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白井 晃芸術監督を中心に、才能ある若手演出家をフィーチャーして作品作りに力を注いでいるKAAT神奈川芸術劇場。今回は、劇作家・翻訳家としても活躍する谷 賢一の演出により、ブレヒト&ヴァイルの名作『三文オペラ』を上演。いよいよ明日、1月23日から幕を開ける。(2月4日まで)
主人公のマクヒィスにはSOPHIA・MICHAELのヴォーカルで、俳優としてもさまざまな顔を見せてくれる松岡 充。マクヒィスを巡る女性たちには、全日本国民的美少女コンテストのグランプリでドラマなどで活躍する吉本実憂、AKB48の峯岸みなみという初舞台の2人に、宝塚歌劇団元宙組トップスターの貴城けい、ナイロン100℃の村岡希美といった豪華な顔ぶれ。男優陣も舞台・映像と幅広く活躍中の高橋和也、さらに白井 晃も俳優として出演する。

【あらすじ】
マクヒィス(松岡 充)は、乞食商会社長ピーチャム(白井 晃)のひとり娘ポリー(吉本実憂)をみそめ、その日のうちに結婚式を挙げる。それを知ったピーチャムとピーチャム夫人(村岡希美)はなんとか別れさせようと、マクヒィスと長年の親友同志である警視総監タイガー・ブラウン(高橋和也)を脅し、マクヒィスを逮捕させようとする。両親の企みをポリーから聞いたマクヒィスは、逃げると称して娼館に立ち寄るが、そこで昔なじみのジェニー(貴城けい)に裏切られ、逮捕されてしまう。牢獄に入れられたマクヒィスをたずねたポリーと、マクヒィスといい仲になっているブラウンの娘ルーシー(峯岸みなみ)が鉢合わせすると、二人の嫉妬の口論を利用し、マクヒィスはまんまと脱獄するが・・・

1928年という、ナチス台頭前夜の混沌の中で生まれたこの戯曲が、2018年の日本で、何を浮かび上がらせるだろうか。
今回、主役のマクヒィスを演じる松岡 充が、ブレヒトの戯曲やヴァイルの音楽への彼ならではの読み解きなど、この作品について熱く語ってくれた「えんぶ4月号」のインタビューをご紹介。
 
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演じやすくて現代的な谷賢一の上演台本

──まず、この作品についてどんな印象がありましたか。
題名や有名な「マック・ザ・ナイフ」の曲については知っていましたが、それ以上のことは正直あまり知りませんでした。出演が決定してから、内容を知っていく中で、100年近く前の作品なのに、世界中でこれだけ何度も上演されたり、色々な演出家や俳優がトライしたいと思う、その理由がわかりました。現実を映し出す作品というか、現在の僕らの生きる社会を、すごく投影しやすい作品だと思いました。
──演出する谷 賢一さんが翻訳も手がけたそうですが、上演台本はどんな感じですか?
全部現代の言葉に置き換えてあるので、言いやすいです。原作戯曲も読みましたが、比喩を連ねたり、わざと回りくどく言ったりするところが多くて、当時だとそう表現するしかなかったのかもしれませんが、谷さんの訳は、今の若者の表現だとこうなるよという、そういう置き換えをしています。
──ある意味、意訳という感じなのでしょうか?
そうかもしれないですね。それは僕もミュージシャンで歌詞を書いているので、すごく理解できるんです。たとえば僕は、「愛の讃歌」という邦題で有名なエディット・ピアフの「Hymne a L’Amour」という曲を僕の訳詞で歌っているんですが、直訳ではなく、元の歌詞が言おうとしていることを僕の言葉で書き直したんです。その訳で許可をもらうために海外のエージェントに送ったら、素晴らしいと褒めてくれて、この歌詞は曲の想いをよく表現していると、すぐに許可が下りたんです。日本語というのは、幅広い意味を表現できる言語だと思います。ですから谷さんが、ブレヒトの書いた言葉の一番言いたいことを、色々なニュアンスを込めて意訳されているのは、演じる側からも楽しみなことなんです。
──音楽監督は志磨遼平さんで、舞台の音楽監督は初めてということですが。
パンキッシュなロッカーの方で、この『三文オペラ』の中で描かれる民衆のパワーを表現するにはぴったりの方だと思います。ヴァイルのことは、以前からすごく尊敬していて、自作の曲にはヴァイルの影響を受けて作ったものもあるそうです。この『三文オペラ』の音楽に携われて嬉しかったとおっしゃっていました。
──どんなアレンジになっているのでしょうか?
昭和な感じと言ったらいいのか、戦後の高度成長期の歌謡曲的なテイストを取り入れて、庶民から生まれてきた泥臭いパワーみたいなものを感じさせるものになっています。今回、谷さんや志磨さん、そして振付の近藤良平さん、その他にも才能ある気鋭のスタッフの方ばかりで、素晴らしいカンパニーになっています。

