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江戸川乱歩の傑作小説を、三島由紀夫が戯曲化した究極のエンターテインメント作品として、愛され続けている『黒蜥蜴』。
これまでにも様々な演出家により、多彩な上演が繰り広げられてきたこの戯曲を、英国演出家で世界的な評価を得ているデヴィッド・ルヴォーが、長年夢に描いてきた演出プランで上演するという刺激的な興奮に満ちた舞台が、2018年1月9日〜28日、日比谷の日生劇場で幕を開ける(のち、大阪・梅田芸術劇場メインホールで、2月1日〜5日まで上演)。
 
日本に魅了され続けてきたルヴォーが、敬愛する三島由紀夫の戯曲をどう舞台に描き出すのか、中谷美紀、井上芳雄をはじめとした豪華出演者の顔ぶれもふくめ、今、高い注目が集まっている。
そんな舞台に、家政婦ひな役で出演するのが、元宝塚歌劇団雪組トップスターで、女優としての活躍も著しい朝海ひかる。今年、女優10周年を記念したダンスライブショーを大成功させた彼女が、新境地ともいえる役柄にどう挑むのか。新たに生み出される『黒蜥蜴』の世界への意気込みと共に、想いを聞いた。

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三島戯曲とルヴォー演出、二つの夢が叶う舞台

──『黒蜥蜴』という歴史ある作品に出演が決まった時の気持ちから教えてください。
三島由紀夫さんの戯曲を演じたことがこれまではなく、いつかその世界に入りたいと思っていましたから、念願叶って作品に携われる喜びがまずはじめにありました。そして、デヴィッド・ルヴォーさんの演出を受けたいとずっと夢みてきましたので、まさに夢が一度にダブルで叶ったという思いでした。私にとっては、今まで演じてきた作品とは、毛色の違う役なのですが、「是非に」とおっしゃって頂けましたので、二つ返事で「やらせて頂きたいです」と申し上げました。

──今、お話に出ましたが、家政婦のひな役ということで、今までの朝海さんのイメージからすると「おっ?」と驚きのある役柄ですね。
そうなんです。『黒蜥蜴』に出演させて頂くことを話しましたら、かなり多くの方から「なんの役で?」と言われました(笑)。

──しかも、多くの方がご存知の作品とは言いながらも、ひな役についてはどこまで話していただいていいのか?という部分もあるのですが。
そうですね。ちょっと伏せておきたいところが(笑)。

──そういう、とてもミステリアスな役ですが、役柄をどのように捉えていますか?
物語の中では、色々と秘密を持っている役なのですが、まず人物像として、ひなという女性が歩いてきた人生というものを想像して考えて、それを土台に創っていきたいなと思っています。そこがきちんとあれば、きっと『黒蜥蜴』という作品の中での、役柄の魅力や色が、おのずと出るのではないかなと思いますし、そこを自分なりに演じてみたいです。

──秘密のある人物というところでは、朝海さんのこれまでのイメージから少し離れていることが、逆に生きる部分もあるのでは?
本読みは、まだまだ自分でも探っている状態で読んだのですが、他のキャストの方たちから「今までに聞いたことのない声だった」と言っていただけたので、そこで私自身も、不安より楽しみが増えました。

──声のトーンなど、かなり考えたのですか?
逆に、あまり声を作らないでいこうと思いました。話し方や、ニュアンスでにじみ出るものがあった方がいいと。やはり三島さんの素晴らしい戯曲ですから、そのまま読めば、言葉遣いから役柄の在りようが浮かびあがるように描かれているので、役者が小手先で変えるよりも、戯曲に寄り添った方がいいのだなと感じました。

──では、ある意味戯曲から引き出された部分も?
そういうところは大いにあると思います。

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シンプルな中にこそ浮かび上がる人間の多面性

──そんな三島戯曲の魅力については?
やはりセクシーで、目を背けたくなるようなグロテスクな部分や、残酷な面もありつつ、とても情愛の深い美しさもある。そして登場人物全員が多面性を持って、この物語に登場しているのが、ある意味で人間そのものを象徴しているように思えます。例えば、目の前にいる人が満面の笑顔であっても、実は真反対のことを考えているかもしれない。そういう人間の多面性を、この戯曲の中で三島さんが書かれている。それを、深く読み込めば読み込むほど感じます。表に見えるものだけではなく、奥に潜んでいるものが、1枚ずつめくられていく感覚で見えてくることに、読んでいてゾクッとしました。これが名作と言われる戯曲の力なんだなと思いました。
 
──そんな作品を、演劇界の鬼才デヴィッド・ルヴォーが演出するというのも、大きな話題の1つですが、先ほども演出を受けることを念願していたというお話がありましたが、ルヴォー演出の魅力については?
とにかく洗練されていて、シンプルなところに人間のドラマ性だけがフィーチャーされている。ルヴォーさんご自身もおっしゃっていたのですが、だからこそ観客は、人間のドラマを目の当たりにすることができ、常に感動してみる事ができる。そうした人間のドラマが、ルヴォーさんの演出によって更に奥深くなって、そのドラマの裏にあるものまで想像させてもらえる。そんな演出がとても好きですし、毎回拝見するたびに、感動して劇場を後にしていました。
 
