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宝塚歌劇団花組トップコンビ明日海りおと、仙名彩世を中心とした花組選抜メンバーによる、宝塚オリジナルの新作ミュージカル『ハンナのお花屋さん─Hanna's Florist─』が、東京赤坂のTBS赤坂ACTシアターで上演される(10月9日〜29日)。

『ハンナのお花屋さん─Hanna's Florist─』は、宝塚歌劇団女性演出家のパイオニア植田景子が書き下ろすオリジナルミュージカル。デンマーク人のフローリスト・クリスを主人公に、世界中から人が集まる街ロンドンと、自然豊かな北欧を舞台に、21世紀に生きる人々が求める本当の幸せ、人生の豊かさを問いかける、ハートウォーミングな内容だ。ヒロイン・ミアが内戦の傷跡が残る旧ユーゴスラビアのクロアチアから、新天地を求めてロンドンにやってきた女性という設定もあり、物語にはAAR Japan「難民を助ける会」のメインキャラクターであり、絵本「地雷ではなく、花をください」(「難民を助ける会」会長・柳瀬房子 著・葉祥明 絵)の主人公である「うさぎのサニーちゃん」も登場するなど、21世紀の人類すべてが抱える問題も、根底に織り込まれた作品となっている。

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そんな舞台の制作発表会見が7月都内で開催され、宝塚歌劇団理事長小川友次、作・演出家植田景子、花組トップコンビ明日海りお、仙名彩世が登壇。公演への抱負を語った。

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会見はまず明日海と、仙名によるパフォーマンスからスタート。『ハンナのお花屋さん─Hanna's Florist─』に相応しく、会見場には生花が飾られ、本作の作曲・編曲を担当する瓜生明希葉らが奏でるピアノと弦楽器の生演奏と、スライド映像も加わるという豪華なしつらえの中で、主人公クリスに扮した明日海が登場。世界の人々が感じている幸せ指数が、先進国の中で極めて低いのが日本だという、やや耳の痛い話も織り交ぜつつ、SNSを通じてミアと交流する過程が、芝居仕立てで演じられていく。やがてミアも舞台に登場し、二人のロンドンの街での再会、それぞれの想いが美しく歌われて、ハートフルな作品の世界観が伝えられた。

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その後、「地雷ではなく、花をください」の作者柳瀬房子会長が紹介された後、小川理事長、植田景子、明日海りお、仙名彩世が登壇。それぞれの挨拶のあと、質疑応答に引き継がれた。

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【登壇者挨拶】

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小川
 歌劇団の小川でございます。本日はお忙しい中、またお暑い中お越しくださりありがとうございます。宝塚歌劇団は103周年を迎えております。その103周年は月組公演からはじまりましたが、おかげ様で5組共本当に多くのお客様においで頂きまして、5組共大入りを記録することができました。宝塚歌劇団の「大入り」の基準と言いますのは大変厳しいものでございまして、95%を超えませんと「大入り」とは言わないのですが、全公演全組で「大入り」となりました。これも一重に皆様のお力添えの賜物と感謝致しております。改めてありがとうございます。その中でも、やはり「花組が元気だったら宝塚は元気」だとも言われており、明日海りおが2014年の『エリザベート』で花組トップスターとなりましてから6作すべてが大入りとなっておりまして、これは花組としての新記録でございます。103年の宝塚が堅調でおりますのも、明日海を中心とした花組が引っ張っていってくれているからだと思います。そして新しい相手役の仙名と共に、今回初めて明日海の花組が赤坂ACTシアターで公演させて頂きます。私も前の仕事の時に何度か行かせて頂いたのですが、東京のど真ん中の本当に良い劇場でございます。そこで今回花組が公演させて頂ける、作品は植田景子のオリジナルでハートフルな内容になっておりまして、これを明日海と仙名がどのように演じてくれるのか、本当に今から楽しみでなりません。『ハンナのお花屋さん』で、明日海がどんな大輪の花を咲かせて、花組を彩ってくれるのかをお楽しみして頂き、どうぞ皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。本日は本当にありがとうございました。

