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歴史劇から漫画まで幅広く脚本化するかと思えば、シェイクスピアから日本の若手作家の注目作まで演出してしまう、幅広い才能で活躍する青木豪。彼が久々にオリジナル脚本を自ら演出する新作、『エジソン最後の発明』が4月2日からの東京公演を皮切りに、名古屋、大阪で上演される。
主演は元宝塚月組トップスターで女優として活躍中の瀬奈じゅん。下町の小さな工場を背景に描かれる、「かなりおかしくて、ちょっぴりせつなくて、相当ハッピーな、大人たちのお話」。この作品について青木豪と瀬奈じゅんに話してもらったえんぶ4月号の記事を、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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ラジオのパーソナリティーが似合う声

──お二人の並びが新鮮です。
青木 今日で3回目でしたね?
瀬奈 そうですね。打ち合わせを含めて。
青木 僕は当て書きしかできないので、まずお会いしたいと言って、東山(義久)さんと3人で食事したのが最初でした。最初に声を聞いたとき、ラジオのパーソナリティーが似合いそうだなと直感して、そこから今回の作品全体の着想を得ました。
瀬奈 私は自分の声にコンプレックスを持っていたんです。でも、青木さんがおっしゃってくださったように、声が印象的だと他の方にもよく言われるので、自分のコンプレックスと人の印象とは違っているんだな、紙一重だなと。このお芝居で自分の声が好きになれるかもしれません。
──『エジソン最後の発明』というタイトルはどこから?
青木 エジソンのことを調べたことがあって、最後に発明していた機械が「死者と話せる機械」だと知って、印象に残っていたんです。そして町工場の話にしたいと思ったとき、エジソン・工場・ラジオと3つが結びついたんです。落語のお題を出されたように(笑)、それをつないで台本を膨らませました。
瀬奈 私は「死者と話せる機械」のことは知らなかったし、そんなことありえないでしょう! というタイプの人間なので、どう町工場とつながって、どうラジオパーソナリティーが出てくるのか、青木さんの思考を覗いてみたいと思いました(笑)。その中で自分の心がどう変化していくのか、とても楽しみです。
 
セナ・青木

自分の常識でも人から見ると非常識!?

──この舞台はコメディなんですね。
青木 そうです。みんなが勝手なことを思って、勝手なことを言って、噛み合わない人たちの話です。軸は、瀬奈さんと東山さんが結婚しようとしていて、小野武彦さん演じる瀬奈さんのお父さんが反対するんです。
瀬奈 でも、ものすごく反対するわけではなくて、無理難題を出して、それが可能なら結婚していいよという、反対しているんだか賛成しているんだか、よくわからない(笑)、そういう日常会話がごく面白いんです。実は台本の台詞と同じようなことを、私も父から言われたことがあって。
青木 えーっ?(笑)
瀬奈 小野さんの台詞で、「だったらお前を育てるのにかかったお金を返してくれ」というのがあって、あ、似たような言葉を聞いたことがある! と(笑)
──父親が言いがちな台詞ですね。
瀬奈 きっとお客様も色々な台詞に、「あるある!」と思っていただけるのではないかと。
青木 どこの家庭でもあることが出てきますからね。みんなそれぞれに自分を貫こうとするけど、自分の常識って人から見ると非常識だったりしますからね。ケーキは絶対にフォークで食べるものと思っている人もいるけど、スプーンの人やお箸の人だっている。とくに家庭を新たに持とうとすると違う常識が入ってくるんです。
──コメディということで、演じるうえで心がけることは?
瀬奈 私はコメディとつくものに関しては、逆に大真面目にやろうと思っているんです。面白いことをやろうと絶対に思わないように。
青木 書く側も同じです。狙うと外します(笑)。ちょっと話はそれますが、この間、瀬奈さんに「書くの恥ずかしくないですか」と聞かれて、確かに自分の意見を書くのは恥ずかしいんですが、この人だったらこんなこと言うだろうなと思って書いているから、恥ずかしくないんです。
──青木さんはシェイクスピアの喜劇も演出していますが、書くうえで影響を受けたりしますか?
青木 影響というより、これは翻訳家の松岡和子さんがおっしゃったんですが、「シェイクスピアの悲劇は結婚で始まり、喜劇は結婚で終わる」と。喜劇は恋人同士から始まって結婚でハッピーエンド、悲劇は結婚から物語が始まるそうです。
──ではこの作品は、結婚しようとする2人が出てきますから、ハッピーエンドですね?
青木 さあ、どうなるでしょう(笑)。
 
