最新号販売中!
kick shop nikkan engeki