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男性エンターテイメント集団として活躍を続けるDIAMOND☆DOGS(D☆D)が、結成15周年を迎えた記念プロジェクト公演のひとつ、MUSICAL『WILDe BEAUTY〜オスカー・ワイルド、或いは幸せの王子〜』が、天王洲銀河劇場で上演中だ(18日まで)。
 
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MUSICAL『WILDe BEAUTY〜オスカー・ワイルド、或いは幸せの王子』(以下『WILDe BEAUTY』)は、「サロメ」「ドリアン・グレイの肖像」「幸せの王子」などで知られるイギリスの詩人・劇作家・小説家・コラムニストのオスカー・ワイルドの人生を、彼をめぐる人々との関わりの中から照射していくミュージカル作品。脚本・作詞・演出の荻田浩一が、08年に浦井健治主演で書き下ろして初演した作品を、今回は東山義久率いるD☆Dのメンバーに、壮一帆、小野妃香里、大月さゆの女優陣を加えた新たなカンパニーに当てはめてリブート(再構築)。全く新しい、2017年版の『WILDe BEAUTY』が生まれ出ている。

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【STORY】
1900年、世紀末のパリ。大英帝国のロンドンで時代の寵児となりながら、同性愛者として告発され獄中生活の後に、パリに逃れたオスカー・ワイルド(咲山類)は、数多の恋人たちの中で、唯一彼を見限らなかったロビー・ロス(和田泰右)の看護のもと瀕死の床にある。
今わの際の混濁した意識の中に、いつしか死神或いは天使(壮一帆)が現れ、オスカーの人生を辿りはじめる。浮かび上がる人々は、大女優サラ・ベルナール(小野妃香里)、皇太子の愛人にして女優リリー・ラングドリー(大月さゆ)、厳格な貴族クインズベリー侯爵(森新吾)、愛を教えたマハフィー教授(小寺利光)、画家オーブリー・ビアズリー(中塚晧平)、プリンス・オブ・ウェールズ(TAKA)、故郷アイルランドの家族たち、更に数多の男女。彼らはオスカー・ワイルドの人生をさざめき合うが、誰の目にも今死にゆこうとしているオスカー・ワイルドの姿は、自分の見ていたオスカー・ワイルドとは結びつかない。
「違うわ、彼こそがオスカー・ワイルドよ」。死神、或いは天使の指し示すそこに、ついにもう1人のオスカー・ワイルド(東山義久)が姿を現す。彼こそが、現実のオスカー自身が創り出した、虚像の象徴としてのオスカー・ワイルドだ。現実のオスカーと、虚像のワイルド。互いが互いを「こんな男を僕は知らない」と言う、「オスカー・ワイルド」の人生の真実とは?

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舞台に接してまず感じるのは、作品が思った以上にいびつで、歪んだ、それ故に引きこまれるカラーを持っていることだ。特に1幕ではむしろオーバーアクションで、滑稽味を帯びたハイテンションな演技と演出が多用されていて、出演者の道化師を思わせる衣装や、メイクアップも手伝い、どこかノスタルジックでアングラ的な香りが漂ってくる。
だが、その意外なテンションに混乱させられた後だからこそ、グッとダークにシリアスに転んでいく2幕に向けて高まる緊張感には、感性を鷲掴みにする力がある。その上に、この世界の先にあるものが、赦しなのか断罪なのか、或いは…と、思考を振り回される感覚が、まさにオスカー・ワイルドという特異な人物の虚像と、その中にある純粋なものを照射してくるから恐れ入る。ひたすらに美を求め、美しく在ろうとし、それが年齢を重ねることへの恐れさえ生む。哀しくも美しく、だからこそ恐ろしいオスカー・ワイルドの人生。捻じれていて、ひねくれていて、一筋縄ではいかなくて、だからこそ惹かれる。パンフレットでいみじくも、壮一帆が、小野妃香里が言っているように、このまさに「荻田ワールド」炸裂!の作品が描くオスカー・ワイルドその人は、劇作家・演出家・詩人として、鬼才と呼ぶしかない荻田浩一そのもののようだ。

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そんな感触がこれほど際立ったのは、08年に初演された作品を、今回、D☆D15周年記念の為にリブート、D☆Dのメンバーに壮、小野、大月の女優陣に「当て直した」からこそだろう。ここにはD☆Dの可能性、女優陣の充実、更に荻田自身の深化も巧まずして浮かび上がらせる、中毒性を持った新たな『WILDe BEAUTY』があった。卓越した音楽を書いた斉藤恒芳を含めて、すべての人の進化が作品に陰影と深みを与えている。

