(奥より)鈴木亮平、一路真輝 のコピー

新国立劇場では、劇作家ジャン・ジロドゥの戯曲でフランス近代演劇の金字塔と呼ばれる『トロイ戦争は起こらない』が、10月5日から上演中だ。(22日まで。10月26日、27日兵庫公演あり)

この作品は、開場20周年を迎えた新国立劇場の記念公演であり、今注目度が高まっている俳優、鈴木亮平を主演に迎え、一路真輝、鈴木杏、谷田歩ら実力派俳優陣をずらり揃えての舞台となっている。演出を手がけるのは栗山民也。
本作の作者であるジロドゥは、小説家、劇作家のほか、フランス外務省の高官としても活躍し、情報局総裁まで務めた異例の人物。そんなジロドゥが1935年、ナチスドイツが台頭する中、戦争に突き進む人間の愚かしさをあぶり出し、平和への望みをかけて書いたのが、この『トロイ戦争は起こらない』だ。

(前より)鈴木亮平、鈴木杏 のコピー

【あらすじ】
永年にわたる戦争に終わりを告げ、ようやく平和が訪れたトロイの国。
夫である、トロイの王子・エクトール(鈴木亮平)の帰りを待つアンドロマック(鈴木杏)。しかし、義妹のカッサンドル(江口のりこ)は再び戦争が始まるという不吉な予言をする。
一方、エクトールとカッサンドルの弟・パリス(川久保拓司)は、ギリシャ王妃・絶世の美女エレーヌ(一路真輝)の虜となり、戦争の混乱に紛れてギリシャから彼女を誘拐してしまう。妻を奪われ、名誉を汚されたギリシャ国王・メネラスは激怒し、「エレーヌを返すか、われわれ、ギリシャ連合軍と戦うか」とトロイに迫る。しかし、彼らの父であるトロイ王・プリアム(金子由之)やそのとりまきたちは、たとえ再び戦争を起こしてでもエレーヌを返すまいとする。
幾度にもわたる戦場での生活に、戦争の虚しさを感じていたエクトールは、平和を維持するためにエレーヌを返そう、と説得するが、誰も耳を貸そうとはしない。
とうとう、エレーヌ引渡し交渉の最後の使者・ギリシャの知将オデュッセウス(谷田歩)がやってくる。果たして戦争の門を閉じることはできるのか。あるいは、トロイ戦争は起こってしまうのだろうか。宿命の罠は、愚かな人間たちが囚われ堕ちていくのを静かに狙っている―。

この作品について、8月に行われた制作発表で演出の栗山民也はこんな言葉を発表した。

栗山民也コメント】
世界最古の物語といわれる長編叙事詩『イリアス』を、数年前に舞台化しました。その分厚い上下二巻の文庫本を読みながら強く惹かれたのは、この叙事詩が人から人へと語り継がれてきた「声」の口承だということでした。
そのなかに作品のキーワードが、いくつも浮かんで見えてきます。戦争、暴力、権力、家族、愛、不信そして孤独。それらは、ギリシャの昔から今のわたしたちにも繋がれているものばかりで、その神話をもとに1935年にフランスの劇作家ジャン・ジロドウによって新たに書かれたのが、今回の『トロイ戦争は起こらない』です。
この戯曲は、第二次世界大戦勃発の危機を予感し、力強く精緻に、そして詩的にも醜く歪んだ光景の数々を映し出します。そのジロドウの平和への願いも空しく、フランスはその4年後にドイツ軍の侵入を受けるのですが。ジロドゥ自身、この作品の主題に「戦争と平和」を祈る、と記しています。
この劇の主人公であるエクトールは、「相手を殺すのが、まるで自殺のようだった」と語ります。現在の核の時代では、一つの国家や民族だけでなく、それは全人類の自殺を意味することになるでしょう。自ら創り出したものに滅ぼされていくことこそ、繰り返される人間の歴史なのですが、この劇の奥底から、今も続く愚かな戦争のいくつもの断面が、炙り出されてくるのです。(中略)
文学や芸術の持つ普遍の力を、再び思います。この最悪、最低の政治状況のもとで、この作品の「人間と時代について」の有効性を、見つめてみたいと思います。 

鈴木亮平

初日公演の開幕に向けて主演の鈴木亮平からのコメントが届いた。
 
【鈴木亮平コメント】
この作品は古代に起こったトロイ戦争が勃発する直前を舞台にしながら、第一次世界大戦が終わり次の対戦へと突入していきつつある1935年当時の世界が描かれています。その二重の構造がとても面白く感じました。作品自体に現代性があり、ぜひ今観てほしい作品です。
とはいえ、あまり構えずに観てもらえると、タイトルからはいい意味で裏切られるのではないかと期待しています。とにかくラストシーンは衝撃ですよ! 
舞台ならではの生のエネルギーを届けたいと思っていますので、ぜひ劇場までお越しください!


〈公演情報〉
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作◇ジャン・ジロドゥ 
翻訳◇岩切正一郎
演出◇栗山民也
出演◇鈴木亮平 一路真輝 鈴木 杏 谷田 歩 
江口のりこ 川久保拓司 粟野史浩 福山康平 野口俊丞 チョウ ヨンホ 金子由之
薄平広樹 西原康彰 原 一登 坂川慶成
岡崎さつき 西岡未央 山下カオリ 鈴木麻美 角田萌果
花王おさむ 大鷹明良 三田和代  
●10/5〜22◎新国立劇場 中劇場
〈料金〉S席8,640円 A席6,480円 B席3,240円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999


【資料提供/新国立劇場 撮影/谷古宇正彦】




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