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宝塚歌劇団元雪組トップスターで、女優として精力的な活動を続けている朝海ひかるが、06年の宝塚卒業から10年となるメモリアルイヤーを記念して、DANCE LIVE『will』を開催する。
07年、女優として歩き始めた朝海は、ミュージカルからストレートプレイ、そして映像と実に幅広いジャンルで活躍を続けている。その10年の歩みをギュっと凝縮してまとめ、更にダンスに特化して、これまでの「感謝」とこれからも「よろしく」の気持ちを込めた舞台が、今回のDANCE LIVE『will』。あの作品、あのダンス、あの曲、あのメロディを織り交ぜた奇跡の公演は、観客の思い出に直結すること間違いなしとあって、大きな期待が集まっている。
そんなDANCE LIVEを前に、朝海がライブステージへの意気込み、女優としての10年間の歩み、更にその間に多く出演した宝塚OGによる公演を通じて、改めて感じた宝塚への思いなどを語ってくれた。

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10年間の歩みが詰まったDANCE LIVE

──コンセプトを伺っただけでとても素敵な企画だなと感じますが、まず今お話し頂ける範囲で内容について教えてください。
宝塚を退団してから今年で10年経ったということで、退団してから出演させて頂いた作品の中から、曲を集めて構成するショーという形になります。DANCE LIVEと銘打っていますので、全体を通じてダンスが中心の、踊りまくるショーになります。色々なお仕事をさせて頂いている中で、最近やっていないことはなんだろう…と思った時に「ダンス踊ってないな」と感じました。私自身、身体が動くうちはやはり踊る機会を作っていきたいと思っているので、「DANCE LIVEにしよう!」ということになりました。
──宝塚時代からダンスは特に定評のあった朝海さんですから、ファンの方たちも楽しみにしていることでしょうね。
そう思って頂けたら本当に嬉しいです。
──共演者の顔ぶれ、またゲストの方たちも豪華なメンバーですね。
演出の港ゆりかさんが、この方たちなら!というダンサーの方とシンガーの方を選んでくださいました。またゲストの方たちは、思い出のある作品の中でご一緒させて頂いた方ばかりですから、楽しいトークと、その時それぞれの方と一緒に歌った歌などを歌わせて頂きます。
──では日替わりで内容も変わるのですか?
そうですね。ゲストの方たちが替わったら、ガラリと雰囲気が変わるという構成になると思います。
──ということは毎回変化のある楽しいステージになるのですね。でも朝海さんはたくさん覚えることが?
ええ、4パターン覚えないといけないのですけど(笑)、でも今まで歌わせて頂いた曲でもあるので、そのへんはなんとかなるだろう!と思っていて(笑)、頑張ります!
──それぞれの方と「これぞ!」という曲になりそうですね。
このDANCE LIVEを観て頂いたら、10年間私がどんなことをやってきたか、どんな作品に出て来たのかをわかって頂けると思います。そのすべての舞台をご覧になってくださった方にはもちろん、観ていらっしゃらない方にも、「あぁ、こんな作品もあったのね」と楽しんで頂けるステージになると思いますし、その中で、私の10年間を観て頂きたいです。

