2017_03_21_1407

勉強も仕事も全力投球!のピンクをこよなく愛するキュートなブロンドガール・エルのポジティブな生き方を描いたハッピーミュージカル『キューティ・ブロンド』が、日比谷のシアタークリエで上演中だ(4月3日まで。のち名古屋、高松、大分、福岡、広島、静岡、福井、大阪の全国公演もあり)。

ミュージカル『キューティ・ブロンド』は、2001年に公開され喝采を集めた映画『Legally Blonde』(邦題『キューティ・ブロンド』2002年日本公開)を原作に、2007年に誕生したブロードウェイミュージカル。ハッピーで爽快なストーリーと、ポップな音楽は多くの観客の心を掴み、トニー賞7部門ノミネート、イギリス・ウェストエンドではオリヴィエ賞3部門を受賞するなどの、大ヒット作品となった。その後、オーストリアや韓国をはじめとした世界で上演され、いずれも成功を収めている。今回のシアタークリエでの公演は、そんな作品の本邦初演であり、持ち前のポジティブさで、周囲の偏見や困難を吹き飛ばしていくヒロイン・エル役に神田沙也加が扮したのをはじめ、強力な出演者が揃い、明るくハッピーなパワーを漲らせている。

2017_03_21_1529

【STORY】

オシャレが大好きな美しいブロンドの女子大生エル(神田沙也加)は、学生寮デルタ・ヌウで友人たちと自由な学生生活を謳歌していたが、ある日、婚約間近!と信じていた彼氏のワーナー(植原卓也)に突然フラれてしまう。しかもその理由たるや「上院議員を目指す自分の妻にブロンド娘は相応しくない」という一方的かつ、偏見に凝り固まったものだった。
到底納得が行かないエルは、一念発起して猛勉強の末、ハーバード大学のロー・スクールに見事合格する。しかしブロンドで、テーマカラーであるピンクのファッションに身を包むエルは、学内でも偏見の目にさらされ、黒髪の美女ヴィヴィアン(新田惠海)や、クラスメイトから学業に真剣ではないと非難を浴びる。しかもワーナーが生涯の伴侶にと選んだ女性はヴィヴィアンだった。
失意のうちに自分も黒髪に染めようと、短気を起こして飛び込んだ美容院で、エルは良き理解者ポーレット(樹里咲穂)に出会う。また、ハーバードで教鞭を採るキャラハン教授(長谷川初範)の助手を務める、ハーバードの卒業生エメット(佐藤隆紀)から、元カレを取り戻したいだけが目的で、ロー・スクールに通うことは間違っていると諭されたエルは、エメットの助けにより、真剣に法律を学び始める。
かくして外見も内面も磨きをかけたエルは、キャラハン教授の弁護士事務所のインターン生に選ばれるが、担当することになったのはなんとデルタ・ヌウの先輩であるブルック(木村花代)が被疑者となった殺人事件。デルタ・ヌウの固い絆で、エルはブルックから鉄壁のアリバイを聞きだすが、それは決して口外できない秘密だった!エルは果たして、秘密を守ったままブルックの無罪を証明することができるのか?そして、元カレのワーナー、更に次第に心を通わせていくエメットとの恋の行方は?

