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北乃きいが主人公ノラに扮し、佐藤アツヒロや大空ゆうひが共演するヘンリック・イプセンの名作『人形の家』が、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場で、5月10日に幕を開けた。続いて5月14日から東京芸術劇場シアターウエストで東京公演を行う。(20日まで。5月23日・24日は兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演)

【あらすじ】
弁護士ヘルメル(佐藤アツヒロ)の妻ノラ(北乃きい)は、純粋で無垢な女性だった。若くして結婚し三人の子供も授かり、夫に守られ生きている。
ある日、リンデ夫人(大空ゆうひ)が訪れるところから幸せだったはずの生活に歪みが生じ始める。ヘルメルの部下クロクスタ(松田賢二)との秘め事や、ヘルメルの友人であり医師であるランク(淵上泰史)のノラへの純粋な恋も、それと同時に思わぬ方向へと動き始める…。決断を迫られたノラが最後に選んだものとは。

ノラ役で、本格的セリフ劇に初めて挑戦するのは、女優のみならず幅広いフィールドで活躍する北乃きい。夫役には近年舞台で圧倒的存在感をみせる佐藤アツヒロ。夫婦を取り巻く人々には、宝塚退団後も演技派女優として輝きを放ち続ける大空ゆうひ、実力派俳優の松田賢二、若手注目株の淵上泰史、大浦千佳といった個性的なキャストばかり。演出は、16年にストリンドベリの「令嬢ジュリー」を『令嬢と召使』として再構築した気鋭の一色隆司が手がける。
そんな新たな『人形の家』で、ノラ役に挑む北乃きいに、舞台にかける想いや本作への抱負を聞いた「えんぶ6月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。
 
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この『人形の家』を観たら、
たぶん1つ扉が開きます

──出演するにあたって原作も読まれたそうですね。
ふだんは原作は一切読まないんです。脚本と違うと混乱するので。でもこれは読みたかったんです。読んだらさらに強く強くノラを感じました。あと、演出の一色さんが映画の『風と共に去りぬ』を観ておいてほしいとおっしゃったので、それも観ました。ノラにはあの強さが必要なのかなと、呑み込みやすかったです。
 
──ノラは夫に愛されていますが、どこかで人形のようだと感じていますね。そういうノラの立場や心理はわかりますか?
私は祖父母の家で育ったのですが、祖父母にもちょっとそういう感じがあったので、遠くは感じませんでした。古い男女関係のようにも思えますが、今の日本にも、「自分の立場ってなんなのだろう」と考えている女性は沢山いると思うんです。そういう女性の方々にぜひ観ていただきたいなと。観たら、たぶん1つ扉が開く気がします。
 
──舞台に出演するのは『サイケデリック・ペイン』(12年)に次いで2度目ですね。前回はいかがでした?
とにかく恐かったです。初舞台でしたから何もかもわからないうえに、もともと気軽に人にものを聞けないほうなので、みんながどこで着替えているかもわからなくて、着替えなくていいようにジャージを着たまま電車に乗ってました(笑)。稽古場でも出来ないどころではなくて、残って1人でやって、それでも出来なくて、毎日泣きながら帰っていました。 
 
──そうは思えないくらい舞台では生き生きしていました。舞台そのものは楽しかったのでは?
達成感がすごかったですね。それと生の凄さが少しわかりました。私が沢山の敵と戦うシーンがあったのですが、剣が客席に飛んでしまったんです。でも素手で戦う稽古なんてしていないし、エアーでやろうかなと思っていたら、右近(健一)さんが敵方なのに自分の剣をさっと投げてくれて。それに、お客様もハラハラしながら見守ってくれて。そのとき「なんだろこれ、凄い!」と。出ている人たちだけでなく、お客様も協力している。それは生の舞台だからで。続ける凄さ、それが舞台なんだと。衝撃でした。

私をこのチームに
キャスティングしてよかったと

──この作品で6年ぶりに舞台に挑むわけですが、女優としての今後にどう役立てたいですか?
私は映像では学生の役が多かったんです。その後、社会人の役もやっているのに、なぜか学生役のイメージが強いと言われるので、そろそろ年相応の役をやっていきたいなと思っていたんです。この作品のノラはそういう意味では年相応で、子供や夫もいるという演じたことのないような役ですから、この役を演じきれたら、周りの見方も変わるかもしれないと期待しているんです。
 
──意外と北乃さんの等身大でやれそうな気もします。
緊張しないでやりたいですね。緊張したことで無駄になることって沢山あると思うので。この『人形の家』ってすごく有名ですよね。でも意外と上演される機会は少なくて。ですから初めて観る方のためにも、いい舞台にしたいし、私をこのチームにキャスティングしてよかったと思われるような作品にしたいです。
 
──ノラを演じた女優の1人として足跡を残すということですね。
『人形の家』という作品のファンの方もいらっしゃるので、正直恐いですけれど(笑)。でも初主演舞台は一度しかないので、ぜひ沢山の方に観ていただきたいです。私も年齢を重ねて仕事への気持ちも変わってきた中で、ここでこの素敵な作品と出会えたことを大事に、きっと新しい北乃きいを観られると思いますので、ぜひ観にいらしてください。

本誌8423
きたのきい○神奈川県出身。05年「ミスマガジン05」グランプリを受賞後、映画、ドラマ、CMなど多方面で活躍中。日本テレビ『ZIP!』の司会を14年から2年間務めた。近年の主な出演作に、映画『爆心 長崎の空』『上京ものがたり』『ヨコハマ物語』『僕は友達が少ない』『TAP THE LAST SHOW』、ドラマ『クロスロード』『社長室の冬』『橋ものがたり-小ぬか雨-』『銀魂-ミツバ篇-』、舞台『サイケデリック・ペイン』。第31回日本アカデミー賞新人俳優賞・第29回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。

〈公演情報〉
 #05

りゅーとぴあプロデュース『人形の家』
作◇ヘンリック・イプセン 
訳◇楠山正雄訳『人形の家』より 
上演台本◇笹部博司 
演出◇一色隆司 
出演◇北乃きい 大空ゆうひ  松田賢二 淵上泰史 大浦千佳 佐藤アツヒロ 
●5/14〜20◎東京芸術劇場シアターウエスト
〈料金〉7,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉エムティーピー 03-6380-6299 
●5/23・24◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈料金〉A 7,000円 B 5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00〜17:00/月曜休 祝日の場合翌日)
〈公演HP〉https://www.ryutopia.or.jp/performance/event/6022/






【取材・文/宮田華子 撮影/友澤綾乃】



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