日本のミュージカル界で、長年愛され続けているミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』。その栄えある50周年記念公演が、12月5日からついに日生劇場で幕を開ける。
今回の出演者の中から、実咲凜音に続いて、入野自由と広瀬友祐の「えんぶ12月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

入野自由インタビュー

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長女ツァイテルと結婚する仕立て屋のモーテル役を演じる入野自由。
気の弱い、心優しい青年が、結婚は家長が決めるものというユダヤの厳格な戒律としきたりを乗り越え、愛し合うツァイテルへの思いを成し遂げる。作品の大きな山場を握る人物だ。
そんな役柄に、前回パーチック役で出演していた入野は、どんな思いとアプローチで挑んでいくのだろうか。

様々な経験を経た今だからできるモーテル役

──入野さんは2013年の公演にパーチック役で出演していますが、今回、モーテル役でのオファーを受けた時の気持ちをまず教えてください。
これまで演じてこられた方たちとの年齢の違いもあり、最初にお話しを伺った時には驚きがありました。でも前回出演させて頂いたことによって『屋根の上のヴァイオリン弾き』という作品の素晴らしさは肌で感じましたし、今、振り返ると、前回は若さに任せて、ただがむしゃらに突っ走って演じていたなと。そこから月日も経ち、様々な経験もさせて頂いてきた中で、今だからこそできることもたくさんあると思うので、今回また新たに、モーテル役でこの大好きな作品に取り組めることを嬉しく思っています。
 
──モーテル役はビッグナンバー「奇跡の中の奇跡」を歌い踊る、とても印象的な役ですが、役柄の魅力をどう感じていますか?
モーテルは気弱で、思ったこともなかなか口にできない人物として登場するのですが、そういう男性が、「ツァイテルと結婚させて欲しい!」と口にできた喜びを爆発させて、「奇跡の中の奇跡」を歌い、更に、父親になり、家族を持つことによってどんどん変わっていく。彼はこの物語の全編を通して成長していくんです。そこが見どころの1つでもありますし、父親としてたくましくなりながらも、根底に持っている優しさや信仰心は変わらない。彼のそういう面が、作品そのもののテーマにも通じているので、とても魅力的な役だなと思います。そんな彼の成長を大切に演じたいですし、それは自分だけでできることではなくて、ツァイテルの実咲凜音さんや、テヴィエの市村正親さんとのやりとりの中で出来上がっていくものだと思うので、稽古をとても楽しみにしています。

「座っているだけで夫婦」の市村さんと鳳さんを目指して

──相手役になる実咲さんは元宝塚のトップ娘役で、これが女優としての初舞台になりますが、共演する楽しみなどは?
パッとお会いした時にあまりにもキラキラしていらして「僕が相手役ですみません」と思ったんですが(笑)。
 
──そんなことは全くないです!とても素敵なお二人です。
でも実咲さんは今まで男役の方とお芝居をされていて、宝塚の男役さんはすごく凛々しくて、「ついて来い!」という感じだったと思うのですが、僕はそういうタイプではないので、彼女にとって新鮮かもしれません(笑)。二人で1つ1つ相談しながら丁寧に作っていきたいですし、特にモーテルとツァイテルは、舞台に出て来た時にはお互いに生涯の伴侶はこの人だと想い合っている関係ですから、そこに至るまでの、二人が心を寄せ合っていった過程をきちんと共有していきたいです。前回、市村さんと鳳蘭さんが、ただ二人で座られているだけで長年連れ添った夫婦に見える、その何気ない空気感に感動したので、僕たちもそうなれるよう頑張っていきたいです。この作品はユダヤの人々の暮らしや信仰が描かれていて、一見日本人には馴染みが薄い世界のはずなのに、50年も愛されてきたのは、根底に普遍的な家族愛、人種や国境を越えてわかり合える大切なものが流れているからだと思います。僕にとっても、深い思い入れのある作品の50周年記念公演に出演できる喜びを胸に、より深く深く表現していきたいと思います。全国で公演がありますので、是非各地でお会いしましょう!

