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宝塚歌劇団専科で、数々の刺激的な舞台を生み出している轟悠のもう1つの顔である、絵画の世界での成果を披露する個展「心の旅」が、新橋の第一ホテル東京で開催中だ(25日まで。7月31日〜8月1日、大阪梅田のホテル阪急インターナショナルでも開催)。

幼い頃から絵画の世界に親しんできた轟悠が、初の個展を開いたのは2003年3月のこと。繊細でありながら、大胆さもあり、何よりもファンタジックな作風は、宝塚の男役スターである轟悠ならではの心象風景を表した、個展タイトル通りの「心の旅」として評判を呼び、回を重ねた。今回の第6回となる個展では、2010年10月に開かれた前回第5回の個展から6年を経て、描き続けられた日本一の山である「富士山」と、カトリックの巡礼地として知られる「モン・サン・ミッシェル」という、二つの世界遺産をテーマとした新作22点を含む、40点が展示されている。更に、轟が絵を描き始めるきっかけを与えたという、母堂の絵画と轟自身が少女期に描いた絵を交互に展示した「親子展」の一角も設けられるなど、充実した内容となっている。

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そんな個展初日を控えた24日、囲み取材が行われ、作者の轟悠から「本日はお忙しい中、朝早くからありがとうございました。第6回となりました個展、全部で40点という数になりました。あまり大きなものはないのですけれど、今回は富士山とモン・サン・ミッシェルをメインに新作22点を描きあげております。また、母が描いておりました絵と、私が小学生の時と中学生の時の油絵を親子展として展示させて頂いております。前回の5回目から間が開きましたので、40点という数でお客様に楽しんで頂きたいなという思いで描きました」という挨拶があり、引き続いて質疑応答となった。

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【囲みインタビュー】

──美しい絵ばかりですが、描く時には写生をするのですか?それとも写真などから?
写真を参考に致しますが、ただしそのままではなくて、ないものがあったり、あるものがなかったり、色々と手を加えておりますし、あとは想像の絵がほとんどでしょうか。ご覧になって頂いてお気づきかと思いますが、和紙、釘、糸、パスタ、ゴマ、卵のカラ、と6種類を諸々取り入れて描いております。100周年の時に逸翁美術館で展示させて頂いて、今回もクリアファイルなどになっている絵で、初めてゴマを使ってみて、これは次も行けるかも?と思い、今回はふんだんに使い過ぎたところがありますが(笑)、展示中に剥離しないか?が心配です。
──富士山とモン・サン・ミッシェルを新作のテーマにしたのは?
何か惹かれるものがあったのです。実はモン・サン・ミッシェルには行けていないんです。行こうとしたら気候が悪くて、現地の方のご判断でそのままブルージュに行っちゃったんです。ブルージュはベルギーのベニスと言われるくらいの水の都なんですが、やはりどうしても行けなかったモン・サン・ミッシェルに、今度は絶対に行こうという決意でおります。そして、今、前に立っておりますこの絵が、大天使ミカエル、このモン・サン・ミッシェルの尖塔に立っている像なのですが、宗教ですとか、平和を願う気持ちを、これも私のイメージとしてシルバーの絵の具を使って少し立体的に描いております。富士山は今年8月11日が「山の日」として国民の祝日になるという構想を2年前に聞きまして、なんと私の誕生日なんです。皆さんが私の為にと(笑)。それと世界遺産になりまして、私はアウトドア派ではなく、こうして絵を描くインドア派なので、タイプ的に山登りは不得意で富士山に登ったことはないのですが、やはり色々な姿を見せてくれる山なので、見えている時には必ず写真に納めるようにしています。やはり昔から神がいると崇められてきた山ですし、登った人に聞くと心が変わるそうです。そう言った意味でこの二つは、私の好きな題材として描きました。