絵に描いたような情けない男、マクヒィス

──色々うかがっていると、まったく新しい『三文オペラ』になりそうですね。
そう思います。もちろんそのぶんプレッシャーもすごくて(笑)。有名な作品だけに、好きな方の中に、こうでなくてはならないという価値観も確立していると思います。でも新しいものとして上演する以上は、どこか壊さなくてはいけない。だけど、その壊すことを「わかってない」と受け取られるかもしれない。でもそれは覚悟して挑むしかないだろうなと。
──演じるマクヒィス役ですが、悪党とも言われたり、かっこいい英雄にも見えたり、色々な見方があります。
僕から見たら「ザ・男」ですね(笑)。男というのは、女性のように地に足をつけて強く生きてはいけない、情けない生き物だと僕は思っていて、そういう男性を絵に描いたようなのがマクヒィスだと。でも、男のロマンみたいな不確かなものを原動力にして、人生を進んでいけるのが男でもあって、そういう魅力をふんだんに持っている人だと思います。
──そういう自由なマクヒィスと対峙する警視総監のタイガーと乞食商会のピーチャムを、高橋和也さんと白井 晃さんが演じます。
お名前を聞いたときワクワクしました。まさに二大神のように立ちはだかるお二人の間で、マクヒィスらしく自由に動き回って、翻弄できればいいなと思っています。女優陣も素敵な方ばかりで、吉本実憂さんと峯岸みなみさんは初舞台ですが、二人とも舞台に出たくて、自分から参加してくれただけに、稽古場でも早くから台詞を入れてくるし、気合いがすごくて頼もしいです。

観客の心に深く傷を付けていく

──沢山のミュージカルに出演している松岡さんですが、今回、ヴァイルのオペラということで、音楽活動にフィードバックするものは?
すごくあります。僕らのやっているロックは、いわゆる西洋の音楽理論で、コードの中でやっているわけですが、ヴァイルの作る音楽は無調音楽というもので、音楽理論から外れているんです。なぜここでこの音になるのか、なぜここへ行くのか、音楽理論的には崩壊しています。だから無調音楽と言われているわけですが。それと同じようにブレヒトの戯曲も、これまでやってきた作品とは違う、初めて出会う感覚なんです。ミュージカルって、感情が高まって高まって、台詞よりもリアリティを伝えられるから音楽で表現する、そういうものだと思っていましたし、実際そういう作品が多いです。でもブレヒト&ヴァイルの作品は、そういう方法とは、ある意味、真逆に創られているんです。
──それが、いわゆるブレヒトの異化効果ということですね。
それを初めて体験しました。はいここまで、ここから歌ですという、その突き放し方がすごい。今までも色々なことを演劇から学びましたけど、今回、また新しい世界と出会って、演劇は深いな、目から鱗だなと。
──音楽経験からブレヒト&ヴァイルを理解するところは、さすがミュージジャンですね。曲そのものは歌っていていかがですか?
最初に違和感があるんですよ。でも、それが逆に癖になる。それは音楽だけでなく、シーンも、それぞれのキャラクターもそうです。賢いなと思ったらバカだったり、色男に見えるけどよく見ると醜男だったり、本当はどっちなんだ?という違和感を覚えさせることによって、観客の心に深く傷を付けていく。そしてその傷は、忘れていた頃に日常生活の中にふと出てくるんです。ブレヒトは、観た人の人生の中で違う価値観が生まれるぐらいのものにしないと、意味がないと言い続けた人です。それが全部詰まったような作品ですから、そこをちゃんと理解しながら、受け入れながら、そして観る方にちゃんと傷を残したいと思っています。

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まつおかみつる○大阪府出身。ロックバンドSOPHIAのボーカリストとして95年デビュー。02年『人にやさしく』(CX系)で俳優活動開始。04年『リンダ リンダ』で舞台デビュー。07年『タイタニック TITANIC the MUSICAL』主演で本格ミュージカルに挑戦。13年SOPHIAの活動休止後、MICHAELを結成。音楽活動はもちろん、番組MC、フォトグラファー、小説、エッセイの執筆などジャンルを超えて活躍中。最近の主演作品は『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『私のホストちゃん』『フォーエヴァー・プラット/Forever Plaid』『DAYDREAM BABYS*』『不届者』など。昨年は映画『TOKYOデジベル』(辻仁成監督)にも主演した。

〈公演情報〉
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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『三文オペラ』
作◇ベルトルト・ブレヒト
音楽◇クルト・ヴァイル
演出・上演台本◇谷 賢一
音楽監督◇志磨遼平(ドレスコーズ)
出演◇松岡 充吉本実憂峯岸みなみ/貴城けい村岡希美/高橋和也白井 晃 
青柳塁斗、相川 忍、今村洋一、小出奈央、小角まや、奈良坂潤紀、西岡未央、野坂 弘、早瀬マミ、平川和宏、峰亮介、森山大輔、和田 武 
 
●1/23〜2/4◎KAAT神奈川芸術劇場 ホール
〈料金〉S席7,800円 A席6,000円  U24チケット 3,900円(観劇時24歳以下対象・当日指定席引換・要身分証明書) 高校生以下チケット1,000円(当日指定席引換・要学生証) シルバー割引7,300円(観劇時65歳以上対象) 
(全席指定・税込) 
 P席2,000円/劇中に登場する『ピーチャム乞食商会』にちなみ、ピーチャム商会の一員としてライブで演劇に参加。オールスタンディングの自由席。開演60分前までに集合、「P席レッスン」を受けていただくことが必須。P席はチケットかながわのみの取扱い。
 〈お問い合わせ〉チケットかながわ0570-015-415(10:00〜18:00)
●2/10◎札幌市教育文化会館 大ホール
〈お問い合わせ〉札幌市教育文化会館 事業課 011-271-5822
〈公演HP〉http://www.kaat.jp/d/sanmon




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