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愛媛県東温市にあるミュージカルの常設劇場、坊っちゃん劇場は四国・瀬戸内の歴史と文化をミュージカルにして上演し、本年4月に13年目を迎える。これまで四国を題材に、高知の「龍馬」、香川の「げんない」を取り上げてきたが、徳島だけ取り上げたことがなかった。そこで今回は徳島を舞台に、アジア初演100周年となるベートーヴェンの交響曲「第九」にまつわる物語を上演する。

第一次世界大戦中、徳島県鳴門市には青島で日本軍の捕虜となったドイツ兵の俘虜収容所があり、約1000名の捕虜が収容されていた。この収容所は、福島県会津若松市出身の松江豊寿が所長で「武士の情け」を基本にした、極めて人道的かつ寛大な運営をしたことで知られ、地元の人々はドイツ兵捕虜を「ドイツさん」と呼び、スポーツや芸術、農作業など様々な分野で温かい交流が行われた。
その板東俘虜収容所のドイツ兵が、1918年6月1日、日本(アジア)で初めて「第九」を全曲演奏したという史実は、過去に小説やドラマ、映画化されているが、日本では意外と知られていない。
戦禍の中、異国の地で捕らわれの身となったドイツ兵たちが、故郷への思いと共に平和をという願いを込めて響かせた「歓喜の歌」。その精神は地元の合唱団員たちで今でも歌い継がれている。
今回はこの「第九」演奏のエピソードを、四国の遍路宿の一人娘と若いドイツ兵捕虜との許されない恋を軸に、板東の人々とドイツ人との美しい交流を描き、人類愛と世界平和のメッセージをミュージカルとして届ける。

脚本は映画『パッチギ!』『フラガール』、NHK連続テレビ小説『マッサン』などで知られる羽原大介、演出は俳優のみならず『熱海殺人事件』『グレイト・ギャツビー』などの演出で気を吐く錦織一清、音楽はシンガーソングライターで俳優としても活躍、『グレイト・ギャツビー』の音楽も手がけた岸田敏志、強力なスタッフ陣が揃った。
またキャストはブロードウェイをはじめ海外のミュージカルでも活躍する四宮貴久がドイツ兵ミハエル役、老舗の遍路旅館の箱入り娘明子には、宝塚歌劇団出身で藤間勘十郎文芸シリーズ『南総里見八犬伝』、『GOEMON』(片岡愛之助主演)、『石川五右衛門』(市川海老蔵主演)、明治座『ふるあめりかに袖はぬらさじ』(大地真央主演)、本格文學朗読劇『それから』など、多彩に活躍中の帆風成海が扮する。
上演期間は本年の1月27日から来年1月まで、その間に徳島公演と東京公演も行われる。

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岸田敏志、徳島県知事飯泉嘉門、四宮貴久、帆風成海、愛媛県知事中村時広、羽原大介

【挨拶】

この作品の製作発表が12月27日に都内で行われ、愛媛県知事・中村時広、徳島県知事・飯泉嘉門、脚本の羽原大介、演出の錦織一清、音楽の岸田敏志、出演者の四宮貴久と帆風成海が登壇。坊ちゃん劇場代表取締役の越智陽一の司会により、それぞれの挨拶が行われた。

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羽原大介
 4年ぐらい前に坊っちゃん劇場で何か作ってくださいという話をいただいて、その後、この板東俘虜収容所のことも知って、そこのドイツ人俘虜が初めて日本で「第九」を歌ったことも知りました。その話はぜひやりたいと思いまして、今回、こういう形で参加させていただくことになりました。私は外国人と日本人のラブストーリーは、映画『パッチギ!』とNHKのドラマ『マッサン』に続いて3本目になります。私の異国人同士のラブストーリーものの集大成のつもりで書きました。あとは信頼する演出家の錦織一清さん、音楽と歌唱指導もしていただく岸田敏志さん、そして出演者の皆さんにバトンを渡して、初日をワクワクしながら待っております。
 
