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黒柳徹子が取り組んできた海外コメディ・シリーズの第30弾となる記念公演『レティスとラベッジ』が、共演に麻実れいを迎えて、EXシアター六本木で上演中だ(16日まで。のち、20日〜23日まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでも上演)。

『アマデウス』『エクウス』などの衝撃的な作品で知られる作家ピーター・シェーファーの手になる、この傑作コメディ『レティスとラベッジ』は、1989年に「黒柳徹子海外コメディ・シリーズ」の第1作目として本邦初演を果たし、大成功を納めた。これをきっかけに、黒柳徹子によるこのシリーズは27年間の長きに渡って続けられてきた、いわば記念碑的作品でもある。そんな初演以降、銀座セゾン劇場からル テアトル銀座に劇場名が変わった2000年にも再演されており、今回は初演から27年ぶり、再演から16年ぶりでの再々演となった。

【STORY】
ロンドンの観光ガイド、レティス・ドゥ—フェ(黒柳徹子)が、歴史的建造物のガイドを務めているシーンから物語は始まる。だが、あまりに退屈なガイド内容に観光客のみならず、当のレティスも飽き飽き。ある日とうとう我慢できなくなった彼女は、観光客の前で、面白おかしく尾ひれを付けた説明をはじめてしまう。シェイクスピア俳優だった母親の血を引くレティスのおしゃべりガイドは、日に日にエスカレート。観光客から感動の手紙が舞い込むほどになるが、その熱演の噂を聞きつけた歴史保存委員会の堅物職員ロッテ・シェーン(麻実れい)が視察に現れ、レティスにクビを宣告する。

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だが後日、職を失い失意のまま芝居の小道具やポスターでいっぱいのアパートで過ごすレティスを、ロッテが訪ねてくる。用件はなんと新しい職場を斡旋したいという意外な申し出。実はロッテは、心ひそかにレティスに相通じるものを感じていたのだ。大喜びのレティスはラベッジを入れた特製のハーブ酒、クワッフを取り出し2人で乾杯する。
ところが6週間後、レティスはロッテを殺害しようとしたかどで告発されてしまう!いったい2人に何が起こったのか?弁護士のバードルフ(団時朗)はレティスからことの真相を聞きだそうとするが……

作品は、一見正反対に見えるレティスとロッテが反目しあいながら共感していく様が、テンポの良い会話劇の中に実に巧みに描かれていて、自然に物語に引き込まれる力を持っている。そこには、ロンドンの古い歴史、また演劇そのものに対するピーター・シェーファーの愛情がたっぷりと注ぎ込まれているから、演劇好きならば心躍ること請け合いだ。更に、現代社会に1人で生きている女性のある意味の生きにくさ、それが故に尚強まる共感と友情が、笑いの渦の中に織り込まれ、驚きの展開がホロリとさせるエンディングにつながる巧みさに感心させられた。

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何より、サービス精神が旺盛なあまり、悪気なくつい話を盛ってしまう、口から先に生まれてきたようなおしゃべりガイドレティスの人物造形が、まるで黒柳徹子その人へのアテ書きではないか?と思われるほど、本人のキャラクターにマッチしているのが、最大の強みだろう。これだけの適役には、そう簡単に出会えることではないし、だからこそこの作品が、長く続く秀逸な翻訳・コメディシリーズの扉を開いたのももっともだと思える。正に女優と作品が国を越えて運命的な出会いを果たしていて、改めての再々演が嬉しかった。

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一方、初演で山岡久乃、再演で高畑淳子が演じたロッテ役の、三代目として登場した麻実れいも、お堅い歴史保存委員会の職員が、実は別の生き方もできたのではないか?と心に秘めていた想いを、レティスとの友情によって解きほぐしていく過程を、竹を割ったようなキビキビとした演技の中に、繊細な柔らかさを込めて好演している。麻実が一際長身であることも、黒柳の愛らしさと、互いのデコボコ感を視覚からも表現する良い効果を挙げていて、重厚な悲劇や難役を数多くこなしてきている麻実の、軽やかさが堪能できる場としても貴重なものになった。

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他に、このシリーズの常連である団時朗が演じる弁護士バードルフの、大真面目な中から醸し出される可笑しみ、ロッテの秘書ミス・フレイマーの蔵下穂波の新鮮さなど、ほぼ2人芝居で進められる舞台を脇から支える人物も充実。演劇を愛する心を刺激される、充実の時間となっていた。

