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 (c)宝塚歌劇団  
前列左から、美風舞良、朝夏まなと、大空ゆうひ、貴城けい、星風まどか、姿月あさと、真風涼帆、和央ようか、大和悠河、
凰稀かなめ、寿つかさ 

1998年に宝塚5番目の組として誕生した「宙組」創設から20年を迎えた節目を祝う「宙組誕生20周年記念イベント」が、2月19日兵庫県の宝塚大劇場で、歴代トップスターと現宙組トップスター真風涼帆以下、宙組生の出演のもと、華やかに執り行なわれた。
花組、月組、雪組、星組に続く第5番目の組として宙組が誕生したのは1998年1月のこと。それまで宝塚歌劇団の本拠地である、兵庫県の宝塚大劇場のみで行っていた宝塚歌劇の通年公演を、東京宝塚劇場の建て替えを契機に、東京でも実現するべく、東西での通年公演実施の為に創設された、宝塚歌劇65年ぶりの「新組」だった。この新しい組は、初代トップスターの姿月あさと、トップ娘役の花總まり、二番手男役スターの和央ようかをはじめとした既存4組からの選抜メンバーで構成され、香港公演を経て、1998年3月に宝塚大劇場公演『エクスカリバー』『シトラスの風』で船出した。
特に長身の男役が多く集められたダイナミックさと、伝統を一から創り上げる新組ならではの未知数の輝きと、歌唱力に秀でた初代トップスター姿月あさとのもとで培われたコーラスの厚みに個性を発揮。今日まで20年の歩みを進めてきた。
そんな「宙組誕生20周年」を記念して行われた祝祭のイベントは、宙組創設メンバーであり、現在宙組組長を務める寿つかさの司会でスタート。舞台中央に映し出される映像で、お披露目から現在まで35公演59作品の中から、歴代トップスターの変遷を盛り込んだダイジェストが紹介される。姿月あさとの、宙組発足の口上が緊張感にあふれ、あれから20年の感慨を早くも深くするものがある。

そこから、やはり宙組創設メンバーで、現在宙組副組長の美風舞良が加わり、ゲストの歴代トップスターが1人ずつ登場して、懐かしい思い出を語るコーナーへ。
最初に登場したのは昨年11月19日に宝塚を卒業したばかりの、七代目トップスター朝夏まなと。寿が「朝夏まなとさんです」と敬称付で紹介するのにむしろ違和感を覚えるほど、現役時代があまりにも間近なOGだが、グレーのブラウスに黒のパンツスタイルの朝夏は、実に可愛らしい雰囲気を醸し出していて、寿組長が「まぁ君と呼んでもいいの?」と問いかけたほど。「今日はいいです」とにこやかな本人は、「今日2月19日が退団からちょうど3ヶ月目の記念日です」と挨拶し、ピンヒールの歩き方も初々しい。
映像は『王妃の館』の朝夏演じる北白川右京と、現トップスターの真風涼帆が演じるルイ14世がベルサイユ宮殿へと向かうシーン。自身が演じる北白川を「変な人でしたね」と語る朝夏に客席にも笑いが巻き起こり「ベルサイユーへ〜♪」と3人が歌い出すのが、記憶に新しい公演らしさを表している。続いて映像は朝夏退団公演のショー『クラシカルビジュー』の、黒燕尾のダンスシーンとなり「宙組全員のパワーを背中に受けて踊っていた」と振り返る言葉に、男役朝夏まなとがこだわり抜いた、黒燕尾のダンスシーンの美学が思い出された。
続いて登場したのは六代目トップスター凰稀かなめ。ゴールドのフォーマルでドレッシーなパンツスタイルが美しく、舞台中央で挨拶する声もふんわりと優しいが、一転、寿組長、美風副組長のもとに駆け寄る姿に茶目っ気があるのが、凰稀らしい。2015年2月の退団から丸3年で、朝夏が3ヶ月、私が3年、と椅子に座る朝夏に話しかけながら語る姿は、トップ二番手の盟友関係にあった二人ならでは。
映像は『風と共に去りぬ』のレット・バトラーで「眉毛が太い!もみあげも太い!」と、そこに大きなこだわりがあったことを凰稀が賑やかに語ると、寿も美風から「稽古場からその太さに違和感がなかった!」というエピソードも。一転して『ベルサイユのばら〜オスカル編〜』の、オスカルのラストシーンが映し出され、これが同じ人かという宝塚ならではの変身の妙が映像からも伝わる。本来アンドレが迎えにきてガラスの馬車に乗るラストシーンが多い『ベルサイユのばら』だが、発表こそしていなかったものの、上演時すでに次公演での退団が決まっていたことから、オスカルの一生を男役スター凰稀かなめの来し方になぞらえた「花のいのち」の歌詞が書かれたという秘話を凰稀が披露。「その花は女として生まれ、男として生き、人として宙に還る」という歌詞を初めて聞いた時に、サヨナラショーのようだと瞬時に連想したことが蘇った。