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その筆頭となったのがD☆Dだろう。15年の歩みの中で、D☆Dは、天性の華とスター性を有したリーダー東山義久と、今や構成・演出も手掛けるクリエーターとしての顔も持つ森新吾の初期メンバーを軸に変遷を重ね、現在の7人のメンバーが固まって8年目を迎えている。この間に、D☆Dの創るステージは、驚くほどの進化を遂げてきた。良くも悪くも東山が突出していたグループの、各メンバーそれぞれが個性と輝きを大きくし、何よりダンサー5人、シンガー2人と銘打たれていたメンバー構成が、昨今ではダンサーも歌い、シンガーも踊るという、垣根のほとんどないステージングが可能になっている。そうした彼らの成長が、一癖も二癖もあるミュージカル『WILDe BEAUTY』を支える力になっている。

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D☆Dに参加した当初は、歩くだけでも精一杯という様相を呈していた咲山類が、晩年の(と言っても46歳だが)オスカー・ワイルド、東山に並び立つ役柄を熱っぽく演じている姿には感動を禁じ得ないし、小寺利光の飄々としていてどこか奥深い個性。TAKAの良い意味のエキセントリックさ。和田泰右のパッショネイトの中にある真摯なものが、作品を輝かせる要因となっている。

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一方、近年では踊っていてふっと東山と見間違うことさえあるようになった、中塚晧平の華やかなスターオーラを、突き詰めた狂気にもってくるのは、ある意味荻田作品の得意技だし、森のワイルドな攻撃性が強いアクセントになっているのも、今やクリエーターとして、大人の知性を感じさせる森の原点を見るようで、D☆Dを深く理解し、長年共に作品創りをしてきた荻田ならではの目配りを感じる。もちろん、彼らメンバーの成長にある意味追われながらも、きちんとやはり先頭を切り、D☆Dのエンジンであり続ける東山の存在も大きくなるばかりで、この舞台を観る醍醐味を双肩に担って頼もしい限りだ。

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彼らD☆Dと正面から対峙している壮一帆は、この世の者ではない役柄の造形に、やはりこの世ならぬもの、宝塚歌劇という幻想世界で「男装の麗人」であった出自が見事に生きている。しかも、現世を睥睨している死神、或いは天使でありつつ、瞬時にオスカー・ワイルドの恋人、また妻となった時の、たおやかな柔らかさ、どこか心許ないような儚さも醸し出したのは、女優としてのこの人が経て来た経験の賜物だろう。壮が、こうした2つの顔を共に演じ分けたことが、新たな『WILDe BEAUTY』の眩惑感を増幅したのは間違いなく、作品にとって欠くべからざる存在となったのが嬉しい。

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また、森と並んで初演からの出演者である小野が、ガラリと感触を変えた作品の中で、要求される色をきちんと描き出しているのは、改めてその確かな力量を感じさせる場となった。

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やはり宝塚歌劇団出身の大月さゆが、美しさと同時に毒気を、純粋さと同時に振りきった狂気を並び立たせたのが、作品そのものの歪みを表出していて、それぞれが与えられた持ち場をしっかりと固めているのが心地良かった。

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更にD☆Dは言うまでもなく、女優陣もいずれも踊れる人達なのも効果的で、それぞれが代表的な役柄だけでなく、全くの別人でありつつ、オスカー・ワイルドに与えた影響という意味で、ひとつにつながるものを持っているいくつもの役柄を演じることで、更に舞台の眩惑感が高まった。その世界の中から立ち上る純なもの、いびつさの中にあるからこその美しさが十二分に感じられる作品で、D☆Dと女優陣が手がけたからこその新たな荻田ワールド、新たな『WILDe BEAUTY』が生まれ出たことを喜びたい舞台となっている。
 
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〈公演情報〉
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DIAMOND☆DOGS 15TH ANNIVERSARY SERIES
MUSICAL『WILDe BEAUTY〜オスカー・ワイルド、或いは幸せの王子〜』
脚本・演出・作詞◇荻田浩一
音楽◇斉藤恒芳
出演◇東山義久、壮一帆
小野妃香里、大月さゆ
森新吾、小寺利光、中塚皓平、和田泰右、咲山類、TAKA
●9/13〜18◎天王洲 銀河劇場
〈料金〉S席 9,000円 A席 6,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉公演事務局 03-3492-5300 (平日14時〜18時)




【取材・文・撮影/橘涼香】



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