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【囲みインタビュー】 
 
初日を控えた9月30日、通し舞台稽古が行われ、黒柳徹子と麻実れいが囲み取材に応えて、公演への抱負を語った。

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──いよいよ明日、初日を迎えますが、今の心境は?
黒柳 すごく楽しみにしています。お客様がお入りにならないとわからないところが、特に喜劇の場合はありますので、明日お客様がお入りになって笑ってくださったりしますと、どういうものかがよくわかってくると思いますので、それを楽しみにしています。
麻実 楽しく明るく幸せなドラマなので、その空気がお客様に流れて行くことを望んでいます。この公演をしていることがとても幸せです。徹子さんのおかげです。
黒柳 私は貴女のおかげよ!
──お2人は初めての共演となりますが、それぞれの印象は?
黒柳 (舞台は)いくつも拝見していたのですが、今度ご一緒にやるということでとても楽しみにしていました。ご一緒にやっていて、麻実さんはとってもきちんとした方で、間食なんかなさらない。私はしょっちゅう稽古中も何か食べたりしているのですが、麻実さんは偉くて何も召し上がらないの。私も集中してはやっていますが、やっぱりちょっとは食べたり飲んだりしてしまうのですが、麻実さんは何も召し上がらないので感動しました。(麻実に)本当に召し上がらないわよね?宝塚の時からそうなの?
麻実 そうですね、本番中は食べないのでそれが癖になってしまっていて。
黒柳 私も本番では食べないですよ(爆笑)。でもお稽古場でも召し上がらないでしょう?
麻実 あ、でもね、後半は体力を使うので、少しは。
黒柳 召し上がった?あ、それは見てなかった(笑)。

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──麻実さんから見た徹子さんは?
麻実 私は先日『徹子の部屋』に3度目ですか?出演させて頂いて、その時に対面する徹子さんと、今回舞台の板の上に立たれている徹子さんとは、全く違う感覚を受けました。今の徹子さんとご一緒させて頂けることがすごく嬉しいですし、この機会を大切にしたいですし、徹子さんの胸を借りて自由に柔らかく演技が出来たらなと思っています。よろしくお願いします。
黒柳 お貸しするほど(胸が)ございません(爆笑)。
──作品の見どころをお願いします。
黒柳 やっぱり独身で仕事をしながら、自分たちの楽しみを求めてこういう風に暮らすというのも悪くないなと思いました。
麻実 そうですね。私はピーター・シェーファーの戯曲の素晴らしさをすごく感じました。とにかくやっていて楽しいのが最高です。芝居をやっていてこんなに楽しくていいのかしらと思うくらい、毎日幸せです。
黒柳 でも台詞がすごいから!数えたことはないんですけど。
麻実 数えない方が良いですよ(笑)。
黒柳 よくわからないんですけれど、3千行くらいあるかも知れないという、すごいのよね。
麻実 そうですね、2人芝居がね。
黒柳 ほとんど2人芝居で、またそれが冒険的で面白いのね。そして台詞の1つ1つが、後にひっかかってくるものですから、おざなりにできなくて、ちゃんと言わなくちゃいけない、飛ばしたりなんかできないというそういう訳があるので、尚のこと面白いと思います。

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──この作品は、コメディ・シリーズの初演でされた作品だということですが。
黒柳 はい、30年前にやりました。
──その頃のことを思い出しますか?
黒柳 そうですね、30年前ですのでちょっとずいぶん前だなと思います。それからはじめはセゾン劇場、名前が変わってル テアトル銀座でこの間までやっていたのですが、『徹子の部屋』は40年ですが、まぁ言ってみればあっという間。もちろん毎回毎回大変なのですが、特に今回は30年前だなと思うと、ちょっとびっくりしますね。私もまだその頃若かったんだなと思いますが、同じ体力でやらなければいけないので、その分楽しんでと。
──その後再演もありましたね。
黒柳 16年前ですね。
──台詞など思い出したりはしましたか?
黒柳 その頃の台詞は覚えていないです。毎年やっているので、次のが入ってくると前のが出て行くんだと思います(笑)。そのかわり、次に何が起こるかがわかっているのは、やったことがあるものは違いますね。(麻実に)貴女はどう?はじめておやりになって。
麻実 やっぱり最初はこれはコメディだなと思って、軽くて楽しいかな?と思っていたのですが、台本を開けた途端、これは何?徹子さんと2人芝居じゃない、なんなのこの台詞の量!と緊張しましたけれど、その台詞のやりとりが大変面白く、楽しいので、やはり徹子さんの30回目のステージに私も参加させて頂けることがすごく嬉しいです。