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植田
 植田景子でございます。本日はお忙しい中、またお暑い中お集まりくださいまして本当にありがとうございます。私自身オリジナル作品に取り組むのが久しぶりで、原作のあるものや、歴史上の人物を取り上げてきておりまして、完全オリジナルものというのはハードルが高いのですけれども、キャラクター、ストーリー、テーマを含めて、すべて花組の為の書き下ろしですので、非常にやり甲斐のあるものでもあります。私にとっても挑戦で、良い作品にしたいと思っています。また、明日海りおとはこれまでも色々と仕事をして参りましたが、主演として作品を創らせてもらうのが初めてで、彼女がトップスターになってから初めての作品となります。明日海のキャリアの中で、やっていそうで意外とやっていなかった現代ものの役と作品を今回やるということで、花組さんも古典で、戦いのある作品が続いていることもありまして、今回はガラッと180度違う、音楽もカジュアルポップでハートフルな作品をということで、大変悩みましたがこういう方向性になりました。また仙名がトップ娘役になってオリジナル作品の2作目、トップになって3作目ということで、今回のこの役が彼女にとっても勝負所になるものかなと思って…プレッシャーかな?(笑)そういう意味で彼女の何かを引き出さればいいなと思って作っています。先ほどご覧頂きましたパフォーマンスの台詞の録音をする為に、花組のメンバーと久しぶりに会いまして、組自体の雰囲気といいますか、底から出てくる空気感が、明日海の雰囲気そのままなのですけれども、非常に明るくポジティブなものを感じましたので、一緒にやるのをとてみ楽しみにしております。そして温かいものを10月にTBS赤坂ACTシアターから皆様にお届けできるように頑張りたいと思います。

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明日海
 花組の明日海りおでございます。この度はロンドンのハムステッドヒースでフローリストを営むクリス・ヨハンソン役をさせて頂くことになりました。私は研究科2年生の時に植田先生の『THE LAST PARTY』という作品に出演させて頂いてから、芝居が大好きになったというきっかけがありました。ですからいつか植田先生の書かれる作品でご一緒したいと思っておりましたので、脚本を書いて頂けることがとても嬉しかったです。また私の念願のお花屋さんになることができるので、あ、もちろんタカラジェンヌという職業をとても愛しているのですが、一方で幼ない頃からお花がすごく好きで、日常生活の中でお花に助けられているので、身近に感じる心を活かして作品に取り組み、共演するメンバーたちと心を通わせて素敵な作品にしたいと思います。

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仙名
 仙名彩世でございます。この度は私はクロアチア人ということで、私はこのお話を頂くまでクロアチアというのに、あまりイメージがわかなかったのですが…。
植田 こういうのね(仙名の髪飾りのバンダナの柄を指さす)。
仙名 はい(笑)。それで、色々調べていて、2001年まで紛争していたところとは思えないほどとても美しい町で、驚きました。そして今回はクロアチアからロンドンに、生きる為に働きにきた女性の役ということで、このような役は初めてで、私も振り返ってみると、現代物はあまり経験したことないです。植田先生とは『愛と革命の詩』という作品に、初めて出演させて頂きましたが、その時は酒場の女将の役をさせて頂きまして、個性的な役だったのですが、先生の作品はいつも、とても美しくて、深いものが心に響くと思っております。そんな先生の作品にこうして出演させて頂くこと、そして花組でお花屋さんというのが「なんて素敵なんだろう」と思いました。このワクワクした気持ちと、役柄上の複雑な思いもあるのですが、幸せを求めて生きている、皆さまに共感して頂けるような役にできたらいいなと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