2017_03_21_1430

舞台は冒頭からエルの人生を象徴する、つまり作品のテーマカラーであるピンクに彩られて、まず何を置いても目に楽しい。「ピンク愛好」は元々多くの女の子の通過儀礼と言っても過言ではないものだし、とにかく色そのものがハッピーなオーラを持っていて、単純に言えば気分がアガる効果がある。特にこの春は、もう何回目になるのかわからない、ピンクの大ブームが起きていて、どこのブランドもこぞってピンクの新作を発表しているし「大人女子がイタく見られないピンクの取り入れ方」などという特集がファッション雑誌を席巻している。まさにそんな春に、これだけ前向きで、恋にも、勉強にも、仕事にもへこたれない全身ピンクをまとったヒロイン・エルの活躍するミュージカルが、本邦初演の幕を開けたのには、何かのはからいとしか思えないタイムリーさがあった。
作品の明るさと、どこか劇画チックで夢いっぱいの魅力を、てらわずに直球で提示してくれた翻訳・訳詞・演出の上田一豪の仕事ぶりも爽やかで、東京公演のチケットが瞬く間に全席完売、追加公演も、当日券も争奪戦という状況も、むべなるかな。確かにこんなにポップで楽しいミュージカルには、ここしばらくお目にかかっていなかったように思う。重厚な悲劇ももちろん堪能するし、哲学的なテーマや深い心理描写を長く反芻もするけれど、一方で、明るく、楽しく、キュートでハッピーも、実にイカしているものだ。
2017_03_21_1706

そんな作品そのものが持つパワーを十二分に客席に伝えてくれたのが、とびきりキュートなブロンドガール・エルに扮した神田沙也加の存在に違いない。劇中で様々にエルが着こなすピンクを基調とした衣装は実に17着! そのどれもが、夢のように似合っている。しかも、もともと日本人が一番挑戦しにくい髪色はプラチナ・ブロンドなのだが、その髪色さえ持って生まれたものかと見紛うほど自分のものにしていて、まるで可憐なお人形が目の前で動き出したかのよう。そこに豊かな表情と、華やかで明るい声質で歌われるミュージカルナンバーが相まって、一も二もなくヒロインを応援したくなる、タイトル通りのキューティ・ブロンドぶりが鮮やかだった。まさに当代の当たり役を引き当てた格好で、ミュージカル女優神田沙也加にとっても、『キューティ・ブロンド』という作品にとっても、そしてもちろん観客にとっても、これはピンク色に染まった幸福な出会いだった。

2017_03_21_1666

そのエルの良き協力者となるエメットの佐藤隆紀は、ミュージカル界での経験を重ねて、豊かな声量でねじ伏せる類いのグランドミュージカルとは全く異なる、こうしたウィットと軽さを必要とされる作品にも、きちんと対応できるようになった、俳優としての進化に顕著なものがある。どこか朴訥とした温かさがある個性も役柄によく合っていて、この経験で役幅も更に広がることだろう。更なる活躍を期待したい。

2017_03_21_1749

「ブロンド=綺麗なおバカさん」という、古典的すぎる概念に凝り固まっているエルの元カレ、ワーナーの植原卓也は、1歩間違うととてつもなく嫌な奴になりかねない役柄を、本人の二枚目ぶりが救っている。持ち味にシャープさがある人だけに、思いこみと勘違いが大きく笑いに転換されて、嫌味にならなかったのはたいしたもの。こうした役回りを綺麗に決められる人は貴重で、植原にとっても今後につながる舞台になったと言えるだろう。

2017_03_21_1632

もう1人のエルの良き理解者ポーレットの樹里咲穂は、歌って踊れる実力派なことはもちろんだが、宝塚時代から変わらずに持ち続けている良い人オーラが、こうした温かい姉御肌の役柄にピッタリと生きている。ポーレットが美容師であることが、のちの展開にちゃんと関わってくる脚本の巧みさと、ポーレット自身にも恋の成就が訪れる温かさとが、このハッピーミュージカルを更に彩り豊かなものにしていて、目が離せない存在感を放ったのが素晴らしい。

2017_03_21_1578

優等生の黒髪の美女であり、ワーナーの現彼女ヴィヴィアンの新田惠海は、このところ活発化する一方である声優界からミュージカル参入を果たした1人。もともと音楽大学在学中はミュージカルに没頭していたという経歴の持ち主でもあって、こうしたクロスオーバーは、本人も望むところなのではないだろうか。ピンクが正義の舞台で、黒1色という役柄はなかなかに難役だったと思うが、これをきっかけに是非幅広く活動を続けて欲しい。

