DSC_9328

2014年トニー賞の作品賞・脚本賞ほか4冠を達成したミュージカルが、満を持して日本に初上陸する。その名も『紳士のための愛と殺人の手引き』。
舞台はエドワード朝時代のイギリス。伯爵継承順位8番目の男が、継承順位上位の邪魔者たちを次々と殺していく。といっても、殺人手段があまりにバカバカしく、笑いあり涙あり間違いなしのコメディなのだ。
 
DSC_9235

殺されるダイスクイス家の現伯爵と継承権メンバーという8人を演じ分けるのは、日本演劇界の生きる伝説、歌も演技も卓抜な技術と才能で魅せる市村正親。
爵位継承者たちを、あれこれ馬鹿馬鹿しい手段で手にかけていくモンティ役はWキャストで、元・WaTで抜群の歌唱力を誇るウエンツ瑛士と、ミュージカル界の若き旗手として次々に話題作に出演している柿澤勇人。
モンティの恋人シベラを演じるのは、しなやかでキレのある歌と演技を見せるシルビア・グラブ。
殺される継承者ヘンリー・ダイスクイスの妹役で、モンティが恋をしてしまうフィービー役には、テレビ・映画で活躍し、ミュージカルでは美しい歌声を披露する宮澤エマ。
モンティの亡き母の友人であるミス・シングルを演じるのは、宝塚出身で紀伊國屋演劇賞も受賞した演技派女優・春風ひとみ。

DSC_9607

笑わずにはいられないコメディシーンとポップで軽快な音楽と歌が全編を彩る、この舞台の公開稽古と囲みインタビューが3月12日に行われた。
 
 【あらすじ】
優しい母に突然亡くなられてどん底に沈んでいるモンティ(ウエンツ瑛士/柿澤勇人)。そこに亡き母の古い友人であるミス・シングル(春風ひとみ)がとあるニュースを持ってくる。モンティの母は、実は大富豪の貴族「ダイスクイス・ファミリー」の血を引いており、モンティにも爵位継承権があるというのだ。とはいっても8番目の継承者。つまり現伯爵(市村正親)を含め、ダイスクイスのメンバー7人(市村正親)が死ななくては伯爵になれない。
そこでモンティは決意する。「7人+現伯爵=8人」を抹殺して、自分が伯爵に!莫大な財産と城をこの手に!」モンティは、一人、また一人、奇妙キテレツな方法で殺人を重ね、ついに全員を殺害するのだが、8人目の殺人でヘマをして捕まってしまい、投獄されるはめに。最後には恋敵同士のフィービー(宮澤エマ)とシベラ(シルビア・グラブ)が愛しのモンティを救おうと、彼の無実を証明するために奔走するのだが…。
 
DSC_9123
 
冒頭に演出家の寺秀臣が、「舞台上にモンティが獄中で自分の裁判を待っている最中に回顧録を書いているところから物語がスタートします。舞台上には大きな本があります。そこから様々なシーンが飛び込んできます」と説明。それが終わるやいなや、右手からカンパニーキャストの阿部裕、小原和彦、香取新一、神田恭兵、照井裕隆、安福毅の男性陣が登場。左手からは彩橋みゆ、折井理子、可知寛子、伽藍琳、高谷あゆみ、RiRiKAの女性陣、12人がフィンガー・スナップをしながら登場し、1曲目「観客への警告」を披露する。これが、おどろおどろしくてどこまでもキャッチー。すぐに口ずさめる。「血が飛び出る、殺人が出る、だから心臓の弱い方は帰れ!」というようなことを歌う。もちろん、それは逆説なのだけれど、これがコメディであることを知っていれば、ワクワク感は増していく。統制のとれた歌声と決めポーズがイカしてカッコいい。

DSC_9168

続いて、シベラ演じるシルビア・グラブと、このシーンではモンティ役に柿澤勇人が登場する。モンティがシルビアに、自分がお金持ちになれるチャンスがあるから振り向いてほしいと説得するのだが、「実際にお金がないといや」と振っておいて、「でもあなたが必要なの」と擦り寄りキスをする。

DSC_9199

そんないけずでお茶目なシベラが魔性の女の情感をたっぷり醸し出しているけれど、ドロドロな感じはなく、どこか陽気な2人のやりとりは笑いさえ誘われる。それは彼女の歌う「あなたがいなきゃ」が、アップテンポのワルツだからだろうか。2人の関係が微笑ましくて、次の展開が楽しみでワクワクさせてくれる。

DSC_9401

そして次は、ヘンリー役の市村正親とその妹のフィービーの宮澤エマ、モンティはウエンツ瑛士という3人が見せるヘンリーの殺害シーン。モンティがボートに乗りながらヘンリーに親しげに近づき、養蜂が趣味だと知って、ある殺人手段を思いつく。また、モンティは殺人をしようと近づいたのだが、フィービーに一目惚れをしてしまう。

DSC_9527

フィービーも彼の内面に好意を寄せ「裏を表に」という曲をソプラノで披露する。「人は外見によらない」というしっとりとしたバラードなのだが、和やかなシーンの裏では着々とモンティの計画した殺人が行われているという、まさに人は見た目によらないというテーマを見事に表現する楽曲だ。宮澤エマのソプラノはイノセントな愛そのもの。ウエンツ瑛士は、右手にあるシーソーのような舞台装置を扱いながら朗々と声を合わせる。彼の少し陰謀めいたダーティーなファルセットと宮澤のイノセントなファルセットの掛け合いが聞きどころだ。