次に五代目トップスター大空ゆうひ(在団時は祐飛)が登場。黒のどこかアバンギャルドな出で立ちが、いかにも大空らしく、さりげないけれどもカッコいい、独自の世界観が健在なのを感じさせる。
映像はお披露目公演『カサブランカ』。寿が「1幕のラストシーンですね」と語ると「よくわかりましたね!私、どこかな?と思った!」と笑わせる。役柄が孤独な役だったけれども、店の従業員たちを演じるメンバーが盛り立ててくれたことや、映画で有名な「君の瞳に乾杯」を舞台でやるかやらないか、演出の小池修一郎と何度も話し合ったが「舞台の台詞としてなんとか成立させました!」という納得の言葉に、客席からも大きな拍手が贈られる。
また、退団公演のショー『クライマックス!』の映像が映る中、「私の役はお亡くなり率がすごく高くて、相手役の野々すみ花さんを守ってお亡くなりになることが多かった」と笑わせつつ、「学年が上になってからの主演男役就任、更にトップスターとして宙組にくるという形だったけれども、ずっと下の下級生たちまでが甘やかしてくれて、たぶん一番甘えていられた時期だった」という趣旨の思い出を語り、遅咲きの花だったからこそ、ダンディーな大人の男性を演じられる魅力を放っていた大空トップ時代の、宙組の温かさを改めて感じさせていた。

その後に登場したのが四代目トップスターの大和悠河。現在はモデル並みの体形を誇るキュートな大和だが、この日はイベントの趣旨に見事にマッチしたアイボリーのパンツスーツ姿。「すぐに戻れそうですね」と話しを振られて「戻れますよ!」と男役風の足の組み方を瞬時に見せて、男役のDNA健在ぶりを披露しつつ「大劇場、やっぱり広いですね!」と手をかざして劇場を見回す様が、大和らしいチャーミングさにあふれる。
映像は退団公演の『薔薇に降る雨』。「実はものすごくキスシーンの多い公演で、8回もキスシーンをしているんです。折角最後なのだからとこだわって、様々なバリエーションを考えました」との大和の語りに呼応するように、相手役陽月華とのキスシーンすべてが編集された映像に、場内は笑いに包まれる。また、大和のトップ披露が宙組誕生10周年の記念だったことから、その祝賀も兼ねたお披露目のショー『宙FANTASISTA!』の大階段では、「10年の歴史を引き継いでいくぞ、との思いをこめて振り返っています!」というキメポーズへのエピソードや、冒頭の卵の中から誕生するシーンの話では、寿と美風が「コスモ、コスモ」と、当時のままの呼びかけを披露して、宙組の歴史を創ってきたメンバーならではの会話が美しい。

続いて三代目トップスターの貴城けいが白のふんわりしたブラウスに、同じ白のパンツ姿で登場。「センターに立つだけで圧倒される」と大劇場への里帰りに感慨深げ。ライトのまぶしさにも改めて感嘆しながら、宙組創設20年の祝意を語る。
披露公演の『コパカバーナ』は著作権の関係で、静止画像での紹介だったが、「この公演から宙組に組替えしたけれども、三日くらいでもうずっと前から宙組にいたような気持ちになっていた」と、ここでもまた宙組の温かさが語られる。公演が星組からの続演だったことから、小さなテレビを囲んで星組の映像を見ながらの振り起こしが大変だったエピソードや、ドラマシティでのコンサートで、ジーンズ姿で歌い踊る貴城という、ノーブルで美しい男役だった彼女のアクティブな面も回顧される。
更に退団公演のショー『ザ・クラシック』では、出る場面、出る場面軍服だったという、宝塚の男役の美意識がつまった、様々な軍服姿が映し出され、千秋楽では「I LOVE CHOPIN、I LOVE CHOPIN」の歌詞を、宙組メンバーが貴城の愛称に置き換え「I LOVE かしさん、I LOVE かしさん」と替え歌で歌ってくれた、という宝塚ならではのアットホームなエピソードに、宙組の、宝塚の美点が浮き彫りになった。

