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原作の『デルフィニア戦記』は茅田砂胡の小説で、これまでシリーズ18作、累計320万部を突破する大ヒット・ライトノベルだ。デルフィニアという国をめぐる壮大なファンタジーであり、とある陰謀により命を狙われるデルフィニアの若き国王・ウォルと、謎の少女・リィの友情の冒険が描かれた、1つの国の歴史小説でもある。小説が発表されるや、画集、朗読CDなどが発売され、いずれも大ヒットになった。
今作は、2.5次元舞台で注目されている児玉明子を脚本・演出に迎え、1月20日から29日まで、舞台『デルフィニア戦記』として天王洲 銀河劇場で上演される。その初日前に通し舞台稽古が公開された。

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【あらすじ】
妾腹の生まれでありながら、デルフィニア前国王の亡き後、善政を敷いてきた国王のウォル(蕨野友也)。だが、ペールゼン(山本亨)ら貴族の陰謀によって国外に追放されていた。ペールゼンは「改革派」を名乗り、執拗なまでにウォルを殺害しようとする。絶体絶命の窮地に陥った時に、「異世界から落ちてきた」という謎の少女リィ(佃井皆美)が助太刀をする。彼らは「同盟者」として、国を取り戻すために仲間を集めるのだ。騎士団長ナシアス(細貝圭)、副団長のガレンス(須藤公一)、幼馴染のイヴン(山口大地)、ドラ将軍(三田村賢二)、その娘のシャーミアン(綾那)。彼らは徐々に力をつけ始め、「国王軍」を結成し、ペールゼン討伐に向かう。
しかし、ペールゼンは、ウォルの養父フェルナン(小林勝也)を投獄し、いとこであるバルロ(林剛史)を軟禁し、とある嘘の秘密を暴露して口車にのせて対抗する。無駄な命が奪われること、そして、自分が王位ではないかもしれないという事実が彼を悩ませ始める。そんな時に、リィの一声により事態は動き始めるのだ。「今のおまえには王冠よりも欲しいものがあるんじゃないのか?」。

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紗幕越しの暗い牢獄の中、手錠をかけられた手をじっくり眺めるウォルの養父のフェルナン伯爵のかすかな祈りからこの舞台が始まる。か細い目の瞬き、声の震え、命の灯火さえない老体を、読売演劇大賞優秀男優賞を3度も受賞した小林勝也がじっくりと演じているのだから、演劇ファンはもちろん、原作のフェルナン・ファンもたまらない、身悶えんばかりの投獄された苦しさが滲みでているオープニングに圧倒される。
そして残党狩りに追われたウォル達のダイナミックな殺陣が始まるのだが、殺陣師の栗原直樹によるアクションが冴え渡る。追われる身の必死の抵抗が息をつかせぬほどダイナミックな殺陣に宿っている。そしてボンジュイという地図にもない異国を探している剣の達人でもある少女リィに助けられるところから舞台は急展開を見せていく。

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舞台装置はシンプルである。中央に回転舞台があり、上手に階段。中央に台座。ここを舞台に、殺陣あり踊りあり、演技あり長ゼリフありのストーリーが進んでいく。元宝塚歌劇団の演出家で、退団後に手がけた『NARUTO―ナルト―』や『FAIRY TAIL』などのトリッキーな演出で有名な児玉明子だが、「今回は人間同士の物語ですから、トリックを多用する場面は少ない」(えんぶ2月号)と語っている通り、転換はアンサンブルのダンスや出演陣の歌で見せ、どちらかといえば人力で話が進んでいく。
だからこそだろうか、俳優陣の演技は迫力に満ちている。ウォルの蕨野友也は、性格上、影を背負った国王を演じているのだが、リィというどこか天然の友人に導かれて、立派な一人の国王として成長していく様は惚れ惚れする。立ち回りは初めてだそうだが、特撮ものなどで活躍してきただけに、敵を斬る動き、剣を交わすアクションは堂に入っている。

