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元宝塚宙組トップスターで女優としての歩みを着実に進めている凰稀かなめ。退団後初主演となるミュージカル『花・虞美人』が、3月26日に赤坂ACTシアターで開幕する。(31日まで。名古屋・大阪公演あり)
「四面楚歌」の語源ともなった楚の項羽と漢の劉邦の物語に基づき、美貌の持ち主としてのみ語り継がれている1人の女性、「虞美人=虞姫」にスポットを当て、新たな物語を紡ぐオリジナルミュージカルだ。この舞台で主人公虞姫役として熱い気持ちで臨む彼女に、公演への意気込み、そして年頭に行われた宝塚OGによる『エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』での発見などを語ってもらった「えんぶ4月号」の記事を、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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美しさの中にある悲しさにきちんと感情をつないで
 
──退団後初主演舞台の『花・虞美人』ですが、今の段階で作品についてどう感じているか教えてください。
台本を読んで、まず人間模様がとても複雑にからみ合っているなと思いました。私と誰かということだけではなくて、例えば男同士ですとか、大将と軍師ですとか、役同士の人間関係が事細かに描かれている台本でした。それぞれの心理描写がよく練られているので、これをどういう風に演じていくかが課題だなと思っています。
──演じる虞美人、虞姫についてはどのように?
まず多くを語らない役どころなんですね。劉邦との結婚前夜に始皇帝の軍に父親を殺され、自らも連れ去られてしまい、父の仇の始皇帝を討とうとする。その思いを遂げてくれた項羽への新たな思いも生まれてくるですが、劉邦への愛もずっと続いている。そういう葛藤を言葉にすることがあまりないので、心の揺れ具合や、女性としての優しさ、器の大きさ、真実の愛を、台詞で訴えるのではなく、違う部分で表現していかなければいけないだろうと感じました。このあたりはセットや音楽が固まって、立ち稽古でどのようになっていくかですが、多くの思いを秘めている女性なので心して挑みたいです。私は元々お稽古に行くまでは、なるべくフラットでいたいと思っていて、しかも実在の人物とは言っても、今回の虞姫についてはほとんど資料らしい資料が残っていないので、お稽古の中で周りの人たちの芝居を感じながら、受け留めていく作業を特に心がけたいです。
──では稽古の中で様々な発見がありそうですね。
初めてご一緒させて頂く方々ばかりで、ベテランの方も多いので、とても楽しみです。退団後『1789ーバスティーユの恋人たちー』のマリー・アントワネット役をやらせて頂きましたが、音楽をスペクタクルで見せるフレンチミュージカルだったこともあって、芝居の要素は少なめでしたから、これだけじっくり芝居をするのは本当に久しぶりになります。もちろん今回も歌も踊りも入るミュージカルなのですが、芝居部分で見せていく部分が濃いので、「お芝居ができる!」という期待でうずうずしています。
──何よりもお芝居が好きな人だと言われていた凰稀さんですから、それは気持ちも高まっていることでしょうね。
はい、すごく気合いが入っているのですが、台本を読んで、どんな声でどんな風に話したらいいのかを、今試行錯誤しています。時代物なので、普通に話したのでは伝わらないし、でも感情を伝えるには心のままに話した方がいいので、そのバランスをどう取っていくかも、これから創り上げていく大切なポイントだと思います。何よりも台本の流れが美しくて、読んでいるだけで最後には涙が止まらなくなってしまったほどだったので、その美しさの中の悲しさに、きちんと感情をつなげられるようにしたいです。