【質疑応答】

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──宝塚がキャンペーンに協賛するのは珍しいと思いますが、その趣旨は?
小川 キャンペーンに協賛したということとは少し違いまして、まず作品のテーマがありまして、演出家の植田景子が完全オリジナルを創るということの、色々なアイディアの中から出てきたものに、ハートフルな物語に賛同して頂いたということです。内容につきましては、また植田の方から話があると思いますが、ロンドンの美しいお花屋さんのお話というだけではない、テーマも持ちつつ、お客様にはあくまでも温かい気持ちになってお帰り頂いた中に、何か残るものがあればということでございます。
植田 この作品の趣旨にご賛同を頂いて、対人地雷廃絶キャンペーンの絵本を使わせて頂いておりますが、キャンペーンありきとですとか、その目的でこの公演があるということではなくて、ヒロインがクロアチアからロンドンにやってきた人物なのをはじめ、色々な地域の様々な境遇の人たちがやってきている中で、どんな人でも幸せに生きていって欲しい、でもそれが叶わない人もいるかもしれないし、自分が幸せであることに気づかない人もいるかもしれない。そういうことを考えていた時に「地雷ではなく、花をください」に思い至り、とても魅力のあるキャラクターうさぎのサニーちゃんを使わせて頂きたい、ということでご快諾を頂きました。
──お花屋さんということで、舞台でも生花が登場するのですか?
植田 今、ここには生花を使わせて頂いていますし、ポスター撮影でも生花を使っているのですが、舞台となりますと、やはり大きさの問題やライトが当たることなどもありますので、生花は少し難しいかとも思っています。そこは如何に作り物らしくなくお見せできるかを考えています。
──明日海さん、ポスター撮影の時はいかがでしたか?
明日海 お花屋さん好きと致しましては、まだ準備中のスタジオを拝見した時からテンションが上がってしまって、撮影が楽しみで仕方がなかったです。撮影で使ったブーケは、先生がおっしゃったように生花を使って頂いたので、手にしたとたんにグッと気持ちも入って、とても香りも良くて、生花にして頂けて良かったなと。撮影後には頂いて帰りました。
──宝塚は100周年を超えて、新たなチャレンジをしている歌劇団ですが、新しい世紀に向かう演者として、気持ちの上で変化を感じていますか?また特に小川理事長になってからそのチャレンジが加速しているように感じますが、明日海さん仙名さんから見た小川理事長の人となりは?
明日海 難しいですね(笑)。やはり100周年を超えて3年が経ち、私も花組の主演男役に就任したのがちょうど100周年の時で、それから3年経ちまして、少しずつ、少しずつ見えてくるものや思うことはだんだん変化してくるのですが、やっぱりいつも心にあるのは、支えてくださるスタッフの方々の仕事の丁寧さ、そして宝塚を今に繋いでくださった先輩方のお力と愛と、紡がれたものを感じています。新世紀に向けてという思いはありますが、変わらずに真心というような宝塚ならではのものを受け継いでいくという、受け継いでいかなければならないということを逆に強く感じております。小川理事長は…。
小川 それは良いから(笑)。
明日海 よろしいとおっしゃっていますが(笑)、本当に常にお稽古を見に来てくださったり、声をかけてくださったりするので、いつも見守ってくださっているんだなと感謝しております。
仙名 今、100周年を迎えた宝塚に在籍させてもらっていますが、やはり今までの宝塚を作って、そして発展させてくださった上級生の存在、スタッフの方々の存在を、本当に強く感じていますので、その思いを更に、更に次の時代に、日々舞台を心をこめて務めることで、どんどん繋いでいけたらなと思いますし、お客さまに楽しんで頂く舞台をというのを、いつもいつも思いながら務めて参りたいと思っております。そして小川理事長は、明日海さんもおっしゃったように、稽古場にいつも見に来てくださって、そういう気持ちが皆に伝わってとても励みになっていると思います。ですからこれからも見に来てください(笑)。そして皆の頑張る姿を見て頂ければ、これからもよろしくお願いします。
──明日海さんと仙名さんから理事長への言葉がありましたので、理事長からお二人のコンビに期待するところを教えてください。
小川 特に明日海自身が、本当に責任感があって、一途に芝居をやってくれます。本当に芝居が好きな生徒だな、そこが輝いているなと思います。仙名もまたそんな明日海と組んで2作、余裕が出てきたなと思っております。宝塚歌劇団は1つの作品を出す時に「これまでの最高の作品を」というつもりで、演出家、スタッフ、出演者共に出しているのですが、そこにやはり生徒の資質や思いが出てくるものですから、明日海が更に良くなってくれていることが、仙名と共に更に花組が良くなっていることにつながります。歌劇団もますます期待しているので、どんどん進んでいってもらいたいなと思っています。