2017_03_21_1808

エルがロサンゼルス市立大学時代に会長を務めていた社交クラブ「デルタ・ヌゥ」の先輩で、ある事件の被疑者となるブルックの木村花代は、カリカチュアした役作りで視線をきっちりと集めて堂に入ったもの。2幕冒頭のアクロバティックなダンスナンバーも見事にこなし、劇団四季時代の可憐なヒロイン女優というイメージから、キャラクターも演じられる良い女へと変貌しているのが頼もしい。

2017_03_21_1941

ハーバード大学で教鞭をとるキャラハン教授の長谷川初範は、登場した刹那から食わせ物感があるのが、役柄を立体的に構築している。エルにセクハラまがいの行為もする、ある意味型にはまった問題ありの権力者を、物語が求めた通りに描写していて手堅い。場面によってはコミカルな動きもあり、それをちゃんと面白く見せて尚、単純な良い人には決して見えないのがベテランならではの妙だった。

2017_03_21_1486
2017_03_21_1726

他に現実の友人としてだけでなく、エルの心象風景のコロスとしても登場するセリーナの中村百花、マーゴの真瀬はるか、ピラーのダンドイ舞莉花、イーニッドの武者真由、他、青山郁代、エリアンナ、北川理恵、濱平奈津美、上野聖太、加藤潤一、高世雄史、古川は隼大のアンサンブルの面々が、八面六臂の活躍をするのが、このミュージカルの楽しさでもあって、全員にそれぞれの形で大きな見せ場があり、それが有機的に機能しているのに驚かされる。カンパニー全員にさぞやり甲斐があるだろうし、誰が欠けても成立しない舞台だからこその、弾けるエネルギーがなんとも明るい。総じて、これぞ適役の神田沙也加以下、充実したピンクの魔法にかけてもらえるハッピーなミュージカルの誕生を喜びたい


2017_03_21_1452
2017_03_21_1694
2017_03_21_1737
2017_03_21_1842
2017_03_21_2003
2017_03_21_2033
s_2017_03_21_1860-1

〈公演データ〉
ミュージカル『キューティ・ブロンド』
音楽・詞◇ローレンス・オキーフ&ネル・ベンジャミン
脚本◇ヘザー・ハック
翻訳・訳詞・演出◇上田一豪
出演◇神田沙也加、佐藤隆紀(LE VELVETS)、植原卓也、樹里咲穂、新田惠海、木村花代、長谷川初範 他
●3/21〜4/3◎日比谷・シアタークリエ
〈料金〉10.800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777
●4/5〜6◎愛知県芸術劇場大ホール
〈料金〉S席11.000円 A席7.000円(税込)
〈お問い合わせ〉キョードー東海 052-972-7466
●4/8◎高松・レクザムホール 大ホール
〈料金〉7.200円 親子ペア席 10.000円 (税込)
〈お問い合わせ〉県民ホールサービスセンター 087-823-5023
●4/12◎大分・iichikoグランシアタ
〈料金〉S席7.000円、A席5.000円、B席3.000円、U25割(25歳以下)各席種半額(税込)
〈お問い合わせ〉大分県芸術文化スポーツ振興団体 097-533-4004
●4/15〜16◎福岡・キャナルシティ劇場
〈料金〉S席9.800円、A席8.000円(税込)
〈お問い合わせ〉キャナルシティ劇場 092-271-6062
●4/18◎広島・JMSアステールプラザ大ホール
〈料金〉8.500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉TSS事業部 082-253-1010
●4/20◎浜松市浜北文化センター大ホール
〈料金〉S席1.1000円、A席7.000円(税込)
〈お問い合わせ〉キョードー東海 052-972-7466
●4/23◎越前市いまだて芸術館
〈料金〉前売り5.000円、当日5.500円(税込)
〈お問い合わせ〉越前市文化振興・施設管理事業部 0778-42-2700
●4/27〜30◎メルパルクホール大阪
〈料金〉10.800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3888


【取材・文・撮影/橘涼香】



ダンスカンタービレ 




kick 

shop 

nikkan 

engeki