0015

ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」の最新作が、9月8日から東京、愛知、大阪で上演される。今回のタイトルの副題にある「-Le Mouvement Final-〈ル ムヴマン フィナール〉」とは、フランス語で“最終楽章”という意味。2013年から紡がれたセーラー戦士が奏でる物語の結末となる。

【STORY】
衛のアメリカ留学のため、空港へ見送りに来ていたうさぎだったが、何者かに衛の身体を粉々にされてしまう。ショックでうさぎは記憶を失い倒れてしまうが、それを受け止めたのはスーパーアイドル、スリーライツのメンバーだった。
その日は、スリーライツが出演する音楽祭の当日。うさぎたちも出演予定だったが、そこで新たな敵に襲われる。「シャドウ・ギャラクティカ」と名乗る敵集団は、セーラークリスタルを狙うセーラー戦士だった!
さらに、謎の少女ちびちび、そして新たなセーラー戦士、セーラースターライツも現れ、今までにない壮絶な戦いへと突き進んでいく。

このシリーズに2013年からタキシード仮面・地場 衛役として5年連続出演。宝塚時代を超越するような男役の美学で「セーラームーン」の世界を立体化するのに、大きな役割を果たしてきた大和悠河。改めて今回の「セーラームーン」の世界と、また最近の女優としての活躍について話してもらった。
 
0012

男役として追求し続けてきた精神が原作を立体化する原動力に

──悠河さんは、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」(セラミュー)には、2013年からタキシード仮面として出演、作品を牽引してきました。
私自身はセーラームーン世代ではなかったのですが、出演することが決まってコミックを読んでみたら素晴らしい作品で大好きになりました。またタキシード仮面という役柄が宝塚の男役の表現と重なる部分が多かったことで、男役として追求し続けてきた精神そのものが、原作を立体化する原動力になったのかなと思っています。
──今でこそ大和悠河のタキシード仮面はスタンダードという感じになりましたが、最初はある意味チャレンジだったのでは?
やはり1作目は、女性がタキシード仮面を演じるとどうなるのだろうと、制作する側にも未知なものへ挑戦する気持ちがあったと思います。また、その公演から他の男性役も全部女性が演じることになったので、出演者・スタッフの皆さんにとっては探り探りという部分があって、私は男役として当たり前のことをしているのに、歩き方1つから驚かれたり、感心していただいたり、斬新な表現として受け止めていただきました。そこから新しいセラミューを皆さんと一緒に作り上げることが出来て、2作目からはそれをベースに作るかたちになりました。
──セーラー戦士の5人は、当時あまり舞台経験がなかったということもあり、舞台に立つためのノウハウを教えてあげたりもしたそうですね。
初めて舞台に立つという人も何人かいました。宝塚でいえば、初舞台生と作品を創り上げるようなものです。宝塚はトップスターと初舞台生が直接組むことはまずありえない世界ですから、ここではどういう形でやっていこうかと考えを巡らせて、5戦士とはちょっと部活みたいな感じでいつも一緒に集まって、ミーティングしてお稽古してということを積み重ねていきました。私も自分の初舞台を思い出すような気持ちで、同時にどこか上級生感覚になって(笑)、見守るようにここまでやってきたと思っています。
──その新しいセラミューが、どんどん盛り上がって、海外にまで広がりました。
パリで「JAPAN EXPO 2014」の催しに参加したのが初めてで、そのとき、海外でのセーラームーン人気を実感しました。2015年には上海公演を行いましたし、今年も4月にアメリカのヒューストンで開催された「Anime Matsuri 2017」に参加しました。どこへ行ってもお客様がすごい熱狂ぶりで、今さらですが日本のマンガやアニメの人気のすごさを実感させられます。私は昨年、ブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』(宝塚OGバージョン)のニューヨーク公演で、主人公のロキシー・ハートとしてリンカーンセンターに出演したのですが、そのとき大勢の現地のファンの方が楽屋口に集まってきたんです。口々に「セーラームーンのLegend of Tuxedo Mask (伝説のタキシード仮面)に会いに来た」と言われて。それを聞いてびっくり! 本当に感動しましたね。

SM_1193
ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Amour Eternal-(2016年) (c)武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2016