そして、宙組創設メンバーであり、歴代最も在任期間の長かった二代目トップスター和央ようかが、白のパンツスーツで登場。客席で見守る、つい先日雪組公演『ひかりふる路』で宝塚に楽曲を書き下ろしたばかりの、夫君フランク・ワイルドホーン氏を紹介。今思い返せば運命の出会いともなった、ワイルドホーン楽曲の退団公演『NEVER SAY GOODBYE』の映像を見ながら、思い出を披露する。
その中で「ワン・ハート」というナンバーで和央が「ひとつの」と歌うと宙組メンバーが「ひとつの」と呼応する歌だったにも関わらず、歌詞を間違い、完全に創作したのに組のメンバーが同じように唱和してくれたという、有名なエピソードを語り、改めて寿と美風に謝る1幕も。二人は「全然大丈夫だった、余裕だった」と返したが、「それは二人が優しいからで、退団後下級生たちに会う度に『あの時は大変でした!』と言われた」と語り、笑わせる。また宝塚での初演を担当した『ファントム』では、顔面に障害を負っているという宝塚では難しい表現が、初演だっだだけに大変だったが、エリックという役柄のピュアで少年のままの心を、自分の大好きなブルーで表現したいという思いを受けて、ブルーのクリスタルで仮面を創ってくれたスタッフの心配りに感謝も寄せられ、宝塚のキャスト、スタッフ一丸となった舞台創りを彷彿とさせていた。

最後にいよいよ初代トップスター姿月あさとが登場。寿と美風と抱き合ってこの特別な日を喜び合う一コマも。組長、副組長として現在の宙組を支える二人が、一瞬にして下級生の顔になることも宝塚ならではだ。
お披露目公演『エクスカリバー』の映像と共に当時を振り返りながら、やはり、65年ぶりの新組の初代トップスターという責任は当然ながら相当に重いもので、「今だから言えるけれども大変だった」と語りながら「大変という暇さえないほどで、とにかくやるしかなかった」という言葉に、姿月が背負っていたものが偲ばれる。また、オペラ「カルメン」を題材にした『激情』では、格闘に近い激しい殺陣があり「戦ったよね〜大変だったよね」と姿月が和央に語りかけ、今や宙組を語るになくてはならない名シーンとなった『シトラスの風』の「明日へのエナジー」でも、「たかちゃん(和央の愛称)、やっぱり汗かいてる!」と指摘して笑いあい、新組の創設時に、組のトップと二番手だった二人の固い絆が感じられた。更に「もうすぐ映ります!」と、群舞の中の寿を示す場面もあり、今でも色敵役をこなせる若々しい組長である寿が、中堅時代の溌剌とした表情に注目が集まり、宙組の歴史を感じさせた。

ゲスト全員のトークが終わると、公募から選ばれた組名お披露目式で、書道家望月美佐氏が書いた見事な「宙」という大パネルと共に、3月に大劇場お披露目を控えた現宙組トップコンビ真風涼帆と、星風まどかも呼び込まれる。傍目にも、このシチュエーションで緊張するなという方が無理だろう、という状態でセンターに立った真風と星風の、直立不動の固くなった姿が初々しい。
パネルを見ながら姿月がお披露目式を振り返る。当時、式に参加していた姿月と和央にも組名は知らされておらず、望月氏がまず一筆目をチョンと置いた時点で、噂されていた「虹」や「夢」ではないな、とわかり、じゃあ何?何?と思いながら、筆運びを見つめていたが、あまりにもパネルの近くに立っていたこともあって「えっ?『寅』!?」と思ったという、姿月の言葉に場内は大爆笑。「宙組に決定!」と聞き、「ああ、『寅組(とらぐみ)』じゃなくてよかったと思った」と振り返り、「空」という字は「空席」にもつながることから、縁起面も合わせて「宙」の字が使われたという経緯を説明し「でも当時はパっと読めなかった」という思い出に、この20年でこの文字が「そら」の予測変換にも登場するようになったのには、宝塚の存在もあったのだろうと思うと、その重みが更に感じられる。