──実際に演出を受ける側になって、いかがですか?
本格的な稽古は12月からなのですが、既に3日間ワークショップをさせて頂きました。そこでは役者をとてもリラックスさせて演じさせてくださいました。人間的にも魅力的な方で、その場の空気をより柔らかい方に持っていってくださるので、稽古場の雰囲気もルヴォーさんのマジックにかかり、キャスト同士の絆もより深まりました。
 
──その共演者の方たちも豪華な顔ぶれですね。
中谷美紀さん、井上芳雄さんとは初めての共演で、ちょっとドキドキしていたのですが、ルヴォーさんの雰囲気に加え中谷さんがとても気さくな方で、キャスト全員にとてもフレンドリーに接してくださるんです。役を離れたところでも中谷さん個人の魅力があふれていて、改めて本当に素敵な女優さんだなと感じています。井上さんは、私は客席でずっと拝見していましたが、これまでなかなかご縁がなかったところに、今回ミュージカルではなくストレートプレイの作品でご一緒させて頂けるので、また新たな形でやりとりをさせて頂けています。「ミュージカル界のプリンス」というイメージがあったのですが、中谷さん同様とても気さくな方なので、緊張せずに稽古をさせて頂けたので、本格的なお稽古に入るのがとても楽しみです。

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登場した時に朝海ひかるだと気づかれないように

──朝海さんは、今年は女優デビュー10周年の記念公演も行い、1つの節目を超えて、この公演がまた新たな第一歩とも言えるかと思いますが。
女優として10周年を迎えて、たくさんの先輩方からすれば本当にまだまだなのですが、それでも自分としてここまでやらせて頂けたことは、支えてくださった皆様に感謝の気持ちしかありません。それだけに、今後はまた新たな私を皆様にお見せしたい。それこそ『黒蜥蜴』ではありませんが、裏に潜んでいる何か見えないものを抉り出してお客様に喜んで頂けたら、それが唯一無二の喜びだと、10周年のライブコンサートで改めて感じました。これからも、続けていけるだけ新しい何かを探っていきたいなと思います。
 
──そういう意味でも、今回は絶好の作品と絶好の役どころですね。
そうですね。できれば登場の瞬間は、私だとお客様に気づかれないようにできればいいなと思っています。理想としては「えっ?あそこから出ていたの?」と(笑)見て頂けたら最高だなと思っているので、そうなれるように頑張りたいと思います。
 
──またこの作品には、日本が誇る名探偵・明智小五郎が登場しますが、朝海さんは探偵小説や、ミステリーへの関心は?
大好きなんです。サスペンスドラマもよく見ますし、探偵ものや、刑事ものもとても好きです。その中でも明智小五郎は、すごく素敵な男性ですよね。日本におけるダンディーの象徴のようで。そういう部分も井上さんにピッタリです。
 
──宝塚では朝海さんの同期生の春野寿美礼さんも演じていますね。
そうなんです。やはり男役のダンディズムに通じるものがあると思いますし、三島由紀夫さん自身を投影しているところがあって、明智を見ていると、その奥に三島さんが見えるようでドキドキする部分もあります。稽古がはじまると、更に明智小五郎の素敵さにハマっていく予感がするので、それもとても楽しみです。
 
──では改めて、そんな刺激的な舞台にかける意気込みと、楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします。
この役は朝海ひかるが演じているんだ!ということに驚きを持って観て頂けたら、また楽しんで頂けたらこれ以上の喜びはないと思っています。そうなれるように、全身全霊をこめて頑張って参りたいと思います。またお客様にもルヴォーマジックにかかって頂きたいと思いますので、是非観にいらしてください。お待ちしております!

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あさみひかる○宮城県出身。91年、宝塚歌劇団へ入団。02年雪組男役トップスターに就任。抜群のダンス力を活かした数々のショー作品や、06年『ベルサイユのばら』でのオスカル役が好評を博す。同年、宝塚歌劇団を退団。その後も、ミュージカル、ストレートプレイ、映像などで活躍。17年には女優生活10周年を記念したライブショーを開催、活躍の場を広げている。主な舞台作品は、『蜘蛛女のキス』『エリザベート』『ローマの休日』『しみじみ日本・乃木大将』『おもひでぽろぽろ 』『アドルフに告ぐ』『國語元年』『幽霊』『私はだれでしょう』など、『派遣のオスカル』『螻蛄』などテレビドラマにも出演。

〈公演情報〉
2018-01
『黒蜥蜴』
原作◇江戸川乱歩
脚本◇三島由紀夫
演出◇デヴィッド・ルヴォー
出演◇中谷美紀、井上芳雄/相楽樹、朝海ひかる、たかお鷹/成河 他
●2018/1/9〜28◎日生劇場
〈料金〉 S席 12,500円 A席 9,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉 梅田芸術劇場  0570-077-039(10:00〜18:00)
●2018/2/1〜5◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉 S席 12,500円 A席 9,000円 B席 5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉 梅田芸術劇場メインホール 06-6377-3800(10:00〜18:00)
〈公式ホームページ〉http://www.umegei.com/kurotokage/




【取材・文/橘涼香 撮影/アラカワヤスコ ヘアメイク/arie miyazawa (gem hair&makeup)】






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