武内直子先生が描かれる世界観の素晴らしさ

──海外でもファンを増やしているセラミューですが、昨年からセーラー5戦士が新しいキャストになりました。新しい戦士たちの印象はいかがですか?
一番感じたのは、役や舞台への取り組みが早くて、セラミューの世界にすっと入ってきたことです。それは前回のメンバーたちが作り上げた舞台を観ていたことが大きいと思います。前回のセーラー5戦士に憧れて、良いところを見習うことで、具体的に作りやすい面があったのだと思います。
──地場 衛の相手役、月野うさぎ役も大久保聡美さんから野本ほたるさんに代わりました。
野本さんは大久保さんとはキャラクターが違うので新鮮でした。シリーズも4作目に入ったことで内容も深まり、ラブシーンも多くなったりしたのですが、そこも野本さんはとても自然に演じてくれました。
──そしていよいよ今回は、2013年からのシリーズの最終章ということですが、ストーリー的には地場 衛が危機に陥るとか?
そうなんです。アメリカ留学に行くはずの空港で、姿を粉々にされてしまうんです。それをみんなが解決しようとして戦うわけですが、セーラー戦士VSセーラー戦士という壮絶な戦いになっていきます。でも、原作のラストシーンはとてもロマンティックな終わり方になっていて、そこに武内直子先生の精神が集約されていると思うのです。それをどこまで舞台で表現できる演出になるか…。武内直子先生が描かれている世界観がとにかく素晴らしくて、醸し出されるあの素敵な空気感をなんとか舞台でも表現したいと、いつも思わせられます。先生と私の美学が1つに溶け合って、巨大な宇宙空間になっていくような、そんな伝説の舞台になるように、心を込めて臨みます。
──観客だけでなく演じる側も感動させてしまうものがあるのですね。
テーマの1つが「愛」で、今の世の中でも変わらず人間の根底にある「誰かのために」という精神が、しっかり描かれているところが素晴らしいんです。誰かのために命を投げうってまで戦うし、自分を犠牲にして何かを差し出すという思いが描かれていて、演じるたびにこちらの精神も洗われます。ピュアな気持ちになりますし、改めて一途な思いに気づかせてくれるんです。そういうところが私自身とても共感できる作品で、男性のお客様も涙していたり、世界中どこでもそれはわかっていただけるテーマだと思います。
──まさにセーラー戦士は、愛と正義のために戦っているわけですね。
その戦士が女の子たちというのもカッコいいですよね。まもられる側だった女の子たちが、逆に男性をまもったりする。それが女の子たちに勇気を与え、そういうセーラー戦士に憧れる読者にとともに作品も育ってきたと思います。まさに愛の世界ですね。人が人として存在するかぎり変わらない愛の世界。人のためにつくすこと、愛の世界のために戦うことを教えてくれるんですね。
──そのセーラー戦士たちをタキシード仮面は、色々な局面で支えますね。
カッコいい女の子たち、がんばっている女の子たちを、さりげなく見まもっている、その大きさを出せればと思いますし、頼りになる存在でいないといけないと思います。ここというときに力が出せないのが地場 衛でもあるのですが(笑)、彼女たちがより力を発揮できるように、輝けるように、心の拠りどころでいたいなと思っています。
──そういう懐の深さが魅力ですね。
わきまえているんですよね。彼女たちの力を信じているから、自分にまかせろとか前に出ていかない。そこが武内先生の描かれる素敵さで、本当の強さは奥が深いなと思わせられるんです。

SM_4169
ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Amour Eternal-(2016年) (c)武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2016

再演で改めて感じた『CHICAGO』の奥深さ

──ところで悠河さんはこのセラミューと並行して、ブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』をはじめとするミュージカルやショー、新派や松竹新喜劇など和物の伝統的な舞台への出演、また来年はハンブルグオペラ歌劇場と二期会(日本の世界的なオペラ団体)の提携公演でオペラデビューを飾ることも発表されました。まさに振り幅広く活躍しています。
それぞれまったく違う世界なので、その中で大和悠河という存在を改めて自覚することができている気がします。自分でもその変化を楽しませていただいています。
──ブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』は長く上演されている傑作ミュージカルですが、演じていてその魅力はどこにあると思いますか?
とにかく良く出来たミュージカルなんです。ボブ・フォッシーさん振付のダンスはもちろんのこと、曲もいいし、衣裳もシンプルですがカッコよくて、すべてに無駄がないんです。ある意味、演じる体そのもので魅せていく、そこに難しさとカッコ良さがあります。演じれば演じるほど面白くなりますし、作品の良さも改めて感じています。
──ロキシー役は当たり役の1つになりました。
再演で演じることができたおかげで、ロキシーという女性を深く理解できたと思います。はじめは弱そうに見えますが、したたかというか、周りを利用してでも生きていく強さがある女性で、可愛いだけでないその強さは、男役をやってきたからこそ出せるところもあるので、とても楽しく演じることができました。
──宝塚歌劇団のOG公演の良さについてはいかがですか?
黙っていてもわかり合えるものがあって、カンパニーが自然にまとまるのは、本当に素晴らしいなと思います。やはり初めて会う方ばかりの稽古場は、探りながら関係性を築いていきますけれど、宝塚出身者ばかりですと、あるルールが出来ていますから、自分の役と舞台に集中できるんです。とくに『CHICAGO』は、アメリカ側のスタッフの方が直接指導してくださる、オリジナルのクオリティを大事にする舞台ですから、宝塚で鍛えられた出演者だからこそ、クリアしていけた部分もあったと思います。

eb7ead0b-s
新橋演舞場「二月喜劇名作公演」より(撮影:竹下力 )

