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昭和10年代の大阪船場の老舗木綿問屋を舞台に、戦争へ向けて大きく動いていく時代の中にあって、あくまでも優雅に美しく生きる四姉妹の姿を描いた不朽の名作『細雪』。
数々の名女優たちによって演じ続けられてきたこの作品が、3月明治座公演の初日に、上演回数1500回を達成する。
そんな記念すべき今回の舞台で、初めて名作『細雪』に参加する2人。内気で繊細な性格の中に芯の強さを秘めている三女雪子には紫吹淳。現代に通じる積極的で活発な四女妙子に壮一帆。この2人の元宝塚トップスター同士が、名作に挑む今の思いを語り合った。
その対談で、2人は宝塚入団以前からの知り合いだったという秘話も明かされるのだが、そちらはえんぶ4月号(3月9日発売)の本誌にて! そして、お互いの女優としての現在や、新たな『細雪』への思いなどを、この宝塚ジャーナルでお楽しみください!

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デコラティブでお姫様のようなリカさんの世界
 
──名作『細雪』の舞台に出演が決まった時の気持ちはどんなものでしたか?
紫吹 宝塚時代からこの舞台の看板はいつも観ていた記憶があります。その舞台に自分が立たせて頂けるということが不思議な感覚で、さらに、姉妹の中でも三女の雪子役をさせて頂けるということを伺って、背筋が伸びるような、緊張感を感じています。
 女優であれば誰しもが出たいと思う作品に、今回出させて頂けることになって、「私も女優の仲間入りをさせて頂けたんだ」と感じました。退団後の芸能生活で演じた役が男役とかお坊さん、それにSM嬢と、個性的な役ばかりをさせて頂いていたので。
紫吹 そうなの?
 はい。初めて頂いた女優らしい役です(笑)。
紫吹 退団して3年目くらいまでが一番大変な時期よね。女性になろうと努力はするけれど、でもどうしたらいいのかわからない。これはたぶん宝塚で男役をして、しかもトップとして過ごしたという人にしか理解してもらえない悩みだと思うから。
 それをわかっていてくださるリカさん(紫吹)と、ご一緒できるのが本当に心強いです。
──お二人は宝塚入団以前からのお知り合いだそうですが、お稽古中にも様々なお話で盛り上がりそうですね。
紫吹 もうすでに色々話しているのよね。
 稽古場の席も隣同士で、リカさんの前にすごくデコラティブなペン立てがあるんです。すごく綺麗で、リカさんの前だけお姫様の部屋みたいなんです!
紫吹 そんなことはないけど(笑)、バッグに入れたままだとペンがスッと出ないでしょう?だからお稽古バックの中に入っているケースごとポンって出しただけ。ペン立てにツッコまれたのは初めて(笑)。
 えっ?私だけですか?(笑)。本当にペン立てがとても素敵で、もうその空間がすでにドリームで、さすがリカさんだなと思いました!

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雪子役でまた新たな発見や引き出しを

──ところで紫吹さんは、先日デビュー30周年コンサートで男役封印宣言をされましたが、今改めて女優の仕事の面白さをどう感じていますか?
紫吹 宝塚を退団して13年が経ちましたが、それでも男役の方がキャリアの方が依然として長いので、まだ女優としての面白さを存分に感じるところまでは行っていないなと思います。男役の方がまだ余裕があると自分の中では感じるので、やはり女優としても早く余裕が持てるようになりたいですね。でも今回の雪子のような、自分の個性にない役柄をさせて頂くことによって、また新たな発見や、研究をしていく中で引きだしが増えたらいいなと思います。
──自分の個性と遠い役と近い役では、演じる上で面白さ、難しさに違いはありますか?
紫吹 私は男役の時もそうだったのですが、根本的に演じている時には自分がいないんです。どちらかというと憑依体質系で、役が降りてくるまでに時間はかかりますが、一度役に入ってしまえば、そこに自分、「紫吹淳」というものはあまりいないので、「今日の演技は良かった!」と言って頂いても困る時があります。演じるということにも色々なタイプがあって、冷静に作りこんでいかれる方もいると思いますが、私は役が乗り移ってくる方なので。
──それはお稽古期間に掴んでいく感覚ですか?
紫吹 最終的にはお客様の前でないと、降りてこない気がします。自分では変えているつもりは全くないですし、お稽古場でも同じ気持ちでやっているのですが、舞台に出て憑依するらしく、「お稽古場からちゃんとやってくれる?」と後からよく言われます(笑)。
 
