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『放浪記』『おもろい女』とともに、故・森光子の3大代表作として知られる舞台『雪まろげ』。その名作が高畑淳子の主演で9年ぶりに再演、シアタークリエで上演中である。(19日まで。そののち12月まで全国ツアーあり)

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タイトルになっている「雪まろげ」とは、小さな雪の塊を積雪の上で転がしてだんだんと大きな塊にしていく遊びのことで、本作の主人公、温泉芸者の夢子がついた小さなウソが雪まろげのように次々とウソを呼び、やがて温泉街を揺るがす大きなウソになってしまうという笑いと涙にあふれた人情喜劇だ。 
初演は1980年、森光子が作家の小野田勇に「嘘つき女を演じてみたい」という希望を語ったことで生まれた作品で、07年まで471回にわたり上演され、森光子の代表作の1つとなった。今回の脚本・演出は、高畑と『ええから加減』でタッグを組み、藤山直美主演『おもろい女』の潤色・演出も手掛けたONEOR8の田村孝裕が担当している。

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夢子がなぜ「嘘つき女」になったのか、その出自や環境と関わる話は中国の大物政治家との関わりなどで明らかになっていくのだが、ただみんなに愛されたい、その場を楽しくしたいという気持ちで嘘をついてしまう夢子の心の寂しさが見えてくると、思わず胸を衝かれる。そんな夢子役を高畑淳子は体当たりで可愛く演じている。雪の中で踊る「津軽海峡冬景色」の舞姿でのオープニングから鮮やかで、森光子とはキャラクターがまったく違う高畑・夢子だが、役柄へのアプローチや物語を引っ張っていく演技力などはみごとで、名作舞台を確かに継承し、また新たな生命を吹き込んでいる。

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共演者も多彩な実力派ばかりで、土地のNO.1芸者でお金が大好物、通称コガネ虫の銀子に扮した榊原郁恵は、登場から目を惹く華やかさがあると同時に、かつては酒蔵のお嬢様だったという過去へのこだわりや、弟への想いなどが見えてくると、その嫌われる生き方にも思わず納得の拍手を送りたくなる。

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流れ者の踊り子で、ヤクザに追われていたところを夢子たちに救われて、この土地に居着いたアンナには湖月わたる。行動派なだけに波風を立てたりするのだが、実は優しい心根の持ち主で、夢子を慕って自分の恋心を諦めるなどいじらしいところもあるキャラクター。湖月はスタイルを生かしたダンサー姿から、次第に着物姿も身についた一人前の芸者になっていくアンナの変化をきっちりと演じてみせる。
そんなアンナに想いを寄せられながら、自分の詩をほめてくれた夢子と恋仲になる報道記者の大吾に的場浩司、この土地出身でいったんは東京本社で働いていたものの真面目すぎて出世が遅れている誠実な男性像を朴訥に演じている。

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そのほかにも。小料理屋を営むしっかりものの姉さん芸者で、実の子を妹と偽っているお千賀に柴田理恵、口は悪いが気立てがよくおせっかいなくらい人情家で銀子とすぐにぶつかる駒子に青木さやか、元ボクサーで食い気と飲み気は盛んだけれど芸の精進には今ひとつ身が入らない芸者のぽん太に山崎静代など、いずれも個性豊かな面々で、そんな女優たちが芸者姿でお座敷の遊びや踊りを見せるだけで舞台が楽しく盛り上がる。

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物語の後半は、夢子の大きなウソのために大騒ぎになっていくのだが、その顛末の中に当時の日本と国際関係なども浮かび上がる社会性や、登場人物たちそれぞれの一生懸命な人生が、観る者の感慨と共感を呼んで、さすが長く愛されてきた名作と頷ける舞台となっている。

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〈公演情報〉
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『雪まろげ』
作◇小野田勇 
脚本・演出◇田村孝裕
出演◇高畑淳子、榊原郁恵、湖月わたる、柴田理恵、青木さやか、山崎静代/的場浩司 ほか
●9/28〜10/19◎シアタークリエ
〈料金〉11,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ  03-3201-7777(9:30〜17:30)
●10/21◎クロスランドおやべ(富山)  クロスランドおやべ  076-668-0932
●10/23◎1富山県民会館(富山)  北日本新聞社事業部 076-445-3355
●10/25〜26◎北國新聞赤羽ホール(石川) 北國新聞赤羽ホール 076-260-3555
●10/29〜30◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール(兵庫) 芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255
●11/2◎まつもと市民芸術館 主ホール(長野)  SAC 055-228-3589
●11/5◎山形市民会館 大ホール(山形) 山形市民会館 023-642-3121
●11/7◎桐生市市民文化会館 シルクホール(群馬)  桐生市市民文化会館 0277-22-9999
●11/12◎新潟県民会館 大ホール(新潟) NSTイベントインフォメーション 025-249-8878
●11/16◎コラニー文化ホール(山梨) SAC  055-228-3589
●11/19〜20◎山口県立劇場 ルネッサながと(山口) 山口県立劇場 ルネッサながと 0837-26-6001
●11/23◎はつかいち文化ホール さくらぴあ(広島)  テレビ新広島 事業部 082-256-2213
●11/26◎レクザムホール(香川) 県民ホールサービスセンター 087-823-5023
●11/30◎岸和田市立浪切ホール 大ホール(大阪)  岸和田市立浪切ホール 072-439-4915
●12/3〜4◎刈谷市総合文化センター 大ホール(愛知)  メ〜テレイベント事業部 052-331-9966 
〈公演HP〉http://www.tohostage.com/yukimaroge/




【文/榊原和子 写真提供/東宝】


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