和物の世界を極めている方々から学べる幸せ

──そしてもう一方の和物の舞台は、昨年の『糸桜』で新派という伝統を重んじる舞台に初めて出演、好評でした。
女性役での和物舞台は、宝塚を退団してから演じるようになったので、まだまだ経験が浅いのですが、周りの大ベテランの方々に教えていただきながら取り組んでいます。『糸桜』では、波乃久里子さんにどれだけ教えていただいたことか。新派作品は、日本的な情緒やしっとりとした雰囲気が大好きですので、出演できてとても幸せでしたし、またあの世界で鍛えていただきたいなと思っています。
──今年は新橋演舞場の「二月喜劇名作公演」の『恋の免許皆伝』で、和物の喜劇にも取り組みました。
本当に面白い作品でした。喜劇なのに純愛で、私は武家の娘で、19歳から59歳までを演じ、初めての老け役も経験させていただきました。やはりこの作品でも、久里子さんや相手役の中村梅雀さんに、所作などを色々と教えていただきました。和物は本当に奥の深い世界ですから、その世界の良さに触れることができたのは有り難かったですし、それを極めている方々と共演させていただける機会があるのは、私にとってとても幸せなことです。これからも、ますますしっかりとお勉強させていただいて、私の中にしっかりとした基本を身に付けたいとおもっています。
──そういう意味では、現在出演中の新版喜劇!『売らいでか』も喜劇名作の世界ですね。
今回で2回目の出演をさせていただいていますが、座長の浜木綿子さんはじめ芸達者な、こちらも大ベテランの方ばかりで、本当に得るものが多いんです。とくに私は浜さんを、「この方は天才だ!」と尊敬していますから、そばでそのお芝居を見せていただくだけで得るものが沢山あります。浜さんが子役さんに「こう言ってごらん」とアドバイスするのを聞いているだけで、聞き惚れてしまうんです。それに子役さんといえども愛情たっぷりに厳しく指導されていて、あんなに教えてもらえて羨ましいと思うくらいです(笑)。性格もとてもさっぱりした方で、男前で、話しやすくて大好きな方なので、この作品で全国ツアーなど1ヵ月くらい浜さんとご一緒していることが嬉しくて仕方ないです。

photobg

自分らしくいること、無理をせずにいることを大事に!

──4月にシアタークリエで上演された『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』には、声だけの出演もしましたね。
スヌーピーの漫画『ピーナッツ』が大好きで、ずっと愛読していたので、喜んで参加させていただきました。SNOOPY - チャールズ・モンロー・シュルツ(Charles M.Schulz)の偉大な精神の世界が 私の喜劇の世界に広がっていくことが理想的な夢の世界です。好きなものがお仕事に繋がっていくのは嬉しいですね。
──漫画からオペラまで本当にフィールドが広いですね。
色々な方に「ずいぶん色々なジャンルに出ているんですね」と驚かれたりするのですが、自分ではこだわりなくやっていく中で、いつのまにか広がっていって、そのぶん引き出しが増えてきて有り難いです。 
──テレビでの取り上げられ方もですが、大和悠河のある種のライフスタイルが、皆さんの興味を引くのだと思います。
宝塚時代は私生活を見せないように生きていましたが、自分としては当時も今も変わりなく生きていて、今はそれをほんの少しオープンにすることで、そのままの大和悠河を見ていただこうと。そして、面白いなとか楽しそうだなと思っていただければいいなと思っているんです。余計なことを考えずに自分らしくいること、本当の意味で無理をせずにいたいなと、いつも思っていて、その気持ちに素直に生きてきたし、これからもそう生きていければいいなと思っています。
──最後に、改めてミュージカル『美少女戦士セーラームーン』-Le Mouvement Finalへの意気込みを。
いよいよ2013年からのシリーズの最終章なので、みんなでまとまってガツンとした舞台を作りたいですね。毎回、進化したいと思っていますし、今回もさらに進化したタキシード仮面、地場 衛をお見せできるよう磨きをかけていきます。ぜひ観にいらしてください。


0005
やまとゆうが○東京都出身。95年宝塚歌劇団入団。天性の華やかさと類まれな抜群のスター性で早くから抜擢され宙組トップスターとして人気を博す。09年卒業後は、ブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』、新派公演『糸桜』、新橋演舞場公演「二月喜劇名作公演」他、数多くの主演・ヒロインを務め、舞台、テレビなど幅広い分野で女優として活躍する一方、本の執筆や連載など多彩な才能を見せている。2018年7月、ハンブルグ州立歌劇場と二期会の提携公演『魔弾の射手』でオペラデビューが決定している。


〈公演情報〉
 comment_image_path__4

ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Le Mouvement Final- (ル ムヴマン フィナール)
原作◇武内直子(講談社刊)  
脚本・演出◇平光琢也  
音楽◇佐橋俊彦  
出演◇野本ほたる 竹内 夢 小林かれん 楓 長谷川里桃/大和悠河 他
●9/8〜18◎AiiA 2.5 Theater Tokyo
9/23〜24◎アイプラザ豊橋  
9/29〜10/1◎梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ  
〈料金〉S席8,800円 A席6,800円(前売・当日共/全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)

 (c)武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2017



【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】


ミュージカルセーラームーンシリーズ最終章!お得なチケット販売中。


kick shop nikkan engeki