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発見の連続の中で成長させてもらう日々

──節目のDANCE LIVEを控える中で、宝塚を退団してからの10年間を振り返るといかがですか?
無我夢中で走ってきた10年間でした。宝塚しか知らなかった自分が外の世界に出て、右も左もわからない中で、ひたすらに突っ走ってきた日々でした。
──あくまでも拝見している側からの印象なのですが、朝海さんは比較的すんなりと女優になられて、男役時代の影をあまり感じさせない方のようにお見受けしていました。ご自身としてはその辺りは?
男から女への切り替えというよりも、それまで自分が宝塚の中で「こうであろう」と思っていた舞台上での常識とか舞台人としての在り方が、やはり宝塚と外の舞台とではずいぶん違いましたので、考え方を変えていくことが必要でした。毎公演、「こういう考え方があったのか」とか「こういう表現の仕方があったのか」とか、「こうすれば良いんだ!」という新たな発見の連続で、その1つ1つを受け入れていくことが自分にとって大変だった気がします。
──劇団時代は、スタッフや共演者がよく知っている顔ぶれで、外では毎回新たな方たちとの舞台創りになると思うのですが、そういう面では?
確かに、毎回違う共演者の方たちやスタッフの方たちとの舞台創りは、私は意外と人見知りで、あ、意外ではないですね(笑)、自分から話しかけていくことが得意ではなかったので、最初のうちはその環境に慣れることで精一杯でした。でもお稽古を積んで公演をしていく中で、仲良くなっていって、色々な人から様々なことを教わって楽しく過ごしたり、皆で力を合わせて1つの作品を創って、それが素敵な思い出になっていく。そういう点では、宝塚も外も変わらないということがわかり始めてからは、自分からも積極的に話す努力をすることで、より早く皆さんと仲良くなれて、色々な話が伺えるようになりました。たくさんの方々から、自分が経験してこなかったことを教えて頂いてきた日々でした。
 
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ちゃんとお芝居ができる女優になるために

──朝海さんの場合、この10年間の活動は非常に多岐に渡り、バラエティに富んでいますが、それはご自身でも色々なことをやってみよういう意識が?
そうですね。宝塚を卒業して一女優となった時に、自分の魅力というか武器というものが、自分でもまだわかっていない部分がありましたので、1つのことに固まろうとするのではなく、私にと言って頂いたお仕事は、できる限りやらせて頂こうというスタンスでいました。すると、ありがたいことに色々な分野の方たちからお声をかけて頂けて、本当に様々な方たちと共演することができて、すごく充実した10年だったと思います。
──では、例えば「できるだけミュージカルに出演したい」というような、1つのものに特化するといった気持ちは?
それはなかったですね。ただ、女優としてちゃんとお芝居ができるようになりたい、という思いは持っていましたので、なるべくお芝居の仕事は積極的にやらせて頂いてきました。そういう意味でも、本当に様々な舞台に出演させて頂けていることに感謝しています。
──その中で、何本か井上ひさしさんの舞台にも出演されていますね。
井上先生の作品は昔から大好きで、井上先生の舞台に出られるような女優になりたいとずっと思っていました。ですから『しみじみ日本・乃木大将』(2012年)に出させて頂けた時には、夢が1つ叶った!という気持ちでした。そして夢が叶ったら、次はこまつ座さんの舞台に出たいという夢がまた生まれて、一昨年の『國語元年』でこまつ座さんへの出演が叶って。そうやって1つずつ進んできました。今年の3月〜4月にも、『私はだれでしょう?』という素晴らしい作品に出演させていただきましたが、井上先生が一文字一文字考え抜かれたセリフを話すことの重みと、女優としての幸福感とを同時に味わえた日々でした。
──井上さんの作品は、不穏な時代の時局のことを扱っていても、声高に批判するというのではなくて、笑いにくるんだ中などから静かに訴える深さがありますね。
事実をきちんと伝えた上で、あとは観客の方たち1人1人が物事に接した時に何を思うかに委ねていらっしゃるので、私も毎回拝見する度に、怒りに震えることもあれば、涙を流すこともあるし、何日も悶々と考えることもあります。そういう、自分自身を成長させて頂ける作品ばかりで、それは出演させて頂いた時も同様で、毎回少しずつ人間として勉強させて頂いています。