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表現者としては迷わず思い切ってやること
 
──壮さんは先ほど女優の仲間入りをしたというお話がありましたが、女優の面白さはいかがですか?
 私は女優としてまだ確立していない分、今の不安定さがある意味面白いです。ふわふわしている自分も面白いなと客観的に見ているところがあります。
紫吹 それは妙子という役には生かせるわね。
壮 そうなんでしょうか?
紫吹 たとえば今、雪子をやれと言われたらキツイでしょう?
 そうですね。相当作り込まないとできないでしょうね。
紫吹 私が、もし退団して3年くらいのところで雪子をやれと言われたら、ちょっと無理ですという感じになっていたと思う。13年経って、『風と共に去りぬ』のメラニー役なども経ての今だから、まだ自分の中には腑に落ちるものがあるけれど、3年目だったらどうかなってしまったかもしれない。
 私、まだ多分、そこまですらいってないんだと思います。きっとあと何年かしたら、女優としての壁にぶつかることもあるでしょうし、その時リカさんがおっしゃっているようなこともわかるのかも知れないです。そういう意味では、今の私の妙子も、後から振り返ったらイタイところがあると思うんです。

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紫吹 そんなことない。今はピッタリだと思う。
 そう言ってくださるのはリカさんの優しさです(笑)。でも今は、わからなくてもとにかく楽しんでやってしまおうと。宝塚時代から私のことを観てくださっている方は、「あぁ、こういう風に変えていってるのね」と見てくださると思うのですが、初めて『細雪』で「女優・壮一帆」をご覧になるお客様も沢山いらっしゃいます。その方たちに「どうも座りが悪いわね」と観られたとしたら、表現者として失格だと思いますから、たとえ自分の中で、男役と女優との境界線がまだはっきりしていない状態であったとしても、まずは迷わずに思い切ってやるしかないと思っています。
──壮さんは宝塚時代に日本物の経験を沢山重ねられていますね。そこは強みなのでは?
紫吹 それはすごいことよね。
 有り難いことに色々演らせていただきましたので、役立つことは多いと思います。妙子は化粧変えがたくさんあるのですが、それには慣れていますし、自分自身に女性としての所作を深く意識したことはないのですが、素晴らしい先輩の方々を身近に拝見していたことは大きいと思います。
紫吹 そうね、すごく勉強になったわね。
 もっとちゃんと見ておけば良かったと思うところもあるのですが、やはりその経験に助けていただいています。

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全く新しい四姉妹で『細雪』に新しい風を

──新たな舞台に期待が膨らみますが、では改めて公演への意気込みをお願い致します。
紫吹 雪子役をさせて頂くことによって女優としての一皮剥けて、新たな引き続き出しが増えたらいいなと思っています。また、これまで色々な『細雪』の形があったと思いますが、今回このキャストで、また新たな『細雪』をお届けいたしますので、その醍醐味をお客様に感じて頂けたらと思います。
 私も同じで、また新たなジャンルに挑戦させて頂くので、引き出しが増えるといいなと思いますし、昨年のストレートプレイを観てくださった方に、「一緒に芝居をする人によって変わるね」と言われたのがとても印象的だったんです。私は自分で役を作り込む部分もあるのですが、人とのキャッチボールで表現の仕方が変わるんだなと。今回も三人のお姉さま方とそれぞれに芝居をするところがあるので、そこでまた新たに感じるものや、表現できるものをお観せできたらと思っています。そして今回は、これまで次女を演じてこられた賀来千香子さんが長女・鶴子役に、三女を演じてこられた水野真紀さんが次女・幸子役に、そして初参加の紫吹さんと私、全く新しい四姉妹になりますから、作品に新しい風を吹かせることがでるように頑張りたいです。
 
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壮一帆・紫吹淳

しぶきじゅん○群馬県出身。86年宝塚歌劇団入団。01年、月組トップスターに。04年、宝塚を退団。女優として舞台、テレビで活躍を続けながら、バラエティ番組でも親しまれている。最近の主な舞台は、ミュージカル『王様と私』ミュージカル『グッバイ・ガール』SHOW HOUSE『GEM CLUB』など。16年11月にはデビュー30周年記念コンサート『Le histoire』を開催した。

そうかずほ○兵庫県出身。96年宝塚歌劇団に入団。12年、雪組トップスターに。14年、宝塚を退団。コンサート活動などを経て、16年ミュージカル『エドウィン・ドルードの謎』で本格的に女優活動をスタート。以後、舞台『Honganji〜リターンズ〜』『扉の向こう側』と順調にキャリアを重ねて活躍中。


〈公演情報〉
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『細雪』
原作◇谷崎潤一郎
脚本◇菊田一夫
潤色◇堀越真
演出◇水谷幹夫
出演◇賀来千香子 水野真紀  紫吹淳 壮一帆 他
●3/4〜4/2◎明治座
〈料金〉S席(1階席・2階前方席)13,000円 A席(2階後方席)9,000円 B席(3階2階前方席)席)6,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10時〜17時)



【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】


花・虞美人 凰稀かなめ、ユナク出演 




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