錦織一清 僕がこの話をいただいたのは『グレイト・ギャツビー』でご一緒した羽原さん経由で、大役が舞い込んできたな、自分でいいのかなと思いました。1つの劇場で1年間、同じお芝居をロングランするというのは、あまり東京ではないことで、それを愛媛では13作目ということでびっくりもしましたし、見習うべきところも沢山あるなと思いました。すでに現地での稽古も始まり、楽しくやらせていただいてます。少年隊では何度かツアーで回らせていただいて、それ以来という四国ですが、1年間そこに僕が作った作品がかかっている、僕の思いがそこにあるということで、四国のファンの皆様にも、少しは恩返しできるかなと。初日が開いたあとも、なるべく何回も足を運びたいなと思っています。徳島を舞台にする作品は、この劇場で初めてということではプレッシャーもありますが、一生懸命作らせていただきます。また重たいテーマも入っていますが、ミュージカルという表現はもとはコメディですので、明るく楽しい作品にしたいと思っています。

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岸田敏志 この台本を読ませていただいたとき、初稿から「ああ、これは絶対に面白くなるな」と、素晴らしい話だなと感動しました。その中で、さあ、どんな音楽にということで、テーマが「第九」で「よろこびの歌」ですから、大きすぎる「第九」だけに非常に悩ましいところがありました。ただ僕のミュージカルの音楽作りは、長年自分のために作っていたわけですが、他の方の歌う曲ということになって、普段自分が思っていなかった音楽作りが出来て、それが楽しくなっています。その中で演者の方が、これを自分に持ち歌で歌いたいと思ってくれるような、そして観劇された方が帰り道で口ずさんだり鼻歌で歌ってくれるような、そんな曲作りを目指しています。今回も楽しいものになればと願っております。

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四宮貴久 ドイツ人俘虜ミハエルを演じさせていただきます。坊ちゃん劇場への出演は4回目になります。劇場との出会いとなった『誓いのコイン』では日露戦争時代の物語で、ロシア公演も行い、現地のお客様にたいへんな拍手とお褒めの言葉をいただくという貴重な経験をさせていただきました。今回も同じように、四国で実際にあった史実をもとにしたオリジナルミュージカルですので、日本国内だけでなく海外でも観ていただけるようなパワーを持って作りたいと思います。国境を越えた愛を貫くミハエル役は、笑いから激情まで振れ幅のある大きな役です。精一杯稽古場で深めて、坊ちゃん劇場へ行って楽しかったと言っていただけるよう、絶対にまた観に来たくなるような作品にしたいと思っています。

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帆風成海 
明子役を演じます帆風成海です。私ごとですが出身が愛媛でして、今回この作品に出演させていただけるというお話をいただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。宝塚歌劇では男役でしたので、退団して今回初めて女性としてのラブストーリーを演じます。明子という女性は、もっと広い世界に出たいと熱望するのですが、私自身、宝塚を受けたいと思ったのは、もっと広い世界で勉強したいと思ったからでした。明子と私自身が重なる熱い思いを役に生かしていけたらと思っています。女性役ではまだまだ課題があって、今回も錦織さんにもっとおしとやかにと(笑)。でも強い意志を持った女性であることは確かですので、そこを少しでも表現できたらと思っています。愛媛県、徳島県のみならず、全国の方々にきていただき、四国の良さをわかっていただけるような作品を、座組一丸となって、ロングラン公演ですが、がんばっていきたいと思っています。

中村時広 愛媛県知事の中村でございます。坊ちゃん劇場はある人の言葉を借りれば「奇跡の劇場」と表現されています。年間270くらいの公演を、10数年間にわたって続けてきました。僕も全作品を観てきましたが、最初は愛媛の「坊ちゃん」、そして高知の「坂本龍馬」、香川の「平賀源内」と上演してきて、今回は徳島と全部揃うことになりました。とくに今回は『マッサン』の羽原さん、僕の少年時代から活躍していた錦織さん、そして「きみの朝」を今でもカラオケで歌わせていただいている岸田さんと、素晴らしい方々が集まって、嬉しい限りでございます。そして先ほども話に出ましたが『誓いのコイン』という作品は、日露戦争で捕虜となったロシアの青年将校と日本赤十字の看護師さんの報われない愛を描いて、とても印象に残った作品です。その主演した四宮くんがまた素晴らしい感動を与えてくれると思います。帆風さんは四国中央市出身ですが、文化人をたくさん輩出しているところです。その代表格として出演していただきます。この作品は「第九」がアジアで初めて歌われたという話ですので、その感動的な内容は、観に来てくださった方々を大きな感動に導くのではないかと思っております。ぜひ徳島県はじめ全国の皆様にこの奇跡の劇場に足を運んでいただきたいと思っています。
 
