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昨年の夏に上演されて、キャストの鈴木壮麻がこの作品の演技で2015年度の読売演劇大賞男優賞を受賞するなど、大きな反響を呼んだ傑作舞台『End of the RAINBOW』が、7月9日から六本木の俳優座劇場で再演の上演中である。(24日まで。そののち大阪、水戸でも公演)
映画「オズの魔法使」や「スタア誕生」で全世界を魅了したジュディ・ガーランドを主人公に、天才歌手として喝采を浴び続けながら、歌と愛に燃え尽きたその壮絶な生涯の、最晩年の姿を描いたもので、2016年の今もなおロンドンで上演が続いている。日本版ではジュディ役に彩吹真央、フィアンセでマネージャーのミッキー役に小西遼生、ピアニストのアンソニー役に鈴木壮麻が扮している。

【あらすじ】
1968年のクリスマス・ロンドン。ジュディはコンサートを控え、リッツホテルのスイートルームにチェックインした。傍らには最愛のフィアンセのミッキー・ディーンズ。ピアニストのアンソニーも駆けつけ、彼女をサポートする。ジュディはこのコンサートにすべてを賭けている。
輝かしい世の評価とは裏腹に、若い頃からすでにジュディはアルコール依存症と薬に頼る身体になっていた。ミッキーとアンソニーはその生活から彼女を脱出させようと試みるのだが…。

47歳で早逝してしまったジュディ・ガーランドは、2歳半で初舞台を踏み、人気子役から女優になり銀幕のスターとして、また、歌、踊り、演技の全てに秀でた実力派ミュージカル・スターとして一世を風靡した。後年はコンサートを中心に活躍するが、少女期から用いていた薬物、酒や男で私生活は乱れ、経済的にも破綻していた。だが観客を巻き込むパワフルなステージと豊かな歌声は、死後も不世出のエンターテイナーとして多くの人々に愛されて続けている。そんなジュディの最晩年のロンドンでのコンサートを背景に、彼女の歌った名曲とともに、ジュディ・ガーランドという1人の女性の内面を描き出した舞台だ。

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出演者は昨年はダブルキャストだったミッキー役が小西遼生のシングルになって、新しくインタビュアー役に寺元健一郎が参加している。昨年、見事なチームワークを見せた彩吹・小西・鈴木
の3人は、より人物に寄り添い、それぞれの心情を説得力とともに伝えてくる。

彩吹は、おそらくエンターテインメントの世界で生きているものなら誰でも感じる自信と不安、歌いたいという欲望と歌えないかもしれないという恐怖、その両極で苛まれる「天才」ジュディ・ガーランドの心理の道筋を丁寧に追いかけて,同化してみせる。とくに最終章でアンソニーの語る「田舎での暮らし」に子供のように目を輝かせながら、それを振り捨てる際の諦めにも似た哀しみが胸に残る。

フィアンセとして、同時にマネージャーとして、「スター」ジュディ・ガーランドを愛し見守るミッキー役の小西遼生は、ジュディが惹かれ頼りにする男の魅力とバイタリティが外見からもうかがわれる。身勝手でエキセントリックな彼女に振り回されながらも、ショービジネスを生きる人間として、ジュディをコントロールしようとするミッキーの凄絶な闘いと苦悩。時には冷酷ささえ感じさせるほど「現実」を生きようとする人間の姿がリアルに迫ってくる。

そしてピアニストのアンソニー役の鈴木壮麻は、この役で演劇賞を受賞しただけあって、チャーミングな存在感で、この物語を支える。ジュディと一緒にステージを分かち合う立場だからこそ、言葉にしなくてもわかり合える仲であり、彼がゲイだということもあって、「人と人」としての優しさと愛で2人は繋がっている。同時にアンソニーのアーティストとしての感性や繊細さは、時にミッキーの現実主義とぶつかり合う。そんな彼がなんとかしてジュディを破滅から救おうと、「夢」を語るシーンは、温かく、「夢」であるがゆえにその結末はあまりにも儚い。
 
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ラストシーンはジュディの死を語る
アンソニーのモノローグとジュディの「Over the rainbow」の絶唱で一度幕が降りる。だが、その悲しさを払拭するように賑やかなカーテンコールが待っている。ジュデイがそうしたように、美しい脚線を黒ストッキングで包み、黒ジャケットと黒のハットで小粋にセクシーに歌い踊る彩吹真央。さらに小西遼生と鈴木壮麻も参加して繰り広げる名曲でのエンターテインメントショー。その楽しさは、ジュディ・ガーランドという不世出のスターの輝きそのものであり、彼女が残した作品とともに今も人の心を照らしてくれる。
                                 
〈公演情報〉 
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『End of the RAINBOW』
作◇ピーター・キルター
演出◇上田一豪
上演台本・訳詞◇高橋亜子  
音楽監督・ピアノ◇岩崎廉  
ステージング・振付TETSUHARU
出演◇彩吹真央、小西遼生鈴木壮麻寺元健一郎
●7/9〜24◎俳優座劇場
〈料金〉8,800円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉 
チケットスペース 03-3234-9999 
●7/27サンケイホールブリーゼ
〈料金〉8,800円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ ブリーゼチケットセンター 06-6341-8888 (11:00〜18:00)
●7/30水戸芸術館ACM劇場
〈料金〉S席=6,000円  A席5,000円  B席3,500(全席指定・税込)  
〈お問い合わせ〉水戸芸術館チケット予約センター 029-225-3555
HP http://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2016/end_of_the_rainbow/index.html





【文/榊原和子 写真提供/シーエイティプロデュース 撮影/ヒダキトモコ】




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