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歌舞伎界から劇団新派の世界に飛び込み、新派に新たな風を吹かせて大活躍を続けている喜多村緑郎と河合雪之丞による自主公演『怪人二十面相〜黒蜥蜴二の替わり〜』が、春本由香をはじめとする劇団新派の面々と、ゲスト参加の元宝塚宙組トップスター貴城けいを迎えて、本日3月30日池袋のサンシャイン劇場で開幕する(4月1日まで)。

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「怪人二十面相」は日本に探偵小説の礎を築いた江戸川乱歩が、1936年〜1962年にかけて書いた少年少女向け探偵小説『少年探偵シリーズ』に主として登場した架空の怪盗。小説世界の中で、貴重な宝石等を巡って名探偵・明智小五郎や、彼の率いる少年探偵団との闘いが繰り広げられ、明智小五郎の永遠のライバルとも言える立ち位置にある大怪盗だ。
その設定を活かし、2017年劇団新派公演で大評判となり、今年6月早くも再演する『黒蜥蜴』で名探偵明智小五郎という当たり役を引き当てた喜多村緑郎が、引き続いて明智役を演じ、『黒蜥蜴』ではタイトルロールを演じた河合雪之丞が、今回は怪人二十面相を演じる。内容は新作でありつつ乱歩原作のシリーズものでもあるという魅力的な作品となっている。

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【物語】
大正ロマンの香りが残る昭和初期。殺生はせず、現金にも関心を示さず、これと目をつけた宝石や美術品を「〇月〇日に頂戴に参上致します」という予告状を送り付け、警察をはじめとした厳重にも厳重を重ねた包囲網を潜り抜けて、まんまと宝を盗み出していく「怪人二十面相」が世の中の関心を一手に握っていた。
そんな怪人二十面相から所有する財宝を頂戴する、という予告状を受け取った大富豪河野家の令嬢不二子(春本由香)から、捜査の依頼を受けた名探偵・明智小五郎(喜多村緑郎)は、警察と共に河野家の警護に当たるが、私立探偵の存在を好ましく思っていない警察から、全く素顔のわかっていない怪人二十面相本人ではないか?との疑いをかけられる始末。そんな明智に声をかけてきた大河原美弥子(河合雪之丞)に、深く感じるものがあった明智は直感的に美弥子こそ怪人二十面相であると悟るが、ほどなくして不二子は誘拐されてしまう。
事態は浅草で大人気のレビュースター花菱蘭子(貴城けい)をも巻き込み、急展開の様相を呈し始める。謎が謎を呼び、いつしか事件は、幽霊館の地下迷宮に眠る宝物と、その莫大な宝を巡る過去の殺人事件へとつながってゆき……

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「役者たるもの、口を開けてただ待っているのではなく、自分から何かをつかみ取りにいかなくてはならない」そんな思いで、自主公演開催を決意したという喜多村緑郎と河合雪之丞が、その題材に大きな注目を集めた『黒蜥蜴』と同じ江戸川乱歩の世界を選んだ、その着眼点の見事さが、舞台の求心力を高めている。元々歌舞伎とは異なる新たな演劇を志向した人々が、当時の現代劇として発展させたものが「新派」と称された、という歴史から続いてきた「劇団新派」だが、現在では古典作品の存続を守り続けている劇団、というイメージがむしろ定着している。その世界に歌舞伎界から飛び込み、文字通り新しい風を吹かせた喜多村緑郎と河合雪之丞の存在が、昨年の『黒蜥蜴』大成功の立役者となったことは記憶に新しい。喜多村のダンディズム、河合の女形ならではのこの世ならぬ者の色気とが、徹底的に非現実を貫くことで、逆に生半可な現実感から生まれてしまう空々しさから逃れて、迫力と冒険と迷宮感を高めることに成功した。江戸川乱歩の世界との親和した様は見事で、『黒蜥蜴』は劇団新派が掘り当てた新たな鉱脈として、鮮やかな印象を残したものだ。
 