飯泉嘉門 徳島県知事の飯泉でございます。今回は徳島を舞台にした作品ということで熱く感謝を申し上げます。いつになったら徳島をテーマにしてくれるかなと、首を長くして待っておりました(笑)。今回の舞台となる板東俘虜収容所ですが、青島から連れてこられたドイツ兵の方々について、会津藩出身の松江所長がたいへん人道的な扱いをされたんです。会津藩も維新では朝敵でしたから、彼らを会津藩士に見立て、お国のために戦った英雄だとして、自由な活動をさせました。オーケストラは3つありましたし、ドイツ語の新聞やプログラムを印刷する印刷所、ビール工場、パン工場など収容所の中に作るのを認めていたんです。一方で四国遍路の最初の札所が鳴門市にありまして、その歴史から徳島には御接待の文化が根づいていて、地元の人々は「ドイツさん」と交流を行いました。ですから板東俘虜収容所は「奇跡の俘虜収容所」でもあったのです。そこから当時の最先端の技術によって様々なものが作られ、ユーハイムなどで知られるお菓子、ドイツパン、それに楽器製造、めがね橋などの土木技術、そういうものが四国から関西へと広がっていったわけです。そのドイツさんたちが帰国をする日、1918年6月1日、感謝の念を込めて演奏したのが、アジア初演の「第九」です。
その100年目となるのが2018年で、国内外の演奏家によって「第九」の演奏会も行います。まさにタイムリーな時期にこの作品が上演されます。そして、戦争の足音が聞こえてくると言われている現在こそ、敵国同士が友情を温めたこの歴史的事実を世界に発信したいと思い、徳島県と鳴門市、ドイツのニーダーザクセン市、リューネブルク市が共同して、「板東俘虜収容所関係資料」をユネスコの「世界の記憶」遺産に申請することが決定しました。そうした意味からも、徳島からこの作品を大いに盛り上げていきたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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【帆風成海からのメッセージ】

私は愛媛出身ですが、徳島県でこのような話があったことを知らなかったのです。たいへん驚いたのと同時に、この素晴らしいお話を皆さまにお伝えできる機会をいただいたことを、本当に嬉しく思っています。
最初に台本を読んだときは、女性としてラブストーリーを演じるのは初めてなので大丈夫かなと思いましたが、明子としてミハエルさんとの熱い愛を演じられたらと思っています。女性役はやはりまだまだ慣れていなくて、稽古場で錦織さんに沢山注意されています(笑)。宝塚を退団してから有り難いことに、色々なジャンルのお仕事をさせていただいていて、作品ごとに周りのキャストの方々も違えば私の役も違いますので、その変化を毎回新鮮に楽しませていただいています。
いつもでしたら短いと1週間、長くても1ヶ月公演でしたが、今回はロングラン公演です。長期公演で同じ役を同じメンバーでさせていただくということは、現状に満足せず、繰り返す中で、私自身も成長していくことが課題だと思っています。そしてこの作品をより素晴らしいものにすることが、故郷・愛媛の皆さまに恩返しすることだと思っています。
宝塚ファンの方々にも、ぜひ観にきていただければ嬉しいです。近くに道後温泉もありますので、温泉のついででもかまいませんので(笑)、ぜひ坊っちゃん劇場へ足をお運びください。

〈公演情報〉
坊っちゃん劇場第13作「第九」アジア初演100周年記念作品
ミュージカル『よろこびのうた』
脚本◇羽原大介
演出◇錦織一清
音楽監督・作曲◇岸田敏志
出演◇四宮貴久、帆風成海、小林遼介、村上幸央、中村元紀、梶 雅人、渡辺輝世美、瀧田和彦、長本批呂士、脇山尚美、小野佑子、松尾奈実、佐藤朱莉 
●2018年1月27日〜2019年1月◎坊っちゃん劇場
●2018年10月18日〜21日◎徳島公演・あわぎんホール徳島県郷土文化会館
●2018年11月28日・29日◎東京公演・ティアラこうとう




【取材・文・撮影/榊原和子】


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