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ゴシックテイストのブラックユーモアに溢れたミュージカルとして、2014年の本邦初演が賞賛を集めたブロードウェイミュージカル『アダムス・ファミリー』。この舞台の再演が、日本版演出を担う白井晃が芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場で、10月28日から上演される。(11/12まで。その後、大阪、富山公演あり)
 
アメリカを代表する漫画家チャールズ・アダムス(1912〜1988)の一コマ漫画として世に出た『アダムス・ファミリー』は、その個性豊かなキャラクターが絶大な人気を博し、テレビドラマ、アニメ、映画と、多彩なメディアに進出、世界的に大ヒットを飛ばしてきた。そんな作品がブロードウェイミュージカルになったのは、2010年。『ジャージー・ボーイズ』のマーシャル・ブリックマン&リック・エリスの台本、『ビッグ・フィッシュ』のアンドリュー・リッパの作詞・作曲で、大評判となり、現在も世界各地で上演され続けている。
 
その作品の本邦初演で、アダムス一家の母親モーティシアを演じ、キャラクターにピッタリ! と喝采を浴びた真琴つばさと、今回の再演版で同じモーティシアをWキャストで演じる壮一帆が、ハロウィン・シーズンに挑むユニークなお化け一家のミュージカルへの意気込み、そして宝塚時代のことなどを交えて、語り合ってくれた「えんぶ10月号」の記事を別バージョンの写真とともにご紹介する。

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一見普通じゃない家族の普通の物語

──『アダムス・ファミリー』待望の再演ということで、まず初演のオリジナルキャストである真琴さんから、作品の魅力について教えてください。
真琴 一見普通じゃない家族の、普通の物語というところですね。役柄としては「おばけの一家」ではあるのですが、自分たちは全く普通にと言いますか、自分たちのルールに乗っ取って暮らしている。その「家族円満」のルールが、ちょっとしたきっかけで崩されることに対する恐怖感が、ブラックな笑いの中に描かれている作品です。
──壮さんは作品についてはどんな印象を?
 映画を観て思ったのは、ある程度のレベルを越した「普通」がシュールなんだなということでした。例えば電気ショックを与えて喜んでいたりなど、良い意味で最高に馬鹿馬鹿しくて、笑える。そのシュールさが良いなと。
──そんな作品の中で、演じるモーティシア役の魅力については?
真琴 まず私は、モーティシア役でやっと、自分の声質や声の低さなど地のままで活かせる役柄に巡り合えたので、それはすごく助かったこと、そして笑顔があまりない役柄なのが嬉しかったですね。私、笑顔がすごく苦手で。
 えぇ? そうですか?
真琴 「世界は私のものよ!」という感じの、ほくそ笑むような笑顔は大丈夫なんだけど(笑)。だから、そういう意味でも、すごく自分として役柄にフィットしたという思い出が強いです。そして、モーティシアは母として、妻として、女として、という3つの側面が描かれているのが魅力的な役で、その女心の部分が、初演ではもう少し出せたのではないかと今にして残念に思っているので、再演に向けてこの4年で自分がどれくらい進歩しているか、自分自身も楽しみにしています。
 私はお稽古場でマミさん(真琴)が思われている女心が、どんなものなのか拝見するのがまずとても楽しみです。きっと「元男役」の方々が女優として活動する時、超えるべきハードルがあると思うんです。それを同じ稽古場でマミさんから学び、感じることによって、自分が今後進んでいくべき道程の指針にもなるだろうと思っています。役柄としてはマミさんがおっしゃった通り、私も女心とプラス母性も課題なので、それをどう埋めていくかなのですが。フライヤーの扮装撮影の時に、演出の白井晃さんがいらしてくださって、事細かに指示を出してくださったんです。「もっとイッちゃった眼をして」とか。そこからもう演出を受けはじめたような気分になれたので、更に稽古が楽しみになっています。わからないなりに投げられたボールをガンガン打ち返したいと思っています。
真琴 私の写真はまだ手さぐりの時のものなの。だから、この写真よりはずいぶん役に対しての踏み込みも変わってはいるんですけど、でも、このフライヤーは皆さんに強い印象を持って頂けていたようで、実際舞台をご覧になっていない方々もフライヤーを覚えていてくださって、「『アダムス〜』再演するんだって?」と、たくさんの方から言って頂けるので、インパクトは残せたのかなと。
 私もこのフライヤー覚えていました。「面白そうだな」と思いましたから。
真琴 それは役柄のキャラクターや、演じた方々の個性がこの写真の中にギュッと入っているからこそだと思うし、ミュージカルやお芝居って、実際に観に行った時間だけではなく、観に行くまでのワクワクした時間も楽しんで頂けるものなので、初演をご覧になってくださった方はもちろん、フライヤーで興味を持ってくださった方たちにも再演の舞台をお届けできることが嬉しいです。特に今回、壮ちゃんとWキャストということで、私にとっては一度やったものだから、演じることに正解はないといっても、どうしてもそれが出てくると思うんです。でも壮モーティシアを客観的に観られることによって、また新たな発見があると思うので、それはすごく楽しみですね。壮ちゃんの感じるままに新しいモーティシアをやってくれたら良いと思う。
 そう言って頂けるのは本当にありがたいです。感謝して臨みたいです。