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客席まで息づかいが届くくらいの距離感で
 
 
──瀬奈さんは、ミュージカルだけでなくストレートプレイでも活躍していますが、作品のスタイルで意識することは?
瀬奈 ストレートプレイもミュージカルも、フラットにその人を演じるという点ではなにも変わりないと思っています。ただその表現方法が歌になったり、劇場の大きさに合ったものになったり、日本ものだったら所作とか、技術的なことに違いがあるだけですね。今回のようなお芝居は、あまり大きくない劇場の方が楽しい気がします。
青木 客席まで息づかいが届くくらいの距離がいいですよね。その意味でシアタートラムはとてもいい劇場だと思います。
──観客と近い場合、役になりきるのが難しいとかいうことはありませんか?
瀬奈 私はいつも頭の近くにもう1人の自分がいて、役に入りきらないんです。逆に入りきっている人のお芝居を見ると引いてしまうタイプで。もっと陶酔できたらいいな、ナルシストになれたらなと思う時もあります。でも、あまり入り込みすぎない方が、観ている方に考える隙間があっていいのではないかと。
青木 僕もそういう役者さんの方が好きですね。物書きや演出もそうで、俯瞰して作っていないと壊れちゃう気がするんです。
──最後にこの作品の意気込みをぜひ。
青木 今、僕が書きたいものを精一杯書きました。書きあがったら演出家スイッチが入るので、稽古場で台本を共有しながら、ライブなものをお客さんに届けるために、全員で突っ走ろうと思っています。
瀬奈 台本を読ませていただいて、色々な役の台詞を想像しながら楽しんでいました。その台詞を、自在に受けて返すことができる自分でいたいし、稽古場でキャッチボールするのが楽しみです。青木さんの脚本の日常会話の面白さを、しっかり表現できるように、皆さんと一緒にしっかり作っていきたいと思っています。

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あおきごう○神奈川県出身。97年に劇団グリングを旗揚げ、09年の活動休止まで作・演出をつとめる。以後は多くの公演に脚本を提供、演出家としても活躍中。最近の主な舞台作品は、『ガラスの仮面』『八犬伝』『断色』『鉈切り丸』『9days Queen』『天鼓』『ブルームーン』『花より男子The Musical』(以上脚本)『往転─オウテン─』『The River』Dステ19th『お気に召すまま』(以上演出)など。

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せなじゅん○東京都出身。92年に宝塚歌劇団入団、05年から月組トップスターとして絶大な人気を誇る。09年に退団。以後は女優として活躍中。退団後の主な出演作品は『エリザベート』『アンナ・カレーニナ』『今度は愛妻家』『シスター・アクト〜天使にラブソングを〜』『ア・フュー・グッドメン』『貴婦人の訪問』など。第37回菊田一夫演劇賞、第3回岩谷時子賞などを受賞。

〈公演情報〉
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『エジソン最後の発明』
作・演出◇青木豪
出演◇瀬奈じゅん 東山義久 岡部たかし まりゑ
安田カナ 武谷公雄 八十田勇一 小野武彦
●4/2〜23◎東京 シアタートラム
〈料金〉7,500円 学生券3,500円(全席指定・税込) 
5/1◎名古屋 青少年センター アートピアホール
5/2・3◎大阪 サンケイホールブリーゼ
〈お問い合わせ〉キューブ 03-5485-2252(平日12:00〜18:00)




【文◇竹下力 撮影◇岩村美佳】

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