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そんな二人が6月に再演を控えた『黒蜥蜴』の前に自主公演に打って出る、という心意気に感じた脚色・演出の斎藤雅文が、『黒蜥蜴』から時代を遡り、そこに至る物語を用意したのは、実に巧妙な仕掛けと言える。ここには、喜多村と河合の資質が生きる乱歩の世界観はそのままに、新たな謎、新たな事件、新たな迷宮が立ち現れる醍醐味がたっぷりと盛り込まれている。それによって、『黒蜥蜴』初演を観た観客には、ここからあの話につながるのか!という興奮を。この『怪人二十面相』ではじめてこの世界観に接した観客には、この物語からどう『黒蜥蜴』につながっていくのか?という興趣を、共にかき立てられる舞台になっているのが心憎い。

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その中で喜多村緑郎は、若き日の明智小五郎を演じることで、爽やかな二枚目としての資質がより際立ち、一分の隙もないダンディズムを見せつけた『黒蜥蜴』の明智像とはまた違った、心優しく、感情の発露も豊かな青年ぶりに魅力を発揮している。抜群のプロポーションが引き立つ明智から一転、座ったままで講談を語るストーリーテラーの悟道軒円玉では、表現力の豊かさが前面に出ていて、講談の語り口も達者そのもの。実に贅沢な二役の妙味が味わえる。

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怪人二十面相の河合雪之丞は、なぜこの女性が怪人二十面相となっていったのかの経緯と、過酷な運命がきっちりと書き込まれた脚色に応え、たおやかさ、はかなさを秘めた緻密な演技で魅了する。乱歩のシリーズの中で怪人二十面相の過去が描かれた作品もない訳ではないのだが「本人さえ自分の本当の顔がわからなくなっている」という設定だけに、この作品で描かれる「怪人二十面相」のいきさつにむしろリアリティーが感じられ、彼女を応援したい気持ちにさせられるのは、斎藤の筆に応えた河合あってこそだ。

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更に作品に華やかさを加えたのが、レビュースター花菱蘭子を演じた貴城けい。とにかく登場しただけで舞台がパッと明るくなる華に圧倒されるし、やはり乱歩の小説世界に登場する「黄金仮面」にも扮して、久々に男役時代の香りも醸し出す。それが全く浮かないどころか、舞台のエンターテインメント性を高めていて、私生活では夫君である喜多村との、夫婦としての初共演の話題もあり、自主公演を興行面でも支えた力は大きい。当然ながら二人のコンビネーションは抜群で、更に現代的なカラッとした風情があるのが、喜多村&河合コンビとの好対照として互いに引き立て合ったのが素晴らしかった。

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事件の発端となる、河野家の令嬢不二子を演じた春本由香は『黒蜥蜴』に続く令嬢役で、更にこちらでも賊に誘拐されるという同じ設定にも関わらず、両者を全く違う色合いで演じ分けていて、確かな力量を感じさせる。この作品の世界が、やがて『黒蜥蜴』につながっていく上で重要な鍵を握っている人物でもあり、この驚きと興奮は、是非劇場で体感して欲しい。

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また、この興行に賛同して参加した劇団新派の面々にも大きな活躍の場があるのが、自主公演に打って出た喜多村と河合の劇団への熱い思いを感じさせて、双方の心意気が大人数の舞台を弾ませたことも見逃せない。この高い熱量を持った劇団新派による江戸川乱歩の世界が、6月の『黒蜥蜴』公演はもちろん、更にシリーズ化されていく未来にも大きな期待を寄せられる、必見の舞台となっている。