そして、現在お披露目公演稽古中の真風と星風から、『シトラスの風—Sunrise—』〜Special Version for 20th Anniversary〜でアドバイザーを務めているという姿月への謝辞が語られたが、真風ですら挨拶に固さがあったほどだから、星風の御礼の言葉はどうしても滞り勝ちのものに。そんな星風とリアルタイムで舞台を共にしていた凰稀と朝夏の子供を案じるような表情と共に、星風がようやく話し終わった時、隣でガッツポーズをした大空の様子がなんとも温かい。これが宝塚という花園で育った人同士の絆なのだなと、改めて感じさせる瞬間だった。
姿月の「今の宙組らしい、新たな『シトラスの風』を創り上げて欲しい」という言葉と共に、歴代トップがエールを贈る中で、貴城に「真風さんが本当にカッコイイ」と讃えられた真風が、「ドリンキング・バード」もかくやとばかりに、頭を下げ続ける姿にも微笑ましい笑いが場内に広がる。大和が、宙組創設時に月組にいて感じていた「ダイナミックでエネルギッシュで、とてつもない可能性がある組だと思って見ていました。これからもどこまでも羽ばたいて、飛躍して欲しい」と語れば、大空が「20年と言えば成人式。これからもっと熟成していくでしょう。宙組のカラーはすでにあると思いますが、伸びしろがあるところが面白い魅力」と、組の発展に期待した言葉が聞かれ、宙組の軌跡を振り返るイベントはいよいよクライマックスの歌唱披露に。

まず、宙組創設メンバーの姿月、和央に真風が加わり「夢・アモール」を歌いながら3人が銀橋を行く夢の共演が披露され、そこから姿月がソロを取り、現宙組生全員とのコラボレートによる「明日へのエナジー」へ。宙組を象徴する楽曲として、凰稀、朝夏時代にも再演が繰り返されてきたが、やはり初代の姿月のあくまでもソフトでありながら豊かな歌声の為に、この曲は創られたのだと感じさせる歌唱が圧巻。手振りの範囲に納まる振付で、この日は歌唱のみの披露だったが、各組の個性的な面々が集まってできあがった、宙組の新しい組としての団結を、見事に果たしたこの曲のルーツが、現在の宙組へと引き継がれるコーラスの厚みに、ここから30年、40年へと歩みを続ける「宙組」の栄光の明日が見える思いだった。
イベントの最後は、出演者全員で「シトラスの風」を大合唱。「先輩方の熱い思い、情熱を絶やさぬよう、これからも精進して参ります」との真風の決意宣言で、夢のようなイベントの幕が下りた。
更に鳴りやまぬカーテンコールに応え、もう一度幕が上がり、姿月が「宙組の歴史には、今日は参加していないが、花總まり、紫城るい、陽月華、野々すみ花、実咲凜音の歴代トップ娘役、客席にいる初代組長・副組長の大峯麻友さん、出雲綾さんをはじめとした、宙組に在籍したすべてのメンバーの思いがこもっている。今日ここに集った私たちは、親戚のような家族のような絆で結ばれていて、ずっと宙組を応援しているから、初日に向けて頑張ってください」という趣旨の言葉が現宙組生全員に贈られ、20年という節目を刻んだ宙組の歴史と、歴代トップスターが1人も欠けることなく大劇場に集った、この輝かしい瞬間に、熱い思いがこみ上げる時間となっていた。

『宙組誕生20周年記念イベント』
構成・演出◇岡田敬二
出演◇(GUEST)姿月あさと、和央ようか、貴城けい、大和悠河、大空ゆうひ、凰稀かなめ、朝夏まなと(就任順)
真風涼帆、星風まどか 寿つかさ、美風舞良、ほか宙組
●2/19◎宝塚大劇場 


〈公演情報〉
宝塚歌劇宙組公演
ミュージカル・オリエント
『天は赤い河のほとり』
原作◇篠原千絵「天は赤い河のほとり」(小学館)
脚本・演出◇小柳奈穂子
ロマンチック・レビュー
『シトラスの風—Sunrise—』〜Special Version for 20th Anniversary〜」
作・演出◇岡田敬二
出演◇真風涼帆、星風まどか、ほか宙組
●3/16〜4/2◎宝塚大劇場
●5/11〜6/17◎東京宝塚劇場
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター 0570-00-5100



【取材・文/橘涼香 写真提供/宝塚歌劇団】 



帝劇ミュージカル『1789』
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