DSC_9361

そして、やっぱり市村正親の素晴らしさ。彼らの歌に合わせて、蜂に刺されて大仰に苦悶していくのだが、その仕草が圧倒的に面白い。手と足をめいっぱいに使い鞭のようにしならせながら、右から左にジグザグに走っていく。その姿は、どこかキュートで可愛くて、市村正親のオーラ全開といったところ。最後にはボートの上で、死んだり死ななかったりを繰り返し、ようやく絶命。フィービーが嘆き、モンティがほくそ笑むというシーンで、この公開稽古は幕を閉じた。

DSC_9598
 
わずか3シーンだけでも、この作品の面白さが伝わり、そして市村正親のエンターティナーとしても凄みに改めて魅了される。えんぶ4月号でも「演じている方は至って真面目に演じて、真面目に殺されていくのが大事だと思う」と語っている通り、ある意味おバカで荒唐無稽な殺人方法でも、殺される側が大真面目にリアルに演じるからこそ、笑いへと繋がる。
コメディの奥深さと面白さを存分に楽しめる作品であり、市村正親をはじめとするこのカンパニーならではの楽しさに期待が高まる公開稽古となった。
 
DSC_9629

【囲みインタビュー】
 
この公開舞台稽古後に囲みインタビューが行われ、市村正親、ウエンツ瑛士、柿澤勇人、シルビア・グラブ、宮澤エマ、春風ひとみが登壇した。
 
DSC_9670
市村正親(ダイスクイス家のメンバー8人役)
今日は蜂に刺されただけですから、これからが正念場ですね。意気込みは(中央にポーズ)はっ!(左手にポーズ)はっ!(右手にポーズ)はっ!(笑)。実はこの出演者の中では、ウエンツとは前々からやってみたいと思っていました。だけど避けていたんです。ということで、彼が主役で、僕は脇を8役で固めることにしました。蜂だけにね(笑)。しかも、今日は原宿で買った靴がウエンツくんと被っててね。もう仲良し!(笑)。モンティとフィービーのラブソングは、邪魔しちゃいけないと思っているけれど、演出家から言われたし、台本に書いてあるので、台本に忠実な俳優としてはやらないとね。一番高いキーのところが出番だなとわかって真面目に出ていくから面白いんだ。これから8人殺されていくので、肉体的には重労働だなという気がしています。ただ、なるべく面白くしつつも、力が抜けた面白さが出たらいいな。怪我なく千秋楽までたどり着きたい。カッキー(柿澤勇人)とは『スウィニー・トッド』(2013年)で一緒だったけれど、ほとんど全員とは初めて。ただ、カンパニーは歌のテクニシャンが多いので、とても面白い作品をお見せできるなと思います。ぜひ、皆さんで笑いに来てください。
 
DSC_9665
ウエンツ瑛士(モンティ役/Wキャスト)
市村さんとのシーンは先ほどが初めてでした。今回は公開稽古ですから、コメディでもカメラもあるし笑えないから、急に緊張感がでてきました。まさに本番の空気を味わいました。市村さんとの舞台は初めてです。バラエティーやテレビではご一緒させてもらえますけれど、舞台こそが勉強になると思っていますので、いい刺激をもらっています。市村さんは8役をされますが、それぞれの役の下地の経験値があることが伝わってくるので、また新しい傑作キャラクターが生まれのかなと楽しみです。シベラとのキスシーンはあんなに濃厚だとは思わなくて、柿澤くんを見ながら「えーっ」と思わず叫んじゃいました。ついでにエマちゃんとキスシーンをしたいと演出の寺さんに提案したのですが、エマちゃんにマジで断られちゃいました(笑)。
 
DSC_9666
柿澤勇人(モンティ役/Wキャスト)
僕たちのキスシーン、そんな濃厚だった? 今回の稽古で初めてのキスシーンだったので、いわばファーストキスですね。もちろん最高でした。ちゃんと歯ブラシもしてエチケットもしましたからね(笑)。
 
DSC_9663
シルビア・グラブ(シベラ役)
市村さんの稽古を見ると笑わずにはいられない。出てくるだけで笑っちゃうんですよ。同じ舞台に出るシーンがあったら笑わないように気をつけないと。
 
DSC_9662
宮澤エマ(フィービー役)
歌稽古は何週間もやっていたのですが、全員忙しい方ばかりでお会いする機会が少なかったから、今日は本番以上に緊張しました。なので、お稽古の段階でもスリリングで新鮮でした。市村さんはエネルギー量がすごいです。私たちのシーンで必死に歌っているところで、出てくる市村さんがやたらに面白いんです。だから私たちの必死さも、笑い声の中に埋まるんだろうなと(笑)。しかも、私が一番高いキーで歌って頑張っているシーンで……もう諦めてます(笑)。
 
DSC_9661
春風ひとみ(ミス・シングル役)
出ていること忘れて各場面楽しみに見させていただきました。大声で笑いそうになって持っていたコーヒーがこぼれそうに(笑)。市村さんとは初めてですし、エネルギーもオーラもあるし、役者としてキュートなんですね。本当に大好きで、楽しみです。
 
DSC_9698

〈公演情報〉
mainpage2

ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』
脚本・歌詞◇ロバート・L・フリードマン
作曲◇スティーブン・ルトバク
演出◇寺秀臣
出演◇市村正親、ウエンツ瑛士/柿澤勇人(Wキャスト)、シルビア・グラブ、宮澤エマ、春風ひとみ、阿部裕、小原和彦、香取新一、神田恭兵、照井裕隆、安福毅、彩橋みゆ、折井理子、可知寛子、伽藍琳、高谷あゆみ、RiRiKA
●4/8〜30◎日生劇場
〈料金〉S席13,000円、A席8,000円、B席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9:30〜17:30)
 
 
【取材・文・撮影/竹下力】




えんぶ4月号 




kick 

shop 

nikkan 

engeki