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リィの佃井皆美は、まさに天然でいて不思議ちゃん。どこの国からきたのかさえわからないリィの、不思議なキャラクターと存在感を、芯を感じさせながら演じている。ジャパンアクションエンタープライズに所属して、戦隊ドラマの経験もあるだけに殺陣は実に見事で、剣の交わす時の回り込み、切り返しなどは滑らかに魅せる。

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ナシアス役の細貝圭は、たぐいまれなる剣の達人でウォルに忠誠を誓う義の男を颯爽と演じている。殺陣はまるで中世のスペインの闘牛士のように華麗だ。とくにライバルのバルロ(林剛史)との、己のプライドをかけた丁々発止のやり取りからの殺陣は見せ場だ。

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ナシアスのライバルでウォルの従兄弟・バルロの林剛史は、不遇にもペールゼンに軟禁され、しかもペールゼンの口車に乗ってウォルを殺しにくる。内心ではペールゼンへの不信を持ちつつ、国のために従う葛藤は見ていて苦しくなる。
 
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幼馴染のイヴン役の山口大地は、忍者的な素早い動きをアクロバティックに演じていて、大立ち廻りでは冴え渡る。敵の上を飛び跳ね、階段から回転して飛び降り、敵を蹴り飛ばし殴りとばす、その様はアニメの世界と錯覚するほど。

ドラ将軍の三田村賢二は、ウォルに的確なアドバイス(主に反対意見)を伝える中に、揺るぎない忠誠心を滲み出させている。その娘のシャーミアンの綾那は、線の細さに似ず、殺陣にセリフに縦横無尽に駆け巡る。

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ガレンスの須藤公一は大きな体躯を活かし、大ぶりの剣で勇ましく敵をなぎ倒す様がダイナミック。愛嬌のある顔とは正反対のキャラというギャップが映えて、カッコ良ささえ感じさせる。

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女官長カリン役は大沢逸美。実はある事情で息子を失っていて、子供を持つ女性の業や、王妃に仕える身分の辛さを、朗々と感情を込めて語る長ゼリフが切ない。いわばこのデルフィニアの悪しき歴史を語るのだが、その様は感動的だ。

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デルフィニアの外交官を務めるブルクス・大原康裕は、ペールゼンの策略にはまっていく様子は、観ている側に腹立たしささえ感じさせてくれる。

ペールゼン役の山本亨は、デルフィニアのすべての諸悪を握っているという役どころだが、前国王のドゥルーワへの忠誠心ゆえであり、ただの悪役ではない。また朗々とした長ゼリフや、ウォルとの殺陣でも惹きつける。
 
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そして冒頭でも述べたように、フェルナン役の小林勝也が素晴らしい。牢獄で今まさに息絶えんとするシーンで、養父として幼きウォルを育てたという誇りが語られるのだが、ようやく再会できたウォルに「お前は国王であり、私の手から離れた存在であるのだ」と冷たく言い放つ。凛とした決意と深い愛。原作でも名シーンとなっている場面をひときわ美しく表現、ベテランの凄みを感じさせてくれた。

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舞台全体の流れは主に4つのパラグラフに分かれていて、殺陣のシーン、モノローグや長ゼリフ、言葉がぶつかり合うダイアローグ、流れるような転換シーン、この4つをトランプのディーラーように巧みに組み合わせて、テンポよく切り出し配置していく児玉明子の手腕には目をみはる。なおかつ物語への理解が深いので、大切なシーンや言葉のチョイスなど、再現性と組み立てが絶妙なのだ。そのおかげで、原作ファンはもちろん、原作を知らない人間が観ても物語に入り込めるようにできている。 
そんな児玉の原作への愛と、小説の舞台化というプレッシャーに真っ向から向かい合ったカンパニーの力が、今回の成功に繋がったと言えるだろう。
副題に「第一章」とついているように、今回は原作の3、4巻を描いているが、この先、第二章、第三章と繋がっていくことへの、大きな期待も抱かせてくれる見事な舞台が誕生した。