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──6年ぶりの個展ということで、その間の思いが込められていますか?
描き始めたら夢中なので、6年間の思いというよりも、今の心情が込められていると思います。ちょうどディナーショーを9月の1日、2日、5日、6日に控えておりまして、その曲の譜面なども打ち合わせしたりしながらの(個展の)用意だったので、元気な曲もありますから冒険心のある絵もありますが、引きこもっていたという絵もあります(笑)。6年間の中では色々なことがあり、人生ってあっという間だなと思いますが、その中でもちろん舞台作品を含めて、様々な出会いと別れがありましたので、ご覧頂く皆様には、5回目と比べて「あ、こんな絵も描くんだな」という、遊び心のある自由な私も見て頂けるかな?と思います。
──お母様の絵、またご自身の子供時代の絵も展示されていますが、やはり絵を描くことはお母様の影響で?
母が習っている先生に、私も絵を習っておりました。幼稚園の頃からです。それで10歳、小学校の3、4年生の時に水彩画をやっていたのですが、油絵の方が良いと言われて、それは自分から望んだ訳ではなかったのですが、やってみなさいと言われて始めました。今回展示するにあたって劣化もありましたし、ちゃんと完成させていなかったので、それを修復も含めて、母の絵もなのですが、手を入れて完成させたということです。過去に母からも「自分も個展をやりたいから、その時あなたの絵を貸してくれる?」とよく言われていましたし、また小林公平先生とも「合同個展をしよう」というお約束をしていました。それが果たせなかったのが残念なのですが。
──では、今回はお母様との合作ということに?
そこまでではないのですが、やはり古いものは剥離してしまっていて、ニスなどを塗っていないとボロボロになってしまうので、その部分に手を入れるのに、母が創った色を自分が創り出せるか?が心配だったのですが、どうにかと。ただ、母のタッチは私とは全く違って豪快で男らしくて、そこにびっくりしながらの作業でした。実家には私の中学の頃の絵が飾ってあって、九州ですので椿と薔薇の絵なのですが、50号の大きなものなので、今回は持ってこられませんでした。

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──年々充実した舞台を創られている中で、こうした絵を描いている時間というのは轟さんにとってどんなものですか?
つい笑みが浮かんできたり、楽しくて鼻歌が出て来たりします。描いている時は時間を忘れるので、遅い時間になってしまったり、色々なオイルを使いますので、揮発性ですから吸い過ぎてしまったり(笑)もしています。絵を描くのは舞台の次に好きなことなので、楽しい時間でした。
──ご自宅の一角にアトリエが?
そうです。作っております。
──これだけの点数がありますと、保管などはどうしているのですか?
保管場所は頼んで置かせてもらったりもしていますが、家にあるものは湿気などもあって、劣化してしまっているものもあります。小さなものなどは、個展が終わったら処分しないといけないなと。
──そんなもったいない!
いえいえ、また新しいものをね。
──全体にとても穏やかな絵が多いと感じますが、中でも情熱的に描かれたものは?
どうでしょうか。確かに今回は心穏やかな時間が流れておりましたので、あまり激しいものはないですね。前回少しイラッとしている時に描いたものは、確かにイラッとしたものが出ていて(笑)。舞台もそうですが、皆例えば体調が悪くてもわからないように笑顔でやっておりますが、やはり正直に出ているのですね。ですが、今回はちょっと失敗したかな?というものは1点、2点ありますが(笑)、それはご愛敬と言うことで(笑)。

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──これから描いていきたいテーマなどは?
まだまだもっとイメージを膨らませて、富士山とモン・サン・ミッシェルは描き続けていきたいと思っております。人物画はまだ描けておりませんし、静物画をまた描いてみたいかな?と。小さい頃描いていたのは静物画ばかりなので、好きだったのかなと思うので。あとは、今回熊本方面の、九州の地震で大好きな熊本城が崩れてしまったことに心を痛めていて、実家にいる頃からお城の石垣を描いたりするのが大好きでもありましたから、昔の姿のカッコいい熊本城を描けたらいいかなと思っています。
──それは、被災された方にも励みになることでしょうね。
色々な県の方、学生の方なども、熊本城を、また熊本、九州を応援するという意味で様々なことをして頂いているので、熊本出身者として何かできないかという模索はいつもしております。
──これからも楽しみにしています。
ありがとうございます。

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舞台に立つ時のシャープな凛々しさとはまた別の、柔らかな笑顔で質問に応える轟の表情が印象的な囲み会見は和やかに終了。外には開場を待つ長い行列が作られ、6年ぶりの個展に集まる期待が現れた時間となっていた。

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〈開催データ〉
第6回 轟悠個展「心の旅」
●7/24〜25◎第一ホテル東京 4F プリマヴェーラ
11時〜19時 入場無料
●7/31〜8/1◎ホテル阪急インターナショナル 4F 花風
11時〜19時 入場無料
轟悠トークショー
●7/24 13時、15時半◎第一ホテル東京 5F ラ・ローズ
●7/31 13時◎ホテル阪急インターナショナル 6F 瑞鳥
〈料金〉6,000円(税込)
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター 0570-00-5100(10時〜17時・水曜定休)


【取材・文・撮影/橘涼香】
 





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