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【囲み取材】

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春本由香、河合雪之丞、喜多村緑郎、貴城けい

初日を前に3月29日、通し舞台稽古と囲み取材が行われ、喜多村緑郎、河合雪之丞、春本由香、貴城けいが、記者の質問に応えて公演への抱負を語った。

──それぞれの役どころと見どころをお願いします。
貴城 (喜多村からどうぞ、と促されて)えっ?私から?
喜多村 いいじゃない?(笑)
貴城 レビューの女王花菱蘭子と黄金仮面をさせて頂きます。まず黄金仮面で久しぶりのちょっと男役スタイルというようなものや、台詞があったりするのが、自分の中でもとても新鮮です。そして物語の中でも重要な役割をさせて頂いているので、蘭子もそうですし、黄金仮面もとにかく華やかに舞台を彩れるように演じられたらな、と思っております。
喜多村 私は明智小五郎と悟道軒円玉という講釈師の二役でございます。とにかく自主公演ならではの分量の多さ、明智もですし、また円玉の講釈が三くだりあるのですが、講談がこんなに大変だったとは!と。狂言回し的な、ストーリー進行をする上で非常に重要な役どころになっています。ですので神田陽子さんに教わりまして、きちんとやったつもりではございますが、何しろ分量が多くて…そんなことは言い訳にできませんが(笑)。また、明智小五郎は前回の『黒蜥蜴』に行く前の、成長過程のちょっと青っぽさがにじみ出た明智小五郎と、『人情馬鹿物語』や新派の『遊女夕霧』の悟道軒円玉は、本当に憧れの役だったので、スタイルは違いますが、非常に大きな二つの役で、明日の初日どうしようかな、という不安な気持ちでいっぱいです。初めてですね、不安になったのは。大体舞台稽古では完璧な方なのが、ちょっと今はドキドキしています。

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河合 私は怪人二十面相をやらせて頂きます。この人物がどのような人生を歩んで怪人二十面相になったか?というところが、面白く描かれていますのと、更に、6月にまた上演させて頂きます『黒蜥蜴』に、怪人二十面相がどのように関わっていくのか?というところが、本当に見どころになっております。私自身もこういうお役は好きで、自分の中に染み込みやすいお役ですので、そういう意味でもこの自主公演でやらせて頂くのは本当に嬉しいです。この作品が6月の『黒蜥蜴』に「こうつながっていくのか!」というのが、ご覧になって頂けたらわかりますので、一生懸命頑張って演じたいと思います。
春本 私は河野不二子という役をやらせて頂くのですけれども、前回の『黒蜥蜴』もお嬢様の役どころでしたが、今回もまたお嬢様なのですが、ちょっとコンプレックスを抱いていて、という役どころで『黒蜥蜴』にこの作品がつながっていくというところの、キーポイントにもなるのかなというお役ですので、精一杯やらせて頂いております。

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──昨年の上演で大評判となって、6月に早くも再演される『黒蜥蜴』に行く前の時点の物語という、とても魅力的な設定ですが、企画はどのように?
喜多村 我々は新派に所属させて頂いてまだ日が浅いので、はじめは古典を勉強したいな、という気持ちが強かったのですけれども、やはり6月の『黒蜥蜴』に向けて、まだ観たことがない方も、初演をご覧になった方も共に楽しめるシリーズもののような形にできないかなという案が出てきました。それを受けて『黒蜥蜴』の斎藤雅文さんが「じゃあ、僕が書く」と、お忙しい中書いてくださって。出来上がったストーリーが大変面白くて、『黒蜥蜴』と凌ぎを削るようなものになりました。また、劇場のサイズも大きくなりましたので、スペクタクル性も加味されていて、今回の舞台をご覧になって頂けたら、6月の『黒蜥蜴』が更に楽しめる二部作となっていますので、これを自主公演でさせて頂いたことは間違っていなかったと思っております。
──この舞台を観ることによって『黒蜥蜴』ももっと楽しめるものに。
喜多村 そうです、多分10倍、20倍楽しんで頂けると。
河合 また『黒蜥蜴』をご覧になった方も、とても楽しみにしてくださっているのではと思いますし、今回初めてご覧になるお客様は、是非『黒蜥蜴』を観たいと思って頂けるのではないかなと。そういう本当にしっかりとしたつながりのある作品に出来上がったことを、とても喜んでいます。
喜多村 道具も前回の『黒蜥蜴』の世界観のまま、またちょっとデラックスになりましたので、『黒蜥蜴』の舞台にもまた、更に可能性を感じさせるような自主公演になったと思います。