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──台詞量はどうですか?他のお芝居に比べて。
麻実 私の場合は、結構台詞が多い仕事が多いので、良く言えば豊かになるのですが、ハードなのですけれども、今回もそれらに引けを取らないくらい大変ですね。
──徹子さんはおしゃべりな役ということで。
黒柳 そうなんですね。外国人の名前がいっぱい出てきますし、また歴史の話なので、イギリスの国王が首を切られるような、日本にないような話ですから、少し語弊があるかもしれませんが、そのような歴史を勉強できたのは面白かったです。
──お稽古場ではどんな雰囲気で?
麻実 とても楽しかったです。普段からとても可愛らしい方なので、前にどなたかに言われたとおっしゃっていましたが、この役が徹子さんそのままなので、その自然さに圧倒されています。
黒柳 この役は初めて演じた時に、ピーター・シェーファーがどこか穴の中から私を見ていて、それで書いたんじゃないか?と言われたんですが(笑)、そういう点では役を作るという必要があまりなくて、このまんまでいいような感じなのですが、まぁこのまんまでは覚えられないので(笑)、もちろん作りはするのですが、今までやった他の役に比べれば楽かも知れません。
──徹子さんも話を「盛る」ことはあるんですか?
黒柳 なくはないですよ(笑)。テレビのバラエティーショーなんかに出たら大概は皆そうでしょう?ちょっと大げさに言うのは。私はこの前餃子を3回か4回しか食べたことがないと言いましたけれど、本当は10回は食べたことがあります(笑)。あれなんかは結構盛ってると思います(笑)。

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──最近インスタグラムを始められたと話題になっていますが。
黒柳 はい、はじめたんですけれど、私あんなことが話題になってニュースになるとは全然思いませんでした。あれは福山雅治さんが『徹子の部屋』においでになった時に、一緒に写真を撮って、いつも皆さんと撮るのですが、そうしたら「インスタグラムやればいいのに」と福山さんがおっしゃたんです。それで調べたら、あぁ自分の周りにあることをやればいいのかと始めたら、すごく面白くて。わざわざ撮るのではなくて、自分が持っている小さなパンダとかね、身の回りにあるものを撮っているのですが、私はそういうことをやったことがなかったので、皆さんから感想とか頂いたこともなかったですから、その感想を読むのがすごく面白いです。毎日読んでいます。びっくりするくらいで、今10何万と頂いています。
──若い人からですか?
黒柳 圧倒的に若い人からですね。それがとっても嬉しいです。
──女子力が高いと。
黒柳 そうなんです。女子力高いと言ってくださって、女子力ってなんなんだかよくわからないのですが(笑)、まぁ女子力がないとこの年になってインスタグラムやらないですよね(笑)。だから女子力って言われると嬉しいです。なので当分やってみようと思います。自分が面白いと思ったり、感動したりというものなので、いつまで続くかはわからないですが、当分はやるつもりでいます。でも私はあまり芸能人のお友達を撮ったりはしないので、物とかですね。お友達だと「出していいですか?」とか訊かないといけないので、そういうのはめんどくさいでしょう?(笑)

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──では最後に、お客様にメッセージをお願いします。
麻実 いよいよ明日初日を迎えます。こういうコメディの作品は毎回毎回の積み重ねで、どんどん豊かになって行きますので、私達もそういう想いで演じますけれども、色々な方に観て頂きたいと希望しています。是非いらしてください。お待ちしています。
黒柳 こういう喜劇もあるのだと皆様に知って頂きたいと思います。喜劇にも色々ありますけれど、『アマデウス』などの素晴らしい作品を書いたピーター・シェーファーが、よくこんなこと思いついたと思うような内容なので、知的ではありますし、そういうものを楽しみに男の方にも観て頂けたら嬉しいと思います。ご覧になってお笑いになって、表に出て面白かったと思って頂けたら。よろしくお願いします。お待ちしています。

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〈公演情報〉
黒柳徹子主演海外コメディ・シリーズ第30弾
『レティスとラベッジ』
作◇ピーター・シェーファー 
訳◇黒田絵美子 
演出◇高橋昌也  
演出補◇前川錬一
出演◇黒柳徹子/麻実れい/団時朗 他
●10/1〜16◎EXシアター六本木
〈入場料〉1階席 9,500円 2階席 8,500円(全席指定・税込)
グッドプライスシート 6,000円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉パルコ 03-3477-5858
●10/20〜23◎梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
〈入場料〉9,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉シアタードラマシティ 06-6377-3888
〈HP〉http://www.parco-play.com/web/program/lettice/


【取材・文・撮影/橘涼香】

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