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【囲みインタビュー】

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細貝圭、佃井皆美、蕨野友也、山本亨
 
この『デルフィニア戦記』の公開舞台稽古の前に囲みインタビューが行われ、蕨野友也、佃井皆美、細貝圭、山本亨が登壇した。

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蕨野友也(ウォル役)
原作の世界観を、演出家の児玉さんが丁寧に描いてくれました。ファンの期待を裏切らない『デルフィニア戦記』になっていると思います。殺陣が多い舞台です。初めての立ち回りですが、先輩方にたくさんのご指導を受けて本日を迎えることができました。最初は、殺陣師の方につけていただいて、5回剣を振っただけで疲れて立てないことがありました。筋肉痛が続く毎日で、先輩方についていかなくちゃいけないところから始まっていますので、これからご覧いただく方には、蕨野が成長したところを見せられると思います。小林勝也さん演じますフェルナン伯爵の最後は、原作のファンの方達も「もう一度見たいシーン」投票で1、2位を争う印象的なシーンですので、そこは小説も読んで、気持ちを込めてしっかり演じるようにしました。本日初日を迎えるにあたり、素晴らしい劇場で上演させていただくので、緊張感もありますし誇りもあります。
 
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佃井皆美(リィ役)
ついにきたかという感じです。稽古が1ヶ月と少しあったのですが、本当にあっという間で夢みたい。緊張していますが、楽しみにしてくださるみなさんのためにも精一杯やるぞという気持ちです。一番のシーンは、ペールゼンとウォルが戦うシーンです。手に汗握るようシーンで、わーっと泣きそうになりました。原作のファンで、リィが大好きだったので、自分が演じるということになった時に、彼女を深く追求していくのが大変だったし楽しかったですね。

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細貝圭(ナシアス役)
役者陣は年齢差がありますが、すごく仲が良いので、年齢を超えた座組として、1ヶ月間以上も稽古したので、早くお客さんの前で演じたいと思います。蕨野くんは殺陣や演技はほとんど初めてとおっしゃっていましたけど、現場ではそんな感じはなかったです。あまり言葉で引っ張っていくタイプではなくて、背中を見てそれについていく座長だなと。僕は、親友であるバルロとの対立が、今まで信頼していた仲間と対立し戦わなければならない、差し違えて死んでしまうところまで、ナシアスの気持ちが揺れ動いてしまうところなど考え抜いて演じています。

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山本亨(ペールゼン役)
みんなで稽古をしてきたものをお客様にぶつけて、怪我なく千秋楽を迎えたいと思います。原作のファンの方によろこんでいただけるように一生懸命演じたい。実は稽古が進むにつれて蕨野くんに無視されるようになって、冷たくなっていくので、「蕨野ー!」みたいな感じで少し腹を立てていたら、親の敵ということで、ウォル役に没入してると聞いて、ウォルの佇まいが彼の中に入ってきたんだなと思って感心しました。ペールゼンは権力者になりたかったのではなくて、彼なりの正義があったと思うので、5年間国を治めてきた人間としての手腕がバックに見えたらありがたいなと思っています。

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〈公演情報〉 
『デルフィニア戦記』第一章
原作◇茅田砂胡『デルフィニア戦記』(C★NOVELS/中公文庫)
脚本・演出◇児玉明子
出演◇蕨野友也、佃井皆美、細貝圭/小林勝也、山本亨 他
●1/20〜29◎天王洲 銀河劇場
〈料金〉特製台本付き1階席10,900円、特製台本付き2階席9,900円、特製台本付き3階席8,900円、1階席8,900円、2階席7,900円、3階席6,900円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉舞台「デルフィニア戦記」チケット窓口 03-6265-8518
〈公式サイト〉http://delfinia-stage.jp
 
(C)茅田砂胡(C★NOVELS/中公文庫)・舞台「デルフィニア戦記」製作委員会



【取材・文・撮影/竹下力】





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