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ダンス歴で大きかったフォッシーダンスとの出会い

──10年間の活動期間中には、宝塚歌劇が100周年を迎えたこともあって、OGの方々の公演が盛んに行われましたが、そういう公演に臨まれていかがでしたか?
やはり宝塚が私のベースなのだということを、OG公演に出演させて頂く度に思います。それと同時に、どんなに上級生の方でも下級生の方でも、同じ方向を向くことができるという宝塚の素晴らしさを感じました。例え現役時代に一緒の舞台に立ったことがなくても、宝塚の卒業生というだけで呼吸がカッチリと合う、1つ1つの公演が、すべて宝塚の偉大さを改めて知る場でもありました。学年がどんなに離れていてもすぐに打ち解けて仲良くなれますし、私が下級生のときトップスターで雲の上の存在だった方とも、気軽にお話をさせて頂けたりする。それもOG公演の嬉しさです。
──その中でも『CHICAGO』は特に大きな公演となりました。
『CHICAGO』に最初に取り組んだのは、『DANCING CRAZY2』(2012年)という公演で、名場面の抜粋をさせて頂いた時だったのですが、その時点では、まさか全幕通して宝塚OGだけでの上演ができるとは夢にも思っていなかったんです。ただその時、抜粋の名場面だけなのに、ブロードウェイのスタッフの方たちが来てくださって、振付から指導して頂くという全く新しい経験をさせて頂けたことで、宝塚のOG公演というよりも一女優として新しい作品に向かっていくという気持ちがありました。その公演を全幕通して演じられるという機会を頂けたことは、私にとっては宝塚のOG公演という枠組みを超えて、『CHICAGO』という作品に女優として全力で取り組んだという想いでした。
──本当に力のこもった舞台でしたが、フォッシースタイルのダンスとの出会いについては?
洗練された動きを、とにかくオシャレにクールにというもので、1つ1つの動きに決まりがあって、でもその決まりが人間の動きとして存在していなくてはいけない。究極のところに行きついているのがフォッシーダンスで、それに出会えたというのは、私のダンスの歴史の中でもとても大きなものでした。ただ大きく踊ればいいというわけではなく、身体の中から湧き出るエネルギーを使って踊る、そのことを教えてもらったのがフォッシーダンスでした。
──では、今回のDANCE LIVEでも拝見できそうですね?
はい。ダンサーの方の中にも二人『CHICAGO』経験者がいるので、何曲かできたらいいなと思っています。
──では、そんな朝海さんの10年間の経験が詰まったDANCE LIVEについて、改めて意気込みお願いします。
宝塚を退団した時には、ここまで自分がやってこられるとは思っていなかったので、気がついたら10年の月日が流れていたことに、自分自身にも驚きがあります。その中で、様々な方たちとの幸せな出会いがあり、自分の考え方もどんどん更新され、目標もどんどん変わっていきました。その私の日々を、客席から見守って、応援し続けてくださった方たちがいらしたから、ここまで充実した舞台生活が送ってこれたのだと思っています。そんな方々に感謝の気持ちを込めて、この作品を是非楽しんで頂きたいと思っています。精一杯頑張りますので、是非足をお運びください。お待ちしています!

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あさみひかる○1991年宝塚歌劇団に入団。入団当初より透明感ある爽やかな個性とダンスの実力が注目され、02年雪組トップスターに就任。06年『ベルサイユのばら』で主演のオスカル役が好評を博す。同年、宝塚歌劇団を惜しまれつつ退団。女優としてミュージカル、ストレートプレイ、映像など幅広い活躍を続け、日本を代表する演出家の舞台への出演も数多い。近年の主な舞台作品は、ミュージカル『ボンベイドリームス』、『Golden Songs』、『アドルフに告ぐ』、こまつ座第111回公演『國語元年』、ミュージカル『DNA-SHARAKU』、明治座『御宿かわせみ』、ブロードウェイミュージカル『CHICAGO』宝塚歌劇OGバージョン、『幽霊』、『エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』、こまつ座『私はだれでしょう』等。7月には再々演の『ローマの休日』でアン王女役が控えている。


〈公演情報〉 
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朝海ひかる 女優10周年記念ツアー
DANCE LIVE『will』
構成・演出・振付◇港ゆりか
出演◇朝海ひかる/神谷直樹・中島康宏・ 伯鞘麗名・福田えり
ゲスト◇Spi、伊礼彼方、石井一孝、石川禅
●6/7〜6/8◎東京 よみうり大手町ホール
〈料金〉10,000円(全席指定・税込)
●6/11◎ 大阪 ナレッジシアター
〈料金〉10,000円(全席指定・税込)
●6/14◎仙台 イズミティ21 小ホール 
〈料金〉9,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030(平日11時〜17時)



【取材・文/橘涼香 撮影/山崎伸康】




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