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いりのみゆ○東京都出身。『コルチャック先生』で子役として初舞台を踏み、95年『逮捕しちゃうぞ』での声優デビューなど、多彩なジャンルで活躍。2009年にはCDデビューを果たすなど、更に活躍の場を広げている。近年の主な舞台作品は『屋根の上のヴァイオリン弾き』『タイタニック』『HEADS UP!』『ETERNAL CHIKAMATSU』『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』など。


広瀬友祐インタビュー
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次女ホーデルと愛し合う革命家の学生パーチックを演じる広瀬友祐。進歩的な思想でテヴィエ一家を驚かせるなか、唯一の理解者となったホーデルが、ついに政治犯としてシベリアに送られた彼を追って、愛する家族と故郷を離れる。作品の中で最も大きなドラマを内包する役どころだ。そんなパーチック役に挑む広瀬に、伝統の作品に新しい風を吹き込む意欲を聞いた。

素晴らしい出会いに心の中でガッツポーズ

──日本初演から50年の記念公演にオファーを受けた時の気持ちから教えてください。
率直に嬉しかったです。僕は生きるということは巡り合うことだと思っていて、出会いと別れを繰り返して人生がある中で、このタイミングで『屋根の上のヴァイオリン弾き』のパーチック役に出会えたことに、喜びしかなかったです。俳優として、市村正親さんとはいつかご一緒したいという夢もありましたから、心の中でガッツポーズをしました。
 
──市村さんや鳳蘭さんは、日本のミュージカル界の「顔」と言える方たちですね。
役者としても、人間としても偉大な先輩方です。僕はこれまで経て来た道程で、近くに素晴らしい先輩がいてくださることが、どれだけ人生を左右するかを強く感じていて、だからこそ、この機会に先輩方から吸収して学んで、作品に取り組んでいけたらと思っています。

受け継いで生まれ変わらせるパッションは常に持って

──演じるパーチック役についてはどんな印象を?
教養もあり野心もあり、まっすぐに革命に夢をかけている、とても純粋な青年だと感じているので、何よりもまずピュアに演じたいです。
 
──『エリザベート』でも革命家の役を演じましたが、理想に向かって何かを変えようとする熱い思いに共感するものはありますか?
僕は32歳になるのですが、もっと若い世代の人たちもどんどん出てきている中で、決して変えてはいけないものもありますし、時代に合わせて変えていかなければいけないものもあると感じています。先輩方が作り上げてきてくださったものを受け継ぎながら、良い意味で生まれ変わらせるのは、次世代の仕事だと思いますし、そういうパッションは常に持っています。今回も50年愛されてきた作品に携われるので、これから先もこの作品が愛され続ける為に、今回の座組ならではの新しい『屋根の上のヴァイオリン弾き』が作れたらと思っています。
 
──相手役になる次女ホーデルの神田沙也加さんとは『1789─バスティーユの恋人たち─』で共演していますが、今回がっちりお芝居をすることについての期待は?
『1789─バスティーユの恋人たち─』では舞台上で一緒のシーンがあまりなかったのですが、やはり気心が知れた間柄なので、役を作っていく上でやり易いですし、今回、再会した時、僕が「さーやで良かった!」と言ったら「ヒロで良かった!」と言ってくれました。そういう恵まれた環境の中で、僕の違う面も見て欲しいですし、さーや演じるホーデルと僕のパーチックがなぜ惹かれ合うのかにも、説得力を持たせられるようにしていきたいです。
 
──改めて、これだけの長い間、作品が愛され続けてきた理由はなんだと思いますか?
やはり本当に愛に溢れた、温かい作品だということではないかと思います。愛は誰でもが求めているものだし、それは普遍的なものだと思うので。僕がそんな作品の50周年記念公演に出演できることが、偶然ではなく必然だとするならば、これまで自分に関わってきてくださった方々、進んできた道程への感謝も大きくなりますし、僕自身のこれからの人生にとっても貴重な時間になると感じています。今、長く続いてきた伝統が利便性を求めるあまりに壊されることが増えていて、人生に疲れている方もたくさんいらっしゃると思います。そんな時代だからこそ、普遍の家族愛を感じられるこの作品に触れて頂きたいですし、僕も市村さん鳳さんにしがみついて頑張りますから、是非劇場にいらしてください!

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ひろせゆうすけ○東京都出身。日本人離れしたマスクと恵まれたプロポーションで、2.5次元作品を皮切りに、数々の舞台で注目を集める。近年は大作ミュージカルへも次々に出演。更に活躍の場を広げている。近年の主な舞台に『エリザベート』『1789─バスティーユの恋人たち─』『ロミオ&ジュリエット』『グレート・ギャツビー』『パジャマゲーム』等があり、18年『1789─バスティーユの恋人たち─』で再びフェルゼン役での出演が控えている。


〈公演情報〉 
やね
ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』
台本◇ジョセフ・スタイン 
音楽◇ジェリー・ボック 
作詞◇シェルドン・ハーニック
オリジナルプロダクション演出・振付◇ジェローム・ロビンス
日本版演出◇寺秀臣
出演◇市村正親 鳳蘭 実咲凜音 神田沙也加 唯月ふうか 
入野自由 広瀬友祐 神田恭兵 今井清隆 ほか
●12/5〜29◎日生劇場
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9時半〜17時半)




【構成・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】



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