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──明日海さんは、ファンの方なら知らない人がないというほどのお花好きで、毎日お花屋さんに立ち寄って帰られるという方ですが、植田先生は作品創りの折にそのことがヒントの1つになったのでしょうか?また明日海さんは、お花屋さんの作品をやるということを聞かれた時はどうでしたか?
植田 実は今回、企画がたくさんありまして、TBS赤坂ACTシアターでやるということで、色々考え、海外ミュージカルの話もありました。赤坂の真ん中でやるというのは宝塚大劇場とは空気感も違いますし、私自身も大劇場でやるものとは違う方向性のものをと、いま流行っている日本の小説とか、どういう内容にするか、今までで一番時間のかかった企画でした。それで、すごくすごく悩んだあとに、プロデューサーに話していて、ふと「最初に明日海りおさんで現代もの、と言った時にイメージしたのは『花屋の王子様』だったんですけどね」と言いましたら、プロデューサーたちが「それ、いいじゃないですか!」と。すみません、こんな簡単に決まったと誤解して頂きたくはないんですが(笑)、私としては「花組で、花屋の王子って、ベタですよ」と言ったのですが、「絶対キャッチーです、ファンの人は見たいです!」と言われまして(笑)。プロデューサーはいそいそと、「以前『宝塚GRAPH』で撮った明日海の花屋の写真があります!」と持ってきてくださって、またそれが似合っていて。私自身もお花は大好きですし、お花をテーマにした作品は言葉もどんどん出てくるし、「そうなのか!花屋の王子でいいんだ」というところから企画の第一歩が決まったということです。
明日海 そうですね。次の公演がどうやらお花屋さんになりそうだとプロデューサーに伺った時には、本当にびっくりしてしまいました。私も色々な取材の度に、花を飾るのが趣味だ、お花屋さんに行くのが大好きだと申し上げていましたら、『宝塚GRAPH』の編集さんがお花屋さんになる企画を立ててくれまして、エプロンをつけて撮影して、夢が叶ったなと思っていましたので、まさか今度は舞台の上でお花屋さんになれるなんて、本当に今まで宣伝してきてよかったな(笑)、と思いました。今回のクリスはとても頭のいい人で、良いい大学を出て、でも突然お花屋さんを持ちたいと目指す。そして花屋も軌道に乗り出してきて、今求めているものは、幸せとはなんだろうと考える時期にいるんですね。私もタカラジェンヌになりたいと家を飛び出し、新人公演の主役をしたい、いいお芝居をしたいというような思いを重ね、「男役10年」をすぎ、花組に組替えしてと、クリスとリンクするような気持ちがたくさんある感じがしていて。クリスも故郷のデンマークを離れてロンドンにきていますし、私も故郷の静岡を離れて宝塚にやってきましたので、そういうリンするところを活かして演じられたらと思っています。

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──仙名さんとの新コンビとなって、2作品が過ぎましたがお互いの魅力は?
明日海 今まで相手役として組む前は、私が『ME AND MY GIRL』という作品に最初に出た時に彼女は初舞台生で、首席で入団しておりまして、とっても優等生のイメージで。そして、私が花組に参りました時にはとてもエレガントな娘役さんだなと。パワフルさと大人っぽさを持ち合わせている人だなと思っていたのですが、いざ組み始めてみると、意外とテンパるところだったり(笑)、あたふたする瞬間があったりして、可愛らしいなと思ったり。でも普段から、もちろん芸事はしっかりやってくれていますし、私が疲れないように、たぶん本当はすごくしっかりしてるんですけれども、私にあわせてボケボケふわふわしてくれるような、気遣いをしてくれるところが魅力だな、できる人だなと思って過ごしております。
仙名 初舞台の時にご一緒させて頂いて、それから明日海さんが花組に来られてまたこうして一緒に舞台に立てているということが夢のようで、幸せに思います。明日海さんは、ここでは語りつくせないほどの魅力がたくさんあります。今お芝居やショーで組ませて頂く中で、明日海さんが、相手との心の交流であったり、その時生まれたもの、空気感やアイコンタクトなどを、ずっと大切にされてきたんだろうなというのが伝わってきます。その根底には舞台に対する愛情や、人に対しての心の底からの信頼や感謝や、色々なものが今の明日海さんの中にあるのだなと思うと、私もそうなりたいと思いますし、尊敬できる明日海さんの隣で相手役をさせて頂けることをとても幸せに思います。これからも二人で素敵な作品を作れるように明日海さんについて頑張っていきたいと思います。

〈公演情報〉
宝塚花組公演
ミュージカル『ハンナのお花屋さん─Hanna's Florist─』
作・演出◇植田景子
出演◇明日海りお、仙名彩世 ほか花組
●10/9〜29◎TBS赤坂ACTシアター
〈料金〉S席8,000円 A席6,000円
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター[東京宝塚劇場] 0540-00-5100
公式ホームページ http://kageki.hankyu.co.jp/



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】



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