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シェイクスピアの傑作喜劇『お気に召すまま』が、設定を大胆に変えて現代に蘇る!
演出はロック・オペラ『アメリカン・イディオット』で記憶に新しい鬼才マイケル・メイヤー、舞台音楽はブロードウェイで数々の音楽を担当し、ピュリッツァー賞を受賞したトム・キット。この夢のコンビが、シアタークリエ10周年記念公演のために来日した。

2人のもとに集まった俳優は、元宝塚星組のトップスター柚希礼音、日米の舞台で活躍するジュリアン、ミュージカルは百戦錬磨の橋本さとし、狂気と情熱を平然と演じる実力派・横田栄司、ジャンルも幅広い人気男優・伊礼彼方、いぶし銀の演派・小野武彦、可憐で清楚な佇まいのマイコなど錚々たるメンバー。彼らが紡ぎ出すのは、1967年のサンフランシスコでのフェスティバル「Summer of love」を彷彿とさせるハッピーな舞台だ。そんなロックでポップなストレートプレイが、シアタークリエで2017年1月4日から2月4日まで繰り広げられる。その公開稽古が12月21日に行われた。

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【あらすじ】
ロザリンド(柚希礼音)の父(小野武彦)は、弟のフレデリック(小野武彦/2役)に政治家の地位を奪われ、政界から追放される。しかし、ロザリンドはフレデリックの娘シーリア(マイコ)との友情からワシントンD.C.に留まることが許され、2人は姉妹のように仲良く暮らしていた。
ローランド・ド・ボイス家の息子たちも彼女たちの近くに住んでおり、その3男オーランドー(ジュリアン)は長男オリヴァー(横田栄司)から、とある確執から苛酷な生活を強いられていた。オーランドーは一発発起、自分の運を試そうと、フレデリック主催のレスリングの試合に出場し見事に勝利する。この試合を見物していたロザリンドは彼に一目惚れし、2人は恋に落ちる。
しかし、ロザリンドは、彼らの関係に気づいたフレデリックによって、ワシントンから追放されてしまう。ロザリンドは男装して素性を隠し、シーリアとタッチストーン(芋洗坂係長)を伴ってアーデンの森(舞台ではヘイトアシュベリー)に辿り着く。
森には、ジェークイズ(橋本さとし)やアミアンズ(伊礼彼方)たちが悠々自適にヒッピー暮らしをしていた。森でロザリンドはオーランドーを見つけるが、男装している彼女に彼は気付かない。それにヤキモキしたロザリンドは彼の愛の告白の練習相手になることを自ら提案して……。

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マイケル・メイヤーとトム・キット、彼らが手がけるということは、必然的にこの舞台がロックなエンターテインメントになることを意味している。劇中に流れる音楽は、KORGのキーボード、チェロ、ドラム、ベースと、現代っぽい、ポスト・クラシカルな編成になっている。トム・キットがパンク・バンド、グリーンデイの楽曲を舞台『アメリカン・イディオット』でストリングアレンジしたバージョンを彷彿とさせる。今回はトム・キットが書き下ろした新曲が使われており、チェロのメロディが舞台を引っ張る。

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稽古シーンの始まりは、アーデンの森(ヘイトアシュベリー)。アミアンズ(伊礼彼方)がバンドの曲に合わせてアコースティックギターを片手に歌うのだが、これが自由を謳歌する歌そのもの。まさにジャニス・ジョップリンやジェファーソン・エアプレインの系譜に連なるような、フラワームーブメントな曲調で、のどかでいて、サイケデリック、しかもハッピーなフィーリングに満ちた歌だ。

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そこへ追放されたロザリンドの父親(小野武彦)が、まるで映画『地獄の黙示録』のカーツ大佐よろしく、集まってきたヒッピーたちに復讐めいた演説をするのだが、どこか胡散臭く、でも陽気な感触が舞台全体から漂ってくる。小道具もカラフルでサイケな色彩、まさに60年代後半にタイム・スリップしてしまったような感触を覚えるのだ。

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続いてのシーンは、ギャニミードと名前を偽った男装したロザリンド(柚希礼音)が、エリアンナと変名したシーリア(マイコ)を連れ立って、オーランドー(ジュリアン)の恋の指南役をかってでる重要なシーン。

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ここでは、柚希礼音がセリフと動きで魅せる。元男役トップスターだけあって、華麗でいて奔放、なのにどこか女性的。そんな柚希にしかできない男装の女性をしっかりと見せてくれる。シェイクスピアの長ゼリフも難なくこなし、口跡もよく、しかもアクセントにきっちりした抑揚がついているから、まるでロックスターのインタビューのように知性的で熱気があってカリスマ性がある。

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それに翻弄されるオーランドーのジュリアンは、男性ってなんだか単純とでも言わんばかりのおとぼけさ加減で、その見事な天然ぶりには笑わされる。シーリア(マイコ)は、2人のやり取りに横の方でクスクス笑って、まるでいたずら好きの女の子みたいで初々しい。

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ロザリンドにすっかり騙されたオーランドーは、ジェークイズ(橋本さとし)に恋愛相談するのだが、真剣に恋の話をしているのに、悲観論者のジェークイズは、どんどん論点をずらしていってしまう。そのセリフを淀みなく喋る橋本さとしの巧みさ。この場面はシェイクスピアらしいレトリックの面白さが伝わってくる。

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最後は、宮廷側(舞台ではワシントンD.C.にいる保守派)の人間だったオーランドーの兄・オリヴァー(横田栄司)も、ヘイトアシュベリーに足を踏み入れ、ヒッピーたちに感化されていくシーン。いかにも頭が堅いオリヴァーが、ヒッピーたちの奔放な生活に憧れを抱いてしまう葛藤を、横田栄司が狂気に満ちた気迫で演じてみせる。

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音楽は、ジェファーソン・エアプレインの名曲「ホワイト・ラビット」が流れるが、この曲は「不思議の国のアリス」を題材にしたサイケデリックでダークな感じの曲で、その曲に合わせて短銃を持った横田が狂気に冒されていく姿は、ヒッピーの申し子だった亡きジミ・ヘンドリックスを彷彿とさせる。

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また、そこに現れる弟オーランドー役のジュリアンも、上半身をはだけ、厚い胸板を見せていて、そこに、ヒッピームーブメントの裏にある肉体と精神のバランスが崩れ去ってしまった危うさや儚さを感じさせる。この精神と肉体の変調というのはとても現代的な問題であると同時に、この舞台を象徴する場面のようにも感じられた。
 
そんなヒッピーの興隆と挫折という通底する主題があるとしても、それをどこ吹く風と軽やかにユーモラスに演じる役者たち。そう、これはシェイクスピアの喜劇である。そこにはハッピーで感動的な大円団が待っていることは間違いない。
 
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〈公演情報〉
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『お気に召すまま』
作◇ウィリアム・シェイクスピア
演出◇マイケル・メイヤー
音楽◇トム・キット
出演:柚希礼音、ジュリアン、橋本さとし、横田栄司、伊礼彼方、芋洗坂係長、平野良、古畑新之、平田薫、武田幸三、入絵加奈子、新川將人、俵木藤汰、青山達三、マイコ、小野武彦 ほか
●2017年1月4日〜2月4日◎シアタークリエ
〈料金〉11,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777


【取材・文・撮影/竹下力】


柚希礼音主演『お気に召すまま』




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