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──宝塚のレビュースターでいらした貴城さんが、レビュースターの役を演じることについては?
貴城 このお芝居では、ショーナンバーがたくさんあるということではなくて1点集中型で頑張っているのですが、レビューの場面ではなくても、普段の会話の中でもレビューの女王らしさを醸し出せたらいいなと思っています。宝塚時代の華やかなレビューの経験が、もしかしたら役に立っているかも知れないですね。
──貴城さんが座組に入られたことで皆さんはいかがですか?
河合 普段はお食事を一緒にしたりして何気ない話をしている仲で、宝塚時代には舞台を拝見したことがなかったのですが、やっぱり宝塚のトップスターさんというのは、本当にスターさんなんだ!と、こうして舞台で間近で接して思いました。華やかさを添えてもらえて嬉しいですし、またこの夫婦初共演というのが。
喜多村 夫婦になってからね。
河合 そう、なってからの初共演がね、ひとつの大きな話題になるのではないかと思っております。
喜多村 本当に初めてなんですよね。夫婦になって仕事場も一緒で、24時間一緒だなというのが初めてで。劇中にも僕たちが夫婦であることと、明智と黄金仮面の関係とがリンクしている場面もいくつかありますし、円玉と花菱蘭子が絡むところもありますので。ちょっと我々としてはプライベートを覗かれているような、少し恥ずかしい気持ちもあるのですが。

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河合 でも二人の場面はね、家で十分稽古できますからね。
喜多村 そう! だからこの人(貴城)との場面だけは、なんとか台詞覚えてるの(笑)。
貴城 ええー?そこだけ?(笑)
喜多村 他のところは全然覚えられない(笑)。ここだけでも相当な台詞量なんですけどね。
貴城 言い訳してる!(笑)
喜多村 自主公演なので僕ら中心に書いてくださったので、もうすごい量なんです。もう天文学的な(笑)。今も頭の中をグルグル文字が、ワードが回っていて沸騰しそうなのですが。そういう意味では今回奥さんに、興行面でも役者としても助けてもらって、ちょっと見直したと言うか。
河合 惚れ直した?
喜多村 惚れ直したと言うか、まぁ(笑)。とにかく6年ぶりなので、共演するのは。

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──貴城さん、今日宝塚音楽学校の合格発表がありましたが、後輩たちにエールを。
貴城 今回劇団新派という、1つの劇団に入れて頂いて、あぁ劇団っていいなとすごく感じました。外でお仕事をしていますと、色々な方が集まったカンパニーでやることが多いのですが、新派は、宝塚もそうですが劇団の温かさみたなものをすごく感じます。上の人がお芝居を見てくれて、色々なことを教えてくれる。私も今回色々と教えて頂いたのですが、劇団って普通のカンパニーではないような、幸せな場所だなというのを思い出させてもらいました。宝塚に入ってずっとやっていると、その有難さが感じにくい時もあるかもしれませんが、仲間がいること、家庭的な場所に入れたことに、皆さん感謝を持って頑張って欲しいなと思っています。

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〈公演情報〉
『怪人二十面相〜黒蜥蜴二の替わり〜』
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原作◇江戸川乱歩
脚色・演出◇斎藤雅文
出演◇喜多村緑郎、河合雪之丞、春本由香、貴城けい 他
●3/30〜4/1◎サンシャイン劇場 
3月30日 14時開演/18時30分開演
3月31日 14時開演/18時30分開演
4月1日   13時開演  
〈料金〉1階席 5,000円 2階席 4,000円
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 (オペレーター対応/10:00〜18:00 または03-6745-0888)



【取材・文・撮影/橘涼香】



雑誌「えんぶ」2018年4月号販売ページ


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