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「縁」を感じる2人で取り組むWキャストの醍醐味

──宝塚時代のお互いの印象はどんなものでしたか?
 私にとってマミさんはもう大スターです。私はファン時代、真琴さん、愛華みれさん、紫吹淳さん、匠ひびきさん、初風緑さん等々、素晴らしい方々が揃っていた黄金時代の花組にハマっていたこともあって、初舞台でご一緒できたのが信じられないくらいでした。その時は真琴さんは、もう月組の二番手スターさんになっていらっしゃいましたが、下級生の面倒もすごくみてくださって、うちの期では「センスも素敵、人柄も素敵!」と大人気でした!
真琴 本当に?(笑)
 本当です! そんな真琴さんと、今回Wキャストで作品に取り組めるのは、ご縁なのかなと感じます。だからこそ物怖じすることなくつとめたいです。
真琴 グイグイ来て!(笑)私はね、宝塚100周年の時にNHKの生中継番組で、壮ちゃんが黒燕尾のダンスを踊っているのを見て「あぁ、自慢できる後輩だ」と思ったのが何より印象に強いの。佇まいと品格があって。でもその後ご飯を食べる機会があったら、ざっくばらんで身近な感じがしたし、その上に明るさもあるから良いな! って。
──お2人とも、宝塚時代に『ミー&マイガール』のジャッキーを演じていますね。
 綺麗だった〜! マミさんのジャッキー! 声はとっても低かったですけど(笑)。
真琴 今のほうが低いけどね(笑)。でもそうか、ジャッキーね、共通点あるのね。そんな2人が、また同じ役を演じるので、「あのファミリーが帰ってくる」プラス壮ちゃんと私とで「2倍になって帰ってくる」を、お客様に楽しんで頂けるように頑張りましょう! 中華街にも行きたいね。ちょうどハロウィンだから一家でも歩きたいし!
 良いですね! ぜひ皆様も、KAAT神奈川芸術劇場に2回、観にお越しください!

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まことつばさ○東京都出身。85年宝塚歌劇団に入団。97年月組トップスターに。01年惜しまれつつ退団。以後は、コンサートやショー、ストレートプレイ、ミュージカルなどの舞台や、ドラマ、ラジオなどで女優として幅広く活躍。またバラエティ番組でも人気を博している。近年の主な舞台に、15年『BLOOD BROTHERS』、16年『The Sparkling Voice─10人の貴公子たち─』、17年『あさひなぐ』『にんじん』などがある。

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そうかずほ○兵庫県出身。96年宝塚歌劇団に入団。実力派の男役として頭角を現し、12年雪組トップスターに。14年惜しまれつつ宝塚を退団後、コンサート活動などを経て、16年ミュージカル『エドウィン・ドルードの謎』で本格的に女優活動をスタート。以後、順調にキャリアを重ねている。近年の主な舞台に、16年『Honganji〜リターンズ〜』『扉の向こう側』、17年『細雪』『魔都夜曲』MUSICAL『WILDe BEAUTY〜オスカー・ワイルド、或いは幸せの王子〜』などがある。


〈公演情報〉
アダムスPR
PARCO Produce ブロードウェイミュージカル
『アダムス・ファミリー』
台本◇マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
作詞・作曲◇アンドリュー・リッパ 
原案・原作◇チャールズ・アダムス
翻訳◇目黒条/白井晃
訳詞◇森雪之丞 
演出◇白井晃
出演◇橋本さとし 真琴つばさ/壮一帆(Wキャスト)  昆夏美 村井良大
樹里咲穂 戸井勝海 澤魁士  
庄司ゆらの 梅沢昌代  今井清隆 他 
●10/28〜11/12◎KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉 
〈料金〉S席12,000円 A席9,000円 U-25チケット6,000円(全席指定・税込) 
大阪、富山公演有り
〈お問い合わせ〉パルコステージ 03-3477-5858




【取材・文/橘涼香  撮影/岩田えり】


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