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今だからこそ感じられた新たなルドルフ像

──そんな新しい舞台に期待が高まるのですが、直近には宝塚OGによる『エリザベートTAKARAZUKA 20周年スペシャル・ガラ・コンサート』への出演もありました。女優として歩んでいる今、改めて演じた男役はいかがでしたか?
実は、はじめは出演すべきかどうか悩みました。自分のコンサートなどでは、ファンの方が喜んでくださることもあって、男役の場面も取り入れさせてもらったりしましたが、基本的には宝塚を退団して、現役生ではなくなった時点で男役も続けていこうとは思っていなかったので。でも『エリザベート』20周年という歴史の中に、自分が関われたということも奇跡ですし、宝塚にいても作品との縁がなければ出られないわけですから、久しぶりの軍服姿をファンの方にも喜んで頂けるだろうと思って出させて頂きました。コンサートでは当時のことをありありと思い出しました。まだ下級生で何番手という立場でもない時に、ルドルフ皇太子という役を頂いて、葛藤していたことなどが蘇りました。同時に、ガラコンサートならではの現役時代に共演することはできなかった方々、トート役の姿月あさとさんや瀬奈じゅんさんとご一緒できたのは光栄でしたし、当時の雪組トップスターだった水夏希さんと、トートとルドルフとしてまた共演させて頂けたのも、本当に嬉しいことでした。
──今の凰稀さんがルドルフを演じて、新たな発見などはありましたか?
当時は『エリザベート』という作品の中のルドルフとしてしか考えていなかったのですが、今回はその後宙組のトップをさせて頂いている間にやらせて頂いた『うたかたの恋』のルドルフの感覚が鮮明に残っていたんです。ですから『エリザベート』でのルドルフの15分間という凝縮された出番でも、家族との関係や、新しい国への思い、マリーとの恋など、『うたかたの恋』の経験で得た、『エリザベート』には描かれていないルドルフのバックボーンが私の中にあったので、満たされた気持ちで死ねました。自殺するのですが、辛い、哀しい、絶望したというだけではない、自由な魂として旅立てるというような。ですから、最期の場面で笑っているルドルフというのはあまりいないと思いますが、私は笑って死んでいけました。それは『うたかたの恋』を経たからこそ出てきたものだと思うので、自分でもとても面白い経験になりました。
──他にテレビドラマへの出演もあり、また『花・虞美人』へと向かう中で、更にやりたいことなども増えているのでは?
やりたいことはたくさんありますし、それが必ず実現しているので幸せです。今回も、お芝居とじっくり向き合いたいと思っていたところに『花・虞美人』に出会えました。虞姫のように内に秘めた強さを持った女性を演じるのも初めてですし、私だけでなくそれぞれの役どころにたくさんの見せ場がある作品なので、皆さんと切磋琢磨しながら創っていきたいと思います。踊りも多く、殺陣もふんだんにあって、私自身が立ち回りに関われないのは少し寂しいですが(笑)、全員で団結して素敵な舞台にしていきたいと思っています。

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おうきかなめ○神奈川県出身。2000年に宝塚歌劇団で初舞台。12年、宙組トップスターに就任、数々の作品で活躍、15年に退団。16年『1789−バスティーユの恋人たち−』マリー・アントワネット役で女優デビュー。コンサート、またドラマ『家売るオンナ』への出演など活躍の幅を広げている。17年1月の宝塚OGによる『エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』では、久々に男役として美しい軍服姿を披露した。

【アフタートーク開催】
東京公演
3月27日(月)13:00公演:黒川拓哉、松田凌、今井ゆうぞう
3月28日(火)16:30公演:凰稀かなめ、大澄賢也、松田凌
3月29日(水)13:00公演:ユナク(超新星)、池田努、岡田亮輔、石橋直也
3月30日(木)13:00公演:凰稀かなめ、小野健斗、桑野晃輔
名古屋公演
4月16日(日)11:30公演:凰稀かなめ、ユナク(超新星)、黒川拓哉
大阪公演
4月22日(土)13:00公演:凰稀かなめ、池田努、松田凌


〈公演情報〉
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ミュージカル『花・虞美人』
脚本・演出◇岡本貴也 
音楽◇鎌田雅人
出演◇凰稀かなめ ユナク(超新星) 黒川拓哉(LE VELVETS)・池田努(Wキャスト)  松田凌 岡田亮輔 石橋直也 桑野晃輔 今井ゆうぞう 小野健斗 奥田圭悟 高橋由美子 大澄賢也 他
3/26〜31◎東京・赤坂ACTシアター
4/15〜16◎名古屋・愛知県芸術劇場大ホール
4/22〜23◎大阪・森ノ宮ピロティホール
〈料金〉プレミアムシート 13,000 S席 11,000 A席 7,000円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉(株)ジェイロック 03-5485-5555
http://www.hana-gubijin.jp/




【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】 






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